説明

圧力測定装置

【課題】低コストで利便性の高い異物進入防止機構が組み込まれた圧力測定装置を実現すること。
【解決手段】圧力測定部に連通するように設けられた大気開放口を有し、この大気開放口には異物進入防止機構としてフィルタが挿入固定される圧力測定装置において、
前記フィルタの端部は六角形部として形成されてその内部には軸方向に沿ってその端部が前記六角形部の端面近傍に到達するように止まり穴が形成され、前記六角形部の端面から前記止まり穴に連通するように複数の貫通孔が形成されたことを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力測定装置に関し、詳しくは、圧力測定部に連通するように設けられた大気開放口に異物の進入を防止するために着脱される異物進入防止機構の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力測定装置の一種に、圧力測定部に連通するように大気開放口が設けられ、その大気開放口に虫などの異物の進入を防止するために、異物進入防止機構が取り付けられたものがある。
【0003】
図8は従来のこのような圧力測定装置の一例を示す構成説明図であり、(A)はその正面図、(B)は側面図である。図8において、下部には被測定圧力が入力される受圧部10が設けられ、受圧部10の上部には受圧部10で測定された圧力信号を電気信号に変換して外部に伝送する伝送器20が設けられている。
【0004】
受圧部10は、プロセス流体の被測定圧力が入力される第1のフランジ11と、基準圧力として大気圧が入力される第2のフランジ12と、これら被測定圧力と大気圧との差圧をセンサで検出して伝送部20に出力する圧力測定部を構成する圧力測定カプセルが組み込まれた本体部13とが、ボルト14とナット15により固定されている。
【0005】
第1のフランジ11には圧力測定部に連通するように圧力導入口11aが設けられ、第2のフランジ12には圧力測定部に連通するように大気開放口12aが設けられている。
【0006】
大気開放口12aには、第2のフランジ12内部に虫などの異物が進入するのを防止する異物進入防止機構として、図9に示すようなフィルタ30が取り付けられている。
【0007】
図9において、(A)は裏面図、(B)は部分断面図、(C)は表面図である。フィルタ30は、真鍮やステンレス鋼などの筒状部31および網部32で構成されている。筒状部31の内面は網部32よりも小さい大きさの六角穴31aとして形成され、外周にはねじ溝(雄ねじ)31bが形成されている。筒状部31の裏面となる一端近傍の内部には、網部32が溶接や圧入またはカシメ加工などにより取り付け固定されている。
【0008】
図10は、図9のように構成されるフィルタ30を第2のフランジ12に取り付ける手順の説明図である。フィルタ30は、網部30が大気開放口12aの奥行き方向に位置するように、六角レンチなどの工具を使用して筒状部31の外周に形成されているねじ溝31bを第2のフランジ12の大気開放口12aの内面に形成されているねじ溝(雌ねじ)に螺合させて挿入固定される。
【0009】
これにより、基準圧力となる大気圧は第2のフランジ12に設けられている大気開放口12aからフィルタ30を通り、本体部13に組み込まれている圧力測定カプセルに導入されることになる。
【0010】
特許文献1には、圧力伝送器に大気圧を導入する基準圧力導入口に、フィルタが組み込まれている異物進入防止装置を差し込む技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−331252
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、このような従来の構成によれば、異物進入防止機構として、筒状部31の端部近傍内部に網32が溶接・圧入などで固定されたフィルタ30を用いているために、構造が複雑になり、コストが高くなるという問題がある。
【0013】
また、フィルタ30を構成する筒状部31の端部の内面には六角穴31aが形成され外周にはねじ溝31bが形成された構造になっていることから、フィルタ30の着脱にあたっては六角穴31aに嵌め合う六角レンチなどの特殊工具が必要である。
【0014】
また、このような圧力伝送器を屋外のプラント現場などに設置して長期間にわたって使用していると、六角穴31aに虫が巣を作ったりごみや砂礫が詰まってしまい、大気と導通しなくなるおそれもある。
【0015】
さらに、フィルタ30に網32を用いているため、材質が限られる。もし、高Ni鋼などで製作すると、さらに高価になってしまう。
【0016】
本発明は、これらの課題を解決するものであり、その目的は、低コストで利便性の高い異物進入防止機構が組み込まれた圧力測定装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
