説明

土壌特性測定装置

【解決手段】 照射部10aから土壌に向けて照射された検査光は、その土壌によって反射されて受光部20aによって受光される。受光部で受光された反射光は分岐手段22によって多数の反射光に分岐され、それぞれに設けられた検出器27、29、31によって各反射光における所定波長毎の強度が検出される。上記検査光の照射を断続させる断続手段12が設けられており、各検出器のそれぞれに、上記検査光が照射された際に受光部で受光された反射光の強度から、検査光の照射が中断された際に受光部で受光された外乱光の強度を除く信号処理手段41が設けられている。
【効果】 外乱光の影響を排除した真の反射光の強度を、1箇所の計測点において多数採取することができるので、チゼル部を土壌中で高速度で進行させながら、多数の計測点でそれぞれ精度の良い多数のデータを採取することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌の特性を測定する土壌特性測定装置に関し、より詳しくは、チゼル部を土中で進行させることにより土壌の特性を測定するようにした土壌特性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土壌特性測定装置として、チゼル部に設けられて土壌に検査光を照射する照射部と、上記チゼル部に設けられて土壌からの反射光を受光する受光部と、この受光部で受光した反射光を複数に分岐する分岐手段と、この分岐手段によって分岐された各反射光における所定波長毎の強度を検出する検出器とを備え、上記チゼル部を土壌中で進行させながら土壌の特性を測定するようにしたものが知られている(特許文献1、特許文献2)。
上記チゼル部は一般に走行フレームに設けられており、この走行フレームをトラクタによって牽引することにより、チゼル部を土壌中で進行させることができるようになっている。
【0003】
また従来、外乱光の影響を排除するために、上記検査光の照射を断続させる断続手段を設けた土壌特性測定装置も知られている(特許文献3)。
この土壌特性測定装置においては、検査光の照射が中断された際に受光部で受光された光の強度を、つまり外乱光の強度を計測しておき、上記検査光が土壌に照射された際に受光部で受光された反射光の強度から、上記外乱光の強度を除くようにしている。
【特許文献1】特開2003−139765号公報
【特許文献2】特許第3451535号公報
【特許文献3】特許第3451536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、土壌特性のより詳細なデータが求められるようになってきており、1箇所の計測点におけるデータが9種類以上要求されることも普通となってきた。
しかしながら、従来の装置においては1箇所の計測点において、同時に多数のデータを高速で、しかもチゼル部の進行に伴って変化する外乱光の影響を排除しながら採取することはできなかった。
本発明はこのような欠点に鑑み、1箇所の計測点において、多数のデータを高速で、しかも外乱光の影響を排除しながら採取することができる土壌特性測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1の発明は、チゼル部に設けられて土壌に検査光を照射する照射部と、上記チゼル部に設けられて土壌からの反射光を受光する受光部と、この受光部で受光した反射光を複数に分岐する分岐手段と、この分岐手段によって分岐された各反射光における所定波長毎の強度を検出する検出器とを備え、上記チゼル部を土壌中で進行させながら土壌の特性を測定する土壌特性測定装置において、
上記検査光の照射を断続させる断続手段を設けるとともに、上記分岐手段によって分岐された反射光毎にそれぞれ上記検出器を設け、かつ各検出器のそれぞれに、上記検査光が照射された際に受光部で受光された反射光の強度から、検査光の照射が中断された際に受光部で受光された外乱光の強度を除く信号処理手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、照射部から検査光が土壌に照射されると、その土壌からの反射光は受光部で受光されるようになる。そして受光部で受光された反射光は、分岐手段により複数に分岐されて、それぞれの検出器に入射されるようになる。したがって、必要な数だけ反射光を分岐させることにより、1箇所の計測点において多数のデータを採取することができる。
