説明

圧着端子

【課題】電線導体との接触抵抗を充分小さくでき、かつ端子材料からの成形も容易な圧着端子を提供する。
【解決手段】被覆を除去した電線導体の外周に圧着固定される導体圧着部2を備える圧着端子1であって、圧着時に電線導体に接触する導体圧着部2の圧着面2aに電線導体と直交する方向へ延びる凹条24を平行に複数形成し、凹条24およびこれらの間に生じる凸条23の断面形状を、実質的に三角断面とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧着端子に関し、特に、その導体圧着部の接触抵抗を小さくできる圧着端子に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の圧着端子として例えば特許文献1に示すものが知られている。ここでは、電線導体の外周に圧着される導体圧着部の圧着面に、電線導体が延びる方向と直交する方向へ複数の凹溝が平行に形成されている。これら凹溝は開放方向へ略逆台形断面をなすように形成されており、凹溝の開放縁に稜部が形成されている。このような構造により、電線導体を圧着する際には、上記稜部のエッジによって電線導体の表面酸化膜が剥がされて接触抵抗が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−9789
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載された従来の圧着端子では、凹溝が略逆台形断面となっているため、圧着時にこの断面形状に沿って電線導体を凹溝内に隙無く押し込むことは困難で、このため接触抵抗の低減が未だ不十分であるという問題があった。また、略逆台形断面の凹溝は底面が平面となっているためプレス成型に過大な圧力を必要とし、安定したプレス成型が困難であるという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、電線導体との接触抵抗を充分小さくでき、かつ端子材料からの成形が容易な圧着端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本第1発明では、被覆(41)を除去した電線導体(42)の外周に圧着固定される導体圧着部(2)を備える圧着端子(1)であって、圧着時に前記電線導体(42)に接触する前記導体圧着部(2)の圧着面(2a)の少なくとも一部に一方向へ延びる凹条(24)を平行に複数形成し、前記凹条(24)およびこれらの間に生じる凸条(23)の断面形状を、実質的に三角断面とする。ここで、「実質的」とは、プレス成型等で凹条および凸条を形成する場合に三角断面の頂部が尖った形状にならず、平らになることがあるからである。
【0007】
本第1発明において、三角断面の凸条は圧着時に頂部は潰れるものの、凸条の斜面が残ってこれに沿って電線導体が隣接する凹条に向けて円滑に塑性変形し広い接触面積が確保される。この結果、接触抵抗が充分小さくなる。また、三角断面の凸条は電線導体に良く食い込むから電線固定力が向上する。さらに三角断面の凹条は従来の略逆台形断面の凹溝等に比してプレス成型に過大な圧力を要さず、成型が容易である。
【0008】
本第2発明では、前記凹条(23)を、前記電線導体(42)が延びる方向と交差する方向へ形成する。
【0009】
本第2発明においては、凹条の間に生じる三角断面の凸条が電線導体を横切ってこれに食い込み、この際の余肉が隣接する凹条に向けて円滑に押し込まれてさらに電線固定力が向上し、かつ電線導体の延びる方向から侵入する空気や水をより効果的に遮断することができる。
【0010】
本第3発明では、前記凸条(23)の断面形状を、先端(231)を頂部とする二等辺三角断面とする。
【0011】
本第3発明において、二等辺三角断面の凸条は圧着力を受けても潰れ難く、電線導体との広い接触面積が確保されて接触抵抗がより小さくなる。また、電線導体への食い込みも良いから電線固定力も向上する。加えて、プレス成型する際に端子材料が左右均等に流動するから成型がさらに容易となる。
【0012】
本第4発明は前記圧着端子の製造方法であって、型面に前記一方向へ延びる三角断面の凸条(M1)を隣接させて平行に複数形成したプレス金型(M)によって端子板材の板面を塑性変形させる。
【0013】
本第4発明においては、端子板材の表面に複数の凹条と凸条を比較的小さいプレス圧力で同時かつ容易に形成することができる。
【0014】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の圧着端子によれば、電線導体との接触抵抗を充分小さくできるとともに、端子材料からの成形も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態における電線圧着前の圧着端子の斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿った拡大断面図である。
【図3】凹条とこれらの間に生じる凸条の拡大断面図である。
【図4】電線圧着状態の圧着端子の斜視図である。
【図5】電線圧着状態における圧着端子の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1には本発明を適用した圧着端子の一例を示す。なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0018】
図1に示す圧着端子1はいわゆる丸形(LA)端子で、長手方向に延びる本体部11と先端部12で構成されている。このような圧着端子は、例えば黄銅、銅、鉄等の板材をプレス加工して成形されており、先端部12は略円形に成形されてその中心に接続用の通孔13が形成されている。
【0019】
