説明

土木建築材料用ミキサ及びその攪拌羽根

【課題】 無収縮グラウト材について短時間での均一化を向上したミキサを提供する。
【解決手段】 本願発明に係るミキサには、回転方向について各攪拌翼3…3の前方に、材料を攪拌翼3の上方から下方へ通す材料通し部4が設けられ、回転方向について各攪拌翼3…3の後方に、攪拌翼と共に回転する補助翼部5が設けられている。補助翼部5は、回転径の内外方向について、材料通し部4の外側に設けられたものである。補助翼部5は、攪拌翼3によって材料通し部4から下方に押しやられて攪拌槽1の底10にて跳ね返った材料が上方へ行くのを、抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、土木建築材料用ミキサ及びその攪拌羽根に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平11−170243号公報
【0003】
土木建築材料、特に、一方、グラウト材と呼ばれる、空洞や隙間等の間隙を埋めるために注入するスラリー状の充填材を攪拌するのに、特許文献1に例示されるような、材料を収容する攪拌槽内に、動力にて駆動される攪拌翼を配置して、攪拌翼の回転にて攪拌を行うミキサが一般的に用いられる。
モルタルなどの建築材料の均一化を図るために行う攪拌は、攪拌時間を長くするほど、より均一な攪拌が行えると考えられ、モルタルミキサにおいては回転数は比較的小さい(回転速度は遅い)ものである。
一方、硬化するときに収縮しない性質を有する無収縮グラウト材の攪拌において、2〜3分程度の短時間で本練りを終了することが求められる。
このような無収縮グラウト材について説明すると、通常のグラウト材は、空洞や隙間等の間隙を埋めるために注入するスラリー状の充填材であり、構造物の空隙充填の他、クラックの補修、地盤改良等、多用途に使用される。特に、間隙を充填する目的に使用する場合、無収縮やノンブリーディングといった性質が求められる。上記無収縮グラウト材は、収縮抑制または膨張効果をもたせて収縮が発生しないようにしたグラウト材であり、密閉空間に充填される材料であるため、自己収縮に対して無収縮である(但し、暴露環境では乾燥収縮が発生するため、無収縮グラウト材といえども完全に無収縮にはならない)。
無収縮グラウト材は、そのメーカーによって、材料1袋に対する水の量と混練時間、ミキサの回転数が指定されており、通常、このような材料に対して、750rpm〜1000rpm(回転毎分)といった高回転数にて、攪拌翼の回転を行う必要がある。
従って、無収縮グラウト材の攪拌を行うために、このように攪拌翼を高速に回転させることにて上記の短時間での攪拌を行う、高速ミキサが用いられた。
【0004】
例えば、上記無収縮グラウト材として、標準軟度J14フロート流下値8±2秒とするもので、1袋(25Kg)当りの、標準混練水量を4.5リットルとし練り上げ量13.3リットルとする、更に1立方メートル当りの使用量について、グラウト材1875Kg(75袋)とし混練水338リットルとし、ブリージング率を0.0%とするものを例示することができる。このグラウト材は、圧縮強度(kgf/cm2)(N/mm2)が、養生温度摂氏5度において、1日の養生で21であり、3日の養生で223であり、7日の養生で389であり、28日の養生で535であり、養生温度摂氏20度において、1日の養生で260であり、3日の養生で452であり、7日の養生で514であり、28日の養生で629であり、養生温度摂氏30度において、1日の養生で370であり、3日の養生で493であり、7日の養生で580であり、28日の養生で685である。
例示した当該無収縮グラウト材の練混ぜには、メーカーによって専用高速モルタルミキサか、900rpm以上の高速回転を行うことができるハンドミキサが推奨されている。
【0005】
しかし、このように、攪拌翼の高速の回転によって、攪拌時間の短縮を行うことを可能とする高速ミキサであるが、上記のグラウト材の均一化を十分に行えるものではなかった。
具体的には、平面図である図5(A)及びその平面図である図5(B)へ示す通り、グラウト材を収容する攪拌槽1内に、回転軸2に設けられた攪拌翼3…3を配置し、動力装置(図示せず。)にて回転軸2を回転させることにより、当該攪拌翼3…3を高速に回転させる。攪拌翼3…3は、前方の材料を下方へ押しやることにより、槽1内の材料の攪拌を行うものである。
