説明

土壌膨軟装置

【課題】ロータリ耕耘作業時に走行機体の車輪により踏圧された土壌の硬盤層を膨軟にし、牽引抵抗を小さくする土壌膨軟装置を提供する。
【解決手段】土壌膨軟装置40は、走行機体90の後部に装着され、耕耘爪17が装着された耕耘ロータ15を回転させながら進行して圃場Hを耕耘するロータリ作業機に設けられ、走行機体90の後輪92の走行方向後方で耕耘ロータ15よりも前方又は後方に配置され、ロータリ作業機に支持された支持体部41と、この下部に取り付けられて左右方向に延びる刃体45を有する。刃体45は、走行機体90の後輪92により踏圧された土壌の硬盤層Kの底部に配置され、走行機体90の前進走行とともに進行して硬盤層Kを膨軟にする。支持体部41の左右方向の厚さ及び刃45体の上下方向の厚さは、耕耘爪17の厚さと同程度であり、刃体45の左右方向の幅は、走行機体90の後輪92の幅方向寸法と略同一幅である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の車輪により踏圧された土壌を膨軟にする刃体を有した土壌膨軟装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圃場をロータリ耕耘すると、走行機体の車輪による車輪跡が形成され、車輪跡の下方には車輪により踏圧された硬く締まった土壌の硬盤層ができる。このロータリ耕耘を2〜3回行うと、圃場の略全域に硬盤層ができる。この硬盤層ができると、作物の健全な根の成長が望めなくなる。
【0003】
そこで、走行機体の後部に装着されたロータリ作業機の前側に、車輪により踏圧された土壌とこの土壌の下方に存在している未耕地の心土を膨軟にする刃体を有した心土破砕装置を設けたものが知られている(特許文献1参照)。この心土破砕装置は、ロータリ作業機の前側に進行方向に対して左右方向に延びて支持された横桁に等間隔に配設された4つの心土破砕体を有して構成されている。これらの心土破砕体のうち機体幅方向両側に設けられた心土破砕体は走行機体の車幅方向の両側に配設された一対の車輪の各後方に配置され、残りの心土破砕体は一対の車輪間に配置されている。心土破砕体は、横桁に取り付けられて下方へ延びる支持部材と、支持部材の下端部に設けられた刃体を有する。
【0004】
また、土壌膨軟装置には、ロータリ作業機の進行方向前側に設けられた前部フレームに取り付けられたコールタ状の刃体を有して構成されたものがある(特許文献2参照)。この刃体は、走行機体の車幅方向両側に設けられた一対の車輪の各後方に配置され、前縁に刃縁を有する縦刃を備えた縦刃部と、縦刃部の下端部を一側に屈曲してなる横刃部を有してなる。刃体は、横刃部の先端部同士が所定間隔を有して対向配置され、この対向配置された一対の刃体が、走行機体の一対の車輪の各後方に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平5−20094号公報(3頁右側の27行目〜4頁左側の1行目、図2、図12)
【特許文献2】特開2001−69807号公報(段落0015、0016、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この特許文献1に記載の従来の心土破砕装置は、4つの心土破砕体を圃場の土壌内に貫入しながら進行するため、牽引抵抗が大きく、大型の走行機体が必要になる。
【0007】
特許文献2に記載の従来の土壌膨軟装置の刃体は、その横刃部の進行方向に対する左右方向幅が走行機体の車輪により踏圧された土壌の幅よりも小さく、しかも対向配置された一対の刃体の各横刃部の左右方向幅の合算値は、車輪により踏圧された土壌の幅よりも小さい。このため、車輪により踏圧された土壌の硬盤層を部分的にしか膨軟にすることができず、硬盤層の全体を膨軟にすることができない。従って、ロータリ耕耘を圃場全体に行うと、圃場の略全域に硬盤層が残る。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、ロータリ耕耘作業時において走行機体の車輪により踏圧された土壌の硬盤層の略全体を膨軟にすることができ、また牽引抵抗を小さくすることができる土壌膨軟装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するため、本発明は、走行機体の後部に装着され、複数の耕耘爪が装着された耕耘ロータを回転させながら進行して圃場を耕耘するロータリ作業機に設けられる土壌膨軟装置であって、走行機体に設けられた車輪(例えば、実施形態における後輪92)の走行方向の後方で耕耘ロータよりも前方又は後方に配置され、ロータリ作業機に支持されて下方へ延びる支持体部と、該支持体部の下部に取り付けられて進行方向に対して左右方向に延びる刃体を有し、刃体は、走行機体の車輪により踏圧された土壌の硬盤層の底部に配置され、走行機体の前進走行とともに進行して硬盤層を膨軟にすることを構成要件とする。
