説明

固液分離装置

【課題】 スペーサによって、軸線方向に互いに間隔をあけて配置された複数の固定リングと、各固定リングの間に配置された可動リングと、複数の固定リングを固定連結する複数のステーボルトと、固定リングと可動リングの内部を延びるスクリューと、そのスクリューを回転駆動する駆動装置とを有し、可動リングの内径がスクリューの外径よりも小さく設定された固液分離装置において、可動リングを簡単に交換できるようにする。
【解決手段】 スクリュー21を駆動装置に着脱可能に連結し、ステーボルト35を、そのステーボルト35の軸線方向に対して直交する方向Fに取り出すことができるように、そのステーボルト35を固定リング28に形成された切欠33に着脱可能に嵌合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペーサによって互いに間隔をあけて配置された複数の固定リングと、隣り合う固定リングの間に配置された可動リングと、前記複数の固定リングを連結する複数の連結部材と、前記複数の固定リング及び可動リングの内部を延びるスクリューと、該スクリューを回転駆動する駆動装置とを具備し、前記可動リングの内径が前記スクリューの外径よりも小さく設定されている固液分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多量の液体を含む処理対象物、例えば食品加工排水や下水処理物などの有機系汚泥、或いは切削屑を含む切削油や塗料を含む塗料廃液などの無機系汚泥から液体を分離するために、上記形式の固液分離装置を用いることは従来より周知である(例えば、特許文献1参照)。この形式の固液分離装置によれば、複数の固定リングと複数の可動リングによって形成された筒状体の軸線方向一端側の入口開口から流入した処理対象物を、筒状体の軸線方向他端側の出口開口へ向けて移動させ、筒状体内を移動する処理対象物から分離された液体を、固定リングと可動リングの間の微小ギャップを通して筒状体外へ排出させ、液体分の減少した処理対象物を筒状体の軸線方向他端側の出口開口から排出させることができる。
【0003】
その際、可動リングの内径がスクリューの外径よりも小さく設定されているので、スクリューは、その回転によって、可動リングを半径方向に押動させ、該可動リングを固定リングに対して積極的に運動させることができる。このため、可動リングを駆動する専用の駆動装置を設けずとも、固定リングと可動リングの間の微小ギャップに入り込んだ固形物を効率よく排出させることができ、微小ギャップの目詰まりを防止することができる。
【0004】
ところで、この種の固液分離装置においては、経時的に可動リングの内周面が削られるので、必要に応じて、その可動リングを新たなものと交換する必要がある。従来の可動リングの交換作業の一例を示すと次のとおりである。
【0005】
先ず、駆動装置のモータをスクリューの軸部から分離し、そのモータを床面上に置く。次いでスクリューを筒状体から抜き出し、そのスクリューを床面上に置く。引き続き、筒状体を支持フレームから外し、これを持ち上げて床面上に置く。さらに、連結部材をその軸線方向に引き抜いて、当該連結部材を固定リングから外す。このようにすれば、可動リングを拘束するものが無くなるので、各可動リングを固定リングの間から取り出すことができる。上述したところと逆の操作によって新たな可動リングを組み付け、固液分離装置を組み立てることができる。
【0006】
スクリューを筒状体から抜き出した後、その筒状体を支持フレームから外し、これを床面に置いてから、連結部材を引き抜くようにしたのは、支持フレームに組み付けられた筒状体の下方には、例えば、濾液受け部材や、処理対象物の入ったサービスタンクなどが配置されているので、支持フレームに組み付いたままの筒状体から連結部材を引き抜いたとき、スペーサが濾液受け部材やサービスタンクに落下してしまうからである。筒状体を床面に載置してから連結部材を抜けば、スペーサは床面上に落下するので、これを容易に拾い上げることができる。
【0007】
