説明

固溶体を用いる経口経粘膜薬剤投与形態

【課題】 医薬品の経口経粘膜輸送のための処方および方法を提供すること。
【解決手段】 本発明は,溶解剤とともに固溶体中に存在する固体医薬品を含む薬剤処方を提供する。処方は患者の口腔内に投与され,医薬品は患者の口粘膜組織を通した吸収により輸送される。処方および方法は,医薬品の改良された口粘膜輸送を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は,経口経粘膜薬剤輸送系の改良に関する。特に,本発明は,薬学的に活性な物質の経口経粘膜輸送のための固体医薬品投与形態に関し,より詳細には,本発明は,薬学的に活性な物質のより高い溶解速度を与え,したがってより高い吸収速度を与える固体投与形態に関する。さらに,本発明は,固体投与形態の保存中の安定性を損なうことなく,改良された唾液中の溶解度および粘膜吸収を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の説明
固体医薬品投与形態は,当該技術分野においてよく知られている。他の投与形態,例えば溶液(経口または注入)および蒸気またはガス吸入と比較して,経口固体投与形態は最も好ましい投与形態であり,市販の全医薬製品の80パーセントを占める。固体投与形態は,患者または看護者にとって,識別し,取扱い,投与することがより容易である。これらはまた,非侵襲性であり,患者による承諾が多い。
【0003】
薬剤輸送経路に関しては,固体投与形態はさらにいくつかの群に分けることができる:胃腸(GI)管輸送,座剤(結腸,膣および尿道)輸送および経口経粘膜輸送。市販の固体投与形態の大部分は,胃腸輸送用に設計されている。胃腸輸送は,しばしば単に"経口輸送"と表される。固体はまた一般に,坐剤,例えば緩下剤,避妊薬および痔の治療薬として輸送される。口粘膜を通して薬剤を輸送するよう意図された固体投与形態として設計された薬剤処方は比較的少ない。2つのそのような薬剤処方は,Oralet(登録商標)およびActiq(登録商標)である。
【0004】
全体として他の輸送方法に人気があるにもかかわらず,経口経粘膜(OT)輸送は,特に有益な輸送経路である。OT輸送の利点の1つは,これが非侵襲性の薬剤輸送方法である点である。さらに,OT輸送は,侵襲的方法,例えば注入および埋込より,患者の承諾を得やすく,感染のリスクが低く,コストが低い。さらにこれは開始時間,すなわち投与から治療効果までの時間が,投薬経口輸送よりはるかに短い。口腔粘膜を通して吸収される薬剤は,薬剤が胃腸管および肝臓中で代謝される第1通過代謝を回避するであろう。経口経粘膜輸送は簡単であり,最小限の不快性で看護者または患者により投与することができる。
【0005】
種々の固体投与形態,例えば,舌下錠,トローチ,ロゼンジ,棒付きロゼンジ,チューインガム,および頬パッチが,口粘膜組織を通して薬剤を輸送するために用いられている。Reinerらの米国特許5,711,961は,医薬品輸送のためのチューインガムを開示する。Reinerのチューインガム輸送投与形態は,主として,薬剤を他のあまりなじみのない投与形態よりもチューインガム形態で自己投与する傾向にある患者に向けられたものである。ガムはまた,種々の医薬成分の味をマスクするためにも用いることができる。Reinerはまた,薬剤輸送の持続時間を延長するためにガム処方を用いることを開示する。
【0006】
薬剤の経粘膜輸送はまた,接着剤を用いて口腔中の粘膜表面に付着させるパッチを用いて行うことができる。頬パッチを用いる経口経粘膜輸送は,Flockhartらの米国特許5,298,256に開示されている。頬パッチは,"閉鎖的"輸送系として設計することができる。すなわち,パッチの内側の環境条件は,主として処方により調節される。閉鎖的輸送系を用いることにより,例えば,これ以外では実用的ではない促進剤または他の透過性促進剤を処方中で用いることを可能とすることにより,薬剤輸送を容易にすることができる。"開放的"輸送系,例えばロゼンジまたは舌下錠剤においては,薬剤輸送条件は,周囲の環境,例えば,唾液分泌の速度,唾液のpH,または処方により調節できない他の条件により影響される。頬パッチ輸送はまた,短期静脈内注入を模倣しうる薬物動力学的輸送プロファイルを示す。
【0007】
固体投与形態,例えばロゼンジおよび錠剤は,医薬品の経口経粘膜輸送に一般に用いられている。例えば,ニトログリセリン舌下錠剤は長年市販されてきた。舌下錠剤は,少量の強力なニトログリセリンを輸送するために設計され,これはほとんど直ちに溶解し,吸収される。一方,ほとんどのロゼンジまたは錠剤は,典型的には,少なくとも数分間の間に口中で溶解し,このことによりロゼンジがより多く溶解し,薬剤がより多く吸収されるよう設計されている。
【0008】
経粘膜薬剤輸送の棒付きロゼンジの投与形態は,Stanleyらの米国特許4,671,953に開示されている。棒付きロゼンジの投与形態は,非侵襲性であり,特に簡単な輸送の方法を提供することに加え,患者または看護者が口から薬剤を出し入れして用量を調節することを可能とする。この慣習は効果までの投与量(dose−to−effect)と称されており,患者または看護者は,期待される治療効果が達成するまで薬剤の投与を調節する。これはある種の症状,例えば痛み,吐き気,乗物酔い,および麻酔前の前投薬には特に重要である。各患者は,これらの症状を治療するために異なる量の投薬を必要とするからである。このタイプの治療については,どのくらいの量の投薬が十分であるかがわかるのは患者のみである。いったん適切な量の薬剤が送達されれば,患者または看護者はロゼンジを除去し,したがって,薬剤輸送を停止して過剰投与を防止することができる。
【0009】
固体投与量単位は,多くの方法により作成することができる。高容量製造施設においては,固体投与量単位は,直接圧縮,射出成形,凍結乾燥または他の固体加工手法により製造することができる。固体投与量単位の製造には圧縮が最も一般的に用いられている製造プロセスである。固体投与形態の典型的な処方は,活性成分,増量剤,結合剤,香味料,潤滑剤および他の賦形剤から構成される。
【0010】
経口経粘膜輸送の利点から利益を得るためには,固体投与形態は,口腔の独特の環境を考慮に入れて処方しなければならない。ある観点においては,口腔の独特の環境は,薬剤の経粘膜輸送を複雑にしうる。例えば,薬剤投与経路として用いる点に関して口腔環境の重要な観点の1つは,その中に固体投与形態を溶解することができる溶媒が比較的少ないことである。さらに,所定の状況下で生成される唾液の相対的な量は様々に変化しうる。平均では,唾液腺は1日に800−1500mlの唾液を生成する。唾液腺は,休止した刺激されていない状態では1分間に約0.5mlの粘膜型唾液を生成するが,刺激された唾液腺は1分間に約1−3mlを生成する。固体形態の薬剤輸送のために必要な時間,すなわち約10−15分間の間,生成される唾液の総量は10−15mlであり,これは,消化管において生成される潜在的溶媒の600−1000mlと比較して少ない容量である。
【0011】
同様に,固体投与形態が溶解し吸収されることができる時間は制限されている。経口的に(消化管)輸送された固体投与用量は,消化管に数時間残存する。経口経粘膜投与用量は,口腔中に10−15分間しか残存しない。この時間の間に,固体単位が溶解しなければならず,薬剤が放出され吸収されなければならない。これは,経粘膜固体投与形態を処方する上での主要な問題である。
【0012】
粘膜組織を横切る薬剤の吸収は,フィック(Fick)の第1法則の式を用いて記述することができる:
【数1】

