説明

圧延方法および圧延装置

【課題】材料の送り方向と直交する方向に圧延して異形断面材を生成することによって、一回の圧延工程における材料の圧下率を大きくすることを可能にした圧延方法を提供するとともに、この圧延方法を採用することによってコンパクトな構成を可能にした圧延装置を提供する。
【解決手段】鋼材20の送り方向(X軸方向)と直交する方向(Y軸方向)に圧延ローラを転動させて、圧延ローラにより鋼材20を圧延するものであって、圧延ローラの一連の転動動作により圧延される部位の、鋼材20の送り方向における両端部に、圧延により生じた歪みを集約させる(即ち、歪み領域30bおよびくびれ部30cを形成する)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異形断面材の圧延方法および圧延装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、幅方向の寸法に比して長さ方向の寸法が十分に大きく、かつ、長さ方向に直交する断面形状が凸状等(即ち、幅方向において厚みが変化する)の異方性を有する形状(以下、異形形状と呼ぶ)である条部材(以下、異形条と呼ぶ)を、圧延により生成する技術が公知となっており、例えば、以下に示す特許文献1にその技術が開示され、公知となっている。
【0003】
特許文献1には、材料の送り方向(即ち、長さ方向)に向けて圧延を行う(即ち、材料の送り方向と圧延方向が同一である)構成の圧延装置に係る技術が開示されている。
しかしながら、このような構成の圧延装置によって生成された異形条には、長さ方向に歪みが蓄積されていき、反りやシワが発生しやすくなるという問題があった。
【0004】
そこで、異形条に反りやシワが生じることを解消すべく、材料の送り方向と直交する方向に向けて圧延を行う構成とした圧延装置に係る技術が開発されており、例えば、以下に示す特許文献2にその技術が開示され、公知となっている。
【0005】
特許文献2には、材料の送り方向と直交する方向に圧延ローラを転動させる構成とした従来の圧延装置が開示されており、材料を送り方向と直交する方向(即ち、幅方向)に圧延することによって、材料の送り方向に歪みが生じることを抑制し、反りやシワの発生が少ない異形条を生成できるようにしている。
【0006】
尚、ここで言う「異形条」とは、幅方向の寸法に比して長さ方向の寸法が十分に大きい鋼材であって、長さ方向に直交する断面形状が一定の異形形状であるものを意味している。
そして、「異形条」と呼ぶ場合には、長さ方向に対する任意の位置において、残留応力の分布が略均等であるものを指している。
【0007】
また、幅方向の寸法に比して長さ方向の寸法が十分に大きい鋼材であるが、長さ方向に直交する断面形状が一定ではなく(くびれ等がある)、かつ、長さ方向に対する任意の位置において、残留応力の分布が均等でないものを「異形断面材」と呼ぶものとして規定し、「異形条」と区別して扱うものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61−129201号公報
【特許文献2】特開平1−138033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に開示されている従来の圧延装置では、材料の送り方向に歪みが生じることを抑制するために、一つの圧延ローラにおける材料の圧下率を小さく設定するとともに、材料の送り方向において複数の圧延ローラを多段で備える構成として、複数回に分けて材料を圧延するようにしている。
このため、圧延装置が材料の送り方向に向けて長大になるため、圧延装置をコンパクトに構成することが困難であった。
【0010】
また、例えば、材料を長さ方向に直交する方向に所定の厚さで切断し、切断したものがそのまま部品となるような場合には、均質な部品を得るためには、当該材料として「異形条」を用いる必要がある。
一方、例えば、材料を打ち抜きやプレスで加工して部品を生成するような場合には、材料には余肉部(スクラップとなる部位)が設定されるが、当該余肉部は歪み等が存在していても問題はないため、このような場合には「異形断面材」を採用し得る。
しかしながら従来は、「異形断面材」を生成するための技術が存在しないために、用途上「異形断面材」を採用し得るような場合であっても、「異形条」を採用するしかない状況であった。
【0011】
