説明

圧延ロールの表面撮影装置及びその制御方法

【課題】圧延ロールの使用限界を検査するための圧延ロールの表面撮影装置において、その装置構成を簡素化できるようにするとともに、装置のメンテナンス性を向上できるようにする。
【解決手段】水を供給する水供給手段10と、水供給手段10から供給された水を鋼板を圧延するために用いる圧延ロール200の表面に吐出し、その先端部と圧延ロール200の表面との間に水柱60を形成する水柱形成ノズル30と、水柱60を通して圧延ロール200の表面を撮影する撮影手段20とを有し、水柱形成ノズル30に、水供給手段10から供給される水の水量が多くなるに従って水柱形成ノズル30の先端部を圧延ロール200の表面に接近させ、水供給手段10から供給される水の水量が少なくなるに従って水柱形成ノズル30の先端部を圧延ロール200の表面から後退させる可変機構を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板を圧延するために用いる圧延ロールの表面撮影装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼板の熱間圧延機において、圧延ロールは、圧延によって摩耗したりヒートクラックが発生したりする。このため、圧延ロールが使用限界に達するとロールの交換が必要となる。一般に、この圧延ロールの交換は、圧延ロールの摩耗によるロールプロフィルの変形や、ヒートクラックによるロール表面の肌荒れが限界に達するまでの周期を経験的に予測して行われている。しかしながら、圧延ロールの摩耗やロールプロフィルの変形は使用状況によって極端に異なる場合があり、最適なタイミングで圧延ロールの交換を行うのは困難であった。
【0003】
このような不都合を解消するために、近年、この圧延ロールの使用限界を圧延ロールの表面を撮影することによって検査する検査装置が案出されている(例えば、特許文献1参照)。この検査装置は、圧延ロールに対してノズルから水を供給し、圧延ロールとノズルとの間に水柱を形成して、形成した水柱を通してカメラで撮影画像を撮影するというものである。
【0004】
【特許文献1】特開平5−10888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の検査装置では、圧延ロールとノズルとの間に水柱を形成するに際して、まず、移動装置(特許文献1の図5の「4」の構成)を駆動してノズル本体(特許文献1の図5の「31」の構成)の先端部を圧延ロール表面に当接し、このノズル本体をコイルバネ(特許文献1の図5の「32」の構成)の付勢力に抗して少し後退する位置に配置した後に、ノズルに加圧水を供給して、圧延ロールとノズルとの間に水柱を形成している。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の検査装置では、ノズル本体を前向きに付勢するコイルバネを具備しているため、例えば、加圧水の供給を止めて圧延ロールの交換や研磨などのメンテナンスを行う際には、ノズル本体の先端部が圧延ロールの表面に最も接近した位置に配置されることになり、ノズル本体の先端部と圧延ロールとが衝突してしまうという問題が発生する。
【0007】
これを回避するために、特許文献1に記載の検査装置では、例えば、上述した移動装置を駆動させてノズル本体の先端部を圧延ロールから退避させることになる。すなわち、特許文献1に記載の検査装置では、ノズル本体の先端部の位置決めをコイルバネのみならず別途に設けられた移動装置を用いて行っている。このため、装置が大規模となり、狭い圧延スタンド内においては、設置場所の制約を受けるという問題があった。また、圧延スタンドの環境は、粉塵や振動が激しいために、別途に設けられた移動装置の故障を招きやすく、そのメンテナンスが非常に面倒であるという問題もあった。
【0008】
本発明は上述の問題点にかんがみてなされたものであり、圧延ロールの使用限界を検査するための圧延ロールの表面撮影装置において、その装置構成を簡素化できるようにするとともに、装置のメンテナンス性を向上できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の圧延ロールの表面撮影装置は、水柱形成用水を供給する水供給手段と、前記水供給手段から供給された水柱形成用水を鋼板を圧延するために用いる圧延ロールの表面に吐出し、その先端部と前記圧延ロールとの間に水柱を形成する水柱形成ノズルと、前記水柱形成ノズルにより形成された水柱を通して前記圧延ロールの表面を撮影する撮影手段とを有し、前記水柱形成ノズルには、前記水供給手段から供給される水柱形成用水の水量が多くなるに従って前記水柱形成ノズルの先端部を前記圧延ロールの表面に接近させ、前記水供給手段から供給される水柱形成用水の水量が少なくなるに従って前記水柱形成ノズルの先端部を前記圧延ロールの表面から後退させる可変機構が設けられている。
