説明

固着具と成形品部材

【課題】薄型化に対応した成形品部材の強度を確保し、さらに固着具の必要寸法を確保することのできる固着具と成形品部材を提供する。
【解決手段】本発明の固着具1は、短い円柱状の本体2に突起部3,9、曲線に削り出された曲面部4,8、さらに本体2の外側周面上にローレット(凹凸条)を有する大径部5,7、及び小径部6が設けられている。また、本体2には、突起部3の端面aから突起部9の端面bに貫通した雌ねじ10が設けられている。そして、固着具1は、パネルの孔に嵌め込まれ、パネルの両面に合成樹脂が成形されることにより固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、携帯電話機等の成形品部材に固定して使用するのに適した固着具と成形品部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂の成形品からなる部材にねじ孔を形成してボルトなどをねじ込み固定すると、引張り、ねじり、振動その他の外力を受けたとき、あるいはボルトなどを反覆して着脱したときにねじ孔が変形し、または破壊して使用できなくなる。
そこで、合成樹脂等の成形品部材に設けられた孔に対して、嵌め込み固定してボルトなどを安定よく固定しておくことができると共に反覆着脱に耐えるようにしたナット状の金属製固着具が実用化されている。さらに、このような固着具が成形品部材の孔に喰い込んで充分な強度で固定されるように固着具の外側周面にローレット状その他の凹凸を設ける方法が提案されている(例えば特許文献1、2)。
例えば、携帯電話機ではこのような固着具が多く使われている。
しかしながら、近年、例えば携帯電話機の筐体の薄型化が進み、合成樹脂等の成形品部材である筐体の強度が確保できず、さらに、この薄型化に対応した成形品部材に嵌め込む固着具の必要寸法を確保できないという課題があった。
【特許文献1】 特開昭50−85756号公報
【特許文献2】 特開昭58−124809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記したように、携帯電話機等の筐体の薄型化が進み、合成樹脂等の成形品部材である筐体の強度が確保できず、さらに、この薄型化に対応した成形品部材に嵌め込む固着具の必要寸法を確保できないという課題があった。
この発明の目的は、薄型化に対応した成形品部材の強度を確保し、さらに固着具の必要寸法を確保することのできる固着具と成形品部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、合成樹脂の成形品部材に設けられた孔に固定される固着具と成形品部材であって、上記固着具は、円柱状の本体の両端面に設けられた突起部と、前記本体の外側周面上に多数の凹凸条を有する複数の大径部と、前記大径部と大径部との間に設けられた小径部とを有し、上記成形品部材は、前記突起部の外径より大きく前記大径部の外径より所定値小さい複数段の孔径から構成される上記固着具が固定される孔を有することを特徴とする固着具と成形品部材が提供される。
また、本発明によれば、合成樹脂の成形品部材に設けられた孔に固定される固着具と成形品部材であって、上記固着具は、円柱状の本体の両端面に設けられた突起部と、前記本体の外側周面上に多数の凹凸条を有する複数の大径部と、前記大径部と大径部との間に設けられた小径部とを有し、上記成形品部材は、上部に前記突起部の外径より大きく前記大径部の外径より所定値小さい第1の孔径と、底部に前記第1の孔径より所定値小さい第2の孔径とから構成される上記固着具が固定される孔を有することを特徴とする固着具と成形品部材が提供される。
【発明の効果】
【0005】
本発明の固着具と成形品部材は、薄型化に対応した成形品部材の強度を確保し、さらに固着具の必要寸法を確保することのできる固着具と成形品部材を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、この発明に係るインサートと呼ばれる固着具1を示す片側断面図である。すなわち、この固着具1は、短い円柱状の本体2に突起部3,9が設けられている。また、図上曲線に削り出された曲面部4,8が設けられている。さらに本体2の外側周面上にローレット(凹凸条)を有する大径部5,7が設けられている。なお、大径部5,7のローレット(凹凸条及び流れ方向)と形状(幅、径)、及び小径部6の形状(幅、径)は、嵌め込まれる成形品部材の材質に応じて変えられる。本実施例では大径部を2つにしているが、本願は複数であれば良く、さらに大径部と小径部の外径も成形品部材の材質によって変えられる。
【0007】
固着具1における外径は以下の関係にある。
曲面部4,8の最大外径>大径部5,7>突起部3,9>小径部6
