説明

圧力によって超伝導体から絶縁体へ遷移する超伝導体薄膜を用いた圧力検出装置、ジョセフソン素子および超伝導量子干渉計

【課題】温度を一定に保持したまま超伝導体から絶縁体へ遷移する超伝導体を用いた圧力検出装置を提供する。
【解決手段】圧力検出装置30は、超伝導体から絶縁体へ遷移する臨界圧力が相互に異なる複数の超伝導体薄膜11〜14のうち、絶縁体へ遷移した超伝導体薄膜12〜14を電流計242,252,262によって検出し、その検出した超伝導体薄膜12〜14の臨界圧力のうち、最大の臨界圧力を容器10内の圧力として検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧力によって超伝導体から絶縁体へ遷移する超伝導体薄膜を用いた圧力検出装置、ジョセフソン素子および超伝導量子干渉計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの超伝導体からなるジョセフソン素子が知られている(特許文献1)。
【0003】
このジョセフソン素子は、2つのセラミック超伝導体を壁開面を介して接合した構造からなる。そして、2つのセラミック超伝導体が分離しないように圧力が壁開面に印加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−263781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のジョセフソン素子では、温度を制御して超伝導状態から常伝導状態へ遷移させる必要があるため、温度を一定に保持したまま超伝導体から絶縁体へ遷移させることは困難である。
【0006】
そこで、温度を一定に保持したまま超伝導体から絶縁体へ遷移する超伝導体を用いた圧力検出装置を提供することが望まれる。
【0007】
また、温度を一定に保持したまま超伝導体から絶縁体へ遷移する超伝導体を用いたジョセフソン素子を提供することが望まれる。
【0008】
さらに、温度を一定に保持したまま超伝導体から絶縁体へ遷移する超伝導体を用いた超伝導量子干渉計を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
圧力検出装置は、容器と、複数の薄膜と、検出器とを備える。容器は、10K以下の絶対温度に保持される。複数の超伝導体薄膜は、容器内に配置され、超伝導体から絶縁体へ遷移する臨界圧力が相互に異なる。検出器は、複数の超伝導体薄膜のうち、超伝導体から絶縁体へ遷移した超伝導体薄膜を検出し、その検出した超伝導体薄膜の臨界圧力のうち最大の臨界圧力を容器内の圧力として検出する。
【0010】
圧力検出装置は、複数の第1および第2の電極をさらに備えてもよい。複数の第1の電極は、複数の超伝導体薄膜に対応して設けられ、各々が対応する超伝導体薄膜の一方端に接続される。複数の第2の電極は、複数の超伝導体薄膜に対応して設けられ、各々が対応する超伝導体薄膜の他方端に接続される。そして、検出器は、各超伝導体薄膜の両端に配置された第1および第2の電極間に流れる電流を検出することにより、複数の超伝導体薄膜のうち、超伝導体から絶縁体へ遷移した超伝導体薄膜を検出する。
【0011】
複数の超伝導体薄膜は、添加物量が相互に異なる複数のCuIrからなってもよい。
【0012】
また、ジョセフソン素子は、超伝導体薄膜と、圧力印加器とを備える。超伝導体薄膜は、10K以下の絶対温度に保持され、CuRhからなる。圧力印加器は、超伝導体薄膜の一部に超伝導体から絶縁体へ遷移する臨界圧力以上の圧力を印加する。
【0013】
圧力印加器は、複数の突起部材と、押付部材とを含んでもよい。押付部材は、複数の突起部材を超伝導体薄膜の一部に押し付ける。
【0014】
押付部材は、電歪素子または圧電素子からなってもよい。
【0015】
圧力印加器は、超伝導体薄膜の一部に接して配置された電歪素子からなってもよい。
【0016】
さらに、超伝導量子干渉計は、超伝導体薄膜と、第1および第2の圧力印加器とを備える。超伝導体薄膜は、輪形状を有するとともに、10K以下の絶対温度に保持されたCuRhからなる。第1の圧力印加器は、超伝導体薄膜の第1の一部分に超伝導体から絶縁体へ遷移する臨界圧力以上の圧力を印加する。第2の圧力印加器は、超伝導体薄膜の第1の一部分と異なる第2の一部分に臨界圧力以上の圧力を印加する。
【0017】
第1および第2の圧力印加器の各々は、複数の突起部材と、押付部材とを含んでもよい。押付部材は、複数の突起部材を超伝導体薄膜の一部に押し付ける。
【発明の効果】
【0018】
