説明

土壌脱窒処理装置

【課題】 アンモニア性窒素を脱窒させるために、土壌や粘土を利用する装置であって、施設の簡便さと操作の容易さのために、硝酸化に必要な酸素供給は、自然通気から得、脱窒には攪拌等を要しないものを提供することを目的とする。
【解決手段】 処理土壌を側面が開放された収容枠に投入し、汚水を処理土壌の上部から散水し、汚水中のアンモニア性窒素を硝化させるための必要な酸素は、処理土壌の表層、側面から取り込み、硝化された窒素成分は、保水材が充填され、流動化している粘土層を有する脱窒槽で脱窒させることを特徴とする土壌脱窒処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物最終処分場浸出水などの汚水のように、易分解性の有機物(BOD)が少なく、アンモニア性窒素を多く含み、水処理技術の生物学的脱窒処理が困難な汚水を、一般土壌や粘土を用いて、硝化、脱窒の一連の処理を行う処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物最終処分場の浸出水は、易分解性の有機物成分(BOD等)は、既に埋立地内で分解され、浸出水中には、有機性窒素成分から転換されたアンモニア性窒素(NH4−N)が多く含まれている。また高濃度な有機性廃液(食品工場廃液や家畜ふん尿等)に適用される嫌気処理方法においては、廃液中に含まれる窒素成分は処理されず、アンモニア性窒素(NH4−N)として残存する。
【0003】
汚水に含まれる窒素成分の代表的な除去方法は、活性汚泥中に生息する硝化菌による好気処理と脱窒菌による嫌気処理を組み合わせた生物学的脱窒法であり、汚水中の窒素成分は、最終的に不活性な窒素ガスに変換されて大気に放散される。
曝気(硝化)→脱窒→沈殿が代表的な処理工程となるアンモニア性窒素が多く含まれる汚水の脱窒処理において、装置の規模や運転管理面から最も困難な処理操作は、硝化工程である。特に廃棄物最終処分場の浸出水のように、汚水中に易分解性の有機物(BOD)がほとんど含まれない場合、硝化は全くすすまない時がある。また最終処分場の供用が終了した浸出水の処理は、無人となり、簡便な処理方法が望まれる。また嫌気処理は、処理規模が小規模であるが、高濃度なアンモニア性窒素であるため、そのまま放流等ができない。脱窒処理を行うためには、大規模な硝化槽等が必要となる。
【0004】
活性汚泥は原生動物や細菌が凝集した200から1000μmの不定形のフロックであり、硝化細菌等の微生物も取り込まれている。曝気(硝化)槽には酸素を供給するための空気攪拌により、常に流動化しており、微細なフロックも多く存在する。次工程の沈殿槽では沈降しきれない微細なフロックは処理水と共に流亡してしまう(ウオッシュアウト)。硝化細菌のように比増殖速度(μ)の小さい細菌は曝気槽内で増殖しきれないうちに微細なフロックと共に洗い出されてしまう。活性汚泥処理はウオッシュアウトがあることにより、活性汚泥菌として出現する個体数は多くなく、BODの処理が主体となることが多い。そのために、活性汚泥処理の変法として、活性汚泥のフロック内に出現する個体数を多くし、食物連鎖による発生汚泥の低減化を図った長時間曝気方式や微生物を充填材に固定する接触酸化処理方式等が導入されている。これらの処理方式は比増殖速度(μ)の小さい微生物も保持させることができる。
また汚水中のアンモニア性窒素を硝化させるためには、通常の活性汚泥処理に必要な3〜5倍の曝気槽容量、また硝化のための空気を供給する強攪拌となることから、硝化菌を硝化槽内で維持させるためには、大容量の曝気槽や沈殿槽が必要となると共に、水処理操作では、硝化槽出口の処理水の約3倍量を返送・循環させて対応している。
【0005】
比増殖速度(μ)とは、微生物の単位濃度あたりの増殖速度であって、1日に1回分裂をして、2倍に増殖する時のμは0.693(1/日)である。活性汚泥のBOD酸化細菌のμは約2.2(1/日)で、硝化細菌の代表種であるNitrosomonas属のμは0.2〜1.0(1/日)で、亜硝化細菌は0.2(1/日)で、活性汚泥菌の1/10と遅く、曝気槽内に維持させることが難しい処理方法となっている。また硝化細菌は温度による影響も大きく、寒冷地や冬季の水温の低い汚水の処理では、処理が困難となる。
【0006】
生物学的脱窒法では、汚水中のアンモニア性窒素(NH4−N)が硝酸化(NO−N、NO−N)された後、溶存酸素のない嫌気条件下におき、脱窒細菌の硝酸呼吸、亜硝酸呼吸を利用して、硝酸性窒素を不活性な窒素ガスに還元する。
脱窒細菌の大部分は外部から供給される有機炭素源に依存する他栄養細菌であり、メタノール等がよく利用される。水処理装置においては、更に再曝気槽を付設して過剰に注入された残留メタノール等の処理が必要となっている。
硝化→脱窒→再曝気を経て脱窒された汚水は、最終的に沈殿槽へ送水される。硝化、再曝気槽は空気による攪拌、脱窒槽は機械攪拌が行われるため、沈殿槽へは、汚泥(菌体)と処理水の混合水が送られ、その上澄み水が処理水として、沈殿した汚泥は処理槽の菌体保持のため、返送し、循環させる必要がある。
【0007】
硝化槽では生成する硝酸を中和するためのNaOH等のアルカリの注入、また脱窒槽では水のアルカリ度が上昇するため、適正なpH域を逸脱しないよう、HSO等の酸の注入が必要であり、簡易な操作が望まれる施設への導入は難しい。
【0008】
生物学的脱窒法の水処理の他に土壌による浄化処理方法がある。土壌には細菌、原生動物、小動物等による豊かな食物連鎖が維持されており、汚水などに含まれる有機物が投入されると速やかに分解し、浄化される。
