説明

圧力保持弁の検査装置および検査方法

【課題】圧力調整弁の押付加工及び油密検査の時間を短縮し、製造コストを低減することの可能な検査装置を提供する。
【解決手段】検査装置40は、支持体43、押圧手段44、流量検出手段45、及びコントローラ46を備える。支持体43はリリーフ弁体23を支持し、押圧手段44は球状弁体33を弁座36に押圧する。流量検出手段453は、弁座36の上流側の内側通路に検査流体を供給し、弁座36と球状弁体33との間の検査流体のリーク量を検出する。コントローラ46は、流量検出手段45の検出値が規格値を超えたとき、押圧手段44を駆動し球状弁体33を弁座36に押圧する。これにより、弁座36と球状弁体33とをなじませることで弁座36と球状弁体33とのシール性を向上する押付加工と、弁座36と球状弁体33との間の流体のリーク量を検出する油密検査とを同一の検査装置40で行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関(以下、「エンジン」という)の燃料供給系に設けられる圧力保持弁の圧力保持性能を検査する検査装置、検査方法および押付加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンへ燃料を供給する燃料供給系は、燃料タンクから供給される燃料を高圧ポンプで加圧してデリバリパイプに貯留し、このデリバリパイプ内に貯留された高圧燃料をインジェクタからエンジンの各気筒内に噴射している。
特許文献1に記載の燃料供給系では、高圧ポンプの燃料を加圧する加圧室とデリバリパイプとを接続する燃料通路に圧力保持弁が設けられている。圧力保持弁は、リリーフ弁とこのリリーフ弁の弁体の内側に設けられた定残圧弁とから構成されている。
一般に、リリーフ弁は、エンジンの通常運転におけるデリバリパイプの燃圧以上、電磁式のインジェクタが燃料噴射不能となる燃圧未満で開弁するように設定される。これにより、デリバリパイプの燃圧が異常高圧となり、インジェクタが燃料噴射不能となることが抑制される。
また、定残圧弁は、デリバリパイプ内の燃圧を所定圧で保持するように設定される。この所定圧は、エンジンの停止後エンジンルームの温度上昇に伴うデリバリパイプ内の燃圧上昇によりデリバリパイプ内に発生するベーパが許容値以下となり、かつインジェクタからの燃料漏れが許容値以下となる圧力である。
【0003】
上述した定残圧弁は、製造工程において、リリーフ弁の弁体の内側に形成された内側通路に定残圧弁の弁体が着座する弁座を形成した後、この弁座にシール性を高める押付加工が行われる。
押付加工は、図12に示す押圧部材70を用いた押付加工装置により行われる。押圧部材70には、先端に弁体と略同一の径で形成された半球面71が設けられている。押付加工は、この半球面71を弁座に当接し、矢印72の方向へ適切な荷重により弁座を押圧することにより行われる。これにより、切削及び研磨などの機械加工により弁座を形成したときに生じる公差又は微小な凹凸が減少する。
続いて、定残圧弁は油密検査装置により、弁体と弁座との油密検査が行われる。この油密検査では、リリーフ弁の内側通路に油密検査用の弁体を取付け、その弁座の上流側の内側通路に検査流体を供給し、弁座と弁体との間の検査流体のリーク量を検出する。
油密検査においてリーク量が規格値以内のものは、弁体及びこの弁体を付勢するスプリング、さらにスプリングの付勢力を調節するアジャスタパイプが取り付けられた後、リリーフ弁と組み合わされ、圧力保持弁としてエンジンの燃料供給系に適用される。一方、リーク量が規格値を超えたものは再度押付加工装置に設置され、押付加工が行われた後、油密検査装置で油密の再検査が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−121395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、油密検査装置により油密検査が行われた後、再度押付加工装置により押付加工が行われると、製造工程が煩雑になることで、製造時間が遅延し、製造コストが高くなることが懸念される。
