説明

圧力検出管の清掃装置

【課題】ボイラ火炉の運転中においても炉壁に設けた圧力検出管を安全かつ確実に清掃することができる圧力検出管の清掃装置を提供する。
【解決手段】圧力検出管3の内周面を清掃する棒状の清掃具10と、該清掃具10を抜差し可能に挿通して保持する球状の清掃具保持体11と、該清掃具保持体11を回動自在で且つ気密に支持する支持枠体20とから構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ火炉の炉壁に設けた圧力検出管を清掃する圧力検出管の清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所等に設置されたボイラ火炉1は、炉壁2に設けた圧力検出管3によって炉内の圧力を検出し、安全運転のための制御等に使用している。炉内には、重油や石炭などの燃料を燃焼した後に灰やクリンカ50等の生成物が生じ、この生成物が炉壁2や圧力検出管3内に付着すると正常な圧力検出が阻害される。
【0003】
従来、圧力検出管3内に付着した灰やクリンカ50を除去する場合には、ボイラ火炉1の運転を停止した後、図6に示すように、圧力検出管3の後端部の蓋を開けて棒状の清掃具51で灰やクリンカ50を突き崩して除去していた。また、圧力検出管に空気噴出ノズルを設け、圧縮空気を吹き付ける空気パージによって灰やクリンカを除去するようにした清掃装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平5−33918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、灰・クリンカが発生しやすい燃料や炉内圧力が外気圧より高い正圧のボイラ火炉では、灰やクリンカの付着による圧力検出管の閉塞が頻繁に起こり、ボイラ火炉の停止時だけでなく運転中にも圧力検出管を清掃する必要が生じる。特に、正圧のボイラ火炉では、運転中に圧力検出管を開放すると炉内の高温ガスが噴出して危険であるため、ボイラ火炉の運転中は空気パージのみによって圧力検出管の清掃を行っていた。
【0006】
一方、空気パージによる清掃のみでは、細長い圧力検出管の内周面に付着した灰やクリンカを確実に除去することができず、頻繁にボイラ火炉の運転を停止することができないために圧力検出管の閉塞が進み、正常な炉内圧力を検出できないのみならず、圧力検出管内に封じ込められた空気又はガスが熱により膨張し、圧力の誤検出をする恐れがあるという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、ボイラ火炉の運転中においても炉壁に設けた圧力検出管を安全かつ確実に清掃することができる圧力検出管の清掃装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、ボイラ火炉の炉壁に設けた圧力検出管を清掃する圧力検出管の清掃装置であって、前記圧力検出管の内周面を清掃する棒状の清掃具と、該清掃具を抜差し可能に挿通して保持する球状の清掃具保持体と、該清掃具保持体を回動自在で且つ気密に支持する支持枠体とからなる圧力検出管の清掃装置を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、前記清掃具保持体と前記支持枠体との間にフッ素系真空グリースを有する請求項1に記載の圧力検出管の清掃装置を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、前記支持枠体を前記圧力検出管に開閉弁を介して接続した請求項1又は2に記載の圧力検出管の清掃装置を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、前記圧力検出管にボイラ火炉内方向へ圧縮空気を供給する圧縮空気供給機構を備えた請求項1乃至3の何れかに記載の清掃装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る圧力検出管の清掃装置によれば、ボイラ火炉の炉壁に設けた圧力検出管を清掃する圧力検出管の清掃装置であって、前記圧力検出管の内周面を清掃する棒状の清掃具と、該清掃具を抜差し可能に挿通して保持する球状の清掃具保持体と、該清掃具保持体を回動自在で且つ気密に支持する支持枠体とからなる構成を有することにより、圧力検出管内を気密に維持した状態で清掃具を設けることができるから、ボイラ火炉の運転中においても炉内の高温ガスが噴出することなく安全に圧力検出管を清掃することができる。また、清掃具は回動自在な清掃具保持体に抜差し可能に保持されているから、圧力検出管の内周面に付着した灰やクリンカを突き崩して確実に除去することができる効果がある。
