説明

土壌改良剤の製造方法

【課題】 植生に悪影響を及ぼさず、添加量が少量で足り、コストも廉価である土壌改良剤の製造方法を提供することである。
【解決手段】 貝化石を400°C〜800°Cに加熱し、径が0.1mm〜0.1×10-9mm程度になるように粉砕した貝化石粉砕物を生成する工程と、グルテンを50°C〜95°Cに加熱してグルテン加熱物を生成する工程と、貝化石粉砕物とグルテン加熱物とを混合する工程とを含むことを特徴とする土壌改良剤の製造方法が提供される。また、籾殻、草、花、木を実質的に無酸素の状態で400°C〜1200°Cで焼成する工程と、焼成したものを径が0.1mm〜0.1×10-9mm程度になるように粉砕する工程とを含むことを特徴とする土壌改良剤の製造方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、土壌改良剤の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、重金属等に汚染されたヘドロと土壌とを固化させることによって土壌を改良する土壌改良剤を製造する方法に関する。本発明によって製造される土壌改良剤は、湖沼、池、河川、海等のヘドロ処理、浚渫土の処理、作業用仮設道路、路床、路盤の改良、宅地造成地の土質改良、養鰻池、蓮池等の堆積汚泥の土質改良、公園や歩道の造成、し尿廃泥、油泥の固化処理、ベントナイト等の産業廃棄物やアスベストの処理、下水汚泥処理、ゴルフ場の土質改良、砂漠土の団粒化等の広範な分野に用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来、土壌改良剤としては、セメント系又は石灰系を主成分とするもの、石油を原料とする合成高分子ポリマー系のもの、ペーパースラッジ、フライアシュ、石膏系のもの、等が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、セメント系又は石灰系を主成分とする土壌改良剤を使用すると、改良した土が高アルカリ性に変化し、植物の生育に悪影響を及ぼすという弊害がある。また、アルカリ化が長期間にわたって周辺地盤に進行し、土や水に影響を与え、周囲環境に被害を生じさせるという弊害もある。また、固化に長時間を要するため、乾燥するまでの間、雨等による溶出と流出による二次汚染が発生するおそれがある。
【0004】
一方、合成高分子ポリマー系の土壌改良剤を使用すると、改良した土の透水性が低下し、水はけが悪い土となるため、植物の根腐れが生ずる等、植生に悪影響が及ぼされる。また、高含水率のヘドロの処理が容易ではなく、合成高分子の自然分解も難しいという弊害もある。
【0005】
ペーパースラッジ、フライアシュ、石膏系の土壌改良剤は、多量の添加量(最大35重量%以上)を必要とし、原料の搬送コストも高く、被処理物の量が増加するという弊害がある。また、疎水性がなく、雨や水に溶出し、流出し易いという弊害もある。
【0006】
さらに、従来の固化剤のなかには、汚染された土壌中の重金属を分解することができず、有機物質の除臭効果が少ないため、土壌改良剤としては適さないという事情もある。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みて開発されたものであって、植生に悪影響を及ぼさず、添加量が少量で足り、コストも廉価である土壌改良剤の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1に記載された土壌改良剤の製造方法は、貝化石を400°C〜800°Cに加熱し、径が0.1mm〜0.1×10-9mm程度になるように粉砕した貝化石粉砕物を生成する工程と、グルテンを50°C〜95°Cに加熱してグルテン加熱物を生成する工程と、前記貝化石粉砕物と前記グルテン加熱物とを混合する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項2に記載された土壌改良剤の製造方法は、前記請求項1の方法において、前記貝化石粉砕物と前記グルテン加熱物との混合比率が、重量比で1:1であることを特徴とするものである。
【0010】
本願請求項3に記載された土壌改良剤の製造方法は、籾殻、草、花、木を実質的に無酸素の状態で400°C〜1200°Cで焼成する工程と、前記焼成したものを径が0.1mm〜0.1×10-9mm程度になるように粉砕する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0011】
本願請求項4に記載された土壌改良剤の製造方法は、貝化石を400°C〜800°Cに加熱し、径が0.1mm〜0.1×10-9mm程度になるように粉砕した貝化石粉砕物を生成する工程と、グルテンを50°C〜95°Cに加熱してグルテン加熱物を生成する工程と、前記貝化石粉砕物と前記グルテン加熱物とを混合して第1剤を製造する工程と、籾殻、草、花、木を実質的に無酸素の状態で400°C〜1200°Cで焼成して径が0.1mm〜0.1×10-9mm程度になるように粉砕することにより第2剤を製造する工程と、前記第1剤と前記第2剤とを混合する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0012】
本願請求項5に記載された土壌改良剤の製造方法は、前記請求項4の方法において、前記第1剤と前記第2剤との混合比率が、重量比で5:4であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によって製造された土壌改良剤を用いて改良した土のPHは、ほぼ中性となり、植生に悪影響を及ぼすことはない。また、二次汚染を引き起こす地盤中の水や流出水のアルカリ化も生じることはない。
【0014】