本発明は、斯かる現状の課題を鑑みてなされたものであり、材料の送り方向と直交する方向に圧延して異形断面材を生成することによって、一回の圧延工程における材料の圧下率を大きくすることを可能にした圧延方法を提供するとともに、この圧延方法を採用することによってコンパクトな構成を可能にした圧延装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0013】
即ち、請求項1においては、材料の送り方向と直交する方向に圧延ローラを転動させて、前記圧延ローラにより前記材料を圧延する圧延方法であって、前記圧延ローラの一連の転動動作により圧延される部位の、前記材料の送り方向における両端部に、圧延により生じた歪みを集約させるものである。
【0014】
請求項2においては、前記歪みは、前記両端部に設定する余肉部に集約させるものである。
【0015】
請求項3においては、前記圧延ローラによる前記材料の圧下量を、前記歪みの生じる量に設定するものである。
【0016】
請求項4においては、前記圧延ローラにより前記材料を圧延する圧延工程の後に、プレス工程を配置し、前記圧延工程に、前記材料を所定の送りピッチで間欠的に供給するとともに、前記材料を間欠的に送るタイミングを、前記プレス工程におけるプレス成形のタイミングに同期させるものである。
【0017】
請求項5においては、材料の送り方向と直交する方向に転動する圧延ローラを備え、前記圧延ローラによって、前記材料の送り方向と直交する方向に前記材料を圧延して異形断面材を生成するとともに、前記圧延ローラの前記材料の送り方向に対する下流側に、プレス成形するためのプレス装置を配置し、前記圧延ローラの転動するタイミングと、前記プレス装置によるプレス成形のタイミングを同期させるものである。
【0018】
請求項6においては、前記圧延ローラは、前記プレス装置とリンク機構を介して接続され、前記プレス装置の駆動源により駆動されるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0020】
請求項1においては、圧延により異形断面材を生成することができる。また、圧延工程のスペースをコンパクトにすることができる。
【0021】
請求項2においては、異形断面材を用いて製造する製品の品質を確保することができる。
【0022】
請求項3においては、従来の異形条を生成する場合の圧延回数に比して、少ない圧延回数で異形断面材を生成することができる。
【0023】
請求項4においては、異形断面材を生成する圧延工程を、より低コストで構築することができる。
【0024】
請求項5においては、異形断面材を生成する圧延装置をコンパクトに構成することができる。
【0025】
請求項6においては、異形断面材を生成する圧延装置の低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る圧延装置を示す正面側模式図。
【図2】本発明の一実施形態に係る圧延装置を示す側面側模式図。
【図3】圧延ローラを示す模式図、(a)第一の実施形態に係る圧延ローラを示す模式図、(b)第二の実施形態に係る圧延ローラを示す模式図。
【図4】圧延ローラおよびバックアップローラの転動状況を示す模式図。
【図5】圧延ローラによる圧延状況(圧延前)を示す模式図。
【図6】圧延ローラによる圧延状況(左圧延時)を示す模式図。
【図7】圧延ローラによる圧延状況(右圧延時)を示す模式図。
【図8】圧延ローラによる圧延状況(圧延後)を示す模式図。
【図9】圧延装置により生成された異形断面材を示す模式図、(a)平面模式図、(b)図9(a)におけるA−A断面図、(c)図9(a)におけるB−B断面図。
【図10】圧延装置により生成された異形断面材を示す斜視模式図。
【図11】従来の異形条を示す模式図、(a)平面模式図、(b)図11(a)におけるC−C断面図、(c)図11(a)におけるD−D断面図。
【図12】圧延装置により生成された異形断面材の別実施例を示す模式図、(a)平面模式図、(b)図12(a)におけるE−E断面図、(c)図12(a)におけるF−F断面図。
【図13】圧延装置とプレス装置の配置状況を示す側面側模式図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、本発明の一実施形態に係る圧延装置の全体構成について、図1〜図3を用いて説明をする。