式中,dAは,時間dtの間に輸送される薬剤の量であり,Kpは口粘膜組織と薬剤溶液との間の薬剤の分配係数であり,Dは口粘膜組織内の薬剤の拡散係数であり,Sは口腔の表面積であり,hは口粘膜組織の厚さであり,C1およびC2はそれぞれ溶液中および血液循環中の薬剤濃度である。
【0013】
経口経粘膜輸送の能力は,大部分は,薬剤吸収のために利用可能な表面積により制限される。口腔の表面積は200cm2であり,これは他の薬剤輸送経路の表面積,例えば消化管(350,000cm2)および皮膚(20,000cm2)より比較的小さい。
【0014】
薬剤と吸収表面との接触時間は,主として固体単位の溶解速度により調節される。いったん固体単位が溶解すると,まだ吸収されていない薬剤溶液は飲み込まれ,このことによりさらなるOT薬剤吸収は終了する。一般に,固体単位が口腔中に残存することができる時間は10−15分間であるが,この時間は非常に変動し,多くの因子に依存する。接触時間に影響を及ぼす因子のいくつか,例えば患者がどのくらい激しく投与形態を吸い込むかなどは,評価することが困難である。
【0015】
口腔の独特の環境により与えられる困難性に加えて,薬剤の物理化学的特性は,経口経粘膜薬剤輸送に影響を及ぼす難問および複雑性を与えうる。第1に,溶解度,溶解速度,および分配係数が,薬剤を口粘膜組織を介して輸送することができる程度を決定する。溶解度および溶解速度は,薬剤輸送の推進力である濃度勾配を生ずる上で鍵となる観点である。一方,分配係数は,その点まで薬剤輸送速度が分配係数に直接比例するように,増幅剤のように作用する。
【0016】
薬剤の溶解度は,特定の溶媒中における薬剤の固有の特性である。溶質分子と固体相との相対的親和性が溶解度を決定する。すなわち,主として,溶媒−溶質と溶質−溶質分子との間の分子間親和力が溶解度を決定する。薬剤の溶解度は特異的な熱力学的特性である。すなわち,これは薬剤の化学的状態を記述する。熱力学的状態の不均衡は,系中における平衡を再び確立する方向の変化を引き起こすであろう。溶解度は特異的な熱力学的な量であるため,溶解度平衡から離れる変化を引き起こすいかなる不均衡によっても,系が均衡を再び確立する方向の変化が生ずるであろう。
【0017】
分配係数は,2つの相の間の薬剤の濃度比である。分配係数は,主として,薬剤の固有の特性により決定される。経口経粘膜輸送の場合,溶液/組織界面における2つの相の間の薬剤分子の誘因力が,薬剤の分配係数を決定する。溶解度と同様に,分配係数は熱力学的特性であり,いかなる不均衡も,均衡状態を再び確立する方向の変化を引き起こすであろう。
【0018】
薬剤処方の有効性は,薬剤反応に与えられる時間枠に依存する。薬剤の溶解速度は,溶解度および分配係数とは異なり,薬剤の速度論的特性である。それ以外の点では有効な薬剤が,1つの輸送方法については許容しうるが別の輸送方法の特定の時間枠にとっては遅すぎる溶解速度を有するかもしれない。例えば,薬剤の溶解速度は胃腸輸送においては許容可能かもしれないが,溶解速度は経口経粘膜輸送には実用的でないかもしれない。経口経粘膜輸送の時間枠は10−15分間であり,これに対して消化管における時間枠は4−6時間である。
【0019】
薬剤の物理化学的特性は,ある程度までは,周囲環境を変化させることにより操作することができる。例えば,イオン化可能な薬剤の溶解度は,溶液のpHを,薬剤がそのイオン化されている形態にある値に変化させることにより大きく増加させることができる。しかし,1つの特定の物理化学的特性を有利に操作しようとする試みは,他の特性に負の影響を及ぼす可能性がある。例えば,固体薬剤処方の設計においては,製薬者はpHを操作することにより薬剤吸収を増加させようと試みるかもしれないが,変化したpHは処方の他の観点,例えば,薬剤の分配係数に負の影響を及ぼす可能性がある。固体の設計においては,潜在的に有効な固体処方が保存において不安定であり,したがって商業的使用には実用的でなくなる場合,経口経粘膜処方はさらに複雑になりうる。
【0020】
薬剤の設計者が溶解度および溶解速度を高めようと試みるためにはいくつかの方法がある。医薬品業界における一般的な慣例は,共溶媒を用いることである。水性媒体に不溶性の多くの薬剤は,有機溶媒に対してより溶解度が高い。静脈内注入用に設計される処方はしばしば共溶媒を用いて薬剤の溶解度を高める。しかし,固体投与形態は,本来,共溶媒溶解剤を用いて形成することはできない。
【0021】
いくつかの比較的不溶性の薬剤は,他の分子と組み合わせて,より可溶性の複合体を形成することができる。例えば,シクロデキストリンは,あまり可溶性でない疎水性薬剤の溶解度を高めるために多くの処方中で用いられている。誘導化シクロデキストリンは,疎水性の内部および親水性の外部を有するドーナツ型の分子である。疎水性薬剤はシクロデキストリン空洞の内部で保護され,したがって,水性媒体中で溶解性になることができる。
【0022】
複合体形成の1つの重要な欠点は,いったん薬剤分子を他の分子,例えば疎水性薬剤とともにシクロデキストリン中で複合体化すると,薬剤はもはや遊離分子ではありえない。すなわち,薬剤を複合体化させることにより,薬剤を溶液中に入れることができるが,複合体はしばしば吸収特性があまりよくない。これは,シクロデキストリン複合体化薬剤についてしばしば生ずる。薬剤単独では吸収されることができるかもしれないが,薬剤/シクロデキストリン複合体はそのサイズが大きいため,粘膜を通して吸収されるには大きすぎる。
【0023】
イオン化可能な弱酸または弱塩基については,溶解度および溶解速度を操作するさらに別の方法が存在する。弱酸または弱塩基は,それぞれ塩基または酸と反応して,塩を形成することができる。イオン化されている塩の形は,ほぼ常に,イオン化されていない形より高い溶解度および溶解速度を有する。多くの場合,これらはまた化学的または物理学的により安定である。しかし,イオン化されている形はほぼ常にイオン化されていない形より低い分配係数を有し,したがって,口粘膜組織によってあまりよく吸収されない。したがって,溶解度を増加させるために,弱酸または塩基をイオン化されている形に変換すると,吸収が低下する。
【0024】
処方のpHを調節する一般的な方法は緩衝系を用いることである。緩衝系は,水素イオン供与体(酸)およびコンジュゲート水素イオン受容体(塩基)から構成される。適切な緩衝系はpHを安定化させる。しかし,pHの最適化により,一般に,経口経粘膜薬剤輸送のための溶解度および分配係数が低下する。
【0025】
薬剤の溶解性,溶解度および安定性を増加させ,薬剤吸収速度をなお維持することが可能な固体経口経粘膜投与形態を設計することが有益であろう。また,処方の概念および上述の特質を用いる固体投与形態単位を作成するための製造方法を提供することも有益であろう。
【特許文献1】米国特許5,711,961
【特許文献2】米国特許5,298,256
【特許文献3】米国特許4,671,953
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の概要および目的
上述を鑑みて,本発明の少なくとも1つの態様は,口腔の独特の環境を考慮した,固体を経口経粘膜で薬剤輸送する方法および処方を提供する。
【0027】
本発明の少なくとも1つの態様は,溶解性を改良することができる,固体を経口経粘膜輸送するための方法および処方を提供する。
【0028】
また,本発明の少なくとも1つの態様は,保存中の処方の安定性を改良することができる,固体を経口経粘膜輸送するための方法および処方を提供する。
【0029】
さらに,本発明の少なくとも1つの態様は,口粘膜組織を通る薬剤の吸収を増加させる,固体を経口経粘膜輸送するための方法および処方を提供する。
【0030】
本発明の少なくとも1つの態様は,医薬品の溶解性をよりよく調節することができる,固体を経口経粘膜輸送するための方法および処方を提供する。
【0031】
さらに,本発明の少なくとも1つの態様は,吸収を促進するために保存における安定性を低下させない,固体を経口経粘膜輸送するための方法および処方を提供する。
【0032】
本発明は,口腔の組織中に,または口粘膜組織を通して循環系に吸収されることができる医薬品または薬剤を含む。医薬品または薬剤は固体形態であり,これも固体形態である溶解剤と組み合わせて,固溶体を得る。固溶体処方は,薬剤の製造,保存,投与および口粘膜組織を通る輸送を容易にするために,必要に応じてさらに緩衝液および他の賦形剤と組み合わせることができる。処方は,種々の経口経粘膜輸送用の投与形態,例えば,錠剤,ロゼンジ,棒付きロゼンジ,チューインガム,および頬または粘膜パッチで用いることができる。
【0033】
本発明は,限定された量の溶媒,比較的短い薬剤輸送時間,および口腔中のpHレベルが薬剤の吸収を有意に阻止しないように,口腔の独特の環境中で有効に作用するよう設計される。処方はまた,固溶体中の薬剤の溶解性,溶解度,および安定性を改良するよう設計される。本発明の利点により,薬剤処方は経口経粘膜輸送におけるより高いレベルの薬剤吸収を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図面の簡単な説明
本発明の前述のおよび他の目的および特徴は,図面を考慮して,以下の説明および特許請求の範囲からより完全に明らかとなるであろう。これらの図面は本発明の典型的な態様を描写するものであり,したがって,本発明の範囲を限定するものと考えるべきではないことが理解される。添付の図面を使用して,本発明をさらに特定的に詳細に説明する。
【0035】
図1は,本発明により輸送されたピロキシカムの,従来技術を用いる輸送と比較した血清薬剤濃度−時間のプロファイルを示すグラフである。
【0036】

