説明

土のう袋を用いた植栽による土留め工法

【課題】竹の植栽による緑化を兼ねた土留めを、地質に関係なく、例えば、火山灰堆積地等の地質の軟弱な所、特にその斜面や、礫(ガラ土)ばかりのような所でも行うことができる、施工簡単で経済的な土留め工法を提供する。
【解決手段】例えば火山灰の堆積地1に防災用の土のう袋2を多数並べ、現場採取の火山灰3を詰めて、その中に、客土4を入れた小型の土のう袋5に根の部分を入れて包み込んだ状態の蓬莱竹6を植え込み、土のうそれ自体の土留めの機能に加え、蓬莱竹6の根が伸びて強力な土留めとして機能するようにする。災害復旧現場など、礫(ガラ土)ばかりの所でも同様に実施できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば火山灰堆積地やダム周辺の斜面の崩壊防止、災害により崩壊した斜面の復旧、河川や池の護岸改修等に好適な、土のう袋を用いた植栽による土留め工法に関する。
【背景技術】
【0002】
山林や造成地等の斜面(法面)の崩壊防止と緑化のために木を植える場合、穴を掘って植えるだけでは苗木を安定して保持固定できないことが多く、杭や支柱で苗木を固定しなければならないのが普通で、そうした杭や支柱等の資材の運搬および施工に多大なコストがかかるという問題がある。そこで、蓬莱竹を始めとするバンブー種の竹が、根が横に張らずに下方に強く伸びる特性を有していて、強力な土留めとして機能することが期待でき、しかも、この種の竹は、土に接することで、切り取った竹の節の部分から発根して、容易に活着することから、このような竹の特性を利用して、山林や造成地等の傾斜地の斜面の崩壊防止、災害により崩壊した斜面の復旧、河川や池の護岸改修等の土留めを簡単かつ安価に行えるよう、例えば、切り取った竹を横向けにして一端のみ地表に露出するよう斜めに地中に埋め込んだり、竹しがらを組むことにより土留めを行うことが考えられた(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−154546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このように切り取った竹を横向けにして地中に埋め込んだり、竹しがらを組むことにより、発根して下方に伸びる竹の根によって土留めを行う方法は、火山灰堆積地のような地質の軟弱な所、特にその斜面や、礫(ガラ土)ばかりのような所には必ずしも適していない。火山灰の斜面では、切り取った竹を横むけ斜めに埋め込んでも、その竹を地中に安定して保持することが容易でないし、竹しがらを組んでも、竹しがら全体が流れることもあって、安定して竹を保持できない場合があり、竹の活着が困難である。また、礫(ガラ土)ばかりの所では発根自体が困難である。
【0004】
本発明は、こうした問題を解決するためのもので、竹の植栽による緑化を兼ねた土留めを、地質に関係なく、例えば、火山灰堆積地等の地質の軟弱な所、特にその斜面や、礫(ガラ土)ばかりのような所でも行うことができる、施工簡単で経済的な土留め工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の土留め工法は、土のう袋を用いた植栽による土留め工法であって、施工現場に、防災用の例えば1トン土のう袋を並べ、その土のう袋に現場採取の土又は礫、若しくは土及び礫を詰め、その中に竹を植え込むことを特徴とする。
【0006】
このように、土のう袋に施工現場の土や礫を入れ、その中に蓬莱竹等の竹を植え込むことで、例えば、火山灰の斜面や、礫(ガラ土)ばかりのような所でも、竹は安定して保持され、容易に活着し、成長する。そして、土や礫の詰まった土のう袋が、土のうとしてそれ自体土留めとして機能するのに加え、成長し袋を破って伸びる竹の根が、強力な土留めとして機能する。そのため、火山灰堆積地やダム周辺の斜面の崩壊防止、災害により崩壊した斜面の復旧、河川や池の護岸改修等のための強力な土留めを行うことができ、例えば、火山灰の斜面や、礫(ガラ土)ばかりのような所でも、緑化を兼ねた土留めを簡単な施工で経済的に行うことができる。
【0007】
この土留め工法では、また、土のう袋より寸法の小さい土のう袋に客土を入れて、その中に竹の根の部分を挿入し、客土入りの土のう袋で根の部分を包み込んだ状態で、土のう袋内の土又は礫、若しくは土及び礫の中に竹を植え込むようにすることができる。
【0008】
このように、客土入り土のう袋で根の部分を包み込んだ状態で植え込むことにより、竹の活着率を一層高めることができる。
【0009】
