説明

土耕栽培用コンテナ及び土耕栽培装置

【課題】用土を充填して植物栽培を行なうコンテナであって、排水系の設備が不要で、しかも併用する照明器具の照度を有効に活用して、植物栽培を良好に行なえる土耕栽培用コンテナを提案する。
【解決手段】上側開放で底部に排水口を有しないコンテナ本体2の内側底面上に灌水用パイプ3が載置されると共に、この灌水用パイプ3の上に用土が充填されて植物栽培用土層4が形成され、前記灌水用パイプ3の受水端3aは植物栽培用土層4の上方外側に導き出され、前記植物栽培用土層4の上には、栽培植物の周囲で当該植物栽培用土層4の表面を覆う光反射シート5が、その反射面が上向きに敷設された構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水管を接続して使用する土耕栽培用コンテナと、当該コンテナを使用した土耕栽培装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培用ではなく、植物栽培用土層となる用土を充填して使用する土耕用の栽培用コンテナ(容器)としては、例えば特許文献1に記載されるように、上側開放の平たい容器の底部に、植物栽培用土層下に排水空間を形成するためのネット(用土フィルター)を張設し、このネット下の排水空間から排水するための排水口を容器底部に設けると共に、前記ネット上に灌水用パイプを配設し、前記ネットの上に植物栽培用土層となる適当な用土を充填するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−56135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の土耕用の栽培用コンテナでは、灌水時に直下の排水空間に殆どの水が流出し、相当量の給水を継続的に行なわなければ植物栽培用土層の全域を適当な湿度状態に維持させることができない。換言すれば、この種のコンテナでは、植物栽培用土層の表面側に灌水する方が、給水量を少なくしながら植物栽培用土層の全域を適当な湿度状態に維持させ易いのである。又、灌水時にコンテナ底部の排水口から余分な水が流出するので、このコンテナを露地ではなく室内に設置したラックに多数のコンテナを載置して使用する場合、各コンテナの灌水用パイプに対する給水系だけでなく、各コンテナの排水口から室外へ排水するための排水系も必要になる。更に、コンテナの底部にネット(用土フィルター)などで排水空間を構成しなければならないので、コンテナ自体がコスト高になるばかりでなく、必要高さの植物栽培用土層の下側に排水空間を形成する関係から、コンテナの高さが高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、使用する用土と灌水方法を考慮すれば、コンテナ底部からの排水を行なわずとも、特定の野菜などを良好に土耕栽培できることが実験の結果判明したので、この事実を背景に、上記のような従来の問題点を解消することのできる土耕栽培用コンテナを提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係る土耕栽培用コンテナは、後述する実施形態の参照符号を付して示すと、上側開放で底部に排水口を有しないコンテナ本体2の内側底面上に灌水用パイプ3が載置されると共に、この灌水用パイプ3の上に用土が充填されて植物栽培用土層4が形成され、前記灌水用パイプ3の受水端3aは植物栽培用土層4の上方外側に導き出され、前記植物栽培用土層4の上には、栽培植物の周囲で当該植物栽培用土層4の表面を覆う光反射シート5が、その反射面が上向きに敷設された構成になっている。
【0006】
上記本発明を実施する場合、具体的には請求項2に記載のように、前記灌水用パイプ3は、パイプ表面全体から水が滲み出す透水性可撓パイプから構成し、受水端3aとは反対側の端部は閉じておくことができる。この場合、請求項3に記載のように、前記灌水用パイプ3は、1つのコンテナに対して1本使用し、その灌水用パイプ3をコンテナ本体2の内側底面2a上に環状(渦巻き状を含む)に敷設するのが望ましい。
【0007】