【0010】
本発明の圧延ロールの表面撮影装置における他の態様は、前記水柱形成ノズルは、その先端部が後端部よりも高く、上向きに傾斜又は鉛直に設置され、且つ、前記可変機構は、重力及び前記水柱形成ノズル内の水流により付勢される。
【0011】
また、本発明の圧延ロールの表面撮影装置におけるその他の態様は、前記可変機構は、前記水柱形成ノズルの先端部と前記圧延ロールの表面とを離間させるように付勢するバネで構成されている。
【0012】
本発明の圧延ロールの表面撮影装置の制御方法は、水柱形成用水を供給する水供給手段と、前記水供給手段から供給された水柱形成用水を鋼板を圧延するために用いる圧延ロールの表面に吐出し、その先端部と前記圧延ロールとの間に水柱を形成する水柱形成ノズルと、前記水柱形成ノズルにより形成された水柱を通して前記圧延ロールの表面を撮影する撮影手段とを有し、前記水柱形成ノズルには、当該水柱形成ノズルの先端部と前記圧延ロールの表面との距離を可変する可変機構が設けられている圧延ロールの表面撮影装置における制御方法であって、前記水供給手段から供給される水柱形成用水の水量に応じて前記可変機構による前記距離の可変を制御し、前記水供給手段から供給される水柱形成用水の水量が多くなるに従って前記水柱形成ノズルの先端部を前記圧延ロールの表面に接近させ、前記水供給手段から供給される水柱形成用水の水量が少なくなるに従って前記水柱形成ノズルの先端部を前記圧延ロールの表面から後退させる。
【0013】
本発明の圧延ロールの表面撮影装置の制御方法における他の態様は、前記水柱形成ノズルは、その先端部が後端部よりも高く、上向きに傾斜又は鉛直に設置され、且つ、前記可変機構は、重力及び前記水柱形成ノズル内の水流により付勢される。
【0014】
また、本発明の圧延ロールの表面撮影装置の制御方法におけるその他の態様は、前記可変機構は、前記水柱形成ノズルの先端部と前記圧延ロールの表面とを離間させるように付勢するバネで構成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水供給手段から供給される水柱形成用水の水量が多くなるに従って水柱形成ノズルの先端部を圧延ロールの表面に接近させ、水供給手段から供給される水柱形成用水の水量が少なくなるに従って水柱形成ノズルの先端部を圧延ロールの表面から後退させる可変機構を設けるようにしたので、例えば、水柱形成用水の供給を止めて圧延ロールの交換や研磨などのメンテナンスを行う際に、水柱形成ノズルを圧延ロールの表面から離間させた位置に退避させることができる。これにより、水柱形成ノズルを移動させるための移動装置を別途設ける必要がなくなり、装置構成を簡素化することができるとともに、装置のメンテナンス性を向上することができる。
【0016】
また、前記水柱形成ノズルの先端部の位置を水平方向より上向きに傾斜して設置するようにしたので、水柱形成ノズルの先端部にかかる重力と、水供給手段から供給された水柱形成用水の水量(あるいは水圧)との関係のみで水柱形成ノズルの先端部の位置を、簡便な可変機構で決定することができる。
【0017】
また、前記可変機構を、水柱形成ノズルの先端部と圧延ロールの表面とを離間させるように付勢するバネで構成するようにしたので、前記水柱形成ノズルの先端部の向きに関わらず、すなわち、前記水柱形成ノズルの先端部が水平方向、または、水平方向より下向きに傾斜して設置されていても、当該バネと、水供給手段から供給された水柱形成用水の水量(あるいは水圧)との関係のみで水柱形成ノズルの先端部の位置を決定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係わる圧延ロールの表面撮影装置の概略構成を示した図である。
【0020】
図1の圧延ロールの表面撮影装置100において、10は、水柱形成用水を供給する水供給手段である。この水供給手段10は、水柱形成用水の供給源となる水供給部11と、水供給部11から供給される水柱形成用水の水量を調整する水量調整弁12と、水量調整弁で調整された水柱形成用水の水量を計測する水量計13とを備えて構成されている。
【0021】
図1の圧延ロールの表面撮影装置100において、30は、水供給手段10から供給された水柱形成用水を、鋼板を圧延するために用いる圧延ロール200の表面に吐出し、その先端と圧延ロール200の表面との間に水柱60を形成する水柱形成ノズルである。
