説明

土質改質設備及び土質改質工法

【課題】掘削土砂の土質改良処理、無害化処理及び流動化処理を連続的に実施するにあたり、適量の薬材を供給可能な土質改質設備及び土質改質工法を提供する。
【解決手段】土質改質設備1は、地盤の掘削により生じた掘削土砂2をベルトコンベア3上に積載した後、上流側で掘削土砂2を改質するための改質材及び無害化するための無害化材を供給し、搬送しながら撹拌混合して土質改質土を作成したり、掘削土砂2と水とを混合した泥水22をベルトコンベア3上に積載した後、上流側で泥水22を流動化するための改質材を供給し、搬送しながら撹拌混合して流動化処理土を作成し、掘削土砂2を再利用できるように処理するためのものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の掘削により生じた掘削土砂を再利用できるように土質を改質するための土質改質設備及び土質改質工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネルの掘削現場やビルの建設現場等で発生する掘削土砂は、産業廃棄物として処分しなければならないので処理費用がかかる。そこで、この掘削土砂を裏込材や埋戻材として再利用するための土質改質技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ベルトコンベア上に配置された撹拌羽根により、ベルトコンベア上を搬送される掘削土砂を撹拌混合しながら土質改質する撹拌混合装置が開示されている。この撹拌混合装置は、この掘削土砂を流動化するための改質材を上流側で供給し、搬送しながら撹拌混合して、掘削土砂を流動化処理するものである。
【0004】
また、特許文献2には、掘削土砂を土質改質するための処理設備が開示されている。この処理設備は、図5に示すように、掘削土砂に水を噴射して掘削土砂を破砕しながら篩分けを行う篩分け工程と、篩い分けられた掘削土砂中に含まれる異物を除去する除去工程と、掘削土砂と水とからなる泥水に改質材を添加して撹拌混合する混合工程とを1サイクルとし、これを複数回繰り返すことにより、掘削土砂を流動化処理するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−211823号公報
【特許文献2】特開2001−329565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されている撹拌混合装置では、ベルトコンベア上に積載された掘削土砂の重量を計測する機能を備えていないので、積載されている掘削土砂の量に応じた適切な量の改質材を供給できず、このため、充分に土質改質されていない掘削土砂が生じるおそれがあった。
【0007】
また、掘削土砂中に有害物が含まれている場合には、それを無害化する機能を備えていないので、無害化用の設備を新たに設置しなければならないが、無害化用の設備には、広い敷地と新たな設備投資が必要であるという問題点があった。
【0008】
そして、特許文献2に記載されている処理設備では、ミキサー中に含まれる掘削土砂の容量を計測し、その掘削土砂の容量に対して、所定量の改質材を供給するため、流動化処理作業がバッチ処理とならざるを得ず、処理効率が悪いという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、掘削土砂の土質改質処理、無害化処理及び流動化処理を連続的に実施するにあたり、適量の薬材を供給可能な土質改質設備及び土質改質工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、地盤の掘削により生じた掘削土砂をベルトコンベアにより搬送しながら撹拌混合して、前記掘削土砂を再利用できるように土質を改質するための土質改質設備であって、
前記掘削土砂と水とを混合して泥水を作成するとともに、その泥水を供給する泥水供給手段と、
前記掘削土砂又は前記泥水を前記ベルトコンベア上に供給する土砂供給手段と、
前記ベルトコンベアの所定の範囲に積載された前記掘削土砂又は前記泥水の重量を計測する計測手段と、
前記掘削土砂又は前記泥水を改質するための改質材を供給する改質材供給手段と、
前記掘削土砂又は前記泥水に含まれる有害物を無害化するための無害化材を供給する無害化材供給手段と、