また硫安、尿素等の窒素肥料を土壌に施用させた場合、速やかに硝化することや、ハウス栽培等では表層土に硝酸が集積すること等から、土壌の硝酸化能力は高く、土壌は陰イオン交換能力の高い粘土コロイドや腐植物が多く含まれているためにpH緩衝能力も高く、硝酸化による土壌の酸性を防除する優れた性質がある。
しかし汚水中に含まれる夾雑物や、有機物の分解により発生する汚泥、また粘性土の微細粒子等により、土壌内が閉塞状態となり、嫌気化による悪臭の発生や汚水の浸透能力の低下により、処理が続行できなくなる場合もある。また土壌の高い硝化能力も表層から10〜30cm程度に限られていることから、汚水中のアンモニア性窒素を硝酸化させる能力には限界がある。
【0009】
水を張って酸素の供給がさえぎられた水田においては、硝酸化肥料を水田土壌に投入すると、ほとんどが窒素ガスに還元され、水田では硝酸化肥料はあまり使い物にならないことが知られている。
土壌処理水の硝酸性窒素を水田土壌の形態にした土壌処理槽に注水すれば、窒素ガスに還元され、脱窒が可能となる。しかし水田のように水中にある土壌は、底部になるに従い、圧密化し、汚水の透水能力が期待できないことから実用化には至っていない。現状の処理技術では、土壌処理を経た後の脱窒処理は、生物学的脱窒法の脱窒槽と同じ方法で、水槽に入れた接触材などで菌体の維持を図った水処理方法によっている。
【0010】
具体的な従来例としては、例えば、有機系廃水に好気性処理を施すための酸化槽と、この酸化槽による好気性処理水に嫌気性処理を施すための脱窒槽とを備え、酸化槽は漏水防止用の遮水シートにより仕切った所定深さの土壌を有機系廃水の散布領域として、その土壌表面に散水パイプを敷設すると共に、土壌中に送気パイプと回収パイプとを埋設して構成され、その上部には保温室を形成するカバーが設けられる一方、脱窒槽は、内面が遮水シートにより被覆された地堀穴に炭素源と成すモミガラを収容して構成され、又、脱窒槽には好気性処理水を導入するための給水パイプと、好気性処理水の脱窒により得られる嫌気性処理水を外部放出するための排水パイプとが配管された装置が提案されている(特許文献1参照)。
また、汚水を散水する散水管を備える通水装置が配された上部土壌層が設けられ、その途中深さであって通水装置の直下に拡散層が設けられ、上部土壌層より下方には脱窒素性のある脱窒素層がその上側及び下側の二箇所に通気性のある排気層を伴って設けられ、排気層から装置外部へ通じる排気路が設けられ、脱窒素層より下方には下部土壌層が設けられ、その下方には集水層が設けられ、集水層に集水管が配された装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0011】
【特許文献1】特開2004−209312号公報
【特許文献2】特開2003−275780号公報
【0012】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、廃水処理を土壌の表層以外は遮水シート等により被覆され、送気パイプ等を用いているものの、土壌内の通気・排気効率が悪い。また、土壌に廃水が拡散したときに、土壌の圧密を防ぐ手段が講じられておらず、処理が進むにつれて、土壌内が閉塞状態となって処理効率が落ちるという問題を抱えている。
また、特許文献2記載の技術においても、土壌が処理槽に覆われており、土壌内の通気・排気は、土壌の表層、及び土壌内に配置された複数の管が用いられているに過ぎず、通気・排気の効率が悪く、また、装置自体が複雑化している。また、土壌の圧密を防ぐ手段についても、格別、講じられておらず、処理が進むにつれ土壌内が閉塞状態となって、処理効率が落ちるという問題をやはり抱えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、水処理操作での処理が難しいアンモニア性窒素の硝酸化を硝酸化能力の高い土壌を利用する方法及び装置であって、施設の簡便さと操作の容易さのために、硝酸化に必要な酸素はブロワー等による空気供給でなく、自然通気によるものを提供することを目的とする。
有機性窒素から転換されるアンモニア性窒素(NH−N)は硝酸化細菌、亜硝酸化細菌により、NO−NまたはNO−Nに酸化される。硝酸化細菌、亜硝酸化細菌は共に炭酸ガスを炭素源として細胞合成する自栄養細菌で、それぞれ次の酸化反応による。
NH+1.5O→NO+HO+2H+
NO+0.5O→NO
上記の硝酸化に必要な酸素は、NH−Nを1kg酸化させるのに4.6kgの酸素が必要となる。窒素肥料が土壌内で速やかに硝酸化されるには、上記の酸素が土壌に供給されている必要がある。
【0014】
NH−NからNO−N等への硝化は土壌中に硝酸化細菌等が存在することによる反応であって、土壌粒子等への吸着でないことから、飽和のない処理であり、永続性がある。
土壌における吸着や硝化による窒素の処理能力は、土壌の種類によって、大きく異なるが、土壌の窒素処理能力としては、1日乾土100g当たり0.5〜5.0mg/100gと考えられている。悪臭を土壌を通して脱臭する土壌脱臭の場合;土壌100g当たり1日に硝化できる能力は、10mgNH―N/100g乾土程度であり、この時の土壌高さは約50cmである。土壌脱臭は、土壌内部に常に強制的に空気が供給されているため、その硝化能力は高くなっている。
【0015】
活性汚泥処理で硝化させる場合、硝化負荷率は、曝気槽1m3当たり100gNH―N/m3・日で計画される。曝気槽では保有水当たり、土壌処理では保有土壌当たりの違いがあるが、単位容量当たりで換算すると、上記の負荷率は10mgNH―N/100g・日に相当する。これは強制通気を行う土壌脱臭の処理能力に相当する。