一方、押付加工を行ったものに弁体、スプリング及びアジャスタパイプを取り付け、その後に油密検査を行うと、リーク量が規格値を超えたものについて再度押付加工装置に設置し、押付加工を行うことが困難になる。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧力調整弁の押付加工及び油密検査の時間を短縮し、製造コストを低減することの可能な検査装置および検査方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、圧力調整弁を製造するための設備コストを削減することの可能な検査装置および検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明によると、流体を流通可能な内側通路を有する通路部材並びにこの内側通路の内壁に設けられた弁座に着座及び離座可能な弁体を有し、弁座の上流側の燃圧を所定圧で保持する圧力保持弁の圧力保持性能を検査する検査装置は、支持体、押圧手段、流量検出手段および制御手段を備える。支持体は通路部材を支持し、押圧手段は弁体を弁座に押圧する。流量検出手段は、弁座よりも上流側の内側通路に検査流体を供給し、弁座と弁体との間の検査流体のリーク量を検出する。制御手段は、流量検出手段の検出値が規格値を超えたとき、押圧手段を駆動し弁体を弁座に押圧する。
弁体を弁座に押圧することで弁座と弁体とをなじませ、シール性を向上する押付加工と、弁座と弁体との間の流体のリーク量を検出する油密検査とを同一の検査装置で行うことで、圧力保持弁が押付加工装置と油密検査装置とを往復する作業時間が短縮される。したがって、圧力保持弁の製造コストを低減することができる。
また、検査装置内で押付加工を行うことが可能となるので、押付加工のみを行う押付加工装置を廃止し、圧力保持弁を製造するための設備コストを低減することができる。
さらに、流量検出手段の検出値が規格値を超えたとき、検査装置内で押付加工による再調整をすることが可能となるので、圧力保持弁の歩留まりを上げることができる。
【0007】
請求項2に係る発明によると、圧力調整弁は、弁体を弁座側へ付勢する付勢手段と、付勢手段の弁座と反対側の内側通路に設けられ付勢手段の付勢力を調節するアジャスタパイプをさらに有する。押圧手段は、付勢手段及びアジャスタパイプを挿通し、一端が弁体に当接するロッドと、ロッドの他端に荷重を印加し、弁体を弁座に押圧する荷重印加手段と、ロッドに印加される荷重を検出する荷重検出手段とを有する。
弁体を弁座に押圧する荷重を大きくすれば、弁座と弁体とが密着し、なじみが良くなる。しかし、この荷重が一定の値を超えると、弁座と弁体とのシール面が広くなり、シール面の面圧が低下することで、燃料のリーク量が増える。このため、請求項2に係る発明では、ロッドに印加される荷重を検出する荷重検出手段を押圧手段が有することで、荷重印加手段は弁体を適切な荷重で押圧することが可能となる。したがって、弁座と弁体とのシール性を高め、圧力保持弁の歩留まりを上げることができる。
【0008】
請求項3に係る発明によると、圧力保持性能を検査する検査方法は、通路部材を支持する支持工程と、弁体を弁座に押圧する第1押付加工工程と、弁座よりも上流側の通路部材に検査流体を供給し、弁座と弁体との間の検査流体のリーク量を検出する油密検査工程と、油密検査工程で検出された検出値が規格値を超えたとき、弁体を弁座側へ再度押圧する第2押付加工工程とを含む。
これにより、第1押付加工工程で弁座と弁体とのシール性が不十分な場合、第2押付加工工程で弁体と弁座とのシール性が再調整されるので、作業時間が短縮され、圧力保持弁の製造コストが低減する。また、圧力保持弁の歩留まりを上げることができる。
【0009】
上述した圧力保持弁の検査装置は、圧力保持弁の弁座と弁体とのシール性を高める押付加工装置の発明と捉えることもできる。そこで、請求項4に係る発明によると、押付加工装置は、支持体と、ロッドと、荷重印加手段と、荷重検出手段とを備える。支持体は通路部材を支持する。ロッドは付勢手段及びアジャスタパイプを挿通し、一端が弁体に当接する。荷重印加手段は、ロッドの他端に荷重を印加し、弁体を弁座に押圧する。荷重検出手段は、ロッドに印加される荷重を検出する。
従来、圧力保持弁の押付加工装置は、図12に示すように、先端に弁体と略同一の径で形成された半球面71を有する押圧部材70を用いて弁座を押圧していた。このため、所定の個数の圧力保持弁の押付加工を行った後、ライフサイクルを終えた押圧部材70を交換していた。また、ライフサイクルの終了間近の押圧部材70を使用した押付加工は目標精度に到達することが困難になるおそれがあった。
これに対し、請求項4に係る発明の押付加工装置では、圧力保持弁に実際に使用される弁体をロッドが押圧する。このため、従来の押圧部材が不要になり、製造コストを低減することができる。さらに、請求項4に係る発明の押付加工装置では、常に新しい弁体により押付加工が行われるので、押付加工の加工精度が向上し、弁座と弁体とのシール性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態による検査装置の断面図である。