前記計測手段により計測された前記掘削土砂又は前記泥水の重量に基づいて、前記改良材供給手段及び前記無害化材供給手段から供給される改良材及び無害化材の供給量を調整する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、改質材供給手段と無害化材供給手段とを備えているので、掘削土砂を土質改質処理するとともに、無害化処理も行うことができる。さらに、泥水供給手段を備えているので、掘削土砂を流動化処理することもできる。従来の処理設備をそれぞれ設けて、別々に処理を行う場合に比べて、設備投資費を低減できるとともに、処理時間を大幅に短縮することができる。
【0012】
また、計測手段と制御手段とを備えているので、ベルトコンベアに積載されている掘削土砂を土質改質、無害化及び流動化処理するために最適な量の改質材及び無害化材を供給することができる。そして、改質材及び無害化材を掘削土砂に供給後、撹拌混合するので、改質材及び無害化材を掘削土砂内に均一に分布させることができる。したがって、信頼性の高い改質土を作成し、かつ、重金属、ホウ素、フッ素、揮発性有機化合物(VOC)、油等の有害物を確実に無害化することができる。
【0013】
そして、土質改質処理、無害化処理及び流動化処理を連続して実施することができるので、従来のバッチ処理に比べて処理時間を大幅に短縮することができる。
【0014】
また、本発明において、前記計測手段は、前記ベルトコンベアのヘッドプーリーとテールプーリーとの間に複数設けられ、搬送用ベルトを支持するガイドプーリー間に設置されているものであることとすれば、ガイドプーリー間の範囲内に積載されている重量を測定することができる。
【0015】
また、本発明において、前記改質材供給手段は、前記改質材を貯留するための改質材用タンクと、前記改質材を前記掘削土砂又は前記泥水に供給するための改質材用フィーダと、を備えることとすれば、改質材を改質材用貯留タンクに貯留することにより、改質材を連続して供給することができる。
【0016】
また、本発明において、前記改質材用フィーダは、前記計測手段にて計測した前記掘削土砂又は前記泥水の重量に応じて前記改質材の吐出量を調整可能であることとすれば、ガイドプーリー間に積載されている掘削土砂又は泥水の量に応じた最適な量の改質材を供給することができる。
【0017】
また、本発明において、前記無害化材供給手段は、前記無害化材を貯留するための無害化材用タンクと、前記無害化材を前記掘削土砂又は前記泥水に噴射するための無害化材用ノズルと、前記無害化材用タンクから前記無害化材を供給するための無害化材用ポンプ又は無害化材用フィーダとを備えることとすれば、無害化材を無害化材用貯留タンクに貯留することにより、無害化材を連続して供給することができる。
【0018】
また、本発明において、前記無害化材用ポンプ又は無害化材用フィーダは、前記計測手段にて計測した前記掘削土砂又は前記泥水の重量に応じて前記無害化材の吐出量を調整可能であることとすれば、ガイドプーリー間に積載されている掘削土砂又は泥水の量に応じた最適な量の無害化材を供給することができる。
【0019】
本発明は、上述した土質改質設備を用いた掘削土砂の土質を改質する改質工法において、
前記掘削土砂を前記ベルトコンベア上に供給する掘削土砂供給工程と、
前記ベルトコンベアの所定の範囲に積載された前記掘削土砂の重量を計測する重量計測工程と、
前記計測工程にて計測された前記掘削土砂の重量に基づいて、所定量の前記改質材を供給する改質材供給工程と、
前記計測工程にて計測された前記掘削土砂の重量に基づいて、所定量の前記無害化材を供給する無害化材供給工程と、
前記改質材及び前記無害化材が供給された前記掘削土砂を撹拌混合する撹拌混合工程と、を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、掘削土砂の土質改良処理及び無害化処理を連続して実施することができる。
【0021】
本発明は、上述した土質改質設備を用いた掘削土砂の土質を改質する改質工法において、
前記掘削土砂と水とを混合して作成した泥水を前記ベルトコンベア上に供給する泥水供給工程と、
前記ベルトコンベアの所定の範囲に積載された前記泥水の重量を計測する重量計測工程と、
前記計測工程にて計測された前記泥水の重量に基づいて、所定量の前記改質材を供給する改質材供給工程と、
前記計測工程にて計測された前記泥水の重量に基づいて、所定量の前記無害化材を供給する無害化材供給工程と、