ところが、多数の可動リングと固定リングを交互に重ねて成る筒状体は非常に重いため、筒状体を支持フレームから外して床面上に運び、逆にこれを床面から支持フレームに運んで組み付ける作業には多大な労力が必要とされる。筒状体が大型化すれば、これを人力だけで運ぶことは困難となり、ホイストなどの起重機を用いなければならない。
【0008】
【特許文献1】特開平5−228695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来よりも楽に可動リングの交換作業を行うことのできる冒頭に記載した形式の固液分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、冒頭に記載した形式の固液分離装置において、前記スクリューが前記駆動装置に対して着脱可能に連結され、該スクリューを駆動装置から離脱し、当該スクリューを固定リングと可動リングの内部から抜き出した状態で、各可動リングを隣り合う固定リングの間から取り出すことができるように、少なくとも1つの連結部材が、複数の固定リングに対して、当該連結部材の軸線方向に対し直交する方向にスペーサと共に離脱可能に組み付けられていることを特徴とする固液分離装置を提案する(請求項1)。
【0011】
また、上記請求項1に記載の固液分離装置において、前記連結部材の軸線方向に対して直交する方向に離脱可能な連結部材は、前記固定リングに形成された切欠に着脱可能に嵌合していると有利である(請求項2)。
【0012】
さらに、上記請求項2に記載の固液分離装置において、前記切欠は、連結部材の着脱時に、該連結部材が通過する開口部と、前記連結部材が組み付いたときに該連結部材が位置する嵌合部とを有し、該嵌合部の直径は、前記開口部の幅よりも大きく設定され、該切欠に嵌合する連結部材の横断面は、前記開口部の幅よりも小さな短軸と、該開口部の幅よりも大きく、かつ前記嵌合部の直径よりも小さな長軸を有する細長形に形成されていると有利である(請求項3)。
【0013】
また、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の固液分離装置において、前記連結部材の軸線方向に対して直交する方向に離脱可能な連結部材に設けられた少なくとも一部のスペーサは、該連結部材に一体となっていると有利である(請求項4)。
【0014】
さらに、上記請求項1乃至4のいずれかに記載の固液分離装置において、前記固定リング、可動リング及びスクリューのうちの少なくとも一部が樹脂により構成されていると有利である(請求項5)。
【0015】
また、上記請求項1乃至5のいずれかに記載の固液分離装置において、前記連結部材の軸線方向に対して直交する方向に離脱可能ではない連結部材に嵌合した各スペーサは、そのスペーサに隣接する2つの固定リングのうちの一方の固定リングに一体に形成されていると有利である(請求項6)。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スクリューを駆動装置から離脱し、そのスクリューを固定リングと可動リングの内部から抜き出した状態で、可動リングを隣り合う固定リングの間から取り出すことができるので、従来よりも楽に可動リングを交換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0018】
図1は固液分離装置の一例を示す部分断面正面図である。ここに示した固液分離装置は、入口部材1と出口部材2と、これらの間に配置された筒状体3とを有し、入口部材1は、上部が開口した矩形の箱状に形成され、その上部開口は汚泥が流入する流入口4を構成している。符号7は入口部材1の底壁を示す。また筒状体3を向いた側の入口部材1の側壁5には開口6が形成され、さらに入口部材1の側壁5に対向したもう一つの側壁8には、横断面が矩形状に形成されたモータ支持部材9の一方の側壁10がボルトとナットによって固定され、モータ支持部材9の他方の側壁11に、減速機付きのモータ12が固定されている。
【0019】
入口部材1の両側壁5,8は下方に延び、その下端部が図示していないボルトとナットによって支持フレームのステー13,14にそれぞれ着脱可能に固定され、モータ支持部材9の両側壁10,11も下方に延び、その下端部が図示していないボルトとナットによって支持フレームのステー14に着脱可能に固定されている。