土壌脱臭のように通気をしない場合は、5mgNH―N/100g・日程度であり、活性汚泥の処理能力の1/2である。しかし曝気槽内の硝化菌はウオッシュアウト等による菌体保持が困難であるが、土壌内では容易に、安定して維持される。またブロワー等の動力を使用しない場合、運転管理面や省エネの面から格段に土壌による硝化の方が優れている。
【0016】
土壌内の空気は大気に比べて酸素濃度が低く、炭酸ガス、水蒸気が多い。有機物の分解に由来する炭酸ガスは20cm以上の深さでは、その濃度も上昇する。
窒素の処理能力とする5mg/100g乾土の場合、土;50%、水分;20%、空気;30%の土壌とすると、土壌中に含まれる平均の空気量は約60ccとなる。また全量がアンモニア性窒素であると仮定すると、5mgのアンモニア性窒素を硝酸化させるためには約80ccの空気が必要であり、土壌中に内在する空気量だけでは、20ccの空気が理論的に不足する。土壌硝化の大部分は表層であることから不足する空気は、常に土壌表層から供給されていることになる。
土壌の硝化能力を高めるためには、土壌内の空気量を大きくすること、また表層土壌の面積を大きくし、大気との接触を活発にさせることが必要となる。また硝化は温度による影響を大きく受けるため、容量や空気供給量に対して余裕のある規模とする必要がある。
【0017】
汚水を土壌に過剰に注水すると、表層が閉塞したり、土壌内部が圧密化し、土壌の浸透能力が低下し、土壌内部の空気も減少してしまう。
土壌表面から侵入する水は重力、土壌粒子間の孔隙間の毛管、水蒸気によって移動する。重力や毛管力による移動は、上下水平方向による移動であり、特に土壌の空気溜りである空隙部への移動となる。外部から注水する汚水は、重力により、土壌内の空隙部に侵入し、土壌内空気を押し出してしまう。これは注水量が多くなればなるほど顕著となる。
土壌の圧密化は土壌中の間隙比が減少することから発生する。間隙比の減少は、外部圧力や土壌の自重、過剰汚水の注入による微細粒子の移動による間隙の閉塞等が原因である。通常の耕作地ではこれらを防止するために、耕転させ、また土壌の団粒化を促進させている。
土壌処理を行う場合は、汚水の土壌への浸透能力が重要な要素となる。土壌の浸透能力は、土壌処理の実績等から、20〜60リットル/m2・日程度である。土壌内への過剰注水による間隙比の低下、土壌の自重等による圧密の防止を行うことができれば、土壌の浸透能力は大幅に上げることができる。
土壌表層から注水された汚水は重力により、下層に集水する。土壌処理の場合、土壌がフィルターとなり、菌体は土壌層内に留まる。しかし汚水の処理量を増やした場合、土壌中の粘土等の微細粒子が重力により流出してくる。これら微細粒子の流出を防止する必要がある。
【0018】
土壌による脱窒処理は水田の脱窒形態を応用する。
水田の断面構造は、表層から好気的な田面水、嫌気的な作土層、その下層にすき床層、心土層が重なっている。水中の酸素は水面の浅いところにある田面水に存在する好気性微生物の呼吸作用により、消費され、その下の作土層では酸素消費量が供給量を上回ってしまうため、嫌気的な微生物が活動し、嫌気的な物質変化がすすむ。
作土層には好気的あるいは半嫌気的な通性嫌気性菌が活動する層とその下層に嫌気が進んだ状態にある絶対嫌気性菌が存在する2つの層がある。硝酸の還元は、第1期の通性嫌気性菌が活動する層で行われ、酸化還元電位(Eh)は溶存酸素のない嫌気的な条件である+0.4〜+0.1ボルト程度となる。更に下層の絶対嫌気性菌が存在する層ではEhは0〜―0.3ボルトまで下がる。
硝酸のもつ酸素は酸化剤として、有機物を分解しながら、硝酸は窒素ガスに還元されていく。この硝酸の還元反応は次式で示すことができる。
2NO+3(H)→N+2OH+2H
2NO+5(H)→N+2OH+4H
(H)である有機炭素源にはメタノール等が利用され、メタノールではNO―Nの3倍量の添加が必要となる。
【0019】
汚水を土壌内で処理を行った場合、余剰汚泥となる菌体の増殖がある。その発生量は、1gのNH―Nを硝化した時、0.17gの菌体が生産され、脱窒においては、硝酸性窒素の3倍量を添加するメタノールの場合、0.15gの菌体が生産されると考えられている。ここで仮に5mg/100g乾土・日の時の菌体生産量は、硝化菌では0.85mg、脱窒菌では4.75mg、合わせて5.6mg/100g乾土・日となる。これは100gの乾土中1日当たり0.0056%であり、1年を通じても2%程度である。
土壌には豊かな食物連鎖が維持されており、これら菌体(汚泥)は乾土当たりの含有量も小さいことから、菌体(汚泥)の土壌内蓄積は無視できるものである。
【0020】
水処理操作、また土壌処理においても、硝化反応では、NH―Nを1mg酸化することにより、7.14mgのアルカリ度が消費され、pHが低下する。硝化反応がpHの影響により、反応が遅くなり、亜硝酸化のみが進んでしまうと亜硝酸イオンが蓄積されてくる。亜硝酸イオンは微生物に対して毒性が強いため、硝化反応全体が進行しなくなってしまう。最適のpHは7〜9である。脱窒反応では、硝酸性窒素が1mg脱窒される時、アルカリ度は3.57mg生成される。
土壌は粘土コロイドや腐植物が多く存在すると、優れたpH緩衝能力がある。そのためには処理する土壌中には、適度な吸着力の優れた粘土や腐植物を含有させておく必要がある。土壌処理槽の土壌は自然の土壌とは異なり、常に自然の降雨以上の汚水が注水されているため、微細粒子である粘土や腐植物が重力水により、流亡させないように土壌内の圧密化等を防止させることが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
汚水中のアンモニア性窒素を土壌処理により硝化させるためには、土壌自体の通気性、また通水性が重要な処理要素となる。土壌の硝化能力は土壌中にある空気も作用するが、表層の10〜30cm程度の深さで硝酸化する傾向があることから、大部分が表層から供給される空気により、アンモニア性窒素が硝酸性窒素に酸化されている。