前記改質材及び前記無害化材が供給された前記泥水を撹拌混合する撹拌混合工程と、を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、掘削土砂の流動化処理及び無害化処理を連続して実施することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、掘削土砂の土質改質処理、無害化処理及び流動化処理を連続的に実施可能で、かつ、適量の薬材を供給可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る土質改質設備を示す全体概略図である。
【図2】ベルトコンベアを示す平断面図である。
【図3】ベルトコンベアを示す側断面図である。
【図4】土質改質設備を用いた土質改質処理、無害化処理及び流動化処理の施工手順を示すフロー図である。
【図5】従来の処理設備を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る土質改質設備1の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る土質改質設備1の全体概略図である。また、図2及び図3は、それぞれベルトコンベア3を示す平断面図、側断面図である。
図1〜図3に示すように、土質改質設備1は、地盤の掘削により生じた掘削土砂2をベルトコンベア3上に積載した後、上流側で掘削土砂2を改質するための改質材及び無害化するための無害化材を供給し、搬送しながら撹拌混合して土質改質土を作成したり、掘削土砂2と水とを混合した泥水22をベルトコンベア3上に積載した後、上流側で泥水22を流動化するための改質材を供給し、搬送しながら撹拌混合して流動化処理土を作成し、掘削土砂2を再利用できるように処理するためのものである。
【0027】
まず、土質改質設備1全体について説明する。
【0028】
土質改質設備1は、ベルトコンベア3と、掘削土砂2や泥水22をベルトコンベア3に供給する土砂供給手段5と、掘削土砂2と水とを混合して泥水22を作成し、土砂供給手段5に供給するための泥水供給手段4と、掘削土砂2や泥水22をベルトコンベア3上で撹拌するための撹拌機6と、搬送用ベルト7に積載された掘削土砂2や泥水22の重量を計測する計測手段8と、改質材を供給する改質材供給手段9と、掘削土砂2に含まれる有害物を無害化するための無害化材を供給する無害化材供給手段10と、改質材供給手段9及び無害化材供給手段10から供給される改質材及び無害化材の供給量を調整する制御手段31と、を備える。
【0029】
次に、ベルトコンベア3の構造について説明する。
【0030】
ベルトコンベア3には、上流側端部、下流側端部にそれぞれヘッドプーリー11、テールプーリー12が設けられ、両プーリー11、12間に搬送用ベルト7が掛け渡されている。両プーリー11、12間には、搬送用ベルト7を支持するためのガイドプーリー13が所定の間隔で複数設けられている。
【0031】
ヘッドプーリー11を駆動装置21で回転駆動して搬送用ベルト7を所定の向きに回転させることにより、掘削土砂2や泥水22を搬送する。
【0032】
ベルトコンベア3本体は、その本体を囲うように設けられた枠体14内に設置されている。そして、ベルトコンベア3の上方は、枠体14に開閉可能に接続された蓋15に覆われている。蓋15には、掘削土砂2や泥水22、改質材、無害化材の投入口がそれぞれ設けられている。また、蓋15にはその開閉を行うための開閉駆動装置16が取り付けられ、その開閉駆動装置16の駆動により、蓋15はヒンジ17を中心に上方へ回動する。蓋15は、ベルトコンベア3の上方を覆うように設けられているので、掘削土砂2や泥水22による粉塵の拡散を防止する。
【0033】
また、掘削土砂2や泥水22が搬送用ベルト7の側方からベルトの外方に漏れることを防止するための板状のライナー18が枠体14の両側面にそれぞれ取り付けられている。ライナー18は、例えば、ゴム板からなり、その下側縁は搬送用ベルト7の上面に接着材で貼り付けされ、上側縁は蓋15にボルト等にて取り付けられている。これにより、ライナー18と搬送用ベルト7との間からの掘削土砂2や泥水22の漏れを防止し、かつ、ベルトコンベア3の騒音及び振動を低減する。なお、掘削土砂2や泥水22が漏れても地面に触れないように、ベルトコンベア3の下面には、すり鉢状の受け皿33が設けられている。そして、漏れた掘削土砂2や泥水22は、受け皿33の下端に接続された鋼管からなる収集手段32を介して土砂供給手段5の原料ホッパーや泥水供給手段4の泥水貯留槽34(後述する)に送給される。
【0034】
ベルトコンベア3の下流側端部には、気体状の揮発性有機化合物(VOC)、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル等を吸引するための吸引装置36が設けられている。掘削土砂2に揮発性有機化合物が含まれていると、枠体14内に気体状の揮発性有機化合物が充満して危険なので、吸引装置36で吸引して枠体14外に排出し、適切に処理する。