圧着端子1の本体部11には、頭部12に近い位置に導体圧着部(ワイヤーバレル)2が形成されるとともに、頭部12から遠い本体部11の基端には絶縁圧着部(インシュレーションバレル)3が形成されている。導体圧着部2および絶縁圧着部3は共に、これらの部分で幅広とした板材の両端を上方へ屈曲させて左右の側壁21,22,31,32を有する略U字状に成形したものである。このうち、導体圧着部2にはU字形の内面である圧着面2aの全面に多数の凹条24と凸条23が形成されている。
【0020】
凹条24は圧着端子1の本体部11を横切るようにその幅方向へ延び、これら凹条の間に凸条23が生じて、互いに隣接して延びている。図2に示すように、凹条24およびこれらの間の凸条23は、型面に三角断面の凸条M1を隣接させて平行に複数形成したプレス金型Mによって端子板材の板面を押圧し塑性変形させることによって形成されている。
【0021】
凹条24とこれらの間に生じる凸条23の断面は、本実施形態では図3に示すように先端231,241を頂部とする二等辺三角断面としてあり、各凹条24の谷の頂角θとこれに隣接する凸条23の山の頂角θは等しくなっている。なお、頂角θは90度〜60度の範囲で適宜選択される。頂角θを上記範囲に設定することにより、圧着力を受けて凸条23の先端231が過度に潰れるのを防止することができるとともに、電線導体42への凸条23の食い込みも良好に行われ、しかも電線導体42を凸条23に隣接する凹条24へ良好に押し込むことができる。
【0022】
なお、図3は理解を容易にするために圧着端子1の本体部11の板厚と凸条23や凹条24の大きさを実際とは異なる比率で描いてある。実際には各凹条24の深さ、すなわちこれに隣接する凸条23の高さHは、導体圧着部2の板厚の30%を超えないようにするのが良い。こうすることによって、圧着後の電線導体の締付け強度を十分確保することができる。さらに、上記各凸条23の高さHは、圧着する電線導体の直径の70%を超えないようにするのが良い。圧着後の電線導体の強度を低下させないためである。凹条24の一例は、本体部11の板厚が2.0mmの場合、その深さ(凸条23の高さH)を0.6mmとする。
【0023】
このような構造の圧着端子に対して、図4に示すように、先端の絶縁被覆41を除去して一定長さで電線導体(芯線)42を露出させた撚線電線4を、圧着端子1の本体部11に沿わせてその基端方向から絶縁圧着部3と導体圧着部2のU字空間内に通す。この状態で導体圧着部2に形成された凹条24および凸条23(図1)は電線導体42とほぼ直交するように延びている。
【0024】
この後、圧着工具によって、絶縁圧着部3の左右の側壁31,32を絶縁被覆41の外周を抱持するように屈曲させてこれに圧着させるとともに(図4の状態)、導体圧着部2の左右の側壁21,22を電線導体42の外周を抱持するように屈曲させてこれに圧着させる。なお、電線導体42部の圧着圧縮率は60〜80%とするのが良い。
【0025】
導体圧着部2が圧着されると、圧着面2aに接する電線導体42の側面(図5の下面)の長手方向複数個所で、三角断面の各凸条23の尖った先端が余肉を左右両側の凹条24に向けて塑性流動させつつ電線側面に食い込む。各凸条23の先端は圧着に伴って押し潰されるものの、電線導体42への食い込みは良好に行われ、これによって電線導体42の固定が確実に行われる。同時に、凸条23および凹条24と電線導体42との広い面積での接触が確保されて接触抵抗が十分低減される。ちなみに、従来構造に比して本実施形態の圧着端子の電線導体固定力は10%程度向上し、接触抵抗は30%程度低下し向上した。なお、図5は凸条23および凹条24に接する電線導体42のみを断面で描いてある。
【0026】
なお、本実施形態では板材をプレス成型することによって凹条および凸条を形成したが、プレス成型以外の加工方法で製造しても良い。
【0027】
また、凹条および凸条は電線導体の延びる方向とほぼ直交するように形成するのが良いが、必ずしも直交させる必要は無い。凹条および凸条を電線導体の延びる方向と同一方向へ形成した場合にも従来構造に比して充分な効果を得ることができる。
【0028】
本実施形態では圧着面の全面に凹条および凸条を形成したが、必要部に局所的に形成するようにしても良く、また凹条および凸条の形成数も特に限定されるものではない。圧着対象となる電線は本実施形態のような撚線である必要は無く、単線でも良い。
【符号の説明】
【0029】
1…圧着端子、2…導体圧着部、2a‥圧着面、23‥凸条、231‥先端、24…凹条、41…被覆、42‥電線導体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆を除去した電線導体の外周に圧着固定される導体圧着部を備える圧着端子であって、圧着時に前記電線導体に接触する前記導体圧着部の圧着面の少なくとも一部に一方向へ延びる凹条を平行に複数形成し、前記凹条およびこれらの間に生じる凸条の断面形状を、実質的に三角断面としたことを特徴とする圧着端子。
【請求項2】
前記凹条を、前記電線導体が延びる方向と交差する方向へ形成した請求項1に記載の圧着端子。
【請求項3】
前記凹条および前記凸条の断面形状を実質的に二等辺三角断面とした請求項1又は2に記載の圧着端子。
【請求項4】
請求項1ないし3に記載の圧着端子の製造方法であって、型面に前記一方向へ延びる三角断面の凸条を隣接させて平行に複数形成したプレス金型によって端子板材の板面を塑性変形させることを特徴とする圧着端子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−221719(P2012−221719A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86007(P2011−86007)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(511089930)有限会社アスカビジネスコーポレーション (1)
【Fターム(参考)】