又、請求項4に記載のように、前記コンテナ本体として、平面形状が長方形のコンテナ本体2を使用し、前記光反射シート5は、前記コンテナ本体2の短辺方向と平行で且つ当該短辺長さに近い長さの帯状体であって、この光反射シート5を複数枚、前記コンテナ本体2の長辺方向に適当間隔おきに並列配置し、各光反射シート5間で露出する植物栽培用土層4において植物を植えることができる。
【0008】
更に本発明は、上記のような構成の土耕栽培用コンテナ1とラック10を使用した土耕栽培装置も提案する。即ち、請求項5に記載の土耕栽培装置は、ラック10の棚11には、その間口方向に複数の前記コンテナ1が並列支持され、この棚11の上方には、下側の並列コンテナ1上を照明する照明器具17(好ましくは植物育成用照明器具)と、前記間口方向と平行向きの給水管27が取り付けられ、前記給水管27には、下側の各コンテナ1の灌水用パイプ3の受水端3aに接続される可撓パイプ30が分岐接続された構成となっている。
【0009】
具体的には、請求項6に記載のように、前記給水管27には、各コンテナ1に対応して止水栓付き分岐管28を設け、この止水栓付き分岐管28に前記可撓パイプ30を着脱自在に接続することができるし、請求項7に記載のように、前記給水管27には、給水タンク32を接続し、この給水タンク32から各コンテナ1の灌水用パイプ3に重力(給水タンク32内の水量の位置水頭エネルギー)により給水されるように構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の本発明の構成によれば、コンテナ内には、その内側底面上に灌水用パイプが載置されるだけで、従来のように上側の植物栽培用土層との間がネットで仕切られた排水空間が底部に構成されないので、コンテナ本体自体の構造が極めてシンプルで、市販の平らな適当深さの物品収納用或いは輸送用などの合成樹脂製コンテナをそのまま活用して、安価に実施することができる。又、排水口を持たないので、コンテナからの排水系を設ける必要がなく、このコンテナを使用して植物栽培を行なう設備を室内に構築する場合の初期費用を抑えることができる。
【0011】
この本発明の土耕栽培用コンテナを使用して植物を栽培する場合、コンテナ本体の中に、栽培する植物の種類やコンテナ本体の容積などに応じて選定した用土を適当量充填して所要深さの植物栽培用土層を構成し、この植物栽培用土層に栽培植物、例えば各種小型葉物野菜の苗を植え付け、この苗の周囲で当該植物栽培用土層の表面を覆うように反射シートを敷設する。そして、植物栽培用照明器具の下側など、必要な照度が確保される場所にコンテナ本体を載置し、植物栽培用土層から突出している灌水用パイプの受水端に給水管を接続し、植物栽培用土層に対して灌水する。このとき、栽培植物の種類や用土の性状、植物栽培用土層の体積などに応じて給水量をコントロールして、栽培植物の根周りを生育に好適な湿度に維持させる。一方、前記植物栽培用照明器具からの直接光線に前記光反射シートからの反射光線が加えられ、葉裏側を含めて栽培植物の全周囲の照度が増すので、前記植物栽培用照明器具自体の明るさと点灯時間を栽培植物の種類などに応じて調整すれば、前記の灌水と相俟って、植え付けた前記苗を良好に生育させることができる。生育に必要な肥料分は、前記給水管から供給する水に液肥を混合して与えてもよいが、比較的短期間で収穫レベルまで生育させることができる各種小型葉物野菜の場合、植物栽培用土層を形成する用土として、肥料として有効な有機成分を含む周知の各種用土を採用することにより、栽培期間中の施肥(追い肥)は不要とすることができる。
【0012】
上記のように本発明の土耕栽培用コンテナを利用する場合の重要点は、用土の選択と灌水用パイプから植物栽培用土層に供給する水量である。即ち、コンテナ本体の底部から余分な水を排出することができないので、しかも植物栽培用土層の表面は光反射シートによってカバーされて、この植物栽培用土層の表面から用土中の水分が蒸散する量は抑制されているので、用土の性状に応じて極僅かな流量で灌水用パイプに給水するだけで、その水分は、植物栽培用土層の底部付近から毛細管現象などで植物栽培用土層の全域に広がることになる。換言すれば、このように水分が植物栽培用土層の底部から全域に広がって植物栽培用土層全体を適度に湿らせるだけで、余分な水分が植物栽培用土層の底部に滞留し、その滞留水分量が漸増しないように、灌水用パイプへの給水量をコントロールしなければならない。この結果、根腐れなどを生じさせることなく、栽培植物を良好に生育させることができるのである。