【図2】図1のII部分の拡大図であり、押圧加工の状態を示す説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態による検査装置の検査する圧力保持弁が設けられる内燃機関の燃料供給系の構成図である。
【図4】本発明の第1実施形態による検査装置の検査する圧力保持弁の断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態による検査装置の検査する圧力保持弁の定残圧弁の特性図である。
【図6】本発明の第1実施形態による検査装置の押付加工及び油密検査のフローチャートである。
【図7】本発明の第1実施形態による検査装置の検査する圧力保持弁の押付加工における押しつけ荷重と燃料リーク量の関係を示す特性図である。
【図8】本発明の第2実施形態による押付加工装置を用いた圧力保持弁の製造方法のフローチャートである。
【図9】本発明の第3実施形態による検査装置の断面図である。
【図10】図9のX部分の拡大図であり、押圧加工の状態を示す説明図である。
【図11】本発明の第4実施形態による検査装置の検査する圧力保持弁の部分拡大図であり、押圧加工の状態を示す説明図である。
【図12】従来の押付加工に用いられる押圧部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を図1〜図7に示す。
先ず、本実施形態の検査装置40が検査を行う圧力保持弁21の用いられるエンジンの燃料供給系1について図3を参照して説明する。燃料供給系1は、燃料タンク2、高圧ポンプ10、デリバリパイプ5、インジェクタ6、圧力センサ7、エンジン制御装置(ECU)8、及び圧力保持弁21等により構成されている。
【0012】
燃料タンク2の燃料は、低圧ポンプ3によって汲み上げられ、高圧ポンプ10に供給される。この燃料は、高圧ポンプ10によって加圧され、高圧燃料配管4を圧送され、デリバリパイプ5に貯留される。デリバリパイプ5に貯留された高圧燃料は、デリバリパイプ5に接続されるインジェクタ6によって図示しないエンジンの各気筒内に噴射される。
圧力センサ7は、デリバリパイプ5内の燃料圧力を検出し、ECU8に伝送する。ECU8は、圧力センサ7、図示しないアクセル開度センサ、カムシャフト9の図示しない回転角センサ等からの検出値に基づき、後述する高圧ポンプ10の電磁駆動部13への通電等を制御する。
【0013】
高圧ポンプ10は、プランジャ11、吸入弁12、電磁駆動部13、吐出弁14等を備えている。
プランジャ11は、エンジンのカムシャフト9に駆動され、軸方向に往復移動する。プランジャ11の一方の端部側に加圧室15が形成されている。加圧室15は、プランジャ11の往復移動可能によって容積を可変する。
吸入弁12は、高圧ポンプ10の燃料入口と加圧室15との間を接続する供給通路16に設けられている。吸入弁12は、電磁駆動部13の動作により、供給通路16を開閉を制御される。
【0014】
吐出弁14は、加圧室15と高圧ポンプ10の燃料出口とを接続する吐出通路17に設けられている。吐出弁14は、吐出弁14の弁体が加圧室15側の燃料から受ける力が、吐出弁14の弁体を加圧室15側へ付勢するスプリング18の弾性力と吐出弁14の弁体がデリバリパイプ5側の燃料から受ける力との和より大きくなるときに吐出通路17を開放する。
【0015】
高圧ポンプ10の作動は、吸入行程、戻し行程、圧縮行程に分けられる。
吸入行程では、プランジャ11が上死点から下死点へ移動する。このとき、電磁駆動部13への通電は停止され、吸入弁12は供給通路16を開放している。プランジャ11の動作により加圧室15の圧力が低下し、燃料が供給通路16から加圧室15へ吸入される。
戻し行程では、プランジャ11が下死点から上死点に向かって移動する。このとき、電磁駆動部13への通電が停止され、吸入弁12が供給通路16を開放している。したがって、加圧室15の燃料は供給通路16へ排出される。
圧縮行程では、プランジャ11が下死点から上死点に移動している途中で、電磁駆動部13に通電され、吸入弁12が供給通路16を閉塞する。供給通路16が閉塞された状態で、プランジャ11が上死点に向けて移動すると、加圧室15の燃料の圧力が上昇する。加圧室15の燃料の圧力が所定の圧力以上になると、吐出弁14が吐出通路17を開放する。これにより、吐出通路17から高圧燃料配管4へ高圧燃料が吐出される。