圧力検出装置においては、臨界圧力以上の圧力が印加されて超伝導体から絶縁体へ遷移した超伝導体薄膜を検出し、その検出した超伝導体薄膜の臨界圧力のうち、最大の臨界圧力を容器内の圧力として検出する。
【0019】
したがって、温度を一定に保持したまま、印加される圧力の大きさによって超伝導体から絶縁体へ遷移する超伝導体薄膜を用いて圧力を検出できる。
【0020】
また、ジョセフソン素子は、超伝導体薄膜の一部に臨界圧力以上の圧力を印加して超伝導体薄膜の一部を絶縁層に遷移させて作製される。
【0021】
したがって、温度を一定に保持したまま、超伝導体薄膜に印加する圧力の大きさを変えることによってジョセフソン素子を作製できる。
【0022】
さらに、超伝導量子干渉計は、超伝導体薄膜の一部に臨界圧力以上の圧力を印加して超伝導体薄膜の一部を絶縁層に遷移させて作製される。
【0023】
したがって、温度を一定に保持したまま、超伝導体薄膜に印加する圧力の大きさを変えることによって超伝導量子干渉計を作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施の形態において用いられる超伝導体薄膜の斜視図である。
【図2】CuRhの比抵抗と圧力との関係を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態による圧力検出装置の構成を示す概略図である。
【図4】この発明の実施の形態によるジョセフソン素子の構成を示す概略図である。
【図5】この発明の実施の形態による他のジョセフソン素子の構成を示す概略図である。
【図6】この発明の実施の形態による超伝導量子干渉計の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0026】
図1は、この発明の実施の形態において用いられる超伝導体薄膜の斜視図である。図1を参照して、超伝導体薄膜1は、略直方体形状を有し、スピネル混合物であるCuRhからなる。
【0027】
このCuRhの作製方法は、次のとおりである。99.999%の銅(Cu)の粉と、99.9%のロジウム(Rh)の粉と、99.9999%のイオウ(S)の粉とをストイキオメトリな量比で混ぜ合わせる。
【0028】
そして、その混ぜ合わせたCu,RhおよびSの粉を石英管に封止し、850℃で10日間、熱処理する。
【0029】
その後、Cu,RhおよびSの混合物を粉砕した後、ペレット中で圧縮し、1000℃で3日間、焼結する。これによって、CuRhが作製される。
【0030】
図2は、CuRhの比抵抗と圧力との関係を示す図である。図2において、縦軸は、比抵抗を表し、横軸は、CuRhに印加される圧力を表す。また、曲線k1は、10Kの絶対温度における比抵抗と圧力との関係を示し、曲線k2は、300Kの絶対温度における比抵抗と圧力との関係を示す。
【0031】
図2を参照して、300Kの絶対温度においては、8GPaの圧力をCuRhに印加しても、比抵抗は、1×10−3Ω・cmまでしか上昇しない(曲線k2参照)。
【0032】
一方、10Kの絶対温度においては、CuRhの比抵抗は、CuRhに印加される圧力が0〜5.3GPaの範囲では、1×10−3Ω・cmよりも小さく、CuRhに印加される圧力が0〜5.3GPa以上になると、急激に大きくなる。
【0033】
このように、CuRhは、10K以下の絶対温度において超伝導体になり、10K以下の温度において、5.3GPaよりも小さい圧力が印加されると、超伝導状態を保持し、5.3GPa以上の圧力が印加されると、超伝導体から絶縁体へ遷移する。
【0034】
なお、5.GPaの圧力は、超伝導体から絶縁体へ遷移する臨界圧力PMIである。
【0035】
図3は、この発明の実施の形態による圧力検出装置の構成を示す概略図である。図3を参照して、この発明の実施の形態による圧力検出装置30は、容器10と、超伝導体薄膜11〜14と、電極15〜22と、測定器23〜26と、検出器27とを備える。
【0036】
容器10は、略四角形の形状からなる。そして、容器10の内部は、液体窒素等によって10K以下の絶対温度に冷却されている。
【0037】
超伝導体薄膜11〜14は、容器10内において、並列に配置される。超伝導体薄膜11は、CuRhまたはCuIrからなり、超伝導体から絶縁体へ遷移する臨界圧力PMI1を有する。また、超伝導体薄膜12は、亜鉛(Zn)を添加したCuIrからなり、超伝導体から絶縁体へ遷移する臨界圧力PMI2(<PMI1)を有する。さらに、超伝導体薄膜13は、Znを超伝導体薄膜12よりも多く添加したCuIrからなり、超伝導体から絶縁体へ遷移する臨界圧力PMI3(<PMI2)を有する。さらに、超伝導体薄膜14は、Znを超伝導体薄膜13よりも多く添加したCuIrからなり、超伝導体から絶縁体へ遷移する臨界圧力PMI4(<PMI3)を有する。