本発明に使用する土壌は通気性、通水性のある砂質土壌を使用する。また大気との接触面を大きくするために、処理に使う土壌は収容枠に囲って、最上面の他に、側面も露出させて、大気と接触させる。このことにより大気と接触する土壌表層は、側面の4面が追加され、5面となる。
硝化菌の保有量を多くするためには、処理する土壌の容量を大きくすることが必要である。しかし土壌容量を大きくすることは、それだけ深くしなければならない。土壌の深い場所では、硝化に必要な空気の供給が十分行われないため、土壌容量を大きくしても効果的でない。しかし側面を大気に開放することにより、側面も表層土壌と同じく、空気を取り込むことができるため、処理土壌の深さを大きくさせる必要がなくなる。
【0022】
収容枠で囲われた土壌は側面を開放させるため、側面からの崩落を防止する必要がある。そのためには、土のもつ内部摩擦、せん断抵抗、圧縮力等の物理的性質を補完するための補助具を、主に土壌の側面に埋め込む。この補助具をウェッジ材という名称で以下説明をする。ウェッジ材は上方からの土圧に対してアースアンカーの機能をもたらす複数の平板を放射状に水平方向に配置する。平板の中心部は網目となっているプラスチック等による短管(メッシュ管と称する)に固定する。
平板の長さは20〜30cm程度で、平板の端部が重なるように、土壌側面回りに埋め込む。収容枠内の土壌に対して複数段を埋め込むことにより、露出した側面土壌の崩落が防止できる。
ウェッジ材の平板上層部の土は土圧により、圧密化するが、平板下方部は上方からの土圧が軽減されているため、空気が十分含まれた柔らかい土壌となる。そのため平板下方部は好気性細菌が集合する場所にもなる。
また中心部がメッシュ管であることから土中を移動する空気や水の通り道となり、土粒子に付着している菌体には、適度な水分と酸素が供給される。
ウェッジ材にあるメッシュ管が土中側面にあることにより、空気は表層、側面から取り込まれやすくなり、ブロワー等を必要としない自然通気のみで、硝化に必要な酸素を土壌に供給することができる。
また収容枠内の土壌の中央部にもメッシュ管を配置すれば、更に通水と通気がよくなる。
【0023】
収容枠に収められる土壌高さは、露出する側面の面積を確保するためには2m程度は必要となるので、複数段に重ねる構造とする。各段の底には水平方向のサポート材を配して、上方からの土圧を受けるようにする。2mの土圧は、各段で軽減され、収容枠の最底部の土壌の圧密化を防止し、圧密化による通水不良が起こらないようにする。
【0024】
表層10〜20cm程度の深さに埋め込み、2列に並べた網状の管の上部から注水する。注水口は処理土壌に均一に浸透していけるよう、複数個配置する。注水は連続して行う。
収容枠のコーナー部付近の土壌は、土圧による圧密を受けにくいため、比較的柔らかな土壌となることから、注水口からの汚水は、ここから漏出する場合がある。注水口回りには網状の管が埋め込まれた深さ以上に、しゃ水板を埋め込んで、漏水を防止する。網状の管に注水された汚水は、網状の管の内側面から下方へ浸透し、ウェッジ材の空隙部などを介して、下部に集水される。土壌中にメッシュ管が配置されていること、各段の底には水平方向のサポート材があり、上方からの土圧が軽減されていることにより、注水量は自然土壌の透水量の1日当たり20〜50リットル/mの約10倍となる200〜500リットル/m以上を確保することができる。
【0025】
収容枠の最下部には、集水と土粒子の落下を防止するための集水装置を設ける。
集水装置はプラスチック製の有孔管で、不織布を外面に巻き付け、収容枠全面に配置する。土壌を通過してきた水は不織布を湿潤し、不織布の下面に滴下する。
不織布下面には、不織布でできた集水布を設け、集水布から更に導水布となる綿布等でできた細い布束を濡らせながら、下部の脱窒槽へ導水させる。導水布は脱窒槽底部まで垂らす。集水装置直上部には土粒子の落下防止や土圧を軽減させるために、水平のサポート材を設置する。
集水装置となる有孔管の端部から、脱窒のためのメタノール希釈液を注入し、集水装置不織布を通して、処理水と共に収容枠の最下層の脱窒槽へ送水する。
【0026】
脱窒槽には、脱窒菌を固定する担体として、粘土をSV(Sludge Volume)50〜70%程度になるよう投入する。脱窒槽の容量は、処理量に対して、2〜5時間の滞留時間を確保し、深さは1m程度とする。
脱窒槽流入部、排水部には仕切り板を配し、流入部仕切り板には下部に開口を設け、排水は仕切り板上部から溢流させて、上向流による処理となるようにする。処理水は隣接の処理水槽から排水する。
投入する粘土は特別なものでなく、入手しやすい土壌から得る。そのため、粘土粒子は種々雑多であることから、粗大粒子や比重の重い粒子は、そのままでは水槽内で、沈積し圧密してしまう。これを防止するために、水槽には保水材を全面に充填する。
【0027】
保水材は、網状の管等に、砕石等の比重の重いものを入れて、浮かび上がらないようにし、複数枚の不織布でくるんだものを使用する。
不織布内の網状の管等には、常に水があるため、保水材周辺では圧密は起こらず、水槽内は流動化している粘土溶液に保つことができる。水田の上部の水が流動している通性嫌気菌の多い作土層を現出させることができる。
【0028】
脱窒菌は粘土粒子に付着して存在することから、水槽入口部から上向流によって水槽出口に至る間に、硝酸化性窒素が還元される。また他栄養細菌である脱窒菌が必要とする有機炭素源は、集水管にメタノール希釈液を注入することにより、硝化された処理水と共に、よく混合された状態で、脱窒槽へ供給される。