【0022】
水柱形成ノズル30は、カメラボックス21に固定されノズル基部34と、前記水供給手段から供給される水柱形成用水によって前方に押されて可動するノズル先端部35とを備えて構成されている。さらに、ノズル基部34は、水供給手段10から供給された水柱形成用水を注入するための水注入口31を備えている。また、ノズル先端部35は、ストッパー33を備えている。
【0023】
ストッパー33は、ノズル先端部35が圧延ロール200の表面から最も後退した場合でも、ノズル先端部35の後端が、ノズル注入口31より後方にいかないよう、すなわち、ノズル先端部35が最も後退した場合でも、ノズル注入口31より注入される水柱形成用水が、ノズル先端部35の後端側に供給されるように、突き当て部となるものである。
【0024】
なお、ストッパー33は、上記機能を果たすものであれば、必ずしもノズル先端部35についている必要はなく、例えば、ノズル基部34についていて、ノズル先端部35を一定位置以上、後退させないようにするものであっても良い。
【0025】
図1の圧延ロールの表面撮影装置100において、20は、水柱形成ノズル30により形成された水柱60を通して圧延ロール200の表面を撮影する撮影手段である。
【0026】
撮影手段20は、透明窓24を有するカメラボックス21と、カメラボックス21内に設けられ、透明窓24を通して圧延ロール200の表面を光照射する照明部23と、カメラボックス21内に設けられ、照明部23の点灯に同期して駆動し、透明窓24及び水柱60を通して圧延ロール200の表面を撮影する撮影部22とを備えて構成されている。
【0027】
図1の圧延ロールの表面撮影装置100において、40は、照明部23の点灯制御や撮影部22の駆動制御等、撮影全般を制御する撮影制御装置である。また、撮影制御装置40は、撮影部22で撮影している圧延ロール200の表面の撮影画像が、水柱形成ノズル30の先端部と圧延ロール200の表面との距離が不適切で水柱60が形成されずに撮影されたものである場合や、あるいは、水柱60は形成されているが撮影に充分な太さの水柱60が形成されておらず撮影画像の画質が不適である場合には、これらを検知し、水供給手段10に対して水柱形成用水の供給水量を制御する機能も有している。
【0028】
図1の圧延ロールの表面撮影装置100において、50は、撮影部22で撮影された圧延ロール200表面の撮影画像に対して記録処理や表示処理等を行う画像処理装置である。
【0029】
次に、第1の実施の形態における水柱形成ノズル30の動作について、図2及び図3を用いて説明する。
【0030】
最初に、図2を参照しながら、圧延ロール200の表面を撮影する際の第1の実施の形態における水柱形成ノズル30の動作について説明する。図2において、圧延ロール200は操業中であり、所定の速度で回転している。ここで、水柱形成ノズル30は、水平より上向き、例えば、水平から上向きに30度の角度を成す向きに配置される。
【0031】
まず、水柱形成用水の水量に対する水柱形成ノズル30の可動範囲(ストローク)を予め測定しておく。また、水柱形成ノズル30から圧延ロール200表面に水柱形成用水を吐出した際に、水柱60を安定して形成可能な圧延ロール200の表面との距離も測定しておく。
【0032】
そして、測定した水柱形成ノズル30の可動範囲、及び水柱60を安定して形成可能な圧延ロール200の表面との距離を考慮して、水柱形成ノズル30を所定の位置に設置する。具体的には、圧延ロール200の表面との接触を避けるために圧延ロール200の表面との距離を水柱形成ノズル30の可動範囲以上離すとともに、少なくともノズル先端部35が圧延ロール200の表面に最も接近した際に、圧延ロール200の表面との間で水柱60を安定して形成可能な距離を確保できる位置に水柱形成ノズル30を設置する。
【0033】
そして、上記のように配置された水柱形成ノズル30に対して、水供給手段10から所定水量以上の水柱形成用水が供給されると、供給された水柱形成用水の水量に応じた水圧が水柱形成ノズル30の内部にかかって、ノズル先端部35が30aで示す方向(圧延ロール200の表面に接近する方向)に移動する。これにより、所定の速度で回転している圧延ロール200の表面とノズル先端部35の先端との間に水柱60が形成される。この状態で、形成された水柱60を通して撮影手段20による圧延ロール200の表面の撮影が行われる。
【0034】
続いて、図3を参照しながら、圧延ロール200の表面の撮影を終了する際の第1の実施の形態における水柱形成ノズル30の動作について説明する。
【0035】
