説明

圧着用紙

【課題】古紙パルプ使用時における圧着用紙の機能低下を改善し、隠蔽性、接着性、剥離性、オフセット印刷適性を向上させた圧着葉書用紙を提供する。
【解決手段】原料パルプと填料とを主成分として含有する基材紙の表裏面の少なくとも一方の面に接着剤層を有し、前記填料の全部または一部が再生粒子であり、再生粒子はカルシウム、ケイ素、アルミニウムを含むことを特徴とする圧着用紙とする。マイクロトポグラフで測定される接着剤側表面の波長光学的接触率(24.4kg/cm2加圧、波長0.5μm)は8%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧着性と易剥離性とを備える圧着用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
圧着用紙は基材紙の少なくとも一方の面に接着剤層が設けられた用紙である。そして特徴的に接着剤層が、通常状態では接着・粘着性がないが所定の加圧によって重ね合わせ状態の接着剤同士が接着性を発揮する性能(以下、「圧着性」という)と、接着後に容易に剥離できる性能(以下、「易剥離性」という)とを兼ね備えている。これにより、当該接着剤層同士が向かい合うように折りたたみ互いに接する面を圧着させることにより、印刷面(接着剤層面)の情報が容易に隠蔽され、かつ必要時に接着剤層同士の界面で剥離させて、印刷された情報を再び読み取ることが可能とされる。
【0003】
このような圧着用紙の多くは、隠蔽を必要とする情報(以下、「隠蔽情報」という)を連絡するための葉書(以下、圧着葉書という)によく利用される。
【0004】
すなわち圧着葉書は圧着される面に隠蔽情報を印刷することで、隠蔽情報を外部に漏らすことなく郵送することができ、かつ受取人の側で容易に開封して隠蔽情報を読み取ることができるのである。また、隠蔽部位は、所定圧力で剥離可能に接着され、通常は剥離後に人為的に隠蔽部位を再度接着することは困難とされるので、受取人のみによる隠蔽情報の確認が確保される。
【0005】
また、圧着葉書は、一般に使用されている葉書と同サイズに構成することが容易であることから、普通郵便と同料金で郵送可能にすることができる利点があり、これまでの封筒を用いた隠蔽情報の伝達手段や封書式のダイレクトメールに代わる隠蔽情報伝達手段として急速に利用が広まっている。
【0006】
以上述べた圧着葉書の態様から明らかなように、圧着葉書では加工時に所定の圧力で接着できること、必要時に容易に剥離可能であること、隠蔽情報を隠蔽できること(隠蔽性)と、受け取った後に情報を読み取れること(易剥離性)が必要であり、圧着用紙においては、かかる要求を満足するような基材紙の設計が常に求められる。
【0007】
しかしながら、従来技術においては上記に示す要求をすべて満足に満たすには至っていない。
【0008】
特開2001−109383号公報には、紙基材、粘着剤層および剥離材が順に積層された画像記録用粘着シートにおいて、基材紙中に一般的な填料を10〜30重量%含有させる技術が開示されているが、この技術における填料は、電子写真印刷時におけるカールの防止やインクジェット印刷におけるにじみの防止に寄与しているものの、接着剤層と基材紙と層間剥離強度確保、擬似圧着における圧着強度の安定性に関しては示唆がなく、従前の一般的な填料添加の作用からして向上しているとは考えられない。
【0009】
また、本出願人は擬似圧着用紙に関し、特開2004−67858号公報において、基材紙の密度を嵩高剤を用いて0.5〜0.9g/m2に調整することで、剥離強度変化率低減と高不透明度化を図る技術を提案したが、圧着葉書に用いるにあたり郵便法に定められた重量を遵守するための、米坪・紙厚の調整を容易に行える操業改善の必要性があるとともに、このように極めて低密度化された用紙では、かならずしも印刷、加工性が容易ではないことから改善の余地がある。さらに、嵩高剤の使用は基材紙の強度が低下するため再剥離時に基材紙が破断したり、厚み方向において開裂が生じるおそれが生じることがある。特に、古紙パルプはバージンパルプと異なり、パルプ強度が低いためこの問題は顕著に生じる可能性がある。
【0010】
また、本出願人は、圧着用紙に求められる接着性と剥離性を向上させる方策として、特開2004−107837号公報において、ショア硬さがHS70〜95である弾性ロールと金属ロールとを組み合わせたカレンダーによってカレンダリングされ、マイクロトポグラフによる平滑度が設定圧力24.4kg/cm2で8%以上とすることで、再剥離可能に接着した圧着用紙が、郵送途中に不用意に剥離し、隠蔽情報が開示されてしまうことがない剥離強度を得ることができる技術を提案している。しかし、この技術では、新たなカレンダー設備が必要になるとともに、圧着用紙のクッション性が低下するため、圧着加工時に常に一定の剥離強度とすることが困難となるおそれがあった。
【0011】
また、本出願人は、圧着用紙の接着剤に主として使用される天然ゴムが経時変化にて黄変化や接着強度に変化が生じる問題の改善として、特開平10−166764において、擬似接着剤層に接触する部位のpHを5.5以上とした中性紙を基材紙として接着剤の酸化による劣化現象を防止する技術を提案している。しかし、接着剤の劣化現象は本文献に開示される大気中の酸素等との接触および紫外線吸収による酸化のみならず、基材紙に含まれる原料を構成する原料パルプ中のリグニンにも起因することが知見されている。特にリグニン量の多い機械パルプの存在によって接着剤の劣化現象が早まることが知見されている。したがって、紙パルプを対象としないバージンパルプのみを原料とした場合には、本技術は比較的有用であるが、高機械パルプを多く含有する古紙パルプの利用の拡大を考慮すると充分な接着剤の劣化防止技術足り得るとはいえない。
【特許文献1】特開2001−109383
【特許文献2】特開2004−67858
【特許文献3】特開2004−107837
【特許文献4】特開平10−166764
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする主たる課題は、脱墨フロスを主原料にした循環使用可能な再生粒子の特徴を十分に活かして、資源を有効利用した、隠蔽性、接着性、剥離性、オフセット印刷適性を向上させた圧着葉書用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決した本発明およびその作用効果は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
