説明

土砂・廃棄物混合物の再生処理方法及び再生処理システム

【課題】廃棄物混じりの土砂から廃棄物を確実に取り除くとともに、土砂を有効に再利用することができる土砂・廃棄物混合物の再生処理方法及び再生処理システムを提供すること。
【解決手段】本発明の土砂・廃棄物混合物の再生処理方法は、土砂・廃棄物混合物から大型廃棄物を乾式で選別する第1工程と、第1工程を経た土砂・廃棄物混合物に水を添加し、中型廃棄物を含む礫・粗砂と小型廃棄物を含むスラリー状の土砂とに分級する第2工程と、第2工程で分級した礫・粗砂を水洗浄し、この礫・粗砂から中型廃棄物を分離する第3工程と、第2工程で分級したスラリー状の土砂を砂・細砂とシルトとに分級した後、この砂・細砂を水洗浄し、砂・細砂から小型廃棄物を分離することにより洗浄土を得る第4工程と、第4工程で分級したシルトを凝集沈殿させて得た沈殿物をプレス脱水処理することにより脱水ケーキを得る第5工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設工事現場で掘り起こされた土砂・廃棄物混合物から廃棄物を除去することによって土砂を再生処理する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場跡地等の建設工事現場において、掘削機で土壌を掘削すると、工場で埋立処分された大量の埋設廃棄物(以下、省略して「廃棄物」という)が掘り起こされることがある。このような場合、掘り起こされた廃棄物混じりの土砂をトラックで搬送して、都市近郊の埋立処分場で処分し、埋め戻し用の土を別途購入して埋め戻していた。しかしながら、敷地面積の広い建設工事現場では、廃棄物混じりの土砂が大量となり、処分費用が莫大になる上、埋立処分場が満杯となることで別の処分場の開発につながり、環境負荷が大きくなる。
【0003】
そこで、近年、建設工事現場で掘り起こした廃棄物混じりの土砂から廃棄物を除去することにより、現場内の埋戻土として再利用することが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この特許文献1に記載された土砂再生処理システムは、走行体を備えた本体と、この本体に複数段の櫛状部材を振動可能に設けた第1の篩装置と、第1の篩装置で捕捉されたコンクリート片や他の混合廃棄物を排出する第1の排出コンベヤと、第1の篩装置を通過した他の混合廃棄物を捕捉する第2の篩装置と、第2の篩装置で捕捉された他の混合廃棄物を排出する第2の排出コンベヤと、第2の篩装置を通過した土砂を排出する第3の排出コンベヤとからなる篩機械と、この篩機械における第3の排出コンベヤからの土砂を受け入れて、土砂に添加材を添加して攪拌混合する土質改良機械とを備えている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−51467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の再生処理方法では、篩目の異なる複数の篩装置を用いて、廃棄物の大きさに応じて廃棄物を段階的に除去しているが、土砂に付着した灰やプラスチック等の付着廃棄物までは取り除くことができない。このような付着廃棄物が付着した土を埋戻土として再利用した場合、建設後の居住環境に悪影響を及ぼす虞があるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑み、廃棄物混じりの土砂から廃棄物を確実に取り除くとともに、土砂を有効に再利用することができる土砂・廃棄物混合物の再生処理方法及び再生処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る土砂・廃棄物混合物の再生処理方法は、建設工事現場で掘り起こした土砂・廃棄物混合物から廃棄物の大きさに応じて段階的に廃棄物を除去し、土砂を再生処理する方法であって、前記土砂・廃棄物混合物から大型廃棄物を乾式で選別する第1工程と、前記第1工程を経た土砂・廃棄物混合物に水を添加し、中型廃棄物を含む礫・粗砂と小型廃棄物を含むスラリー状の土砂とに分級する第2工程と、前記第2工程で分級した礫・粗砂を水洗浄し、前記礫・粗砂から中型廃棄物を分離する第3工程と、前記第2工程で分級したスラリー状の土砂を砂・細砂