撮影手段20による圧延ロール200の表面の撮影を終了する際には、水供給手段10から供給している水柱形成用水の供給を停止する。これにより、水柱形成ノズル30内の圧力が低下する。
【0036】
ここで、水柱形成ノズル30におけるノズル先端部35は、ノズル基部34と自由に摺動し、前進または後退できるようになっており、さらに、水柱形成ノズル30が、水平方向より上向きになっているため、ノズル先端部35にかかる重力によって、ノズル先端部35には、常に後退しようとする力がかかる。そのため、ノズル先端部35が30bで示す方向(圧延ロール200の表面から後退する方向)に移動する。このノズル先端部35の移動は、ノズル基部34とストッパー33とが突き当たる位置まで移動する。
【0037】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態における水柱形成ノズル30の動作について、図4及び図5を用いて説明する。
【0038】
本実施の形態においては、図4及び図5に示すように、水柱形成ノズル30を構成するノズル基部34とノズル先端部35との間に、バネ32が配置された構成になっている。このバネ32は、水供給手段10から供給される水柱形成用水の水量が多くなるに従ってノズル先端部35を圧延ロール200の表面に接近させ、水供給手段10から供給される水柱形成用水の水量が少なくなるに従ってノズル先端部35を圧延ロール200の表面から後退させる。ここで、本実施の形態のバネ32は、ノズル先端部35と圧延ロール200の表面とを離間させるように付勢する。
【0039】
最初に、図4を参照しながら、圧延ロール200の表面を撮影する際の第2の実施の形態における水柱形成ノズル30の動作について説明する。ここで、図4に示す圧延ロール200は操業中であり所定の速度で回転している。
【0040】
まず、水柱形成用水の水量に対する水柱形成ノズル30の可動範囲(ストローク)を予め測定しておく。また、水柱形成ノズル30から圧延ロール200表面に水柱形成用水を吐出した際に、水柱60を安定して形成可能な圧延ロール200の表面との距離も測定しておく。
【0041】
そして、測定した水柱形成ノズル30の可動範囲、及び水柱60を安定して形成可能な圧延ロール200の表面との距離を考慮して、水柱形成ノズル30を所定の位置に設置する。具体的には、圧延ロール200の表面との接触を避けるために圧延ロール200の表面との距離を水柱形成ノズル30の可動範囲以上離すとともに、少なくともノズル先端部35が圧延ロール200の表面に最も接近した際に、圧延ロール200の表面との間で水柱60を安定して形成可能な距離を確保できる位置に水柱形成ノズル30を設置する。
【0042】
そして、上記のように配置された水柱形成ノズル30に対して、水供給手段10から所定水量以上の水柱形成用水が供給されると、供給された水柱形成用水の水量に応じた水圧が水柱形成ノズル30の内部にかかってバネ32が収縮し、ノズル先端部35が30aで示す方向(圧延ロール200の表面に接近する方向)に移動する。これにより、所定の速度で回転している圧延ロール200の表面とノズル先端部35の先端との間に水柱60が形成される。この状態で、形成された水柱60を通して撮影手段20による圧延ロール200の表面の撮影が行われる。
【0043】
続いて、図5を参照しながら、圧延ロール200の表面の撮影を終了する際の第2の実施の形態における水柱形成ノズル30の動作について説明する。
【0044】
撮影手段20による圧延ロール200の表面の撮影を終了する際には、水供給手段10から供給している水柱形成用水の供給を停止する。これにより、水柱形成ノズル30内の圧力が低下するため、バネ32が伸長して、ノズル先端部35が30bで示す方向(圧延ロール200の表面から後退する方向)に移動する。このノズル先端部35の移動は、ノズル基部34とストッパー33とが突き当たる位置まで移動する。
【0045】
次に、圧延ロールの表面撮影装置100を用いて実際に撮影を行った結果について説明する。以下に示すものは、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態においても、同様の結果が得られた。
【0046】
ここでは、水柱形成ノズル30として、ストロークが50mm、ノズルの内径が25mmのものを使用した。また、圧延ロール200は、ロール径が770mm〜800mmに対応するものを使用した。
【0047】