【0013】
尚、灌水用パイプとしては、硬質塩ビパイプや硬質ゴムパイプなどにその長さ方向適当間隔おきに水流出口を穿設した散水用硬質パイプを使用することも可能であるが、請求項2に記載の構成によれば、単位時間あたり微量の水を植物栽培用土層内に、その用土層の底部から上方へ広い範囲に毛細管現象などで行き渡らせることができる状態に供給することが容易になる。この場合、請求項3に記載の構成によれば、複数本の散水用硬質パイプを管継ぎ手で接続してコンテナ本体の底面上に例えば矩形環状に敷設する場合と比較して、灌水用パイプの敷設が簡単であり、しかも可撓性はあるといえども比較的硬い多孔質ゴム製の透水性可撓パイプを、曲げ方向を左右交互に反転させて比較的小面積のコンテナ本体底面上全域に張り巡らせるよりも、元々一方向に巻き癖のある透水性可撓パイプを環状(渦巻き状を含む)に配置する方が容易であり、特にコンテナ底面上に固定する手段を併用しなくとも、コンテナ底面上に環状に載置した透水性可撓パイプを、植物栽培用土の充填により簡単確実に固定することができる。
【0014】
又、請求項4に記載の構成によれば、長さの短い帯状に裁断した複数枚の光反射シートを使用するので、植物栽培用土層の上に敷く作業が容易であり、栽培植物の植付け列がコンテナ本体の長辺方向に並列するのであるから、当該植付け列がコンテナ本体の短辺方向に並列する場合よりも、栽培植物の種類などに応じて植付け列の数(植物栽培用土層表面の畝数)を変えるときの許容度も大きくなる。
【0015】
以上のような本発明の土耕栽培用コンテナとラックを使用して、請求項5に記載の土耕栽培装置を構成するときは、各コンテナからの排水系を設ける必要がないので、室内などでも一般的な物品保管用ラックを利用して簡単に植物の土耕栽培が行なえる。特に、各コンテナに給水管を直接接続するのではなく、給水管は、ラックのコンテナを支持する棚の上側の棚又はラックの最上段天井部に間口方向に沿って配設すれば良いので、コンテナ数に対して給水管の本数を大幅に減らし、この数少ない給水管に給水できるように構成すれば良いので、給水系の設備も簡単且つ安価に構成できる。この場合、請求項6に記載の構成によれば、棚上のコンテナを積み下ろしする際、他のコンテナに対する給水系を遮断することがなく、他のコンテナでの灌水を所期通り良好に継続させることができる。更に、請求項7に記載の構成によれば、給水管に水道を直結して水道圧で給水する場合と比較して、水道圧の変動による影響がなく、単位時間あたり極少量の給水を実現するための流量の微妙な調整を殆どすることなく、各コンテナ灌水用パイプへほぼ一定の流量で給水させることができる。特にラック各段の給水管ごとにそれぞれ給水タンクを接続するように構成すれば、各コンテナでの単位時間あたりの消費水量が極僅かであることと相俟って、各給水タンクとして小型で小容量のものが利用でき、各給水タンクの水量の変化に伴う各コンテナ灌水用パイプへの給水流量の変化による影響も殆どない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】A図は本発明に基づいて構成された土耕栽培用コンテナの平面図、B図は同縦断正面図である。
【図2】同上の土耕栽培用コンテナの縦断側面図である。
【図3】同上の土耕栽培用コンテナを用土充填前の状態で示す平面図である。
【図4】同上の土耕栽培用コンテナを使用して構成した土耕栽培装置の要部を示す一部縦断正面図である。
【図5】同上の土耕栽培装置のラックを示す横断平面図である。
【図6】同上の土耕栽培装置の給水手段を示す縦断正面図である。
【図7】同上の土耕栽培装置の要部を示す一部縦断側面図である。
【図8】図4のA部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜図3に示す本発明の土耕栽培用コンテナ1は、平面形状が長方形のコンテナ本体2、このコンテナ本体2の内側底面2a上に載置した灌水用パイプ3、この灌水用パイプ3の上からコンテナ本体2内に所要量充填した用土から成る植物栽培用土層4、及びこの植物栽培用土層4に植え付けられた裁判植物苗5の周囲で植物栽培用土層4の表面を覆う複数枚の光反射シート5から構成されている。