原料パルプと填料とを主成分として含有する基材紙の表裏面の少なくとも一方の面に接着剤層を有する圧着用紙であって、
前記填料の全部または一部が再生粒子であることを特徴とする圧着用紙。
【0014】
<請求項2記載の発明>
マイクロトポグラフを用いて24.4kg/cm2加圧下、波長0.5μmで測定される接着剤層表面の波長光学的接触率が8%以上である請求項1に記載の圧着用紙。
【0015】
<請求項3記載の発明>
再生粒子は、脱墨フロスを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、焼成工程および粉砕工程を経て得られる、カルシウム、ケイ素およびアルミニウムを含むものであり、かつX線マイクロアナライザーによる元素分析でそれらカルシウム、ケイ素およびアルミニウムの質量割合が酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35である請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の圧着用紙。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、再生粒子が有する高い不透明性、ポーラス性、クッション性により、圧着用紙に必要な、加工時に所定の圧力で接着できること、必要時に容易に剥離可能であること、隠蔽情報を隠蔽できること(隠蔽性)といった、要求が満たされる。さらに、再生粒子のポーラス性に起因して接着剤層に対する高いアンカー性が基材紙に示され、もって接着剤層と基材紙との間における層間剥離が防止される。さらに、再生粒子は安定性が高いため品質管理が容易であり、もって安定した中性抄紙が可能となる。そして、中性抄紙によって古紙パルプ中に含まれる機械パルプに起因する接着剤劣化が防止可能となり、もって、圧着用紙における古紙パルプの利用促進が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次いで、本発明の実施の形態を以下に詳述する。
本発明は、原料パルプと填料とを主成分として含有する基材紙の表裏面の少なくとも一方の面に接着剤層を有し、前記填料の全部または一部が再生粒子である圧着用紙である。
【0018】
本発明における再生粒子とは、脱墨フロスを主原料(原料の50%以上)として、少なくとも脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られる粒子であり、好適には、カルシウム、ケイ素およびアルミニウムを含む。前記アルミニウムは、クレー中のアルミニウムや、抄紙工程における助剤として添加される3価の硫酸アルミニウム、18水和物、不純物としてタルクに含有されるアルミニウムが主たる由来源である。アルミニウムは、アニオン性を示す従来の無機填料と比べ、アニオン性のパルプ繊維との結合力が向上するため、アルミニウムを含有せしめると歩留り、薬品定着性が向上される。
【0019】
一方、ケイ素からなるシリカの1次粒子は微細なので光学的屈折率が高く、ケイ素を含有せしめることにより、不透明度が向上される。
【0020】
他方、カルシウムは原料パルプに内添した場合に、特に紙の白色度が向上される。ここで、炭酸カルシウムには、六方結晶系のカルサイト結晶(方解石)や、斜方結晶系のアラゴナイト結晶(あられ石)などの同質異像が存在する。天然に産する石灰石はその殆どがカルサイト結晶であり、貝殻類にはカルサイト結晶のほか、アラゴナイト結晶も存在する。さらに炭酸カルシウムには、天然ではないが、バテライト結晶も存在する。前記脱墨フロスから得られるカルシウムは多種多様であるが、焼成凝集化することでほぼ均一の炭酸カルシウム性状となる。したがって、かかるカルシウムは再生粒子そのものの品質安定性に寄与し、該再生粒子は、カルシウム、ケイ素、アルミニウムといった異なる成分で構成される凝集体でありながら、多孔性で安定したクッション性を示す。
【0021】
ここで、再生粒子中におけるカルシウム、ケイ素およびアルミニウムの割合は、X線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)にて元素分析で測定することができ、本発明に好適な割合は、酸化物換算で、カルシウム:ケイ素:アルミニウムが30〜82:9〜35:9〜35、さらには40〜82:9〜30:9〜30、特に60〜82:9〜20:9〜20の質量割合である。なお、特に再生粒子が後述するシリカ被覆再生粒子である場合には、これらカルシウム、ケイ素およびアルミニウムの割合は、酸化物換算で、カルシウム:ケイ素:アルミニウムが30〜62:29〜55:9〜35であることが好ましい。このようにカルシウム、ケイ素およびアルミニウムの質量割合に調整すると、再生粒子の細孔容積を0.15〜0.60cc/g、細孔表面積を10〜25m2/g、細孔半径を300〜1000オングストロームとすることができる。また、再生粒子中におけるカルシウム、ケイ素およびアルミニウムの元素分析における酸化物換算の合計含有割合は、好ましくは90質量%以上、特に好ましくは93質量%以上である。
【0022】
再生粒子中におけるカルシウム、ケイ素およびアルミニウムの酸化物換算割合の調整方法としては、脱墨フロスにおける原料構成を調整する方法のほか、乾燥・分級工程や焼成工程において出所が明確な塗工フロスや調整工程フロスをスプレー等で工程内において含有させる方法や、焼却炉スクラバー石灰を含有させる方法などによって調整することもできる。
【0023】
また、例えば、再生粒子中のカルシウムの調整には中性抄紙系の排水スラッジや塗工紙製造工程の排水スラッジ量を調整し、ケイ素の調整には、不透明度向上剤として多量添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを用い、アルミニウムの調整には、酸性抄紙系等の硫酸バンドの使用がある抄紙系の排水スラッジやクレー使用の多い上質紙抄造工程における排水スラッジを適宜用いて調整することができる。この場合において、カルシウム、ケイ素およびアルミニウムの合計含有割合を、酸化物換算で90質量%以上に調整するにあたっては、酸化により白色度を低下させる起因物質である鉄分を選択的に除去することにより達成するのが望ましく、その手段としては、例えば排水スラッジの凝集処理に鉄分を含有しない凝集剤を使用する手段、製造設備工程を鉄以外の素材で設計またはライニングし、摩滅等により鉄分が系内に混入するのを防止したり、さらには乾燥・分級設備内に磁石等の高い磁性体を設置して鉄分を除去する手段等を採用することができる。
