説明

圧力スイング吸着法によるオゾン製造装置を搭載したバラスト水処理装置

【課題】バラスト水中の海洋生物の殺菌に使用するオゾンを、圧力スイング吸着(PSA)に従ってオゾンを吸着及び脱着させることによって製造する方法を提供する。
【解決手段】オゾンの製造装置である、無声放電式オゾン発生器3から供給される、オゾン、酸素2成分ガスを、相対的高圧条件でオゾン吸着剤6を使用してオゾン/酸素分離を行い、回収した酸素をオゾン発生器原料として再利用する。吸着したオゾンは、相対的低圧条件で乾燥空気をパージガスとしてオゾン、空気2成分ガスとして脱着して回収することにより得られる。この低コストなオゾン、空気2成分ガスを、バラスト水中の海洋生物殺菌23に使用することで、経済的でコンパクトなバラスト水中の海洋生物殺菌が提供できる。オゾン吸着剤は、ペンタシル型ゼオライト、酸処理したペンタシル型ゼオライト、メソポーラスシリカ、酸処理したメソポーラスシリカからなる群より選ばれる一種以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶のバラスト水に含まれるプランクトン・バクテリア・ウイルス等の海洋生物を、オゾンによって殺滅するためのバラスト水処理装置に係わり、高い吸着圧と低い脱着圧とにおけるオゾン吸着剤のオゾン吸着量の差を利用するオゾン製造・貯蔵方法に関する。詳細には、本発明は、オゾン吸着能の高い特定の吸着剤を利用して圧力スイング吸着(PSA)に従ってオゾンを吸着及び脱着させることによってオゾンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原油等を輸送する貨物輸送用船舶の航行において、空荷または積荷が少ない状態では、プロペラ没水深度の確保、船体の安定性確保などの必要性から、出港前にバラスト水の搭載が行われる。一方、このバラスト水は荷積み港へ入港する前に排出される。
ところで、バラスト水には一般に海水が用いられるため、その中にはそれを取水した港湾のプランクトン・バクテリア・ウイルス等の海洋生物も含まれており、バラスト水の排出時には海水と同時にこれらの海洋生物も荷積み港湾周辺へと放出されることとなる。したがって、これらの海洋生物が本来の生息区域ではない異国の港湾にて繁殖し、沿岸生態系に悪影響を及ぼすといった問題が深刻化している。
このような背景の中、IMO(国際海事機関)の国際会議において、船舶のバラスト水管理条約が採択され、2009年以降、順次、バラスト水の処理が義務付けられることとなった。
IMOが制定するバラスト水の排出基準は、バラスト水に含まれる50μm以上の生物(主に動物プランクトン)の数が1m中に10個未満、10μm以上50μm未満の生物(主に植物プランクトン)の数が1ml中に10個未満、コレラ菌の数が100ml中に1cfu未満、大腸菌の数が100ml中に250cfu未満、球腸菌の数が100ml中に100cfu未満となっている。
バラスト水の処理技術としては、現在各種の手法が研究・開発されているが、なかでも、オゾンによる処理方法は、低濃度・短時間での処理が達成できることから、極めて有効な処理方法として着目されている。ちなみに、オゾンは、非常に強い酸化力を持ち、漂白・脱臭・殺菌作用があり、例えば、脱臭においては活性炭の数百倍もの力を持っているとされ、これまで除去し難かった物質の除去も可能となることから、水・大気の浄化での応用も増大している。
しかしながら、オゾンは原料として酸素を使用した無声放電を使用することから酸化剤としては非常に高価であり、これが、オゾンの酸化剤としての普及を妨げる一因となっている。また、無声放電を使用したオゾン製造では、装置が大型化せざるを得ず、バラスト水処理装置として船舶に搭載することが困難となってしまう問題がある。
【0003】