メタノールの注入量は、処理水槽の残留硝酸濃度を測定して、その要求量を把握して、注入量の調整をする。メタノール希釈液は、外部に専用のタンクを設置し、定量ポンプ等により、一定量を送液する。脱窒された処理水をメタノールの希釈に使用してもよい。
【0029】
脱窒槽に保水材を充填することにより、粘土は流動化する。そのため、脱窒槽を攪拌等する必要がないため、固液分離のための沈殿槽等は不要となる。
【0030】
硝化から脱窒まで収容枠等で囲った土壌脱窒処理装置を1つのユニットとし、必要な処理水量に応じて、ユニットを増やす。複数のユニットを設置する場合は、収容枠で囲まれた処理土壌の側面が大気に露出できる間隔をもたして配置する。
【発明の効果】
【0031】
土壌における硝化は表層土10〜30cm程度の浅い場所に限定されていること、土壌への通水は、一般土壌で1日あたり、20〜50リットル/mと通水能力に限界があること、易分解性の有機物が多い時や夾雑物がある時は土壌内で閉塞し、悪臭を発生する場合があること等、実用化には限界がある。
本発明では、硝化の必要とする空気量は、大気と接触している浅い場所からの取り込みであることに着目し、処理土壌の側面を露出させて大気との接触面積を大きくし、一般的な土壌の硝化能力とされる0.5〜5.0mgNH―N/100g乾土は、強制通気を行う土壌脱臭の実績値の10mgNH―N/100g乾土まで処理能力をあげることが可能となる。
【0032】
土壌中にアースアンカーの役割をするウェッジ材を、開放されている土壌側面部回りに設置する。ウェッジ材の中央部にはメッシュ管による空洞部があることにより、土壌の通気性、通水性が改善され、一般土壌の10倍である200〜500リットル/mの処理能力を確保することができる。また通気は自然通気とするため、ブロワー等の動力を使用しない。そのため構造が簡便であり、省エネルギーで無人管理が可能な装置とすることができる。
【0033】
土壌中のウェッジ材にはアースアンカーとなる放射状の水平に設置される平板を設けている。平板の裏面は土圧が分散され、圧密されていない土壌となる。ウェッジ材の構成物であるメッシュ管内部の空気溜りから、この裏面には、適度な水、酸素が常に供給される。そのためこの水平材の裏面には、多様な食物連鎖のある好気性微生物が集積し、汚水の処理過程で発生する余剰汚泥(菌体)は、好気性微生物により分解される。そのため汚泥の生成が少ない装置とすることができる。
【0034】
処理土壌の下部にはプラスチック製の有孔管で不織布を外面に付けた集水装置を設け、土粒子の落下を防止すると共に、処理土壌ほぼ全域に敷設することにより、均一な集水面積を確保し、処理土壌にみず道ができてしまう等による処理効率の低下を防止することができる。
【0035】
土壌処理で硝化された汚水の脱窒処理は、入手しやすい粘土を担体として、利用する。
脱窒に土壌(粘土)を利用した装置が実用化されていないのは、粘土粒子が底部で圧密化してしまい、透水性が確保できないためである。しかし脱窒槽に保水材を充填させることで、粘土粒子が沈積する槽底部での圧密化が解消でき、水田の脱窒能力の優れた作土層にみられるように、脱窒菌を粘土に保持させた処理を行うことができる。
また本発明の脱窒槽内は、保水材の水分により、周辺粘土の水分が保持され、膨潤していることから攪拌等を必要としない。そのため後段の沈殿処理工程が不要でそのまま放流できる。
【0036】
一般に入手しやすい土壌や粘土を使用し、簡単な構造で、動力を使わない単純な処理操作とすることにより、現技術の操作の複雑な、高コストとなる生物学的脱窒処理法の代替として活用することができる。また硝化・脱窒が連続して縦に配置され、沈殿槽が不要であることから設置面積も少なくてすむ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下本発明の実施例に係る土壌脱窒処理装置について、図を参照して説明する。
図1に示すように、側面、底面がサポート材21で囲まれ、底部が開口となっている収容枠2を縦方向に、複数段(図1は3段としている)設置する。最下層は水槽7であって、流入槽71、脱窒槽72、処理水槽73からなる。
脱窒槽72は2枚の仕切り板74及び75を設け、入口部の仕切り板74は、下面に開口を有し、出口の仕切り板75を越えて処理水槽73に流入した処理水は、水中ポンプ76により排水する。
【0038】
図1の収容枠2には、砂質土壌を天端まで収容し、汚水中のアンモニア性窒素の硝化を行い、水槽7は、脱窒部として機能するものであり、粘土を使用し、満水で、空気を供給することなく、硝酸等を脱窒して、不活性な窒素ガスにして、大気へ放出させる。
図2、図3に示すように最上層部には汚水の散水装置3、続いて図4、5のウェッジ材5を側面の回りに重点的に埋め込み、図面に示すように、3段目最下層にある集水装置6まで、複数段(図2では4段)を埋め込む。収容枠2の段毎の最底部には、上方土壌の土圧を受ける水平方向に配置されたサポート材21を設け、サポート材21間は開口とする。
収容枠2には、下段から順々に砂質土壌を投入し、同時にウェッジ材5を埋め込んでいく。
横方向に配置されるサポート材21は、図3では、3段目の集水装置6の上部(i−i´面)において集水装置6を土圧から保護するためのサポート材22もおく。このため集水装置6のある収容枠には水平方向のサポート材は、サポート材21、22の2段が置かれ、集水装置6上部の土壌には、土圧が軽減されている。
【0039】
図1の収容枠2の最下段には図2、図3に示す集水装置6を全面に配置する。集水装置6は上方からの土粒子を脱窒槽72へ落下させないためと、処理土壌4全面から均一に集水ができるよう取り付ける。