尚、以下の説明では、図1および図2に示すようなXYZ座標系を規定しており、水平方向に設定するX軸の正方向を材料の送り方向たる前方とし、水平方向に設定し、かつ、X軸に直交するY軸の正方向を材料の送り方向に対する右方とし、鉛直方向に設定し、かつ、X・Y軸に直交するZ軸の正方向を上方としている。
【0028】
図1および図2に示す如く、本発明の一実施形態に係る圧延装置1は、「異形断面材」を生成するための材料たる鋼材20を圧延の手法により加工して、異形断面材30を生成するための装置であり、ベース部10・11および外板部12・13によって骨格を形成している。尚、図1においては、外板部12の図示を省略しており、圧延装置1の内部を透過させて図示する態様としている。
そして、圧延装置1は、圧延ローラ2、バックアップローラ3、上側のガイド部材(以下、上側ガイド部材と呼ぶ)4・4、下側のガイド部材(以下、下側ガイド部材と呼ぶ)5・5、上型6、上側のガイド軸(以下、上側ガイド軸と呼ぶ)7・7、下側のガイド軸(以下、下側ガイド軸と呼ぶ)8・8、ベース部材9等を備えている。
【0029】
第一の実施形態に係る圧延ローラである圧延ローラ2は、図1および図2に示す如く、上型6との間に供給される鋼材20を圧延するためのローラ部材であり、略円柱状のローラ部2a、該ローラ部2aの軸心上に配置される軸部2b等を備えている。
また、ローラ部2aの周面上には、鋼材20に対する圧延を行う際に、該鋼材20に凹部を形成するための凸部2c・2cが形成されている。
圧延ローラ2には、図3(a)に示すように、2箇所の凸部2c・2cが形成されている。そして、各凸部2c・2cは、周方向に適宜離間するとともに軸部2bの軸心方向視において対称な配置で、平面視においてローラ部2aの全長に渉って形成される構成としている。
そして、圧延ローラ2は、図1および図2に示すように、軸部2b・2bを水平に保持した状態で、上側ガイド部材4・4によって、回転可能に支持されている。
【0030】
上側ガイド部材4は、圧延ローラ2へトルクを伝達するための部材であり、圧延ローラ2の軸部2bを回転可能に支持するための孔部である軸孔4aや、上側ガイド軸7の直径に略一致する(但し、若干大きい)溝幅を有するガイド溝4bが形成されている。
【0031】
一対の上側ガイド部材4・4は、各ガイド溝4b・4bを、各上側ガイド軸7・7に係合させることにより、各上側ガイド軸7・7を中心に揺動可能に構成されている。
そして、一対の上側ガイド部材4・4の各軸孔4a・4aに圧延ローラ2の軸部2b・2bを挿入し、かつ、キー・スプライン等でトルクを伝達する構成としている。
【0032】
また、各上側ガイド軸7・7は、鋼材20の送り方向に対して平行に外板部12・13から突設されているため、上側ガイド部材4・4は、鋼材20の送り方向に対して垂直な平面内で揺動可能に構成されている。
そして、上側ガイド部材4・4が、鋼材20の送り方向に対して垂直な平面内で揺動されることによって、圧延ローラ2が、鋼材20の送り方向に対して垂直な方向に転動される構成としている。
【0033】
図1および図2に示す如く、バックアップローラ3は、圧延ローラ2と協動して転動し、圧延ローラ2の転動方向を水平に保持するためのローラ部材であり、略円柱状のローラ部3a、該ローラ部3aの軸心上に配置される軸部3b等を備えている。
そして、バックアップローラ3は、軸部3b・3bを水平に保持した状態で、下側ガイド部材5・5によって、回転可能に支持されている。
【0034】
下側ガイド部材5は、バックアップローラ3を支持するための部材であり、下側ガイド軸8の直径に略一致する(但し、若干大きい)溝幅を有するガイド溝5bが形成されている。
【0035】
一対の下側ガイド部材5・5は、各ガイド溝5b・5bを、各下側ガイド軸8・8に係合させることにより、各下側ガイド部材5・5を中心に揺動可能に構成されている。
そして、一対の下側ガイド部材5・5の各軸孔5a・5aにバックアップローラ3の軸部3b・3bを挿入し、かつ、キー・スプライン等でトルクを伝達する構成としている。
【0036】
また、各下側ガイド軸8・8は、鋼材20の送り方向に対して平行に外板部12・13から突設されているため、下側ガイド部材5・5は、鋼材20の送り方向に対して垂直な平面内で揺動可能に構成されている。
