説明

圧力測定装置

【課題】姿勢が変化しても、オフセット値を自動補正することで、姿勢に影響しない圧力測定装置を実現する。
【解決手段】中央部にセンターダイヤフラムが形成された本体と、該本体の両側面にすり鉢状の凹部が形成され該凹部を覆うと共に周縁が固定された接液ダイヤフラムと、前記本体内または本体の近傍に形成された圧力検出部と、前記凹部と圧力検出部を連結して形成された導圧路と、前記凹部および導圧路に封入された封入液からなる圧力測定装置において、前記本体内または本体の近傍に該本体の傾きを検出する傾斜検出手段を設け、前記圧力検出部と傾斜検出手段の出力に基づいて前記圧力検出部の出力を補正する補正演算手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接液ダイヤフラムを介して封液が封入された圧力測定装置に関し、装置の姿勢に基づく測定誤差の改善を図った圧力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3はハンディ及びポータブルのマノメータ・圧力キャリブレータなどに用いられる差圧測定装置10(振動式センサ)の要部概略断面図である。
図3において、1はシリコンセンサからなる検出部、2は保護部であり、これらは導圧路3a,3bを介して連結されている。検出部1は測定すべき差圧を電気信号に変換して出力し、保護部2は導入圧力に対して検出部1を保護する。この検出部1の構成は周知のとおりであるから説明は省略する。
【0003】
保護部2は主として、ボディ4a,4b、センターダイヤフラム5、接液ダイヤフラム6a,6bで構成されており、センターダイヤフラム5を挟んで、左右にそれぞれボディ4a,4bが配設され、それぞれの外周ないし周縁部は互いに接合されている。
【0004】
また、ボディ4a,4bには、それぞれ同じ空間7a,7bおよび導圧路3a,3bが形成されている。空間7bはボディ4bの左側面にこれと同軸のすり鉢状に形成され、導圧路3bはボディ4bの上部付近を貫通するとともに検出部1の図示してない導圧空間に連通している。
【0005】
ボディ4bの右側面は断面が波形に形成され、この波形とほぼ同じ形状の接液ダイヤフラム6bが、ボディ4bの右側面との間に空間8bをもってその周縁で固着される。
以上のことは、左側のボディ4aについても実質的に同様である。
そして、各接液ダイヤフラム6a,6bと接する空間7a、7b導圧路3a,3bからなる空間には、それぞれ圧力伝達用流体としてのシリコンオイル(封入液)が充填される。
【0006】
上述の構成において、測定すべき圧力がそれぞれ各接液ダイヤフラム6a,6bで受圧されると、その各導入圧力は、導圧路3a,3bを経て検出部1に伝達される。検出部1では、各導入圧力に基づく差圧が周知の検出手段によって電気信号に変換され出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−72068号公報
【特許文献2】特開昭62−207924号公報
【特許文献3】特開平8−219919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図3に示す従来の差圧測定装置においては、検出部に差圧を導入するために
接液ダイヤフラムで受けた圧力を封入液を介して伝えている。そのため、測定装置の姿勢が変わると検出部1の受圧部(図示省略)に封入液の質量による圧力が変化する構造となっている。
【0009】
図4(a)は図3に示すような差圧測定装置でフルスパンが130kPaのものを用い、例えば保護部1を構成するセンターダイヤフラム5を重力に対して垂直にした状態から左右に90度傾けた場合の出力変化を示すものである。封入液の質量がダイヤフラムに加わるため、ゼロオフセットを含んだ状態で誤差が変化している。
【0010】
即ち、+90度側では0.11kPaの誤差が発生し、−90度側では0.16kPa
程度の誤差となっている。この例ではフルスパンの130kPaに対する誤差は、
(0.11+0.16)/130=0.0020769となり、プラス・マイナスそれぞれの側の変化は0.1%程度となっている。
【0011】
図4(b)のイで示す線分はオフセットを含んだ状態で装置を左右に90度傾けた場合の出力変化を示すグラフ、ロで示す線分はオフセットを補正した状態を示すものである。図に示すように、ロで示す線分も姿勢に基づく誤差を含んで出力される。
【0012】
従って、姿勢を固定して使用する場合は、ゼロオフセット値が固定されるため、オフセットを減算して使用することが可能である。しかし、可搬形の機器では、使用状態によって姿勢が変化するため、ゼロオフセット補正後にオフセットの変化と測定値の区別ができない。という課題があった。
【0013】
従って本発明は、振動式センサを使用した場合、姿勢が変化しても、オフセット値を自動補正することで、姿勢に影響しない圧力測定装置を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、請求項1の圧力測定装置においては、中央部にセンターダイヤフラムが形成された本体と、該本体の両側面にすり鉢状の凹部が形成され該凹部を覆うと共に周縁が固定された接液ダイヤフラムと、前記本体内または本体の近傍に形成された圧力検出部と、前記凹部と圧力検出部を連結して形成された導圧路と、前記凹部および導圧路に封入された封入液からなる圧力測定装置において、前記本体内または本体の近傍に該本体の傾きを検出する傾斜検出手段を設け、前記圧力検出部と傾斜検出手段の出力に基づいて前記圧力検出部の出力を補正する補正演算手段を設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項2においては、請求項1に記載の圧力測定装置において、