攪拌翼3…3にて下方に押しやられた材料の流れは、図5(A)へ破線の矢印で示す通り、攪拌層1の底10にて跳ね返り、直ちに上方へ向かう。このため、図5(B)へ示す通り、平面視において、攪拌により発生する渦Uは小さく、攪拌翼付近にとどまり、攪拌槽1内に、攪拌されずに材料が溜まる部分(滞留部T…T)が生じる。図5(B)へ示すように、平面視矩形の攪拌槽1では、四隅に、上記の滞留部T…Tが生じるのである。
従って、このようなミキサによって、攪拌材料(グラウト材)を、所定の短時間で攪拌を行うことはできても、均一にされていない部分が多く残されているのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、上記の問題を鑑み、短時間の攪拌においても攪拌材料の均一化をより促進できるミキサの提供を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に係る発明は、攪拌槽と、攪拌槽内において上下に伸びる回転軸と、回転軸の周方向に沿って回転軸に設けられ且つ板状に形成された複数の攪拌翼とを備え、攪拌翼が回転することにより、攪拌槽内の材料を下方に押しやることにて攪拌を行う、土木建築材料用ミキサにおいて、回転方向について各攪拌翼の前方に、材料を攪拌翼の上方から下方へ通す材料通し部が設けられ、回転方向について各攪拌翼の後方に、攪拌翼と共に回転する補助翼部が設けられ、補助翼部は、回転径の内外方向について、材料通し部の外側に設けられたものであり、補助翼部は、攪拌翼によって材料通し部から下方に押しやられて攪拌槽の底にて跳ね返った材料が上方へ行くのを、抑制することを特徴とする土木建築材料用ミキサを提供する。
【0008】
本願の請求項2に係る発明は、上記の補助翼部の回転径の内外方向の最大幅が、攪拌翼の回転径の内外方向の最大幅の、1/5倍以上6/5倍以下であることを特徴とする請求項1記載の土木建築材料用ミキサを提供する。
本願の請求項3に係る発明は、上記の補助翼部が、攪拌翼の上部に固定されて攪拌翼に支持されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の土木建築材料用ミキサを提供する。
【0009】
本願の請求項4に係る発明は、攪拌槽と、攪拌槽内において上下に伸びる回転軸と、回転軸の周方向に沿って回転軸に設けられ且つ板状に形成された複数の攪拌翼とを備え、攪拌翼は回転により攪拌槽内の材料を下方に押しやることにより攪拌する、土木建築材料用ミキサにおいて、各攪拌翼の回転方向の前方に、材料を攪拌翼の上方から下方へ通すと共に当該接線方向へ材料を導く、材料通し部が設けられ、攪拌翼の径方向の先端側に補助翼部を備え、補助翼部は、平面視において、略円形に形成された環状の平板であり、補助翼部は、回転軸を中心として材料通し部を取り囲むように攪拌翼へ固定されて、平面視において材料通し部の外側に位置するものであり、補助翼部は、攪拌翼によって材料通し部から下方に押しやられ攪拌槽の底にて跳ね返った材料が上方へ行くのを、抑制することを特徴とする土木建築材料用ミキサを提供する。
【0010】
本願の請求項5に係る発明は、土木建築材料用ミキサの攪拌槽の底部に設けられた回転軸に取り付けられる中心部と、この中心部から径外方向に伸びる複数枚の攪拌翼を備え、回転軸の回転によって回転することにより、攪拌槽内の材料を攪拌翼によって下方に移動させて攪拌する土木建築材料用ミキサの土木建築材料用ミキサの攪拌羽根において、各攪拌翼は前方側から後方側に向かうに従って下方に傾斜したものであり、各攪拌翼の前方に、材料を攪拌翼の上方から下方へ通すと共に当該接線方向へ材料を導く、材料通し部が設けられ、攪拌翼の径方向の先端側に補助翼部を備え、この補助翼部は、平面視において、略円形に形成された環状の平板であり、この補助翼部は、その径方向の最大幅が、攪拌翼の径方向の最大幅の、1/5倍以上6/5倍以下であり、この補助翼部は、攪拌翼の先端側に固定されて、平面視において材料通し部の外側に位置しており、且つ、攪拌翼の径方向の先端よりも径方向の外側に位置する部分を備えたものであることを特徴とする土木建築材料用ミキサの攪拌羽根を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本願の請求項1〜4の発明に係るミキサは、補助翼部にて、攪拌翼にて下方に押しやられて、攪拌層の底にて跳ね返る材料の流れが上方へ向かうのを抑制して、攪拌翼からより遠くに材料の流れを進めることができる。即ち、攪拌翼の回転によって生じる渦をより大きくすることができ、槽内において材料の流れの停滞箇所の発生を抑制し、短時間での攪拌材料の均一化を図ることができたものである。