【0016】
高圧燃料配管4と高圧ポンプ10の加圧室15との間をリターン通路20が接続している。このリターン通路20内に圧力保持弁21が設けられている。本実施形態の圧力保持弁21は、リリーフ弁22と定残圧弁31とから構成されている。
図4に示すように、リリーフ弁22は、リリーフ弁体23、スプリング24及びストッパ25等を備えている。
【0017】
リリーフ弁体23は、略円筒状に形成され、内側に内側通路30が形成されている。リリーフ弁体23には、デリバリパイプ5側に円錐状の弁シート231が設けられている。弁シート231は、リターン通路20の内壁に形成された弁座26に着座可能である。リリーフ弁体23の径方向の外壁には、面取り部27が形成されている。このため、リターン通路20の内壁と面取り部27との間を燃料が流通可能である。また、リリーフ弁体23には、面取り部27と内側通路30の内壁とを通じる通孔28が形成され、燃料が流通可能である。
ストッパ25は、有底筒状に形成され、リリーフ弁体23の弁座26と反対側でリターン通路20の内壁に固定されている。ストッパ25の底部には孔29が設けられ、燃料が流通可能である。
スプリング24は、圧縮コイルスプリングであり、一端がリリーフ弁体23の弁座26と反対側の端部に係止され、他端がストッパ25の底部の内壁に係止されている。スプリング24は、リリーフ弁体23を弁座26に押し付けている。
【0018】
定残圧弁31は、リリーフ弁体23の内側通路30に設けられている。定残圧弁31は、オリフィス32、球状弁体33、付勢手段としてのスプリング34、アジャスタパイプ35を備えている。
オリフィス32は、リリーフ弁体23の弁シート231の径内側に形成されている。オリフィス32の球状弁体33側には、オリフィス32より内径の大きい筒部321が形成されている。
内側通路30の内壁には、切削及び研磨加工などにより円錐状の弁座36が形成される。球状弁体33は、内側通路30に収容され、弁座36に着座可能である。スプリング34は、圧縮コイルスプリングであり、内側通路30に収容される。アジャスタパイプ35は、筒状に形成され、内側通路30の内壁に圧入される。アジャスタパイプ35の圧入量を調節することで、スプリング34が球状弁体33を弁座36に押し付ける付勢力が設定される。
【0019】
次に、定残圧弁31の作用について、図5を参照して説明する。
エンジンが時刻T1で停止すると、カムシャフトの回転停止に伴い高圧ポンプの動作が停止する。仮に、燃料供給系が定残圧弁31を備えていない場合、デリバリパイプ5内の燃圧は、破線Aに示すように、高圧を維持する。この場合、エンジンの冷却水の循環が停止し、エンジンルームの温度上昇に伴ってデリバリパイプ5内の燃圧が高くなると、インジェクタ6から気筒内へ燃料漏れを生じることが懸念される。
【0020】
これに対し、定残圧弁31は、エンジンが時刻T1で停止した後、実線Bに示すように、デリバリパイプ5の燃圧を時刻T1〜時刻T2の間に減圧し、時刻T2以降、所定圧で保持する。これにより、インジェクタ6の燃料漏れ量が許容値以内に抑制される。
なお、仮に定残圧弁31の圧力保持性能が低下した場合、デリバリパイプ5内の燃料圧力は、所定圧で保持されることなく、破線Cに示すように時刻T2以降も低下するおそれがある。この場合、燃料内にベーパが発生し、高圧ポンプ10の昇圧不良が生じ、エンジンの始動性能が悪化することが懸念される。
したがって、定残圧弁31は、球状弁体33と弁座36との間の油密検査が行われた後、リーク量が規格値以内のもののみがリリーフ弁22と組み合わされ、圧力保持弁21として燃料供給系1に適用される。
【0021】
次に、本実施形態の検査装置40を図1を参照して説明する。
検査装置40は、球状弁体33と弁座36との間の油密検査及び押付加工を行うことで、圧力保持弁21を構成する定残圧弁31の圧力保持性能を検査するものである。
検査装置40は、検査ケース41、蓋部材42、支持体43、押圧手段44、流量検出手段45、及び制御手段としてのコントローラ46などを備えている。
検査ケース41は、有底筒状に形成され、内側にリリーフ弁体23を収容可能な収容空間411を形成している。本実施形態では、リリーフ弁体23が特許請求の範囲に記載の「通路部材」に相当する。検査ケース41の開口の径外側には、フランジ412が設けられている。
蓋部材42は、検査ケース41のフランジ412に当接し、検査ケース41の開口を塞ぐ。検査ケース41と蓋部材42との間にはOリング413が設けられ、油密を確保している。
