説明

圧力センサ

【課題】2つの異なる大きさの圧力を正確に測定しその小型化を図り得る圧力センサを提供する。
【解決手段】圧力センサ20は、ケース21と、このケース21に収容されるシリコン基板からなる第1センサチップ30および第2センサチップ40とを備えている。比較的小さな圧力(第1の圧力)を検出するための第1センサチップ30と、比較的大きな圧力(第2の圧力)を検出するためにその圧力検出範囲が第1センサチップ30よりも広い第2のセンサチップ40と、は重ねて配置されている。そして、信号処理回路50は、第1センサチップ30に集積されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の車両においては、車両の進行方向(前後方向)に対する衝突安全性だけでなく、車両の側方(左右方向)からの衝突(側面衝突)に対する安全性も求められている。このような側面衝突に対して乗員を保護するためのエアバック装置として、サイドエアバック装置がある。このサイドエアバック装置を作動させるためのセンサには、車両のドアの内圧変化を検出する圧力センサが広く用いられている。このようなサイドエアバック装置は、例えば、下記特許文献1に開示されている。
【0003】
また、上記圧力センサは、車両のドア内に配置されるため、衝突(外力)により生じる車両の振動の影響を受けてしまう。具体的には、衝突により発生する衝撃は車体を伝播して圧力センサに振動として伝達される。そして、圧力センサは伝達される振動が車両のドア内圧変化に加算された検出信号を出力することになり、この加算された振動成分が誤差の要因となっている。
【0004】
上述のような誤差を解消するため、下記特許文献2に開示される衝突検出システムの内圧センサのように、ドア内の圧力を検出する圧力センサと、ドアへの衝撃に起因する振動を検出する振動センサとが採用されている。振動センサは、上記圧力センサに用いられたセンサと同様のダイアフラム型の圧力センサであって、上記内圧センサは、圧力センサを構成するセンサ素子(センサチップ)と振動センサを構成するセンサ素子(センサチップ)とが積層した状態で組み付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平02−249740号公報
【特許文献2】特開2007−071596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に開示されるような2つの圧力を検出するためのセンサチップを有する圧力センサの構成では、積層された2つのセンサチップからの信号を処理してドア内の空間の圧力を算出するためのセンサチップが必要となる。このため、圧力検出用の2つのセンサチップに加えて信号処理用のセンサチップ等を用意する必要があるので、これら各センサチップを有する圧力センサの小型化が困難になるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、2つの異なる大きさの圧力を正確に測定しその小型化を図り得る圧力センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の圧力センサでは、第1の圧力を検出するための第1のセンサチップ(30)と、前記第1の圧力よりも大きな第2の圧力を検出するためにその圧力検出範囲が前記第1のセンサチップよりも広い第2のセンサチップ(40)と、前記第1のセンサチップから出力される圧力信号と前記第2のセンサチップから出力される圧力信号とを処理する信号処理回路(50)と、を備える圧力センサ(20)であって、前記第1のセンサチップおよび前記第2のセンサチップは、重ねて配置され、前記信号処理回路は、前記第1のセンサチップおよび前記第2のセンサチップのいずれか一方に集積されることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の圧力センサにおいて、前記第1のセンサチップおよび前記第2のセンサチップは、ダイアフラム(32,42)を有し当該ダイアフラムに作用する圧力に応じた変位を前記圧力信号に変換して出力するようにそれぞれ構成され、前記第2のセンサチップのダイアフラム(42)の厚さは、前記第1のセンサチップのダイアフラム(32)の厚さよりも厚く形成される。