説明

土圧式シールド、泥水式シールド及び密閉型シールド

【課題】 粘性の高い掘削土砂が隔壁に付着することに起因するチャンバー内での閉塞を防止する。
【解決手段】本発明に係る土圧式シールド10は、カッターヘッド1と隔壁2との間にチャンバー20を設けて該チャンバー内にカッターヘッド1の土砂取込み開口31から掘削土砂を取り込むとともに該掘削土砂を隔壁2に連通接合されたスクリューコンベア3で搬出するように構成してあり、隔壁2をその上縁が下縁よりもカッターヘッド1側に近くなるようにスキンプレート4内に傾斜配置してあるとともに、該隔壁の周縁をスキンプレート4の内面に接合してある。また、隔壁2のテール側中央には、円筒状のギアボックス13がシールド軸線と同軸となるように接合してあるとともに、該ギアボックスのテール側中央近傍には、テール側軸受部材7をやはりシールド軸線と同軸になるように取り付けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として地下トンネルを掘削する場合に用いられる土圧式シールド、泥水式シールド等の密閉型シールドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地下鉄や上下水道をはじめとする公共施設による地下空間の利用が急増してきており、このような地下トンネル工事では、超軟弱地盤から硬質地盤まで掘削可能であるシールド工法が主流となっている。
【0003】
シールド工法で用いる密閉型シールドは、土圧式シールドと泥水式シールドに大別されるが、土圧式シールドは、泥水式シールドに比べて立坑口近辺の装置が小規模であり、交通の妨げとならないという利点を有しているため、様々な地下トンネル工事で用いられている。
【0004】
土圧式シールド工法は、シールドマシン(以下、単にシールド)の先端に設けられたカッターヘッドにより地盤を掘削し、掘削土砂を一旦チャンバー内に取り込み充満させ、隔壁下方に連通接続されたスクリューコンベアによって掘削土砂を排出するとともに、スクリューコンベアの回転速度、シールドの推進速度等を制御することで掘削土砂を介して切羽に作用させる土圧の大きさを調整し、切羽の安定を図る工法である。
特に透水性の高い砂礫地盤の場合には、掘削土砂に加泥材や気泡などの添加材を加えながらチャンバー内で強制攪拌し、掘削土砂に流動性を持たせ、スクリューコンベアによってかき出す泥土圧シールド工法が用いられている。
【0005】
一方、泥水式シールドは、送泥管を介して泥水をチャンバー内に送り込み、その泥水圧で切羽の安定を図りつつ、掘削土砂を掘削泥水の形で排泥管を介して排土するとともに、排土された掘削泥水から土砂を分離し、ベントナイトを加える等、適宜調整した後、あらたな泥水として循環されるものであって、切羽に対して安定した加圧が可能であることから崩壊性の地盤に適した工法といえる。
【0006】
【特許文献1】特開平11−044188
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、土圧式シールドは上述したように、カッタヘッドで切羽を掘削しつつ、該切羽に土圧を作用させることで該切羽の安定を図り、地山の崩壊を防止しているが、切羽に作用する土圧は、その反力がチャンバー内に取り込まれた掘削土砂を介して隔壁に作用する。
【0008】
そのため、掘削土砂の粘性が高いと、掘削土砂が土圧で隔壁に押し付けられ、さらにそれが積み重なるようになり、かくして、カッターヘッドに付着した掘削土砂とも相まって、やがてはチャンバー内に閉塞を生じさせるという問題を生じていた。