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は,本発明により輸送されたドロペリドールlの,従来技術を用いる輸送と比較した血漿薬剤濃度−時間のプロファイルを示すグラフである。
【0037】
図3は,本発明により輸送されたエトミデートの,従来技術を用いる輸送と比較した血清薬剤濃度−時間のプロファイルを示すグラフである。
【0038】
好ましい態様の詳細な説明
本発明の図面に一般に記載され記述される本発明の成分は,広範な種類の異なる形態で配置および設計することができることが容易に理解されるであろう。すなわち,図1−3に示されるような,本発明の処方および方法の態様についての以下のより詳細な説明は,特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を限定することを意図するものではなく,本発明の現在好ましい態様の代表例にすぎない。
【0039】
本発明は,経口経粘膜薬剤輸送のための固体投与形態を製造する新規な方法および処方に関する。より詳細には,本発明は,経口経粘膜薬剤輸送のための固溶体処方を製造する方法および処方に関する。本発明は,従来技術処方と比較して多数の利点を提供する。固溶体処方は,口粘膜の膜を介して輸送されることができる医薬品または薬剤,および分子レベルで医薬品と混合することができる溶解剤を含む。他の医薬成分を必要に応じて処方に加えてもよい。固溶体処方は,改良された溶解速度,溶解度,および安定性を提供し,最終的には改良された経口経粘膜薬剤輸送を提供する。
【0040】
本発明の医薬品は,生理学的,病原的および精神的状態の診断,予防,管理,および治療のために用いられる任意の薬剤物質であることができる。非常に多様な薬剤の種類および特定の薬剤を本発明の医薬品または薬剤として用いることができることが理解される。薬剤の種類には,限定されないが,アンドロゲン,エストロゲン,非ステロイド抗炎症剤,抗高血圧薬,鎮痛薬,抗うつ薬,抗生物質,抗癌剤,局所麻酔薬,制吐薬,抗感染症薬(抗感染薬),避妊薬,抗糖尿病薬,ステロイド,抗アレルギー剤,片頭痛薬,禁煙用薬,および抗肥満薬.特定の薬剤には,限定されないが,ピロキシカム,ドロペリドール,エトミデート,ニコチン,テストステロン,エストラジオール,ニトログリセリン,クロニジン,デキサメタゾン,ウインターグリーン油,テトラカイン,リドカイン,フェンタニル,サフェンタニル,プロゲステロン,インスリン,ビタミンA,ビタミンC,ビタミンE,プリロカイン,ブピバカイン,スマトリプタン,ジヒドロエルゴタミン,COX2阻害剤,およびペプチドが含まれる。
【0041】
溶解剤または薬剤の選択は,医薬品,ならびに固溶体を作成するために用いられるプロセス,およびその意図される用途の特徴(例えば,OT輸送については味)により決定されるであろう。溶解剤の主な機能は,医薬品と組み合わされて固溶体を形成することである。したがって,溶解剤および医薬品は,分子レベルで混合することができなければならない。例えば,共溶融プロセスを用いて固溶体を作成する場合,溶解剤は医薬品をその中に溶解または溶融することができる溶媒として作用することができなければならない。部分湿潤顆粒形成プロセスを用いる場合,溶解剤および医薬品は,このプロセス用の適切な溶媒に溶解することができなければならない。
【0042】
溶解剤はまた,医薬品の安定性を増強させてもよい。溶解剤は医薬品と分子レベルで混合されるため,これは医薬品が処方または環境中の他の化学物質と接触することを防止する物理的障壁をも提供する。例えば,医薬品の主な分解反応が加水分解である場合,非吸湿性の溶解剤を用いると,水が医薬品にアクセスすることを妨害することができる。したがって,加水分解反応が防止される。
【0043】
処方中で用いられる医薬品および他の成分に依存して,種々の薬学的成分を溶解剤として用いることができる。溶解剤には,限定されないが,アカシア,アルギン酸,カルボマー,カルボキシメチルセルロース,カルシウム,ナトリウムカルボキシメチルセルロース,微小質セルロース,セルロース,デキストレート,デキストリン,デキストロース,エチルセルロース,フルクトース,ゼラチン,グアーガム,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ラクチトール,ラクトース,レシチン,マルトデキストリン,マンニトール,メチルセルロース,ポロキサマー,ポリエチレングリコール,ポリメタクリレート,ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリビニルアルコール,ポビドン,アルギン酸プロピレングリコール,アルギン酸ナトリウム,アスコルビン酸ナトリウム,スターチグリコール酸ナトリウム,ソルビトール,スターチ,スターチ(前ゼラチン化),スクロース,トラガカント,トリメチルグリシン,キサンタンガム,キシリトール,およびゼインが含まれる。
【0044】
固溶体を作成するためにはいくつかの方法が存在し,例えば,限定されないが,湿潤顆粒形成,共溶融,噴霧乾燥,および凍結乾燥がある。
【0045】
本発明の1つの態様においては,湿潤顆粒形成のプロセスを用いて固溶体を作成する。湿潤顆粒形成のプロセスは,いくつかの工程として記述することができる:数種類の成分を溶媒の存在下で秤量およびブレンドし,混合物を乾燥して固体とし,そして固体を適切なサイズに破砕する。
【0046】
湿潤顆粒形成の秤量およびブレンドの工程においては,適切な量の薬剤,溶解剤および溶媒をよく混合する。追加の成分を加えて成分の混合を容易にしてもよい。この工程の鍵は,薬剤および溶解剤の両方がその中に溶解することができる溶媒を見いだすことである。この工程の最終結果は,薬剤および溶解剤が分子レベルで混合されている,微細にブレンドされた混合物である。
【0047】
次に,混合物を乾燥し,固体単位に圧縮することができるように,再分類して粉体とする。混合物,溶媒,および装置に依存して,湿潤顆粒形成混合物を乾燥するいくつかの方法が存在する。通常,製粉およびふるい分け工程を用いて,圧縮用に適切な粒子サイズ分布であることを確実にする。
【0048】