【0022】
支持体43は、第1支持体431と第2支持体432とから構成され、リリーフ弁体23を軸方向の両側から支持している。第1支持体431は、蓋部材42と一体で形成されている。第1支持体431は、リリーフ弁体23の弁シート231よりも径外側に設けられた肩部232に当接する。第1支持体431とリリーフ弁体23の肩部232との間にはOリング433が設けられ、油密を確保している。
第2支持体432は、弾性力を有する材料から形成され、検査ケース41の底部の内壁に設けられている。第2支持体432は、リリーフ弁体23を第1支持体431に押し付けている。
【0023】
押圧手段44は、ロッド441、図示しない荷重印加手段、及び荷重検出手段442等から構成されている。ロッド441は、円柱状に形成され、検査ケース41の底部に設けられた孔414を通り、定残圧弁31のアジャスタパイプ35及びスプリング34を挿通し、一端が球状弁体33に当接している。このロッド441の一端は、軸方向に凹む半球状に形成され、球状弁体33に面接触している。また、検査ケース41の孔414とロッド441との間には、パッキン415が設けられ、油密を確保している。
荷重印加手段は、例えばアクチュエータから構成され、ロッド441の他端に、矢印443に示すように、荷重を印加する。これにより、球状弁体33は弁座36側へ押圧される。ロッド441に印加される押し付け荷重は、ロッド441の他端に設けられた荷重検出手段442によって検出される。荷重検出手段442は、その検出値をコントローラ46に出力する。コントローラ46は、荷重印加手段を制御し、押し付け荷重を調整する。
【0024】
流量検出手段45は、図示しない流体供給手段、及び流量検出センサ451等から構成されている。
流体供給手段は、蓋部材42に形成された検査流体入口通路421へ検査流体を供給する。流体供給手段の供給する検査流体の圧力は、定残圧弁31の開弁圧より小さく設定されている。なお、検査流体は、液体であっても気体であってもよい。
流量検出センサ451は、検査ケース41の底部に設けられた検査流体出口通路416から流出する検査流体の量を検出する。流量検出センサ451の検出した検出量は、コントローラ46へ出力される。
コントローラ46は、荷重印加手段及び流体供給手段等、検査装置40の各部を制御するとともに、流量検出センサ451から出力された検出値からリーク量を判定する。
【0025】
次に、検査装置40の行う押付加工及び油密検査の方法について図6に示すフローチャートおよび図1、図2、図7を参照して説明する。
先ず、リリーフ弁体23を検査ケース41内の収容空間411に収容し、リリーフ弁体23の肩部232とは反対側の端部と第2支持体432とを当接する。続いて、蓋部材42により検査ケース41の開口を塞ぐ。このとき、第1支持体431とリリーフ弁体23の肩部232とを当接する。これにより、リリーフ弁体23は、第1支持体431及び第2支持体432により支持される。
【0026】
次に、押圧手段44により第1押付加工が行われる(S1)。この第1押付加工では、矢印443に示すように荷重印加手段がロッド441に荷重を印加する。これにより、ロッド441は球状弁体33を弁座36に押し付ける。このとき、荷重検出手段442はロッド441に印加される押し付け荷重を検出し、コントローラ46へ出力する。コントローラ46は、荷重印加手段を駆動制御し、押し付け荷重を調節する。
【0027】
球状弁体33が弁座36へ押し付けられるときの状態を図2に示す。
弁座36は、切削及び研磨等の機械加工後、加工上の公差により微小な凹凸が形成されていることがある。本実施形態の場合、図2の紙面上方に検査流体流入側に凹む部分361が形成され、紙面下方に検査流体流出側へ突出する部分362が形成されている。
荷重印加手段がロッド441に荷重を印加すると、球状弁体33は破線Dに示すように移動し、弁座36の紙面下方の部分362が、破線Eに示すように、検査流体流入側に塑性変形する。これにより、球状弁体33と弁座36とがなじみ、シール性が向上する。
【0028】
ここで、ロッド441に印加される押し付け荷重と、球状弁体33と弁座36との間の燃料リーク量との関係を図7に示す。
実線Fに示すように、押し付け荷重がP1より小さいとき、球状弁体33と弁座36とのなじみ不足により球状弁体33と弁座36との間には微小隙間が残存するので、燃料リーク量が多くなる。一方、押し付け荷重がPXより大きいとき、球状弁体33と弁座36との当接面が広くなり、シール面圧が低下するので、燃料リーク量が多くなる。したがって、押し付け荷重はP1〜PXの範囲が最適範囲となる。