【0020】
出口部材2は、その上部と下部が開口し、水平断面が矩形状に形成された本体17と、軸受板18とを有し、筒状体3を向いた側の本体17の側壁19と、これに対向する本体17の側壁20には、後述するスクリュー21の外径よりも大きな径を有する開口22,23がそれぞれ形成されている。側壁19,20は、下方に延び、その下端部が支持フレームのステー52,53に図示していないボルトとナットによって着脱可能に固定されている。また、側壁20に形成された開口23には、前述の軸受板18が配置され、その軸受板18は、ボルト24とナット25によって側壁19に着脱可能に固定されている。本体17の下部開口は、脱水処理された汚泥が排出される排出口26を構成している。
【0021】
一方、筒状体3は、小リング状のスペーサ38,39によって軸線方向に互いに間隔をあけて配置された複数の固定リング28と、隣り合う固定リング28の間に配置された可動リング29とによって構成されている。図2は1つの固定リング28と、1つの可動リング29と、スペーサ38,39の外観を示す斜視図である。複数の固定リング28は、図1、図3及び図4に示すように同心状に配列され、隣り合う固定リング28の間に上述のスペーサ38,39がそれぞれ配置されている。図1に示すように、筒状体3は出口部材2の側が高くなるように傾斜して配置されている。
【0022】
図示した固液分離装置においては、図2乃至図4に示すように、各固定リング28の3つの耳30に、それぞれ取付孔32が形成され、上部に位置する他の耳31には、一方が開口した切欠33が形成されている。互いに隣り合って位置する複数の固定リング28の3つの取付孔32は、それぞれ同心状に位置し、複数の固定リング28の切欠33も、筒状体3の軸線方向に一直線状に整列した状態で位置している。
【0023】
各固定リング28に形成された各取付孔32と、各固定リング28の間に配置されたスペーサ39には、連結部材の一例であるステーボルト34がそれぞれ挿通され、そのステーボルト34は、図1に示すように、入口部材1の側壁5と、出口部材2の側壁19を貫通し、その各端部に形成された雄ねじにナット36,36Aがそれぞれ螺着されて締め付けられている。一方、各固定リング28に形成された切欠33と、各固定リング28の間に配置されたスペーサ38にも、連結部材の一例であるステーボルト35が挿通され、このステーボルト35は、図1に示すように、入口部材1の側壁5と出口部材2の側壁19にそれぞれ形成された切欠54,55を貫通し、そのステーボルト35の各端部に形成された雄ねじにナット37,37Aがそれぞれ螺着されて締め付けられている。各切欠33,54,55は、図1及び図4に示すように、上部が開放されている。なお、図1においては、図を判りやすくするため、一部のステーボルトとスペーサなどを省略してある。
【0024】
上述のようにして、複数の固定リング28は、ステーボルト34,35とナット36,36A,37,37Aによって一体的に固定され、入口部材1と出口部材2に対して固定されている。スペーサによって互いに間隙をあけて配置された各固定リングをわずかに遊動できるように組み付けることもできる。いずれの場合も、連結部材の一例であるステーボルト34,35は、複数の固定リング28を連結する用をなし、各連結部材に複数のスペーサ38,39が嵌合している。かかる連結部材が複数設けられている。ステーボルト以外の細長部材、例えば連結棒などから成る連結部材を用いることもできる。
【0025】