かかる状況は、カッターヘッドで掘削された土砂をチャンバー内に取り込みつつ、切羽に圧力を加えて該切羽の安定を図る密閉型シールドに共通した問題である。すなわち、密閉型シールドにおいては、カッターヘッドで掘削された粘性土が果実の皮を剥くがごとく、薄い粘性土片としてチャンバー内に取り込まれることがあり、かかる場合には、土圧式シールド、泥水式シールドといった形式とは関係なく、切羽安定のための圧力が反力として粘性土片を隔壁に押し付けて付着させ、ひいてはチャンバー内を閉塞させるという問題を生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、粘性の高い掘削土砂が隔壁に付着することに起因するチャンバー内での閉塞を防止することが可能な土圧式シールド、泥水式シールド及び密閉型シールドを提供することを目的とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る密閉型シールドは請求項1に記載したように、カッターヘッドと隔壁との間にチャンバーを設けて該チャンバー内に前記カッターヘッドの土砂取込み開口から掘削土砂を取り込むとともに該掘削土砂を前記隔壁に連通接合され前記チャンバーの下方に設けられた排土手段を介して搬出するように構成した密閉型シールドにおいて、前記隔壁をその上縁が下縁よりも前記カッターヘッド側に近くなるようにスキンプレート内に傾斜配置するとともに前記隔壁の周縁を前記スキンプレートの内面に接合したものである。
【0011】
また、本発明に係る密閉型シールドは、前記隔壁をその両側方縁部が中央近傍よりも前記カッターヘッド側に近くなるように折曲げ状又は湾曲状に形成したものである。
【0012】
また、本発明に係る土圧式シールドは請求項3に記載したように、カッターヘッドと隔壁との間にチャンバーを設けて該チャンバー内に前記カッターヘッドの土砂取込み開口から掘削土砂を取り込むとともに該掘削土砂を前記隔壁に連通接合され前記チャンバーの下方に設けられたスクリューコンベアで搬出するように構成した土圧式シールドにおいて、前記隔壁をその上縁が下縁よりも前記カッターヘッド側に近くなるようにスキンプレート内に傾斜配置するとともに前記隔壁の周縁を前記スキンプレートの内面に接合したものである。
【0013】
また、本発明に係る土圧式シールドは、前記隔壁をその両側方縁部が中央近傍よりも前記カッターヘッド側に近くなるように折曲げ状又は湾曲状に形成したものである。
【0014】
また、本発明に係る泥水式シールドは請求項5に記載したように、カッターヘッドと隔壁との間にチャンバーを設けて該チャンバー内に前記カッターヘッドの土砂取込み開口から掘削土砂を取り込むとともに該掘削土砂を掘削泥水の形で前記隔壁に連通接合され前記チャンバーの下方に設けられた排泥管を介して搬出するように構成した泥水式シールドにおいて、前記隔壁をその上縁が下縁よりも前記カッターヘッド側に近くなるようにスキンプレート内に傾斜配置するとともに前記隔壁の周縁を前記スキンプレートの内面に接合したものである。
【0015】
また、本発明に係る泥水式シールドは、前記隔壁をその両側方縁部が中央近傍よりも前記カッターヘッド側に近くなるように折曲げ状又は湾曲状に形成したものである。
【0016】
本発明に係る密閉型シールドにおいては、カッターヘッドと隔壁との間にチャンバーを設けて該チャンバー内にカッターヘッドの土砂取込み開口から粘性土片等の形で掘削土砂を取り込むとともに該掘削土砂を隔壁に連通接合された排土手段で搬出するように構成してあり、隔壁をその上縁が下縁よりもカッターヘッド側に近くなるようにスキンプレート内に傾斜配置するとともに隔壁の周縁をスキンプレートの内面に接合してある。
【0017】
このようにすると、切羽安定のために該切羽に作用する圧力が、従来と同様、カッタヘッドで掘削された掘削土砂をその反力で隔壁に押し付けて該隔壁に付着させるが、本発明においては、隔壁を傾斜配置してあるため、隔壁に作用する圧力は、隔壁に垂直に作用する成分と隔壁に平行な方向に作用する成分とに分かれる。
【0018】
そのため、いったん圧力によって隔壁に付着し押し付けられた掘削土砂であっても、隔壁に平行な成分の圧力によって隔壁から削ぎ落とされる。
【0019】
すなわち、従来において隔壁にいったん付着した掘削土砂は、その上から新たな掘削土砂が次々に積層され、カッターヘッドに付着した掘削土砂とも相まって、チャンバー内を閉塞させていた。