【0018】
前記コンテナ本体2としては、物品収納用或いは輸送用などの合成樹脂製コンテナをそのまま活用することができ、特にサイズが限定されるわけではないが、後述するようにラックを利用して植物栽培環境を室内に構成する場合に鑑み、長辺方向長さ:700mm程度、短辺方向長さ:460mm程度、高さ:120mm程度(内側底面2aからの高さ:112mm程度)のものを採用した。灌水用パイプ3としては、例えば多孔質ゴム製で表面全体から水が滲み出るタイプの透水性可撓パイプを使用することができ、このような灌水用パイプ3をコンテナ本体2の内側底面2a上に、コンテナ本体2の周壁からほぼ一定距離だけ離れるように一巻き環状に曲げて載置し、当該灌水用パイプ3の一端部を、コンテナ本体2の1つのコーナー部に導くと共に上方に曲げて、コンテナ本体2より上方に垂直に突出する受水端3aを形成し、コンテナ本体2の内側底面2a上に位置する他端開口は、キャップ3bを外嵌固定して閉じている。植物栽培用土層4を構成する用土としては、例えば土壌改良材として一般的な「ピートモス」に「ベントナイト」をコーティングしたような、ノンケミカルの土壌用環境資材として知られる用土を使用することができ、このような用土を、コンテナ本体2の内側底面2aから植物栽培用土層4の表面(図示のように畝を形成する前の平坦な表面)までのセットアップ高:80mm程度となるように充填した。光反射シート5には、例えば超微細発泡ポリエチレンテレフタレートから成る光反射シートが利用できる。
【0019】
図示例では、植物栽培用土層4の表面に、コンテナ本体短辺方向と平行な畝4aをコンテナ本体長辺方向に適当間隔おきに複数列形成し、この各畝4aに畝長さ方向に適当間隔おきに栽培植物(小型の葉物野菜)の苗6を植え付け、各畝4a間と両端の畝4aの外側に、コンテナ本体短辺方向に長い帯状で最小畝間の間隔より適当に狭い幅の規定サイズの帯状に裁断した複数枚の光反射シート5を、植物栽培用土層4の表面を覆うように光反射面を上にして敷いている。栽培植物の種類によっては、形成される畝4aの並列数は少なくなって畝4a間の間隔が広まるので、上記の規定サイズの光反射シート5のみを使用する場合には、畝4a間に2枚の光反射シート5を一部重ねるようにして敷くことができる。勿論、実際の植え付けに際して、そのときの畝4a間の間隔に合わせて裁断した光反射シート5を使用することもできる。尚、畝4aは、栽培植物に合わせて形成すれば良く、畝4aが不要なときは、植物栽培用土層4の表面を平坦に仕上げれば良い。
【0020】
次に上記の土耕栽培用コンテナ1とラックとを組み合わせて構成した土耕栽培装置について、図4〜図8に基づいて説明すると、図はラック10の中間2段の棚11のみを示しており、3段以上の棚を有するラックの場合でも各段の棚の構成は図示のものと同一である。ラック10は、その四隅に、下端部及び上端部が連結フレームにより互いに連結された支柱部材12を備えており、各段の棚11は、ラック奥行き方向前後一対の支柱部材12間に架設された左右一対の棚受け13により支持されたもので、図示の棚11は、ラック間口方向と平行なビーム材14を、ラック奥行き方向適当間隔おきに複数本(図示例では4本)並列させたもので、各ビーム材14は、その両端が前記棚受け13に形成されたビーム材嵌合支持部に各別に支持されている。勿論、棚11は上記構成のものに限定されるものではなく、全面が1枚の板材で構成されるものや、ラック奥行き方向前後複数枚の帯状板から構成されるもの、ラック間口方向と平行な前後一対のビーム材間にラック奥行き方向と平行なサブビーム材をラック間口方向適当間隔おきに架設して成るもの、などの従来周知の各種の棚が利用できる。
【0021】