一方、図4に示すように、各固定リング28の間にそれぞれ配置された各可動リング29の厚さTは、各固定リング間の間隙幅Gより小さく設定され、各固定リング28の端面と、これに対向する可動リング29の端面の間には、例えば0.5乃至1mm程の微小なギャップgが形成される。かかる微小ギャップgは、後述するように汚泥から分離された水分、すなわち濾液を通過させるものである。また各可動リング29の外径Dは、そのまわりに位置する4個のスペーサ38,39の内側面により形成される円CC(図2)の径Dよりも小さく、しかも各固定リング28の内径Dよりも大きく設定されている。この構成により、各可動リング29は、各固定リング28の間から離脱することなく、その半径方向に可動となる。このように、各ステーボルト34,35に嵌合したスペーサ39,38の内側に位置する可動リング29が下方に落下しないように、複数のステーボルト34,35が設けられており、好ましくは3本以上のステーボルトが設けられる。本例の固液分離装置においては、4本のステーボルト34,35が使用され、図3から判るように、これらのステーボルト34,35は、固定リング28の周方向に等間隔に配置されている。図3においては、高さ方向の中間に位置する2本のステーボルトに対して、特に符号34A,34Bを付してあるが、その一方のステーボルト34Aの中心と固定リング28の中心Xを結ぶ線L1と、他方のステーボルト35Bの中心と固定リング28の中心Xを結ぶ線L2との成す角度αは、ほぼ180°である。
【0026】
また、複数の固定リング28と複数の可動リング29の内部には、これらのリング28,29の軸線方向に延びるスクリュー21が配置され、このスクリュー21は、軸部41と、これに一体のらせん状の羽根部42を有している。かかるスクリュー21は、図1に示すように、入口部材1の側壁5と、出口部材2の側壁19,20に形成された開口6,22,23を貫通して延びている。
【0027】
図1に示すように、軸受部材18は、内部に軸受43が収容された軸受カップ44を有し、上述のスクリュー21の軸部41の一方の端部が、軸受カップ44に挿入され、軸受43を介して、軸受部材18に回転自在に支持されている。
【0028】
一方、図1に示したモータ12の出力軸45は、モータ支持部材9の側壁11,10と、入口部材1の側壁8を貫通して延び、側壁10に軸受を介して回転自在に支持されている。かかる出力軸45の先端部は、図5に示すように、内部が中空に形成され、その中空部49の中央部に係合片50が固定配置されている。また、スクリュー21の軸部41の他方の端部には、係合溝51が形成され、軸部41の端部が図1に示すように出力軸45の中空部49に挿入され、軸部41に形成された係合溝51が出力軸45に設けられた係合片51に着脱可能に係合している。従って、モータ12が作動して出力軸45が回転すると、その回転が、互いに係合した係合片50と係合溝51を介してスクリュー21に伝えられ、該スクリュー21がその中心軸線のまわりに回転する。このように、本例の固液分離装置においては、減速機付きのモータ12と、その出力軸45によって、スクリュー21を回転駆動する駆動装置が構成され、前述の係合片50と係合溝51とによって、スクリュー21が駆動装置に対して着脱可能に連結されている。
【0029】
次に、本例の固液分離装置の動作を説明する。
【0030】
図示していないフロック化装置において、多量の水分を含む汚泥に凝集剤が混合撹拌され、これによって汚泥がフロック化される。フロック化された汚泥(図には示さず)は、図1に矢印Aで示すように、固液分離装置の入口部材1内に流入する。かかる汚泥の含水率は、例えば99重量%程度である。このとき、スクリュー21はモータ12によって回転駆動されているので、入口部材1に流入した汚泥は、矢印Bで示すように、入口部材1の側壁5に形成された開口6を通って、固定リング28と可動リング29の内部空間、すなわち筒状体3の内部空間に、その軸線方向一端側の入口開口3Aから流入する。このようにして筒状体3の内部に流入した汚泥は、スクリュー21の回転により、筒状体3の軸線方向他端側の出口開口3Bへ向けて移動する。このとき、汚泥から分離された水分、すなわち濾液が、各固定リング28と可動リング29との間の微小ギャップg(図4)を通して筒状体外に排出される。排出された濾液は、ステー13,52に固定された濾液受け部材40に受け止められ、濾液排出管46を通して濾液受け部材40の下方に配置されたサービスタンク(図示せず)に流下する。この濾液には未だ多少の固形分が含まれているので、当該濾液は他の汚泥と共に再度固液分離装置に供給されて脱水処理される。
【0031】