【0013】
また、本発明は、前記清掃具保持体と前記支持枠体との間にフッ素系真空グリースを有する請求項1に記載の構成により、清掃具保持体と支持枠体との潤滑性及び気密性を長期間維持することができる効果がある。
【0014】
また、本発明は、前記支持枠体を前記圧力検出管に開閉弁を介して接続した請求項1又は2に記載の構成を有することにより、圧力検出管の清掃時以外には清掃具を清掃具保持体から引き抜いて開閉弁を閉じることができ、圧力検出管を外気から確実に遮断することができる効果がある。
【0015】
また、本発明は、前記圧力検出管にボイラ火炉内方向へ圧縮空気を供給する圧縮空気供給機構を備えた請求項1乃至3の何れかに記載の構成を有することにより、圧力検出管からボイラ火炉内方向への空気の流れを作り、炉内圧力が外気圧より高い正圧の場合でも炉内の高温ガスが圧力検出管から噴出するのを防止することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態を図示する実施例に基づいて説明する。
本発明に係る圧力検出管の清掃装置は、圧力検出管3の内周面を清掃する棒状の清掃具10と、該清掃具10を抜差し可能に挿通して保持する球状の清掃具保持体11と、該清掃具保持体11を回動自在で且つ気密に支持する支持枠体20とから構成してある。
【実施例1】
【0017】
図1示す実施例において、1は火力発電所等に設置されたボイラ火炉である。ボイラ火炉1の炉壁2には、炉外から炉内に向けて圧力検出管3を下り勾配になるように設けてある。圧力検出管3の後端部近傍の上側には取付管4を設けてあり、圧力導管5を介して圧力検出器6を接続して炉内圧力を検出することができるようにしてある。7は制御装置であり、圧力検出器6よって検出された炉内圧力に基づいてボイラ火炉1の運転制御を行っている。
【0018】
図1及び図2に示すように、清掃具保持体11は、金属製又は合成樹脂製の球体からなり、該球体の中心を通る軸に沿って、棒状の清掃具10を抜差し可能に挿通して保持する保持孔12を設けてある。また、支持枠体20は、清掃具保持体11の中心を通る面で分割した分割ケース21,22から構成してある。分割ケース21,22には、清掃具保持体11を回動自在で且つ気密に支持する球面状の受面部23,24と、清掃具10を通す中空部25,26と、フランジ部28,29を設けてある。
【0019】
支持枠体20は、分割ケース21のフランジ部28と分割ケース22のフランジ部29を重ね合わせて締結具19で固定してある。分割ケース21,22の受面部23,24と清掃具保持体11の間には、微小の間隙を設けてあり、清掃具保持体11が回動しやすいように構成してある。また、分割ケース21にはテーパーネジ27を設けてあり、後述する開閉弁40に支持枠体20を螺着することができるようにしてある。
【0020】
図2に示すように、清掃具保持体11と支持枠体12の受面部23,24との間にはフッ素系真空グリース13を塗布してあり、支持枠体20が清掃具保持体11を気密に支持することができると共に、清掃具保持体11が滑らかに回動することができるようにしてある。フッ素系真空グリース13は、例えば、蒸気圧の低いPFPE(パーフルオロポリエーテル)を基油とし、これにフッ素系化合物であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を増稠剤として混合したものを使用することができる。
【0021】
この構成により、圧力検出管3の気密を維持して清掃具10を挿入することができ、ボイラ火炉1の運転中においても炉内の高温ガスが噴出することなく圧力検出管3を清掃することができる。
なお、清掃具保持体11の保持孔12と清掃棒10との間にフッ素系真空グリース13を塗布することも可能である。また、清掃具保持体11は、支持枠体12の受面部23,24と接触する部分のみ球状に形成してあればよく、保持孔12の入口側及び出口側の周囲を平面でカットした形状にすることも可能である。
【0022】
図1に示す実施例において、30は、圧力検出管3にボイラ火炉1内方向へ圧縮空気を供給する圧縮空気供給機構である。図3及び図4に示すように、圧縮空気供給機構30は、円筒形状の中空管31と、該中空管31の周囲に溶接して設けたドーナツ形状の空気供給管32とからなる。空気供給管32には空気供給口33を設けてあり、仕切弁37及びエアホース38を介してコンプレッサー39を接続してある。
【0023】