とシルトとに分級した後、前記砂・細砂を水洗浄し、前記砂・細砂から小型廃棄物を分離することにより洗浄土を得る第4工程と、前記第4工程で分級したシルトを凝集沈殿させて得た沈殿物をプレス脱水処理することにより脱水ケーキを得る第5工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る土砂・廃棄物混合物の再生処理方法は、上記請求項1において、前記第1工程において、異なる大きさの篩目を有する複数の乾式篩装置を用いて、前記大型廃棄物の大きさに応じて前記大型廃棄物を段階的に篩い分けることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に係る土砂・廃棄物混合物の再生処理方法は、上記請求項1又は2において、前記第1工程から第5工程までを、建設工事現場内で行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に係る土砂・廃棄物混合物の再生処理方法は、上記請求項1において、前記脱水ケーキを焼成することにより骨材を製造する第6工程を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5に係る土砂・廃棄物混合物の再生処理システムは、建設工事現場で掘り起こした土砂・廃棄物混合物から廃棄物の大きさに応じて段階的に廃棄物を除去し、土砂を再生処理するシステムであって、掘り起こした土砂・廃棄物混合物から大型廃棄物を篩い分ける乾式篩装置と、前記乾式篩装置による処理を経て搬入された土砂・廃棄物混合物に水を添加し、中型廃棄物を含む礫・粗砂と、小型廃棄物を含むスラリー状の土砂とに分級する湿式篩装置と、前記湿式篩装置で分級された礫・粗砂を水洗浄し、前記礫・粗砂から前記中型廃棄物を分離するログウォッシャー装置と、前記湿式篩装置で分級されたスラリー状の土砂を砂・細砂とシルトとに分級し、これらを水洗浄するハイドロサイクロン装置と、前記ハイドロサイクロン装置で分級された砂・細砂から前記小型廃棄物を分離する泡浮遊式分離装置と、前記泡浮遊式分離装置での処理を経た砂・細砂を脱水処理して洗浄土を得る脱水装置と、前記ハイドロサイクロン装置で分級されたシルトを凝集沈殿させて沈殿物と水とに分離する凝集沈殿装置と、前記沈殿物をプレス脱水処理することにより脱水ケーキを得るプレス脱水装置と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項6に係る土砂・廃棄物混合物の再生処理システムは、上記請求項5において、前記乾式篩装置は、異なる大きさの篩目を有する複数の篩装置から構成され、これら複数の篩装置を用いて、前記大型廃棄物の大きさに応じて前記大型廃棄物を段階的に篩い分けることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項7に係る土砂・廃棄物混合物の再生処理システムは、上記請求項5又は6において、前記建設工事現場内に設置されたものであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項8に係る土砂・廃棄物混合物の再生処理システムは、上記請求項5において、前記脱水ケーキを焼成することにより骨材を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の土砂・廃棄物混合物の再生処理方法及び再生処理システムによれば、掘り起こされた廃棄物混じりの土砂から廃棄物を確実に除去することができるようになる。そのため、再生処理された土砂を埋め戻したとしても、建設後の居住環境等に悪影響を及ぼすことがなく、かつ、現場内で掘削した土砂の再利用率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る土砂・廃棄物混合物の再生処理方法及びシステムの好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態である土砂・廃棄物混合物の再生処理システムの概略図であり、図2は、図1に示す土砂・廃棄物混合物の再生処理システムによる再生処理の手順を示す概略フローチャートである。
【0018】