第1押付加工では、荷重印加手段がロッド441に荷重を印加する押し付け荷重を最適範囲の最小値であるP1に設定している。これにより、定残圧弁31を燃料供給系1に適用した後、経年変化により球状弁体33と弁座36とがなじむことによるシール面圧の低下が抑制され、定残圧弁31の耐久性が向上する。
なお、押し付け荷重と燃料リーク量との関係は、弁座36または弁体31の加工上の公差により、破線Gに示すものとなることがある。この場合も、以下のステップS2〜S4により定残圧弁31は、規格値を持たし、かつ耐久性が向上する。
【0029】
コントローラ46が荷重印加手段を駆動し、ロッド441を矢印443と反対方向へ移動した後、流量検出手段45のリーク量測定により球状弁体33と弁座36との間の油密検査が行われる(S2)。この油密検査では、流体供給手段が検査流体入口通路421へ検査流体を供給する。検査流体は、オリフィス32から筒部321に流入する。球状弁体33と弁座36との間に微小隙間が存在すると、検査流体はこの微小隙間を通じて、内側通路30に流入する。この検査流体は、通孔28、収容空間411を経由し、検査流体出口通路416から流出する。この検査流体の流出量を流量検出センサ451が検出し、コントローラ46へ出力する。
【0030】
次に、コントローラ46は、流量検出センサ451の出力値から球状弁体33と弁座36との間のリーク量を検出し、このリーク量が規格値以内か否かを判定する(S3)。リーク量が規格値以内である場合(S3:YES)、油密検査合格品としてリリーフ弁体23が検査ケース41から取り出され、検査が終了する。
一方、リーク量が規格値を超えている場合(S3:NO)、コントローラは、押圧手段44を駆動し、第2押付加工を行う(S4)。この第2押付加工では、第1押付加工の押し付け荷重P1よりも大きい押し付け荷重P2が設定される。但し、押し付け荷重P2は、最適範囲の最大値PXよりも小さい荷重である。なお、第2押付加工の押し付け荷重P2は、最適範囲の最小値P1と最大値PXとの中間値よりも小さい荷重であることが好ましい。これにより、定残圧弁31を燃料供給系1に適用した後、定残圧弁31の耐久性を向上することができる。
【0031】
第2押付加工が行われた後、球状弁体33と弁座36との間の油密検査が再度行われる(S2)。リーク量が規格値内である場合(S3:YES)、検査が終了する。一方、リーク量が規格値を超えている場合(S3:NO)、第2押付加工が再度行われる(S4)。このとき、コントローラ46は、先の第2押付加工で設定した押し付け荷重P2よりも大きい押し付け荷重P3を設定する。但し、押し付け荷重P3は、最適範囲の最大値PXよりも小さい荷重である。押し付け荷重P3もまた、最小値P1と最大値PXとの中間値よりも小さい荷重であることが好ましい。
再度の第2押付加工が行われた後、球状弁体33と弁座36との間の油密検査が再度行われ、リーク量が規格値内である場合(S3:YES)、油密検査合格として検査が終了する。一方、コントローラ46は、第2押付加工を所定回数行ったものを油密検査不合格品とし、検査ケース41から取り出し、検査を終了する。また、第2押付加工の押し付け荷重を徐々に上げてゆき、その第2押付加工の押し付け荷重が一定の値以上となったとき検査を終了しても良い。
【0032】
本実施形態では、押付加工(S1、S4)と油密検査(S2)とを同一の検査装置40で行うことで、従来、押付加工装置と油密検査装置とを往復していた作業時間が短縮され、生産効率が向上する。したがって、定残圧弁31の製造コストを低減することができる。
また、検査装置40内で押付加工(S1、S4)を行うことが可能となるので、押付加工のみを行う押付加工装置を廃止し、定残圧弁31を製造する設備コストを低減することができる。
さらに、第1押付加工(S1)で球状弁体33と弁座36とのシール性が規格値を満たさない場合、第2押付加工(S1)でシール性が再調整されるので、定残圧弁31の歩留まりを上げることができる。
【0033】
(第2実施形態)
上述した第1実施形態の検査装置40は、球状弁体33と弁座36との押付加工を行う押付加工装置40として捉えることが可能である。この押付加工装置40を用いた定残圧弁31の製造方法を図8に示す。
先ず、リリーフ弁体23の内側通路30に定残圧弁31の球状弁体33が着座可能な弁座36を切削及び研磨加工等の機械加工により形成する(S10)。