【0035】
次に、流動化処理を実施する場合に使用する泥水供給手段4について説明する。
【0036】
泥水供給手段4は、泥水22を作成するための泥水貯留槽34と、泥水貯留槽34内に設置され、泥水22を供給するための水中ポンプ20と、水中ポンプ20から供給される泥水22を土砂供給手段5に送給する送給手段35と、土砂供給手段5をオーバーフローした泥水貯留槽34に戻す戻り手段19とを備える。
【0037】
工事現場で発生した掘削土砂2は泥水貯留槽34に投入され、水と混合して泥水22が作成される。泥水22は泥水貯留槽34内で比重を調整される。
【0038】
作成された泥水22は、水中ポンプ20から吐出され、鋼管からなる送給手段35を介してベルトコンベア3の上流側端部に設けられた土砂供給手段5に供給される。このとき、土砂供給手段5内が空にならないように適宜、泥水貯留槽34から泥水22が供給される。一方、土砂供給手段5が満杯になった場合は、溢れないように土砂供給手段5の上端部に接続された鋼管からなる戻り手段19を介して泥水貯留槽34に戻される。
【0039】
次に、攪拌機6の構造について説明する。
【0040】
攪拌機6は、ベルトコンベア3の長手方向に沿って所定の間隔で複数設けられている。なお、以下の説明では、最も上流側に配置された攪拌機6を第1段の攪拌機6aとし、下流側に向かって順番に第2段の攪拌機6b、第3段の攪拌機6c、第4段の攪拌機6d、第5段の攪拌機6e、第6段の攪拌機6fという。
【0041】
攪拌機6は、棒状で回転の中心となる垂直軸23と、その垂直軸23から水平方向に突出するように垂直軸23の下端に取り付けられた複数の羽根24とを備え、垂直軸23を回転中心として回転しながら、羽根24で掘削土砂2や泥水22を撹拌する。
【0042】
攪拌機6を回転させる際は、互いに隣接する攪拌機6の回転方向が互いに異なるように回転させる。具体的には、第1段の攪拌機6aを左回転(正回転)させたときには、第2段の攪拌機6bを右回転(逆回転) 、第3段の攪拌機6cを正回転させ、以下同様の要領で第4段〜第6の攪拌機6d〜6fも回転させる。このことにより、掘削土砂2や泥水22は正方向、逆方向の攪拌力を交互に受け、この結果、掘削土砂2や泥水22は、複数の攪拌機6を経由する間に改質材及び無害化材が均一となるように混合される。
【0043】
また、各攪拌機6は、その垂直軸23が搬送用ベルト7の長手方向に平行な中心軸から一定距離だけ交互に進行方向に対して左右(図2では上下)にずれた位置に配列されている。このことにより、掘削土砂2中に、コンクリート塊や岩石等の異物が含まれていたときには、その異物は各攪拌機6の羽根24の回転により外周方向に押し出され、羽根24とライナー18との間に形成される隙間に送り出されるので、容易に除去できる。
【0044】
また、羽根24と搬送用ベルト7との間に形成される隙間内に異物を噛みこんだときには、前後のガイドプーリー13間で搬送用ベルト7が撓み、搬送用ベルト7と羽根24との間に異物の収納空間が形成されて羽根24の破損は回避される。
【0045】
次に、計測手段8の構成について説明する。
【0046】
計測手段8は、ベルトコンベア3の上流側端部のガイドプーリー13間に、搬送用ベルト7の下面に接するように設けられていて、隣接するガイドプーリー13間に積載された掘削土砂2や泥水22の重量を計測する。計測手段8は、土砂供給手段5よりも下流側に設けられている。そして、計測結果は、制御手段31に送信される。本実施形態においては、計測手段8として、ロードセルを用いた。
【0047】
次に、改質材供給手段9の構成について説明する。
【0048】
改質材供給手段9は、改質材を貯留するための改質材用タンク25と、改質材用タンク25から供給される改質材を投入するための改質材用ホッパー26と、改質材用ホッパー26の下端に取り付けられ、改質材を供給するためのフィーダ27とを備える。本実施形態においては、改質材として、セメントを用いた。
【0049】
改質材用ホッパー26及びフィーダ27は、計測手段8よりも下流側に設けられている。フィーダ27は、改質材の供給量を調整可能であり、本実施形態においては、フィーダ27として、ロータリーバルブを用いた。計測手段8で計測した掘削土砂2や泥水22の重量に応じて所定の量の改質材を掘削土砂2や泥水22に供給する。
【0050】
次に、無害化材供給手段10の構成について説明する。