オゾン含有ガスは、一般的に低圧水銀ランプ、無声放電装置や水電解装置を用いて製造される。低圧水銀ランプは、装置が簡単であるが、0.5質量%程度の低い濃度のオゾン含有ガスしか得られず、発生量も1g/h程度と小さくかつオゾン単位当たりに要する消費電力が非常に大きく、工業的に使用するには実用的なものではない。水電解装置は、20質量%程度の高い濃度のオゾン含有ガスが得られるが、発生量は1kg/h程度と小さくかつオゾン単位当たりに要する消費電力も相当に大きく、大量のオゾンが要求される場合や経済性が要求される場合には使用するのに適していない。無声放電装置は、発生量が30kg/h程度と大量製造が可能であり、オゾン単位当たりに要する消費電力もこれらの中では一番少ないが、得られるオゾン含有ガスのオゾン濃度は3質量%程度と低いものである。これら従来技術において、オゾン発生装置として無声放電装置が最も好ましいものであるが、消費電力及び酸素製造装置を含めたオゾン製造コストの両面での改良が望まれていた。
【0004】
上述した無声放電装置の欠点を改良するオゾン発生装置として、オゾン発生装置に供給するオゾン発生用原料として酸素を使用し、同じ消費電力で空気を原料として使用する場合の2倍のオゾンを発生させて省電力化を図る酸素リサイクルオゾン発生装置が提案された(例えば特許文献1参照)。この装置では、酸素原料として液体酸素を用い、この液体酸素をオゾン発生装置に導入してオゾンを発生させ、そのオゾン含有ガスを熱交換器及び冷凍機で−60℃程度まで冷却してから、シリカゲルを充填したオゾン吸着塔に導入してオゾンを吸着させている。
【0005】
シリカゲルは、上記のようにオゾン吸着剤として知られているが、そのオゾン吸着量はそれほど大きくなく一定のガス処理量を確保するためには多量のシリカゲルを必要とし、吸着装置も大型にせざるを得なかった。
そこで、従来技術では上記装置において、酸素原料として液体酸素を用い、かつ、パージガスを予め乾燥してから吸着塔に導入することにより、液体酸素の低温を利用してオゾン吸着量を増大させようとした。
【0006】
しかし、シリカゲルへのオゾンの吸着量は温度が低い程大きいが、特殊な冷凍機を除いても−60℃よりも低い温度にすることは難しい。また、一般に処理ガス量を多くするためには多量の吸着剤を用いる必要があり、装置は大型化せざるを得ず、装置の製造コスト及びランニングコストが高くなる。特に、特許文献1に開示されるような装置では、装置の製造コスト及びランニングコストが極めて高くなるために、実用化に問題があった。
上述したシリカゲルを用いた酸素リサイクルオゾン発生装置の欠点を解決するために、水分の存在する系においてもオゾン吸着能が優れたSiO/Alモル比が20以上の特定の高シリカオゾン吸着剤を用い、この吸着剤をPSA装置に適用してオゾンを効率的に濃縮できる高濃度オゾン含有ガスの製造方法及びその装置が提案された(例えば特許文献2を参照)。
【特許文献1】特開昭53−64690号公報
【特許文献2】特開平11−292514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バラスト水中の海洋生物の殺菌にオゾンを使用することは、低濃度、短時間での殺菌が達成されることから、極めて有効な殺菌法である。しかしオゾンの製造法は、最も効率の良い酸素を原料とした無声放電によるオゾンの製造においても、供給した酸素の容量比で3%程度の酸素のみがオゾンに転換し、残る97%の酸素はオゾンとともに下流に流下する、非常に効率の悪いものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上述した課題を解決すべく鋭意検討したところ、SiO/Alモル比が高い、高シリカゼオライト吸着剤として、(1)ペンタシル型ゼオライト、(2)酸処理したペンタシル型ゼオライト、(3)メソポーラスシリカ、(4)酸処理したメソポーラスシリカから選ばれた少なくとも一種は、優れたオゾン吸着能が得られかつオゾンの分解率が小さくなることを見出した。そのため、このようなオゾン吸着剤をPSAにおいてオゾン吸着剤として使用することにより、最小の原料酸素量でオゾンを製造できることを見出した。