次に、内側通路30に球状弁体33を収容する(S20)。
続いて、内側通路30にスプリング34を収容する(S30)。
次に、内側通路30の内壁にアジャスタパイプ35を圧入し、スプリング34の付勢力を調節する(S40)。
その後、リリーフ弁体23を押付加工装置40に設置する。このとき、第1支持体431及び第2支持体432によりリリーフ弁体23を支持するとともに、アジャスタパイプ35及びスプリング34の内側にロッド441を挿通し、ロッド441の一端と球状弁体33とを当接する(S50)。
続いて、荷重印加手段によりロッド441の他端に荷重を印加し、球状弁体33を弁座36に押圧する第1押付加工を行う(S60)。
上記ステップS60及びS70〜S90は、第1実施形態のステップS1〜S4と実質的に同一であるので説明を省略する。
【0034】
ここで、従来の押付加工装置に使用されていた押圧部材を図12に示す。
この押圧部材70は、ロッドの先端に半球面71が形成されている。従来の押付加工装置では、リリーフ弁体23の内側通路30に弁座36を形成した後、押圧部材70を内側通路30に挿通し、弁座36を押付加工していた。このため、一定の個数の定残圧弁の押付加工を行った後、ライフサイクルを終えた押圧部材70を交換していた。また、ライフサイクルの終了間近の押圧部材70を使用した押付加工は目標精度に到達することが困難になるおそれがあった。
【0035】
これに対し、本実施形態では、定残圧弁31は燃料供給系1に使用されるとき、定残圧弁31に実際に使用される球状弁体33をロッド441が押圧する。このため、従来の押圧部材70が不要になり、製造コストを低減することができる。
さらに、常に新しい球状弁体33により押付加工が行われるので、押付加工の加工精度が向上し、球状弁体33と弁座36とのシール性を高めることができる。
【0036】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態の検査装置40を図9に示し、この検査装置40が押付加工及び油密検査を行う定残圧弁31の要部拡大図を図10に示す。第1実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の検査装置40の第2支持体433はコイルスプリングであり、径方向に検査流体が流通可能である。
また、本実施形態の検査装置40が押付加工及び油密検査を行う定残圧弁31の弁体には、ニードル弁50が用いられている。
ニードル弁50は、大径筒部51、小径筒部52、及び円錐部53を有している。小径筒部52と円錐部53との接続部分にシール部54が形成される。
本実施形態では、加工上の公差により、シール部54は、弁座36の紙面下方の部分364と当接している。一方、シール部54と弁座36の紙面上方の部分363との間には、微小な隙間が形成されている。
検査装置40が押付加工を行うとき、荷重印加手段がロッド441に荷重を印加すると、ニードル弁50は破線Hに示すように移動し、弁座36の紙面下方の部分364が、破線Iに示すように、検査流体流入側に塑性変形する。これにより、ニードル弁50と弁座36とがなじみ、シール性が向上する。
【0037】
本実施形態では、検査装置40が押付加工及び油密検査を行う定残圧弁31にニードル弁50が使用されている。ニードル弁50のシール部54は、弁座36の円錐面363、364に当接している。このような形状であっても、検査装置40の荷重検出手段442が弁座6の円錐面363、364の塑性変形に必要とされる適切な荷重をロッド441に印加することで、ニードル弁50と弁座36とをなじませ、シール性を向上することができる。したがって、上述した第1、第2実施形態と同一の作用効果を奏することができる。
【0038】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態の検査装置が押付加工及び油密検査を行う定残圧弁の要部拡大図を図11に示す。
本実施形態の検査装置が押付加工及び油密検査を行う定残圧弁31のニードル弁60は、大径筒部61、小径筒部62、及び円錐部63を有している。本実施形態のニードル弁60は、円錐部63がシール部64となる。
ニードル弁60がこのような形状であっても、検査装置の荷重検出手段が弁座362の塑性変形に適切な荷重をロッド441に印加することで、ニードル弁50と弁座361、362とがなじみ、シール性を向上することができる。したがって、上述した第1〜第3実施形態と同一の作用効果を奏することができる。
【0039】
(他の実施形態)