構造は図6、7に示すように、プラスチック等の有孔管61の外面に落下する土粒子の堆積による目詰まりを防止するために、ちょうちん状に加工して、面積が大きくなった不織布62で覆う。処理水は不織布62を湿潤して、下部に滴下する。不織布62から滴下する水は、集水布63で受け、更に下面に不織布の束でできた導水布束64を垂らす。導水布束64は、集水装置6下部と水槽7の間の空間を通り、流入槽74の底まで垂らす。このことにより、流入部にある粘土が導水布束64の保水により、常に湿潤であり、圧密を防止できる。
処理土壌4を通過する水は、散水量が1日当たり500リットル/m・日の連続する負荷水量である場合、1時間当たり20mm/時の通水速度であり、処理土壌4の土粒子が通水される水に随伴して、落下するような速度でない。
収容枠2に初期に投入した時に落下する土粒子が下の水槽7に混入することを避けるのが大きな目的である。
また1時間当たり20mm/時の通水速度で集水装置6に滴下する処理水は、集水装置6の不織布62を湿潤させるが、不織布62に覆われた内筒である有孔管61内まで水が侵入することはない。そのため有孔管61の両端に管用ノズル65a及び65bを設け、圧力空気バルブ66により、片方の管用ノズル65aから、圧力空気を送気すれば、不織布62の上部は乾いた状態、下部は湿潤状態であり、直上の水平に配置するサポート材22により、圧密されていないので、空気は上方に堆積する土粒子を、吹き飛ばし除去させることができる。
また片方の管用ノズル65bから、メタノール注入バルブ67により、脱窒に必要な有機炭素源となるメタノール希釈液を注入すれば、有孔管61の孔61aから、下部の湿潤する不織布62を通して、メタノール希釈液は処理水とよく混合されて、流入槽71に送水できる。
【0040】
仕切り板74及び75で仕切られた脱窒槽72には、図8の保水材8を全面に充填する。保水材8は、網状の短管81におもり83の役目をする砕石等を装入し、外面を不織布82で覆う。脱窒槽72には、SVで50〜70%になるよう水と共に粘土を投入する。粘土は、粒径や比重の異なる雑多な粒子であって、攪拌等をしなければ、底部に沈積し、圧密化してしまう。保水材8は粘土層の水を保持させることにより、圧密化の現象でみられるように、沈積した層の下層の水は排除され、圧密化していくことが防止できる。
湿潤した保水材8により、脱窒槽72の粘土は、圧密することはない。
【0041】
ウェッジ材5は、複数の薄板状の平板52を、縦に置かれたメッシュ管51を中心に水平方向に放射状に延びるよう、階層的に挿通させて固定したものである。なお、平板52は、少なくともメッシュ管51の上面及び下面の位置に挿通させるが、用いる枚数は特に限定されない。
このウェッジ材5を図4、5に示すように、メッシュ管51を縦にして、平板52の平面が水平面に平行となるよう設置することにより、平板52が土中アンカーとなり、平板52に水平面上の面積があることにより、上方からの圧力が分散し、圧密化を防止する。平板52下方部は上方からの土圧が軽減されているため、空気が十分含まれた柔らかい土壌(圧密が軽減された処理土壌4a)となる。そのため平板52下方部は好気性細菌が集合する場所にもなる。
また中心部のメッシュ管51が網目状の中空管であることから土中を移動する空気や水の通り道となり、土粒子に付着している菌体へは、適度な水分と酸素が土中を拡散して供給される。
水平に配置したウェッジ材5のメッシュ管51の上面、下面は、管を突き抜けるように放射状に交錯した平板52がストッパーの役割をして、上面と下面の間に形成された中央空洞部には、土が落下しない。またメッシュ管51の側面では、土粒子は鉛直方向に土圧を受けているため、メッシュ管51の網目から土粒子が侵入することはなく、空洞は保たれる。
【0042】
処理土壌4内に設置するウェッジ材5は、図9に示すように、処理土壌4側面側に重点的に配置させる。水平的には放射状である平板が一部重なるようにし、鉛直方向には平板52の半分の長さ程度の間隔で配置する。水平に配置されたウェッジ材5の平板52が重なるようにしていることから、土圧は全体で受けるようになり、収容枠2内の処理土壌4の側面土壌の崩落は防止できる。
またウェッジ材5を処理土壌4内に設置する時、収容枠4側面には取り外し可能の板を取り付け、側面に投入する土壌4には、初期圧力をかけながら、ある程度の圧密をさせ、ウェッジ材5と処理土壌4がからみあって一体となるようにする。所定の処理土壌4とウェッジ材5に初期圧力をかけての投入が終了してから、外枠の板を取り外す。
メッシュ管51が処理土壌4の中に埋め込まれ、側面近くに配置されていることにより、空気は側面から取り込まれ易くなる。また処理土壌4の断面中央部にもメッシュ管51を配置し、通水と通気を確保する。
【0043】
散水装置3は、汚水の注水を行う装置であり、図2に示すように、汚水を注水する注水管31の周りを囲繞するしゃ水板32よりなる。
注水は処理土壌4上部から表層10〜20cm程度の深さに装入した2列に並べた網状の注水管31の上部の注水口31aより行う。また注水口31aは処理土壌4に均一に浸透していけるよう、複数個配置する。注水は連続して行う。
表層にある処理土壌4、特に収容枠2のコーナー部付近は、土圧によって圧密を受けないため、比較的柔らかな土壌であることから、注水口31aからの汚水はこれら水の通りやすい箇所に漏出する場合がある。注水口31a回りには注水管31以上の深さのしゃ水板32を装入してこれを防止する。しゃ水板32は複数で設置すればそのしゃ水効果があがる。
注水管31に注水した汚水は、注水管31の内側面から下方へ浸透し、ウェッジ材5の空隙部などを介して、下部に集水される。
【0044】