図1に示す土砂・廃棄物混合物の再生処理システム10(以下、省略して「再生処理システム10」という)は、工場跡地等の建設工事現場で掘り起こされた埋設廃棄物混じりの土砂を、埋戻土として再生するための処理設備である。本実施の形態では、この再生処理システムを構成するすべての装置を建設工事現場の敷地内に設置している。ここで、埋設廃棄物とは、地中に埋められている廃棄物を掘り起こしたものであり、具体的には、紙屑、木屑、繊維屑、廃プラスチック類等の可燃物、ゴム屑、金属屑、ガラス屑、陶磁器屑、がれき(コンクリートがら)等の不燃物、焼却灰、石類、土壌様物等の雑物類である。
【0019】
建設工事現場の掘削前の土壌は、埋設廃棄物層の上部に覆土が施されている。従って、埋設廃棄物層は、覆土の土砂が混合した状態となっている。以下の説明では、「埋設廃棄物」を省略して「廃棄物」とよび、埋設廃棄物層を掘り起こした際の「廃棄物混じりの土砂」を「土砂・廃棄物混合物」とよぶことにする。
【0020】
建設工事現場の土壌を不図示の重機によって掘削する際には、覆土と埋設廃棄物層を分別して掘削する。掘削された覆土は、土壌汚染の確認分析が行われ(100mに1回程度)、分析結果が基準値内にある場合にはそのまま埋戻土として用いられる。一方、覆土の分析結果が基準値を超えた場合には(すなわち汚染土壌である場合には)、後述する洗浄装置30に搬入され洗浄を行った後、埋戻土として用いられる。
【0021】
一方、覆土が取り除かれた土砂混じりの埋設廃棄物層は、上述したように土砂・廃棄物混合物として掘り起こされ、以下に説明する再生処理システム10によって再生処理される。再生処理システム10は、図1に示すように、乾式選別装置20と洗浄装置30とから構成されるものである。
【0022】
乾式選別装置20は、建設工事現場の掘削場所に配置されたスケルトンバケット21(第1の乾式篩装置)と、建設工事現場の敷地内に設置された設備内に収容された機械式篩装置22(第2の乾式篩装置)及び磁力選別装置23とから構成されるものであり、これら複数の装置を用いて土砂・廃棄物混合物から廃棄物を乾式で段階的に選別するものである。なお、以下の説明では、便宜上、直径40mmを超える廃棄物を「大型廃棄物」とよび、直径2mmを超え40mm以下の廃棄物を「中型廃棄物」とよび、直径2mm以下の廃棄物を「小型廃棄物」とよぶことにする。しかし、これはあくまでも一例であり、各廃棄物の大きさは上記数値範囲に限定されるものではない。
【0023】
スケルトンバケット21は、その底部が所定の大きさの格子状に形成された一般的なものであり、バックホー24やパワーショベル等の重機に取付けて使用されるものである。本実施の形態で適用するスケルトンバケット21は、格子の大きさ(篩目)が100mm×100mmであり、覆土が取り除かれた土砂混じりの埋設廃棄物層から直径100mmを超えるガラ、廃プラスチック等の大型廃棄物を篩い分ける。
【0024】
機械式篩装置22は、スケルトンバケット21の篩目よりも小さい篩目を有するものであり、例えば振動式篩装置等を適用することができる。本実施の形態で適用する機械式篩装置22は、篩目が40mm×40mmであり、スケルトンバケット21により100mmを超える大型廃棄物が除去された土砂・廃棄物混合物から、直径40mmを超える紙屑、木屑、ゴム屑、ガラス屑等の大型廃棄物を篩い分ける。
【0025】
磁力選別装置23は、スケルトンバケット21、機械式篩装置22により大型廃棄物が除去された土砂・廃棄物混合物から、直径2mm以上40mm以下程度の鉄、銅、アルミ等の金属屑を選別するものである。
【0026】
洗浄装置30は、上述した乾式選別装置20(機械式篩装置22及び磁力選別装置23)を収容する設備に隣接して設置されたユニット式の設備であり、上述した乾式選別装置20の処理を経た土砂・廃棄物混合物を水洗浄する装置である。本実施の形態では、この洗浄装置30として、特開2006−116397号に示されている公知の洗浄装置を適用している。特開2006−116397号に示されている洗浄装置は、揮発性有機化合物、PCB、農薬、重金属等の有害な汚染物質を含有する汚染土壌を水洗浄することによって汚染物質を除去する装置である。本実施の形態では、土砂・廃棄物混合物が汚染物質によって汚染されているか否かに拘わらず、この洗浄装置を土砂・廃棄物混合物の洗浄に適用している。これにより、土砂・廃棄物混合物から中型廃棄物及び小型廃棄物を効率的に、かつ、確実に除去することができる。