【0010】
土壌膨軟装置の設置位置の一条件である走行機体の車輪の走行方向の後方とは、車輪の車輪跡に土壌膨軟装置が作用するように、車輪の走行方向の後方側をいう。具体的には、車輪の走行方向の後方であって車輪の幅の範囲内が好ましい。
【0011】
土壌膨軟装置は、走行機体の車輪により踏圧された土壌の硬盤層を膨軟にするものであるので、土壌膨軟装置は車輪の数に応じて決定される。通常、走行機体(トラクタ)は、車体の前側と後側の各両側に一対の前輪及び一対の後輪を有し、後輪の車輪跡内に前輪のそれが含まれるように、後輪は前輪よりも大きな幅を有している。このため、走行機体の走行時において形成される車輪跡は2本となる。従って、走行機体の後輪の数と同じ数、即ち、2つの土壌膨軟装置が必要となる。
【0012】
土壌膨軟装置は、支持体部とこの下部に取り付けられた刃体を有し、これらの刃体や支持体部の下側は土壌内に貫入された状態で進行するため、これらの進行に伴って土壌から受ける抵抗を小さくする必要がある。このため、支持体部の進行方向に対する左右方向の厚さ及び刃体の上下方向の厚さを小さくする必要がある。但し、これらの厚さを薄くしすぎると強度が弱くなって使用できなくなる虞が生じる。このため、支持体部の進行方向に対する左右方向の厚さ及び刃体の上下方向の厚さは、耕耘爪の厚さと同程度の厚さが好ましい(請求項2)。具体的には、土壌膨軟装置は金属材料製であり、10mm前後の厚さが好ましい。
【0013】
また走行機体の車輪により踏圧された土壌の硬盤層を膨軟にする刃体は、走行機体の車輪の幅方向寸法と略同一幅を有することを構成要件とする(請求項2)。硬盤層は、車輪幅と程同一幅に形成されるため、刃体は走行機体の車輪の幅方向寸法と略同一幅を有することで、刃体によって硬盤層の幅方向の全体を膨軟にすることができる。
【0014】
また、刃体は、走行機体の車輪により踏圧された土壌の硬盤層の底部に配置されることを構成要件とする(請求項1)。硬盤層の上下方向の中間位置に刃体が配置された状態で前進すると、刃体よりも上方の硬盤層は膨軟にされるが、刃体よりも下方の硬盤層は残される。このため、刃体は、硬盤層の底部に配置される。硬盤層の底部とは、硬盤層と硬盤層の下方に隣接する心土との境界やこの境界よりも僅かに上方にずれた位置をいう。刃体は、前方に僅かに斜め下向きに傾けた板状に形成されることが好ましい。刃体が前側に傾くことで、刃体の進行に伴って硬盤層が上方に押圧され硬盤層を膨軟にすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係わる土壌膨軟装置によれば、走行機体に設けられた車輪の走行方向の後方で耕耘ロータよりも前方又は後方に配置され、ロータリ作業機に支持されて下方へ延びる支持体部の下部に進行方向に対して左右方向に延びる刃体を設け、刃体を走行機体の車輪により踏圧された土壌の硬盤層の底部に配置することで、走行機体の車輪により踏圧された土壌の硬盤層の全体を膨軟にすることができ、圃場におけるロータリ耕耘作業の各工程毎に車輪により踏圧されて形成された硬盤層が土壌膨軟装置によって膨軟にされるので、ロータリ耕耘作業時に硬盤層を形成することがない。また支持体部の進行方向に対する左右方向の厚さ及び刃体の上下方向の厚さを、耕耘爪の厚さと同程度の厚さにし、刃体の進行方向に対する左右方向の幅を走行機体の車輪の幅方向寸法と略同一幅にすることで、牽引抵抗を小さくすることができ、走行機体の大型化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる土壌膨軟装置によって硬盤層を膨軟にする作用を説明するためにロータリ作業機を後方から見たときの説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係わる土壌膨軟装置を搭載したロータリ作業機の側面図を示す。