【0020】
しかしながら、本発明に係る密閉型シールドにおいては、上述したように隔壁を傾斜配置してあるため、切羽安定のための反力としての圧力が隔壁に対して垂直に作用せず、隔壁面に沿った分力も隔壁に作用する。
【0021】
そのため、チャンバー内に取り込まれた掘削土砂がたとえ圧力によって隔壁に付着したとしても、隔壁に沿った方向の分力によって該隔壁から削ぎ落とされることとなり、従来のように隔壁に次々に重なり合ってやがてはチャンバー内を閉塞させる事態を未然に回避することができる。
【0022】
加えて、傾斜配置された隔壁に沿った方向の分力は、粘性土片等の掘削土砂をチャンバーの下方に設けられた排土手段の流入口近傍へと誘導し、チャンバー内の下方空間が広くなったことと相まって、スムーズな搬出が可能となり、この点でもチャンバー内の閉塞が未然に防止される。
【0023】
本発明に係る密閉型シールドは、カッタヘッドで掘削された土砂をチャンバー内に取り込みつつ、切羽に圧力を加えて該切羽の安定を図る形式のシールドをすべて含むものであり、具体的には土圧式シールドと泥水式シールドが含まれる。なお、土圧式シールドに土圧シールドや泥土圧シールドが含まれることは言うまでもない。
その意味で、請求項3,4に係る土圧式シールドや請求項5,6に係る泥水式シールドは、請求項1に係る密閉型シールドの下位概念に属する発明であり、請求項1の排土手段は、請求項3,4に係る土圧式シールドではスクリューコンベアに、請求項5,6に係る泥水式シールドでは排泥管にそれぞれ相当する。
【0024】
ここで、上述した隔壁は、その上縁が下縁よりもカッターヘッド側に近くなるようにスキンプレート内に傾斜配置してあればその形状は任意であるが、ここで、隔壁をその両側方縁部が中央近傍よりもカッターヘッド側に近くなるように折曲げ状又は湾曲状に形成することができる。
【0025】
かかる構成においては、折曲げ状に形成された隔壁のうち、折り曲げられた両側方部分の隔壁に作用する圧力に関し、上述したと同様の作用効果を奏するほか、両側方部分の隔壁面に沿った方向の分力も、粘性土片等の掘削土砂をチャンバーの下方に設けられた排土手段の流入口へと誘導し、チャンバー内の下方空間が広くなったことと相まって、スムーズな搬出が可能となり、この点でもチャンバー内の閉塞が未然に防止されるという顕著な作用効果を奏する。
【0026】
以上述べた密閉型シールドに関する発明の説明は、切羽に作用する圧力が土圧であるのか泥水圧であるのかといった圧力の違いはあるものの、すべての密閉型シールド、例えば土圧式シールドや泥水式シールドについても同様に言えることであるが、念のため、土圧式シールドについてその発明を説明することとする。
【0027】
すなわち、本発明に係る土圧式シールドにおいては、カッターヘッドと隔壁との間にチャンバーを設けて該チャンバー内にカッターヘッドの土砂取込み開口から掘削土砂を取り込むとともに該掘削土砂を隔壁に連通接合されたスクリューコンベアで搬出するように構成してあり、隔壁をその上縁が下縁よりもカッターヘッド側に近くなるようにスキンプレート内に傾斜配置するとともに隔壁の周縁をスキンプレートの内面に接合してある。
このようにすると、切羽安定のために該切羽に作用する土圧は、従来と同様、カッタヘッドで掘削された掘削土砂を介して反力として隔壁に作用し、その結果、粘性が高い掘削土砂については、該土圧で隔壁に押し付けられて付着するが、本発明においては、隔壁を傾斜配置してあるため、隔壁に作用する土圧は、隔壁に垂直に作用する成分と隔壁に平行な方向に作用する成分とが生じる。
【0028】
そのため、いったん土圧によって隔壁に付着し押し付けられた掘削土砂であっても、隔壁に平行な成分の圧力によって隔壁から削ぎ落とされる。
【0029】
すなわち、従来においては、掘削土砂を介して隔壁に作用する土圧が該隔壁に対して垂直に作用するため、隔壁にいったん付着した掘削土砂は、その上から新たな掘削土砂が次々に積層され、カッターヘッドに付着した掘削土砂とも相まって、チャンバー内を閉塞させていた。