【0027】
図1に示すように、この洗浄装置30は、湿式篩装置31、ログウォッシャー装置32、混合攪拌装置33、ハイドロサイクロン装置34、混合攪拌装置35、泡浮遊式分離装置36、重力式分離装置37、脱水装置38、凝集沈殿装置39及びプレス脱水装置40とを備えて構成してある。
【0028】
湿式篩装置31は、乾式選別装置20の処理を経て搬入された土砂・廃棄物混合物に水を添加し、2mm×2mmの篩目を有する振動篩等の篩装置(図示せず)を用いて、直径2mmを超える礫・粗砂とそれ以下の直径であるスラリー状の土砂とに分級するものである。なお、分級された礫・粗砂には直径2mm〜40mm以下の中型廃棄物が含まれており、スラリー状の土砂には2mm以下の小型廃棄物が含まれた状態である。土砂・廃棄物混合物が汚染物質により汚染されている場合、汚染物質のほとんどが後述するシルト(細粒子)に付着・吸着しており、2mmを超える礫・粗砂に含まれる汚染物質の量は、環境基準値以下である。従って、2mmを超える礫・粗砂は分離後、後述するログウォッシャー装置32によって洗浄された後、洗浄土として再利用することができる。なお、土砂・廃棄物混合物への水の添加量は、スラリー化する点から、土砂・廃棄物混合物の2.5〜5倍(質量比)であるのが好ましい。
【0029】
ログウォッシャー装置32は、洗浄水が貯留された水槽内に攪拌羽根32aを備えたものであり、湿式篩装置31によって分級された2mmを超える礫・粗砂を水槽内で摺り合わせることによって礫・粗砂の表面を洗浄するものである。このログウォッシャー装置32での洗浄過程において、礫・粗砂に混じった2mm〜40mmの中型廃棄物が水面に浮き上がり、除去される。
【0030】
混合攪拌装置33は、湿式篩装置31で分級されたスラリー状の土砂に分散剤を添加した上で、攪拌羽根33aを用いて機械的に混合・攪拌してスラリー状の土砂を相互に摺り合わせることにより、土砂表面に付着した汚染物質を剥離するためのものである。分散剤としては、界面活性剤が好ましく、そのなかでも、ポリリン酸系の界面活性剤がより好ましい。また、分散剤の添加量は、汚染物質の存在量によって変わるが、全体に対して、0.01〜0.1質量%であるのが好ましい。分散剤を添加せずに、単にスラリー状の土砂を機械的に混合・攪拌しても、汚染物質を土砂表面から剥離することは難しい。これは、汚染物質と土砂表面との表面電荷が異なり、汚染物質は静電気的な相互作用によって、土砂表面に強固に付着しているためである。分散剤を添加することにより、これらの表面電荷が変化するため、汚染物質を容易に剥離することができる。この剥離した汚染物質は、次工程において、細粒子と共にオーバーフローとして分級するため、洗浄処理土には残らない。なお、スラリー状の土砂に汚染物質が含まれていない場合であっても、土砂に偏在して付着する汚染物質が分析時に見逃される場合(サンプリングエラー)があることから、分散剤を添加するのが好ましい。
【0031】
ハイドロサイクロン装置34は、円筒底部が円錐型をした構造の容器34aからなり、混合攪拌装置33の処理を経たスラリー状の土砂を導入する上部流入口、アンダーフローを取り出す下部流出口、オーバーフローを取り出す上部流出口(ともに図示せず)とを備えている。上部流入口から入ったスラリー状の土砂は、容器34aの円周方向に高速で供給されることにより回転運動を起こし、回転流となって、円錐頂部に向かって進む。この時、スラリー中の比重の重い粒子は遠心力により周壁に集まり、次第に下部流出口に向かい、濃縮して排出される。一方、液体と比重の軽い粒子は、容器11の中央部を渦流となって上昇し、上部流出口から排出される。具体的には、63μm〜2mmの砂・細砂及び小型廃棄物はアンダーフローとして分級され、63μm未満のシルトと汚染物質はオーバーフローとして上方に分級される。スラリー状の土砂に汚染物質が含まれている場合、この汚染物質はシルトに付着・吸着しているため、ハイドロサイクロン装置34で分級することにより、ほとんどの汚染物質が洗浄土から除去される。
【0032】