【0024】
また、再生粒子は、吸油量が30〜100ml/100gであるのが望ましい。
【0025】
他方、再生粒子を得るにあたり、前述した脱水工程、乾燥工程および焼成工程等を経た後の粉砕工程前に40μm以下の粒子が90%以上となるよう処理するのが望ましい。これにより、通常行われている乾式粉砕による大粒子の粉砕及び湿式粉砕による微粒子化といった複数段の粉砕処理を行うことなく、湿式による1段粉砕処理が可能となる。そして、コールターカウンター法による粒度分布の微分曲線における平均粒子径のピーク高さを30%以上とすることができ個々の粒子の粒子径のばらつきを小さくできる。
【0026】
また、再生粒子を得るにあたり、再生粒子の製造設備に各種センサーを設け、被処理物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行うことが望ましい。
【0027】
また乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロスを造粒することが好ましく、さらには造粒物の粒度を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましく、粗大や微小の造粒粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。なお造粒においては、通常の造粒設備を使用することができ、回転式、攪拌式、押出式等の設備が好適である。
【0028】
製造設備において、再生粒子以外の異物を除去することが好ましく、例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で砂、プラスチック、金属等の異物を除去することが、除去効率の点で好ましい。特に鉄分は、先にも述べたが酸化により再生粒子の白色度低下の起因物質を生成するため、鉄分の混入を避け、選択的に除去することが好ましい。したがって、各工程を鉄以外の素材で設計またはライニングし、摩滅等により鉄分が系内に混入することを防止するとともに、さらに乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し、選択的に鉄分を除去することが好ましい。
【0029】
ここで、本形態では、填料として再生粒子を単独で使用することもできるが、かかる再生粒子と顔料として通常使用される、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン、合成シリカ、水酸化アルミニウム等の無機粒子、ポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の合成高分子微粒子等から選ばれる少なくとも1種の顔料(粒子)を併用することもできる。
【0030】
さらに、必要に応じて、例えばクレー、炭酸カルシウム、二酸化チタンや製紙スラッジを原料として、特に脱墨フロスを原料として再生された無機粒子などの填料が添加されていてもよい。
【0031】
さらに本発明においては、原料パルプに内添する再生粒子として、粒子の表面をシリカで被覆した、シリカ被覆再生粒子を特に好適に用いることができる。前記再生粒子の表面にさらにシリカを析出させ、シリカ被覆再生粒子とすることで、原料パルプに内添した場合には、シリカで被覆していない再生粒子を用いた場合よりもさらに、紙の白色度、不透明度、表面強度、インク乾燥性、インク吸収ムラ、嵩高といった各効果を著しく向上することができる。また、循環使用における古紙処理工程において、水酸化ナトリウムと反応させて緩衝剤や漂白助剤として製紙用原料、無機粒子の循環使用にも寄与させることができる。
【0032】
ここで、再生粒子の表面を被覆するシリカについては、天然に産出するシリカではなく、何らかの化学反応による合成シリカであれば特に制限なく使用することが可能である。具体的には、例えばコロイダルシリカ、シリカゲル、無水シリカなどがあげられる。これらの合成シリカは、高比表面積、ガス吸着能の高さ、微細性、細孔への浸透力や吸着力の大きさ、付着性の高さ、高吸油性などの優れた特性を活かして、幅広い分野で利用されているものである。これらのうち、コロイダルシリカは、ケイ酸化合物から不純分を除去して無水ケイ酸ゾルとし、pHおよび濃度を調整してゾルを安定化させた、球状、連鎖状、不定形等の形状を有する非晶質シリカである。シリカゲルは、ケイ酸ナトリウムを無機酸で分解することによって得られる含水ケイ酸である。また無水シリカは、四塩化ケイ素の加水分解によって得られるものである。
【0033】
再生粒子の表面にシリカを析出させ、シリカ被覆再生粒子を得る方法には特に限定がないが、例えば以下の方法を好適に採用することができる。まず、再生粒子をケイ酸アルカリ溶液に添加、分散させ、スラリーを調製した後に加熱攪拌しながら、液温を70〜100℃程度、より好ましくは密閉容器内で所定の圧力に保持して酸を添加し、シリカゾルを生成させる。次いで最終反応液のpHを8〜11の範囲に調整することにより、再生粒子の表面にシリカを析出させることができる。このようにして再生粒子の表面に析出されるシリカは、ケイ酸アルカリ(例えばケイ酸ナトリウム:水ガラス)を原料として、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸の希釈液と高温下で反応し、加水分解反応とケイ酸の重合化により得られる、粒子径が10〜20nm程度のシリカゾル粒子である。
【0034】
また、ケイ酸ナトリウム溶液等のケイ酸アルカリ溶液に希硫酸等の酸を添加することによって生成する、粒子径が数nm程度のシリカゾル微粒子を、再生粒子の多孔性を有する表面全体を被覆するように付着させ、該シリカゾル微粒子の結晶成長に伴う、無機微粒子表面上のシリカゾル微粒子と再生粒子に包含されるケイ素やカルシウム、アルミニウムとの間で生じる結合により、再生粒子の表面にシリカを析出させることもできる。この場合、ケイ酸アルカリ溶液に酸を添加する際のpHは、中性〜弱アルカリ性の範囲とし、好ましくはpHを8〜11の範囲に調整する。これは、pHが7未満の酸性条件になるまで酸を添加してしまうと、シリカゾル粒子ではなくホワイトカーボンが生成する恐れが生じるからである。