各段の棚11には、上記構成の土耕栽培用コンテナ1が、そのコンテナ本体長辺方向がラック奥行き方向と平行になる向きで、ラック間口方向に複数台(図示例では3台)並列支持される。このとき、各コンテナ本体2の長辺方向前後両端が、ラック10を横から見たときにラック奥行き方向前後一対の支柱部材12間に納まるサイズにラック10が構成されると共に、当該棚11を構成する複数本の前記ビーム材14の内、奥行き方向前後両端のビーム材14は、支持する前記コンテナ1の長辺方向前後両端より少し内側に入るように構成されている。而して各段の棚11には、その正面側(コンテナ1を出し入れする側)にガイドローラー15が設けられると共に、背面側にはコンテナ落下防止用ストッパー16が設けられている。ガイドローラー15は、ラック10の前側左右一対の支柱部材12間に配置された、ラック間口方向と平行な向きのローラーであって、その両端の軸受けが左右一対の棚受け13に取り付けられている。而してこのガイドローラー15は、棚11に支持される前記コンテナ1の前端より少し前方に突出すると共に、棚11のコンテナ支持高さ(ビーム材14の上面高さ)よりも若干上方にも突出して、コンテナ本体2の正面側への滑り出しを阻止できるように構成している。コンテナ落下防止用ストッパー16は、ラック10の後ろ側左右一対の支柱部材12間に配置された、ラック間口方向と平行な向きの棒状部材から成り、棚11のコンテナ支持高さよりも高い位置でその両端が左右一対の棚受け13に取り付けられている。
【0022】
各段の棚11に支持される土耕栽培用コンテナ1の上方には、当該土耕栽培用コンテナ1の真上に位置する棚11又はラック10の天井フレームを利用して照明器具17が取り付けられている。この照明器具17は、棒状や環状の蛍光灯、電球形蛍光灯、その他如何なるものでも良いが、特に植物栽培に特化された蛍光照明器具が望ましい。この図示例では、照明器具17として植物栽培用の棒状蛍光灯が使用されており、ラック奥行き方向に並列する複数の照明器具17が、その蛍光管17aがラック間口方向と平行向きで且つ下側の土耕栽培用コンテナ1に植え付けられている栽培植物を照明するように、棚11(又は天井フレーム)の下側に取り付けられている。具体的には、上記構成の棚11の下側に取り付けられる照明器具17は、棚11を構成するビーム材14の下側に当該照明器具17の本体17bを取り付けている。
【0023】
上記のように取り付けられた各照明器具17の本体17bと蛍光管17aとの間を通るように水平光反射板18が張設されている。この水平光反射板18は、そのラック奥行き方向の幅がラック10の奥行き方向の幅(前後一対の支柱部材12の外側面間の間隔)とほぼ同一で、そのラック間口方向の幅は、ラック10の間口方向左右一対の支柱部材12の内側面間の間隔とほぼ同一であって、光反射面を下にして各照明器具17の本体17bに取り付けられている。更にこの水平光反射板18の前後両側辺と左右両側辺とには、それぞれ垂直に垂れ下がる正面側光反射板19、背面側光反射板20、及び左右両側光反射板21,22が、光反射面が互いに対面する向きで連設され、各棚11に支持される前記コンテナ1の上側の植物栽培空間、即ち、収穫時の栽培植物の高さより高い植物栽培空間のほぼ上半部を、前記光反射板18〜22により形成された、下側のみ開放され且つ内側全面が光反射面である囲い手段23で覆った構造となっている。従って、全ての照明器具17の蛍光管17aは、前記囲い手段23の内側で水平光反射板18の直下に配置されている。
【0024】
囲い手段23を構成する光反射板の内、少なくとも土耕栽培用コンテナ1を出し入れする正面側光反射板19は、上側の水平光反射板18の前側辺に対して、ヒンジ又はこれに代わる布状連結材(ガムテープなど)を介して上下揺動開閉自在に取り付けられている。又、囲い手段23で囲まれる空間のラック間口方向両端の一方、例えば光反射板21の内側には送風用ファン24が配設され、反対側の光反射板22には、図1A部及び図8に示すように、内側へ斜め下向きに延出するフラップ25aを上側辺から連設された横長スリット状の空気流通口25が所要数設けられている。尚、フラップ25aは、図示とは逆に、外側へ斜め下向きに延出するものであっても良いし、フラップ25aを省いても良い。又、フラップ25aを図示のように内側へ斜め下向きに延出させる場合は、外側へ斜め下向きに延出させる場合よりも、空気流通口25の存在で光反射板22の内側への反射光量が減少するのを抑制することができる。
