説明

土質改良機の混合攪拌装置

【課題】 混合攪拌機がコンベヤベルトとの間に硬い岩石等を噛み込んだ場合でも混合攪拌機の回転が停止したり、故障ないし破損したりするのを防止した装置を提供することを課題としている。
【構成】 原料投入口から投入された原料を製品排出口に向けて搬送するベルトコンベヤと、該原料の流れ方向に沿って該ベルトコンベヤ上方に直列に配置された攪拌カッターを有する複数台の混合攪拌機とを具備した土質改良機において、該ベルトコンベヤを支持するキャリヤローラを可倒式に設けて、異物噛み込み時における該ベルトコンベヤの噛み込み部分の下方変形及び移動を可能にしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建設作業等に利用する原料土質を改良する混合攪拌装置に関するものである。更に、具体的には、混合攪拌装置の異物噛み込みによる装置の動作停止を回避する手段に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
混合攪拌装置については、従来から多くの研究開発され、多くの発明や考案が文献等に開示されている。しかし、本願発明は同出願人の出願発明(特許文献1、以下従来発明1という)に類似しており、本願発明は従来発明1の改良発明に相当する。従って、混合・攪拌装置における従来装置の一般的な説明は省略し、以下に従来発明1について必要な事項を説明する。図6は従来発明1の側面図で、図7は要部の横断面図を示し、図8は図6のC矢視の縦断面図を示す。
【特許文献1】公開特許公報、特開2003−236356(半連続式混合攪拌方法及び同装置)
【0003】
図6において、混合攪拌装置50はフレーム51と、その上側に配置された函体52と、フレーム51の下側に配置された原料搬送コンベヤベルト58等から構成されている。函体52は5個のブロック52a〜52eから構成され、ブロック52a〜52eは連結材53によって連結されている。各ブロック52a〜52eは底部が開放されていると共に原料搬送コンベヤ58と組み合わされて混合攪拌槽の機能をする。ブロック52aの上側は開放され、原料供給口54として機能する。また、ブロック52eの開放底部55は製品排出口として機能する。ブロック52aの上方には原料土投入ホッパ56と固化剤投入ホッパ57が配置されている。原料土投入ホッパ56の底部及び固化剤投入ホッパ57の底部には図示省略の開閉シャッタが設けられており、投入量を制御できるように構成されている。なお、59は製品搬出用のベルトコンベヤである。
【0004】
ブロック52a〜52dの内部には、図7に示すように、混合攪拌機60a〜60dが設けられており、図示のようにベルトの回転方向に沿って直列に配置されている。各混合攪拌機60(60a〜60d)は放射状に溶接で固定された複数の刃物ホルダーを回転軸61の周方向と軸方向に備え、刃物が該ホルダーに取り付けられている。更に、図8に示すように、回転軸61は軸受け62、62によって支持され、継ぎ手63を介してモータ64によって回転制御される。混合攪拌機60a〜60dの4個のモータ(64a〜64d)は個々に回転方向、回転速度が自在に制御可能に構成されている。
【0005】
また、図7に示したように、原料搬送コンベヤ70はコンベヤベルト58(以下、単に「ベルト58」という。)、駆動輪58aと従動輪58bを具備し、図示省略のモータによって駆動される。さらに、原料搬送コンベヤベルト58のたわみを防止するためのキャリヤローラが混合攪拌機60a〜60cの略真下で上側(引っ張り側)ベルトの裏側面に接するように設けられている。また、図8に示すように、函体52の側面板の下端部とベルト58との隙間から原料土が漏れるのを防止するためのスカートゴム65が函体52の両側下端部に設けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来装置1において、例えば、原料搬送コンベヤベルト58が非弾性材料で構成された場合、或いは、キャリヤローラ59a〜59cが図7に示すように混合攪拌機60a〜60cの真下で上側(引っ張り側)ベルトの裏側に設けられている場合には、混合攪拌機60(60a〜60d)とコンベヤベルト58との間に硬い岩石等を噛み込んだときは混合攪拌機60の回転動作が停止したり、或いは、混合攪拌機60が故障ないし破損したりする危険性があった。この場合作業を中断して岩石等を除去したり、或いは混合攪拌機60の故障部分を修理したりする必要が生じ、著しく作業能率を悪化するという問題があった。本発明はかかる問題を解決した混合攪拌装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するための手段として以下の構成を採用している。即ち、
請求項1に記載の発明は、原料投入口から投入された原料を製品排出口に向けて搬送するベルトコンベヤと、該原料の流れ方向に沿って該ベルトコンベヤ上方に直列に配置された攪拌カッターを有する複数台の混合攪拌機とを具備した土質改良機において、該ベルトコンベヤを支持するキャリヤローラを可倒式に設けて、異物噛み込み時における該ベルトコンベヤの噛み込み部分の下方変形を可能にしたことを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記キャリヤローラを揺動可能に設けると共に、正立位置にストッパーを設けて、コイルばねで付勢したことを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、原料投入口から投入された原料を製品排出口に向けて搬送するベルトコンベヤと、該原料の流