【0051】
無害化材供給手段10は、無害化材を貯留するための無害化材用タンク28と、無害化材を泥水22に噴射するためのノズル29と、無害化材用タンク28から無害化材を供給するためのポンプ30又はフィーダとを備える。本実施形態においては、ポンプ30を用いる場合について説明する。
【0052】
無害化材は、ボーリング等の事前調査により検出された有害物を無害化可能な原材料に水を混合して作成される。この原材料は、検出された有害物に応じて適宜選定される。対象とする有害物は、例えば、重金属(ヒ素、クロム、カドミウム、水銀、鉛等)、ホウ素、フッ素、揮発性有機化合物(VOC)、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル等、油等とする。本実施形態においては、重金属のヒ素が掘削土砂中2に含まれていて、これを無害化するための原材料として鉄分を選定し、水と混合して無害化材を作成した。
【0053】
掘削土砂2中から複数の有害物が検出された場合には、それらの有害物を無害化可能な原材料をそれぞれ選定し、複数の無害化材を作成する。
【0054】
ポンプ30は、無害化材の吐出量を調整可能であり、計測手段8にて計測した掘削土砂2の重量に応じて所定の量の無害化材を掘削土砂2に供給する。
【0055】
有害物の含有量は上記事前調査時に計測され、掘削土砂2中の単位体積当たりに含まれる含有量が算出される。この算出結果に基づいて、計測手段8にて計測した掘削土砂2又は泥水22の重量に応じて無害化材は掘削土砂2に供給される。
【0056】
ノズル29は、計測手段8よりも下流側に設けられていて、無害化材を広い範囲に噴射可能である。
【0057】
なお、本実施形態においては、改質材を供給するフィーダ27及び無害化材を供給するノズル29を攪拌機6よりも上流側に設けて、改質材及び無害化材を掘削土砂2又は泥水22に供給して撹拌するという順番で説明したが、これに限定されるものではなく、フィーダ27やノズル29を隣接する攪拌機6間(例えば、攪拌機6cと攪拌機6dとの間)に設けて、撹拌処理の途中で改質材及び無害化材を供給してもよい。改質材及び無害化材は、土質改質処理や無害化処理や流動化処理の反応速度等に応じて適宜、供給位置を変更する。
【0058】
次に、制御手段31の構成について説明する。
【0059】
制御手段31は、計測手段8により計測された掘削土砂2又は泥水22の重量に基づいて、土質改質処理、流動化処理及び無害化処理に必要な改質材及び無害化材の供給量を算出し、フィーダ27及びポンプ30を制御して、改質材及び無害化材の供給量を調整する。
【0060】
以下に、上述した構成からなる土質改質設備1を用いた土質改質工法のうち、最初に、土質改質処理方法及び無害化処理方法について説明し、次に、流動化処理方法についてそれぞれ施工手順に従って説明する。
【0061】
図4は、土質改質設備1を用いた土質改質処理及び無害化処理の施工手順を示すフロー図である。
【0062】
図4に示すように、土質改質処理及び無害化処理は、土質改質設備1の運転条件設定S1を行った後、自動運転開始S10から自動運転終了S100までの工程(流動化処理土を作成する場合にのみ実施する工程S30、S33、S36は除く)を常時、実施して行う。
【0063】
まず、現場にて発生する掘削土砂2の量に応じて、ベルトコンベア3の回転速度等の処理能力を設定するとともに、掘削土砂2の単位重量当たりの改質材の供給量kw及び無害化材の供給量fwを設定する運転条件設定工程S1を実施する。
【0064】
改質材の供給量kwは、ボーリング等の地質調査時にサンプリングした掘削土砂2の土質等に基づいて設計等により決定される。
【0065】
また、無害化材の供給量fwは、掘削土砂2に含まれる有害物の量に応じて設計等により決定される。
【0066】
上記の運転条件の設定が終了したら自動運転を開始する(S10)。
【0067】
まず、搬送用ベルト7を所定の向きに回転させる搬送用ベルト作動工程S20を実施する。
【0068】
粉塵が飛散することを防止するために、ベルトコンベア3の蓋15を閉じた後、ヘッドプーリー11を回転させるための駆動装置21を駆動させて搬送用ベルト7を回転させる。
【0069】
次に、攪拌機6を回転させる攪拌機作動工程S25を実施する。攪拌機6は、互いに隣接する攪拌機6の回転方向が互いに異なるように回転させる。
【0070】
次に、現場で発生した掘削土砂2を土砂供給手段5である原料ホッパー内に供給して貯留し、掘削土砂2を連続的に搬送用ベルト7上に投下する泥水投入工程S40を実施する。