具体的には、オゾン吸着剤として、従来技術より更にオゾン吸着能が優れた吸着剤を利用し、オゾン、酸素2成分ガスから酸素を回収してオゾン原料として再利用し、吸着したオゾンを、パージガスとして乾燥空気を用いて、オゾン、空気2成分ガスとして脱着回収する、オゾン、空気2成分ガス製造方法を使用して、低コストなオゾンを製造して、これをバラスト水に溶解して海洋生物を殺菌することで、安価でコンパクトな海洋生物殺菌方法を提供するものである。これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明によれば、以下の1、2の発明が提供される。
1.酸素を原料とするオゾン製造装置で製造したオゾン、酸素2成分含有ガスを、オゾン吸着剤床を収容した吸着塔に導入して吸着剤にオゾンを吸着させて、流過する酸素を回収して酸素原料として再使用し、オゾン吸着が完了したらオゾン含有ガスの導入を停止し、塔後方からパージガスとして乾燥空気を第1式に従って、大気圧もしくは圧力を下げて吸着剤床に導いて、オゾンを脱着させてオゾン、空気2成分ガスとして回収するオゾンガスの製造方法であって、前記オゾン吸着剤として、(1)ペンタシル型ゼオライト、(2)メソポーラスシリカ、(3)酸処理したペンタシル型ゼオライト、(4)酸処理したメソポーラスシリカから選ばれた少なくとも一種を用いて製造されたオゾン、空気2成分ガスを使用することを特徴とするバラスト水処理装置。
Gp=k ・G0 ・Pd/Pa (第1式)
Gp:パージガスとして使用する乾燥空気量(m3N/h)、k: 向流パージ率k>1.2、
G0:入口ガス量 (m3N/h)、Pd:再生圧力(kPa)、Pa:吸着圧力(kPa)
2.吸着剤床を収容した吸着塔が並列に2以上存在し、1つの吸着塔にオゾン、酸素2成分含有ガスを導入して吸着剤にオゾンを吸着させて流過する酸素を回収してオゾン製造装置原料として再使用する吸着工程に在る間に、吸着工程を完了した別の吸着塔の後方から乾燥空気を大気圧又は減圧条件下パージガスとして向流に供給し、吸着剤床からオゾンを脱着させてオゾン、空気2成分としてオゾンガスを回収する脱着工程を施し、次いでオゾン含有ガスの導入を、吸着工程を完了した吸着塔から、脱着工程を完了した吸着塔に切り換え、上記の工程を繰り返す、オゾン、空気2成分ガスの製造であって、前記オゾン吸着剤として、(1)ペンタシル型ゼオライト、(2)酸処理したペンタシル型ゼオライト、(3)メソポーラスシリカ、(4)酸処理したメソポーラスシリカから選ばれた少なくとも一種を用いるオゾン、空気2成分ガスを使用することを特徴とするバラスト水処理装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明のバラスト水中の海洋生物のオゾンによる殺菌方法では、使用するオゾンは、生成したオゾンの分解率が小さく、最小の原料酸素量でオゾンをオゾン、空気2成分ガスとして効率良く製造することができる。その結果、オゾンの安価な製造を可能にし、オゾン製造に必要な酸素製造装置の小型化を可能にし、かつ、オゾン製造装置の製造コスト及びランニングコストの大幅な低減を可能にする。従って、本発明は、安価でコンパクトなバラスト水中の海洋生物のオゾンによる処理装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のオゾン/酸素分離ユニットに使用する吸着剤は、高度にオゾンを吸着し、かつオゾン分解が抑制されるものでなければならない。このような吸着剤として本発明は、(1)ペンタシル型ゼオライト、(2)酸処理したペンタシル型ゼオライト、(3)メソポーラスシリカ、(4)酸処理したメソポーラスシリカの少なくとも一種から選ばれた吸着剤を採用する。
このような吸着剤はオゾン分解が少なくかつオゾン吸着能が高いため、PSA方式で使用するにあたり、オゾン分解が少なく、オゾンを高い濃度で、又は空気と置換した低コストのオゾン含有ガスを製造し得ることを見出した。