この土留め工法において、植栽する竹は、特に、蓬莱竹を始めとするバンブー種の竹が適している。蓬莱竹を始めとするバンブー種の竹は、根が横に張らずに下方に強く伸びる特性を有しているため、強力な土留めとして機能する。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明の土のう袋を用いた植栽による土留め工法によれば、火山灰堆積地やダム周辺の斜面の崩壊防止、災害により崩壊した斜面の復旧、河川や池の護岸改修等のための強力な土留めを行うことができ、例えば、火山灰の斜面や、礫(ガラ土)ばかりのような所でも、緑化を兼ねた土留めを簡単な施工で経済的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の土のう袋を用いた植栽による土留め工法の実施形態の一例を示している。この実施形態は、例えば火山灰の湾への流出を防止するためのもので、火山灰の堆積地1に防災用の土のう袋(1トン土のう袋)2を多数並べ(図1では1個だけを示しているが、実際は、1列あるいは複数列で多数の土のう袋2を並べる。)、その土のう袋2に現場採取の火山灰3を詰め、その中に、植栽に適した客土4を入れた小型の土のう袋(客土入りの土のう袋)5に根の部分を入れて根鉢状に包み込んだ状態の蓬莱竹(苗竹)6を植え込む(蓬莱竹以外のバンブー種の竹を植えてもよい)。また、小型の土のう袋5には、適宜、パルプ等の保水材を入れるとよい。
【0012】
外側となる土のう袋(1トン土のう袋)2は、生分解性の織物生地を使用したもの(サイズ600×600)であるのがよく、内側となる小型の土のう袋(客土入りの土のう袋)5も、また、生分解性の不織布生地を使用したものであるのがよい。
【0013】
このように土のう袋(1トン土のう袋)2を用いて蓬莱竹7を植えることにより、軟弱で流れやすい火山灰の中にあっても、蓬莱竹6は安定して保持され、高い活着率で活着し、成長する。また、この実施形態では、客土を入れ、適宜、保水材を入れた小型の土のう袋5で根を部分を包み込んだ状態で植えることで、蓬莱竹7の活着率が一層高くなる。
【0014】
そして、火山灰3の詰まった土のう袋が土のうとしてそれ自体土留めとして機能し、また、成長し袋を破って下方へ強く伸びる蓬莱竹6の根が強力な土留めとして機能する。
【0015】
図1は、平地での施工例を示しているが、この実施形態の土留め工法は、火山灰の斜面でも施工することができる。
【0016】
こうして、火山灰の堆積地、特にその斜面を植栽により土留めして、火山灰の湾内等への流出を防止することができ、火山灰堆積地の緑化を兼ねた土留めを簡単な施工で経済的に行うことができる。
【0017】
本発明の土のう袋を用いた植栽による土留め工法は、火山灰以外の土砂、礫(ガラ土)、その他、地質に関わらず実施することができ、火山灰堆積地、ダム周辺の斜面の崩壊防止、災害により崩壊した斜面の復旧、河川や池の護岸改修等、様々な現場で、緑化を兼ねた土留めを簡単な施工で経済的に行うことができる。
【0018】
土のう袋は、1トン土のう袋に限らず、様々な寸法のものを適宜利用することができる。
【0019】
また、土のう袋は、火山灰その他の土砂や礫を詰めたものを、土のうとして複数段に積み重ねてもよく、その場合、最上段の土のう袋に蓬莱竹等を植えるとよい。
【0020】
客土入りの土のう袋は、施工現場の土質によっては必ずしも使用しなくてよい。
【0021】
その他、本発明は様々な態様で実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態の一例の説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 火山灰の堆積地
2 土のう袋(1トン土のう袋)
3 火山灰
4 客土
5 小型の土のう袋(客土入りの土のう袋)
6 蓬莱竹(苗竹)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工現場に土のう袋を並べ、該土のう袋に現場採取の土又は礫、若しくは土及び礫を詰め、その中に竹を植え込むことを特徴とする、土のう袋を用いた植栽による土留め工法。
【請求項2】
前記土のう袋より寸法の小さい土のう袋に客土を入れて、その中に竹の根の部分を挿入し、この客土入りの土のう袋の中に根の部分を包み込んだ状態で、前記土のう袋内の土又は礫、若しくは土及び礫の中に竹を植え込む、請求項1記載の土のう袋を用いた植栽による土留め工法。
【請求項3】
前記竹が蓬莱竹である、請求項1又は2記載の土のう袋を用いた植栽による土留め工法。

【図1】
image rotate