【図3】本発明の一実施の形態に係わる土壌膨軟装置を搭載したロータリ作業機の背面図を示す。
【図4】本発明の一実施の形態に係わる土壌膨軟装置を示し、同図(a)は土壌膨軟装置の正面図であり、同図(b)は土壌膨軟装置の側面図であり、同図(c)は土壌膨軟装置の裏面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係わる土壌膨軟装置を搭載したロータリ作業機の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。先ず、本発明に係る土壌膨軟装置を説明する前に、土壌膨軟装置を搭載するロータリ作業機について説明する。ロータリ作業機は、走行機体による牽引等によって、耕耘ロータを回転させながら、圃場の土壌を耕耘、砕土、整地する作業を行うものである。
【0018】
ロータリ作業機1は、図2(側面図)及び図3(背面図)に示すように、進行方向に対して左右方向に延びる主フレーム3を有した機体5の前部に、走行機体90の後部に設けられた3点リンク連結機構に連結されるトップマスト6とロアーリンク連結部を設けて、走行機体90の後部に対して昇降可能に装着される。また機体5の前部の左右両側には、ゲージ輪7が上下方向に位置調節可能に設けられている。主フレーム3の軸方向中央部には前方へ突出する入力軸9aを備えたギアボックス9が設けられ、走行機体90のPTO軸からユニバーサルジョイント等の動力伝達手段を介して動力が入力軸9aに伝達されるようになっている。
【0019】
主フレーム3の左右方向の一方側の端部には、チェーン伝動ケース11が垂設され、主フレーム3の左右方向の他方側の端部には側部フレーム13がチェーン伝動ケース11と対向して垂設されている。チェーン伝動ケース11に接続された主フレーム3の一方側及びチェーン伝動ケース11内には伝動機構が設けられ、チェーン伝動ケース11と側部フレーム13の下端部間には、回転自在に支持された耕耘爪軸16に多数の耕耘爪17を放射状に取り付けた耕耘ロータ15が設けられている。そして、入力軸9aに伝達された動力は、ギアボックス9を介して主フレーム3及びチェーン伝動ケース11内の伝動機構に伝達されて、耕耘ロータ15をダウンカット方向(矢印a方向)に回転させる。
【0020】
耕耘爪17は、金属材料製であり、耕耘爪軸16に取り付けられる取付基部から連続して延びる縦刃部17a及び横刃部17bを有し、横刃部17bは縦刃部17aに対して一方側に弯曲する。耕耘爪17の取付基部の厚さtは約10mmである。耕耘爪17の厚さtは先端側に進むに従って薄くなり、先端部では約6mmの厚さになっている。このように耕耘爪17の厚さを薄くすることで、耕耘爪17が土壌内に打ち込まれて圃場の土壌を耕耘する際の抵抗を小さくすることができる。
【0021】
耕耘ロータ15の上側は、上部カバー19によって覆われている。上部カバー19は、耕耘ロータ15の前側から後方側に延びる。耕耘ロータ15の後側の上方には主フレーム3に沿って延びるサブフレーム21が設けられている。サブフレーム21は、連結部材22を介して主フレーム3に固定されている。
【0022】
チェーン伝動ケース11と側部フレーム13の後端部間には、後方側へ張り出す一対の側板24が設けられ、これらの側板24は、各上部がサブフレーム21の軸方向端部に固定支持されている。これらの側板24によって耕耘ロータ15によって耕耘されて飛散する土壌が側方に飛び出すのを規制している。一対の側板24の後側の上端部には、エプロン26が上下方向に回動自在に取り付けられている。
【0023】
エプロン26は側板24の後側の上部から斜め下方へ延び、エプロン26の後端部26aは進行方向に対して左右方向に略直線状に形成されて耕土表面を平らに整地する。エプロン26の後部の左右両端部上にはブラケット28が設けられ、このブラケット28を介して延長整地板30がエプロン26の外側に水平方向に張り出す作業位置とエプロン側に回動して収納される収納位置との間で起倒可能に構成されている。サブフレーム21とエプロン26との間には、複数のコンプレッションロッド32が所定の間隔を有して配設されて、エプロン26を下方へ付勢している。