【0030】
しかしながら、本発明に係る土圧式シールドにおいては、上述したように隔壁を傾斜配置してあるため、切羽安定のための反力としての土圧が隔壁に対して垂直に作用せず、隔壁面に沿った分力も隔壁に作用する。
【0031】
そのため、チャンバー内に取り込まれた掘削土砂がたとえ土圧によって隔壁に付着したとしても、隔壁に沿った方向の分力によって該隔壁から削ぎ落とされることとなり、従来のように隔壁に次々に重なり合ってやがてはチャンバー内を閉塞させる事態を未然に回避することができる。
【0032】
加えて、傾斜配置された隔壁に沿った方向の分力は、掘削土砂をチャンバーの下方に設けられたスクリューコンベヤの流入口近傍へと誘導し、チャンバー内の下方空間が広くなったことと相まって、スムーズな搬出が可能となり、この点でもチャンバー内の閉塞が未然に防止される。
【0033】
上述した隔壁は、その上縁が下縁よりもカッターヘッド側に近くなるようにスキンプレート内に傾斜配置してあればその形状は任意であるが、ここで、隔壁をその両側方縁部が中央近傍よりもカッターヘッド側に近くなるように折曲げ状又は湾曲状に形成することができる。
【0034】
かかる構成においては、折曲げ状に形成された隔壁のうち、折り曲げられた両側方部分の隔壁に作用する土圧に関し、上述したと同様の作用効果を奏するほか、両側方部分の隔壁面に沿った方向の分力も、掘削土砂をチャンバーの下方に設けられたスクリューコンベヤの流入口へと誘導し、チャンバー内の下方空間が広くなったことと相まって、スムーズな搬出が可能となり、この点でもチャンバー内の閉塞が未然に防止されるという顕著な作用効果を奏する。
【0035】
また、隔壁を湾曲状に形成した場合についても、該隔壁を折曲げ状に形成した場合と同様の作用効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明に係る土圧式シールド、泥水式シールド及び密閉型シールドの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0037】
(第1実施形態)
図1及び図2は、本実施形態に係る土圧式シールド10を示した鉛直断面図及び水平断面図、図3は図1のA−A線方向から見た矢視図である。
【0038】
これらの図からわかるように、本実施形態に係る土圧式シールド10は、カッターヘッド1と隔壁2との間にチャンバー20を設けて該チャンバー内にカッターヘッド1の土砂取込み開口31から掘削土砂を取り込むとともに該掘削土砂を隔壁2に連通接合された排土手段であるスクリューコンベア3で搬出するように構成してあり、隔壁2のテール側中央には、円筒状のギアボックス13がシールド軸線と同軸となるように接合してあるとともに、該ギアボックスのテール側中央近傍には、テール側軸受部材7をやはりシールド軸線と同軸になるように取り付けてある。一方、隔壁2のチャンバー側中央には、テール側軸受部材7と同様、シールド軸線と同軸になるようにチャンバー側軸受部材5を取り付けてある。
【0039】
ギアボックス13には、シールド軸線を取り囲むように駆動モータ9が減速機18を介して複数取り付けてあるとともに、上述したチャンバー側軸受部材5とテール側軸受部材7に軸支され先端でカッターヘッド1に連結されたセンターシャフト6には、ギアボックス13内においてリング状ギア19をその周面に取り付けてあり、駆動モータのモータシャフト先端に取り付けられたピニオン11とリング状ギア19とを相互に噛合させることによって、カッタヘッド1を複数の駆動モータ9で回転させることができるようになっている。
【0040】
センターシャフト6のテール側端部にはロータリージョイント8を設けてあり、該ロータリージョイントを介してカッターヘッド1のスポーク33に内蔵されたコピーカッター36の油圧アクチュエータとテール部近傍に設けた油圧ユニット(図示せず)とを連通接続してあるとともに、切羽近傍に添加剤を供給する添加剤供給口37と添加剤ユニット(図示せず)とを連通接続してある。
【0041】