前記センターダイヤフラムの平面が重力に対して直角に傾いた状態を誤差の最大値とし、センターダイヤフラムの平面が重力に対して任意角度θに傾斜した状態の前記圧力検出部出力を前記最大値に任意角度θを乗算した値で補正値とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したことから明らかなように本発明の請求項1、2によれば、圧力検出部と傾斜検出手段の出力に基づいて前記圧力検出部の出力を補正する補正演算手段を設けたので傾斜による誤差のない圧力測定装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の圧力測定装置の実施形態の一例を示すブロック構成図(a)、補正前のゼロシフトが残った状態の線分イおよび補正後の線分ロを示す図(b)、差圧検出器の出力を±90度で補正した場合の出力誤差を示す図である。
【図2】圧力測定装置の重力に対する傾きと圧力測定装置の出力誤差の関係を示す図である。
【図3】差圧測定装置の一般的な構成を示す断面図である。
【図4】傾斜補正とオフセット補正のない圧力測定装置の出力を示す図(a)及びオフセット補正を行った圧力測定装置の出力を示す図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
はじめに図2を用いて圧力測定装置の重力に対する傾きと圧力測定装置の出力誤差の関係について説明する。
図2において、5は図3に示すセンターダイヤフラムであり、重力の方向Aに対してθ度傾いた状態を示している。Bは装置の姿勢に基づいて生じる測定誤差を示すもので、
「封入液の質量×sinθに比例した力」として表すことができる。
【0019】
図1(a)において、10は圧力測定装置(振動式センサ)であり、例えば図3に示す圧力測定装置が用いられる。11は傾斜センサである。この傾斜センサ11はセンターダイヤフラムの傾きに追従し、重力に対して0〜90度の傾きを検出可能とするために圧力測定装置の本体内または本体の近傍に配置されている。12は演算手段で圧力測定装置10と傾斜検出手段11の出力に基づいて圧力検出部の出力を補正して出力する。13は補正された圧力を表示する圧力表示手段である。
【0020】
即ち、本発明においては、傾斜センサの傾きが0、+90度、−90度のときの圧力測定装置のオフセット値OFF0、OFF+90、OFF−90を記録する。
そして、θ<0の場合 補正値=(測定値−OFF0)−OFF+90×sinθ
θ>0の場合 補正値=(測定値−OFF0)+ OFF−90×sinθ
を演算手段12により演算する。
【0021】
図1(b)は補正前のゼロシフトが残った状態の線分イおよび補正後の線分ロを示すもので誤差はほぼ0となっている状態を示している。
【0022】
図1(c)は本発明者らが(株)横河電機製 高精度圧力センサモジュール 型式MU101を用いて実験を行った結果を示すグラフである。グラフは差圧検出器の出力を±90度で補正した場合の出力誤差を示すもので、線分ハは0〜+90度〜−90度に傾けた場合のヒステリシスを含む誤差を示している。
【0023】
図によれば、誤差は±0.002kPa以内となっており、傾斜によるゼロの変化が0.1%→0.002%に減少させることができた。
【0024】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。本実施例では差圧検出器について説明したが、空間に封液を封入して圧力を測定するものであれば、単なる圧力計であっても良い。
【0025】
また、本実施例では誤差補正手段として傾斜センサを用いたが、デュアルレンジの圧力センサを用い、一方の圧力センサで圧力を測定し未使用のセンサを、傾斜によるオフセット補償用に利用するように構成しても良い。
従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【符号の説明】
【0026】
1 検出部(振動式シリコンセンサ)
2 保護部
3 導圧路
4 ボディ
5 センターダイヤアラム
6 接液ダイヤアラム
7、8 空間
10 振動式センサ
11 傾斜センサ
12 演算手段
13 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部にセンターダイヤフラムが形成された本体と、該本体の両側面にすり鉢状の凹部が形成され該凹部を覆うと共に周縁が固定された接液ダイヤフラムと、前記本体内または本体の近傍に形成された圧力検出部と、前記凹部と圧力検出部を連結して形成された導圧路と、前記凹部および導圧路に封入された封入液からなる圧力測定装置において、前記本体内または本体の近傍に該本体の傾きを検出する傾斜検出手段を設け、前記圧力検出部と傾斜検出手段の出力に基づいて前記圧力検出部の出力を補正する補正演算手段を設けたことを特徴とする圧力測定装置。
【請求項2】
前記センターダイヤフラムの平面が重力に対して直角に傾いた状態を誤差の最大値とし、センターダイヤフラムの平面が重力に対して任意角度θに傾斜した状態の前記圧力検出部出力を前記最大値に任意角度θを乗算した値で補正値とすることを特徴とする請求項1に記載の圧力測定装置。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−247252(P2012−247252A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118029(P2011−118029)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【出願人】(596157780)横河メータ&インスツルメンツ株式会社 (43)
【上記1名の代理人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
【Fターム(参考)】