また、上記検査光の照射を断続させる断続手段を設けるとともに、各検出器のそれぞれに、上記検査光が照射された際に受光部で受光された反射光の強度から、検査光の照射が中断された際に受光部で受光された外乱光の強度を除く信号処理手段を設けているので、各信号処理手段により外乱光の影響を排除することができる。そしてこの信号処理手段はそれぞれの検出器に設けているので、複数に分岐された各反射光を並行して同時に処理することができ、したがって多数のデータを採取する場合であっても、全体として高速に処理することができる。
その結果、チゼル部を土壌中で高速度で進行させながら、多数の計測点でそれぞれ精度の良い多数のデータを採取することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下図示実施例について本発明を説明すると、図1において、土壌特性測定装置のチゼル部1はビーム2を介して走行フレームFに連結してあり、この走行フレームFをトラクタTなどの作業用車両によって牽引することにより、チゼル部1を土壌中で進行させることができるようにしてある。
図2に示すように、上記チゼル部1の先端部分が土中貫入部1aとなっており、このチゼル部1の先端と後端1bとの中間部分の底部に均平板3を設けている。そして上記トラクタTの前進に伴って土中貫入部1aで土中に穴を開けるとともに、均平板3でその穴の下面を均して土壌観測面4を作成することができるようにしてある。
上記均平板3よりも後方でチゼル部1の内部上方位置には、土壌の特性を測定する計測部5を設けてあり、この計測部5と土壌観測面4との間に観測空間6を形成するようにしている。
【0008】
上記計測部5には照明用光ファイバ10の一端部となる照射部10aを設けてあり、この照明用光ファイバ10の他端部は上記ビーム2の内部を介して地上に引出し、上述した走行フレームFに設けた光源11に、回転式光チョッパなどの断続手段12を介して向き合わせている。
上記断続手段12は、回転板13と、この回転板13に形成した窓14と、回転板13を回転駆動するモータ15とを備えており、上記回転板13を照明用光ファイバ10の他端部と光源11との間に介在させている。
したがって光源11を点灯させた状態でモータ15により回転板13を回転させれば、光源11からの検査光は、回転板13の窓14を通過して照明用光ファイバ10の照射部10aから土壌に照射されるようになり、または回転板13によって遮断されて土壌に照射されることがない。
なお、断続手段12の他の例として、光源11自体を点滅させるようにしても良い。
【0009】
上記計測部5には分岐集光ファイバ20の一端部となる受光部20aを設けてあり、上記照射部10aから土壌に照射された検査光を該土壌で反射させて、その反射光を上記受光部20aによって受光させることができるようにしてある。
上記分岐集光ファイバ20の他端部は上記ビーム2の内部を介して地上に引出し、上記走行フレームFに設けた検出装置21に接続してある。
上記分岐集光ファイバ20は、上記受光部20aで受光した反射光を複数に分岐する分岐手段22の一部を構成しており、図示実施例では反射光を3つに分岐させることができるようにしてある。
また上記分岐手段22は、上記分岐集光ファイバ20の他に、3つに分岐された各分岐集光ファイバからの反射光を更にそれぞれ3つに分岐するために、それぞれ2つのダイクロイックミラー23、24を備えている。ダイクロイックミラー23、24の代わりにビームスプリッタを用いても良い。
【0010】
1つの分岐集光ファイバ20から出射された反射光は、コリメートレンズ25を透過して平行な光束とされた後、順次ダイクロイックミラー23、24を透過するようになっており、各ダイクロイックミラー23、24を透過する際にそれぞれ2つに分岐されるようになっている。
2つのダイクロイックミラー23、24を透過した反射光は、干渉フィルタ26を透過して検出器27によって検出されるようになっている。
他方、最初のダイクロイックミラー23によって反射された反射光は干渉フィルタ28を透過して検出器29によって検出され、またダイクロイックミラー23を透過して次のダイクロイックミラー24によって反射された反射光は干渉フィルタ30を透過して検出器31によって検出されるようになっている。
上記各干渉フィルタ26、28、30はそれぞれ特定の波長を透過させるように設定してあり、したがって各検出器27、29、31によってそれぞれ特定の波長を有する反射光の強度を検出することができるようになっている。
