説明

固液混合処理液のろ過液回収装置

【課題】仮に吸引ポンプをばっ気槽の液面よりも低い位置に設置した場合にも、吸引ポンプの停止と同時に液流を完全に停止でき、エアスクラビングによる期待通りの洗浄効果が得られる固液混合処理液のろ過液回収装置を提供する。
【解決手段】ばっ気槽(4) 内に膜分離モジュール(9) の下方に散気装置(15)を備えた膜ろ過ユニット(5) が浸漬配置され、散気装置(15)による散気と同時に膜分離モジュール(9) により固液混合処理液を固液分離し、ばっ気槽(4) 内の気液混合処理液の液面の上方に立ち上がるろ過液の吸引管路を介して膜分離モジュールからろ過液を吸引回収する。前記吸引管路に接続された吸引ポンプ(Pv)が前記ばっ気槽(4) の槽外にあって液面より下方に配設され、前記吸引ポンプ(Pv)の吐液口に接続される排液管路(26)が、前記液面の上方へと立ち上がったのち下方へと屈曲して延びて前記液面より下方に位置する排液口を有している。更に、前記回収管路の頭頂部に吸排気手段(27)が配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常の排水処理や浄水処理、膜分離活性汚泥処理などに適用されるばっ気槽内の処理液を膜分離してろ過液を吸引ポンプにより吸引回収するろ過液回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明装置が適用される代表的な例である膜分離活性汚泥処理方法は、例えば工業用排水や生活用排水中に含まれる有機物、或いは微生物や細菌類を含む排水を生物学的に処理して、各種の分離膜を用いて固液分離を行い処理水を処理水槽に回収し、或いは放流している。従来の膜分離活性汚泥処理装置は、原水調整槽と脱窒槽とばっ気槽とを備えており、原水調整槽では、槽内の液面を液面計により測定し、送液ポンプを間欠駆動して槽内の液面高さを所定の範囲内となるように調整している。送液ポンプによって送られる原水は脱窒槽に導入されたのち、脱窒槽から溢流する原水を隣接するばっ気槽に流入させる。このばっ気槽には膜ろ過ユニットを浸漬して配している。この膜ろ過ユニットにて活性汚泥の汚染物質と処理水とに膜分離して、ろ過された処理水を吸引ポンプにより吸引して処理水槽に回収し或いは放流する。ばっ気槽内の余剰汚泥の大部分は汚泥貯蔵槽に送られて貯蔵されて、乾燥したのち焼却処分される。また、余剰汚泥の一部は送液ポンプによって上記脱窒槽へと返送されて、脱窒槽とばっ気槽との間を循環する。
【0003】
前記膜ろ過ユニットの代表的な例は、多数の多孔性中空糸を同一平面上に平行に並べたシート状の中空糸膜エレメントを所要の間隔をおいて複数枚並べて得られる中空糸膜モジュールと、同中空糸膜モジュールの下方に配された散気装置とを備えている。前記中空糸膜モジュールは、複数枚の中空糸膜エレメントからなる全体形状が略直方体をなしている。一方の散気装置は、例えば金属、樹脂などからなるパイプに孔やスリットを設けた複数本の散気管を平行に配設し、各散気管の一端をばっ気ブロアに接続させている。ばっ気ブロアから送られるエアを散気装置を介して気泡に変えて汚泥中に放出する。生活排水、工場排水などを処理する場合、好気性微生物の存在下でばっ気槽の汚泥中の有機物に、散気装置から発生した空気を接触させることにより、前記有機物を前記好気性微生物に吸着・代謝分解させて、生物学的に汚泥処理がなされる。
【0004】
前記中空糸膜モジュールと散気装置とは上下が開口する矩形筒状の遮閉板により囲まれている。この遮閉板は、散気装置から発生する気泡の上昇により気液混合流を生成し、その流れを上昇流から下降流へと導くための壁部となる。散気装置から放出される気泡により発生した気液混合流は、斜め方向に飛散せず、まっすぐに上昇して中空糸膜モジュールに効率よく接触する。このとき、中空糸膜モジュールの膜面に対する気液混合流の一様な分散により、中空糸膜を揺動させて各中空糸膜エレメントを均一に洗浄する。また、この気液混合流の発生時にエア中の酸素が溶解して上記生物学的処理を効率的に行うとともに、中空糸膜のろ過機能により汚泥を汚染物質と処理水とに固液分離する。前記膜ろ過ユニットの集水ヘッダー管の一端が吸引管路を介して吸引ポンプに接続されており、この吸引管路を通して、膜ろ過ユニットによりろ過された処理水(ろ過水)が吸引されて処理水槽へと回収され、或いは放流される。