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載の圧力センサにおいて、前記第1のセンサチップのダイアフラム側が前記第2のセンサチップにより覆われるように、前記第1のセンサチップおよび前記第2のセンサチップが重ねて配置され、前記第2のセンサチップのダイアフラム側は、当該ダイアフラム側を保護するゲル部材(50)により覆われることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧力センサにおいて、前記第1の圧力は、車両のドア(10)閉め時に作用する圧力であり、前記第2の圧力は、前記ドアに対する物体の衝突時に作用する圧力であって、前記信号処理回路は、前記第1のセンサチップからの圧力信号(S1)の波長と前記第2のセンサチップからの圧力信号(S2)の波長との少なくともいずれか一方に基づいて、検出される圧力が前記第1の圧力および前記第2の圧力のいずれか一方であることを検出することを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、第1の圧力を検出するための第1のセンサチップと、第1の圧力よりも大きな第2の圧力を検出するためにその圧力検出範囲が第1のセンサチップよりも広い第2のセンサチップと、が重ねて配置されている。そして、信号処理回路は、第1のセンサチップおよび第2のセンサチップのいずれか一方に集積されている。
【0013】
これにより、第1の圧力が作用するために、第2のセンサチップから出力される圧力信号が分解能との関係から低精度になる程度に小さくなる場合でも、第1のセンサチップから出力される圧力信号に応じて当該第1の圧力を正確に測定できる。また、第1のセンサチップの圧力検出範囲を超えるほどの第2の圧力が作用するために、第1のセンサチップから出力される圧力信号が飽和しても、第2のセンサチップから出力される圧力信号に応じて当該第2の圧力を正確に測定できる。
【0014】
特に、重ねて配置される第1のセンサチップおよび第2のセンサチップのいずれか一方には、信号処理回路が集積されるため、両センサチップが占める面積だけでなく信号処理回路が占める面積をも小さくでき、信号処理回路と両センサチップとを電気的に接続する配線が簡素化される。
したがって、2つの異なる大きさの圧力を正確に測定し、当該圧力センサの小型化を図ることができる。
【0015】
請求項2の発明では、第1のセンサチップおよび第2のセンサチップは、ダイアフラムを有し当該ダイアフラムに作用する圧力に応じた変位を圧力信号に変換して出力するようにそれぞれ構成され、第2のセンサチップのダイアフラムの厚さは、第1のセンサチップのダイアフラムの厚さよりも厚く形成される。
このように、大きな圧力を検出するセンサチップの方のダイアフラムを厚くすることで、第1のセンサチップおよび第2のセンサチップの圧力検出範囲を容易に調整することができる。
【0016】
請求項3の発明では、第1のセンサチップのダイアフラム側が第2のセンサチップにより覆われるように、第1のセンサチップおよび第2のセンサチップを重ねて配置されるため、第1のセンサチップのダイアフラム側を好適に保護することができる。そして、第2のセンサチップのダイアフラム側は、当該ダイアフラム側を保護するゲル部材により覆われるため、第2のセンサチップのダイアフラム側を好適に保護することができる。
【0017】
特に、圧力検出時、この圧力がゲル部材にも作用して当該ゲル部材が振動するとき、この振動が保護対象のダイアフラムに伝達すると、当該ダイアフラムの変位を利用した圧力検出の検出精度が低下する場合がある。そこで、ゲル部材により厚さの厚い第2のセンサチップのダイアフラム側を覆うことで、ゲル部材により第1のセンサチップのダイアフラム側を覆う場合と比較して、ゲル部材の振動に起因する検出精度の低下を抑制することができる。
【0018】
請求項4の発明では、信号処理回路は、第1のセンサチップからの圧力信号の波長と第2のセンサチップからの圧力信号の波長との少なくともいずれか一方に基づいて、検出される圧力が車両のドア閉め時に作用する圧力(第1の圧力)およびドアに対する物体の衝突時に作用する圧力(第2の圧力)のいずれか一方であることを検出する。
【0019】
ドア閉め時にセンサチップから出力される圧力信号の波長は、圧力が伝達する過程等の違いから、ドアに対する物体の衝突時(側突時)にセンサチップから出力される圧力信号の波長よりも短くなる。このため、第1のセンサチップおよび第2のセンサチップの少なくともいずれか一方から出力される圧力信号の波長のみに基づいて、検出対象の圧力がドア閉め時の圧力および側突時の圧力のいずれか一方であるかを検出することができる。さらに、両センサチップから出力される圧力信号の値とその波長との双方を検出することで、検出精度をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る圧力センサを取り付けた車両用ドアの内部を示す断面図である。
【図2】図1の圧力センサを示す概略構成図である。
【図3】図2の3−3線相当の切断面による概略断面図である。
【図4】両センサチップにおける検出圧力と圧力信号との関係を示す説明図である。
【図5】図5(A)は、ドア閉め時に両センサチップから出力される圧力信号を示す波形図であり、図5(B)は、側突時に両センサチップから出力される圧力信号を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る圧力センサを具現化した一実施形態について、図を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る圧力センサ20を取り付けた車両用ドア10の内部を示す断面図である。