【0024】
このように構成されたロータリ作業機1を牽引する走行機体90は、車体の前側と後側の各両側に一対の前輪及び後輪92を有して構成される。後輪92は前輪よりも大径であるとともに厚さも厚い。後輪92はその車輪跡内に後輪92の前方に配設された前輪の車輪跡が含まれるように、前輪及び後輪92は機体に配設されている。このため、走行機体90の走行時において圃場に形成される車輪跡Rsは2本となる。
【0025】
ロータリ作業機1の後部には土壌膨軟装置40が設けられている。土壌膨軟装置40は、走行機体90に設けられた後輪92の走行方向の後方で耕耘ロータ15の後方に配設されている。土壌膨軟装置40は、図2、図4(a)(正面図)、図4(b)(側面図)に示すように、上端部がサブフレーム21に上下位置調節自在に支持されて下方へ延びる支持体部41と、支持体部41の下部に取り付けられて進行方向に対して左右方向に延びる刃体45を有してなる。
【0026】
支持体部41は、金属材料製であり、上下方向に直線状に延びる支持本体部41aと支持本体部41aの下端部から前方側へ張り出す張出部41bを有してなる。支持本体部41aは幅広の側面41a1、41b1が進行方向に対して左右方向に向き、幅狭の前面41a2、41b2が進行方向前側に向くように配置される。支持本体部41aの上部には、支持体部41を固定するための複数の孔部41cが設けられている。図面上では2つの孔部41cが設けられている。張出部41bの下端部には下方へ突出する突出部41dが形成されている。突出部41dは側面視において矩形状に形成されている。支持体部41の厚さについては後述する。
【0027】
刃体45は、金属材料製であり、図4(c)(裏面図)を更に追加して説明すると、支持本体部41aの下端部に接触した状態で固着されて前後方向に延びる刃体基部45aと、刃体基部45aの左右両側から斜め後方に傾斜して延びる一対の後退刃45bと、刃体基部45aの前端部に凸状に形成されたチゼル45cとを有してなる。なお、支持体部41及び刃体45は、金属材料製に限るものではなく、所望の強度を有すれば他の材料(例えば、合成樹脂)で形成されてもよい。
【0028】
刃体基部45aの中央部には前後方向に延びて突出部41dを嵌合可能な孔部45a1が設けられている。この孔部45a1に突出部41dを挿入し、張出部41bの下端面を刃体基部45aの上面に接触させた状態で、刃体45は張出部41bの下端面に溶接等によって固着されている。刃体45が張出部41bの下端面に固着された状態において刃体45の上面に対して支持体部41は直交する方向に延び、支持体部41の支持本体部41aは刃体45の上面に対して僅かに後方側に傾き(図面上では約10°)、張出部41bの幅狭の前面41b2は刃体45の上面に対して前方に斜め下向きに傾いている(図面上では約35°)。このため、支持本体部41aが垂直方向に延びるように配置すると、刃体45の上面は水平面に対して前方に斜め下向きに傾く(図2参照)。
【0029】
支持体部41の進行方向に対する左右方向の厚さt1及び刃体45の上下方向の厚さt2は、耕耘爪17の厚さt(図3参照)と同程度の厚さ(例えば、6mm〜10mm)を有している。刃体45の進行方向に対する左右方向の幅B1は、走行機体90の後輪92の幅方向寸法B0と略同一幅を有している(例えば、最大300mm)。なお、支持体部41の厚さt1又は刃体45の厚さt2に対する刃体45の幅B1の大きさ(B1/t1、B1/t2)は、20〜30が好ましい。
【0030】
刃体45は、図2に示すように、サブフレーム21に固着されたホルダ49に上下位置調節可能に取り付けられている。ホルダ49は角筒状に形成され、内部には平面視において矩形状の挿通孔49aが設けられている。ホルダ49は挿通孔49aが上下方向に延びた状態でホルダ49の前端面がサブフレーム21に溶接等によって固着されている。ホルダ49の両側面には図示しない係止ピンを挿通させるためのピン孔49bが設けられている。
【0031】
ホルダ49の挿通孔49a内には刃体45を接続した連結板50が挿通されている。連結板50は挿通孔49aと相似形の断面形状を有して挿通孔49aに挿通可能である。連結板50の下部は、刃体45が固定された支持体部41に孔部41cやボルト・ナット等の締結手段によって固定されている。
【0032】