残りの2つの分岐集光ファイバ20から出射された反射光も、上述したのと同様にしてそれぞれ3つに分岐され、したがって本実施例では、合計で9種類の波長を有する反射光について各強度を検出することができるようにしてある。
なお、必要に応じて反射光を10以上に分岐させることができることは勿論である。また図示しないが、上記計測部5には照射部10aや受光部20aの他に、土壌観測面4と照射部10a及び受光部20aとの間隔を検出する土壌変位センサや、CCDカラーカメラ、或いは温度計などが設けられている。
【0011】
さらに、上記断続手段12を構成するモータ15にはエンコーダ40を取付けてあり、このエンコーダ40からの信号を各検出器27、29、31にそれぞれ設けた合計9個の信号処理手段41にそれぞれ入力させている。
各信号処理手段41は、エンコーダ40からの信号により回転板13の回転角度位置を、したがって光源11からの検査光が窓14を通過したか、或いは回転板13によって遮断されたかを検出することができるようになっている。
そして各信号処理手段41は、光源11からの検査光が回転板13によって遮断された際には、各検出器27、29、31によって検出された光の強度を外乱光の強度として記憶するようになっている。
他方、光源11からの検査光が窓14を通過して土壌に照射された際には、各検出器27、29、31によって検出された反射光の強度から、上記外乱光の強度を除いて、外乱光の影響を排除した真の反射光の強度を得ることができるようにしてある。そして、各信号処理手段41によって得られた真の反射光の強度は、採取場所などのデータと共に、図示しない記憶装置に記憶されるようになっている。上記採取場所のデータは、例えば走行フレームに設けたGPS(図1参照)によって得ることができる。
【0012】
上記土壌特性測定装置で採取されるデータとして、MC(水分)、SOM(土壌有機物)、TC(全炭素)、TN(全窒素)、二酸化炭素量、pH、CEC(陽イオン交換係数)等が挙げられる。
そして受光した反射光より、各波長の吸光度(どれだけ土壌に吸収されたかの度合)が検出される。このとき、波長と吸光度の関係において、予め物質毎の吸光度のレベルを検証してあり、特徴づけられる波長の吸光度から含まれる物質量を推定することができる。
また、複数の波長から物質量が推定されることが行なわれている。例えば、1230nm、1450nm、1650nmという波長はMC(水分)を推定するのに用いられ、MC(%)=10.97*Abs(1320nm)+194.54*Abs(1450nm)−234.74*Abs(1650nm)−11.70という式から水分が推定される。上記Abs(1320nm)は、波長1320nmの吸光度を示している。
これらの波長は、各干渉フィルタ26、28、30を適宜なものに選定することにより、例えば紫外光から中赤外光の範囲で任意の波長を検出することができる。
【0013】
このように、1箇所の計測点において多数のデータを採取することが必要となってきているが、本実施例では1箇所の計測点において採取された反射光を9つに分岐して各検出器27、29、31に入力させているので、各検出器27、29、31によるデータの採取を迅速に行なうことができる。
しかも、各検出器27、29、31のそれぞれに信号処理手段41を設けているので、各信号処理手段41によって外乱光の影響を排除した真の反射光の強度をそれぞれ迅速に検出することができる。したがって、チゼル部1を土壌中で高速度で進行させながら、多数の計測点でそれぞれ精度の良い多数のデータを採取することが可能となる。
【0014】
図3は本発明の第2実施例を示したもので、本実施例では第1実施例における各ダイクロイックミラー23、24を省略し、その代わりに分岐集光ファイバ50のみによって反射光を複数に、例えば9つに分岐するようにしたものである。
したがって本実施例では分岐集光ファイバ50が分岐手段22を構成することになり、分岐集光ファイバ50の一端部となる受光部50aで受光した反射光は、分岐集光ファイバ50で9つに分岐されて、それぞれコリメートレンズ25を透過し、かつ干渉フィルタ26によって選択された特定の波長がそれぞれの検出器27に入力されるようになる。
その他の構成は第1実施例と同様に構成してあり、同一部分若しくは相当部分には第1実施例と同一の符号を付して示してある。
本実施例でも第1実施例と同等の作用効果を得ることができ、特に本実施例ではダイクロイックミラーを使わないので光学系が簡単になり、調整不要で、機械振動に強いという利点がある。
【0015】