ここで、図4に示す如く、スクリュー21の外径Dは、その回転が阻害されないように、固定リング28の内径Dよりもわずかに小なる大きさに設定されているが、可動リング29の内径Dよりも大きく設定されている。可動リング29の内径Dがスクリュー21の外径Dよりも小さく設定されているのである。このため、スクリュー21の回転によって、各可動リング29は、スクリュー21から外力を受けて押動され、固定リング28に対して積極的に相対運動する。このようにして、可動リング29を駆動する専用の駆動手段を設けることなく、微小ギャップgに入り込んだ固形物を積極的に排出させることができ、そのギャップgに対するクリーニング効率を高めることができる。
【0032】
上述のように筒状体3内の汚泥の含水率が下げられ、含水量の減少した汚泥が筒状体3の軸線方向他端側の出口開口3Bから排出される。筒状体3から排出された汚泥は、図1に矢印Dで示すように、出口部材2の開口22を介して出口部材2内に移動し、その下方の排出口26を通して下方に落下する。
【0033】
このようにして脱水処理された後の汚泥の含水率は、例えば80乃至85重量%程度である。図1に示すように、出口部材2の一方の側壁に形成された開口22に対向して、軸部41に背圧板47が固定されており、これによって筒状体3内の汚泥に加えられる圧力を高めることができる。
【0034】
上述の固液分離動作を繰り返し行う間に、可動板29が摩耗するので、これを新たな可動板と交換する必要がある。この交換作業は次に例示するように極く簡単に行うことができる。
【0035】
先ず、モータ12の作動を停止させた状態で、図1に示したボルト24とナット25を外し、軸受板48を矢印E方向に引いて、軸受カップ44をスクリュー21の軸部41の一方の端部から離脱する。これにより、スクリュー21の一方の端部側を拘束するものがなくなるので、スクリュー21を図1に矢印Eで示す方向に引くと、図5に示すように、スクリュー21の軸部41の他方の端部が、出力軸45の中空部49から外れ、そのままスクリュー21を矢印E方向に引けば、そのスクリュー21を固定リング28と可動リング29の内部から抜き出すことができる。
【0036】
次いで、4本のステーボルト34,35のうちの一番上部に位置しているステーボルト35に螺着されたナット37,37Aを緩めると、そのステーボルト35を拘束するものが無くなる。そこで、そのステーボルト35を、図1、図3、図4及び図6に矢印Fで示すように上方に持ち上げると、そのステーボルト35を、固定リング28に形成された切欠33と、入口部材1及び出口部材2の側壁5,19に形成された切欠54,55からそのまま上方に抜き出すことができる。このとき、図6に示すように、ステーボルト35に嵌合したスペーサ38も、そのステーボルト35と共に、各固定リング28の間から抜き出される。しかも、スペーサ38はステーボルト35に嵌合したままであるため、そのスペーサ38が下方に落下することはない。この状態で、図3を参照して先に説明したように、高さ方向の中間に位置する各ステーボルト34A,34Bの中心と、固定リング28の中心Xを結ぶ各線L1,L2の成す角度αがほぼ180°であるため、各固定リング28の間に配置された可動リング29を、手で掴んで、これを上方に持ち上げれば、その可動リング29を固定リング28の間から取り出すことができる。
【0037】
次いで新たな可動リング29を各固定リング28の間に挿入し、多数のスペーサ38が嵌合したステーボルト35を、各固定リング28に形成された切欠33と、入口部材1及び出口部材2の側壁5,19にそれぞれ形成された切欠54,55に嵌合して、各スペーサ38を互いに隣り合う固定リング28の間に配置する。引き続き、ステーボルト35にナット37,37Aをそれぞれ螺着して締め付け、次いでスクリュー21を筒状体3に挿入して、係合片50と係合溝51を係合させることにより、スクリュー21と出力軸45を連結することができる。さらに、出口部材2の軸受板18を本体17にボルト24とナット25によって固定し、スクリュー21の一方の端部を軸受43に回転自在に支持する。このようにして、新たな可動リング29の取付作業を完了する。
【0038】