上述した複数の実施形態では、リリーフ弁22と定残圧弁31とが一体で構成された圧力保持弁21の検査装置又は押付加工装置について説明した。これに対し、本発明は、リリーフ弁、定残圧弁が別体で構成された圧力保持弁、又は燃料供給系に用いられる上記以外の圧力保持弁に使用される検査装置又は押付加工装置であってもよい。
上述した複数の実施形態では、押付加工と油密検査とを交互に行った。これに対し、本発明は、押付加工と油密検査とを同時に行っても良い。つまり、押付加工で荷重印加手段がロッドを移動し、弁座と弁体とに荷重を印加すると同時に流量検出手段が油密検査を行うことで、作業時間を短縮することができる。また、各圧力保持弁に適した荷重を印加することができる。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の形態により実施することができる。
【符号の説明】
【0040】
22:リリーフ弁(圧力保持弁)、23:リリーフ弁体(通路部材)、31:定残圧弁(圧力保持弁)、33:球状弁体(弁体)、36:弁座、40:検査装置、43:支持体、44:押圧手段、45:流量検出手段、46:コントローラ(制御手段)、431:第1支持体(支持体)、432:第2支持体(支持体)、441:ロッド(押圧手段)、442:荷重検出手段(押圧手段)、451:流量検出センサ(流量検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃料供給系に設けられ、燃料を流通可能な内側通路を有する通路部材ならびに前記内側通路の内壁に設けられた弁座に着座及び離座可能な弁体を有し、前記弁座の上流側の燃圧を所定圧で保持する圧力保持弁の圧力保持性能を検査する検査装置であって、
前記通路部材を支持する支持体と、
前記弁体を前記弁座に押圧する押圧手段と、
前記弁座よりも上流側の前記内側通路に検査流体を供給し、前記弁座と前記弁体との間の検査流体のリーク量を検出する流量検出手段と、
前記流量検出手段の検出値が規格値を超えたとき、前記押圧手段を駆動し前記弁体を前記弁座に押圧する制御手段と、を備えることを特徴とする圧力保持弁の検査装置。
【請求項2】
前記圧力調整弁は、前記弁体を前記弁座側へ付勢する付勢手段と、前記付勢手段の前記弁座と反対側の前記内側通路に設けられ前記付勢手段の付勢力を調節するアジャスタパイプとをさらに有し、
前記押圧手段は、前記付勢手段及び前記アジャスタパイプを挿通し、一端が前記弁体に当接するロッドと、
前記ロッドの他端に荷重を印加し、前記弁体を前記弁座に押圧する荷重印加手段と、
前記ロッドに印加される荷重を検出する荷重検出手段と、を有することを特徴とする圧力保持弁の検査装置。
【請求項3】
内燃機関の燃料供給系に設けられ、燃料を流通可能な内側通路を有する通路部材ならびに前記内側通路の内壁に設けられた弁座に着座及び離座可能な弁体を有し、前記弁座の上流側の燃圧を所定圧で保持する圧力保持弁の圧力保持性能を検査する検査方法であって、
前記通路部材を支持する支持工程と、
前記弁体を前記弁座に押圧する第1押付加工工程と、
前記弁座よりも上流側の前記内側通路に検査流体を供給し、前記弁座と前記弁体との間の検査流体のリーク量を検出する油密検査工程と、
前記油密検査工程で検出された検出値が規格値を超えたとき、前記弁体を前記弁座側へ再度押圧する第2押付加工工程と、を含むことを特徴とする圧力保持弁の検査方法。
【請求項4】
燃料を流通可能な内側通路を有する通路部材、前記内側通路の内壁に設けられた弁座に着座及び離座可能な弁体、前記弁座を弁座側へ付勢する付勢手段、及び前記付勢手段の前記弁体と反対側の前記内側通路に設けられ付勢手段の付勢力を設定するアジャスタパイプを有する圧力保持弁の前記弁座と前記弁体とのシール性を高める押付加工装置であって、
前記通路部材を支持する支持体と、
前記付勢手段及び前記アジャスタパイプを挿通し、一端が前記弁体に当接するロッドと、
前記ロッドの他端に荷重を印加し、前記弁体を前記弁座に押圧する荷重印加手段と、
前記ロッドに印加される荷重を検出する荷重検出手段と、備えることを特徴とする押付加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−220195(P2011−220195A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89364(P2010−89364)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】