カッターヘッド1のチャンバー側には図1でわかるように、複数のカッター側アジテータ21を突設させてあるとともに、該カッター側アジテータと対向するように隔壁2に隔壁側アジテータ22を突設してあり、カッターヘッド1が回転することによって、チャンバー20内の掘削土砂を攪拌混合できるようになっている。
【0042】
ここで、本実施形態に係る土圧式シールド10は図1でよくわかるように、隔壁2をその上縁が下縁よりもカッターヘッド1側に近くなるようにスキンプレート4内に傾斜配置してあるとともに、該隔壁の周縁をスキンプレート4の内面に接合してある。
【0043】
なお、上述した隔壁側アジテータ22は、隔壁2の傾斜に対応させるべく、該隔壁の上方から下方へ沿って徐々に長くなるように各長さを設定してある。
【0044】
また、隔壁2は図2に示すように、その両側方縁部が中央近傍よりもカッターヘッド1側に近くなるように折曲げ状に形成してある。
【0045】
すなわち、隔壁2は、上述したようにシールド軸線方向に傾斜配置してあるのみならず、その上縁と下縁とを結びかつシールド軸線を含む鉛直面に対して対称となるように折曲げ形成してある。
【0046】
本実施形態に係る土圧式シールド10においては上述したように、カッターヘッド1と隔壁2との間にチャンバー20を設けて該チャンバー内にカッターヘッド1の土砂取込み開口31から掘削土砂を取り込むとともに、隔壁2をその上縁が下縁よりもカッターヘッド1側に近くなるようにスキンプレート4内に傾斜配置し、隔壁2の周縁をスキンプレート4の内面に接合してある。
【0047】
このようにすると、切羽安定のために該切羽に作用する土圧は、従来と同様、カッタヘッド1で掘削された掘削土砂を介して反力として隔壁2に作用し、その結果、粘性が高い掘削土砂については、該土圧で隔壁2に押し付けられて付着するが、本実施形態においては、隔壁2を傾斜配置してあるため、隔壁2に作用する土圧は、隔壁2に垂直に作用する成分と隔壁2に平行な方向に作用する成分とが生じる。
【0048】
そのため、いったん土圧によって隔壁2に付着し押し付けられた掘削土砂であっても、隔壁2に平行な成分の圧力によって隔壁2から削ぎ落とされる。
【0049】
加えて、傾斜配置された隔壁2に沿った方向の分力は、掘削土砂をチャンバー20の下方に設けられたスクリューコンベヤ3の流入口近傍へと誘導する。
【0050】
また、本実施形態に係る土圧式シールド10においては、隔壁2を、その両側方縁部が中央近傍よりもカッターヘッド1側に近くなるように折曲げ状に形成してある。
【0051】
このようにすると、折曲げ状に形成された隔壁2のうち、折り曲げられた両側方部分の隔壁2には、上述した下方への分力に加えて、両側方部分の隔壁面に沿った方向の水平分力(テール部方向の分力)も生じる。
【0052】
そして、かかる水平分力は、掘削土砂をチャンバー20の下方に設けられたスクリューコンベヤ3の流入口へと誘導する。
【0053】
以上説明したように、本実施形態に係る土圧式シールド10によれば、隔壁2をその上縁が下縁よりもカッターヘッド1側に近くなるようにスキンプレート4内に傾斜配置したので、チャンバー20内に取り込まれた掘削土砂がたとえ土圧によって隔壁2に付着したとしても、隔壁2に沿った下方への分力によって該隔壁から削ぎ落とされることとなり、かくして従来のように隔壁に次々に重なり合ってやがてはチャンバー内を閉塞させる事態を未然に回避することができる。
【0054】
加えて、隔壁2に沿った下方への分力が掘削土砂をチャンバー20の下方に設けられたスクリューコンベヤ3の流入口近傍へと誘導するので、チャンバー20内の下方空間が広くなったことと相まって、スムーズな搬出が可能となり、この点でもチャンバー20内の閉塞を未然に防止することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態に係る土圧式シールド10によれば、隔壁2を、その両側方縁部が中央近傍よりもカッターヘッド1側に近くなるように折曲げ状に形成したので、チャンバー20内に取り込まれた掘削土砂がたとえ土圧によって隔壁2に付着したとしても、隔壁2に沿った方向の水平分力によって該隔壁から削ぎ落とされることとなり、上述した下方への分力による作用と相まって、従来のように隔壁に次々に重なり合ってやがてはチャンバー内を閉塞させる事態を未然に回避することが可能となる。