湿潤顆粒状粉体はさらに他の成分と混合して,全体の処方を形成することができる。この場合,処方は,部分湿潤顆粒形成プロセスにより作成される。部分湿潤顆粒形成を用いて作成された処方は,イオン化可能な化合物を製造する独特の機会を提供する。上述したように,イオン化可能な薬剤の溶解速度,溶解度,安定性および透過性は,系のpHにより大きく影響される。一般に,イオン化されている形の薬剤は,イオン化されていない形より高い溶解速度および溶解度,よりよい安定性を有するが,より低い透過性を有する。部分湿潤顆粒形成処方は,その局所的環境における薬剤の溶解を容易にし,薬剤吸収を容易にするように全体の処方を調節する特定の環境を提供することができる。鍵となるものは,固体処方におけるpH隔離である。湿潤顆粒化粒子のpHは,薬剤がイオン化されているように,すなわち塩基性薬剤については低いpHに,酸性薬剤については高いpHに調節する。全体の処方のpHは,薬剤吸収が最適化されるように調節する。保存の間,薬剤はイオン化されており安定である。口腔中で溶解すると,薬剤の微小環境はイオン化されている形を好むため,薬剤はより高い溶解速度および溶解度を有する。いったん薬剤が溶液中に入ると,薬剤のイオン化は全体的環境により調節され,これは処方の他の構成成分により調節される。
【0049】
本発明の別の態様においては,共溶融のプロセスを用いて固溶体を作成する。このプロセスにおいては,溶解剤を加熱し溶融させる。溶解剤は,溶融した状態では,その中に薬剤を溶解するかまたは共溶融する溶媒として作用することができる。次に,薬剤および溶解剤の混合物を冷却し,固化させる。薬剤および溶解剤の固溶体は,さらに圧縮可能な粉体に加工することができる。また,他の成分,例えば,さらにpHを操作することを可能とする成分を共溶融した粉体に加えて,薬剤処方を完成させることができる。
【0050】
本発明のさらに別の態様においては,凍結乾燥のプロセスを用いて固溶体を作成する。このプロセスにおいては,薬剤および溶解剤を水性溶液中に溶解させる。溶液を急速に冷凍する。次に,冷凍固体を真空チャンバ内に入れて,ここで昇華により固体から水を除去する。得られる粉体は薬剤および溶解剤の固溶体である。
【0051】
本発明のさらに別の態様においては,噴霧乾燥のプロセスを用いて固溶体を作成する。このプロセスにおいては,薬剤および溶解剤を溶液中に溶解させる。次に溶液をチャンバ内に噴霧する。液滴が空中にある間に溶媒が蒸発する。その結果,薬剤および溶解剤から構成される細かい粉体が得られる。
【0052】
薬剤および溶解剤の固溶体を作成するためには他の多くのプロセス(すなわち,薬剤と溶解剤とを分子レベルで混合するプロセス)が存在する。プロセスの選択は,主として薬剤および溶解剤に依存する。利用可能な装置およびコストもまたプロセス選択において重要な役割を果たすであろう。
【0053】
本発明は,経口経粘膜処方において固溶体を用いて,薬剤の溶解速度を増加させることを提供する。薬剤が固溶体の形態にあるため,溶解速度はもはや薬剤そのものの特性ではなく,固溶体の溶解プロファイルにより調節される。溶解剤は通常,速い溶解プロファイルに基づいて選択されるため,固溶体マトリクスは通常は迅速に溶解して,薬剤を口腔中に放出する。本発明は,固体単位の溶解および崩壊速度を調節することにより,薬剤の溶解および放出を調節するメカニズムを提供する。
【0054】
本発明また,溶解の際に過飽和溶液を形成することにより,ある種の薬剤についてより高い溶解度を提供する。上述したように,固溶体の形態の薬剤および溶解剤は分子レベルで混合されている。溶解剤は,通常はその速い溶解速度に基づいて選択されるため,溶解剤が溶解した時に,すべての薬剤分子は溶液の薬剤濃度がその溶解度を越えるように溶媒中に存在する。過飽和溶液は,沈澱が生ずるまで存在することができる。沈澱は,三段階のプロセスとして見ることができる:1)溶液中の薬剤濃度がその溶解度より高くなり;2)薬剤核が形成され;そして3)核が成長して結晶となる。より詳細には,薬剤濃度は熱力学的パラメータであり,これが結晶が成長するか溶解するかを決定する。薬剤分子の密集(速度論的プロセス)の結果として,または溶液中の別のある固体の分子の密集の結果として,核が形成される。結晶成長は,明確に速度論的プロセスであり,したがって,沈澱の全体のプロセスは,時間に依存する速度論的プロセスであり,これは即時的には生じない。薬剤の溶解と沈澱との間の時間,薬剤の濃度はその溶解度より高く,このため,溶液は過飽和する。したがって,本発明は,過飽和溶液を作成して薬剤吸収を改良する方法を提供する。
【0055】
本発明はまた,固体処方において薬剤を安定化させる方法を提供する。薬剤は薬剤処方全体中の微小環境中で加工され存在するため,薬剤の安定性を高めるのに好ましい微小環境を作成し,残りの処方を用いて薬剤吸収に好ましい環境を作成することにより,薬剤の吸収を促進することが可能である。すなわち,固溶体薬剤処方は,薬剤輸送を低下させることなく,安定性を高めることができる。したがって,隔離された固体処方は,本発明の独特の利点である。
【0056】
本発明を効率的に作用させるためには,溶解可能なマトリックス中に取り込まれた薬剤が,単独で,または環境pHの適当な調節,または他の化学的改変,または適当な透過促進剤との組み合わせにより,粘膜を透過することができることが必要である。
【0057】
本発明は,中枢神経系に影響を及ぼす種々の薬剤に適用することができる。例えば,本発明は,オピオイドアゴニスト(例えば,フェンタニル,アルフェンタニル,サフェンタニル,ロフェンタニル,およびカルフェンタニル),オピオイドアンタゴニスト(例えば,ナロキソンおよびナルブフェン),ブチロフェノン(例えば,ドロペリドールおよびハロペリドール);ベンゾジアゼピン(例えば,バリウム,ミダゾラム,トリアゾラム,オキサゾラム,およびロラゼパム);GABA刺激剤(例えば,エトミデート);バルビチュレート(例えば,チオペンタール,メトヘキシタール,チアマゾール,ペントバルビタール,およびヘキサバルビタール);ジイソプロピルフェノール薬剤(例えばジプリバン);および他の中枢神経系作用性薬剤,例えばレボドーパの投与において容易に用いることができる。他の薬剤も単独でまたは組み合わせで用いることができ,これらも本発明の範囲内であることが理解されるであろう。
【0058】
表1は,本発明に組み込むのに適しているいくつかのCNS作用性薬剤,ならびにこれらの薬剤のいくつかの特性を示す。
【0059】
表1
【表1】