上述のように、可動リング29を交換する際、筒状体3とモータ12を含む駆動装置を支持フレームから外す必要はなく、重量の大なる筒状体3と駆動装置を床面などに運ぶ必要はない。このため、従来に比べて極めて楽に可動リング29の交換作業を行うことができる。
【0039】
従来は、全てのステーボルトが固定リングに形成された取付孔に挿通されていたので、筒状体からスクリューを抜き出した後、図1に示したステーボルト35に相当するボルトを筒状体から外すには、ナットを緩めた後、当該ステーボルトをその軸線方向に引いて固定リングから取り外さなければならなかった。ところが、このようにすれば、ステーボルトは、隣接する固定リングの間に配置されたスペーサからも抜き出されるので、そのスペーサが、濾液受け部材上に落下し、場合によってはその下方に位置するサービスタンクの汚泥内に落ち込むおそれがあった。このため、筒状体を支持フレームから外し、その筒状体を床面上に載置してから、ステーボルトを筒状体から抜き出して、可動リングを交換しなければならず、その作業に多大な労力を必要としていた。これに対し、本例の固液分離装置においては、ステーボルト35を、固定リング28に対して、ステーボルト35に嵌合したスペーサ38と共に、該ボルト35の軸線方向に対して直交する方向に離脱するので、筒状体3の固定リング28を支持フレームのステー13,52に対して固定したまま、ステーボルト35を固定リング28から離脱しても、スペーサ38が下方に落下することはない。
【0040】
以上説明した固液分離装置は、1つのステーボルト35だけを、固定リング28に対して、そのステーボルト35の軸線方向に対して直交する方向に着脱できるように構成されているが、他のステーボルト34も、固定リング28に対して、ステーボルト34の軸線方向に対して直交する方向に着脱できるように、固定リング28に組み付けることもできる。すなわち、各固定リング28に取付孔32を形成する代りに、切欠33と同様に一方が開口した切欠(図示せず)を形成し、これらの切欠に各ステーボルト34を着脱可能に嵌合し、その各ステーボルト34の各端部にナット36,36Aを螺着して、各固定リング28を固定すると共に、そのナット36,36Aを緩めることにより、各ステーボルト34をスペーサ39と共に、そのステーボルト34の軸線方向に対し直交する方向に固定リング28から離脱できるように構成するのである。その際、可動リング29を固定リング28の間から取り出すとき、一番下方に位置するステーボルト(図3に特に符号34Cを付して示す)を外してしまうと、その時点で、全ての可動リング29が下方に落下してしまうので、このステーボルト34Cは外さないようにする必要がある。また、5本以上のステーボルトが固定リングの周方向に等間隔に配置される場合には、可動リングを固定リングの間から取り出せるように、上側に位置する複数のステーボルトを、その軸線方向に対して直交する方向に取り出せるように構成する必要がある。要は、スクリューを駆動装置から離脱し、そのスクリューを固定リングと可動リングの内部から抜き出した状態で、可動リングを隣り合う固定リングの間から取り出すことができるように、しかも可動リングが下方に落下しないように、少なくとも1つの連結部材が、複数の固定リングに対して、当該連結部材の軸線方向に対し直交する方向にスペーサと共に離脱可能に組み付けられているのである。
【0041】
ところで、上述した固液分離装置においては、図1、図3、図4及び図6から判るように、ステーボルト35が固定リング28に形成された切欠33に嵌合する。すなわち、複数の固定リングに対して、連結部材の軸線方向に対し直交する方向に離脱可能な連結部材は、固定リングに形成された切欠に着脱可能に嵌合しているのである。これにより、ステーボルト35を固定リング28に対して容易に着脱することができる。ところが、図1に示した状態で、ステーボルト35に対するナット37,37Aの締め付けが緩んだ場合には、ステーボルト35が切欠33から抜け出るおそれがある。
【0042】