【0056】
加えて、隔壁2に沿った水平方向の分力が掘削土砂をチャンバー20の下方に設けられたスクリューコンベヤ3の流入口近傍へと誘導するので、上述した下方への分力による誘導作用と相まって、掘削土砂のスムーズな搬出が可能となり、この点でもチャンバー20内の閉塞を未然に防止することが可能となる。
【0057】
本実施形態では、隔壁2を折曲げ状に形成したが、これに代えて、隔壁を湾曲状に形成してもかまわない。
【0058】
また、本実施形態では、隔壁2を折曲げ状に形成したが、必ずしも折曲げ状に形成する必要はなく、単に平板状に形成してもよい。かかる構成においても、鉛直方向の土圧分力に関し、上述したと同様の作用効果が得られる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
図4及び図5は、本実施形態に係る泥水式シールド110を示した鉛直断面図及び水平断面図である。
【0060】
これらの図からわかるように、本実施形態に係る泥水式シールド110は、カッターヘッド101と隔壁102との間にチャンバー120を設けて該チャンバー内にカッターヘッド101の土砂取込み開口から掘削土砂を取り込むとともに該掘削土砂を掘削泥水の形で隔壁102に連通接合された排土手段である排泥管103で搬出するように構成してあり、隔壁102のテール側中央には、円筒状のギアボックス113がシールド軸線と同軸となるように接合してあるとともに、該ギアボックスのテール側中央近傍には、テール側軸受部材107をやはりシールド軸線と同軸になるように取り付けてある。一方、隔壁102のチャンバー側中央には、テール側軸受部材107と同様、シールド軸線と同軸になるようにチャンバー側軸受部材105を取り付けてある。
【0061】
ギアボックス113には、シールド軸線を取り囲むように駆動モータ109が減速機118を介して複数取り付けてあるとともに、上述したチャンバー側軸受部材105とテール側軸受部材107に軸支され先端でカッターヘッド101に連結されたセンターシャフト106には、ギアボックス113内においてリング状ギア119をその周面に取り付けてあり、駆動モータのモータシャフト先端に取り付けられたピニオン111とリング状ギア119とを相互に噛合させることによって、カッタヘッド101を複数の駆動モータ109で回転させることができるようになっている。
一方、隔壁102には送泥管121を連通接合してあり、該送泥管を介してチャンバー120内に泥水を送り込むことができるように構成してある。
【0062】
センターシャフト106のテール側端部にはロータリージョイント108を設けてあり、該ロータリージョイントを介してカッターヘッド101のスポークに内蔵されたコピーカッター136の油圧アクチュエータとテール部近傍に設けた油圧ユニット(図示せず)とを連通接続してある。
【0063】
カッターヘッド101のチャンバー側には図4でわかるように、複数のカッター側アジテータ121を突設させてあるとともに、該カッター側アジテータと対向するように隔壁102に隔壁側アジテータ122を突設してあり、カッターヘッド101が回転することによって、掘削土砂を含んだ掘削泥水をチャンバー120内で攪拌混合できるようになっている。
【0064】
ここで、本実施形態に係る泥水式シールド110は図4でよくわかるように、隔壁102をその上縁が下縁よりもカッターヘッド101側に近くなるようにスキンプレート104内に傾斜配置してあるとともに、該隔壁の周縁をスキンプレート104の内面に接合してある。
【0065】
なお、上述した隔壁側アジテータ122は、隔壁102の傾斜に対応させるべく、該隔壁の上方から下方へ沿って徐々に長くなるように各長さを設定してある。