また、本発明の方法によって製造された土壌改良剤を用いて改良した土の粒子は、団粒化構造状態になるため、浸水性が高く、団粒化が進行して土粒子が均一化する。そのため、植物の成長に適し、改良残土としても再利用することができる。
【0015】
また、本発明の方法によって製造された土壌改良剤を用いることにより、砂漠での植物の栽培が可能になり、バイオ系燃料、原油用の原料の栽培が可能になる。
【0016】
また、本発明の方法によって製造された土壌改良剤を用いることにより、水和反応、ポゾラン反応によって、被改良対象の土の透水性、保水性、及び通気性が高くなる。
【0017】
また、本発明の方法によって製造された土壌改良剤を用いることにより、疎水性の良い地盤となる。乾燥前と乾燥後に改良土が水に溶けることなく、土の流出を防止することができる。また、土中の有害物質の流出を防止するとともに、地滑り等の防止をすることができる。
【0018】
また、本発明の方法によって製造された土壌改良剤は、固化速度が迅速であり、数十秒で固化させることができる。したがって、固化作業の効率を向上させるとともに、固化装置の小型化を図ることができる。
【0019】
さらに、本発明の方法によって製造された土壌改良剤は、添加量を少なくすることができる(0.05重量%〜5重量%)とともに、コストの低減化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の好ましい実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法について詳細に説明する。本発明の好ましい実施の形態に係る土壌改良剤は、第1剤、第2剤、及び第1剤と第2剤を混合したものの3種類に大別される。
【0021】
最初に、第1剤について説明する。第1剤は、貝化石を所定温度に加熱し、径が0.1mm〜0.1×10-9mm程度になるように粉砕した貝化石粉砕物と、グルテンを所定温度に加熱したグルテン加熱物とを混合することによって形成される。
【0022】
貝化石の加熱温度は、400°C〜800°Cとするのが好ましい。また、グルテンの加熱温度は、50°C〜95°Cとするのが好ましい。
【0023】
貝化石を加熱粉砕した貝化石粉砕物と、グルテンを加熱したグルテン加熱物との混合比率は、重量比でほぼ1:1とするのが好ましい。
【0024】
第1剤は、主として、処理しようとする土壌を結合するのに役立つ。また、第1剤は、土粒子がグルテン加熱物が被覆された状態となるため、保水性を良好にするのにも役立つ(実験によれば、第1剤使用することにより、吸水力を10重量%〜50重量%上昇させることができる)。
【0025】
次に、第2剤について説明する。第2剤は、籾殻、草、花、木等を実質的に無酸素の状態で所定温度で焼成し、径が0.1mm〜0.1×10-9mm程度になるように粉砕したものである。
【0026】
籾殻、草、花、木等の焼成温度は、400°C〜1200°Cとするのが好ましい。
【0027】
第2剤は、主として、土壌中の重金属を分解・分散させるのに役立つ。また、第2剤は、黒色であるため、吸熱性を高めるのに役立つ。さらに、第2剤は、消臭作用を発揮させるのに役立つ。
【0028】
上述の第1剤、第2剤、及び第1剤と第2剤とを混合した土壌改良剤は、それぞれの用途に応じて、土壌の改良に用いられる。
【0029】
なお、好ましくは、第1剤と第2剤との混合比率は、重量比で5:4である。
【0030】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌改良剤の製造方法であって、
貝化石を400°C〜800°Cに加熱し、径が0.1mm〜0.1×10-9mm程度になるように粉砕した貝化石粉砕物を生成する工程と、
グルテンを50°C〜95°Cに加熱してグルテン加熱物を生成する工程と、
前記貝化石粉砕物と前記グルテン加熱物とを混合する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記貝化石粉砕物と前記グルテン加熱物との混合比率が、重量比で1:1であることを特徴とする請求項1に記載された方法。
【請求項3】
土壌改良剤の製造方法であって、
籾殻、草、花、木を実質的に無酸素の状態で400°C〜1200°Cで焼成する工程と、
前記焼成したものを径が0.1mm〜0.1×10-9mm程度になるように粉砕する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
土壌改良剤の製造方法であって、
貝化石を400°C〜800°Cに加熱し、径が0.1mm〜0.1×10-9mm程度になるように粉砕した貝化石粉砕物を生成する工程と、
グルテンを50°C〜95°Cに加熱してグルテン加熱物を生成する工程と、
前記貝化石粉砕物と前記グルテン加熱物とを混合して第1剤を製造する工程と、
籾殻、草、花、木を実質的に無酸素の状態で400°C〜1200°Cで焼成して径が0.1mm〜0.1×10-9mm程度になるように粉砕することにより第2剤を製造する工程と、
前記第1剤と前記第2剤とを混合する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
前記第1剤と前記第2剤との混合比率が、重量比で5:4であることを特徴とする請求項4に記載された方法。

【公開番号】特開2010−47658(P2010−47658A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211478(P2008−211478)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(597133293)
【出願人】(507342401)
【Fターム(参考)】