【0060】
心臓血管および腎臓血管系に効果を有する薬剤もまた,本発明を用いて投与することができる。そのような薬剤のいくつかの例が表2に挙げられる。
【0061】
表2
【表2】

【0062】
前述に加えて,本発明を用いて投与することができる多くの他の薬剤が存在する。そのような薬剤の例は,表3に挙げられる。
【0063】
表3
【表3】

【0064】
前述の薬剤に加えて,ある種の高分子薬剤(例えば,ベータ−エンドルフィン,エンケファリン,ブラジキニン,アニオテンシンI,性腺刺激ホルモン,副腎皮質刺激ホルモン(ACTH),カルシトニン,副甲状腺ホルモン,および成長ホルモン),多糖類(例えばヘパリン),抗原,抗体,および酵素を経粘膜投与用に適合させることができ,これらも本発明の範囲内である。
【0065】
本発明の処方において用いることができる医薬成分には,限定されないが,吸収剤,緩衝化剤(例えば,リン酸塩緩衝液,炭酸塩緩衝液,トリス緩衝液,酒石酸塩緩衝液,ホウ酸塩緩衝液,酢酸塩緩衝液,またはマレイン酸塩緩衝液),着色剤,香味剤,溶媒および共溶媒,被覆剤,直接圧縮賦形剤,崩壊剤,滑化剤,潤滑剤,不透明化剤,光沢剤,懸濁剤,甘味剤,抗粘着剤,結合剤,およびカプセル希釈剤が含まれ,成分はまた抗真菌保存剤,抗菌保存剤,透明剤,乳化剤,抗酸化剤,摩砕剤,可塑剤,界面活性剤,等張剤,および増粘剤を含んでいてもよい。
【実施例1】
【0066】
1つの実際の実験においては,本発明を用いる医薬品の経口経粘膜輸送を,従来技術の薬剤処方の物理学的混合技術を用いる同じ医薬品の経口経粘膜輸送と比較した。薬剤処方は,以下の成分:ピロキシカム,マンニトール,Emdex(登録商標)(デキストレート,水和),水酸化ナトリウム,およびステアリン酸マグネシウムを,表Aに示される重量%および単位あたりの量で含んでいた。
【0067】
表A ピロキシカム経口経粘膜輸送処方
【表4】