混合攪拌装置35は、上記混合攪拌装置33と同じ構造を有するものであり、ハイドロサイクロン装置34で分級した砂・細砂に、汚染物質のみに選択的に付着する捕集剤を添加した上で、攪拌羽根35aを用いて機械的に混合・攪拌することにより、汚染物質に捕集剤を付着させるものである。捕集剤の種類及び濃度は、対象とする汚染物質に応じて適宜選択される。なお、砂・細砂に汚染物質が含まれていない場合であっても、廃棄物が混じった土壌のサンプリング時に、土壌に偏在する汚染を見逃す場合もあることから、補集剤を添加するのが好ましい。
【0033】
泡浮遊式分離装置36は、フローテーションセル36aと、その内部に配置されたローター(図示せず)と、フローテーションセル36aの上部液面に設置された泡かき取り用の回転羽根からなるスクレーパー(図示せず)とを備えている。この泡浮遊式分離装置36は、混合攪拌装置35の処理を経た砂・細砂を含んだスラリーに気泡剤を添加し、ローターを回転させてセル底部に空気を導入することにより、ローターから発生した気泡に捕集剤の付着した汚染物質を付着させ、これらを気泡とともにセル上部の液面へと上昇させる。このとき、砂・細砂に付着した灰、プラスチック等の小型廃棄物も、気泡に包まれてセル上部の液面へと上昇し、汚染物質とともにスクレーパーによりかき取られて除去される。なお、泡浮遊式分離装置で使用した水は後述する凝集沈殿装置39に送られ、分離した砂・細砂は、重力式分離装置37に送られる。
【0034】
重力式分離装置37は、泡浮遊式分離装置36の処理を経た砂・細砂を水と共に上方から下方へと螺旋状に流す構造になっており、粒子が液体中を重力によって沈降する際の速度の差によって分級する。この重力式分離装置37では、比重の重い金属屑(2mm以下)と比重の軽い砂・細砂とに分級される。砂・細砂から分離された2mm以下の金属屑と水は凝集沈殿装置39に送られる。
【0035】
脱水装置38は、重力式分離装置37の処理を経た砂・細砂を脱水する装置である。この脱水装置38で砂・細砂を脱水することにより得られた洗浄土は、汚染物質の残留濃度の分析が行われ、汚染物質の濃度が環境基準値以下であることが確認された後に、埋戻土として再利用される。砂・細砂から脱水された水は図1に示す貯留水槽に送られ、湿式篩装置31に添加する水として再利用される。
【0036】
凝集沈殿装置39は、ハイドロサイクロン装置34で分級されたシルトと、泡浮遊式分離装置36で使用した水と、重力式分離装置37で分離された金属屑及び水とが混ざった懸濁水に凝集剤を添加・撹拌し、水中の微細な浮遊物を沈殿物として沈殿させ、清澄な処理水を分離するものである。凝集剤としては、無機系凝集剤、有機系凝集剤を単独又は組合わせて用いることができる。無機系凝集剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、鉄塩等が挙げられ、有機系凝集剤としては、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸等が挙げられる。凝集剤の添加量は、懸濁水の懸濁質濃度に応じて調整する。また、沈殿物から分離した水は、図1に示す貯留水槽に送られて、湿式篩装置31に添加する水として再利用される。
【0037】
プレス脱水装置40は、濾布等からなるフィルターとプレス機(ともに図示せず)を備えたもので、凝集沈殿装置39から送られた沈殿物をフィルターで濾過して脱水処理することにより、含水率40〜50質量%の固形状の脱水ケーキを加工するものである。この脱水ケーキは、63μm未満のシルトからなるものであり、土砂・廃棄物混合物が汚染物質によって汚染されている場合、このシルトからなる脱水ケーキに汚染物質が濃縮される。この脱水ケーキは、建設工事現場から外部に搬出され、セメント工場に搬入される。セメント工場内に搬入された脱水ケーキは、セメントキルンで焼成されることによって焼成骨材に加工される。加工された焼成骨材は、建設工事現場内に戻され、埋め戻し材として利用することが可能である。
【0038】
次に、図2に示す概略フローチャートを用いて、上述した土砂・廃棄物混合物の再生処理システムにより土砂を再生処理する手順の一例を説明する。なお、本実施の形態では、掘削する敷地を10m四方のブロックに分け、ブロックごとに掘削を行うものとする。
【0039】