中空管31の両端部には、テーパーネジ35,36を設けてあり、テーパーネジ35により圧縮空気供給機構30を圧力検出管3の後端部に螺着してある。また、中空管31の側面の空気供給管32に接している部分には、外側から内側に向かってボイラ火炉1内方向へ傾斜した傾斜孔34を複数個設けてある。圧縮空気供給機構30は、空気供給口33から流入した圧縮空気が空気供給管32を通って傾斜孔34から中空管31に流れ込み、中空管31及び圧力検出管3内にボイラ火炉1内方向への空気の流れを発生させることができるように構成してある。
【0024】
図1に示す実施例において、40は開閉弁であり、中空管31のテーパーネジ36により圧縮空気供給機構30に螺着してある。また、開閉弁40の他方には、テーパーネジ27により支持枠体を接続することができるように構成してある。開閉弁40は、弁を開放して清掃具10を圧力検出管3内に挿入することができると共に、弁を閉止して圧力検出管3内を外気から遮断することができるようにしてある。
【0025】
次に、本発明に係る清掃装置を使用した圧力検出管3の清掃方法を説明する。
通常のボイラ火炉1の運転時には、図5に示すように、圧力検出管3の後端部に圧縮空気供給機構30と開閉弁40を取り付けてあり、開閉弁40と圧縮空気供給機構30の仕切弁37を閉止してある。
【0026】
ボイラ火炉1の運転中に圧力検出管3を清掃する場合には、コンプレッサー39を稼働させて圧縮空気供給機構30の仕切弁37を開け、圧力検出管3にボイラ火炉1内方向へ圧縮空気を供給して炉内の圧力を封じ込める。
開閉弁40に支持枠体12を取り付けて、清掃具保持体11の保持孔12に清掃棒10を挿入する。図1に示すように、開閉弁40を開き、清掃棒10を圧力検出管3内まで挿入し、清掃具保持体11を回動させて圧力検出管3の内周面を清掃することができる。
【0027】
圧力検出管3の清掃終了後は、清掃棒10を圧力検出管3内から引き抜き、開閉弁40を閉止して、開閉弁40から支持枠体12を取り外す。また、圧縮空気供給機構30の仕切弁37を閉止して、コンプレッサー39を停止させる。なお、エアホース38及びコンプレッサー39を圧縮空気供給機構30から取り外しておくことも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る圧力検出管の清掃装置の一実施例を示す一部縦断正面図。
【図2】その一実施例の要部を示す一部縦断正面図。
【図3】その一実施例の別の要部を示す断面図。
【図4】その要部を示すA−A線断面図。
【図5】その一実施例の使用状態を示す一部縦断正面図。
【図6】従来の清掃方法を示す一部縦断正面図。
【符号の説明】
【0029】
1 ボイラ火炉
2 炉壁
3 圧力検出管
4 取付管
5 圧力導管
6 圧力検出器
7 制御装置
10 清掃具
11 清掃具保持体
12 保持孔
13 フッ素系真空グリース
19 締結具
20 支持枠体
21,22 分割ケース
23,24 受面部
25,26 中空部
27 テーパーネジ
28,29 フランジ部
30 圧縮空気供給機構
31 中空管
32 空気供給管
33 空気供給口
34 傾斜孔
35,36 テーパーネジ
37 仕切弁
38 エアホース
39 コンプレッサー
40 開閉弁
50 クリンカ
51 清掃具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラ火炉の炉壁に設けた圧力検出管を清掃する圧力検出管の清掃装置であって、前記圧力検出管の内周面を清掃する棒状の清掃具と、該清掃具を抜差し可能に挿通して保持する球状の清掃具保持体と、該清掃具保持体を回動自在で且つ気密に支持する支持枠体とからなる圧力検出管の清掃装置。
【請求項2】
前記清掃具保持体と前記支持枠体との間にフッ素系真空グリースを有する請求項1に記載の圧力検出管の清掃装置。
【請求項3】
前記支持枠体を前記圧力検出管に開閉弁を介して接続した請求項1又は2に記載の圧力検出管の清掃装置。
【請求項4】
前記圧力検出管にボイラ火炉内方向へ圧縮空気を供給する圧縮空気供給機構を備えた請求項1乃至3の何れかに記載の清掃装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−327689(P2007−327689A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158454(P2006−158454)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】