そこで、図7及び図8に示すように、ステーボルトの軸線方向に対して直交する方向に固定リング28から離脱可能なステーボルト35が、固定リング28に形成された切欠33に嵌合するように構成すると共に、その切欠33が、ステーボルト35の着脱時に、そのステーボルト35が通過する開口部60と、ステーボルト35が組み付いたときにそのステーボルト35が位置する円形横断面の嵌合部61を有するように構成することが好ましい。しかも、図7に示すように、その嵌合部61の直径dを、開口部60の幅dよりも大きく設定し、切欠33に嵌合するステーボルト35の横断面を、開口部60の幅dよりも小さな短軸W1と、開口部60の幅dよりも大きく、かつ嵌合部61の直径dよりも小さな長軸W2を有する細長形に形成する。ステーボルト35を固定リング28の切欠33に取り付けるときは、ステーボルト35を図7に示す向きにして、これを開口部60に通し、嵌合部61に押し込む。このとき、W1<dであるため、ステーボルト35は支障なく開口部60を通過することができる。次いで、そのステーボルト35を、図8に示すように90°回転させる。このようにすれば、W2>dであるため、ステーボルト35とナットの締め付けが緩んだときも、そのステーボルト35が直ぐに切欠33から外れることはない。
【0043】
以上説明した固液分離装置においては、ステーボルトの軸線方向に対して直交する方向に固定リング28から離脱可能なステーボルト35に、リング状のスペーサ38を嵌合させたが、その各スペーサ38をステーボルト35に対して、例えば接着剤又は溶接などによって一体に固着してもよい。或いは、素材を切削加工するか、又は鋳造によって、一体となったステーボルト35とスペーサ38を構成することもできる。さらに、ステーボルト35とスペーサ38を樹脂により構成するときは、これらを成形型によって一体の成形品として製造することもできる。ステーボルト35と全てのスペーサ38を一体に形成した場合には、ステーボルト35とスペーサ38は1つの部品として構成される。このように各種の態様でスペーサ38をステーボルト35に設けることができる、しかもかかるスペーサ38をリング状以外の各種の形態に構成することもできる。
【0044】
スペーサ38がステーボルト35に一体になっていると、ステーボルト35を複数の固定リング28に対して着脱する際、スペーサ38を、各固定リング28の間に容易に挿入し、又は抜き出すことができる。これに対し、隣り合う固定リング28の間の隙間が極く狭い場合には、スペーサ38とステーボルト35が一体化されていると、かえって、そのスペーサ38を固定リング28の間の隙間に挿脱し難くなることもある。しかも各固定リング28の間の隙間を、筒状体3の軸線方向において異ならせることもある。従って、各固定リング28の間の隙間の大きさを考慮して、各スペーサをその各隙間に挿脱しやすくなるように、連結部材の軸線方向に対して直交する方向に離脱可能な連結部材(図の例ではステーボルト35)に設けられた少なくとも一部のスペーサが、その連結部材に一体となっているように構成することが好ましい。
【0045】
また、図示した例では、隣り合う固定リング28の間に1つの可動リング29が配置されているが、隣り合う固定リング28の間に複数の可動リング29を配置してもよいことは当然である。同様に、図示した固液分離装置のスクリュー21は、らせん状に延びる1つの羽根により羽根部42が構成されているが、らせん状に延びる複数の羽根によって羽根部を構成してもよいことは当然である。
【0046】
また、固定リング28、可動リング29及びスクリュー21は、ステンレス鋼などの金属により構成することもできるが、これらのうちの少なくとも一部を樹脂により構成すると、そのコストを低減できる共に、その各構成要素の重量を低減することができる。特にスクリュー21を樹脂化して、軽量化すれば、そのスクリュー21を筒状体3から抜き出し、又は差し込むときの作業が極めて容易となる。
【0047】