本願の請求項5に係る発明は、上記の土木建築材料用ミキサを実現する攪拌羽根を提供することができたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態を説明する。
図1乃至図3へ、本願発明の一実施の形態を示す。
図1(A)は本願発明に係るミキサの(攪拌槽のみを断面にした)略側面図であり、図1(B)はその略平面図である。図2(A)は図1の要部平面図であり、図2(B)はその要部略側面を示す説明図である。図3(A)、図3(B)及び図3(F)は夫々補助翼部の他の実施の形態を示す平面図であり、図3(C)及び図3(D)は、夫々、攪拌翼及び補助翼部の又他の実施の形態を示す一部切欠要部略側面図であり、図3(E)は更に他の実施の形態を示す要部側面図である。尚図1(A)において、攪拌槽1に付すべきハッチングは、煩雑を避けるため省略している。
【0013】
図1(A)へ示す通り、このミキサは、攪拌槽1と、攪拌槽1の底を突き通して攪拌槽1の内部に突出する回転軸2と、回転軸2を回転駆動する駆動装置30と、回転軸2に設けられた複数の攪拌翼3…3と、材料通し部4…4と、補助翼部5とを備える。
以下各部の構成について、順に詳述する。
【0014】
攪拌槽1の形状は、どのようなものでもよいが、この実施の形態において、図1(A)及び図1(B)へ示す通り、上方が開放された平面視矩形状の筐体である。
この攪拌槽1内に、攪拌材料(土木建築材料)として無収縮グラウト材が収容される。
この実施の形態では、当該攪拌槽1の底10に内外に貫通する貫通孔11が設けられ、当該貫通孔11に上記回転軸2が通されている。図示はしないが、貫通孔11内周と回転軸2との間は、攪拌槽1内に収容された材料が漏れないように、周知のシール手段にて、シールされている。
【0015】
回転軸2の基端側は、上記の駆動装置1と、攪拌槽1の外部において接続されている。駆動装置1は、内燃機関や電動機などの従来周知の駆動装置を採用する。また、駆動装置は、ギア、プーリとベルトといった伝達装置を介して動力源と回転軸とを接続するものであっても実施できる。
駆動装置は、攪拌翼3…3が設けられた回転軸2を、750〜1000rpmの回転数にて回転させて、無収縮グラウト材の攪拌を2〜3分で完了できるものとする。
但し、このような数値に限定するものではない。
回転軸2の先端側は、攪拌槽1内に突出する。回転軸2において、この攪拌槽1内に突出する部分に、上記の攪拌翼3…3が設けられている。
攪拌翼3の夫々は、回転方向Rについて、図2(B)及び図2(C)へ示す通り、その前端33が後端34よりも高くなるように斜めに、設けられる。図2(C)へ示す、攪拌翼3のなす仰角θ、即ち水平面に対して攪拌翼3がなす角度(水平に板面が配された後述の補助翼部5の下面50と、攪拌翼3の上面との間の、挟角)は、5〜30度とするのが好ましく、この実施の形態では約10度である。但しこのような数値に限定するものではない。
このように、攪拌翼3は、前部から後部に向けて低くなるよう斜めに設けられることによって、その回転により、攪拌翼3の下面32にて、材料を前方下方に向けて押し込むことができる。
【0016】
攪拌翼3…3の夫々は、中心部20の周囲から径方向の外側に伸びており、この中心部20が回転軸2取り付けられることによって、回転軸2に固定されている。具体的には、この実施の形態において、各攪拌翼3…3は、回転軸2の外部に嵌められて回転軸2と同体に回転する中心部20の外周面へ溶接にて、上記の通り、固定されている。
攪拌翼3…3の夫々は、回転軸2の軸方向について、同じ高さに設けられているが、異なる高さに設けることも不可能ではない。又、攪拌翼3…3の夫々は、回転軸2の回転方向について夫々間隔を開けて設けられている。
この実施の形態では、図1(B)へ示す通り、攪拌翼3…3は、回転軸2に4枚設けられている。但し、他の枚数に変更して実施することも可能である。例えば、図4に示すように、3枚の攪拌翼3…3を備えたものであってもよく、2枚や5枚以上のものとして実施することもできる。
【0017】
上記の材料通し部4…4は、夫々、攪拌翼3の回転接線方向について、攪拌翼3の前方に位置し、攪拌槽1内において攪拌翼3の上方から攪拌翼3の下方に材料を通す空間である。