また、本体2には、突起部3の端面aから突起部9の端面bに貫通した雌ねじ10が設けられている。なお、固着具1は、本実施例では黄銅を用いているが、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、亜鉛等の比較的硬質の金属を用いても良い。
【0008】
図2は、合成樹脂で成形される成形品部材(詳しくは後述する)の強度を補強するために用いられるパネル(板金)11である。パネル11は厚さ0.3mmのステンレス鋼であるが、強度補強になる炭素鋼、黄銅、アルミニウム、亜鉛等の比較的硬質の金属を用いても良い。また、パネル11には固着具1を嵌め込む孔12が設けられている。
【0009】
図3は、パネル11に設けられた孔12の断面図である。孔12の内径は、固着具1の曲面部4,8の最大外径より小さく、大径部5,7より大きく開けられている。
このような構成により、本実施例ではパネル11の孔12に固着具1が嵌め込まれる。
【0010】
図4は、パネル11の孔12に固着具1が嵌め込まれた状態の断面を示すものである。すなわち、固着具1はパネル11の孔12に嵌め込まれる際、孔12の孔径より固着具1の曲面部4または曲面部8の最大外径が大きいので嵌め込み抵抗はあるが図1に示したように曲面部4または曲面部8は曲線(図上)に削り出されているので容易に嵌め込むことが可能となっている。そして、パネル11の孔12に嵌め込まれた固着具は、曲面部4,8の間で上下移動(図上)可能状態となる。
【0011】
次に、パネル11の孔12の6箇所それぞれに固着具1が嵌め込まれた状態から本実施例を詳しく説明する。
図5は、パネル11に合成樹脂が成形されて成形品部材13となった状態の断面を示すものである。すなわち、パネル11の両面に合成樹脂14が成形され、固着具1は合成樹脂の成形により固定される。この結果、固着具1の大径部5,7にはローレットが形成され、さらに小径部6が設けられているので固着具1は成形品部材13に強固に固定されている。また、成形品部材13は、パネル11と密着固定されているので強度が確保されている。
なお、図5では、固着具1が図上で上方に固定されているが、必要に応じて曲面部4,8の間で固着具1を固定する位置をそれぞれ変更することも可能である。
図6は、固着具1が図上で下方に固定された例である。
【0012】
以上説明したように上記発明の実施の形態によれば、成形品部材と固着具との固定において、パネル(板金)を加えて合成樹脂を成形することにより成形品部材の強度を確保し、さらに合成樹脂の成形時に固着具の位置を固定するので必要寸法を確保することが可能となる。
【0013】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態が適用可能な固着具の一例を示す片側断面図。
【図2】パネルの形状例を示す図。
【図3】パネルの孔を説明するための断面図。
【図4】パネルに固着具を嵌め込んだ状態を示す片側断面図。
【図5】固着具が固定された成形品部材の形状を示す片側断面図。
【図6】固着具が固定された成形品部材の形状を示す片側断面図。
【符号の説明】
【0015】
1…固着具、2…本体、3,9…突起部、4,8…曲面部、5,7…大径部、6…小径部、10…雌ねじ、11…パネル、12…孔、13…成形品部材、14…合成樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂の成形品部材に設けられた孔に固定される固着具と成形品部材であって、
上記固着具は、円柱状の本体の両端面に設けられた突起部と、前記本体の外側周面上に多数の凹凸条を有する複数の大径部と、前記大径部と大径部との間に設けられた小径部とを有し、
上記成形品部材は、前記突起部の外径より大きく前記大径部の外径より所定値小さい複数段の孔径から構成される上記固着具が固定される孔を有することを特徴とする固着具と成形品部材。
【請求項2】
合成樹脂の成形品部材に設けられた孔に固定される固着具と成形品部材であって、
上記固着具は、円柱状の本体の両端面に設けられた突起部と、前記本体の外側周面上に多数の凹凸条を有する複数の大径部と、前記大径部と大径部との間に設けられた小径部とを有し、
上記成形品部材は、上部に前記突起部の外径より大きく前記大径部の外径より所定値小さい第1の孔径と、底部に前記第1の孔径より所定値小さい第2の孔径とから構成される上記固着具が固定される孔を有することを特徴とする固着具と成形品部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−58486(P2010−58486A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251612(P2008−251612)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(506037009)
【Fターム(参考)】