内径が25mmである水柱形成ノズル30では、ノズル先端部35と圧延ロール200の表面との距離が1mm〜30mmの範囲であれば水柱60を安定して形成できた。また、水柱形成ノズル30において、水供給手段10から供給された水量が毎分5リットル以下の場合には、図3及び図5で示すようにノズル基部34とストッパー33とが突き当たりノズル先端部35は圧延ロール200の表面から一番後退した位置となり、水供給手段10から供給された水量が毎分40リットル以上の場合には、ノズル先端部35は圧延ロール200の表面に一番接近した位置となった。そして、圧延ロール200の回転周速度を毎分0〜300mにして、撮影手段300による撮影を行った結果、圧延ロール200の表面の鮮明な撮影画像が得られることが確認された。
【0048】
次に、図6のフローチャートを参照しながら本発明の圧延ロールの表面撮影方法の手順の一例を説明する。このフローチャートにおける各ステップは、例えば撮影制御装置40により行われる。
【0049】
図6に示したように、最初にステップS41において操業開始が判断される。この判断の結果、操業開始であればステップS42に進み、前述したように水供給手段10から水柱形成ノズル30に水柱形成用水を供給する。
【0050】
次に、ステップS43に進み、ノズル先端部35と圧延ロール200の表面との間隔が適切であるか判断する。この判断の結果、間隔が適切でなかった場合にはステップS44に進み、水供給手段10から供給する水柱形成用水の水量を増加させ、ノズル先端部35を圧延ロール200の表面にもう少し接近させるようにする。なお、本発明の実施の形態においては、水柱形成用水の供給水量を徐々に増加させるように制御しているので、ステップS43の判断の結果、ノズル先端部35と圧延ロール200の表面との間隔が近すぎる場合はないように制御している。
【0051】
水柱形成用水の供給量を増加させた結果、ノズル先端部35と圧延ロール200の表面との間隔が適切となった場合にはステップS45に進み、撮影手段20により圧延ロール200の表面を撮影して画質の良否を判断する。これは、水柱60が充分な太さに形成されていない場合には良好な画質が得られないことがあるので、これを確認するために行う処理である。
【0052】
ステップS45の判断の結果、撮影画質が不十分であった場合にはステップS46に進み、水供給手段10から供給する水柱形成用水の水量を増加させ、適正な水柱60を形成できるようにする。
【0053】
ステップS45の判断の結果、良好な画質が得られた場合にはステップS47に進み、圧延ロール200の表面状態を撮影する。この撮影の合間にステップS48において操業終了か否かを判断し、操業終了の操作が行われるまで圧延ロール200の表面状態の撮影を実行する。そして、ステップS48の判断の結果、操業終了の操作が行われたら前述したように、水供給手段10から水柱形成ノズル30へ供給している水柱形成用水を停止して、ノズル先端部35を圧延ロール200の表面から後退させて操業を停止する。その後、圧延ロール200の交換や研磨などのメンテナンスが必要に応じて行われることになる。
【0054】
本発明の実施の形態によれば、水供給手段10から供給される水柱形成用水の水量が多くなるに従ってノズル先端部35を圧延ロール200の表面に接近させ、水供給手段10から供給される水柱形成用水の水量が少なくなるに従ってノズル先端部35を圧延ロール200の表面から後退させる可変機構を設けるようにしたので、例えば、水柱形成用水の供給を止めて圧延ロール200の交換や研磨などのメンテナンスを行う際に、水柱形成ノズル30を圧延ロール200の表面から離間させた位置に退避させることができる。これにより、水柱形成ノズル30を移動させるための移動装置を別途設ける必要がなくなり、装置構成を簡素化することができるとともに、装置のメンテナンス性を向上することができる。
【0055】
また、ノズル先端部35の位置を水平方向より上向きに傾斜して設置するようにしたので、ノズル先端部35にかかる重力と、水供給手段10から供給された水柱形成用水の水量(あるいは水圧)との関係のみでノズル先端部35の位置を決定することができる。
【0056】
また、水柱形成ノズル30を構成するノズル基部34とノズル先端部35との間にバネ32を設け、当該バネ32をノズル先端部35と圧延ロール200の表面とを離間させるように付勢させるように構成したので、当該バネと、水供給手段10から供給された水柱形成用水の水量(あるいは水圧)との関係のみでノズル先端部35の位置を決定することができる。なお、特許文献1に記載の検査装置では、ノズルの先端部から噴出された加圧水の圧延ロール表面に及ぼす力に基づく反発力により、ノズルの先端部の位置を決定しているため、コイルバネと供給された加圧水との関係ではノズルの先端部の位置が決まらず、圧延ロールの回転速度やその大きさ、その表面状態等により変動することになる。さらに、特許文献1に記載の検査装置では、水供給手段10から供給された水柱形成用水を止めても、水柱形成ノズルを圧延ロールの表面から離間させた位置に退避させる効果を得ることはできない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる圧延ロールの表面撮影装置の概略構成を示した図である。