上記の通り、隣接する攪拌槽3,3同士の間に間隔を開けて、各攪拌翼3…3を回転軸2へ設けることにより、上記の材料通し部4…4を設けることができる。
【0018】
補助翼部5は、回転軸2を中心として材料通し部4…4を取り囲むように攪拌翼3…3へ固定されて、平面視において材料通し部4の外側に位置する。平板である補助翼部5は、板面を回転軸2の軸方向と直交させるように設けられる。従って、上下に伸びる回転軸3…3に対して補助翼部5は、水平に設けられている。
補助翼部5は、攪拌翼3によって材料通し部4から下方に押しやられ攪拌槽1の底10にて跳ね返った材料が上方へ行くのを、抑制するものであり、この機能を果たし得る範囲内で、傾斜していたり湾曲していたりするなど、平面状以外の形状であってもよい。
図1(B)へ示す通り、補助翼部5は、平面視において、略円形に形成された環状の平板である。この実施の形態において、図2(A)へ示す通り、攪拌翼3の回転径の内外方向について攪拌翼3の先端30へ、溶接にて固定されている。
補助翼部5の回転径の内外方向の幅w2は、材料通し部4の回転径の内外方向の幅w1の、1/5倍以上6/5倍以下とするのが好ましい。
補助翼部5の上記の幅W2が、材料通し部4の上記の幅の1/5倍よりも小さいと、図5(B)に示す滞留部Tが生じて十分な攪拌が行えず、補助翼部5の上記の幅W2が、材料通し部4の上記の幅の6/5倍よりも大きいと、補助翼部5の下方に材料の滞留が生じて、好ましくないからである。
この実施の形態では、図2(A)へ示す、中心部20の半径w0を約35mmとし、材料通し部4の上記回転径の内外方向の幅及び攪拌翼3の回転径の内外方向の方向の幅w1を約50mmとし、補助翼部5の回転径の内外方向の幅w2を約30mmとしている。従って、この実施の形態において、平面視円形である補助翼部5の外径(半径)は、w0+w1+w2=約115mmである。このように、w0:w1:w2=35:50:30とするのが特に好ましい。但し、このような寸法に限定・比率するものではなく、他の数値に変更することが可能である。
また、この実施の形態において、図2(C)へ示す、攪拌翼3の回転の前端33から後端34間の長さw6は、約32mmであり、板状の攪拌翼3の厚みw7は約6mm、平板である保持翼部5の厚みw8は約6mmであるが、このような寸法も変更可能である。
【0019】
次に、このミキサを用いて攪拌を行った場合の攪拌槽1内の材料の流れについて説明する。
流体である材料の流れを、攪拌槽1の外から視点を固定して観察すると、図1(B)へ示す通り、回転軸2の回転により回転する攪拌翼3…3から当該回転の接線方向への力を受けて、流体は、破線矢印の通り、平面視において当該接線方向へ押しやられる。また、このとき、攪拌翼3の下面に押し込まれて、側面視において前方斜め下方に材料の流れは向けられる。その結果、攪拌槽1の底10にて当該流れは跳ね返る。補助翼部5の下面は、このように跳ね返ってきた流れを受け、当該流れが直ちに上方へ向かうのを抑制して、攪拌翼3…3が槽内に発生させる渦をより大きなものとする。
上記の流れを回転する攪拌翼3から観察すると、図3(B)へ一点鎖線の矢印で示す通り、攪拌翼3前方の材料通し部4を通じて、攪拌翼3の前方上方から下方に吸引される材料の流れS1を、当該攪拌翼3の下面32が受ける。そして、前記の通り、前方から後方へ向けて低くなるよう斜めに配置されている攪拌翼3の下面32と当接した材料の流れは、攪拌槽1の底10に当り、上記の通り跳ね返える流れS2となる。この跳ね返ってきた流れS2を、補助翼部5の下面50が受けて、上方へ進むのを抑制し、平面視において攪拌翼3から、より遠くの位置まで移動する流れS3とする。
流体の移動経路について、詳細なメカニズムが十分に解明されている訳ではないが、このような流れS3を生じせさせることにより、従来のミキサでは得られない、大きな渦を発生させることができると考えられる。
【0020】
このミキサを用い、無収縮グラウト材に対して、750rpmと1000rpmの回転数にて、夫々2分及び3分の攪拌を行ったが、何れの場合も、全体に渡ってムラ無く確実に均一化することが確認できた。また、当該何れの場合も、目視において、図5(B)に示すような滞留部Tは発生せず、図1(B)へ示すように、攪拌槽1の隅々に到るまで、材料の流れを作り出せていることを確認できた。