連結板50の上部にはホルダ49のピン孔49bに連通可能な連通孔が上下方向に所定間隔を有して複数設けられている。連通孔のいずれかとピン孔49bを連通させ、これらの孔にピンを挿入することで、ホルダ49に対する連結板50の上下位置を段階的に調節して、刃体45の上下位置を調節することができる。この連結板50の上下位置調節によって、刃体45は圃場表面から最大300mmの深さまで配置することができる。またロータリ作業機1はゲージ輪7の上下位置調節によって最大耕深180mmまで可能である。
【0033】
ホルダ49はサブフレーム21に固着された状態で挿通孔49aが鉛直方向に延びるように取り付けられている。このため、ホルダ49に挿通された連結板50は鉛直方向に延びるため、連結板50に接続された刃体45は前方に僅かに斜め下方に傾斜した状態になっている(図面では約10°)。
【0034】
次に、このように構成されたロータリ作業機1によって圃場の土壌を耕耘する場合における土壌膨軟装置40の作用を説明する。
【0035】
図2に示すように、ロータリ作業機1は走行機体90の後部に装着された状態で圃場内に設置される。土壌膨軟装置40の刃体45は、圃場の表面から約30cmの深さの位置(硬盤層Kと硬盤層Kの下方に隣接する心土との境界)にするように、ホルダ49に対する連結板50の上下位置が調節され、耕耘ロータ15は耕深が約18cmになるようにゲージ輪7の上下位置が調節される。耕耘ロータ15はダウンカット方向(矢印a方向)に回転して圃場の耕土を耕耘し、エプロン26は後端部が圃場表面に接触した状態に維持されて耕土表面を均平にする。なお、圃場の表面から約30cmの深さの位置とは、硬盤層Kと硬盤層Kの下方に隣接する心土Sとの境界を意味する。刃体45の位置は、圃場の表面から約30cmの深さの位置に限るものではなく、この位置よりも僅かに上方にずれた位置でもよい。
【0036】
このような状態で走行機体90が前進走行してロータリ作業機1が前進すると、図1(a)を更に追加して説明すると、走行機体90の後輪92により圃場Hの表面が踏圧されて車輪跡Rsが形成される。車輪跡Rsの下方には後輪92により踏圧されて硬く締まった土壌の硬盤層Kが形成される。硬盤層Kは、後輪92の下端と圃場表面から深さ約30cmの位置との間に形成される。なお、圃場表面から深さ約30cmよりも深い場所には未耕地部分の心土Sが存在している。いわゆる未耕地(心土S)の位置(深さ)は、対象作物や作業体型によっても異なるものであり、約30cmに限られるものではない。
【0037】
硬盤層Kの上部は耕耘ロータ15によって耕耘されて膨軟にされる。硬盤層Kの下側は耕耘ロータ15の耕耘爪17が届かない領域であるので、硬盤層Kが残った状態になる。この残された硬盤層K'は、土壌膨軟装置40によって膨軟にされる。即ち、土壌膨軟装置40の刃体45の一対の後退刃45bは、前側に傾斜した姿勢で設けられているので(図2参照)、刃体45の前進にともなって、硬く締まった硬盤層K'は後退刃45bによって上方へ押し上げられて膨軟にされる。
【0038】
また、一対の後退刃45bの幅B1は硬盤層K'の幅B0と略同一幅を有しているため、硬く締まった硬盤層K'の幅方向の略全域に後退刃45bを作用させることができる。このため、残った硬盤層K'の略全てを膨軟にすることができる。
【0039】
また、一旦ロータリ作業が行われた圃場にさらにロータリ作業を行うと、図1(b)に示すように、図1(a)の場合と同様に、走行機体90の後輪92によって圃場Hに硬盤層Kができるが、硬盤層Kの上部は耕耘ロータ15によって膨軟にされ、硬盤層Kの下側は土壌膨軟装置40の刃体45によって膨軟にされる(図1(c)参照)。このため、硬盤層K'はロータリ作業時に走行機体90の後輪92により踏圧されて圃場Hに一旦形成されることになるが、続いて進行する土壌膨軟装置40によってその殆ど全てが膨軟にされる。つまり、ロータリ耕耘作業の各工程毎に後輪92により一旦形成された硬盤層K'が土壌膨軟装置40によって膨軟にされるので、ロータリ耕耘作業時に硬盤層Kが形成されることがない。従って、圃場Hの略全域を膨軟にすることができる。
【0040】