【0038】
なお、臨界圧力PMI1は、5.3GPaからなり、臨界圧力PMI4は、0.5GPaからなる。
【0039】
電極15〜22の各々は、たとえば、アルミニウム(Al)からなる。そして、電極15〜18は、それぞれ、超伝導体薄膜11〜14の一方端に接続され、電極19〜22は、それぞれ、超伝導体薄膜11〜14の他方端に接続される。
【0040】
測定器23は、導線を介して電極15,19間に接続される。測定器24は、導線を介して電極16,20間に接続される。測定器25は、導線を介して電極17,21間に接続される。測定器26は、導線を介して電極18,22間に接続される。
【0041】
測定器23は、直流電源231と、電流計232とを含む。直流電源231は、直流電圧Vを電極15,19間に印加する。電流計232は、直流電源231が直流電圧Vを電極15,19間に印加したときに超伝導体薄膜11に流れる電流I1を検出し、その検出した電流I1を検出器27へ出力する。
【0042】
測定器24は、直流電源241と、電流計242とを含む。直流電源241は、直流電圧Vを電極16,20間に印加する。電流計242は、直流電源241が直流電圧Vを電極16,20間に印加したときに超伝導体薄膜12に流れる電流I2を検出し、その検出した電流I2を検出器27へ出力する。
【0043】
測定器25は、直流電源251と、電流計252とを含む。直流電源251は、直流電圧Vを電極17,21間に印加する。電流計252は、直流電源251が直流電圧Vを電極17,21間に印加したときに超伝導体薄膜13に流れる電流I3を検出し、その検出した電流I3を検出器27へ出力する。
【0044】
測定器26は、直流電源261と、電流計262とを含む。直流電源261は、直流電圧Vを電極18,22間に印加する。電流計262は、直流電源261が直流電圧Vを電極18,22間に印加したときに超伝導体薄膜14に流れる電流I4を検出し、その検出した電流I4を検出器27へ出力する。
【0045】
検出器27は、電流計232,242,252,262からそれぞれ電流I1〜I4を受ける。また、検出器27は、電流I1〜I4と臨界圧力PMI1〜PMI4との対応関係を保持している。
【0046】
そして、検出器27は、電流I1〜I4のうち、電流Ij(jは、1〜4の少なくとも1つ)が“0”になると、その電流Ijに対応付けられた臨界圧力PMIjのうち、最大の臨界圧力を容器10内の圧力として検出する。
【0047】
検出器27は、たとえば、超伝導体薄膜12〜14に流れる電流I2〜I4が“0”になると、臨界圧力PMI2〜PMI4のうち、最大の臨界圧力PMI2を容器10内の圧力として検出する。容器10内の圧力PがPMI2<P<PMI1の範囲であれば、超伝導体薄膜12〜14が超伝導体から絶縁体へ遷移するので、絶縁体へ遷移した超伝導体薄膜12〜14に流れる電流I2〜I4は、“0”になる。したがって、検出器27は、臨界圧力PMI2〜PMI4のうち、最大の臨界圧力PMI2を容器10内の圧力として検出する。
【0048】
すなわち、検出器27は、超伝導体薄膜11〜14のうち、超伝導体から絶縁体へ遷移した超伝導体薄膜12〜14を検出し、その検出した超伝導体薄膜12〜14の臨界圧力PMI2〜PMI4のうち、最大の臨界圧力PMI2を容器10内の圧力として検出する。
【0049】
また、検出器27は、超伝導体薄膜14に流れる電流I4が“0”になると、臨界圧力PMI4のうち、最大の臨界圧力PMI4を容器10内の圧力として検出する。
【0050】
検出器27は、他の超伝導体薄膜に流れる電流が“0”になる場合も、同様にして容器10内の圧力を検出する。
【0051】
このように、圧力検出装置30は、超伝導体薄膜11〜14の温度を10K以下の絶対温度に保持したまま、超伝導体薄膜11〜14に印加される圧力が臨界圧力PMI以上になると、超伝導体から絶縁体へ遷移するという特性を利用して容器10内の圧力を検出する。
【0052】
したがって、圧力検出装置30は、容器10内の温度を10K以下の絶対温度に保持したまま容器10内の圧力を検出できる。
【0053】
なお、圧力検出装置30は、4個の超伝導体薄膜11〜14に限らず、一般的には、複数の超伝導体薄膜を備えていればよい。
【0054】