具体的には、出願人において市販している図5に示す従来ミキサと、図1乃至図2に示す実施の形態に係るミキサとを比較した場合、流速が43%早くなり、回転軸2を回転させる電動機の電流値が、従来ミキサと比して6.9%低下したことが確認された。さらに、電流値のふらつきが、従来のミキサにあっては、0.2Aの幅で生じていたが、実施の形態に係るものについては、0Aであった。これは、電流値の低下は、電動機の負担が小さくなっていることを示し、電流値のふらつきの減少は、攪拌時の電動機の負荷も一定になったことを示している。また、装置の嫌な振動が軽減したことも確認されている。しかも、一般的に、攪拌槽1内の液表面がバタつくと、エア噛みが生じて空気が材料に入り込むものであるが、本願発明に係る上記土木建築材料用ミキサでは、このようなバタつきもなく、材料の包含空気量を小さく抑えることが確認できた。
【0021】
上記の実施の形態において、補助翼部5は、環状の1枚の平板にて形成されたものとした。但し、補助翼部5は、このような環状の1枚の平板に限定するものではなく、複数備えるものとしても実施できる。
図3(A)へ示す通り、補助翼部5は、環状の平板を分割した弧状に形成されて、複数設けられるものとしても実施できる。即ち、攪拌翼3…3の夫々に独立した補助翼部5が設けられて、平面視において、各補助翼部5…5が全体として、略円形を呈するものとしても実施できる。この図3(A)に示す通り、隣接する補助翼部5,5同士の間には、隙間が開けられている。また、この実施の形態では、回転方向Rに対して、弧状の補助翼5の前端部が、攪拌翼3に固定されている。但し、図示と異なり、回転方向Rに対して、弧状の補助翼5の後端部が、攪拌翼3に固定されるものとしてもよい。
また、図3(B)へ示す通り、回転方向Rに対して、弧状の補助翼5の先端と後端との間が、攪拌翼3に固定されるものとしてもよい。この場合、図3(B)へ示す通り、弧状の補助翼5の先端と後端との中間位置が、攪拌翼3に固定されるものとすることができる。
図3(A)(B)に示す隙間6…6は、その大きさが極力小さいことが望ましいが、ミキサの回転数や材料の粘度によって、隙間6…6の大きさの許容範囲は異なる。
【0022】
上記図1、図2及び図3(A)(B)に示す各実施の形態において、攪拌翼3の上部の先端側(より詳しくは先端33面)に、補助翼部5が設けられるものとした。この他、図3(C)へ示す通り、攪拌翼3…3の上面31の先端側に補助翼部5を固定する即ち、補助翼部5の下面50を攪拌翼3の上面31に固定するものとしても実施できる。
又、図3(D)へ示す通り、攪拌翼3…3の下面32に補助翼部5を固定する、即ち、補助翼部5の上面を攪拌翼3の下面32に固定するものとしても実施できる。
また、図3(E)及び図3(F)へ示す通り、攪拌翼3…3に補助翼5を固定するのではなく、攪拌翼3…3とは別に、補助翼部5を、回転軸2に固定するものとしても実施できる。即ち、このミキサは、補助翼部5とは別途の支持体7…7を介して、補助翼部5を、回転軸2(中心部20)に設けたものである。この図3(E)に示すものは、図1に示すのと同様、補助翼部5が、1枚の環状の平板にて形成されたものであり、図3(F)へ示すものは、補助翼部5を、1枚の平板とするのではなく、図3(A)(B)へ示すものと同様、弧状の板状体として、複数設けたものである。
【0023】
回転軸2を攪拌槽1の底10から槽1内へ挿入し攪拌翼3…3を下方から支持するものを示したが、このような実施の形態に限定するものではなく、図5に示すものと同様、回転軸2を槽1上方から槽1内へ挿入して上方から攪拌翼3…3を支持するものとしても実施できる。
特に、無収縮グラウト材の攪拌において、高速ハンドミキサを用いるのが好ましい。
また、上記の各実施の形態において、攪拌する材料は、グラウト材、特に、無収縮グラウト材としたが、攪拌の対象をこのような材料に限定するものではなく、本願発明に係るミキサを、他の土木、建築、橋梁などの材料を均一に攪拌するのに用いることが可能である。特に、高速回転による短時間での攪拌において、確実な均一化を必要とする材料について、本願発明の上記ミキサを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(A)は本願発明に係るミキサの(攪拌槽のみを断面にした)略側面図であり、(B)はその略平面図である。
【図2】(A)は図1の要部平面図であり、(B)はその要部略側面を示す説明図である。