【0022】
図1に示すように圧力センサ20は、車両のドア10の内部に設けられてドア10の内部空間14の圧力を検出するセンサである。この圧力センサ20からの出力信号に基づいて他の車両等によるドア10への衝突(以下、側突という)が検出されると、この衝突から乗員を保護するためのサイドエアバック装置(図略)が作動する。
【0023】
車両のドア10は、車両の外周面の一部を形成するアウターパネル11と、車両のドア10の車室内側の表面を形成するインナーパネル12と、ウィンドガラス13とを備えている。そして、アウターパネル11とインナーパネル12との間には、略密閉された空間(以下、内部空間14ともいう)が形成されている。この内部空間14は、ドア10の内部と外部とがわずかに連通して形成され、ドア10の外部の圧力が変化したときにはドア10の内部空間14の圧力も変化するとともに、この内部空間14の内容積が急激に変化したときにはその内圧が上昇するように形成されている。
【0024】
次に、本発明に係る圧力センサ20の構成について、図2および図3を用いて説明する。図2は、図1の圧力センサ20を示す概略構成図である。図3は、図2の3−3線相当の切断面による概略断面図である。なお、図2では、便宜上、ケース21の一部およびゲル部材60の図示を省略している。
図2および図3に示すように、圧力センサ20は、ケース21と、このケース21に収容されるシリコン基板からなる第1センサチップ30および第2センサチップ40とを備えている。
【0025】
第1センサチップ30は、ドア閉め時に作用する圧力のように、第2センサチップ40に対して比較的小さな圧力を検出するためのセンサチップである。この第1センサチップ30は、その中央部に凹部31が設けられることで、検出圧力に応じ変位する薄肉部としてダイアフラム32が形成され、このダイアフラム32の変位を圧力信号に変換して出力するように構成されている。第1センサチップ30がケース21の底部に設置されるとき、この底部に形成される貫通穴21aが凹部31内に連通するため、ダイアフラム32の底部側には、内部空間14の圧力が作用する。なお、第1センサチップ30は、特許請求の範囲に記載の「第1のセンサチップ」の一例に相当し、上記比較的小さな圧力は、特許請求の範囲に記載の「第1の圧力」の一例に相当し得る。
【0026】
また、第1センサチップ30には、上述のように出力される圧力信号や第2センサチップ40から出力される圧力信号に対して増幅・補正等の処理を施して出力するための信号処理回路50が集積(実装)されている。この信号処理回路50は、その入出力端子が、ケース21内に一部が露出するターミナル22にボンディングワイヤ23を介して電気的にそれぞれ接続されている。
【0027】
第2センサチップ40は、ドア10に対する他の車両等の物体の衝突(側突)時に作用する圧力のように、第1センサチップ30が検出対象とする圧力に対して比較的大きな圧力を検出するためのセンサチップである。この第2センサチップ40は、その中央部に凹部41が設けられることで、検出圧力に応じ変位する薄肉部としてダイアフラム42が形成され、このダイアフラム42の変位を圧力信号に変換して出力するように構成されている。
【0028】
特に、図3に示すように、ダイアフラム42は、第1センサチップ30よりも圧力検出範囲を広くするため、その厚さがダイアフラム32の厚さよりも厚くなるように形成されている。上述のように出力される圧力信号は、貫通電極43とこの貫通電極43に電気的に接続される入出力端子とを介して信号処理回路50に入力される。なお、第2センサチップ40は、特許請求の範囲に記載の「第2のセンサチップ」の一例に相当し、上記比較的大きな圧力は、特許請求の範囲に記載の「第2の圧力」の一例に相当し得る。
【0029】
このように構成される第2センサチップ40は、その貫通電極43が信号処理回路50の対応する入出力端子に電気的に接続され、その凹部41により第1センサチップ30のダイアフラム32を含めた表面(ダイアフラム32側の面)の一部を密閉して密閉空間44を構成するように、第1センサチップ30に重ねて配置(積層)されている。これにより、ダイアフラム32およびダイアフラム42は、密閉空間44の圧力を基準に、内部空間14の圧力との圧力差に応じて変位することとなる。
【0030】
このように積層される第2センサチップ40の表面(ダイアフラム42側の面)と、第2センサチップ40により保護される面を除く第1センサチップ30の表面とは、ゲル部材60により覆われることで保護されている。本実施形態では、ゲル部材60として、例えば、シリコンゲルやフッ素ゲルが採用されている。
【0031】