【0071】
土砂供給手段5の下端に設けられた開口部から掘削土砂2を搬送用ベルト7に連続して投下する。
【0072】
次に、搬送用ベルト7に投下された掘削土砂2の重量を測定する掘削土砂重量計測工程S50を実施する。
【0073】
搬送用ベルト7のガイドプーリー13間に積載された掘削土砂の重量を計測手段8にて計測し、この計測値を制御手段31に送信する。制御手段31は、この計測値に基づいて、改質材及び無害化材の供給量Kw、Fwを算出する。改質材の供給量Kw及び無害化材の供給量Fwの算出方法をそれぞれ以下に示す。
【0074】
改質材の供給量Kwは、次式(1)にて算出される。
Kw=Dw×kw ・・・(1)
ここで、Kw:供給される改質材の供給量、Dw:計測された掘削土砂2の重量、kw:単位重量当たりの掘削土砂2に供給される改質材の重量である。
【0075】
また、無害化材の供給量Fwは、次式(2)にて算出される。
Fw=Dw×fw ・・・(2)
ここで、Fw:供給される無害化材の供給量、Dw:計測された掘削土砂2の重量、fw:単位重量当たりの掘削土砂2に供給される無害化材の重量である。
【0076】
式(1)により算出された結果に基づいて、改質材を掘削土砂2に供給する改質材供給工程S60を実施する。
【0077】
改質材フィーダ27を作動させて、制御手段31により算出された供給量Kwの改質材を掘削土砂2に供給する。改質材フィーダ27の作動は、制御手段31により制御され、上記算出された供給量Kwのみ供給される。
【0078】
また、式(2)により算出された結果に基づいて、無害化材を掘削土砂2に供給する無害化材供給工程S70を実施する。
【0079】
ポンプ30を作動させて、制御手段31により算出された供給量Fwの無害化材を掘削土砂2に供給する。ポンプ30の作動は、制御手段31により制御され、上記算出された供給量Fwのみ供給される。
【0080】
次に、改質材及び無害化材を供給された掘削土砂2を撹拌混合する撹拌混合工程S80を実施する。
【0081】
改質材及び無害化材を供給された掘削土砂2は、搬送用ベルト7の回転により、ベルトコンベア3の上流側から下流側に搬送されながら、第1段の攪拌機6aの位置において羽根24の正回転によって攪拌され、改質材及び無害化材と混合される。そして、以下、同様に逆回転する第2段の攪拌機6b、正回転する第3段の攪拌機6c、逆回転する第4段の攪拌機6d、正回転する第5段の攪拌機6d、逆回転する第6段の攪拌機6fの順にそれぞれの羽根24によって改質材及び無害化材と攪拌混合され土質改質される。
【0082】
土質改質された改質土を搬送用ベルト7の下流側先端より排出する改質土排出工程S90を実施する。改質土は、再び現場へ搬送され、再利用される。
【0083】
上述した搬送用ベルト作動工程S20から改質土排出工程S90までを連続して常時、実施する。そして、例えば、1日の作業終了時に自動運転を終了する(S100)。
【0084】
次に、上記土質改質設備1を用いた流動化処理方法について施工手順に従って説明する。
【0085】
以下の説明において、上述した土質改質処理方法及び無害化処理方法に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0086】
再び、図4に示すように、流動化処理は、土質改質設備1の運転条件設定S1を行った後、自動運転開始S10から自動運転終了S100までの工程を常時、実施して行う。
【0087】
まず、上述したように、現場にて発生する掘削土砂2の量に応じて、ベルトコンベア3の回転速度等の処理能力を設定するとともに、泥水22の単位重量当たりの改質材の供給量kw及び無害化材の供給量fwを設定する運転条件設定工程S1を実施する。以下、無害化材の供給方法は、上述した方法と同じなので説明を省略する。
【0088】
運転条件の設定が終了したら自動運転を開始し(S10)、搬送用ベルト作動工程S20及び攪拌機作動工程S25を実施する。
【0089】
上述した工程S1、S10、S20、S25と並行して、現場で発生した掘削土砂2を篩い分けして、所定寸法以上の土塊を除去する篩い分け工程S30を実施する。
【0090】
次に、篩い分けして粒度調整された掘削土砂2を泥水貯留槽34内に投入し、水と混合して所定の比重及び所定の粘度の泥水22を作製する泥水作製工程S33を実施する。
【0091】
作製された泥水22は、常時、攪拌機22で撹拌混合することにより、比重及び粘度を一定に維持する。なお、必要に応じて混和剤を混合してもよい。
【0092】