【0005】
膜モジュールとしては、多孔性中空糸を構成部材とするシート状の中空糸膜エレメントの他にも、複数の微細な孔を有するろ過膜を備えたものが使われており、例えば平膜タイプ、管状膜タイプ、袋状膜タイプなどの種々の公知の分離膜がある。また、その材質としては、セルロース、ポリオレフィン、ポリスルホン、PVDF(ポリビニリデンフロライド)、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)、セラミックスなどが挙げられる。しかして、中空糸膜エレメントを使った中空糸膜モジュールは、ろ過面積が広くなることから多用されている。
【0006】
上記多孔性中空糸に形成される微細孔の平均孔径は、一般に限外ろ過膜と呼ばれる膜で平均孔径0.001〜0.1μm、一般に精密ろ過膜と呼ばれる膜では平均孔径0.1〜1μmである。例えば、活性汚泥の固液分離に用いるときは、0.5μm以下の孔径であることが好ましく、浄水のろ過のように除菌が必要な場合は0.1μm以下の孔径であることが好ましい。
【0007】
一方、上記中空糸膜モジュールの早期目詰まりを防止するために、例えば国際公開第2004/028672号パンフレット(特許文献1)に記載されているように、ばっ気用の散気装置から放出される比較的大きな気泡により生起される気液混合流を利用して、中空糸や中空糸膜エレメントを揺動させ、膜面に付着する汚泥物質を剥離洗浄する、いわゆるエアスクラビング洗浄が行なわれる。更には、中空糸膜の内部中空部から膜外にろ過水を逆通水する逆洗浄が行われることがあり、こうした洗浄によりろ過膜のろ過性能の回復がなされる。
【0008】
前記特許文献1によれば、上述のとおり膜ろ過ユニットは下部に散気装置を備えており、散気装置からエアが放出されると同時に吸引ポンプによりろ過水が吸引され、その際、ろ過水の一部は逆洗タンクに貯められる。一定時間ろ過した後、散気装置に接続したばっ気ブロアからのエアを用いてスクラビング洗浄を行うとともに、逆流ポンプにより逆洗タンク内のろ過水を使用して逆洗浄を行う。その際、薬液タンク内の薬液が、薬液ポンプにより逆洗水中に注入されて、逆洗浄と同時に薬液による洗浄も行われる。ここで、スクラビング洗浄と逆洗浄とを同時に行っても、スクラビング洗浄と逆洗浄とを別々に行ってもよい。また、例えばスクラビング洗浄、逆洗浄、スクラビング洗浄、逆洗浄のように、交互に行うこともできる。更に、スクラビング洗浄又は逆洗のいずれか一方を行うことも可能である。
【特許文献1】国際公開第2004/028672号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1には具体的に説明はされていないが、前記ばっ気槽内に配設された各膜ろ過ユニットからろ過水を吸引ポンプにより吸引する吸引管路は、通常、吸引ポンプは地上に設置され、各膜ろ過ユニットの上端部に配された集水ヘッダー管から上方に向けて垂直に延びる分岐管の上端部に接続され、槽内の液面よりも上方にて水平に配されたのち、槽外の地上に設置された前記吸引ポンプに接続されている。吸引ポンプにより吸引されるろ過水は回収管路を通って処理水槽へと導かれる。
【0010】