圧力測定部に連通するように設けられた大気開放口を有し、この大気開放口には異物進入防止機構としてフィルタが挿入固定される圧力測定装置において、
前記フィルタの端部は六角形部として形成されてその内部には軸方向に沿ってその端部が前記六角形部の端面近傍に到達するように止まり穴が形成され、前記六角形部の端面から前記止まり穴に連通するように複数の貫通孔が形成されたことを特徴とする。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1記載の圧力測定装置において、
前記複数の貫通孔の口径は、虫が巣を作れない大きさであることを特徴する。
【0019】
請求項3の発明は、請求項2に記載の圧力測定装置において、
前記複数の貫通孔の口径は、1mm程度であることを特徴とする。
【0020】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の圧力測定装置において、
前記フィルタは、前記大気開放口に螺合させて挿入固定されることを特徴とする。
【0021】
請求項5の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の圧力測定装置において、
前記フィルタは、前記大気開放口にガスケットを介して嵌め合わせ挿入固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
これらにより、低コストで利便性の高い異物進入防止機構が組み込まれた圧力測定装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に基づく圧力測定装置の一実施例を示す構成説明図である。
【図2】本発明の異物進入防止機構として用いるフィルタの具体例を示す構成説明図である。
【図3】本発明のフィルタ40を第2のフランジ12に取り付ける手順の説明図である。
【図4】本発明のフィルタ40に設けられている全ての貫通孔44が水滴の付着による水膜により塞がれた状態を示している。
【図5】本発明のフィルタ40をガスケット45を介して大気開放口12aに嵌め合わせ挿入固定する構造の説明図である。
【図6】本発明のフィルタ40の他の実施例を示す構成説明図である。
【図7】本発明に基づく圧力測定装置の他の実施例を示す構成説明図である。
【図8】従来の圧力測定装置の一例を示す構成説明図である。
【図9】従来の異物進入防止機構として用いられるフィルタの一例を示す構成説明図である。
【図10】図9のフィルタ30を第2のフランジ12に取り付ける手順の説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示す構成説明図であり、図8と共通する部分には同一の符号を付けている。図1において、大気開放口12aには、第2のフランジ12内部に虫などの異物が進入するのを防止する異物進入防止機構として、図2に示すような構造のフィルタ40が、図3に示すように大気開放口12aに螺合させて挿入固定される。
【0025】
図2において、フィルタ40の一端は中上部41として形成されていて、その外周には大気開放口12aの内面のねじ溝に螺合するねじ溝41aが設けられている。フィルタ40の他端は一般的な工具であるスパナ、ペンチなどで容易に組み付けられるようにナットと同様な六角形部42として形成されている。
【0026】
柱状部41の端面から軸方向に沿って止まり穴43が形成されていて、その端部43aは六角形部42の端面近傍に到達している。そして、六角形部42の端面から止まり穴43の端部43aに連通するように、複数の貫通孔44が形成されている。
【0027】
フィルタ40は、たとえばステンレス鋼を切削加工することにより、所定の形状に形成される。止まり穴43および複数の貫通孔44は、たとえばドリル加工で所定の大きさに形成される。
【0028】
具体的には、止まり穴43の口径は複数(本実施例では中心1個と周囲に等角度間隔で6個の合計7個)の貫通孔44が形成できる大きさで形成される。これら貫通孔44は、虫が巣を作れなくて水膜による出力シフトも小さくなる直径1mm程度の大きさに形成される。止まり穴43の深さは、これら貫通孔44が短時間で精度良く加工できるように設定される。
【0029】
このように構成されるフィルタ40をフランジ12に対して着脱するのにあたっては、図3の手順図に示すように、一般的なナットと同様な六角形部42を一般的な工具であるスパナ、ペンチなどで挟んで回転させる。
【0030】
貫通孔44を直径1mm程度の大きさにする理由について説明する。図4は、全ての貫通孔44が水滴の付着による水膜により塞がれた状態を示している。ここで、貫通孔44の半径をr、水膜にかかる外圧をP、外圧Pが水膜を押す力をF、水の表面張力をSとする。水膜が穴を塞いでいる状態とは、外圧Pが水膜を押す力Fと水の表面張力Sが、この水膜を維持しようとする力がつり合っている状態であるので、
πr2×P=2πrS