そして、下側ガイド部材5・5が、鋼材20の送り方向に対して垂直な平面内で揺動されることによって、バックアップローラ3が、鋼材20の送り方向に対して垂直な方向に転動される構成としている。
【0037】
さらに、バックアップローラ3の下方には、ベース部材9が備えられている。
ベース部材9は、バックアップローラ3の転動方向を水平に保持するための部材であって、ベース部11上に安定的に固設されており、その上面部に、水平に保持される平面たる支持面9aを形成している。尚、ベース部材9およびベース部11は、圧延ローラ2およびバックアップローラ3の荷重に耐え得る十分な強度および剛性を有している。
【0038】
バックアップローラ3は、下側ガイド部材5・5の揺動に伴って、ガイド溝5bと下側ガイド軸8の係合位置が随時変化しつつ(即ち、下側ガイド軸8と軸部3bの距離が随時変化しながら)、バックアップローラ3のローラ部3aを支持面9aに沿って転動させることによって、バックアップローラ3の軸部3b・3bの変位は、常に水平方向に保持される。
【0039】
そして、圧延ローラ2を、そのローラ部2aの最下部において、バックアップローラ3のローラ部3aの最上部と当接させることによって、圧延ローラ2の軸部2bの変位を、常に水平方向に保持する構成としている。
【0040】
そしてこのような構成により、図1に示す如く、上側ガイド部材4・4に外力を付与して、各上側ガイド軸7・7を中心として揺動させることによって、圧延ローラ2を、鋼材20に押圧することができる。
一方、バックアップローラ3は、圧延ローラ2が転動すると同時に、ローラ部3aとローラ部2aとの間で生じる摩擦力によって、軸部3b・3bを中心として転動(自転)するとともに、下側ガイド部材5・5が揺動する。
【0041】
尚、本実施形態では、バックアップローラ3の転動動作を、ローラ部3aとローラ部2aとの間で生じる摩擦力を活用して同期させる構成としているが、例えば、上側ガイド部材4と下側ガイド部材5の間に、転動動作を同期させるためのギアを配置して、上側ガイド部材4と下側ガイド部材5の動作を同期させる構成としてもよい。
【0042】
次に、本発明の一実施形態に係る圧延装置の圧延動作について、図4〜図8を用いて説明をする。
本実施形態において、圧延ローラ2は、まず、図4および図5に示すように各凸部2c・2cが、X軸方向視において左右対称に配置される初期状態に配置される。
【0043】
そして、このような初期状態から、圧延ローラ2は、図4および図6に示すようにバックアップローラ3により最下部を支持されつつ、上側ガイド部材4・4(図1参照)を図4における左側に揺動させることによって、軸部2bがY軸の負方向(水平方向左側)に変位するように転動する。
このとき、鋼材20の幅方向における左端部分は、凸部2cによって押圧され、主に、Y軸の負方向に向けて拡がるように圧延される。
尚、以下では、鋼材20の幅方向における左端部分をY軸の負方向に向けて拡げるような圧延の態様を「左圧延」と呼ぶものとする。
【0044】
次に、圧延ローラ2が、軸部2bがY軸の負方向(水平方向左側)の所定位置まで変位するように転動された後(即ち、「左圧延」を終えた後)に、上側ガイド部材4・4を、図4および図7に示すように図4における右側に揺動させることによって、軸部2bがY軸の正方向(水平方向右側)に変位するように転動する。
このとき、鋼材20の幅方向における右端部分は、凸部2cによって押圧され、主に、Y軸の正方向に向けて拡がるように圧延される。
尚、以下では、鋼材20の幅方向における右端部分をY軸の正方向に向けて拡げるような圧延の態様を「右圧延」と呼ぶものとする。
【0045】
そして、圧延ローラ2が、軸部2bがY軸の正方向(水平方向右側)の所定位置まで変位するように転動された後(即ち、「右圧延」を終えた後)に、上側ガイド部材4・4を、図4および図8に示すように図4における左側に揺動させることによって、各凸部2c・2cが、X軸方向視において左右対称に配置される初期状態となるように、軸部2bがY軸の負方向(水平方向左側)に変位するように転動する。
【0046】
そして、このようにして、一連の圧延動作が完了する。
この一連の圧延動作においては、鋼材20の材料送りは停止しており、一連の圧延動作とその次の一連の圧延動作の間の時間において、間欠的に材料送りが行われている。
即ち、一連の圧延動作の間は、鋼材20は停止されており、圧延動作が完了したときに、所定の送りピッチPだけ材料送りが行われる。