【0066】
また、隔壁102は図5に示すように、その両側方縁部が中央近傍よりもカッターヘッド101側に近くなるように折曲げ状に形成してある。
【0067】
すなわち、隔壁102は、上述したようにシールド軸線方向に傾斜配置してあるのみならず、その上縁と下縁とを結びかつシールド軸線を含む鉛直面に対して対称となるように折曲げ形成してある。
【0068】
本実施形態に係る泥水式シールド110においては上述したように、カッターヘッド101と隔壁102との間にチャンバー120を設けて該チャンバー内にカッターヘッド101の土砂取込み開口から掘削土砂を取り込むとともに、隔壁102をその上縁が下縁よりもカッターヘッド101側に近くなるようにスキンプレート104内に傾斜配置し、隔壁102の周縁をスキンプレート104の内面に接合してある。
【0069】
このようにすると、切羽安定のために該切羽に作用する泥水圧は、従来と同様、チャンバー120内の掘削泥水を介して反力として隔壁102に作用し、その結果、粘性が高い掘削土砂、例えば粘性土片の形態で掘削泥水内に存在する掘削土砂については、上述した泥水圧で隔壁102に押し付けられて付着するが、本実施形態においては、隔壁102を傾斜配置してあるため、隔壁102に作用する土圧は、隔壁102に垂直に作用する成分と隔壁102に平行な方向に作用する成分とが生じる。
【0070】
そのため、いったん泥水圧によって隔壁102に付着し押し付けられた掘削土砂であっても、隔壁102に平行な成分の圧力によって隔壁102から削ぎ落とされる。
【0071】
加えて、傾斜配置された隔壁102に沿った方向の分力は、掘削土砂を含んだ掘削泥水をチャンバー120の下方に設けられた排泥管103の流入口近傍へと誘導する。
【0072】
また、本実施形態に係る泥水式シールド110においては、隔壁102を、その両側方縁部が中央近傍よりもカッターヘッド101側に近くなるように折曲げ状に形成してある。
【0073】
このようにすると、折曲げ状に形成された隔壁102のうち、折り曲げられた両側方部分の隔壁102には、上述した下方への分力に加えて、両側方部分の隔壁面に沿った方向の水平分力(テール部方向の分力)も生じる。
【0074】
そして、かかる水平分力は、掘削土砂を含んだ掘削泥水をチャンバー120の下方に設けられた排泥管103の流入口へと誘導する。
【0075】
以上説明したように、本実施形態に係る泥水式シールド110によれば、隔壁102をその上縁が下縁よりもカッターヘッド101側に近くなるようにスキンプレート104内に傾斜配置したので、チャンバー120内に取り込まれた掘削土砂が例えば粘性土片の形で泥水圧により隔壁102に付着したとしても、隔壁102に沿った下方への分力によって該隔壁から削ぎ落とされることとなり、かくして従来のように隔壁に次々に重なり合ってやがてはチャンバー内を閉塞させる事態を未然に回避することができる。
【0076】
加えて、隔壁102に沿った下方への分力が掘削泥水をチャンバー120の下方に設けられた排泥管103の流入口近傍へと誘導するので、チャンバー120内の下方空間が広くなったことと相まって、スムーズな搬出が可能となり、この点でもチャンバー120内の閉塞を未然に防止することが可能となる。
【0077】
また、本実施形態に係る泥水式シールド110によれば、隔壁102を、その両側方縁部が中央近傍よりもカッターヘッド101側に近くなるように折曲げ状に形成したので、チャンバー120内に取り込まれた掘削土砂がたとえ泥水圧によって隔壁102に付着したとしても、隔壁102に沿った方向の水平分力によって該隔壁から削ぎ落とされることとなり、上述した下方への分力による作用と相まって、従来のように隔壁に次々に重なり合ってやがてはチャンバー内を閉塞させる事態を未然に回避することが可能となる。
【0078】