まず、埋設廃棄物層の上部に施されている覆土と、土砂混じりの埋設廃棄物層を分別して掘削する(ステップS01)。埋設廃棄物層を掘削する際、スケルトンバケット21により直径100mmを超える大型廃棄物を篩い分ける(ステップS02)。なお、スケルトンバケット21により篩い分けられた100mmを超える大型廃棄物は、主に、ガラや廃プラスチック等であり、これらは安定型処分場へ搬出されることになる。
【0040】
次いで、土砂・廃棄物混合物を建設工事現場内の機械式篩装置22に搬入し、機械式篩装置22によって直径40mmを超える大型廃棄物を篩い分ける(ステップS03)。なお、機械式篩装置22によって篩い分けられた40mmを超える大型廃棄物は、主に紙屑、木屑、ゴム屑、ガラス屑等であり、これらは管理型処分場へ搬出されることになる。
【0041】
次いで、土砂・廃棄物混合物を磁力選別装置23に送り、比較的大型の金属屑の選別を行う(ステップS04)。なお、磁力選別装置23によって選別された金属屑は、安定型処分場へ搬出されることになる。
【0042】
上記のスケルトンバケット21、機械式篩装置22、磁力選別装置23による乾式選別工程を経た土砂・廃棄物混合物を、建設現場内に設置された洗浄装置30における湿式篩装置31に搬入し、土砂・廃棄物混合物を、直径2mm〜40mmの礫・粗砂と、スラリー状の土砂とに分級する(ステップS05)。上述したように、礫・粗砂には、直径2mmを超える中型廃棄物が含まれており、スラリー状の土砂には直径2mm以下の小型廃棄物が含まれている。
【0043】
ステップS05で分級した直径2mm〜40mmの礫・粗砂をログウォッシャー装置32に送り、礫・粗砂の洗浄を行うとともに、礫・粗砂から中型廃棄物を分別する(ステップS06)。洗浄した礫・粗砂は、埋戻土として再利用する。なお、ステップS06で除去された直径2mmを超える中型廃棄物は、主に木屑、紙屑、廃プラスチック等の混合廃棄物であり、これらは管理型処分場へ搬出されることになる。
【0044】
一方、ステップS05で分級したスラリー状の土砂を混合攪拌装置33に送り、分散剤
を添加して攪拌した後、これをハイドロサイクロン装置34に送り、直径63μm〜2mmの砂・細砂と、直径63μm以下のシルトとに分級する(ステップS07)。
【0045】
次いで、ハイドロサイクロン装置34で分級した直径63μm〜2mmの砂・細砂を混合攪拌装置35に送り、補集剤を添加して混合・攪拌した後、これを泡浮遊式分離装置36に送り、砂・細砂に付着した汚染物質と、直径2mm以下の小型廃棄物を砂・細砂から分離させる(ステップS08)。なお、ステップS08で除去された2mm以下の小型廃棄物は主に汚泥であり、これらは管理型処分場へ搬出されることになる。
【0046】
次いで、泡浮遊式分離装置36の処理を経た砂・細砂を重力式分離装置37に送り、直径2mm以下の金属屑を除去する(ステップS09)。なお、ステップS09で除去された金属屑は、水とともに凝集沈殿装置39に送られる。
【0047】
次いで、砂・細砂を脱水装置38に送って脱水することにより(ステップS10)、洗浄土を得る。この洗浄土は、ステップS06で洗浄した礫・粗砂とともに、埋戻土として再利用する。
【0048】
一方、ステップS07で分級された63μm以下のシルトを凝集沈殿装置39に送り、凝集剤を添加して、沈殿物と水とに分離させる。次いで、沈殿物をプレス脱水装置40に送って、脱水処理することにより(ステップS11)、脱水ケーキを得る(ステップS12)。上述したように、このあと脱水ケーキは建設工事現場の外部に搬出され、セメント工場にて焼成されることにより、焼成骨材に加工される。焼成骨材は、建設工事現場に戻され、埋め戻し材料として再利用する。なお、脱水ケーキには汚染物質や微細な金属屑等が含まれるが、焼成されることによって無害となる。
【0049】
なお、ステップS01で覆土と土砂・廃棄物混合物の分別掘削を行った後、覆土の土壌汚染の確認分析を行う(ステップS13)。覆土が汚染物質によって汚染されていない場合には(ステップS13:No)、覆土をそのまま埋戻土として再利用する。一方、覆土が汚染物質によって汚染されている場合には(ステップS13:Yes)、覆土を洗浄装置30に搬入し、ステップS05〜ステップS12の洗浄処理を行う。
【0050】