れ方向に沿って該ベルトコンベヤ上方に直列に配置された攪拌カッターを有する複数台の混合攪拌機とを具備した土質改良機において、該ベルトコンベヤを支持するキャリヤローラを上下動可能に設けて、異物噛み込み時における該ベルトコンベヤの噛み込み部分の下方変形及び移動を可能にしたことを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記キャリヤローラをばねで上方向に付勢すると共に、正位置に停止するようにストッパーを設けたことを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4に記載の発明において、前記ベルトコンベヤの両サイドに原料の荷こぼれ防止のためのスライドプレート又はローラを設けたことを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5に記載の発明において、前記キャリヤローラは前記混合攪拌機と混合攪拌機の中間位置に配置したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、混合攪拌機とコンベヤベルトとの間に硬い岩石等を噛み込んだ場合に、その部分に配置されたキャリローラが前傾してベルトが下側に変形及び移動するので混合攪拌機の回転動作が停止したり、或いは、混合攪拌機が故障ないし破損したりする危険性を回避し得るという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】

以下本発明の実施形態1を図1〜図5に基づいて説明する。図1は本実施形態の主要部の側面断面図を示す。図2は図1の矢視Cから見た装置全体の縦断面図である。図3はキャリヤローラを可倒式にした実施例で、図2に示す拡大詳細図である。図4は図3の矢視Bから見た拡大詳細図である。また、図5は図3の矢視Aから見た拡大詳細図である。なお、図1〜図5において、従来装置1(図6〜図8)と同じ構成要素については同じ参照番号を付して詳細な説明を省略する。
【0015】
図1において、ベルト11は弾性体材料(例えば、ゴム等)で構成されており、伸縮や変形がある程度まで自在である。ゴムベルト11は駆動輪11aと遊動輪11bの間に懸架されている。ゴムベルト11の撓み量を制限(又は支持する)キャリヤローラ13a、13b、13c、13dは混合攪拌機60の真下ではなく、混合攪拌機60の中間位置に配置されている。例えば、キャリヤローラ13bは混合攪拌機60aと混合攪拌機60bの中間位置に配置されている。キャリヤローラ13c、13dも同様である。キャリヤローラ13b、13c、13dはベルト11の移動方向に対して傾倒可能に構成されている。また、ベルト11を弾性体材料で構成したので、ベルト11全体が伸びてベルト11の張力が緩み易くなる。従って、張力を一定に保つためのローラ15が設けられている。
【0016】
また、図1に示すように、混合攪拌機60a、60b、60c、60dの真下ではキャリヤローラがなく、空きスペースになっている。従って、混合攪拌機60a、60b、60c、60dの位置に来るとベルト11が撓み易くなり、スカートゴム65との間の隙間が大きくなり、ここから原料が漏れやすくなる。従って、図5に示すように、混合攪拌機60a、60b、60c、60dの真下ではベルト11の搬送側(上側)ベルトの両端は、裏面からスライドプレートを頭部に備えた支柱14a、14b、14c、14dによって支持している。なお、支柱14a〜14dはスライドプレートの代わりにローラを設けたものでもよい。
【0017】
図2は矢印Bから見た断面を示している。即ち、混合攪拌機60の軸中央部分から見た断面図である。図2に示すように、キャリヤローラ13bは、少なくとも、ベルト11の上方に設けられたスカートゴム65の外側まで伸長し、ベルト11とスカートゴムとの隙間から原料が洩れないようにベルト11を支持している。さらに、キャリヤローラ13bは、図3、図4に示すように、ベルト11の進行方向に傾倒可能に構成されている。さらに、この実施形態ではキャリヤローラ13bは2分割して、独立に傾倒可能に構成されている。
【0018】
従って、ベルト11と混合攪拌機60(例えば、60b)との間に岩石等を噛み込んだ場合は、混合攪拌機60の真下部分では搬送側ベルトの下側が空きスペースになっており、かつ、キャリヤローラ13が前側に傾くので、噛み込んだ個所の搬送側ベルト下側に大きく撓むことができる。この結果、本実施形態の構成では相当に大きな岩石等を噛み込んでも混合攪拌機の回転を停止することなく後方に噛み込んだ岩石等を送出することができる。なお、混合攪拌機60c、60dの部分についても同様である。
【0019】
図3は、キャリヤローラ13bの可倒式構造を説明するための拡大詳細図である。図4は図3の矢視Cから見た図である。図3、図4において、キャリヤローラ13bは軸20に固定されており、軸20はブラケット21に回転自在に支持されている。更に、このブラケット21は共通の軸23に揺動自在に支持されている。共通軸23の両端部にはコイルバネ24が巻きつけられており、コイルバネ24の一端24aは基板25に取り付けた固定手段31により固定され、コイルバネ24の他端24bはブラケット21に固着したブロック25により固定されている。
【0020】
共通軸23は基板25に固着されたL字型ブラケット26にネジ又はその他の手段により固定されている。更に、基板25にはネジ孔を有するブロック27が垂直に立設して固定されている。ブロック27にはストッパー用のボルト28と調整用ボルト29が前記ネジ孔に螺合されている。以上の構成により、ブラケット21は図示の矢印F方向(反時計方向)にコイルバネ24によって付勢されると共にストッパー用ボルト28により正常位置(図示の位置)以上に矢印F方向に傾倒できないように制限されている。