【0068】
物理学的混合処方は,従来技術の方法により製造した:(1)ステアリン酸マグネシウム以外のすべての成分を容器内で混合し,(2)ステアリン酸マグネシウムを他の成分と混合し,(3)前記成分をカーバープレスを用いて3,000psiで圧縮する。
【0069】
本発明の処方を製造するためには,湿潤顆粒形成のプロセスを用いた。この実験は以下の工程を含んだ:(1)ピロキシカム,マンニトール,水酸化ナトリウムおよび水を混合し,(2)混合物をオーブン中で40℃で48時間乾燥して乾燥ペーストを形成し,(3)乾燥ペーストをすりつぶし,(4)ペーストをステアリン酸マグネシウム以外の残りの成分と混合し,(5)ステアリン酸マグネシウムを加え,再び混合し,そして(6)前記成分をカーバープレスを用いて3,000PSIで圧縮する。インビボのイヌでの実験の一部として,以下の物理学的混合処方(PM)および湿潤顆粒形成処方(WG)を経口経粘膜で投与した。この実験の結果は,以下の表B−1およびB−2ならびに図1に示される。
【0070】
表B−1 イヌでの実験における物理学的混合処方のOT輸送後のピロキシカム血清濃度(ng/ml)
【表5】

【表6】

【0071】
表B−2 イヌでの実験における湿潤顆粒形成処方のOT輸送後の血清ピロキシカム濃度(ng/ml)
【表7】

【表8】

【0072】
データは,最大血中濃度(Cmax),および生物利用性(AUC)の両方が増加したことを示す。Cmaxの増加は2倍より大きく,AUCの増加はほぼ2倍であった。データはまた,血流中へのより速い吸収(tmax)を示す。
【実施例2】
【0073】
別の実験においては,本発明を用いて共溶融の手法を用いて経口経粘膜で輸送された薬剤ドロペリドールの血漿濃度を,薬剤処方を物理学的に混合する従来技術の手法を用いて経口経粘膜で輸送されたドロペリドールの血漿濃度と比較した。成分は,ドロペリドール,ポリエチレングリコール,ソルビトール中クエン酸,および溶媒を含んでいた。成分は,表Cに示される量で混合した。
【0074】
表C
【表9】

【0075】
従来技術の処方は,成分を物理学的に混合し,これを圧縮して固体単位とすることにより製造した。本発明の処方は,ドロペリドールおよびPEGを90℃の水浴中でPEGが溶融するまで加熱することにより製造した。次に混合物を冷却し,固化し,製粉した。共溶融粉体を他の成分と混合し,圧縮して固体単位とした。医薬品は,インビボのイヌの実験の一部として,経口経粘膜で投与した。被検体の血漿薬剤濃度(表D)を6時間の間測定した。
【0076】
表D イヌへのOT輸送後の血漿ドロペリドール濃度ドロペリドール物理学的混合物vs.共溶融
【表10】

【0077】
表Dおよび図2に示されるように,データは,本発明の薬剤が,物理学的混合処方と比較して,より速い速度でかつより高い程度で吸収されることを強く示唆する。本発明の処方は,従来技術の処方と比較して,全身循環により容易に吸収され,より多い量で吸収される。
【実施例3】
【0078】
共溶融プロセスを用いるさらに別の実験においては,薬剤エトミデートの本発明を用いる経口経粘膜輸送を,従来技術の方法を用いる輸送と比較した。薬剤処方は,成分としてエトミデート,PEGおよびソルビトールを用いて調製した。処方中の各成分の量は表Eに示される。
【0079】
表E
【表11】

【0080】
従来技術の処方は,物理学的混合のプロセスを用いて調製した。本発明の処方は,共溶融プロセスを用いて,エトミデートを含有する固溶体を作成した。イヌのインビボ実験の一部として2つの処方を経口経粘膜で投与した。薬剤の血清濃度は,90分間にわたり測定した。結果は表F−1およびF−2および図3に示される。
【0081】
表F−1 共溶融処方のOT輸送後のエトミデートの血清濃度(ng/ml)
【表12】