【0047】
次に、本発明の一実施形態に係る圧延装置によって生成される「異形断面材」について、図3および図9〜図11を用いて説明をする。
「異形断面材」の一例である図9(a)および図10に示す異形断面材30は、図9(b)に示すような略矩形の断面形状を有する鋼材20を、所定の送りピッチPで間欠的に供給しつつ、図3(a)に示すような圧延ローラ2を有する圧延装置1によって、鋼材20を長さ方向に直交する方向に圧延して生成される部材であり、図9(c)に示すような凸部30aを有する断面形状を有している。
【0048】
また、異形断面材30は、図3(a)に示すような平面視において凸部2c・2cが左右対称の位置に配置された圧延ローラ2によって形成されるものであり、1回の圧延動作において圧延される部位の長さ方向における両端部(各圧延工程において圧延される部位の境界部)において、歪みが集約された部位である歪み領域30bが形成されている。
そして、異形断面材30において形成される歪み領域30bは、該異形断面材30の長さ方向に向かって左右対称となる位置に形成されている。
さらに、歪み領域30b・30bの境界部には、くびれ部30c・30cが形成されるため、異形断面材30は、長さ方向における各断面形状が一定ではない。
【0049】
一方、「異形条」の一例である図11(a)に示す異形条50は、図11(b)に示すような略矩形の断面形状を有する鋼材20を、所定の圧延装置により圧延して生成される部材であり、図11(c)に示すような凸部50aを有する断面形状を有している。
【0050】
また、異形条50は、中途部において、歪みが集約された部位である歪み領域は形成されておらず、さらに、くびれ部等も形成されていないため、異形条50の長さ方向における各断面形状は、一定となっている。
【0051】
即ち、異形条50は、歪みがなく、長さ方向における各断面形状を一定とすべく生成されるものであるが、それに対して、異形断面材30は、歪みが生じること、および、長さ方向における各断面形状が一定でないことを許容しつつ生成されるものである点が異なっている。
【0052】
そして、異形断面材30を生成するための圧延装置1では、歪みが生じること、および、長さ方向における各断面形状が一定でないことを許容することによって、図10に示すような圧下量Δtを従来の圧延装置に比して大きくすることを可能にしている。
尚、圧下量Δtは、元の板厚t0と圧延後の板厚t1との差(即ち、Δt=t0−t1)として求められる値である。
【0053】
従来の圧延装置において、異形条50を生成する場合には、歪みやくびれが発生しないように圧下量Δtを小さく設定しつつ、多段で圧延が行なわれていた。
一方、圧延装置1において、異形断面材30を生成する場合には、歪みやくびれの発生を許容しているため、圧下量Δtを従来に比して大きく設定することができる。
即ち、本発明の一実施形態に係る圧延方法では、圧下量Δtを積極的に歪み領域30bやくびれ部30cの生じる量に設定することによって、圧延段数の低減や圧延工程のコンパクト化や時間短縮等を実現するようにしており、例えば、圧延装置1のように、圧延の段数を1段とすることも可能になる。
【0054】
また、圧延ローラ2を用いて生成した異形断面材30では、圧下量Δtを大きくすることによって、歪み領域30bやくびれ部30cが形成されるが、歪み領域30bやくびれ部30cを異形断面材30に設定した余肉部30dに集約させるようにしている。
即ち、異形断面材30では、例えば、板取り形状(例えば、プレス加工等により打ち抜く形状)を図9(a)に示すような形状αとすることが可能であり、その形状α以外の部分(即ち、歪み領域30bやくびれ部30c)はスクラップとされるため、歪み領域30bやくびれ部30cが形成されたとしても、製品の品質を保持することができる。
【0055】
また、圧延装置1によって生成する「異形断面材」の態様は、例えば、図12に示す異形断面材40のような態様とすることも可能である。
「異形断面材」の別実施例である図12(a)に示す異形断面材40は、図12(b)に示すような略矩形の断面形状を有する鋼材20を、所定の送りピッチPで間欠的に供給しつつ、図3(b)に示すような圧延ローラ22を有する圧延装置21によって、鋼材20を長さ方向に直交する方向に圧延して生成される部材であり、図12(c)に示すような凸部40aを有する断面形状を有している。