次に、泥水貯留槽34内の泥水22を土砂供給手段5に供給する泥水供給工程S36を実施する。泥水貯留槽34内に設置された水中ポンプ20で送給手段35を介して土砂供給手段5内に泥水22を連続的に供給する。
【0093】
次に、土砂供給手段5内の泥水22を連続的に搬送用ベルト7上に投下する泥水投入工程S40を実施する。
【0094】
土砂供給手段5の下端に設けられた開口部から泥水22を搬送用ベルト7に連続して投下する。
【0095】
次に、搬送用ベルト7に投下された泥水22の重量を測定する泥水重量計測工程S50を実施する。
【0096】
搬送用ベルト7のガイドプーリー13間に積載された泥水22の重量を計測手段8にて計測し、この計測値を制御手段31に送信する。制御手段31は、この計測値に基づいて、上述したように、式(1)及び式(2)により、改質材の供給量Kw及び無害化材の供給量Fwを算出する。
【0097】
そして、式(1)及び式(2)により算出された結果に基づいて、改質材及び無害化材を泥水22に供給する改質材供給工程S60及び無害化材供給工程S70を実施する。
【0098】
次に、改質材及び無害化材を供給された泥水22を撹拌混合する撹拌混合工程S80を実施する。改質材及び無害化材を供給された泥水22は、搬送用ベルト7の回転により、ベルトコンベア3の上流側から下流側に搬送されながら、攪拌機6によって攪拌混合され、土質改質される。
【0099】
土質改質された改質土を搬送用ベルト7の下流側先端より排出する改質土排出工程S90を実施する。土質改質により作成された流動化処理土は、再び現場へ搬送され、再利用される。
【0100】
上述した搬送用ベルト作動工程S20から改質土排出工程S90までを連続して常時、実施する。そして、例えば、1日の作業終了時に自動運転を終了する(S100)。
【0101】
なお、本実施形態の流動化処理を行う場合においては、掘削土砂2を水と混合する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、掘削土砂2が水分を多く含む泥水状態の場合は、泥水貯留槽34を設けることなく、そのまま土砂供給手段5に投入してもよい。ただし、予め、泥水状態の掘削土砂2をサンプリングし、比重を計測し、単位重量当たりの改質材の供給量kw及び単位重量当たりの無害化材の供給量fwを算出しておくことが必要である。
【0102】
上述した本実施形態によれば、土質改質設備1は、改質材供給手段9と無害化材供給手段10と泥水供給手段4とを備えているので、掘削土砂2や泥水22を土質改質処理、無害化処理、及び流動化処理することができる。従来の処理設備をそれぞれ設けて、別々に処理を行う場合に比べて、設備投資費を低減できるとともに、処理時間を大幅に短縮することができる。
【0103】
また、計測手段8と制御手段31とを備えているので、搬送用ベルト7に積載されている掘削土砂2や泥水22に最適な量の改質材及び無害化材を供給することができる。そして、改質材及び無害化材を掘削土砂2や泥水22に供給後、撹拌混合するので、改質材及び無害化材を掘削土砂2内や泥水22内に均一に分布させることができる。したがって、信頼性の高い改質土を作成し、かつ、有害物を確実に無害化することができる。
【0104】
そして、土質改良処理、無害化処理及び流動化処理を連続して実施することができるので、従来のバッチ処理に比べて処理時間が大幅に短縮される。
【0105】
また、改質材供給手段9は、改質材用タンク25とフィーダ27とを備えているので、改質材を連続して供給することができる。さらに、無害化材供給手段10は、無害化材用タンク28とノズル29とポンプ30とを備えているので、無害化材を連続して供給することができる。
【符号の説明】
【0106】
1 土質改質設備
2 掘削土砂
3 ベルトコンベア
4 泥水供給手段
5 土砂供給手段
6 攪拌機
7 搬送用ベルト
8 計測手段
9 改質材供給手段
10 無害化材供給手段
11 ヘッドプーリー
12 テールプーリー
13 ガイドプーリー
14 枠体
15 蓋
16 開閉駆動装置
17 ヒンジ
18 ライナー
19 戻り手段
20 水中ポンプ
21 駆動装置
22 泥水
23 垂直軸
24 羽根
25 改質材用タンク
26 改質材用ホッパー
27 フィーダ
28 無害化材用タンク
29 ノズル
30 ポンプ
31 制御手段
32 収集手段
33 受け皿
34 泥水貯留槽
35 送給手段
36 吸引装置