次に、圧力センサ20によるドア10の内部空間14の圧力検出について図4を用いて説明する。図4は、両センサチップ30,40における検出圧力Pと圧力信号S1,S2との関係を示す説明図である。
上述のように、第2センサチップ40は、その圧力検出範囲が第1センサチップ30よりも広くなるように構成されているため、図4に示すように、同じ検出圧力でも、第2センサチップ40から出力される圧力信号S2が第1センサチップ30から出力される圧力信号S1よりも小さくなる。
【0032】
このため、検出圧力Pとしてドア閉め時のように比較的小さな圧力(図4にて符号P1にて示す)が作用する場合では、第2センサチップ40から出力される圧力信号S2が、分解能との関係から低精度になる程度に小さくなってしまう(図4の楕円α内参照)。この場合でも、第1センサチップ30から出力される圧力信号S1に応じて、当該検出圧力P1を正確に測定できる。
【0033】
一方、検出圧力Pとして側突時のように比較的大きな圧力(図4にて符号P2にて示す)が作用する場合では、第1センサチップ30の圧力検出範囲を超えるほどの検出圧力P2が作用するために、第1センサチップ30から出力される圧力信号S2が飽和(クランプ)してしまう(図4の楕円β内参照)。この場合でも、第2センサチップ40から出力される圧力信号S2に応じて、当該検出圧力P2を正確に測定できる。
このようにドア閉め時の圧力か側突時の圧力かを正確に検出できるため、ドア閉め時を側突時と誤検出してサイドエアバック等が誤作動することを確実に防止することができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る圧力センサ20では、比較的小さな圧力(第1の圧力)を検出するための第1センサチップ30と、比較的大きな圧力(第2の圧力)を検出するためにその圧力検出範囲が第1センサチップ30よりも広い第2のセンサチップ40と、が重ねて配置されている。そして、信号処理回路50は、第1センサチップ30に集積されている。
【0035】
これにより、ドア閉め時のように比較的小さな圧力が作用するために、第2センサチップ40から出力される圧力信号S2が分解能との関係から低精度になる程度に小さくなる場合でも、第1センサチップ30から出力される圧力信号S1に応じて当該比較的小さな圧力を正確に測定できる。また、側突時のように第1センサチップ30の圧力検出範囲を超えるほどの比較的大きな圧力が作用するために、第1センサチップ30から出力される圧力信号S1が飽和しても、第2センサチップ40から出力される圧力信号S2に応じて当該比較的大きな圧力を正確に測定できる。
【0036】
特に、重ねて配置される第1センサチップ30および第2センサチップ40のうちの第1センサチップ30には、信号処理回路50が集積されるため、両センサチップ30,40が占める面積だけでなく信号処理回路50が占める面積をも小さくでき、信号処理回路50と両センサチップ30,40とを電気的に接続する配線が簡素化される。
したがって、2つの異なる大きさの圧力を正確に測定し、当該圧力センサ20の小型化を図ることができる。
【0037】
また、第1センサチップ30および第2センサチップ40は、ダイアフラム32,42を有し当該ダイアフラム32,42に作用する圧力に応じた変位を圧力信号S1,S2に変換して出力するようにそれぞれ構成され、第2センサチップ40のダイアフラム42の厚さは、第1センサチップ30のダイアフラム32の厚さよりも厚く形成される。
このように、大きな圧力を検出するセンサチップの方のダイアフラムを厚くすることで、第1センサチップ30および第2センサチップ40の圧力検出範囲を容易に調整することができる。
【0038】
さらに、第1センサチップ30のダイアフラム32側が第2センサチップ40により覆われるように、第1センサチップ30および第2センサチップ40を重ねて配置されるため、第1センサチップ30のダイアフラム32側を好適に保護することができる。そして、第2センサチップ40のダイアフラム42側は、当該ダイアフラム42側を保護するゲル部材60により覆われるため、第2センサチップ40のダイアフラム42側を好適に保護することができる。
【0039】
特に、圧力検出時、この圧力がゲル部材60にも作用して当該ゲル部材60が振動するとき、この振動が保護対象のダイアフラムに伝達すると、当該ダイアフラムの変位を利用した圧力検出の検出精度が低下する場合がある。
本実施形態では、ゲル部材60により厚さの厚い第2センサチップ40のダイアフラム42側が覆われているので、ゲル部材60により第1センサチップ30のダイアフラム32側が覆われる場合と比較して、ゲル部材60の振動に起因する検出精度の低下を抑制することができる。
【0040】