【0035】
なお、前記ケイ酸アルカリ溶液の種類には特に限定がないが、入手が容易である点からケイ酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)が特に望ましい。かかるケイ酸アルカリ溶液の濃度としては、再生粒子中のシリカ成分が低下し、再生粒子の表面にシリカが析出し難くならないようにするには、溶液中のケイ酸分(SiO2換算)が3質量%以上であることが好ましく、再生粒子の表面に析出されるシリカが、シリカゾルの形態からホワイトカーボンになり、再生粒子の多孔性が阻害され、不透明度やトナー定着性の向上効果が不充分になる恐れをなくすには、かかるケイ酸分が10質量%以下であることが好ましい。
【0036】
一方、本形態の圧着用紙は、JIS P 8251に基づいて測定される用紙の灰分が6〜22%である。灰分が6%未満であると不透明度が低く印刷情報の隠蔽性を確保できない。また、特に再生粒子の存在による原料パルプ繊維間の空隙や再生粒子そのものが生み出すクッション性が低く、接着剤層と基材紙との層間剥離強度の向上が図れない。22%以上とすると圧着用紙としての紙質強度を維持することが困難となるとともに剥離時における隠蔽情報の毀損や基材紙が破断する問題が生じる。
【0037】
また、灰分中における再生粒子の割合は50〜100%、好適には前記灰分中に60〜100質量%、より好適には前記灰分中の80〜100質量%となるようにするのが望ましい。灰分中における再生粒子の割合は、X線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150、(株)日立製作所/(株)堀場製作所製)にて元素分析を行い、カルシウム、ケイ素、アルミニウムの各元素が複合して検出された無機粒子塊が占める割合から算出できる。再生粒子の割合が50%未満では、再生粒子が有する不透明性、クッション性、多孔質性からなる接着剤との親和性やインク吸収性の発現が不十分となる場合がある。
【0038】
他方、本発明の基材紙は、バージンパルプと古紙パルプの混合パルプ、好適に古紙パルプのみを原料パルプとして用いることができ、また、基材紙を構成する原料パルプ種において機械パルプの割合が5%以上とすることが可能である。基材紙からの機械パルプ量の分析は、JIS P 8120に基づいて分析することができる。
【0039】
基材紙に利用可能なバージンパルプの種類には特に限定がなく、例えば上質紙などの製造に用いられている既知のパルプを用いることができる。かかるバージンパルプの具体例としては、例えば亜硫酸パルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)や針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)などのクラフトパルプ(KP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)、加圧下で砕木した漂白パルプ(BPGW)などがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を同時に用いることができる。かかるバージンパルプは、必要に応じて漂白して使用するが、この場合には塩素を用いない漂白方法を採用することが好ましい。すなわち、漂白パルプを用いる場合には、TotalChlorineFree(TCF)やElementalChlorineFree(ECF)などの無塩素漂白にて漂白されたパルプを用いることが望ましい。かかる無塩素漂白パルプは、元素状塩素および次亜塩素酸を使用せず、オゾン漂白や酸素漂白が施されたパルプであり、明確ではないが、パルプを構成する繊維(セルロース)の末端基が酸素により活性化されているので、カチオン系湿潤紙力剤やアニオン系乾燥紙力剤との親和性が高く、紙力向上効果がより、本発明において好適に発揮されるパルプである。
【0040】
一方、古紙パルプとしては、漂白処理された、特に二酸化チオ尿素(FAS)にて還元漂白された古紙パルプを好適に使用することができる。FAS漂白された古紙パルプは、従来の塩素漂白パルプと比較すると、理由は明確ではないが、カチオン系湿潤紙力剤やアニオン系乾燥紙力剤との親和性が高く、紙力向上効果がより好適に発揮され、環境保護や低コスト化を実現することができる。
【0041】
本発明において原料パルプ中のパルプ種において機械パルプの含有量は5質量%以上であることが好ましい。このように機械パルプを5質量%以上使用することにより、同一坪量のバージンパルプのみの基材紙と比較して不透明度が高く記録情報の隠蔽性が高くなるので、圧着用紙を例えば圧着葉書などにより好適に使用することができる。なお基材紙の表面強度を充分に維持させることを考慮すると、原料パルプ中の機械パルプの含有量は50質量%以下であることが好ましい。
【0042】
基材紙の原料パルプとしては、圧着用紙の耐水性向上、具体的には基材紙の紙力向上の点から、JISP8120の「7.試験片および離解」に記載の方法に準拠したカナディアンスタンダードフリーネス(以下、CSFという)が350mL以上、好ましくは400mL以上、かつ600mL以下、好ましくは550mL以下の範囲に叩解されたものである。かかる原料パルプのCSFが350mL未満の場合には、紙力向上効果に発現せずに、基材紙自体の剛度、強度が低下し、印刷適性に劣ることがある。また原料パルプのCSFが600mLを超える場合には、地合が悪化し、例えばインクジェット印字時の印字適性に劣ることがあり、地合ムラによる基材紙の表面強度ムラが生じたり、易剥離性や接着強度に問題が生ずることがある。なお、原料パルプの叩解には、レファイナーやニーダーなどの既知の叩解機が用いられるが、分級機により短繊維分、長繊維分を分級することでも原料パルプのCSFの調整が可能である。処理濃度、処理時間を適宜調整することで、CSFが前記範囲内の原料パルプを得ることができる。
【0043】
本発明に記載の再生粒子は、ポーラスな多孔質で不定形であり、構成にカルシウム:ケイ素:アルミニウムが30〜62:29〜55:9〜35の元素割合を持つため、カチオン性湿潤紙力増強剤、アニオン性乾燥紙力増強剤ともに親和性が高く、再生粒子を填料としてしようしても、紙質強度の低下が少ないという効果も得られる。
【0044】