また圃場Hを膨軟にする土壌膨軟装置40の刃体45やこれを支持する支持体部41は、進行方向に対して上下方向に約10mmの厚さを有した刃体45や支持体部41の端面が土壌内を進むように構成されている(図4(a)、図4(b)参照)。このため、刃体45や支持体部41に作用する土壌の負荷抵抗を小さくすることができ、走行機体90に作用する牽引抵抗を小さくすることができる。
【0041】
なお、前述した実施の形態では、土壌膨軟装置40が耕耘ロータ15の後方に配設された場合を示したが、図5(側面図)に示すように、土壌膨軟装置40は耕耘ロータ15の前方に配設されてもよい。この土壌膨軟装置40を備えたロータリ作業機1'は、前述した図2に示すロータリ作業機1との相違点のみを説明し、ロータリ作業機1と同一態様部分については同一符号を附して説明を省略する。
【0042】
走行機体90に設けられた一対の後輪92の各後方の主フレーム3には、一端側が主フレーム3に取り付けられて他端側が前方斜め下方へ延びる支持部材52が設けられ、支持部材52の他端部には土壌膨軟装置40の支持体部41がボルト等の締結手段を介して略垂直方向に取り付けられている。土壌膨軟装置40の刃体45は、圃場表面から下方に約300mmの深さの位置に配置される。
【0043】
エプロン26は、上部カバーの後端部に上下方向に回動自在に取り付けられている。またエプロン26の後方には、左右で一対の支持アーム53を介して整地作用を行うかごローラ55が配設されている。このかごローラ55はトップマスト6と支持アーム53との間に連結された上下調節機構56を介して上下位置調整が可能である。
【0044】
このように土壌膨軟装置40を耕耘ロータ15の前方に配設すると、走行機体90の後輪92によって形成された土壌の硬盤層Kはその略全体が土壌膨軟装置40の刃体45によって膨軟にされる。そして、膨軟にされ土壌の上部は、耕耘ロータ15によってさらに膨軟にされ、エプロン26及びかごローラ55によって土壌表面が均平に整地される。
【0045】
このため、硬盤層Kはロータリ作業時に走行機体90の後輪92により踏圧されて圃場Hに一旦形成されることになるが、続いて進行する土壌膨軟装置40によってその殆ど全てが膨軟にされる。従って、ロータリ耕耘作業時に硬盤層Kが形成されることがなく、圃場Hの略全域を膨軟にすることができる。さらに、土壌膨軟装置40の刃体45やこれを支持する支持体部41は、進行方向に対して約10mmの厚さを有した刃体45の前面や支持体部41の前面が土壌内を進むように構成されているので、刃体45や支持体部41に作用する土壌の負荷抵抗を小さくすることができる。このため、走行機体90に作用する牽引抵抗を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0046】
1、1' ロータリ作業機
15 耕耘ロータ
17 耕耘爪
40 土壌膨軟装置
41 支持体部
45 刃体
90 走行機体
92 後輪(車輪)
H 圃場
K 硬盤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に装着され、複数の耕耘爪が装着された耕耘ロータを回転させながら進行して圃場を耕耘するロータリ作業機に設けられる土壌膨軟装置であって、
前記走行機体に設けられた車輪の走行方向の後方で前記耕耘ロータよりも前方又は後方に配置され、
前記ロータリ作業機に支持されて下方へ延びる支持体部と、該支持体部の下部に取り付けられて進行方向に対して左右方向に延びる刃体を有し、
前記刃体は、前記走行機体の前記車輪により踏圧された土壌の硬盤層の底部に配置され、前記走行機体の前進走行とともに進行して前記硬盤層を膨軟にすることを特徴とする土壌膨軟装置。
【請求項2】
前記支持体部の進行方向に対する左右方向の厚さ及び前記刃体の上下方向の厚さは、前記耕耘爪の厚さと同程度の厚さを有し、
前記刃体の進行方向に対する左右方向の幅は、前記走行機体の前記車輪の幅方向寸法と略同一幅を有することを特徴とする請求項1に記載の土壌膨軟装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−172249(P2010−172249A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17602(P2009−17602)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】