図10に示すように、収容枠2で囲われた処理土壌4の下部には集水と土粒子の落下を防止するための集水装置6を設ける。集水装置6は、図6に示すように、プラスチック製等の有孔管61で、ちょうちん状に加工された不織布62を外面に取り付ける。有孔管61は、外周面上に孔61aが開いた中空の筒である。また、不織布62は、図7に示すように、不織布62を縮めてちょうちん状に成形している。不織布62をちょうちん状とする目的は、不織布62と落水する処理水の接触面積を多くすることと、落下する土粒子が不織布62に堆積した場合、目詰まりを軽減させることにある。汚水の処理土壌4への通水速度は、1時間当たり10〜20mmの平均速度であるため、処理水のSS濃度は、5mg/L以下であり、土粒子が処理水に随伴して落下することはないが、初期に微細粒子が処理水に随伴してくる場合に対応させる。不織布62は上部が土粒子の堆積により、押しつぶされた状態62aとなる。
処理水は不織布62を伝わって、下面に集水される。不織布62下面には、不織布62でできた集水布63を設け、集水布63から更に導水布となる綿布等でできた細い布束の導水布束64を垂らし、図2に示すように下部の脱窒部である水槽7へ導水させる。導水布束64で導水する目的は、脱窒部である水槽7において、流入槽71下方から脱窒槽72へ処理水を流入させ、上向流で処理ができるようにするためである。
集水装置6直上部には土粒子の落下防止や土圧を軽減させるために、収容枠2には、図3(i−i’)面に水平方向のサポート材22を設置する。
【0045】
集水装置となる有孔管61の両端は板61bで遮蔽し、管用ノズル65a及び65b、圧力空気バルブ66、メタノール注入バルブ67を設ける。管用ノズル65a及び65bは、有孔管61の中空部と、圧力空気バルブ66ないしはメタノール注入バルブ67とを繋いでいる。メタノール注入バルブ67は脱窒のためのメタノール希釈液を注入し、当該メタノール希釈液を有孔管61の孔61aから浸出させ、不織布62を通して処理水と共に水槽7へ送水する。片方の圧力空気バルブ66からは、外部から持ち込むブロワーから不定期に不織布62上面に堆積する微細粒子を圧力空気で除去をする。ブロワーは装置としては設置しない。
【0046】
集水装置6の集水布63から細い布束である導水布束64により、処理水は収容枠4最下層の脱窒部へ導水される。脱窒部は側板及び底板で囲われた水槽7である。
図1に示すように、脱窒槽72の入口部には、下方が開口した仕切り板74を設け、硝化された汚水は流入槽71下部から供給される。脱窒槽72の出口部は入口側と反対方向に仕切り板75を設け、仕切り板上部から隣接する処理水槽73へオーバーフローさせて流入する。オーバーフローとする理由は、脱窒により発生する窒素ガスが水中の土粒子に付着して、スカムを発生する場合があるため、このスカムを排出させることが目的である。
隣接する処理水槽73からは、水中ポンプ76により、系外へ排水する。
【0047】
脱窒槽72には粘土をSV(Sludge Volume)として、50〜70%程度になるよう投入する。
投入する粘土は、入手しやすい土壌から得たもので、特別なものでないため、その粒子は種々雑多のものとなる。粗大粒子や比重の重い粒子は、そのままでは脱窒槽72内で、下方に沈積し圧密する。これを防止するために、脱窒槽7には保水材8を充填する。
【0048】
保水材8は、図8に示すように、ウェッジ材5に使用したメッシュ管51と同様の網状の短管81に複数枚の不織布82でくるんだものを使用する。これを脱窒槽72全面に敷設するために、網状の短管81には砕石等の比重の重いおもり83を入れて、浮かび上がらないようにする。圧密化は土粒子が沈積するときに、底部から水が排除されるために起こることから、不織布82内には常に水が含まれておれば、圧密化は防止でき、脱窒槽72内は流動化している粘土溶液に保つことができる。
【0049】
脱窒菌は粘土粒子に付着して存在することから、脱窒槽72入口部から上向流によって脱窒槽72出口に至る間に、硝酸化性窒素が還元される。また他栄養細菌である脱窒菌が必要とする有機炭素源は、メタノール注入バルブ67から有孔管61にメタノール希釈液を注入することにより、硝化された処理水と共に、よく混合された状態で、脱窒槽72へ供給される。
メタノールの注入量は、処理水槽73の残留硝酸濃度を測定して、その要求量を把握して、注入量の調整をする。
メタノール希釈液は、外部に専用のタンクを設置し、定量ポンプ等により、一定量を送液する。脱窒された処理水をメタノールの希釈に使用してもよい。
【0050】
収容枠2及び脱窒槽72に処理土壌4、散水装置3、ウェッジ材5、集水装置6、保水材8、粘土等が設置された本発明の土壌脱窒処理装置1は、図9に示すように、1つのユニットとなる。また図10には処理土壌4が詰め込まれた完成ユニットを示す。処理土壌4の詰められた側面は露出しており、ウェッジ材5が埋め込まれていることにより、処理土壌4は側面に大きく開放された開口から、崩落することはなく、処理土壌4は上面、側面の5面が表層土となり、大気からの空気の供給を受けることになる。自然土壌による硝化能力に対して、面積的には側面の4面が表層とする能力となる。
【0051】
ユニットの面積を仮に1.5m×3.0mとすれば、1日当たり約2m/日の処理能力を得る。1日当たり10m/日の処理能力が必要となる場合、5つのユニットに同時通水することになる。図11に6つのユニットを示しているが、汚水の脱窒処理をする主体は、自然土壌である。これら自然土壌を人工的に利用する装置においては、土壌中の微生物等の食物連鎖となる生態系を維持させていく必要がある。そのためユニットの1つは予備用として、一定期間休止させる方法により、運転する必要がある。
【0052】