図4は本発明の第3実施例を示したもので、本実施例では1本の集光ファイバ60を用い、その一端部となる受光部60aで受光した反射光を、凹面状の回折格子61に照射するようにしたものである。
上記回折格子61に向けてアレイ状の多数の検出器27を配置してあり、各検出器27のそれぞれに信号処理手段41を設けている。
上記回折格子61に照射された反射光は、この回折格子61によって短い波長から長い波長に連続的に分岐されて、アレイ状に配置された多数の検出器における一端部側の検出器27から他端部側の検出器27へ入力されるようになる。したがって本実施例では、回折格子61が受光部60aで受光した反射光を複数に分岐する分岐手段22を構成している。
そして各検出器27は上述の実施例と同様に信号処理手段41をそれぞれ備えているので、本実施例でも上記実施例と同等の作用効果を得ることができる。
【0016】
図5は上述した第3実施例の変形例を示したもので、本実施例では各検出器27のそれぞれに集光ファイバ62を設け、各集光ファイバ62の受光部62aをそれぞれ回折格子61に向けて、かつ所要の位置に位置決めして固定してある。
本実施例においては、上記回折格子61で照射された反射光は、各集光ファイバ62の受光部62aで受光されてそれぞれの検出器27へ入力されるようになる。この際、上記各集光ファイバ62の受光部62aを所要の位置に位置決めしてあるので、上記回折格子61によって短い波長から長い波長に連続的に分岐された波長のうち、必要とする波長を選択して各受光部62aで受光することができるようになる。
そして本実施例においても、各検出器27は上述の実施例と同様に信号処理手段41をそれぞれ備えているので、上記実施例と同等の作用効果を得ることができる。
【0017】
なお、上記実施例ではいずれも光ファイバを用いているが、ライトパイプやレンズやミラーによるリレー光学系を用いても良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る土壌特性測定装置の全体を示す側面図。
【図2】本発明の第1実施例を示す概略構成図。
【図3】本発明の第2実施例を示す概略構成図。
【図4】本発明の第3実施例を示す要部の概略構成図。
【図5】本発明の第4実施例を示す要部の概略構成図。
【符号の説明】
【0019】
1 チゼル部 4 土壌観測面
10 照明用光ファイバ 10a照射部
12 断続手段 22 分岐手段
20、50 分岐集光ファイバ 61 回折格子
20a、50a、60a 受光部 41 信号処理手段
23、24 ダイクロイックミラー 27、29、31 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チゼル部に設けられて土壌に検査光を照射する照射部と、上記チゼル部に設けられて土壌からの反射光を受光する受光部と、この受光部で受光した反射光を複数に分岐する分岐手段と、この分岐手段によって分岐された各反射光における所定波長毎の強度を検出する検出器とを備え、上記チゼル部を土壌中で進行させながら土壌の特性を測定する土壌特性測定装置において、
上記検査光の照射を断続させる断続手段を設けるとともに、上記分岐手段によって分岐された反射光毎にそれぞれ上記検出器を設け、かつ各検出器のそれぞれに、上記検査光が照射された際に受光部で受光された反射光の強度から、検査光の照射が中断された際に受光部で受光された外乱光の強度を除く信号処理手段を設けたことを特徴とする土壌特性測定装置。
【請求項2】
上記分岐手段は、受光部で受光した反射光を複数に分岐する分岐集光ファイバを備えることを特徴とする請求項1に記載の土壌特性測定装置。
【請求項3】
上記分岐手段は、受光部で受光した反射光を複数に分岐する分岐集光ファイバと、各分岐集光ファイバからの反射光をそれぞれ複数に分岐するダイクロイックミラー又はビームスプリッタとを備えることを特徴とする請求項1に記載の土壌特性測定装置。
【請求項4】
上記分岐手段は、各検出器のそれぞれに反射光を入射させる回折格子を備えることを特徴とする請求項1に記載の土壌特性測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−242891(P2006−242891A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62369(P2005−62369)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(393028357)シブヤマシナリー株式会社 (77)
【Fターム(参考)】