既述したとおり、この種の膜分離活性汚泥処理では、一般に汚染物質の付着により膜間差圧が上昇し目詰まりを起こす。そこで、この目詰まりを抑制するため、吸引ポンプを間欠的に駆動して、ろ過運転とエアスクラビング洗浄とを交互に行っている。前述のように吸引ポンプを液面よりも低い位置に設置すると、吸引ポンプの一時的な停止時にも、サイホンの原理に従ってろ過水の流れは維持され、完全に停止することがなくなる。その結果、膜面に対する汚染物質の新たな付着が続き、膜間差圧の上昇が期待どおりに抑えられず、エアスクラビングによる洗浄効果が期待できない。
【0011】
本発明は、かかる課題を解消するため開発されたものであり、たとえ吸引ポンプをばっ気槽の液面よりも低い位置に設置した場合にも、吸引ポンプの停止と同時に液流を完全に停止でき、エアスクラビングによる期待通りの洗浄効果が得られる固液混合処理液のろ過液回収装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題は、本発明の基本的な構成である、膜分離モジュールの下方に散気装置が配された膜ろ過ユニットが処理槽内に浸漬され、散気装置による散気と同時に膜分離モジュールにより固液混合処理液を固液分離し、処理槽内の気液混合処理液の液面の上方に延出するろ過液の吸引管路を介して膜分離モジュールからろ過液を吸引回収する固液分離装置であって、前記吸引管路に接続された吸引ポンプが前記処理槽の槽外にあって液面より下方に配設され、前記吸引ポンプの吐液口に接続される回収管路が、前記液面の上方へと立ち上がったのち下方へと屈曲して延びて前記液面より下方に位置する排液口へと接続され、前記回収管路の頭頂部に吸排気手段が配されてなることを特徴とする固液混合処理液のろ過液回収装置により効果的に解決される。本発明の好適な態様によると、前記吸排気手段はシャトル弁、或いは急速排気弁が使われる。
【作用効果】
【0013】
上記構成から理解できるように、本発明の基本構成は膜ろ過ユニットから吸引ポンプに至る吸引管路がいわゆるサイホン構造である場合に、更に吸引ポンプの吐液口側の排液管路にサイホン構造を採用するとともに、その管路の頭頂部に吸排気手段を設けて、吸引ポンプの一時停止時に吸排気手段が作動して、大気を管路内に送り込み液切れを起こさせ、排液管路のサイホン機能を停止させる。その結果、吸引ポンプが停止すると同時に吸気がなされて管路内のろ過液の流れが完全に停止し、スクラビング洗浄の効果が高まり、膜間差圧の上昇によるろ過効率の低下をきたすことがなくなる。
【0014】
ろ過運転の再開時には、吸引ポンプを起動させると同時に吸排気手段が作動して管路内に溜まっていた空気を大気中に排出する。このときの吸排気手段による排気は吸引ポンプの駆動により、排液管路内の液圧が上昇するため、その上昇圧によって自動的に排気される。或いは、吸引ポンプの起動と同時に吸排気手段にパイロット信号が出力されて排気される。そのため、好適には吸排気手段としてシャトル弁又は急速排気弁が使われる。ただし、これらの弁以外にもポペット式逆止弁などを使うことも可能である。要は、吸排気手段として内圧変化により吸気と排気がなされる機構を備えていることが肝要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、本発明に係る固液混合処理液の固液分離装置の代表的な実施形態である膜分離活性汚泥処理装置におけるばっ気工程の概略構成を示している。
【0016】
膜分離活性汚泥処理装置によれば、図示せぬ原水調整槽に導入される原水は所定の液面範囲内を維持するように、図示せぬ送液ポンプにより同じく図示せぬ脱窒槽へと間欠的に導入されたのち、脱窒槽から溢流する原水を隣接するばっ気槽4へと流入させる。このばっ気槽4の汚泥中には多数基の膜ろ過ユニット5を浸漬して配されている。この膜ろ過ユニット5にて活性汚泥と処理水とに膜分離された処理水は吸引ポンプPvにより処理水槽へと送液されて回収されるか、或いはそのまま放流される。一方、ばっ気槽4にてばっ気処理されて増殖した微生物などからなる濃縮汚泥の一部は図示せぬ汚泥貯蔵槽に貯蔵される。また、ばっ気槽4の内部の濃縮汚泥の一部は図示せぬ送液ポンプによって上記脱窒槽へと返送されて循環する。