加えて、隔壁102に沿った水平方向の分力が掘削土砂をチャンバー120の下方に設けられた排泥管103の流入口近傍へと誘導するので、上述した下方への分力による誘導作用と相まって、粘性土片を含む掘削泥水のスムーズな搬出が可能となり、この点でもチャンバー120内の閉塞を未然に防止することが可能となる。
【0079】
本実施形態では、隔壁102を折曲げ状に形成したが、これに代えて、隔壁を湾曲状に形成してもかまわない。
【0080】
また、本実施形態では、隔壁102を折曲げ状に形成したが、必ずしも折曲げ状に形成する必要はなく、単に平板状に形成してもよい。かかる構成においても、鉛直方向の泥水圧分力に関し、上述したと同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本実施形態に係る土圧式シールド10を示した鉛直断面図。
【図2】本実施形態に係る土圧式シールド10を示した水平断面図。
【図3】図1のA−A線から見た矢視図。
【図4】本実施形態に係る泥水式シールド110を示した鉛直断面図。
【図5】本実施形態に係る泥水式シールド110を示した水平断面図。
【符号の説明】
【0082】
1 カッターヘッド
2 隔壁
3 スクリューコンベア(排土手段)
4 スキンプレート
10 土圧式シールド
20 チャンバー
31 土砂取込み口
101 カッターヘッド
102 隔壁
103 排泥管(排土手段)
104 スキンプレート
110 泥水式シールド
120 チャンバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カッターヘッドと隔壁との間にチャンバーを設けて該チャンバー内に前記カッターヘッドの土砂取込み開口から掘削土砂を取り込むとともに該掘削土砂を前記隔壁に連通接合され前記チャンバーの下方に設けられた排土手段を介して搬出するように構成した密閉型シールドにおいて、
前記隔壁をその上縁が下縁よりも前記カッターヘッド側に近くなるようにスキンプレート内に傾斜配置するとともに前記隔壁の周縁を前記スキンプレートの内面に接合したことを特徴とする密閉型シールド。
【請求項2】
前記隔壁をその両側方縁部が中央近傍よりも前記カッターヘッド側に近くなるように折曲げ状又は湾曲状に形成した請求項1記載の密閉型シールド。
【請求項3】
カッターヘッドと隔壁との間にチャンバーを設けて該チャンバー内に前記カッターヘッドの土砂取込み開口から掘削土砂を取り込むとともに該掘削土砂を前記隔壁に連通接合され前記チャンバーの下方に設けられたスクリューコンベアで搬出するように構成した土圧式シールドにおいて、
前記隔壁をその上縁が下縁よりも前記カッターヘッド側に近くなるようにスキンプレート内に傾斜配置するとともに前記隔壁の周縁を前記スキンプレートの内面に接合したことを特徴とする土圧式シールド。
【請求項4】
前記隔壁をその両側方縁部が中央近傍よりも前記カッターヘッド側に近くなるように折曲げ状又は湾曲状に形成した請求項3記載の土圧式シールド。
【請求項5】
カッターヘッドと隔壁との間にチャンバーを設けて該チャンバー内に前記カッターヘッドの土砂取込み開口から掘削土砂を取り込むとともに該掘削土砂を掘削泥水の形で前記隔壁に連通接合され前記チャンバーの下方に設けられた排泥管を介して搬出するように構成した泥水式シールドにおいて、
前記隔壁をその上縁が下縁よりも前記カッターヘッド側に近くなるようにスキンプレート内に傾斜配置するとともに前記隔壁の周縁を前記スキンプレートの内面に接合したことを特徴とする泥水式シールド。
【請求項6】
前記隔壁をその両側方縁部が中央近傍よりも前記カッターヘッド側に近くなるように折曲げ状又は湾曲状に形成した請求項5記載の泥水式シールド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−70685(P2006−70685A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−300965(P2004−300965)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】