【0056】
異形断面材40は、平面視において凸部22c・22cが左右非対称の位置に配置された図3(b)に示すような圧延ローラ22によって形成されるものであり、該異形断面材40において形成される歪み領域40bが、異形断面材40の長さ方向に向かって左右非対称となる位置に形成されている。
また、圧延ローラ22を用いて生成した異形断面材40では、圧下量Δtを大きくすることによって、歪み領域40bやくびれ部40cが形成されるが、歪み領域40bやくびれ部40cを異形断面材40に設定した余肉部40dに集約させるようにしている。
【0057】
このように、圧延ローラ22における凸部22c・22cの配置を調整して各歪み領域40b・40b・・・の配置、各くびれ部40c・40c・・・の配置、各余肉部40d・40d・・・の設定位置、等を調整することにより、例えば、板取り形状を図12(a)に示すような形状βとすることが可能になり、種々の製品形状に対応することが可能になる。
【0058】
即ち、本発明の一実施形態に係る圧延方法は、鋼材20の送り方向(X軸方向)と直交する方向(Y軸方向)に圧延ローラ2を転動させて、圧延ローラ2により鋼材20を圧延するものであって、圧延ローラ2の一連の転動動作により圧延される部位の、鋼材20の送り方向における両端部に、圧延により生じた歪みを集約させる(即ち、歪み領域30bおよびくびれ部30cを形成する)ものである。
このような構成により、圧延により異形断面材30(あるいは異形断面材40)を生成することができる。また、圧延工程のスペース(即ち、圧延装置1の設置場所)をコンパクトにすることができる。
【0059】
また、本発明の一実施形態に係る圧延方法において、各歪み領域30b・40bは、各異形断面材30・40の送り方向における両端部に設定する各余肉部30d・40dに集約させるものである。
このような構成により、各異形断面材30・40を用いて製造する製品の品質を確保することができる。
【0060】
さらに、本発明の一実施形態に係る圧延方法において、各圧延ローラ2・22による鋼材20の圧下量Δtを、各歪み領域30b・40bおよび各くびれ部30c・40cの生じる量に設定するものである。
このような構成により、従来の異形条50を生成する場合の圧延回数に比して、少ない圧延回数で各異形断面材30・40を生成することができる。
【0061】
次に、本発明の一実施形態に係る圧延装置の後工程にプレス装置を配置した場合の装置構成について、図10および図13を用いて説明をする。
圧延装置1で生成される異形断面材30は、図10に示すように、圧延ローラ2(図1参照)による一回の転動動作で圧延される部位が、プレス装置15の一回のプレス動作で消費される部位と対応している。
【0062】
即ち、圧延装置1によって生成される異形断面材30の量と、プレス装置15によって消費される異形断面材30の量は対応しているため、圧延装置1とプレス装置15の各動作を一つの駆動源で同期させつつ駆動させれば、駆動源の削減によるコスト低減や装置のコンパクト化等の効果が期待されるため好適である。
【0063】
そこで、図13に示す如く、本発明の一実施形態に係る圧延装置1では、その後工程にプレス装置15を配置する構成としており、圧延装置1とプレス装置15をリンク機構16で接続する構成としている。
【0064】
プレス装置15は、上型たるダイ17と下型たるポンチ18を備えており、ポンチ18を駆動装置19によって支持する構成としている。
駆動装置19は、図13中において上下方向に伸縮可能なシリンダ部19aを備えており、該シリンダ部19aによって、ポンチ18を上下方向に変位させる構成としている。
そして、ダイ17およびポンチ18の間に異形断面材30を供給し、異形断面材30をダイ17およびポンチ18で挟圧することによって、プレス加工品を生成する構成としている。
【0065】
圧延装置1の上側ガイド部材4とシリンダ部19aをリンク機構16を介して接続する構成としており、リンク機構16によって、駆動装置19(シリンダ部19a)により生じさせる上下方向の駆動力を上側ガイド部材4を揺動させる方向への駆動力に変換しつつ、動力を伝達する構成としている。
【0066】
尚、本実施形態では、プレス装置15が備える往復動するシリンダ部19aから、圧延装置1を駆動するための動力をリンク機構16で取り出す構成としているが、これに限定するものではなく、例えば、プレス装置が備える動力源が回転運動をする装置(モータ等の回転装置)である場合には、当該回転装置からカム機構等を介して圧延装置を駆動するための動力を取り出す構成とすることも可能である。