図11の6つに並べたユニット間には、図9、10に示すように、処理水槽73の上部にある収容枠からはみ出た処理水槽の幅でもって4方向に、隙間を設ける。この隙間は、初期土壌を処理枠に投入する時、初期転圧をするための側板を取り付け、取り外しの作業エリアであり、側板を取り外した後、側面を大気へ露出させる空間となる。
複数のユニットで構成された土壌脱窒処理装置1は、下部が流入槽71、脱窒槽72、処理水槽73の水槽7であることから、既存の土壌処理装置のように処理水を地下に浸透させることなく、ユニットからの漏水がないため、地上に設置するか、または地下にも埋設して設置できる構造となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】土壌脱窒処理装置収容枠全体図
【図2】土壌脱窒処理装置断面図
【図3】土壌脱窒処理装置各段平面図
【図4】ウェッジ材の斜視図
【図5】ウェッジ材据付時の平面図及び断面図
【図6】(A)は集水装置の側面側からの断面図、(B)は集水装置の正面側からの断面図
【図7】ちょうちん状の不織布の成形を示す斜視図
【図8】保水材の側面図
【図9】土壌脱窒処理装置内部部品組立斜視図
【図10】土壌脱窒処理装置土壌投入後の組立斜視図
【図11】複数の土壌脱窒処理装置を設置した状態を示す斜視図
【符号の説明】
【0054】
1・・・土壌脱窒処理装置、2・・・収容枠、21・・・サポート材、3・・・散水装置、31・・・注水管、31a・・・注水口、32・・・しゃ水板、4・・・処理土壌、4a・・・圧密が軽減された処理土壌、5・・・ウェッジ材、51・・・メッシュ管、52・・・平板、6・・・集水装置、61・・・有孔管、61a・・・孔、61b・・・板、62・・・不織布、62a・・・土粒子の堆積で押しつぶされた状態の不織布、63・・・集水布、64・・・導水布束、65a・・・管用ノズル、65b・・・管用ノズル、66・・・圧力空気バルブ、67・・・メタノール注入バルブ、7・・・水槽、71・・・流入槽、72・・・脱窒槽、73・・・処理水槽、74・・・仕切り板、75・・・仕切り板、76・・・水中ポンプ、8・・・保水材、81・・・網状の短管、82・・・不織布、83・・・おもり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝化のために砂質土壌等からなる処理土壌を枠内に収容し、その収容枠を複数段に重ね、直下に粘土等を利用する脱窒槽、処理水槽を配し、汚水中のアンモニア性窒素を脱窒まで、縦方向で一連に処理をするユニット型としたことを特徴とする土壌脱窒処理装置。
【請求項2】
アースアンカーとなる複数の水平材を有する補助部材を上記処理土壌に埋め込み、処理土壌と大気との接触面を土壌表層の他に、側面も大気に露出させ、土壌の硝化能力を高めることを特徴とする請求項1記載の土壌脱窒処理装置。
【請求項3】
上記アースアンカーとなる補助部材の水平材は、放射状に配置され、その中央を網状の短管で固定し、主に処理土壌の側面に水平状に、かつ、複数段で埋め込むことで、上記露出している側面土壌の崩落を防止すると共に、処理土壌の通水性、通気性を高めることを特徴とする請求項2記載の土壌脱窒処理装置。
【請求項4】
収容枠を複数段、縦方向に積み重ね、各段の底部には、土圧をうける水平方向のサポート材をさらに有することを特徴とする請求項1記載の土壌脱窒処理装置。
【請求項5】
上記処理土壌に均一な通水をさせるため、また上部からの土粒子の落下を防止させるために、複数段の収容枠の最下層には、有孔管を不織布で覆った集水管を全面的に配置し、当該集水管の不織布から滴下する処理水を脱窒槽に送水する導水布束を有することを特徴とする請求項1記載の土壌脱窒処理装置。
【請求項6】
上記収容枠の最上層には、複数の網状の管を処理土壌に埋め込み、その周囲には側面への漏水を防止するしゃ水板を四方に埋め込んだ複数の散水装置を有することを特徴とする請求項1記載の土壌脱窒処理装置。
【請求項7】
上記収容枠の最下層には、脱窒をする脱窒槽を配し、この脱窒槽では上向流による処理となるよう、上記脱窒槽の流入部、排水部には仕切り板を配し、流入部仕切り板には下部に開口を設け、排水は仕切り板上部から溢流し、処理水は隣接の処理水槽へ排水することを特徴とする請求項1記載の土壌脱窒処理装置。
【請求項8】
上記脱窒槽内には、脱窒菌を保持させるための粘土を投入し、上記脱窒槽内で粘土粒子が底部に圧密し、通水ができなくなることを防止するために、砕石などのおもりを入れた網状の管等の外面が不織布で覆われた保水材を槽全面に充填することを特徴とする請求項7記載の土壌脱窒処理装置。
【請求項9】
攪拌等を不要とし、沈殿槽等の固液分離を有しないことを特徴とする請求項8記載の土壌脱窒処理装置。
【請求項10】
上記土壌脱窒処理装置を1つのユニットとし、水量に応じて複数設置された上記ユニットが、処理土壌の側面が大気に露出できる間隔をおいて配置されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかの項に記載の土壌脱窒処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−216114(P2007−216114A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37734(P2006−37734)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【特許番号】特許第3830505号(P3830505)
【特許公報発行日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(505423601)株式会社クリーンテクノ (7)
【Fターム(参考)】