【0025】
更にラック10には、図6及び図7に示すように、各段の棚11ごとに独立した給水手段26が併設されている。各給水手段26は、各段の棚11の上方に設けられた囲い手段23の水平光反射板18の下側で且つ前側辺近傍位置に水平に架設された給水管27、この給水管27の各土耕栽培用コンテナ1に対応する位置からそれぞれ直角下向きに分岐する分岐管28、この分岐管28に接続された止水栓29、一端が各止水栓29に着脱自在に接続され且つ他端が当該止水栓29の下方に位置する各土耕栽培用コンテナ1における灌水用パイプ3の受水端3aに着脱自在に接続される可撓パイプ30、及び給水管27の一端に流量調整弁31を介して接続された給水タンク32から構成されている。尚、給水管27の他端はキャップ33により閉じられている。
【0026】
給水タンク32は、給水管27より高い位置でラック10の間口方向一端外側に取り付けられるが、水補給時に給水管27との連結を解いて取り外しできるように構成しても良いが、上側を給水用に開放しておき(必要に応じて蓋を設けても良い)、給水タンク32内の水位が一定レベル以下に下がったとき、水道に接続されたホースなどにより手作業で水補給できるように構成することができる。勿論、上記構成のラック10が多数台設置されるような大規模な設備の場合、各給水タンク32に水位検出用センサーを取り付けると共に、各給水タンク32に対して水道に接続された水補給管を、自動開閉弁を介して接続し、水位検出用センサーが給水タンク32内の水位が下限レベル以下に下がったことを検出したとき、その給水タンク32に接続されている水補給管の自動開閉弁を開動させ、給水の結果、水位検出用センサーが給水タンク32内の水位が上限レベルに達したことを検出したとき、前記自動開閉弁を閉動させるように構成して、全ての給水タンク32に対する水補給を全自動で行なうように構成することも可能である。
【0027】
次に上記のように構成された土耕栽培装置の使用方法について説明すると、先に説明した要領で栽培植物の苗6を植え付けて完成させた土耕栽培用コンテナ1を、ラック10の各段の棚11上に、コンテナ本体長辺方向がラック奥行き方向と平行になるように、所定数を並列載置する。このとき、囲い手段23の正面側光反射板19は手前上方に開いておく。尚、この正面側光反射板19を開いた状態で保持する手段、例えばチエンや紐などの吊り具の先端フック部を正面側光反射板19の下側辺近傍に設けた被係止孔に係合させるような簡単な保持手段を併用するのが望ましい。
【0028】
一方、ラック10の各棚11に装備されている給水手段26の各止水栓29は閉じられ、給水タンク32には水が所要量補給されている。この状態で、各土耕栽培用コンテナ1における灌水用パイプ3の受水端3aに、当該土耕栽培用コンテナ1を載置した棚11が備える給水手段26の給水管27から垂れ下がる可撓パイプ30の先端を接続し、止水栓29を開く。この結果、給水タンク32内から土耕栽培用コンテナ1内の灌水用パイプ3に自動的に給水され、給水タンク32から灌水用パイプ3に至る給水路中の水量の位置水頭エネルギーにより灌水用パイプ3の表面全体から水が連続的に滲み出して、先に説明したように水分が灌水用パイプ3の周囲から植物栽培用土層4の全体に毛細管現象などにより広がり、当該植物栽培用土層4の全体を所要湿度の湿潤状態に維持させることができる。
【0029】
このとき、植物栽培用土層4の表面は、苗6の根元周囲を除いて光反射シート5により覆われているので、植物栽培用土層4の表面からの水分の蒸散は極少ない。従って、経時的に植物栽培用土層4の湿度が漸増し、植物栽培用土層4の底部に水分が滞留し、そしてその水分の滞留量が漸増するようなことが無いように、灌水用パイプ3からの単位時間あたりの水分滲出量を、給水タンク32側の流量調整弁31により設定することができるが、基本的には、前記給水路中の水量の位置水頭エネルギーによって灌水用パイプ3からの単位時間あたりの水分滲出量が決まるので、給水タンク32の容量や給水管27に対する高さなどにより前記位置水頭エネルギーを予め設定することにより、前記のように植物栽培用土層4が湿度過多になるのを防止できる。
【0030】