本発明に使用するオゾン吸着剤である、(1)ペンタシル型ゼオライト、(2)酸処理したペンタシル型ゼオライト、(3)メソポーラスシリカ、(4)酸処理したメソポーラスシリカの調製法及びオゾン吸着特性については、先行出願(特願2008−144154 吸着剤を利用したオゾンの製造・貯蔵方法)を参照されたい。
【0012】
本発明で使用するバラスト水中海洋生物殺菌用に使用するオゾン含有ガスを発生するオゾン発生器(オゾナイザー)としては、公知の無声放電方式、紫外線ランプ方式、水電解方式などいずれの方式のものでも適用できる。好ましくは、高圧仕様の無声放電装置を用い、オゾン濃縮用PSA装置の吸着工程から流出する酸素を、前記無声放電装置の原料側に戻して酸素原料として用いることにより、酸素消費量を大幅に低減できる。再生工程では、パージガスとして乾燥空気を使用することで、脱着するオゾン含有ガスをオゾン、空気2成分ガスとして回収することができ、オゾン/酸素分離PSA装置に使用する脱着用真空ポンプの負担を軽減することができる。なお、前記無声放電オゾン発生装置に供給する酸素原料ガスとして例えば、酸素濃縮用のPSA装置等で製造した高濃度酸素ガスを用いることは、装置全体の効率化及び高性能化に有効である。
【0013】
オゾン/酸素分離用PSA装置の脱着工程に移行した吸着塔からは、例えば向流に乾燥空気をパージガスとして、大気圧又は減圧条件で、オゾン、空気2成分ガスを回収する。
【0014】
吸着工程及び脱着工程の条件は、特に限定されない。吸着工程は、106〜507kPa(1.05〜5atm)の範囲の圧力及び温度−60℃〜25℃の範囲で実施するのが普通である。
また、脱着工程は、圧力4〜760kPa(0.04〜1atm)の範囲で実施し、温度は特に制限されず、吸着工程の温度に依存するのが普通である。回収したオゾン含有ガスの利用を考慮すると、脱着工程の温度は室温に近いのが好ましい。
【0015】
吸着工程の終了は、例えばオゾン含有ガスの流入口と反対の吸着塔出口のガスのオゾンの濃度を監視していて、オゾンのブレークスルーが見られ始めた時や切換時間、すなわちリサイクルタイムに達した時に吸着が完了したとして、吸着塔へのオゾン含有ガスの導入を停止することによって行うことができる。
脱着工程の終了は、例えば脱着圧の可能な最低圧力や切換時間、すなわちリサイクルタイムに達した時に脱着が完了したとして、吸着塔からのオゾン、空気2成分ガスの回収を停止することによって行うことができる。
【0016】
以下に、本発明を図によって説明する。
図1は、PSA酸素製造装置1で製造した酸素を原料として、配管2で無声放電オゾン発生装置3に供給して、オゾン、酸素2成分ガスを製造し、2塔式のオゾン、空気2成分ガス製造PSA装置4に供給して、オゾン、空気2成分を製造する装置の概念図である。吸着塔5a(左側の吸着塔にはaを数字の後に付番し、右側の吸着塔にはbを付番する。)及び5bに前記のオゾン吸着剤の群から選択された一種以上のオゾン吸着剤6を充填する。
【0017】
このときのシーケンスを表1に示す。
【表1】

【0018】
図1では、切替弁7a、8aを開け、切替弁9a、10aを閉じることにより、吸着塔5aで吸着工程が進行する。吸着塔5bは、脱着工程に保持した状態を示しており、切替弁7b、8bを閉じ、切替弁9b、10bを開けることにより、前記工程を吸着から脱着へ、切り替えることができる。オゾン発生装置3からのオゾン含有ガスは、ブロワー11で吸着圧力まで加圧して吸着工程の吸着塔5aに供給してオゾンをオゾン吸着剤に吸着させ、吸着塔5aから流出する酸素ガスは配管12でオゾン発生装置3入口に還流されて、原料酸素供給量を削減して、オゾン発生装置3の消費電力を節減する。
【0019】