【0017】
図2は、通常の膜ろ過ユニット5の代表的な例を示している。同図に示すように膜ろ過ユニット5は、糸長さ方向を垂直に配した複数枚の中空糸膜エレメント10を並列させて支持固定された膜分離モジュールである中空糸膜モジュール9と、同中空糸膜モジュール9の下方に所要の間隔をおいて配される散気装置15とを含んでいる。前記中空糸膜エレメント10は、多数本の多孔性中空糸10aを平行に並列させた膜シート11の上端開口端部をポッティング材11aを介してろ過水取出管12に連通支持させるとともに、下端を閉塞して同じくポッティング材11aを介して下枠13により固定支持させ、前記ろ過水取出管12及び下枠13の各両端を一対の縦杆14により支持して構成される。多数枚の中空糸膜エレメント10が、シート面を鉛直にして上下端面が開口した矩形筒状の上部壁材20のほぼ全容積内に収容されて並列支持される。ここで、上記中空糸膜エレメント10は、一般には図3に示すように多数本の多孔性中空糸10aが同じ間隙をもたせて同一平面上を並列して配されている。
【0018】
本実施形態にあって、前記多孔性中空糸10aは中心部に沿って長さ方向に中空とされたPVDF(ポリフッ化ビニデン)の多孔質中空糸が使われており、そのろ過孔の孔径は0.4μmである。また、1枚あたりの有効膜面積は25m2 である。上記シート状の中空糸膜エレメント10は1膜ろ過ユニット5あたり20枚が使われ、その大きさは奥行きが30mm、幅が1250mm、ろ過水取出管12の上面から下枠13の下面までの長さが2000mmである。散気装置15をも含めた1膜ろ過ユニット5の大きさは、奥行きが1552.5mm、幅が1447mm、高さが3043.5mmである。上記ろ過水取出管12の長さが1280mm、その材質はABS樹脂であり、縦杆14の材質はSUS304が使われている。
【0019】
ただし、多孔性中空糸10a、ろ過水取出管12及び縦杆14などの材質、中空糸膜エレメント10の大きさ、1膜ろ過ユニット5の大きさやユニット1基あたりの中空糸膜エレメント10の枚数などは、用途に応じて多様に変更が可能である。例えば、中空糸膜エレメント10の枚数で言えば処理量に合わせて20枚、40枚、60枚、…と任意に設定でき、或いは多孔性中空糸10aの材質には、セルロース系、ポリオレフィン系、ポリスルホン系、ポリビニルアルコール系、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化エチレンなど、従来公知のものを適用することができる。
【0020】
各中空糸膜エレメント10の上記ろ過水取出管12の一端には各多孔性中空糸10aによってろ過された良質のろ過水(処理水)の取出口12aが形成されている。本実施形態にあって、各取出口12aには、図2に示す膜ろ過ユニット5と同様に、それぞれL型継手12bがシール材を介して液密に取り付けられる。また、図3に示すように、上記上部壁材20の上端の前記取出口12aが形成されている側の端縁に沿って集水ヘッダー管21が横設されている。この集水ヘッダー管21は複数の前記取出口12aに対応する位置にはそれぞれに集水口21aが形成されており、各集水口21aに上記取出口12aと同様のL型継手21bがシール材を介して液密に取り付けられている。
【0021】
前記ろ過水取出管12の処理水取出口12aと前記集水ヘッダー管21の集水口21aとが、それぞれに取り付けられたL型継手12b,21b同士を接続することにより通水可能に連結される。集水ヘッダー管21の一端部には吸引ポンプPvとろ過水吸引管路22を介して接続される吸水口21cが形成されている。各集水ヘッダー管21ごとに形成された吸水口21cと前記ろ過水吸引管路22とは、図1に示すように、同ろ過水吸引管路22からそれぞれ分岐した分岐管路22a内に介装された流量調整バルブ23を介して連結されている。ここで、前記分岐管路22aは集水ヘッダー管21からばっ気槽4の液面より高い上方位置まで立ち上がり、それぞれが水平に配されたろ過水吸引管路22に接続されている。本実施形態にあっては、水平に配されて槽外に延びる前記ろ過水吸引管路22は、槽外にて下方に屈曲して地上に設置された吸引ポンプPvの吸引口に接続されている。