原料パルプから基材紙を製造するにあたっては、原料パルプにカチオン系湿潤紙力剤及びアニオン系乾燥紙力剤を添加するのが望ましい。該カチオン系湿潤紙力剤は、基材紙の湿潤引張強度を向上させる作用を有し、またアニオン系乾燥紙力剤は、カチオン系湿潤紙力剤の基材紙への定着性を向上させる作用を有する。
【0045】
前記カチオン系湿潤紙力剤としては、例えばポリアミド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂、ポリエチレンイミンなどの樹脂にカチオン性を付与したものがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を同時に用いることができる。これらの樹脂は、例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂の場合には、パルプ繊維への定着を促進するために、エチレンジアミンやジエチレントリアミンなどの多価アミンで変性し、カチオン性を付与する。メラミン−ホルムアルデヒド樹脂の場合には、塩酸存在下で加熱縮合させ、カチオン性を帯びた、いわゆる酸コロイドの形状とする。これらカチオン系湿潤紙力剤のなかでも、近年の遊離ホルマリンの規制などから、環境面を考慮すると、ポリアミド樹脂、ポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂やポリエチレンイミンを好適に使用することができる。
【0046】
また前記アニオン系乾燥紙力剤としては、例えばポリアクリルアミド(以下、「PAM」という)、PVA、カルボキシメチルセルロースなどがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を同時に用いることができる。かかるアニオン系乾燥紙力剤としてPVAを用いた場合には、後述するように、接着剤層を形成する接着剤組成物にPVAが含まれていることから、基材紙と接着剤層とのなじみがよりよくなり、両者の接着性をさらに高めることができる。
【0047】
原料パルプに対するカチオン系湿潤紙力剤及びアニオン系乾燥紙力剤の添加量は、特に限定されるものではなく基材紙の湿潤引張り強度が0.7〜1.8kgf/15mm(MD)となるように適宜調整するのが望ましい。基材紙の充分な耐水性向上効果を得る場合には、原料パルプ103kg(絶乾)に対してカチオン系湿潤紙力剤が10部以上であることが好ましいものの、必要以上の使用による高コスト化を避けることと同時に、基材紙を古紙としてリサイクルできるよう環境への影響を考慮する場合には、原料パルプ103kg(絶乾)に対してカチオン系湿潤紙力剤が20部以下、さらには15部以下とすることが好ましい。15部を超えて20部以下の範囲では離解可能であるものの、離解時間がかかる、または離解させるために次亜塩素酸ソーダ等の薬品添加が必要となる。15部以下であれば、通常の高濃度パルパーで離解可能である。
【0048】
前述のカチオン系湿潤紙力剤及びアニオン系乾燥紙力剤は、両者のイオンバランスをとって、カチオン系湿潤紙力剤が抄造時における基材紙に定着しやすくなるように両者の配合割合を調整するものである。具体的には、カチオン系湿潤紙力剤とアニオン系乾燥紙力剤との割合(カチオン系湿潤紙力剤/アニオン系乾燥紙力剤(質量比))が1/4以上、さらには1/3.9以上、また1/3以下、さらには1/3.1以下となるように調整することが好ましい。かかる両者の割合が1/4未満の場合には、湿潤引張強度の向上効果が小さくなり、また1/3を超える場合には、アニオン系乾燥紙力剤の配合割合が少なくなるため、カチオン系湿潤紙力剤の定着性が低下する。
【0049】
本発明に記載の再生粒子は、ポーラスな多孔質で不定形であり、構成にカルシウム:ケイ素:アルミニウムが30〜62:29〜55:9〜35の元素割合を持つため、カチオン性湿潤紙力増強剤、アニオン性乾燥紙力増強剤ともに親和性が高く、再生粒子を填料としてしようしても、紙質強度の低下は少ない効果が得られる。
【0050】
基材紙の製造方法には特に限定がなく、中性若しくは酸性領域において、用紙の一般的な抄紙技術により抄紙して製造することができる。すなわち、原料パルプをスラリー化したのち、長網抄紙機、丸網抄紙機、ツインワイヤータイプ抄紙機、多層抄紙機などを使用して抄紙すればよい。
【0051】
基材紙は、その湿潤時の引張強度(「湿潤引張強度」ともいう。)が特定の範囲にあることは重要である。つまり、湿潤引張強度が大きすぎる場合には、水に濡れても極めて破れにくく、接着剤塗布後の用紙としては剥離して印刷された情報を確実に読み取ることが充分に可能な圧着用紙を提供することができるが、基材紙を製造する工程中で発生する損紙は離解させるに極めて難があるために古紙として再利用することができず、環境に配慮されたものとはいえない。逆に、湿潤引張強度が低い場合には水に濡れた場合などに基材紙が層間剥離を起こし、圧着用紙として重ね合わせた接着剤層の界面剥離が実現できなくなってしまう。このため湿潤引張強度が特定の範囲にあることが望ましく、本発明にかかる基材紙では、湿潤引張強度は0.7〜1.8kgf/15mm(MD)の範囲とすることが好ましい。基材紙のMD方向の湿潤引張強度が0.7kgf/15mm(MD)未満の場合には、後に、カチオン系湿潤紙力剤を含有した接着剤組成物からなる接着剤層を塗布しても、圧着用紙全体の湿潤紙力が充分ではなくなるおそれがあり、水に濡れた場合等において界面剥離が実現できなくなるために圧着面に印刷された情報を確実に読み取ることができないことがある。湿潤引張強度が1.8kgf/15mm(MD)を超える場合には、基材紙を古紙として再利用することが困難となる。
【0052】
さらに、基材紙は、湿潤時の紙層間剥離強度が10〜50gf/15mmの範囲とすることが好ましい。10gf/15mm未満では、水に濡れた場合等において紙層間で剥離され、圧着面に印刷された情報を確実に読み取ることができない。湿潤時の紙層間剥離強度が50gf/15mmを超える場合には、基材紙を古紙として再利用することが困難となり資源回収の問題から好ましくない。
【0053】
ここで上述の湿潤引張強度と湿潤時の紙層間剥離強度について詳述する。本発明にかかる湿潤引張強度とは、JIS P 8135に記載の方法に準拠し、基材紙を水に10分間浸漬後に測定した値である。紙層間剥離強度とは、基材紙を水に10分間浸漬後にT型剥離力を測定した値である。水への浸漬時間を10分間と設定したのは、基材紙からなる圧着用紙は水に浸漬して使用することを前提とするものではなく、例えば圧着葉書などとして使用する際に、配送中の雨や事故などにより水に濡れた場合であっても耐え得る耐水性を有するものであればよいためである。なお、かかる湿潤引張強度・湿潤時の紙層間剥離強度は水に濡れた状態で測定したものである。
【0054】
他方、基材紙表面には必要に応じて、無機顔料、澱粉などを含むサイズプレス液を塗布して、表面強度をさらに高めることができる。また本発明に用いられる基材紙の坪量には特に限定はなく、例えば100〜150g/m2程度であればよいが、圧着葉書用途であれば、郵便法に定められた重量範囲に入るように抄造する必要はある。
【0055】
一方、本発明にかかる圧着用紙は、マイクロトポグラフを用いて24.4kg/cm2加圧下、波長0.5μmで測定される接着剤層表面の波長光学的接触率が8%以上とされているのが望ましい。接着剤層の表面の平滑性は、加圧力下において評価することが必要である。本発明における波長光学的接触率は、市販のマイクロトポグラフ(商標、東洋精機製作所(株)製)を使用して測定することができる。
【0056】
ここで、マイクロトポグラフによる光学的接触率について簡単に説明する。被測定面をプリズムの一面に圧着し、プリズム側から45度の角度で平行光を入射すると、屈折率の異なる媒質の境界面で反射を起こす。このとき光はその波長に応じて境界面、すなわち被測定面の内部にもぐりこんで反射する(短い波長ほど、もぐりこむ深さが浅いため、表面の近傍で反射しやすい)。マイクロトポグラフは、このような光の性質を利用して、入射光量に対する反射光量の比率から、加圧下におけるプリズムと被測定面との間の光学的接触率(%:パーセントで表示する)を測定するものであり、この光学的接触率の値が大きいほど、加圧下における被測定面の表面平滑性がよいことを意味するものである。
【0057】
本発明に用いるマイクロトポグラフ(東洋精機社製)では、特定波長として0.5,0.9,1.3,1.7μmの4波長を選び、それぞれの特定波長に対する光学接触率F(λi)を求め、これから光学接触率曲線F(λ)を推定する。ここで、F(λ)はある波長の入射した光量に対する、その波長に見合った深さにおいて紙中に滲透してしまう光量の比であるから、逆に紙中に滲透せず、反射してくる光量との比を波長λについて0→∞まで積分するなら、紙の窪みの総容量あるいは窪みの平均深さに比例した物理量が得られる。これを次式で示されるRp(PrintingRoughness)と定義し、その値が大きい程表面が粗く、平滑性が悪いと判定することができる。
Rp=∫〔1−F(λ)〕dλ
【0058】
本発明においては、圧着用紙を測定するにあたっては、接着剤層の塗工量が6〜12g/m2における接着剤層表層面を前記のマイクロトポグラフを使用して24.4kg/cm2の圧力でプリズムの一面に圧着し、波長0.5μmの光を用いて測定したときの光学的接触率を測定する。8%以上、好ましくは10%以上の範囲であるのが望ましく、特に好ましくは10〜30%の範囲とするのが望ましい。光学的接触率が8%以下では、加圧下における表面平滑性が充分ではないことがあり、接着剤層同士の良好な密着性が得られないことがある。一方、光学的接触率が30%を越える場合は、加圧下の表面平滑性は良好になり接着剤層同士の密着性が向上する反面、シーラーにおける接着強度変動が大きくなり、安定した剥離強度を得られなくなる問題が生ずるおそれがある。
【0059】
本発明における光学的接触率は、基材紙を構成する原料パルプの配合、填料として内添する再生粒子の配合割合にて適宜調整可能である。特に、基材紙の紙質強度を確保するため、基材紙の原料パルプ種において、少なくとも機械パルプを5〜50%、NBKPを19〜25%配合し、機材紙中の全填料において、再生填料の割合を60%以上の割合で配合することで好適に得られ、オフセット印刷適性も良好になる。
【0060】
次に、本発明にかかる圧着用紙の接着剤層について詳説する。接着剤層は、例えば天然ゴムを含むバインダー成分、PVAおよび微細粒子を少なくとも含有した接着剤組成物から形成されることが好ましい。また、塗布後の湿潤紙力をさらに高めて圧着葉書としたさいに高耐水性となり、水に濡れた場合であっても記録情報を毀損することなく必要時に圧着面を容易に剥離して情報を確実に読み取ることができる効果が向上されることから、接着剤組成物中にカチオン系湿潤紙力剤を含有するのが望ましい。
【0061】
前記バインダー成分には、例えば天然ゴムが含まれるが、天然ゴムのほかにも、通常接着剤のバインダー成分として用いられるラテックス、合成ゴム、合成樹脂などを併用することができる。そのなかでも、例えば天然ゴムを無硫黄加硫し、メタクリル酸メチルと混合した天然ゴムラテックス、天然ゴムにメタクリル酸メチルをグラフト共重合させて得られた天然ゴムラテックス、アクリル変性ゴムラテックス、ゴムラテックスと保護コロイド系アクリル共重合エマルジョンとの混合物などを単独でまたは2種以上を同時に、耐ブロッキング性、耐経時劣化、インク着肉性などの点から特に好適に使用することができる。バインダー成分中の天然ゴムの量には特に限定がなく、通常50質量%以上、さらには55〜95質量%程度であればよい。
【0062】
また前記バインダー成分としての、その特性を損なわない限り、澱粉、分散剤、保湿剤、耐水化剤、界面活性剤などが含まれていてもよい。かかる分散剤としては、例えばポリエチレンオキサイド、ステアリン酸カルシウムなどがあげられる。また保湿剤としては、例えばアクリル酸、アクリル酸エステル、カルボキシメチルセルロースなどがあげられる。耐水化剤としては、例えば尿素ホルマリン樹脂、ポリアミドポリ尿素系樹脂などがあげられ、界面活性剤としては、例えばシリコーンワックス「GZ−650」(商品名、星光PMC社製)などがあげられる。
【0063】
微細粒子は加圧接着された接着剤層同士の擬似接着性をコントロールし、必要時における圧着面の剥離を容易にする。前記微細粒子としては、本発明において基材紙に含有させた再生粒子を好適に使用できる。再生粒子は、微細な粒子の不定形でポーラスな凝集体であり、接着剤層の強度を向上し、そのクッション性から剥離強度の安定化を図ることができる。他の微粒子としては、例えばシリカ、クレー、炭酸カルシウムなどの顔料のほか、平均粒子径の異なる非晶質合成シリカ粉末、焼成カオリン、酸性白土、活性白土、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、ゼオライト、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ポリエチレン微粒子、ポリスチレン微粒子などがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を同時に用いることができる。本発明の圧着用紙においては、基材紙、接着剤層を含め灰分を6〜22%の範囲内に収めることが、郵便法に基づく圧着用紙の重量と必要とする圧着用紙強度の両立のため好ましい。
【0064】
微細粒子の粒子径があまりにも小さい場合には、接着剤層のブロッキングや再剥離不良を引き起こし、隠蔽情報の毀損をきたす問題が生じ、印刷や加工工程で搬送不良や重送の原因となる傾向があるので、平均粒子径は1μm以上、さらには3μm以上であることが好ましい。また微細粒子の粒子径があまりにも大きい場合には、不用意な剥離が生じて隠蔽性を損なう恐れがあり、微細粒子が接着剤層より突出した特異な凸部を形成するため、印刷不良や加工、印刷工程における作業性不良が起こったり、印刷見栄えが低下する傾向があるので、平均粒子径は25μm以下、さらには20μm以下であることが好ましい。
【0065】
微細粒子の配合量は、接着剤層同士の擬似接着性が所望の程度に充分にコントロールされるようにするには、バインダー成分100質量部に対して1質量部以上、さらには3質量部以上であることが好ましい。また微細粒子があまりにも多い場合には、接着剤層表面における微細粒子の固定が不充分になり、加工や印刷・記録工程において微細粒子の脱落が生じ、擬似接着性の低下や印刷・記録適正、品質の低下を招く恐れがあるので、微細粒子の配合量は、バインダー成分100質量部に対して10質量部以下、さらには8質量部以下であることが好ましい。なお本発明においては、粒子径が異なる2種以上の微細粒子を同時に用いてもよい。
【0066】
接着剤組成物の調製方法には特に限定がなく、例えば天然ゴムや必要に応じてその他の成分を含むバインダー成分の分散液に、適宜配合割合を調整したPVAおよび微細粒子を添加し、均一組成となるように適温にて混合すればよい。得られた接着剤組成物の粘度や固形分濃度は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定がなく、圧着用紙における接着剤層としての作用を充分に発揮し得る範囲であればよい。例えば25℃での粘度(B型粘度計にて測定)が13×10-3〜35×10-3Pa・s程度であり、固形分濃度が5〜50%程度であることが好ましい。例えば前記組成の接着剤組成物を前記基材紙に塗工することにより、接着剤層が形成される。
【0067】
接着剤組成物の塗工方法には特に限定がなく、通常の塗工機を用いた方法を採用することができる。かかる塗工機としては、例えばエアーナイフコーター、ブレードコーター、ロッドメタリングコーター、カーテンコーター、ロールコーターなどがあげられるが、特に着色した接着剤組成物を塗工する場合には、より均一に塗工することができるカーテンコーターを用いることが好ましい。またこれら塗工機を用いる方法のほかにも、例えばグラビアオフセット、凸版、平板などの印刷方式で印刷する方法も採用することができる。
【0068】
接着剤組成物の塗工量は、6〜12g/m2とすることが好ましい。6g/m2未満の場合には、所望の接着剤層同士の接着力が得られず意図しない剥離が生じやすくなり、また12g/m2を超えると、接着力が強くなりすぎて易剥離性が低下しやすくなるとともに、オフセット印刷時にブランケット上への塗料堆積の原因につながり、印刷時の品質トラブルを招きやすくなるので、6〜12g/m2さらには8〜10g/m2とすることが好ましい。
【0069】
基材紙上に接着剤組成物を塗工した後には、塗工面を平滑化処理することが好ましく、かかる平滑化処理を行う際には、通常のカレンダー処理を採用することができる。カレンダー処理は、塗工機と一連のカレンダー(オンマシンカレンダー)により行うことも可能であるし、塗工機と一連ではなく完全に別体のカレンダー(オフマシンカレンダー)により行うことも可能である。カレンダーの種類は特に限定されず、金属ロールと弾性ロールとを備えるカレンダー、金属ロール同士を組み合わせたカレンダーなどの既知のカレンダーを使用することができる。
【0070】
ここで基材紙上に形成された接着剤層の塗工量が、あまりにも少ない場合には、圧着性が低く、例えば圧着葉書の郵送中に剥離が生じてしまう恐れがあり、またあまりにも塗工量が多い場合には、接着剤層強度が低下するとともに圧着時に接着剤組成物のはみだしなどが生じる恐れがあり、圧着性と剥離性を両立させるためには接着剤層の厚みを10〜20μm程度に調整することが好ましい。
【0071】
以上詳述の圧着用紙は、情報が印刷される前に基材紙に接着剤層が形成される、いわゆる先糊方式と呼ばれるものである。先糊方式の圧着用紙から、例えば圧着葉書を作成する場合には、不変情報である共有データを圧着用紙に印刷した後、個人情報などの隠蔽を必要とする可変データの印刷を接着剤層に印刷し、少なくともかかる隠蔽を必要とする可変データを隠蔽するように圧着用紙を2つ折りもしくは3つ折り(Z折り)などに折り曲げ、圧着シーラーなどにより加圧接着すする。このように構成された圧着葉書は、古紙パルプの利用促進に寄与するとともに、圧着葉書としての基本性能を充分に発揮する。また、高耐水性であり、水に濡れた場合であっても、接着剤層の破壊がなく、必要時に圧着面を容易に剥離することができ、圧着面に印刷された情報を確実に読み取ることができる。
【0072】
なお、本発明の圧着用紙は、このような先糊方式で形成されたものに限定されるものではなく、後糊方式であってもよい。
【実施例】
【0073】
次に、本発明の圧着用紙を以下の実施例および比較例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0074】
(基材紙の作製について)
表1に示す配合比のパルプを原料パルプとするCSF420ccに調整したパルプスラリーに、カチオン系湿潤紙力剤(カチオン性ポリアミド樹脂、商品名:WS4002、星光PMC社製、固形分25%)およびアニオン系乾燥紙力剤(PAM、商品名:ハーマイドEX、ハリマ化成社製、固形分20%)を表1に示す量(原料パルプ・トン(絶乾)に対する量)添加し、この抄紙原料を長網抄紙機にて抄紙して基材紙を得た。なお、抄紙時には、ヘッドボックス原料吐出口(リップ)の開度、抄紙速度に対する抄紙原料吐出量の調整、ワイヤーパートにおけるワイヤーのシェーキング(横揺れ)を行った。また、各基材紙の表裏面には、澱粉を片面あたり1.5g/m2塗布した。さらに、坪量はすべて130g/m2に調整した。基材紙中のパルプ種の割合の測定は、JIS P 8120に基づいて測定した。