【図2】第1の実施の形態における水柱形成ノズルの動作を説明するための概略図である。
【図3】第1の実施の形態における水柱形成ノズルの動作を説明するための概略図である。
【図4】第2の実施の形態における水柱形成ノズルの動作を説明するための概略図である。
【図5】第2の実施の形態における水柱形成ノズルの動作を説明するための概略図である。
【図6】圧延ロールの表面撮影方法の手順の概略を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
10 水供給手段
11 水供給部
12 水量調整弁
13 水量計
20 撮影手段
21 カメラボックス
22 撮影部
23 照明部
24 透明窓
30 水柱形成ノズル
31 水注入口
32 バネ(可変機構)
33 ストッパー
34 ノズル基部
35 ノズル先端部
40 撮影制御装置
50 画像処理装置
60 水柱
100 圧延ロールの表面撮影装置
200 圧延ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水柱形成用水を供給する水供給手段と、
前記水供給手段から供給された水柱形成用水を鋼板を圧延するために用いる圧延ロールの表面に吐出し、その先端部と前記圧延ロールとの間に水柱を形成する水柱形成ノズルと、
前記水柱形成ノズルにより形成された水柱を通して前記圧延ロールの表面を撮影する撮影手段とを有し、
前記水柱形成ノズルには、前記水供給手段から供給される水柱形成用水の水量が多くなるに従って前記水柱形成ノズルの先端部を前記圧延ロールの表面に接近させ、前記水供給手段から供給される水柱形成用水の水量が少なくなるに従って前記水柱形成ノズルの先端部を前記圧延ロールの表面から後退させる可変機構が設けられていることを特徴とする圧延ロールの表面撮影装置。
【請求項2】
前記水柱形成ノズルは、その先端部が後端部よりも高く、上向きに傾斜又は鉛直に設置され、且つ、前記可変機構は、重力及び前記水柱形成ノズル内の水流により付勢されることを特徴とする請求項1に記載の圧延ロールの表面撮影装置。
【請求項3】
前記可変機構は、前記水柱形成ノズルの先端部と前記圧延ロールの表面とを離間させるように付勢するバネで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧延ロールの表面撮影装置。
【請求項4】
水柱形成用水を供給する水供給手段と、前記水供給手段から供給された水柱形成用水を鋼板を圧延するために用いる圧延ロールの表面に吐出し、その先端部と前記圧延ロールとの間に水柱を形成する水柱形成ノズルと、前記水柱形成ノズルにより形成された水柱を通して前記圧延ロールの表面を撮影する撮影手段とを有し、
前記水柱形成ノズルには、当該水柱形成ノズルの先端部と前記圧延ロールの表面との距離を可変する可変機構が設けられている圧延ロールの表面撮影装置における制御方法であって、
前記水供給手段から供給される水柱形成用水の水量に応じて前記可変機構による前記距離の可変を制御し、前記水供給手段から供給される水柱形成用水の水量が多くなるに従って前記水柱形成ノズルの先端部を前記圧延ロールの表面に接近させ、前記水供給手段から供給される水柱形成用水の水量が少なくなるに従って前記水柱形成ノズルの先端部を前記圧延ロールの表面から後退させることを特徴とする圧延ロールの表面撮影装置の制御方法。
【請求項5】
前記水柱形成ノズルは、その先端部が後端部よりも高く、上向きに傾斜又は鉛直に設置され、且つ、前記可変機構は、重力及び前記水柱形成ノズル内の水流により付勢されることを特徴とする請求項4に記載の圧延ロールの表面撮影装置の制御方法。
【請求項6】
前記可変機構は、前記水柱形成ノズルの先端部と前記圧延ロールの表面とを離間させるように付勢するバネで構成されていることを特徴とする請求項4に記載の圧延ロールの表面撮影装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−3506(P2007−3506A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327746(P2005−327746)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】