【0022】
この吸引ポンプPvの吐液口には排液管路26が接続され、ろ過水は図示せぬ処理水槽へと送られるか、そのまま放流される。この排液管路26は本発明の最も特徴部を構成しており、吸引ポンプPvに接続された排液管路26は、一旦、ばっ気槽4の液面よりも高い位置まで立ち上がったのち、逆U字形に屈曲して下方へと延び、その排水側端部を前記液面よりも低い位置に配して、サイホン構造を形成させている。また、前記排液管路26の水頭部(頭頂部)である屈曲部には吸排気手段27である逆止弁が設けられている。この逆止弁としてはシャトル弁や急速排気弁、パイロット操作逆止弁、ポペット弁などを使うことが好ましい。
【0023】
上記散気装置15は、図4に示すように、前記上部壁材20の下端に結合された同じく上下が開口する矩形筒体からなり、その4隅の下端から下方に延びる4本の支柱24aを備えた下部壁材24の底部に収容固設されている。前記散気装置15は、前記下部壁材24の正面側内壁面に沿って幅方向に水平に延設され、図1に示すように外部に配されたばっ気ブロアBとエア主管18を介して接続される分岐管路であるエア導入管16と、同エア導入管16の長さ方向に所定の間隔をおいて配され、一端が固設されるとともに、他端が背面側の内壁面に沿って水平に固設された複数本の散気管17とを有している。散気管17の前記エア導入管16との接続側端部は同エア導入管16の内部と連通しており、散気管17の他端は閉塞されている。本実施形態による散気装置15は複数基の膜ろ過ユニット5ごとに対応して配され、同じばっ気ブロアBから送られるエアを、それぞれの散気装置15に分流させるため、前記ばっ気ブロアBに直接接続されたエア主管18を有し、同エア主管18から分岐管路であるエア導入管16を介して各散気装置15に接続される。
【0024】
上述のとおり、同一ばっ気槽4に浸漬された複数基の膜ろ過ユニット5は各分岐管路22aと流量調整バルブ23とを介して同一のろ過水吸引管路22に接続されている。汚泥処理が長期間にわたって継続して行われると、膜ろ過ユニット5のろ過膜の表面に目詰まりが進行するため、ろ過流量の低下、或いは膜間差圧の上昇が生じる。このような膜間差圧の上昇を抑えるため、中空糸膜エレメント10の下方に配された上記散気装置15から噴出するエアと汚泥液との気液混合流体を利用して、いわゆるエアスクラビングを行うとともに、各多孔性中空糸10aを揺動させて膜面に付着した懸濁物質を剥がして離脱させ、物理的な洗浄を行う。このとき同時に微生物による硝化反応を活発化させて生物学的処理を行う。
【0025】
ここで、ばっ気槽4の活性汚泥は膜ろ過ユニット5の多孔性中空糸10aの中空部を通して固液分離を行い、ろ過水を外部の吸引ポンプPvにより積極的に吸引して図示せぬ処理水槽へと送り回収する。このときの運転は、吸引ポンプPvを6分間駆動したのち1分間停止させることを繰り返している。すなわち、吸引ポンプPvによるろ過水の吸引運転を間欠的に行っている。このろ過運転時及び停止時にもばっ気ブロアBの駆動は維持されており、常に散気装置15へとエアが送られている。そのため、ろ過運転時も散気装置15から放出される気泡により発生する活性汚泥との気液混合液の上昇流により、中空糸膜モジュール9の中空糸膜が揺動し、膜面に付着する汚泥付着物は膜面から剥離され、いわゆるエアスクラビング洗浄がなされている。また、ろ過運転の停止時には、中空糸膜モジュール9からのろ過水吸引は行われずに、エアスクラビングだけがなされるようになる。このときのエアスクラビングは、多孔性中空糸10aがろ過吸引を行っていないため、汚泥付着物の付着が少なくなるため、洗浄効果はろ過運転時と比較して極めて高くなり、膜間差圧の回復速度も高くなる。