【0075】
(接着剤組成物の調製)
天然ゴムラテックス(NR)100重量部とメタクリル酸メチル(MMA)10重量部をグラフト共重合させたグラフト共重合天然ゴムエマルジョン27重量部を、変性澱粉25重量部とシリカ(商品名:カープテックス#80DDSLジャパン)20部を含む分散液45重量部に混合し、バインダー成分としてPVA(クラレ社製)とラテックス10重量部(日本ゼオン製)およびカチオン系湿潤紙力剤(カチオン性ポリアミド樹脂、商品名:WS4002、星光PMC社製)を配合して、これらを室温にて充分に混合し接着剤組成物を得た。なお、各例において用いたPVAのケン化度、重合度および添加率は下記表1中に示す。
【0076】
(各例(圧着葉書)の作製)
基材紙に対して上記接着剤組成物を下記表1に示す塗工量でブレードコーターを用いて10g/m2塗工し、各例にかかる圧着用紙を得た。
【0077】
【表1】

【0078】
(試験1:基材紙の湿潤引張強度)
基材紙を水に10分間浸漬させた後、JIS P 8135に準拠してMD方向の湿潤引張強度を測定した。
【0079】
(試験2:基材紙の離解性)
試料を3.0cm角に裁断し、これをTAPPI標準離解機に2%濃度となるように投入した後、3,000rpmで15分間離解した。こうして得られた試料分散液からTAPPI角型シートマシンを用い、米坪量が70g/m2となるように手抄きシートを作製、脱水、乾燥した。目視にて、シート中に未離解物が見られないものを離解性良好、未離解物が残存しているものを離解性不良とした。表1中における評価基準は、◎:シート中に未離解物が全く見られない、○:シート中に未離解物が僅かにしか見られない、×:シート中に未離解物が著しく残存している、をそれぞれ表す。
【0080】
(試験3:オフセット印刷適性)
ビジネスフォーム印刷機(型番:MVF、(株)ミヤコシ製)にて、圧着用紙にUVオフセット1色印刷を行った。印刷速度150m/分で、ジャバラ折り出しによるフォーム印刷加工を実施した。印刷速度150m/分にてフォーム印刷を行った後に、ブランケット上への塗料カス堆積の有無と印刷面を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。表1中において、◎:搬送性、印刷性とも問題が見られない、○:ブランケット上に若干のカス堆積が見られたが、印刷物面上にも印刷不良も発生していない、△:ブランケット上にカス堆積が若干見られ、印刷物上にも若干の汚れが見られる、×:ブランケット上にカス堆積が見られ、さらに印刷物の印面に明瞭に印刷不良が見られる、をそれぞれ示す。
【0081】
(試験4:圧着/剥離性)
圧着用紙にオフセット印刷を施したのち、接着剤層が向かい合うように3つ折りにして、圧着シーラ(型番:MS−9100、大日本印刷社製)を用い、シーラーギャップ17の条件で圧着処理をしてそれぞれ向かい合った面を加圧接着させた。次いで、圧着用紙を接着された面から剥離し、その状態を以下の評価基準に基づいて評価した。湿潤の場合は、前処理として10分間水に浸漬し、水を拭きとった後、同様に試験した。表1中の評価基準は、◎:特に力を要さず、非常に剥離が容易である、○:剥離が容易である、△:少し剥離が重く、剥離しにくい、×:剥離が非常に重く、剥離しにくい、あるいは基材が材破するため、適切に剥離できない、または、軽すぎて意図しない剥離が発生する、をそれぞれ示す。
【0082】
(試験5:接着剤層強度)
試験4の後の各例における接着剤層表面の凹凸状態を光学顕微鏡にて観察し、また層表面を手で擦った際のザラツキ状態を調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。表1中の評価基準は、◎:凹凸がなく平滑で、ザラツキがない、○:凹凸がほとんどなく、ザラツキが僅かである、△:小さな凹凸が数箇所確認され、ザラツキも少しある、×:全体的に凹凸が著しく、ザラツキがあり、接着剤層が著しく破壊されている、をそれぞれ示す。
【0083】
(物性測定法1:不透明度)
JIS P 8149に基づいて測定した。
【0084】
(物性測定法2:熱水抽出PH)
JIS P 8133に記載の「紙、板紙およびパルプ−水抽出液pHの試験方法」に基づいて測定した。
【0085】
(物性測定法3:光学接触率)
マイクロトポグラフ(商標、東洋精機製作所(株)製)を使用し、24.4kg/cm2、波長0.5μmのときの接着剤層側表面の光学的接触率を測定した。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明にかかる圧着用紙は、親展情報を隠蔽情報として郵送により伝達する圧着葉書のほか、ラベル、くじ材などにも利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料パルプと填料とを主成分として含有する基材紙の表裏面の少なくとも一方の面に接着剤層を有する圧着用紙であって、
前記填料の全部または一部が再生粒子であることを特徴とする圧着用紙。
【請求項2】
マイクロトポグラフを用いて24.4kg/cm2加圧下、波長0.5μmで測定される接着剤層側表面の波長光学的接触率が8%以上である請求項1に記載の圧着用紙。
【請求項3】
再生粒子は、脱墨フロスを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、焼成工程および粉砕工程を経て得られる、カルシウム、ケイ素およびアルミニウムを含むものであり、かつX線マイクロアナライザーによる元素分析でそれらカルシウム、ケイ素およびアルミニウムの質量割合が酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35である請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の圧着用紙。

【公開番号】特開2007−231113(P2007−231113A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53726(P2006−53726)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】