他方、オゾン回収系は脱着圧に保持されており、真空ポンプ13と結んだ切替弁9bを開けることにより脱着工程の吸着塔5bから減圧脱着によりオゾンを回収する。なお、ここで乾燥空気14をパージガスとして使用しパージガス供給用導管15に設けた減圧弁16で脱着圧まで減圧して、脱着工程の吸着塔5bに供給して向流パージすることにより脱着は促進される。パージガスを多量に使用するとその分だけオゾン濃度が低下する。好ましいパージ率は1〜2の範囲、より好ましいパージ率は1.2〜1.5の範囲である。
ここでパージガスの使用量Gpは、第1式で表される。
Gp=k ・G0 ・Pd/Pa (第1式)
Gp:パージガスとして使用する乾燥空気量(m3N/h)、k: 向流パージ率k>1.2、
G0:入口ガス量 (m3N/h)、Pd:再生圧力(kPa)、Pa:吸着圧力(kPa)
なお、図1には、無声放電オゾン発生装置3の前段に酸素濃縮用のPSA装置1を付設するように記載した。この酸素濃縮用のPSA装置1は、装置全体の効率化及び高性能化を図る上で有効である。
【0020】
オゾン、空気2成分ガス製造PSA装置4に関連して、吸着工程の吸着塔5aから流出する酸素は、導管11を介して無声放電オゾン発生装置3の酸素原料供給用導管に戻して酸素濃縮ガスの有効利用を図ることができる。さらに、高圧仕様の無声放電オゾン発生装置を用いると、PSA装置へのオゾン含有ガスの供給用のコンプレッサーの負担を低減することができるので、装置全体の効率化及び高性能化を図る上で有効である。
本発明の吸着剤は、それぞれ使用目的に応じて単独又は混合物の形で、粒状、ペレット状、ラシヒリング状、ハニカム状など任意の形状に成形して使用できる。
【0021】
得られたオゾン/空気2成分ガスを真空ポンプ13の出口から導管17、オゾン散気管18で、海水貯留槽20から海水ポンプ21を経て導管22からバラスト水殺菌槽23に供給された海洋生物を含む海水にオゾン含有マイクロバブル19として供給し、海水中の海洋生物を殺菌して導管24からバラストタンクへ供給する。
【実施例】
【0022】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
本発明に使用する、(1)ペンタシル型ゼオライト、(2)酸処理したペンタシル型ゼオライト、(3)メソポーラスシリカ、(4)酸処理したメソポーラスシリカの調製法については、先行出願(特願2008−144154 吸着剤を利用したオゾンの製造・貯蔵方法)を参照されたい。
【0023】
実施例1
図1のオゾン/酸素分離ユニットで製造した、オゾン、空気2成分ガスを使用して3,000ton/hで供給されるバラスト水中の海洋生物を殺菌した時の殺菌効果、オゾン発生用酸素のためのPSA-酸素の容量、各ユニットの消費電力評価を行った。なお参照として、オゾン/酸素分離ユニットを用いずに従来のオゾン、酸素2成分ガスを直接用いたときの、オゾン発生用酸素のためのPSA-酸素の容量、各ユニットの消費電力比較も行った。
表2に、バラスト水中オゾン濃度を0.5〜15ppmまで変更したときの、(1)オゾン発生器容量、(2)オゾン発生器容量、(3)乾燥空気使用量、(4)バラスト水オゾン濃度、(5)PSA-O2消費電力、(6)PSA-O3/O2消費電力、(7)PSA-O2消費電力、(8)オゾン発生器消費電力、(9)全消費電力、(10)殺菌効果評価を示す。
表2に示すように、オゾンによる海洋生物殺菌効果は、オゾン濃度5ppm以上で有効である。次にPSA-オゾン/酸素分離ユニットを使用した場合に、実施例のPSA-オゾン/酸素分離ユニットを使用しない従来例(R−1〜R−5)と本発明を使用した実施例(S−1〜S−5)を比較すると、本発明実施例ではPSA-酸素容量が、従来の酸素容量を1/20に削減されており、これによりオゾン製造にかかわる消費電力が、従来法の47kWから21kWに減少されることとなる。
【0024】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0025】