本実施形態では、検出対象の圧力がドア閉め時の圧力および側突時の圧力のいずれか一方であるかを以下のように検出してもよい。この検出方法について、図5(A),(B)を用いて説明する。図5(A)は、ドア閉め時に両センサチップ30,40から出力される圧力信号S1,S2を示す波形図であり、図5(B)は、側突時に両センサチップ30,40から出力される圧力信号S1,S2を示す波形図である。
【0041】
図5(A),(B)に示すように、ドア閉め時に両センサチップ30,40から出力される圧力信号S1,S2の波長は、圧力が伝達する過程等の違いから、側突時に両センサチップ30,40から出力される圧力信号S1,S2の波長よりも短くなる。
【0042】
このため、第1センサチップ30および第2センサチップ40の少なくともいずれか一方から出力される圧力信号(S1,S2)の波長のみに基づいて、信号処理回路50により、検出対象の圧力がドア閉め時の圧力および側突時の圧力のいずれか一方であるかを検出することができる。そして、さらに、両センサチップ30,40から出力される圧力信号S1,S2の値とその波長との双方を検出することで、検出精度をより高めることができる。
【0043】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)本発明に係る圧力センサ20は、ドア10の内部空間14の圧力を検出するセンサとして採用されることに限らず、2つの異なる圧力が作用する場所に設置される圧力センサに採用することができる。
【0044】
(2)センサチップを保護する保護部材としてゲル部材60と異なり振動に強い保護部材等を採用する場合には、第1センサチップ30が、その凹部31により第2センサチップ40のダイアフラム42を含めた表面の一部を密閉して密閉空間44を構成するように、第2センサチップ40に重ねて配置(積層)されてもよい。
このように積層される場合、信号処理回路50は、ケース21の底部に設置される第2センサチップ40に集積されてもよい。
【0045】
(3)信号処理回路50は、第1センサチップ30に集積(実装)されることに限らず、第2センサチップ40に集積(実装)されてもよい。
【0046】
(4)両センサチップ30,40は、ダイアフラムの変位に応じて圧力を検出するように構成されることに限らず、例えば、静電容量型加速度センサのように可動電極および固定電極間の静電容量の変化に応じて圧力を検出するように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…ドア
20…圧力センサ
21…ケース
30…第1センサチップ(第1のセンサチップ)
32…ダイアフラム
40…第2センサチップ(第2のセンサチップ)
42…ダイアフラム
50…信号処理回路
60…ゲル部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の圧力を検出するための第1のセンサチップと、
前記第1の圧力よりも大きな第2の圧力を検出するためにその圧力検出範囲が前記第1のセンサチップよりも広い第2のセンサチップと、
前記第1のセンサチップから出力される圧力信号と前記第2のセンサチップから出力される圧力信号とを処理する信号処理回路と、
を備える圧力センサであって、
前記第1のセンサチップおよび前記第2のセンサチップは、重ねて配置され、
前記信号処理回路は、前記第1のセンサチップおよび前記第2のセンサチップのいずれか一方に集積されることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記第1のセンサチップおよび前記第2のセンサチップは、ダイアフラムを有し当該ダイアフラムに作用する圧力に応じた変位を前記圧力信号に変換して出力するようにそれぞれ構成され、
前記第2のセンサチップのダイアフラムの厚さは、前記第1のセンサチップのダイアフラムの厚さよりも厚く形成されることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記第1のセンサチップのダイアフラム側が前記第2のセンサチップにより覆われるように、前記第1のセンサチップおよび前記第2のセンサチップが重ねて配置され、
前記第2のセンサチップのダイアフラム側は、当該ダイアフラム側を保護するゲル部材により覆われることを特徴とする請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記第1の圧力は、車両のドア閉め時に作用する圧力であり、前記第2の圧力は、前記ドアに対する物体の衝突時に作用する圧力であって、
前記信号処理回路は、前記第1のセンサチップからの圧力信号の波長と前記第2のセンサチップからの圧力信号の波長との少なくともいずれか一方に基づいて、検出される圧力が前記第1の圧力および前記第2の圧力のいずれか一方であることを検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の圧力センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate