説明

圧着端子、および圧着装置

【課題】加締め加工の際に、芯線の断線をもたらすことなく圧着状態が実現可能となる、圧着バレルの圧着構造を提供する。
【解決手段】各側壁部44A、44Cの絶縁部材30に臨む内側には、該側壁部44A、44Cの先端を絶縁部材30から離れるように該側壁部44A、44Cを反らせることによって、絶縁部材30に向かって突出する凸部46が形成され、絶縁部材30は、底板部41と各側壁部44A、44Cの凸部46によって挟持されることによって、底板部41と側壁部44A、44Cの内側に圧着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド電線(同軸ケーブル)の端末部などに電気的に接続されるシールド電線付きコネクタ(例えば、アンテナプラグコネクタ)などでの圧着の際に芯線の損傷が防止できる、圧着端子、およびその圧着端子を圧着するための圧着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カーナビゲーションシステム等の自動車の電気装置において、伝送信号の高速化(高周波化)などが図られている。このような高周波の電気信号を伝送するために、高周波対応のシールドケーブルが用いられるが、伝送される電気信号の高周波化に伴って、このシールドケーブルの端末部分に接続されるシールドコネクタにも高周波対応小型化の要求が高まっている。
【0003】
シールドケーブルの構造として、例えばいわゆる同軸ケーブルでは、通常、電気信号等の伝送路として金属製の複数の素線を束ねた芯線とその外周を覆う絶縁体とからなる信号線の外周を、同じく複数の素線を編んだ編組線よりなるシールド導体で覆い、更にそのシールド導体の外周を絶縁性のシースで覆った同軸構造になっており、シールド導体が芯線の外周を隙間なく覆うことで電磁的にシールドしている。
【0004】
このような高周波信号を伝送するシールドケーブルの端末部分に接続されるシールドコネクタには、一般的に、高周波信号を伝達する芯線と接続される内導体端子と、編組線などのシールド導体と接続されると共にその内導体端子の外周を覆って電磁的にシールドするための外導体端子と、これら内導体端子と外導体端子の間に設けられる所定の誘電率を有する誘電体とが備えられており、シールドケーブルの芯線とシールド導体とがそれぞれ個別に電気的に接続されている。
【0005】
従来のシールドコネクタとしては、例えば特許文献1に開示されているようなものがある。
即ち、このシールドコネクタは、図10に示すように、シールドコネクタ101が備えるシールド端子(外導体端子)102に、シールドケーブルW端末部分のシースWeの皮剥ぎにより露出されたシールド導体Wd上に加締め加工される、一対のシールド導体圧着片103、104が設けられ、これらシールド導体圧着片103、104は一方のシールド導体圧着片103の上に他方のシール導体圧着片104を重ね合わせるように加締め加工される。なお、図中符号105は内導体端子、106は誘電体、107は圧着部、108、109はシース圧着片、110はリードフレームをそれぞれ示す。
【0006】
なお、これら一対のシールド導体圧着片103、104の内面には、網目状ローレット溝111が形成される一方、他方のシールド導体圧着片104の内面のうち一方のシールド導体圧着片103と重ね合わされる部分には、網目状ローレット溝111が形成されていない。
【0007】
ところで、図11(A)に示すように、加締め加工前のシールドコネクタ101に対してシールド導体圧着片用クリンパ200Aとアンビル200B、及びシース圧着片用クリンパ300Aとアンビル300Bを用いて、同図(B)に示すような加締め加工を行う場合、図12に示すような手順で加締め加工作業を行っている。
【0008】
即ち、この加締め加工では、図12(A)に示すように、シールド導体圧着片用クリンパ200Aには、高さの異なる山を2つ連ねたような左右非対称の型内壁面形状を有しており、左右対をなすシールド導体圧着片103、104のそれぞれが屈曲するタイミングをずらされている。従って、加締め加工時にそれぞれの先端同士が突き当たって加締め加工不良となってしまうことが防止される。
【0009】
この場合、図12(B)に示すように、シールド導体圧着片103、104とその上に載置された同軸ケーブルWのシールド導体Wdの上方からクリンパ200Aが下降し、最初にクリンパ200Aの浅い窪み201に、右のシールド導体圧着片103が接触し、浅い窪み201に沿って内側に屈曲し始める。更にクリンパ200Aが下降を続けると、クリンパ200Aの深い窪み202に左のシールド導体圧着片104が接触し、深い窪み202に沿って内側に屈曲し始める。
このとき、左のシールド導体圧着片104の先端の内側面にはテーパ面104Aが形成され、右のシール導体圧着片103の先端の外側面にはテーパ面103Aが形成されているので、それぞれの先端が突き当たった際には、シールド導体圧着片103が内側に案内され、シールド導体圧着片104が外側に案内される。
【0010】
次に図12(C)に示すように、先に屈曲を始めた右のシールド導体圧着片103の先端は、クリンパ200Aの中央付近にある突出部203に案内されて下方に導かれる。更に、遅れて屈曲を始めた左のシールド導体圧着片104の先端は、右のシールド導体圧着片103の上に重なるように屈曲する。
そして図12(D)に示すように、右のシールド導体圧着片103の先端は左のシールド導体圧着片104の下側に、左のシールド導体圧着片104の先端は右のシールド導体圧着片103の上側に、それぞれ左右両方から均等に重なり合って加締め加工が完了する。
【0011】
一方、また、シース圧着片用クリンパ300Aについても、同様に、高さの異なる山を2つ連ねたような左右非対称の型内壁面形状を有し、加締め加工時にそれぞれの先端同士が突き当たって加締め加工不良となってしまうことが防止されており、シールド導体圧着片用クリンパ200Aと同様の動作が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−93173号公報
【特許文献2】特開2008−287899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述したように、編組線を外側から締め付ける加締め加工の際に、締め付け力が、芯線の中心軸とほぼ一致する方向に作用するので、その応力が芯線に集中し、その締め付け力で芯線が断線してしまうことがあった。
【0014】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加締め加工の際に芯線の断線をもたらすことなく、安定した密着状態が実現可能となる、圧着端子、および圧着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するために、本発明に係る圧着端子は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1) 底板部と、前記底板部から立ち上がる一対の側壁部と、を有する圧着バレルによって、前記底板部に載置された対象物が前記底板部と前記各側壁部によって加締められて圧着された圧着端子であって、
前記各側壁部の前記対象物に臨む内側には、該側壁部の先端を前記対象物から離れるように該側壁部を反らせることによって、前記対象物に向かって突出する凸部が形成され、
前記対象物は、前記底板部と前記各側壁部の前記凸部によって挟持されることによって、前記底板部と前記側壁部の内側に圧着される、
こと。
(2) 上記(1)の構成の圧着端子であって、
前記各側壁部の前記凸部は、前記底板部と前記側壁部の内側に圧着された前記対象物の中央を挟む位置に形成されている、
こと。
(3) 上記(1)の構成の圧着端子であって、
前記各側壁部の前記凸部は、該側壁部の先端から略等距離の位置に形成されている、
こと。
【0016】
上記(1)、(2)の構成の圧着端子によれば、加締め加工時の外力は、対象物の中央から逸れたところに作用する。このため対象物が電線である場合、その対象物の中央に位置する芯線の断線をもたらすことがなく、安定した圧着状態が実現可能となる。すなわち、対象物の中央に過剰な応力が集中するのを回避できる。
上記(3)の構成の圧着端子によれば、対象物の中央から略均等に離れた箇所に、加締め加工時の外力を作用させることができる。このため、加締め加工された対象物を左右均等な形状に形成することが可能となる。
【0017】
前述した目的を達成するために、本発明に係る圧着装置は、下記(4)、(5)を特徴としている。
(4) 底板部と、前記底板部から立ち上がる一対の側壁部と、有する圧着端子の圧着バレルを、アンビルとクリンパにより前記各側壁部を内側に折曲させることで、前記底板部に載置された対象物に前記底板部と前記各側壁部を圧着させるための圧着装置であって、
前記クリンパの天井面には、前記アンビルに載置した前記圧着バレルの前記各側壁部の先端が係止する係止溝が形成され、
前記クリンパの両脚部には、先端が前記係止溝に係止された前記側壁部の一部を局所的に押圧する突部が形成されている、
こと。
(5) 上記(4)の構成の圧着装置であって、
前記各両脚部の前記突部は、前記係止溝から略等距離の位置に形成されている、
こと。
【0018】
上記(4)の構成の圧着装置によれば、加締め加工時の外力は、対象物の中央から逸れたところに作用する。このため対象物が電線である場合、その対象物の中央に位置する芯線の断線をもたらすことがなく、安定した圧着状態が実現可能となる。すなわち、対象物の中央に過剰な応力が集中するのを回避できる。
上記(5)の構成の圧着装置によれば、対象物の中央から略均等に離れた箇所に、加締め加工時の外力を作用させることができる。このため、加締め加工された対象物を左右均等な形状に形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の圧着端子、および圧着装置によれば、加締め加工の際に芯線の断線をもたらすことなく、安定した密着状態が実現可能となる。
【0020】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(A)は本発明に係る実施形態の圧着端子が圧着される前のシールド電線付きコネクタの分解斜視図、(B)はその圧着後の状態を示す斜視図である。
【図2】(A)はシールド電線に装着された状態の、本発明に係る実施形態の圧着端子の要部の断面斜視図、(B)はその断面正面図である。
【図3】(A)から(C)は、それぞれ、本発明に係る圧着端子の圧着バレルの加工が行われるときの状態を説明する平面図である。
【図4】本発明の圧着端子を圧着するための圧着装置を示す説明図である。
【図5】本発明の圧着装置のクリンパ側の要部を示す説明図である。
【図6】(A)は本発明の圧着装置のクリンパ側の係止溝と圧着バレル部の各側壁部の先端との相対関係を示す斜視図、(B)はこれを上方から見たときの係止溝と圧着バレル部の各側壁部の先端との相対関係を模式的に示す平面図である。
【図7】(A)及び(B)は、それぞれ、本発明の圧着端子の加工を行う前段を示す説明図である。
【図8】(A)及び(B)は、それぞれ、本発明の圧着端子の圧着方法の中段を示す説明図である。
【図9】(A)及び(B)は、それぞれ、本発明の圧着端子の圧着方法の後段及び、加工完了時の状態を示す説明図である。
【図10】従来の外導体端子を備えたシールドコネクタの外観斜視図であって、(A)はシールドコネクタを右斜め後方から見た外観斜視図、(B)はシールドコネクタを左斜め後方から見た斜視図である。
【図11】(A)はシールド導体圧着片用クリンパとアンビル及びシース圧着片用クリンパとアンビルによる加締め加工前の状態をシールドコネクタの前方から見た外観斜視図、(B)は(A)の加締め加工後の状態のシールドコネクタの外観斜視図である。
【図12】(A)から(D)は、図11(A)のA−A線における断面を示しており、シールド導体圧着片による加締め加工の工程を順に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1(A)及び(B)は、それぞれ、本発明の実施形態に係る圧着端子が圧着される前のシールド電線付きコネクタ10の分解斜視図及び圧着構造が適用されたシールド電線付きコネクタ10要部の斜視図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態のシールド電線Wは、内部導体である芯線W1と、芯線W1の外周面を包囲しながら該芯線W1の長手方向に延長される絶縁体(誘電体又は内部被覆)W2と、絶縁体W2の外周面を包囲しながら長手方向に延長されるシールド導体(編組等)W3と、シールド導体W3の外周面を包囲しながら長手方向に延長されるシースW4(外部被覆)と、を備える同軸ケーブルである。
【0024】
また、本実施形態のシールド電線付きコネクタ10にあっては、コネクタとしてシールド電線W用のコネクタを用いたものであって、芯線W1に接続される芯線導通端子20と、芯線W1に電気的に接続された芯線導通端子20を収容孔31に収容する絶縁部材30と、絶縁部材30を圧着すると共にシールド導体W3が接続される、圧着端子の一態様であるシールド端子40とを備える。なお、本実施形態では、本発明に係る圧着端子の一態様としてシールド端子を挙げるが、本発明に係る圧着端子はシールド端子に限られるものではない。また、シールド端子によって絶縁部材30を圧着する圧着方法について詳細に説明するが、圧着端子が圧着する対象が絶縁部材30に限られるものではない。
【0025】
芯線導通端子20は、絶縁部材30への挿通方向順側に、接続相手側のシールド電線の芯線に電気的に接続される電気接続部21を有し、他方、絶縁部材30への挿通方向逆側に、シールド電線Wの芯線W1に電気的に接続される図示外の芯線接続部を有する。
【0026】
シールド端子40は、導電性金属板によって形成される。このシールド端子40は、シールド電線Wの軸線方向に沿って長尺な底板部41において、一端部に、絶縁部材30(但し、この絶縁部材30は芯線導通端子20を包囲しながら芯線導通端子20を支持している)の先端側を嵌合させる、円筒部42が設けられているとともに、他端部に、シールド電線Wのシールド部材W3に電気的に接続させるシールド部材接続部43が設けられている。図1に示すシールド端子40のシールド部材接続部43は、シールド電線Wの一端部でシールド部材W3を加締めることによって、シールド部材W3と電気的に接続させる。
【0027】
さらに、このシールド端子40には、円筒部42とシールド部材接続部43との中間部に、本発明の圧着構造が適用される圧着バレル部44が形成されている。この圧着バレル部44は、絶縁体である絶縁部材30をシールド端子40に固定させるために、該絶縁部材30を包み込むようにして、後述する側壁部44Aの延設方向の中間部付近に外面側が内面側に向かって窪んだ凹部45が形成されている。
【0028】
このような構成の側壁部44Aは、図2に示すように、側壁部44Aの外面側に設けられた凹部45に対応した内面側に、絶縁部材30に向かって凸部46が突出する。このように凹部45および凸部46が側壁部44Aに形成されるのは、側壁部44Aの先端が絶縁部材30から離れるように該側壁部44Aを反らせて折り曲げたためである。この結果、側壁部44Aは、凸部46が絶縁部材30に接触することになる。これにより、絶縁部材30は、各側壁部44Aの凸部46と底板部41との間で挟持されることにより、底板部41と側壁部44Aの内側に圧着される。なお、側壁部44Cについても、側壁部44Aと同様の構成である。
【0029】
本実施形態のシールド端子40の圧着バレル部44は、図3(A)に展開図で示すように、相補的な形状に形成された互いに点対称な関係を有する一対の圧着バレル片440によって構成される。この一対の圧着バレル片440を所定の折曲げ加工を施すことによって、絶縁部材30の圧着前には図1(A)、図3(B)、および図7(A)に示すように、互いに上方に向けて拡開した断面略U字形の形状を呈している。また、この圧着バレル部44は、圧着後には図1(B)、図2(A)、図2(B)および図3(C)に示すように、側壁部44A、44Cが互いに折曲されて絶縁部材30を加締めることで、側壁部44A、44Cの先端側どうしが互いに接触することなく端部が隣接し、ほぼ45度斜め上方に延びて交差した状態となる。
【0030】
ここで、圧着直前までの圧着バレル部44の圧着バレル片440(図3(A)参照)について、さらに詳細に説明する。図2(A)、図3に示すように、それぞれ、底板部41から立ち上がる一対の側壁部44A、44Cが、幅広形状の基部441と、この基部441から細幅形状で先端方向に延びる先端部442とを備えている。
【0031】
側壁部44A、44Cは、圧着前には、底板部41の両側から上方に所定の第1角度(底板部41に平行な水平方向に対して内方へ角度θ;図4(A)参照)だけ傾斜した状態で内側方向に立ち上がっており、その後の圧着作業の際に底板部41に向けて略E字形の形状(図2(B)及び図8(B)参照)に折曲加工される。
【0032】
即ち、圧着バレル部44の側壁部44A、44Cには、底板部41との間で絶縁部材30を加締めて圧着させるために、図2(B)及び図9(B)に示すように、各側壁部44A、44Cの基部から先端に至る長手方向の中間部の外面に、互いに、凹部45が1箇所(2箇所以上であってもよい)形成されている。このとき、凹部45は、各側壁部44A、44Cの先端から略等距離の位置に形成される。その結果、各側壁部44A、44Cの中間部の、外面に凹部45が形成された部位に対応する内面の部分には、局部的に突出した凸部46が形成されており、絶縁部材30対して密着状態で当接している。
【0033】
一方、絶縁部材30を加締めて圧着させる圧着バレル部44の、両側壁部44A、44Cの先端側の交差部分は、絶縁部材30の中央部の頂部T(図9(B)参照)に対して接触しておらず、頂部Tとの間で空間S(図2(B)及び図9(B)参照)が形成された態となっている。このため、両側壁部44A、44Cを加締める際の加締め応力が、絶縁部材30の頂部Tに集中することがなく、このため、絶縁部材30の内部の略中央に位置する芯線W1に集中的に外力が作用することが回避される。
【0034】
次に、本発明に係る圧着装置によって上述した圧着端子を圧着する圧着方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態の圧着方法は、先に説明した図1(A)に示す、芯線導通端子20及び絶縁部材30を取付けてあるシールド電線Wにシールド端子40を取付ける際の、特に圧着バレル部44により絶縁部材30を圧着するときの加工方法に特徴があり、図面を参照しながら説明する。
【0035】
まず、初めに、この圧着方法を実施する際に用いる本発明に係る圧着装置(圧着治具)の主要部を構成するアンビル50及びクリンパ60について、図4及び図5を参照しながら説明する。なお、この圧着装置は、底板部41とこの底板部41から立ち上がる一対の側壁部44A、44Cとを備える圧着端子40を、アンビル50とクリンパ60とにより、絶縁部材30を外側から包み込むように側壁部44A、44Cの一部を押圧させ凸部46を形成するものである。これによって、底板部41と側壁部44A、44Cとの間で絶縁部材30を加締めて圧着させる。
【0036】
アンビル50には、上面に、圧着バレル部44の底板部41を搭載させるための凹部51を有する。
【0037】
他方、クリンパ60には、側壁部44A、44Cを係止させるため、両脚部63の間の天井部分には、それぞれ同一深さの窪みを有する係止溝61、62が、互い違いに(つまり、点対称の関係である、180度逆向きに)配置され並設されている(図5及び図6参照)。
【0038】
またクリンパ60の両脚部63には、係止溝61、62に先端が係止された、加締め途中にある圧着バレル部44の各側壁部44A、44Cの中間部を内側に押圧する突部64、65が形成されている。突部64、65は、係止溝61、62から略等距離に設けられている。クリンパ60の両脚部63の突部64、65が、圧着バレル部44の各側壁部44A、44Cの中間部を押圧する(加締める)ことによって、圧着バレル部44の各側壁部44A、44Cの中間部に形成される凸部46と、底板部41とによって、絶縁部材30を圧着するように構成している。
【0039】
次に、本発明の圧着端子を圧着するための圧着方法について、図7〜図9を参照しながら説明する。本実施形態に係る圧着方法では、第1工程から第6工程までで構成される。
【0040】
(1)まず、第1工程では、クリンパ60の両脚部63に互い違いに設けた第1内周面63Aに、シールド端子(圧着端子)40の圧着バレル部44の側壁部44A、44Cの先端部をそれぞれ当接させる(図6(A)及び図7(A)参照)。
【0041】
(2)第2工程では、アンビル50をクリンパ60に向けて上昇させ(逆に、クリンパ60をアンビル50に向けて下降させてもよい。以下、同じ)、クリンパ60の両脚部63の間の天井部分に互い違いに(つまり、180度逆向きに)配置され並設された、それぞれ同一深さの窪みを有する係止溝61、62に、シールド端子(圧着端子)40の圧着バレル部44の側壁部44A、44Cの先端部分を係止させる(図6(B)、図7(B)参照)。
【0042】
(3)第3工程では、さらに、アンビル50をクリンパ60に向けて上昇させ、圧着バレル部44の側壁部44A,44Cの先端側の外周面を、クリンパ60の両脚部63の係止溝61、62の近傍の互い違いに設けた第2内周面63Bに当接させる(図8(A)参照)。
【0043】
(4)第4工程では、さらに、アンビル50をクリンパ60に向けて上昇させることで、圧着バレル部44の側壁部44A,44Cの中間部の外周面が、クリンパ60の両脚部63の突部64、65によって、押圧されることで凹部45が形成される。これにより、その凹部45に対応した圧着バレル部44の側壁部44A,44Cの中間部の内周面には、圧着部を構成する凸部46が形成され、この凸部46が絶縁部材30に押圧する(図8(B)参照)。なお、圧着部を構成する凸部46は絶縁部材30の頂部Tを挟む位置(より詳細には、加締めるべき対象物となる絶縁部材30の中央を挟む位置)に突出しており、それまで断面が真円形状であった絶縁部材30は、横に扁平な楕円形状となる。これにより、絶縁部材30の中心部に設けた芯線W1方向には大きな応力が集中しないので、芯線W1が断線するのを回避できる。
【0044】
(5)第5工程では、さらに、アンビル50をクリンパ60に向けて上昇させることで、アンビル50がクリンパ60の脚部63の間の、クリンパ60内部に侵入する(図9(A)参照)。これにより、圧着バレル部44の側壁部44A,44Cの中間部の内周面の凸部46と底板部41との間で絶縁部材30が圧着されて加締められる。
【0045】
一方、絶縁部材30を加締めて圧着させた圧着バレル部44の各部のうち、両側壁部44A,44Cの先端の交差部分は、絶縁部材30の中央部の頂部Tに対して接触していない。即ち、両側壁部44A,44Cの先端の交差部分と絶縁部材30の頂部Tとの間には空間Sが形成されている。このことも、加締め加工による応力が芯線W1に集中するのを回避させる一因になっている。
【0046】
(6)最後の第6工程では、アンビル50をクリンパ60から離れる下方へ後退させることにより、アンビル50とクリンパ60がシールド端子40から取り外される。これにより、圧着バレル部44により圧着加工されて絶縁部材30が加締め加工され、芯線導通端子20及び絶縁部材30が取付けられてあるシールド電線Wにシールド端子40が密着状態で取付けられる(図1(B)、図2(B)及び図9(B)参照)。
【0047】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0048】
10 シールド電線付きコネクタ
20 芯線導通端子
21 電気接続部
30 絶縁部材
40 シールド端子(圧着端子)
41 底板部
42 円筒部
43 シールド部材接続部
44 圧着バレル部
44A、44C 側壁部
440 圧着バレル片
45 凹部
46 凸部
50 アンビル
51 凹部
60 クリンパ
61、62 係止溝
63 両脚部
63A 第1内周面
63B 第2内周面
64、65 突部
S 空間
T (絶縁部材)中央部の頂部
W1 芯線
W2 絶縁体
W3 シールド導体(編組線)
W4 シース(外部被覆)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板部と、前記底板部から立ち上がる一対の側壁部と、を有する圧着バレルによって、前記底板部に載置された対象物が前記底板部と前記各側壁部によって加締められて圧着された圧着端子であって、
前記各側壁部の前記対象物に臨む内側には、該側壁部の先端を前記対象物から離れるように該側壁部を反らせることによって、前記対象物に向かって突出する凸部が形成され、
前記対象物は、前記底板部と前記各側壁部の前記凸部によって挟持されることによって、前記底板部と前記側壁部の内側に圧着される、
ことを特徴とする圧着端子。
【請求項2】
前記各側壁部の前記凸部は、前記底板部と前記側壁部の内側に圧着された前記対象物の中央を挟む位置に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧着端子。
【請求項3】
前記各側壁部の前記凸部は、該側壁部の先端から略等距離の位置に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧着端子。
【請求項4】
底板部と、前記底板部から立ち上がる一対の側壁部と、有する圧着端子の圧着バレルを、アンビルとクリンパにより前記各側壁部を内側に折曲させることで、前記底板部に載置された対象物に前記底板部と前記各側壁部を圧着させるための圧着装置であって、
前記クリンパの天井面には、前記アンビルに載置した前記圧着バレルの前記各側壁部の先端が係止する係止溝が形成され、
前記クリンパの両脚部には、先端が前記係止溝に係止された前記側壁部の一部を局所的に押圧する突部が形成されている、
ことを特徴とする圧着装置。
【請求項5】
前記各両脚部の前記突部は、前記係止溝から略等距離の位置に形成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の圧着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−65883(P2011−65883A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215918(P2009−215918)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】