であり、一般的に知られた関係式P=2S/rが成り立つ。
【0031】
本実施例の場合、r=0.5mmであり、一般的な水の表面張力Sは7.3×10-5N/mmであるから、外圧Pは、
P=2.92×10-4N/mm2
=0.292kPa
となる。
【0032】
この値は、たとえば、直径1mmの貫通孔44が水膜で塞がれた場合に、フランジ12内部の圧力が上昇したと仮定すると、この内圧上昇は圧力伝送器のゼロシフト出力値となる。しかしながら、このゼロシフト出力値としては、一般的な圧力測定レンジの1MPaに対して、0.0292%と非常に小さく無視できる値である。なお、ゼロシフト出力は複数個加工された貫通孔44が全て塞がれた場合にのみ発生する現象である。
【0033】
このように構成されるフィルタ40は、従来のように筒状部31の端部近傍内部に網32を溶接・圧入などで固定する構造ではなく、機械的な加工のみで製作できるので、構造が複雑になることはなく、コストを安くできる。
【0034】
フィルタ40の着脱にあたっては、一般的なナットと同様な六角形部42を一般的な工具であるスパナ、ペンチなどで挟んで回転させればよく、従来のフィルタを着脱する場合のような特殊な工具は不要になる。
【0035】
そして、従来の構造のような六角穴の凹み部分がないため、虫が巣を作ることを心配しなくてもよく、長期にわたって安定した圧力測定動作が得られる。
【0036】
なお、上記実施例では、貫通孔44の径を1mm程度としたが、出力シフトの影響を考慮しながらより小さい径にすることもできる。
【0037】
また、上記実施例では、貫通孔44の数を7個としたが、大気開放の機能を失わない範囲で増減してもよい。
【0038】
また、フィルタ40の材質について、上記実施例ではステンレス鋼の例を説明したが、高Ni鋼、モネル、チタンなどの特殊金属で製作してもよいし、用途によっては塩ビ、プラスチック、テフロン(登録商標)などの非金属で製作してもよい。
【0039】
また、上記実施例では、フィルタ40を、圧力測定装置の大気開放口12aに螺合させて挿入固定する例を示しているが、図5に示すようにOリングなどのガスケット45を介して大気開放口12aに嵌め合わせ挿入固定する構造であってもよい。
【0040】
また、上記実施例では、フランジ12側の大気開放口12aの内面に雌ねじのねじ溝を形成し、フィルタ40の外周に雄ねじのねじ溝41aを形成する例を説明したが、図6に示すように、フランジ12の大気開放口12aを筒状部12bとして突出させてその筒状部12bの外周に雄ねじのねじ溝12cを形成し、フィルタ40の柱状部41をなくして六角形部42の止まり穴43の内面に雌ねじのねじ溝43bを形成する逆の関係であってもよい。
【0041】
また、貫通孔44は、ドリル加工に限るものではなく、放電加工などの手法も適用可能である。
【0042】
また、上記実施例では、フィルタ40を圧力測定装置の側面に取り付ける例について説明したが、大気開放が可能な位置であればたとえば図7に示すように正面に取り付けてもよい。
【0043】
以上説明したように、本発明によれば、低コストで利便性の高い異物進入防止機構が組み込まれた圧力測定装置を実現できる。
【符号の説明】
【0044】
10 受圧部
11 第1のフランジ
12 第2のフランジ
12a 大気開放口
20 伝送器
40 フィルタ
41 柱状部
41a ねじ溝
42 六角形部
43 止まり穴
43a 端部
44 貫通孔
45 ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力測定部に連通するように設けられた大気開放口を有し、この大気開放口には異物進入防止機構としてフィルタが挿入固定される圧力測定装置において、
前記フィルタの端部は六角形部として形成されてその内部には軸方向に沿ってその端部が前記六角形部の端面近傍に到達するように止まり穴が形成され、前記六角形部の端面から前記止まり穴に連通するように複数の貫通孔が形成されたことを特徴とする圧力測定装置。
【請求項2】
前記複数の貫通孔の口径は、虫が巣を作れない大きさであることを特徴する請求項1記載の圧力測定装置。
【請求項3】
前記複数の貫通孔の口径は、1mm程度であることを特徴とする請求項2に記載の圧力測定装置。
【請求項4】
前記フィルタは、前記大気開放口に螺合させて挿入固定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の圧力測定装置。
【請求項5】
前記フィルタは、前記大気開放口にガスケットを介して嵌め合わせ挿入固定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の圧力測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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