【0082】
表F−2 物理学的混合処方のOT輸送後のエトミデートの血清濃度(ng/ml)
【表13】

【0083】
他の実験と同様に,データは,本発明を用いて輸送したとき,エトミデートがより速い速度でかつより多く吸収される(生物利用性が増加)ことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は,本発明により輸送されたピロキシカムの血清薬剤濃度−時間のプロファイルを示すグラフである。
【図2】図2は,本発明により輸送されたドロペリドールlの血漿薬剤濃度−時間のプロファイルを示すグラフである。
【図3】図3は,本発明により輸送されたエトミデートの血清薬剤濃度−時間のプロファイルを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良された経口経粘膜固体投与形態の薬剤輸送処方であって,口腔中に見いだされる溶媒中で溶解速度を有する,口粘膜組織に吸収されうる医薬品,および口腔中に見いだされる溶媒中で溶解速度を有する溶解剤,を含み,前記溶解剤の前記溶解速度は前記医薬品の前記溶解速度より大きく,かつ前記医薬品は前記溶解剤とともに固溶体の形態にあることを特徴とする処方。
【請求項2】
緩衝系をさらに含む,請求項1記載の処方。
【請求項3】
前記緩衝系が,前記医薬品の溶解後に,前記医薬品の有意な割合をイオン化されていない形に維持することができる,請求項2記載の処方。
【請求項4】
前記系が,リン酸塩,炭酸塩,トリス,酒石酸塩,ホウ酸塩,酢酸塩,またはマレイン酸塩緩衝液からなる群より選択される,請求項2記載の処方系。
【請求項5】
前記溶解剤が,保存中に,医薬品と前記緩衝液との間の物理的障壁を提供する,請求項1記載の輸送系。
【請求項6】
前記医薬品がイオン化可能ではない,請求項4記載の処方。
【請求項7】
前記医薬品が有機酸である,請求項6記載の処方。
【請求項8】
前記医薬品が有機塩基である,請求項6記載の処方。
【請求項9】
前記医薬品が,アンドロゲン,エストロゲン,非ステロイド系抗炎症剤,抗高血圧薬,鎮痛薬,抗うつ薬,抗生物質,抗癌剤,局所麻酔薬,制吐薬,抗感染症薬,避妊薬,抗糖尿病薬,ステロイド,抗アレルギー薬,片頭痛薬,禁煙用薬,および抗肥満薬からなる群より選択される,請求項1記載の処方。
【請求項10】
前記医薬品が,イオン化されていない形態の薬剤より保存安定性が高くかつ溶媒中で溶解度が高いイオン化された形態を有する,請求項1記載の処方。
【請求項11】
前記医薬品が,イオン化されている形態の薬剤より透過性が高いイオン化されていない形態を有する,請求項1記載の処方。
【請求項12】
前記医薬品が,共溶融のプロセスにより前記溶解剤とともに溶液中に導かれて固溶体を形成している,請求項1記載の処方。
【請求項13】
前記医薬品が,溶解および凍結乾燥のプロセスにより前記溶解剤とともに溶液中に導かれて固溶体を形成している,請求項1記載の処方。
【請求項14】
前記医薬品が,湿潤顆粒形成のプロセスにより前記溶解剤とともに溶液中に導かれて固溶体を形成している,請求項1記載の処方。
【請求項15】
前記医薬品が,部分的湿潤顆粒形成のプロセスにより前記溶解剤とともに溶液中に導かれて固溶体を形成している,請求項1記載の処方。
【請求項16】
前記医薬品が,溶解および噴霧乾燥のプロセスにより前記溶解剤とともに溶液中に導かれて固溶体を形成したものである,請求項1記載の処方。
【請求項17】
前記溶解剤とともに溶液中に存在する前記医薬品が,前記医薬品についてより速い溶解速度を与える,請求項1記載の処方。
【請求項18】
前記溶解剤とともに溶液中に存在する前記医薬品が,吸収のためにより遊離した薬剤を与える,請求項1記載の処方。
【請求項19】
前記溶解剤とともに溶液中に組み合わされている前記医薬品が前記医薬品の増加した溶解度を与える,請求項1記載の処方。
【請求項20】
前記溶解剤が,アカシア,アルギン酸,カルボマー,カルボキシメチルセルロース,カルシウム,ナトリウムカルボキシメチルセルロース,微小質セルロース,セルロース,デキストレート,デキストリン,デキストロース,エチルセルロース,フルクトース,ゼラチン,グアーガム,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ラクチトール,ラクトース,レシチン,マルトデキストリン,マンニトール,メチルセルロース,ポロキサマー,ポリエチレングリコール,ポリメタクリレート,ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリビニルアルコール,アルギン酸プロピレングリコール,アルギン酸ナトリウム,アスコルビン酸ナトリウム,スターチグリコール酸ナトリウム,ソルビトール,スターチ,スターチ(前ゼラチン化),スクロース,トラガカント,トリメチルグリシン,キサンタンガム,キシリトール,またはゼインからなる群より選択される,請求項1記載の処方。
【請求項21】
前記溶解剤が前記医薬品の溶解速度を調節する,請求項1記載の輸送系。
【請求項22】
前記処方が,経口経粘膜パッチ中に配置されている,請求項1記載の処方。
【請求項23】
前記処方がロゼンジ/トローチの投与形態にある,請求項1記載の処方。
【請求項24】
前記処方が棒付きの投与形態にある,請求項1記載の処方。
【請求項25】
前記処方がチュイーンガムの投与形態にある,請求項1記載の処方。
【請求項26】
吸収剤,緩衝化剤,着色剤,香味剤,溶媒および共溶媒,被覆剤,直接圧縮賦形剤,崩壊剤,滑化剤,潤滑剤,不透明化剤,光沢剤,懸濁剤,甘味剤,抗粘着剤,結合剤,およびカプセル希釈剤,抗真菌保存剤,抗菌保存剤,透明剤,乳化剤,抗酸化剤,摩砕剤,可塑剤,界面活性剤,等張剤,および増粘剤からなる群より選択される少なくとも1つの医薬成分をさらに含む,請求項1記載の輸送系。
【請求項27】
前記医薬品が,ピロキシカム,ドロペリドール,エトミデート,ニコチン,テストステロン,エストラジオール,ニトログリセリン,クロニジン,デキサメタゾン,ウインターグリーン油,テトラカイン,リドカイン,フェンタニル,サフェンタニル,プロゲステロン,インスリン,ビタミンA,ビタミンC,ビタミンE,プリロカイン,ブピバカイン,スマトリプタン,ジヒドロエルゴタミン,COX2阻害剤,およびペプチドからなる群より選択される,請求項1記載の処方。
【請求項28】
前記医薬品が,メトヘキシタール,ペントバルビタール,チアミラール,チオペンタール,フェンタニル,アルフェンタニル,サフェンタニル,ロフェンタニル,カルフェンタニル,ナロキソン,エパム,ロラゼパム,ミダゾラム,オキサゼパム,トリアゾラム,ドロペリドール,プロパニジド,エトミデート,プロポフォル,ケタミン,ジプリバン,ブレチリウム,カプトプリル,クロニジン,ドーパミン,エナラプリル,エスモロール,フロセミド,イソソルビド,ラベタロール,リドカイン,メトラゾン,メトプロロール,ナドロール,ニフェジピン,ニトログリセリン,ニトロプルシド,プロプラノロール,ベンズキナミド,メクリジン,メトクロプラミド,プロクロルペラジン,トリメトベンズアミド,クロトリマゾール,ナイスタチン,カルビドーパ,レボドーパ,フクラルフェート,アルブテロール,アミノフィリン,ベクロメタゾン,ジフィリン,エピネフリン,フルニソリド,イソエタリン,イソプロテレノールHCl,メタプロテレノール,オキシトリフィリン,テルブタリン,テオフィリン,エルゴタミン,メチセルギド,プロプラノロール,スロクチジル,エルゴノビン,オキシトシン,デスモプレシン,酢酸塩,リプレシン,バソプレシン,インスリン,ベータ−エンドルフィン,エンケファリン,ブラジキニン,アニオテンシンI,性腺刺激ホルモン,副腎皮質刺激ホルモン(ACTH),カルシトニン,副甲状腺ホルモン,成長ホルモン,多糖類(例えばヘパリン),抗原,抗体,および酵素からなる群より選択される,請求項1記載の処方。
【請求項29】