図3は、ある鉄道操車場跡地での再開発工事に本実施の形態の再生処理システム10を適用した場合の、土砂の再利用率を算出した結果(試算値)を示したものである。なお、図3に示す各数値は、実際に工事を行った結果算出された値ではなく、工事を行うにあたり、敷地内のボーリング調査及び試掘調査を行った結果に基づいて算出した仮想的な値である。
【0051】
敷地内のボーリング調査は、10m×10mのブロックごとに1箇所ずつ行い、覆土及び埋設廃棄物層の各層厚の算出及び覆土の土壌分析を行った。覆土の土壌分析の結果、汚染物質によって汚染されていないことが確認されたため、覆土はそのまま埋戻土として利用することとした。また、試掘調査は、30m×30mのブロックごとに1箇所ずつ行い、サンプリングした土壌の粒径(0〜40mm、40〜100mm、100mm〜の各%)、土性(シルト分の比率等)、廃棄物組成分析(可燃、不燃、雑物類の各%)を行った。
【0052】
上記調査結果から、全掘削量47,754t、覆土15,795t、土砂・廃棄物混合物31,959tという試算値を得た。この土砂・廃棄物混合物31,959tに本実施の形態の再生処理システム10(現場内設置)を適用した場合、図3に示すように、洗浄土11,505t及び焼成骨材5,753tが得られることが分かる。また、全掘削量47,754t(100%)に対して、現場内での再利用分が33,053t(69%)、外部搬出分が14,702t(31%)である。以上より、本実施の形態の再生処理システム10を適用した場合、掘削した土砂を現場内で有効に再利用することができ、また、土砂・廃棄物混合物の外部への搬出量を大幅に削減することができるものと考えられる。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態の土砂・廃棄物混合物の再生処理方法及び再生処理システム10によれば、掘り起こされた土砂・廃棄物混合物から廃棄物を確実に除去することができるようになる。そのため、再生処理された土砂を埋め戻したとしても、建設後の居住環境等に悪影響を及ぼすことがなく、かつ、現場内で掘削した土砂の再利用率を向上させることができる。また、土砂の再利用率を向上させたことで、埋戻土を別途購入する費用を削減することができる。
【0054】
また、本実施の形態の土砂・廃棄物混合物の再生処理方法及び再生処理システム10によれば、再生処理システム10を構成する装置をすべて建設工事現場内に設置し、再生処理方法における各工程を建設工事現場内で行うようにしたことで、土砂・廃棄物混合物の外部への搬出量を削減することができる。その結果、外部へ土砂を搬出する際の処分費用を削減することができると同時に、埋立処分場の負荷を軽減させることができる。
【0055】
また、本実施の形態の土砂・廃棄物混合物の再生処理方法及び再生処理システム10によれば、乾式選別装置20による廃棄物の選別工程において、異なる大きさの篩目を有する複数の乾式篩装置(スケルトンバケット21、機械式篩装置22)を用いて、大型廃棄物の大きさに応じて大型廃棄物を段階的に篩い分けるようにしたことで、廃棄物の除去精度を向上させることができる。
【0056】
さらに、本実施の形態の土砂・廃棄物混合物の再生処理方法及び再生処理システム10によれば、これまで廃棄処分していた脱水ケーキを焼成して焼成骨材に加工することで、この焼成骨材を埋戻材として再利用することが可能になる。その結果、現場内での土砂の再利用率をさらに向上させることができる。
【0057】
なお、上記実施の形態では、再生処理システム10を建設工事現場の敷地内に設置し、建設現場で掘り起こされた土砂・廃棄物混合物を再生処理する例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、産業廃棄物の埋立処分場に再生処理システム10を設置し、埋立処分場から掘り起こした廃棄物混じりの土砂の再生処理を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施の形態である土砂・廃棄物混合物の再生処理システムの概略図である。
【図2】図1に示す土砂・廃棄物混合物の再生処理システムによる再生処理の手順を示す概略フローチャートである。
【図3】実際の建設工事に本実施の形態の再生処理システムを適用する場合の、土砂の再利用率の試算値を示したものである。
【符号の説明】
【0059】
10 土砂・廃棄物再生処理システム