【0067】
即ち、本発明の一実施形態に係る圧延方法は、圧延ローラ2により鋼材20を圧延する圧延工程の後に、プレス工程を配置し、前記圧延工程に、鋼材20を所定の送りピッチPで間欠的に供給するとともに、鋼材20を間欠的に送るタイミングを、前記プレス工程におけるプレス成形のタイミングに同期させるものである。
このような構成により、異形断面材30を生成する圧延工程を、より低コストで構築することができる。
【0068】
また、本発明の一実施形態に係る圧延装置1は、鋼材20の送り方向(X軸方向)と直交する方向(Y軸方向)に転動する圧延ローラ2を備え、圧延ローラ2によって、鋼材20の送り方向と直交する方向に鋼材20を圧延して異形断面材30を生成するとともに、圧延ローラ2の鋼材20の送り方向に対する下流側に、プレス成形するためのプレス装置15を配置し、圧延ローラ2の転動するタイミングと、プレス装置15によるプレス成形のタイミングを同期させるものである。
このような構成により、異形断面材30を生成する圧延装置1をコンパクトに構成することができる。
【0069】
また、本発明の一実施形態に係る圧延装置1において、圧延ローラ2は、プレス装置15とリンク機構16を介して接続され、プレス装置15の駆動装置19におけるシリンダ部19aにより駆動されるものである。
このような構成により、異形断面材30を生成する圧延装置1の低コスト化を図ることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 圧延装置
2 圧延ローラ
2a ローラ部
2b 軸部
2c 凸部
3 バックアップローラ
15 プレス装置
16 リンク機構
20 鋼材
30 異形断面材
30b 歪み領域
30c くびれ部
30d 余肉部
40 異形断面材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料の送り方向と直交する方向に圧延ローラを転動させて、前記圧延ローラにより前記材料を圧延する圧延方法であって、
前記圧延ローラの一連の転動動作により圧延される部位の、前記材料の送り方向における両端部に、
圧延により生じた歪みを集約させる、
ことを特徴とする圧延方法。
【請求項2】
前記歪みは、
前記両端部に設定する余肉部に集約させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧延方法。
【請求項3】
前記圧延ローラによる前記材料の圧下量を、
前記歪みの生じる量に設定する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧延方法。
【請求項4】
前記圧延ローラにより前記材料を圧延する圧延工程の後に、プレス工程を配置し、
前記圧延工程に、前記材料を所定の送りピッチで間欠的に供給するとともに、
前記材料を間欠的に送るタイミングを、
前記プレス工程におけるプレス成形のタイミングに同期させる、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の圧延方法。
【請求項5】
材料の送り方向と直交する方向に転動する圧延ローラを備え、
前記圧延ローラによって、前記材料の送り方向と直交する方向に前記材料を圧延して異形断面材を生成するとともに、
前記圧延ローラの前記材料の送り方向に対する下流側に、プレス成形するためのプレス装置を配置し、
前記圧延ローラの転動するタイミングと、
前記プレス装置によるプレス成形のタイミングを同期させる、
ことを特徴とする圧延装置。
【請求項6】
前記圧延ローラは、
前記プレス装置とリンク機構を介して接続され、
前記プレス装置の駆動源により駆動される、
ことを特徴とする請求項5に記載の圧延装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−240113(P2012−240113A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116133(P2011−116133)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】