前記医薬品が,バルビチュレート,オピオイドアゴニスト,ベンゾジアゼピン,ブテロフェノン,オイゲノール,GABA刺激剤,置換フェノール,フェンシクリジン,抗不整脈薬,ACE阻害剤,抗高血圧薬,腎臓血管薬,抗高血圧薬/抗狭心症薬,利尿薬,抗狭心症薬,抗低血圧薬,制吐薬,抗真菌剤,レボドーパ含有抗パーキンソン病薬,抗パーキンソン病薬,抗分泌薬,気管支拡張薬,片頭痛薬,分娩促進薬,抗利尿薬,および抗高血糖症薬からなる群より選択される薬剤群に属する,請求項1記載の処方。
【請求項30】
医薬品を経口経粘膜輸送する方法であって,溶解剤とともに固溶体中に存在する固体医薬品を含む薬剤処方を用意し,前記薬剤処方を患者の口腔中に投与し,そして前記医薬品を患者の口粘膜組織を通る吸収により輸送する,の各工程を含む方法。
【請求項31】
薬剤処方を用意する工程が緩衝系をさらに含む,請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記緩衝液が,前記医薬品のイオン化が前記緩衝系により調節されるようにpHレベルを維持する,請求項30記載の方法。
【請求項33】
前記薬剤処方が少なくとも1つの賦形剤をさらに含む,請求項30記載の方法。
【請求項34】
前記医薬品がイオン化可能でない化合物である,請求項30記載の方法。
【請求項35】
前記医薬品が有機塩基である,請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記医薬品が有機酸である,請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記医薬品が,アンドロゲン,エストロゲン,非ステロイド抗炎症剤,抗高血圧薬,鎮痛薬,抗うつ薬,抗生物質,抗癌剤,局所麻酔薬,制吐薬,抗感染剤,避妊薬,抗糖尿病薬,ステロイド,抗アレルギー薬,抗偏頭痛薬,禁煙用薬,および抗肥満薬からなる群より選択され,特定の薬剤が,限定されないが,ピロキシカム,ドロペリドール,エトミデート,ニコチン,テストステロン,エストラジオール,ニトログリセリン,クロニジン,デキサメタゾン,ウインターグリーン油,テトラカイン,リドカイン,フェンタニル,サフェンタニル,プロゲステロン,インスリン,ビタミンA,ビタミンC,ビタミンE,プリロカインを含みうる,請求項33記載の方法。
【請求項38】
前記溶解剤が,アカシア,アルギン酸,カルボマー,カルボキシメチルセルロース,カルシウム,ナトリウムカルボキシメチルセルロース,微小質セルロース,セルロース,デキストレート,デキストリン,デキストロース,エチルセルロース,フルクトース,ゼラチン,グアーガム,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ラチトール,ラクトース,レシチン,マルトデキストリン,マンニトール,メチルセルロース,ポロキサマー,ポリエチレングリコール,ポリメタクリレート,ポリオキシエチレンアルキル,エーテル,ポリビニルアルコール,ポビドン,アルギン酸プロピレングリコール,アルギン酸ナトリウム,アスコルビン酸ナトリウム,スターチグリコール酸ナトリウム,ソルビトール,スターチ,スターチ(前ゼラチン化),スクロース,トラガカント,トリメチルグリシン,キサンタンガム,キシリトール,またはゼインからなる群より選択される,請求項30記載の方法。
【請求項39】
前記医薬品および前記溶解剤が,共溶融のプロセスにより溶液中で組み合わされている,請求項30記載の方法。
【請求項40】
前記医薬品および前記溶解剤が,溶解および凍結乾燥のプロセスにより溶液中で組み合わされている,請求項30記載の方法。
【請求項41】
前記医薬品および前記溶解剤が,湿潤顆粒形成のプロセスにより溶液中で組み合わされている,請求項30記載の方法。
【請求項42】
前記医薬品および前記溶解剤が,部分的湿潤顆粒形成のプロセスにより溶液中で組み合わされている,請求項30記載の方法。
【請求項43】
前記医薬品および前記溶解剤が,溶解および噴霧乾燥のプロセスにより溶液中で組み合わされている,請求項27記載の方法。
【請求項44】
前記薬剤処方を患者の口腔内に投与する前記工程が,前記薬剤処方を口腔内に配置することを含み,前記薬剤処方はロゼンジトローチの投与形態を有する,請求項30記載の方法。
【請求項45】
前記薬剤処方を投与する工程が,前記薬剤処方を患者の口腔内に配置することを含み,前記薬剤処方は棒付きの投与形態を有する,請求項30記載の方法。
【請求項46】
前記医薬品を輸送する工程が,前記薬剤処方を,前記薬剤処方が溶解するのに十分な時間患者の口腔中に保持することを含む,請求項30記載の方法。
【請求項47】
前記口粘膜組織が患者の咽頭に位置する,請求項30記載の方法。
【請求項48】
前記口粘膜組織が患者の食道内にある,請求項30記載の方法。
【請求項49】
前記医薬品が,メトヘキシタール,ペントバルビタール,チアミラール,チオペンタール,フェンタニル,アルフェンタニル,サフェンタニル,ロフェンタニル,カルフェンタニル,ナロキソン,エパム,ロラゼパム,ミダゾラム,オキサゼパム,トリアゾラム,ドロペリドール,プロパニジド,エトミデート,プロポフォル,ケタミン,ジプリバン,ブレチリウム,カプトプリル,クロニジン,ドーパミン,エナラプリル,エスモロール,フロセミド,イソソルビド,ラベタロール,リドカイン,メトラゾン,メトプロロール,ナドロール,ニフェジピン,ニトログリセリン,ニトロプルシド,プロプラノロール,ベンズキナミド,メクリジン,メトクロプラミド,プロクロルペラジン,トリメトベンズアミド,クロトリマゾール,ナイスタチン,カルビドーパ,レボドーパ,フクラルフェート,アルブテロール,アミノフィリン,ベクロメタゾン,ジフィリン,エピネフリン,フルニソリド,イソエタリン,イソプロテレノールHCl,メタプロテレノール,オキシトリフィリン,テルブタリン,テオフィリン,エルゴタミン,メチセルギド,プロプラノロール,スロクチジル,エルゴノビン,オキシトシン,デスモプレシン,酢酸塩,リプレシン,バソプレシン,インスリン,ベータ−エンドルフィン,エンケファリン,ブラジキニン,アニオテンシンI,性腺刺激ホルモン,副腎皮質刺激ホルモン(ACTH),カルシトニン,副甲状腺ホルモン,および成長ホルモン),多糖類(例えばヘパリン),抗原,抗体,または酵素からなる群より選択される,請求項30記載の方法。
【請求項50】
前記医薬品が,バルビチュレート,オピオイドアゴニスト,オピオイドアンタゴニスト,ベンゾジアゼピン,ブテロフェノン,オイゲノール,GABA刺激剤,置換フェノール,フェンシクリジン,または置換フェノールからなる群より選択される薬剤群に属する,請求項30記載の方法。
【請求項51】
薬剤処方中の固溶体微小環境,固溶体微小環境中に配置されている薬剤および溶解剤,および微小環境から隔離されている医薬成分,を含む経口粘膜薬剤処方。
【請求項52】
前記微小環境が,口粘膜腔において薬剤の溶媒への迅速な溶解を容易にする,請求項51記載の処方。
【請求項53】
前記微小環境が,前記薬剤と前記医薬成分との間の物理的障壁として作用する,請求項51記載の処方。
【請求項54】
前記医薬成分が薬剤の吸収を改良する,請求項51記載の処方。
【請求項55】
前記微小環境が,薬剤の遊離状態での溶解を可能とする,請求項51記載の処方。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−201805(P2008−201805A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121345(P2008−121345)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【分割の表示】特願2001−532709(P2001−532709)の分割
【原出願日】平成12年10月12日(2000.10.12)
【出願人】(502152573)アネスタ・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】