【0021】
以上に説明した構成から本実施形態は以下のように機能する。即ち、原料投入口54から原料(例えば、柔らかい泥土と岩石等の硬い固形物を含んだ原料)が供給され、ベルトコンベヤの搬送側ベルト11上に積載される。積載された原料はベルト11によって製品排出口55に向けて搬送される。搬送の途中で原料は混合攪拌機60a〜60dによって混合攪拌される。この際に運悪く、岩石等の固形物が混合攪拌機60cとベルト11の間に噛み込まれる事態が生じることもあり得る。
【0022】
この場合、ベルト11が弾性材料(例えばゴム)で構成されており、且つ、混合攪拌機60cの真下の部分はベルト11の裏側(下側)は空きスペースになっており、さらに、キャリヤローラが傾倒可能に構成されているので、ベルト11の下方への変形及び移動が可能になって、噛み込まれた岩石は下流側に排出され、製品排出口55から排出される。 従って、本実施形態では岩石等の固形物が混合攪拌機60cとベルト11の間に噛み込まれた場合でも装置が停止したり、破損や故障を生じることなく円滑な運転が可能になり、作業効率の向上が図れるという効果が得られる。
【0023】
また、混合攪拌機60の配置された部分のベルト11の両端はスライドプレート(又はローラ)を備えた支柱14によってサポートされ、且つ、スカートゴム65が設けられているので、原料がベルトの両端からこぼれるという事態は生じないので清潔な作業が可能になるという効果も得られる。
【0024】
以上本発明の実施形態を図面に基づいて詳述してきたが、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではなく、実質的に同一技術と見られる改良や変更があっても本発明の技術的範囲に属する。例えば、上記の実施形態では、コンベヤベルとして平ベルトの場合について説明してきたが、代わりにトラフ形状のベルトを使用してもよい。又、キャリヤローラ13b〜13dは傾倒可能に構成しているが、この代わりに、キャリヤローラ13b〜13dの下側に圧縮ばねを設けて上向きに付勢すると共に、ストッパーを設けてキャリヤローラ13b〜13dが正常位置よりも上方に移動しないように制限した構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を実施した実施形態の側面断面図を示す。
【図2】本実施形態のB矢視断面図を示す。
【図3】キャリヤローラの構造を示す。
【図4】図3のC矢視図を示す。
【図5】本実施形態のA矢視断面図を示す。
【図6】従来装置の全体側面図を示す。
【図7】従来装置の主要部の側面断面図を示す。
【図8】従来装置の縦断面図を示す。
【符号の説明】
【0026】
11 コンベヤベルト
11a 駆動輪
11b 遊動輪
13a〜13d キャリヤローラ
14a〜14d ベルトサポート用支柱
15 張力維持用ローラ
24 付勢用コイルばね
60(60a〜60d) 混合攪拌機
65 スカートゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料投入口から投入された原料を製品排出口に向けて搬送するベルトコンベヤと、該原料の流れ方向に沿って該ベルトコンベヤ上方に直列に配置された攪拌カッターを有する複数台の混合攪拌機とを具備した土質改良機において、該ベルトコンベヤを支持するキャリヤローラを可倒式に設けて、異物噛み込み時における該ベルトコンベヤの噛み込み部分の下方変形及び移動を可能にしたことを特徴とする土質改良機の混合攪拌装置。
【請求項2】
前記キャリヤローラを揺動可能に設けると共に、正常位置にストッパーを設けて、コイルばねで付勢したことを特徴とする請求項1に記載の土質改良機の混合攪拌装置。
【請求項3】
原料投入口から投入された原料を製品排出口に向けて搬送するベルトコンベヤと、該原料の流れ方向に沿って該ベルトコンベヤ上方に直列に配置された攪拌カッターを有する複数台の混合攪拌機とを具備した土質改良機において、該ベルトコンベヤを支持するキャリヤローラを上下動可能に設けて、異物噛み込み時における該ベルトコンベヤの噛み込み部分の下方変形及び移動を可能にしたことを特徴とする土質改良機の混合攪拌装置。
【請求項4】
前記キャリヤローラをばねで上方向に付勢すると共に、正位置に停止するようにストッパーを設けたことを特徴とする請求項3に記載の土質改良機の混合攪拌装置。
【請求項5】
前記ベルトコンベヤの両サイドに原料の荷こぼれ防止のためのスライドプレート又はローラを設けたことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1に記載の土質改良機の混合攪拌装置。
【請求項6】
前記キャリヤローラは前記混合攪拌機と混合攪拌機の中間位置に配置したことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1に記載の土質改良機の混合攪拌装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−105576(P2007−105576A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296792(P2005−296792)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(501132804)住友建機製造株式会社 (271)
【Fターム(参考)】