強力な酸化剤、殺菌剤として広く使用されるオゾンの製造装置である、無声放電式オゾン発生器から供給される、オゾン、酸素2成分ガスを、相対的高圧条件でオゾン吸着剤を使用してオゾン/酸素分離を行い、回収した酸素をオゾン発生器原料として再利用する。吸着したオゾンは、相対的低圧条件で乾燥空気をパージガスとしてオゾン、空気2成分ガスとして脱着して回収することにより得られる。この低コストなオゾン、空気2成分ガスを、バラスト水中の海洋生物殺菌に使用することで、経済的でコンパクトなバラスト水処理装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一の実施態様を示す。
【符号の説明】
【0027】
1 PSA酸素製造装置
2、12,15、17、22,24 流路、配管
3 無声放電オゾン発生装置
4 オゾン、空気2成分ガス製造PSA装置
5a、5b オゾン吸着塔
6 オゾン吸着剤
7a,7b.8a,8b,9a,9b、10a、10b 自動弁
11 ブロワー
13 真空ポンプ
14 乾燥空気源
16 減圧弁
18 オゾン散気管
19 マイクロバブル
20 海水貯留槽
21 海水ポンプ
23 バラスト水殺菌槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を原料とするオゾン製造装置で製造したオゾン、酸素2成分含有ガスを、オゾン吸着剤床を収容した吸着塔に導入して吸着剤にオゾンを吸着させて、流過する酸素を回収して酸素原料として再使用し、オゾン吸着が完了したらオゾン含有ガスの導入を停止し、塔後方からパージガスとして乾燥空気を第1式に従って、大気圧もしくは圧力を下げて吸着剤床に導いて、オゾンを脱着させてオゾン、空気2成分ガスとして回収するオゾンガスの製造方法であって、前記オゾン吸着剤として、(1)ペンタシル型ゼオライト、(2)メソポーラスシリカ、(3)酸処理したペンタシル型ゼオライト、(4)酸処理したメソポーラスシリカから選ばれた少なくとも一種を用いて製造されたオゾン、空気2成分ガスを使用することを特徴とするバラスト水処理装置。
Gp=k ・G0 ・Pd/Pa (第1式)
Gp:パージガスとして使用する乾燥空気量(m3N/h)、k: 向流パージ率 k>1.2、
G0:入口ガス量 (m3N/h)、Pd:再生圧力(kPa)、Pa:吸着圧力(kPa)
【請求項2】
吸着剤床を収容した吸着塔が並列に2以上存在し、1つの吸着塔にオゾン、酸素2成分含有ガスを導入して吸着剤にオゾンを吸着させて、流過する酸素を回収してオゾン製造装置原料として再使用する吸着工程に在る間に、吸着工程を完了した別の吸着塔の後方から乾燥空気を大気圧又は減圧条件下パージガスとして向流に供給し、吸着剤床からオゾンを脱着させてオゾン、空気2成分としてオゾンガスを回収する脱着工程を施し、次いでオゾン含有ガスの導入を、吸着工程を完了した吸着塔から、脱着工程を完了した吸着塔に切り換え、上記の工程を繰り返す、オゾン、空気2成分ガスの製造であって、前記オゾン吸着剤として、(1)ペンタシル型ゼオライト、(2)酸処理したペンタシル型ゼオライト、(3)メソポーラスシリカ、(4)酸処理したメソポーラスシリカから選ばれた少なくとも一種を用いるオゾン、空気2成分ガスを使用することを特徴とするバラスト水処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−42331(P2010−42331A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206502(P2008−206502)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(506233117)吸着技術工業株式会社 (24)
【出願人】(000171861)佐世保重工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】