37 攪拌機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤の掘削により生じた掘削土砂をベルトコンベアにより搬送しながら撹拌混合して、前記掘削土砂を再利用できるように土質を改質するための土質改質設備であって、
前記掘削土砂と水とを混合して泥水を作成するとともに、その泥水を供給する泥水供給手段と、
前記掘削土砂又は前記泥水を前記ベルトコンベア上に供給する土砂供給手段と、
前記ベルトコンベアの所定の範囲に積載された前記掘削土砂又は前記泥水の重量を計測する計測手段と、
前記掘削土砂又は前記泥水を改質するための改質材を供給する改質材供給手段と、
前記掘削土砂又は前記泥水に含まれる有害物を無害化するための無害化材を供給する無害化材供給手段と、
前記計測手段により計測された前記掘削土砂又は前記泥水の重量に基づいて、前記改良材供給手段及び前記無害化材供給手段から供給される改良材及び無害化材の供給量を調整する制御手段と、を備えることを特徴とする土質改質設備。
【請求項2】
前記計測手段は、
前記ベルトコンベアのヘッドプーリーとテールプーリーとの間に複数設けられ、搬送用ベルトを支持するガイドプーリー間に設置されているものであることを特徴とする請求項1に記載の土質改質設備。
【請求項3】
前記改質材供給手段は、
前記改質材を貯留するための改質材用タンクと、
前記改質材を前記掘削土砂又は前記泥水に供給するための改質材用フィーダと、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の土質改質設備。
【請求項4】
前記改質材用フィーダは、前記計測手段にて計測した前記掘削土砂又は前記泥水の重量に応じて前記改質材の吐出量を調整可能であることを特徴とする請求項3に記載の土質改質設備。
【請求項5】
前記無害化材供給手段は、
前記無害化材を貯留するための無害化材用タンクと、
前記無害化材を前記掘削土砂又は前記泥水に噴射するための無害化材用ノズルと、
前記無害化材用タンクから前記無害化材を供給するための無害化材用ポンプ又は無害化材用フィーダとを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の土質改質設備。
【請求項6】
前記無害化材用ポンプ又は無害化材用フィーダは、前記計測手段にて計測した前記掘削土砂又は前記泥水の重量に応じて前記無害化材の吐出量を調整可能であることを特徴とする請求項5に記載の土質改質設備。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の土質改質設備を用いて掘削土砂の土質を改質する土質改質工法において、
前記掘削土砂を前記ベルトコンベア上に供給する掘削土砂供給工程と、
前記ベルトコンベアの所定の範囲に積載された前記掘削土砂の重量を計測する重量計測工程と、
前記計測工程にて計測された前記掘削土砂の重量に基づいて、所定量の前記改質材を供給する改質材供給工程と、
前記計測工程にて計測された前記掘削土砂の重量に基づいて、所定量の前記無害化材を供給する無害化材供給工程と、
前記改質材及び前記無害化材が供給された前記掘削土砂を撹拌混合する撹拌混合工程と、を備えることを特徴とする土質改質工法。
【請求項8】
請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の土質改質設備を用いて掘削土砂の土質を改質する土質改質工法において、
前記掘削土砂と水とを混合して作成した泥水を前記ベルトコンベア上に供給する泥水供給工程と、
前記ベルトコンベアの所定の範囲に積載された前記泥水の重量を計測する重量計測工程と、
前記計測工程にて計測された前記泥水の重量に基づいて、所定量の前記改質材を供給する改質材供給工程と、
前記計測工程にて計測された前記泥水の重量に基づいて、所定量の前記無害化材を供給する無害化材供給工程と、
前記改質材及び前記無害化材が供給された前記泥水を撹拌混合する撹拌混合工程と、を備えることを特徴とする土質改質工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−270459(P2010−270459A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121281(P2009−121281)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(504040726)
【出願人】(391030882)オリエンタル技研工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】