上記のように給水手段26を作動させると共に、各棚11に装備されている照明器具17に通電し、蛍光管17aを点灯させる。この結果、囲い手段23の下側の栽培植物空間は、蛍光管17aからの直接光線の他に、囲い手段23の内側全面の光反射面(光反射板18〜22の光反射面)からの反射光線、及び植物栽培用土層4上を覆う光反射シート5空の反射光線によって照明される。即ち、栽培植物の苗6の葉裏側を含めて栽培植物の苗6の周囲全体を必要な照度で照明することができる。
【0031】
尚、囲い手段23の内側空間内では、当該内側空間が下側のみ開放していることと、当該内側空間の天井付近の多数の蛍光管17aが点灯することのより、滞留している空気の温度上昇が考えられる。しかしながら、送風用ファン24に通電し、囲い手段23の内側でそのラック間口方向(長手方向)の一端部から若干斜め上向きに極弱い風力で送風することにより、送風用ファン24とは反対側の空気流通口25の存在も関係して、囲い手段23の内側空間内にその長手方向の極弱い気流を生じさせることができ、この気流により、囲い手段23の内側空間と外側との間に空気の流通を発生させることができる。この結果、囲い手段23の内側空間に高温の空気が滞留して下側の栽培植物の苗6に熱的悪影響が及ぶのを防止することができると共に、栽培植物の苗6の周囲の雰囲気が静止するのを防止することができる。勿論、囲い手段23と土耕栽培用コンテナ1との間の栽培植物の苗6の周囲は開放されているので、このラック10が設置された植物栽培室内のエアコンにより温度調整された雰囲気も、前記囲い手段23の内側空間に発生する気流の影響で、土耕栽培用コンテナ1の上側の植物栽培空間内に流入するので、この点でも栽培植物の苗6の周囲の空気が静止滞留することはない。
【0032】
以上のように、植物栽培用土層4を構成させる用土の性状及び栽培植物の種類や成長度合いなどに応じて、植物栽培用土層4内を常時適当湿度の湿潤状態に維持すると共に、照明器具17の1日あたりの点灯時間や照度を設定し、更には送風用ファン24の1日あたりの通電時間や風力を設定して、各土耕栽培用コンテナ1の植物栽培用土層4に植え付けた栽培植物の苗6を生育させることにより、当該栽培植物の苗6を所要期間の間に良好に生育させて収穫期を迎えることができる。
【0033】
栽培植物を収穫するときは、その対象となる土耕栽培用コンテナ1の灌水用パイプ3に接続されている給水手段26の止水栓29を閉じて可撓パイプ30を灌水用パイプ3の受水端3aから外し、囲い手段23の正面側光反射板19を上に上げて開放した状態で、収穫対象の土耕栽培用コンテナ1を棚11の上から引き出すのであるが、このとき、手前にあるガイドローラー15が少し高いので、引き出す土耕栽培用コンテナ1の手前を持ち上げるようにして当該ガイドローラー15上に移載する。この状態で土耕栽培用コンテナ1を手前に引き出すことにより、ガイドローラー15の転動を利用して軽く円滑に収穫対象の土耕栽培用コンテナ1を棚11から取り出すことができる。又、棚11を構成するビーム材14の内、正面側のビーム材14は、その直下の棚11が備える囲い手段23の水平光反射板18の前側辺より後退しているが、この囲い手段23の水平光反射板18の前側辺の真上に前記ガイドローラー15が配置されていて、棚11に対して出し入れされる土耕栽培用コンテナ1が、直下の棚11が備える囲い手段23の水平光反射板18の前側辺とぶつかるのを前記ガイドローラー15で防止できる。
【0034】
尚、上記実施例では、給水管27から分岐させた分岐管28に止水栓29が設けられているので、この止水栓29を止水状態に切り換えても、可撓パイプ30を灌水用パイプ3の受水端3aから外したときに当該可撓パイプ30内の水が流出することになる。又、当該可撓パイプ30を止水栓29側から外しても同じことである。従って、可撓パイプ30を灌水用パイプ3の受水端3aから外すことを前提にして、灌水用パイプ3の受水端3aに接続される可撓パイプ30の先端部に止水栓29を設けておくのが望ましい。