【0026】
ところで、このようにろ過運転を間欠的に行う場合、本実施形態のように吸引管路22がサイホン構造であり、且つ排液管路26を吸引ポンプPvと同じ高さとし、或いはそれよりも低くすると、吸引ポンプPvの駆動を停止させても、サイホンの原理に従ってろ過水が流れ続けて、エアスクラビング効果を阻害して膜間差圧の回復が極めて遅れ、果てには目詰まりのため、ろ過吸引が不能となる場合がある。
【0027】
これに対して、本実施形態のように排液管路26を意図的にサイホン構造とするとともに、その頭頂部に吸排気手段27を設けて、ろ過運転の停止に合わせて頭頂部に大気中のエアを積極的に取り込み液切れを起こさせるようにしているため、吸引ポンプPvの駆動を停止するとろ過水の流れも確実に停止する。ここで、吸引ポンプPvを起動させると、吸引ポンプPvの駆動による圧力変化に基づき、前記吸排気手段27を吸気側から排気側へと流路を変え、排液管路26内に溜まっている空気を大気中に排出し、吸引ポンプPvの駆動が維持される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の代表的な実施形態である膜分離活性汚泥処理に適用されるろ過水回収装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】通常の膜ろ過ユニットの全体構成を一部破断して示す立体図である。
【図3】中空糸膜モジュールの構成部材である膜エレメントの構成例を模式的に示す斜視図である。
【図4】膜ろ過ユニットの構成部材の一つである散気装置の立体図である。
【符号の説明】
【0029】
4 ばっ気槽
5 膜ろ過ユニット
9 中空糸膜モジュール
10 中空糸膜エレメント
10a 多孔性中空糸
11 膜シート
11a ポッティング材
12 ろ過水取出管
12a ろ過水取出口
12b L型継手
13 下枠
14 縦杆
15 散気装置
16 エア導入管(分岐管路)
17 散気管
18 エア主管
20 上部壁材
21 集水ヘッダー管
21a 集水口
21b L型継手
21c 吸水口
22 吸引管路
22a 分岐管路
23 流量調整バルブ
24 下部壁材
24a 支柱
26 排液管路
27 吸排気手段
Pv 吸引ポンプ
B ばっ気ブロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽内に膜分離モジュールの下方に散気装置を備えた膜ろ過ユニットが浸漬配置され、散気装置による散気と同時に膜分離モジュールにより固液混合処理液を固液分離し、処理槽内の気液混合処理液の液面の上方に立ち上がるろ過液の吸引管路を介して膜分離モジュールからろ過液を吸引回収する固液混合処理液のろ過液回収装置であって、
前記吸引管路に接続された吸引ポンプが前記処理槽の槽外にあって液面より下方に配設され、
前記吸引ポンプの吐液口に接続される排液管路が、前記液面の上方へと立ち上がったのち下方へと屈曲して延びて前記液面より下方に位置する排液口へと接続され、
前記排液管路の頭頂部に吸排気手段が配されてなる、
ことを特徴とする固液混合処理液のろ過液回収装置。
【請求項2】
前記吸排気手段が、シャトル弁である請求項1記載のろ過液回収装置。
【請求項3】
前記吸排気手段が、急速排気弁である請求項1記載のろ過液回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−209949(P2007−209949A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35181(P2006−35181)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000176741)三菱レイヨン・エンジニアリング株式会社 (90)
【Fターム(参考)】