図4は、この発明の実施の形態によるジョセフソン素子の構成を示す概略図である。図4を参照して、この発明の実施の形態によるジョセフソン素子40は、基体31と、超伝導体薄膜32と、支持部材33と、ネジ34と、押付部材35とを備える。
【0055】
なお、超伝導体薄膜32は、液体窒素等によって、10K以下の絶対温度に冷却されている。
【0056】
超伝導体薄膜32は、CuRhからなるとともに、棒状形状を有する。そして、超伝導体薄膜32は、基体31上に配置される。支持部材33は、略L字形状からなり、一方端が基体31に固定される。そして、支持部材33は、他方端側にネジ34と嵌合するネジ孔(図示せず)を有する。
【0057】
ネジ34は、支持部材33に形成されたネジ孔と嵌合し、時計回りに回転することによって押付部材35を超伝導体薄膜32に押し付ける。
【0058】
押付部材35は、超伝導体薄膜32の任意の一部分に接して配置される。そして、押付部材35は、ネジ34によって超伝導体薄膜32に押し付けられる。
【0059】
押付部材35は、突起部材351〜353と、基台354とを含む。突起部材351〜353の各々は、略平板形状からなり、超伝導体薄膜32と同じ幅、および1μmの厚みを有する。そして、複数の突起部材351〜353は、2μmの間隔で基台354に略垂直に固定される。
【0060】
基台354は、略平板形状からなり、複数の突起部材351〜353を固定する。そして、基台354は、ネジ34の一方端に接し、ネジ34が時計回りに回転することによって突起部材351〜353を超伝導体薄膜32に押し付ける。
【0061】
ジョセフソン素子40においては、ネジ34は、押付部材35の突起部材351〜353の各々が100g重の圧力を超伝導体薄膜32に印加するように時計回りに回転する。これによって、臨界圧力PMI(=5.3GPa)以上の圧力が超伝導体薄膜32に印加される。
【0062】
そうすると、超伝導体薄膜32は、超伝導層321,323と、絶縁層322とに分離される。そして、超伝導層321,323と、絶縁層322とからなるジョセフソン素子40が作製される。
【0063】
このように、押付部材35によって超伝導体薄膜32の一部に臨界圧力PMI(=5.3GPa)以上の圧力を印加することにより、超伝導体薄膜32の一部に絶縁層322を形成する。
【0064】
したがって、同じ材料(CuRh)からなる超伝導体薄膜32を用いてジョセフソン素子を作製できる。
【0065】
また、超伝導体薄膜32の温度を一定に保持したまま、印加する圧力を制御することによってジョセフソン素子を作製できる。
【0066】
さらに、同じ材料(CuRh)からなる超伝導体薄膜32を用いてジョセフソン素子を作製することによって、ジョセフソン素子40の特性を変えることができる。すなわち、超伝導体薄膜32に印加する圧力を変えることによってジョセフソン素子40自体の特性を変えることができる。この性質は、異なる材料を用いて作製したジョセフソン素子にはない性質である。
【0067】
なお、ジョセフソン素子40においては、突起部材は、1個であってもよい。また、ジョセフソン素子40においては、ネジ34の代わりに、圧電素子または電歪素子を用いて押付部材35を超伝導体薄膜32に押し付けるようにしてもよい。
【0068】
図5は、この発明の実施の形態による他のジョセフソン素子の構成を示す概略図である。この発明の実施の形態によるジョセフソン素子は、図5に示すジョセフソン素子40Aであってもよい。
【0069】
図5を参照して、ジョセフソン素子40Aは、図4に示すジョセフソン素子40の支持部材33およびネジ34を削除し、押付部材35を圧電素子35Aに代えたものであり、その他は、ジョセフソン素子40と同じである。
【0070】
圧電素子35Aは、超伝導体薄膜32に密着して超伝導体薄膜32上に配置される。そして、圧電素子35Aは、電圧源(図示せず)によって電圧が印加されることにより、超伝導体薄膜32を厚み方向へ押し付ける。
【0071】
これによって、超伝導体薄膜32は、超伝導層321,323と、絶縁層322とに分離され、ジョセフソン素子40Aが作製される。
【0072】
なお、ジョセフソン素子40Aにおいては、圧電素子35Aの代わりに、電歪素子を用いてもよい。
【0073】
図6は、この発明の実施の形態による超伝導量子干渉計の構成を示す概略図である。図6を参照して、この発明の実施の形態による超伝導量子干渉計50は、超伝導体薄膜51と、押付部材52,53とを備える。
【0074】
なお、超伝導体薄膜51は、液体窒素等によって、10K以下の絶対温度に冷却されている。
【0075】