止水栓29としては、手作業で止水操作する形式のものでも良いが、分岐管28の先端に止水栓29を設ける場合と可撓パイプ30の先端に止水栓29を設ける場合の何れにおいても、止水栓29と可撓パイプ30、又は可撓パイプ30と灌水用パイプ3の受水端3aとを着脱自在に接続する手段として、配水ホース接続用のワンタッチカップラーの一方(プラグ又はソケット)に、当該ワンタッチカップラーを離脱操作したときに自動的に止水動作する止水弁が内蔵された、止水弁内蔵のワンタッチカップラーを利用し、内蔵止水弁を分岐管28側にして分岐管28と可撓パイプ30とを接続するか又は、内蔵止水弁を可撓パイプ30側にして可撓パイプ30と灌水用パイプ3の受水端3aとを接続するのが最も望ましい実施形態である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の土耕栽培用コンテナ又は土耕栽培装置は、露地ではなく室内で比較的大規模な植物工場的に植物、特に比較的小型の葉物野菜を短期間のサイクルで栽培するときの手段として有効活用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 土耕栽培用コンテナ
2 コンテナ本体
3 灌水用パイプ
3a 受水端
4 植物栽培用土層
5 光反射シート
6 苗(栽培植物)
10 ラック
11 棚
12 支柱部材
13 棚受け
14 ビーム材
15 ガイドローラー
16 コンテナ落下防止用ストッパー
17 照明器具
17a 蛍光管
18〜22 光反射板
23 囲い手段
24 送風用ファン
25 空気流通口
26 給水手段
27 給水管
28 分岐管
29 止水栓
30 可撓パイプ
31 流量調整弁
32 給水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側開放で底部に排水口を有しないコンテナ本体の内側底面上に灌水用パイプが載置されると共に、この灌水用パイプの上に用土が充填されて植物栽培用土層が形成され、前記灌水用パイプの受水端は植物栽培用土層の上方外側に導き出され、前記植物栽培用土層の上には、栽培植物の周囲で当該植物栽培用土層の表面を覆う光反射シートが、その反射面が上向きに敷設されている、土耕栽培用コンテナ。
【請求項2】
前記灌水用パイプは、パイプ表面全体から水が滲み出す透水性可撓パイプから構成され、受水端とは反対側の端部は閉じられている、請求項1に記載の土耕栽培用コンテナ。
【請求項3】
前記灌水用パイプは、1つのコンテナに対して1本使用され、その灌水用パイプがコンテナ本体の内側底面上に環状に敷設されている、請求項2に記載の土耕栽培用コンテナ。
【請求項4】
前記コンテナ本体は平面形状が長方形のもので、前記光反射シートは、前記コンテナ本体の短辺方向と平行で且つ当該短辺長さに近い長さの帯状体であって、この光反射シートが複数枚、前記コンテナ本体の長辺方向に適当間隔おきに並列配置され、各光反射シート間で露出する植物栽培用土層において植物が植えられている、請求項1〜3の何れか1項に記載の土耕栽培用コンテナ。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の土耕栽培用コンテナとラックを使用した土耕栽培装置であって、ラックの棚には、その間口方向に複数の前記コンテナが並列支持され、この棚の上方には、下側の並列コンテナ上を照明する照明器具と、前記間口方向と平行向きの給水管が取り付けられ、前記給水管には、下側の各コンテナの灌水用パイプの受水端に接続される可撓パイプが分岐接続されている、土耕栽培装置。
【請求項6】
前記給水管には、各コンテナに対応して止水栓付き分岐管が設けられ、この止水栓付き分岐管に前記可撓パイプが着脱自在に接続されている、請求項5に記載の土耕栽培用コンテナ。
【請求項7】
前記給水管には給水タンクが接続され、この給水タンクから各コンテナの灌水用パイプに重力により給水されるように構成した、請求項5又は6に記載の土耕栽培装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−55737(P2011−55737A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206766(P2009−206766)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】