20 乾式選別装置
21 スケルトンバケット(第1の乾式篩装置)
22 機械式篩装置(第2の乾式篩装置)
23 磁力選別装置
24 バックホー
30 洗浄装置
31 湿式篩装置
32 ログウォッシャー装置
33 混合攪拌装置
34 ハイドロサイクロン装置
35 混合攪拌装置
36 泡浮遊式分離装置
37 重力式分離装置
38 脱水装置
39 凝縮沈殿装置
40 プレス脱水装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設工事現場で掘り起こした土砂・廃棄物混合物から廃棄物の大きさに応じて段階的に廃棄物を除去し、土砂を再生処理する方法であって、
前記土砂・廃棄物混合物から大型廃棄物を乾式で選別する第1工程と、
前記第1工程を経た土砂・廃棄物混合物に水を添加し、中型廃棄物を含む礫・粗砂と小型廃棄物を含むスラリー状の土砂とに分級する第2工程と、
前記第2工程で分級した礫・粗砂を水洗浄し、前記礫・粗砂から中型廃棄物を分離する第3工程と、
前記第2工程で分級したスラリー状の土砂を砂・細砂とシルトとに分級した後、前記砂・細砂を水洗浄し、前記砂・細砂から小型廃棄物を分離することにより洗浄土を得る第4工程と、
前記第4工程で分級したシルトを凝集沈殿させて得た沈殿物をプレス脱水処理することにより脱水ケーキを得る第5工程と、
を有することを特徴とする土砂・廃棄物混合物の再生処理方法。
【請求項2】
前記第1工程において、異なる大きさの篩目を有する複数の乾式篩装置を用いて、前記大型廃棄物の大きさに応じて前記大型廃棄物を段階的に篩い分けることを特徴とする請求項1に記載の土砂・廃棄物混合物の再生処理方法。
【請求項3】
前記第1工程から第5工程までを、建設工事現場内で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の土砂・廃棄物混合物の再生処理方法。
【請求項4】
前記脱水ケーキを焼成することにより骨材を製造する第6工程を有することを特徴とする請求項1に記載の土砂・廃棄物混合物の再生処理方法。
【請求項5】
建設工事現場で掘り起こした土砂・廃棄物混合物から廃棄物の大きさに応じて段階的に廃棄物を除去し、土砂を再生処理するシステムであって、
掘り起こした土砂・廃棄物混合物から大型廃棄物を篩い分ける乾式篩装置と、
前記乾式篩装置による処理を経て搬入された土砂・廃棄物混合物に水を添加し、中型廃棄物を含む礫・粗砂と、小型廃棄物を含むスラリー状の土砂とに分級する湿式篩装置と、
前記湿式篩装置で分級された礫・粗砂を水洗浄し、前記礫・粗砂から前記中型廃棄物を分離するログウォッシャー装置と、
前記湿式篩装置で分級されたスラリー状の土砂を砂・細砂とシルトとに分級し、これらを水洗浄するハイドロサイクロン装置と、
前記ハイドロサイクロン装置で分級された砂・細砂から前記小型廃棄物を分離する泡浮遊式分離装置と、
前記泡浮遊式分離装置での処理を経た砂・細砂を脱水処理して洗浄土を得る脱水装置と、
前記ハイドロサイクロン装置で分級されたシルトを凝集沈殿させて沈殿物と水とに分離する凝集沈殿装置と、
前記沈殿物をプレス脱水処理することにより脱水ケーキを得るプレス脱水装置と、
を有することを特徴とする土砂・廃棄物混合物の再生処理システム。
【請求項6】
前記乾式篩装置は、異なる大きさの篩目を有する複数の篩装置から構成され、これら複数の篩装置を用いて、前記大型廃棄物の大きさに応じて前記大型廃棄物を段階的に篩い分けることを特徴とする請求項5に記載の土砂・廃棄物混合物の再生処理システム。
【請求項7】
前記建設工事現場内に設置されたものであることを特徴とする請求項5又は6に記載の土砂・廃棄物混合物の再生処理システム。
【請求項8】
前記脱水ケーキを焼成することにより骨材を製造することを特徴とする請求項5に記載の土砂・廃棄物混合物の再生処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−202089(P2009−202089A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46242(P2008−46242)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】