ステーボルトの軸線方向に対して直交する方向に離脱可能ではないステーボルト34に嵌合したスペーサ39は、固定リング28に対して着脱する必要はないので、図9に示すように、そのスペーサ39を、当該スペーサ39に隣接する2つの固定リングのうちの一方の固定リング28に一体に形成し、固定リング28とスペーサ39を1つの部品として構成することもできる。例えば、固定リング28とスペーサ39が共に金属より成るときは、これらを溶接によって一体化することができ、また固定リング28とスペーサ39を共に樹脂により構成するときは、これらを成形型によって一体の成形品として製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】固液分離装置の部分断面正面図である。
【図2】1つの固定リングと、1つの可動リングと、スペーサとを示す斜視図である。
【図3】筒状体とスクリューの分解斜視図である。
【図4】筒状体の縦断面図である。
【図5】出力軸とスクリューの軸部の連結に関する構成を示す斜視図である。
【図6】ステーボルトをスペーサと共に固定リングから取り外したときの様子を示す斜視図である。
【図7】固定リングに形成された切欠と、ステーボルトの他の例を示す部分断面図である。
【図8】図7に示したステーボルトを切欠に嵌合したときの様子を示す部分断面図である。
【図9】固定リングと、その固定リングに一体化されたスペーサを示す図である。
【符号の説明】
【0049】
21 スクリュー
28 固定リング
29 可動リング
33 切欠
38,39 スペーサ
60 開口部
61 嵌合部
外径
内径
直径

W1 短軸
W2 長軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペーサによって互いに間隔をあけて配置された複数の固定リングと、隣り合う固定リングの間に配置された可動リングと、前記複数の固定リングを連結する複数の連結部材と、前記複数の固定リング及び可動リングの内部を延びるスクリューと、該スクリューを回転駆動する駆動装置とを具備し、前記可動リングの内径が前記スクリューの外径よりも小さく設定されている固液分離装置において、前記スクリューが前記駆動装置に対して着脱可能に連結され、該スクリューを駆動装置から離脱し、当該スクリューを固定リングと可動リングの内部から抜き出した状態で、各可動リングを隣り合う固定リングの間から取り出すことができるように、少なくとも1つの連結部材が、複数の固定リングに対して、当該連結部材の軸線方向に対し直交する方向にスペーサと共に離脱可能に組み付けられていることを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
前記連結部材の軸線方向に対して直交する方向に離脱可能な連結部材は、前記固定リングに形成された切欠に着脱可能に嵌合している請求項1に記載の固液分離装置。
【請求項3】
前記切欠は、連結部材の着脱時に、該連結部材が通過する開口部と、前記連結部材が組み付いたときに該連結部材が位置する嵌合部とを有し、該嵌合部の直径は、前記開口部の幅よりも大きく設定され、該切欠に嵌合する連結部材の横断面は、前記開口部の幅よりも小さな短軸と、該開口部の幅よりも大きく、かつ前記嵌合部の直径よりも小さな長軸を有する細長形に形成されている請求項2に記載の固液分離装置。
【請求項4】
前記連結部材の軸線方向に対して直交する方向に離脱可能な連結部材に設けられた少なくとも一部のスペーサは、該連結部材に一体となっている請求項1乃至3のいずれかに記載の固液分離装置。
【請求項5】
前記固定リング、可動リング及びスクリューのうちの少なくとも一部が樹脂により構成されている請求項1乃至4のいずれかに記載の固液分離装置。
【請求項6】
前記連結部材の軸線方向に対して直交する方向に離脱可能ではない連結部材に嵌合した各スペーサは、そのスペーサに隣接する2つの固定リングのうちの一方の固定リングに一体に形成されている請求項1乃至5のいずれかに記載の固液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−198593(P2006−198593A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18011(P2005−18011)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(591007022)アムコン株式会社 (28)
【Fターム(参考)】