超伝導体薄膜51は、CuRhからなり、リング形状を有する。押付部材52,53の各々は、図4に示す押付部材35と同じ構成からなる。
【0076】
そして、押付部材52は、超伝導体薄膜51の一部に臨界圧力PMI(=5.3GPa)以上の圧力を印加する。また、押付部材53は、超伝導体薄膜51の他の一部に臨界圧力PMI(=5.3GPa)以上の圧力を印加する。
【0077】
その結果、超伝導体薄膜51は、超伝導層511,513と、絶縁層512,514とに分離される。そして、超伝導量子干渉計50が作製される。
【0078】
このように、押付部材52,53によって超伝導体薄膜51の一部に臨界圧力PMI(=5.3GPa)以上の圧力を印加することにより、超伝導体薄膜51の一部に絶縁層512,514を形成する。
【0079】
したがって、同じ材料(CuRh)からなる超伝導体薄膜51を用いて超伝導量子干渉計を作製できる。
【0080】
また、超伝導体薄膜51の温度を一定に保持したまま、印加する圧力を制御することによって超伝導量子干渉計を作製できる。
【0081】
なお、超伝導量子干渉計50においては、押付部材52,53(=押付部材35)の突起部材は、1個であってもよい。また、超伝導量子干渉計50においては、ネジ34の代わりに、圧電素子または電歪素子を用いて押付部材52,53を超伝導体薄膜51に押し付けるようにしてもよい。さらに、超伝導量子干渉計50においては、圧電素子35A(または電歪素子)を用いて絶縁層512,514を形成するようにしてもよい。
【0082】
上述したように、圧力検出装置30、ジョセフソン素子40,40Aおよび超伝導量子干渉計50は、超伝導体の温度を一定に保持したまま、超伝導体薄膜(=CuRh)に印加される圧力が臨界圧力PMI以上になると、超伝導体から絶縁体へ遷移するという特性を利用したものである。
【0083】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0084】
この発明は、温度を一定に保持したまま超伝導体から絶縁体へ遷移する超伝導体を用いた圧力検出装置に適用される。また、この発明は、温度を一定に保持したまま超伝導体から絶縁体へ遷移する超伝導体を用いたジョセフソン素子に適用される。さらに、この発明は、温度を一定に保持したまま超伝導体から絶縁体へ遷移する超伝導体を用いた超伝導量子干渉計に適用される。
【符号の説明】
【0085】
10 容器、11〜14 超伝導体薄膜、30 圧力検出装置、242,252,262 電流計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10K以下の絶対温度に保持され、CuRhからなる超伝導体薄膜と、
前記超伝導体薄膜の一部に超伝導体から絶縁体へ遷移する臨界圧力以上の圧力を印加する圧力印加器とを備えるジョセフソン素子。
【請求項2】
前記圧力印加器は、
複数の突起部材と、
前記複数の突起部材を前記超伝導体薄膜の一部に押し付ける押付部材とを含む、請求項1に記載のジョセフソン素子。
【請求項3】
前記押付部材は、電歪素子または圧電素子からなる、請求項2に記載のジョセフソン素子。
【請求項4】
前記圧力印加器は、前記超伝導体薄膜の一部に接して配置された電歪素子からなる、請求項2に記載のジョセフソン素子。
【請求項5】
輪形状を有するとともに、10K以下の絶対温度に保持されたCuRhからなる超伝導体薄膜と、
前記超伝導体薄膜の第1の一部分に超伝導体から絶縁体へ遷移する臨界圧力以上の圧力を印加する第1の圧力印加器と、
前記超伝導体薄膜の前記第1の一部分と異なる第2の一部分に前記臨界圧力以上の圧力を印加する第2の圧力印加器とを備える超伝導量子干渉計。
【請求項6】
前記第1および第2の圧力印加器の各々は、
複数の突起部材と、
前記複数の突起部材を前記超伝導体薄膜の一部に押し付ける押付部材とを含む、請求項5に記載の超伝導量子干渉計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−41060(P2010−41060A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213934(P2009−213934)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【分割の表示】特願2009−525838(P2009−525838)の分割
【原出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】