【図3】(A)、(B)及び(E)は夫々補助翼部の他の実施の形態を示す要部平面図であり、(C)及び図3(D)は夫々攪拌翼及び補助翼部の更に他の実施の形態を示す一部切欠要部略側面図であり、(E)は攪拌翼及び補助翼部の又他の実施の形態を示す要部側面図であり、(F)は攪拌翼及び補助翼部の更に又他の実施の形態を示す要部平面図である。
【図4】他の実施の形態に係る攪拌羽根を示すもので、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図5】(A)は従来のミキサの(攪拌槽1のみを断面にした)側面図であり、(B)はその平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 攪拌槽
2 回転軸
3 攪拌翼
4 材料通し部
5 補助翼部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌槽と、攪拌槽内において上下に伸びる回転軸と、回転軸の周方向に沿って回転軸に設けられ且つ板状に形成された複数の攪拌翼とを備え、攪拌翼が回転することにより、攪拌槽内の材料を下方に押しやることにて攪拌を行う、土木建築材料用ミキサにおいて、
回転方向について各攪拌翼の前方に、材料を攪拌翼の上方から下方へ通す材料通し部が設けられ、
回転方向について各攪拌翼の後方に、攪拌翼と共に回転する補助翼部が設けられ、
補助翼部は、回転径の内外方向について、材料通し部の外側に設けられたものであり、
補助翼部は、攪拌翼によって材料通し部から下方に押しやられて攪拌槽の底にて跳ね返った材料が上方へ行くのを、抑制することを特徴とする土木建築材料用ミキサ。
【請求項2】
補助翼部の回転径の内外方向の最大幅は、攪拌翼の回転径の内外方向の最大幅の、1/5倍以上6/5倍以下であることを特徴とする請求項1記載の土木建築材料用ミキサ。
【請求項3】
補助翼部は、攪拌翼の上部に固定されて攪拌翼に支持されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の土木建築材料用ミキサ。
【請求項4】
攪拌槽と、攪拌槽内において上下に伸びる回転軸と、回転軸の周方向に沿って回転軸に設けられ且つ板状に形成された複数の攪拌翼とを備え、攪拌翼は回転により攪拌槽内の材料を下方に押しやることにより攪拌する、土木建築材料用ミキサにおいて、
各攪拌翼の回転方向の前方に、材料を攪拌翼の上方から下方へ通すと共に当該接線方向へ材料を導く、材料通し部が設けられ、
攪拌翼の径方向の先端側に補助翼部を備え、
補助翼部は、平面視において、略円形に形成された環状の平板であり、
補助翼部は、回転軸を中心として材料通し部を取り囲むように攪拌翼へ固定されて、平面視において材料通し部の外側に位置するものであり、
補助翼部は、攪拌翼によって材料通し部から下方に押しやられ攪拌槽の底にて跳ね返った材料が上方へ行くのを、抑制することを特徴とする土木建築材料用ミキサ。
【請求項5】
土木建築材料用ミキサの攪拌槽の底部に設けられた回転軸に取り付けられる中心部と、この中心部から径外方向に伸びる複数枚の攪拌翼を備え、回転軸の回転によって回転することにより、攪拌槽内の材料を攪拌翼によって下方に移動させて攪拌する土木建築材料用ミキサの土木建築材料用ミキサの攪拌羽根において、
各攪拌翼は前方側から後方側に向かうに従って下方に傾斜したものであり、各攪拌翼の前方に、材料を攪拌翼の上方から下方へ通すと共に当該接線方向へ材料を導く、材料通し部が設けられ、
攪拌翼の径方向の先端側に補助翼部を備え、
この補助翼部は、平面視において、略円形に形成された環状の平板であり、
この補助翼部は、その径方向の最大幅が、攪拌翼の径方向の最大幅の、1/5倍以上6/5倍以下であり、
この補助翼部は、攪拌翼の先端側に固定されて、平面視において材料通し部の外側に位置しており、且つ、攪拌翼の径方向の先端よりも径方向の外側に位置する部分を備えたものであることを特徴とする土木建築材料用ミキサの攪拌羽根を提供する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−58430(P2010−58430A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228214(P2008−228214)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(391020562)岡三機工株式会社 (6)
【Fターム(参考)】