説明

圧縮エア供給方法と圧縮エア供給設備

【課題】ブロワエアの露点を確保しながらも省エネルギーでエアを供給できるブロワの露点の制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ブロワ(1)の吸気温度、吸気湿度、圧力を測定して低圧エアの露点(T0)を演算し(S1)、ブロワ(1)から設備(13)へ圧縮エアを供給する配管(15)の測定温度(T1)と演算で求めた低圧エアの露点(T0)を比較して結露の有無を判断し(S2)、結露しないと判定された場合には、ブロワ(1)からのみ設備(13)へ圧縮エアを供給し(S3)、結露すると判定された場合には、コンプレッサの高圧エアをブロワ(1)から設備(13)へ送られる圧縮エアに混合して供給する(S4,S5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高圧エアを発生するコンプレッサと低圧エアを発生するブロワを有し、低圧エアを必要とする設備へ圧縮エアを供給する圧縮エア供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の生産工場では、圧縮空気が動力源などに使用されている。この圧縮空気を得るためには一般的にコンプレッサが使用されている。コンプレッサの運転に消費されている電力使用量は、工場全体の電力消費量の10〜20%にも及ぶため、圧縮空気の生産の省エネルギーが課題となっている。
【0003】
コンプレッサの用途内訳は、生産設備を稼動させるためのエアシリンダへの供給の外に、冷却、異物除去、ゴミ飛ばし、水切り、防爆、搬送等に使用されるエアブローへの供給である。工場にもよるが、コンプレッサエアのおおよそ50%以上をエアブローで消費しているところもある。
【0004】
コンプレッサは、大気中のエアを吸込み、これを大量のエネルギーを使用しておよそ400kPa〜900kPaまで圧縮し、エア配管内を通り各設備に送られる。その後に、エアブローの用途で使う場合には、減圧弁で減圧して使用されている。このエアブローは、消費流量は多いが圧力が10kPaから最大でも200kPaで十分である。
【0005】
そこでエアブローの用途には、コンプレッサよりも圧力の低いブロワが用いられることがある。ブロワはおよそ10kPa〜100kPaまでエアを圧縮して送り出す送風機で、コンプレッサに比べて圧縮率が低いために、省エネルギーである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−24211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ブロワは大気中の空気を吸込み圧縮して使用するため、吸込み空気の温度・湿度・ブロワの吐出圧力の状況によっては結露してしまう。つまり、ブロワの圧力下での露点が、配管内の温度を下回ると結露してしまい、エアブローと共に、水滴を飛ばすこととなる。
【0008】
この課題に対して、特許文献1などではブロワの後にエアドライヤを用いて露点を確保している。しかし圧力の低いブロワエアでは、水分を除去しにくいために、ブロワの圧力を上げなければならず、結局は省エネルギーの観点に反する。
【0009】
また、ドライエア発生装置で低露点のエアを発生させ、ブロワに供給する方法も考えられるが、これもドライエア発生装置のランニングコストを考慮すると、省エネルギーではない。このようにエアブローの用途にブロワを用いようとすると、露点を確保できない点が課題である。
【0010】
本発明は上記課題に鑑み、ブロワエアの露点を確保しながらも省エネルギーでエアを供給できる圧縮エア供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の圧縮エア供給方法は、高圧エアを発生するコンプレッサと低圧エアを発生するブロワを有し、低圧エアを必要とする設備へ圧縮エアを供給するに際し、低圧エアを吐出するブロワの吸気温度、前記ブロワの吸気湿度、前記ブロワの圧力を測定して前記ブロワから送り出される低圧エアの露点を演算し、前記ブロワから前記設備へ圧縮エアを供給する配管の測定温度と演算で求めた低圧エアの露点を比較して前記ブロワから送り出された低圧エアをそのまま前記配管に供給した場合に前記配管の内部での結露の有無を判断し、前記ブロワから送り出された低圧エアをそのまま前記配管に供給しても結露しないと判定された場合には、前記高圧エアを使用せずに前記ブロワから設備へ圧縮エアを供給し、前記ブロワから送り出された低圧エアをそのまま前記配管に供給すると結露すると判定された場合には、前記高圧エアの圧力と流量を減圧弁と流量制御弁によって調整した低圧エアを前記ブロワから設備へ送られる圧縮エアに混合して供給することを特徴とする。
具体的には、前記高圧エアの圧力と流量を減圧弁と流量制御弁によって調整した低圧エアを前記ブロワから設備へ送られる圧縮エアに混合して供給する場合には、前記高圧エアの露点計から計算した前記高圧エアの水分量と、前記低圧エアの露点と、前記配管の測定温度に基づいて前記高圧エアと前記ブロワから送られる低圧エアとの混合比を計算し、この計算した混合比になるように前記流量制御弁と前記ブロワの回転数を制御することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の圧縮エア供給設備は、高圧エアを発生するコンプレッサと低圧エアを発生するブロワを有し、低圧エアを必要とする設備へ圧縮エアを供給する圧縮エア供給設備であって、低圧エアを吐出するブロワの吸気温度を測定する第1の温度センサと、前記ブロワの吸気湿度を測定する湿度センサと、前記ブロワの圧力を測定する圧力センサと、前記ブロワから前記設備へ圧縮エアを供給する配管の温度を測定する第2の温度センサと、前記高圧エアの圧力と流量を調節する減圧弁と流量制御弁と、前記ブロワの電源周波数を可変するインバータと、前記流量制御弁と前記インバータを制御する演算部とを設け、前記演算部を、低圧エアを吐出するブロワの吸気温度、前記ブロワの吸気湿度、前記ブロワの圧力を測定して前記ブロワから送り出される低圧エアの露点を演算し、前記ブロワから前記設備へ圧縮エアを供給する配管の測定温度と演算で求めた低圧エアの露点を比較して前記ブロワから送り出された低圧エアをそのまま前記配管に供給した場合に前記配管の内部での結露の有無を判断し、前記ブロワから送り出された低圧エアをそのまま前記配管に供給しても結露しないと判定された場合には、前記高圧エアを使用せずに前記ブロワから設備へ圧縮エアを供給し、前記ブロワから送り出された低圧エアをそのまま前記配管に供給すると結露すると判定された場合には、前記高圧エアの圧力と流量を減圧弁と流量制御弁によって調整した低圧エアを前記ブロワから設備へ送られる圧縮エアに混合して供給するよう構成したことを特徴とする。具体的には、前記演算部を、前記高圧エアの露点計から計算した前記高圧エアの水分量と、前記低圧エアの露点と、前記配管の測定温度に基づいて前記高圧エアと前記ブロワから送られる低圧エアとの混合比を計算し、この計算した混合比になるように前記流量制御弁と前記インバータの周波数を制御するよう構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この構成によると、ブロワの露点を制御することで結露せず、省エネルギーでの低圧エア供給が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の圧縮エア供給方法を実施する圧縮エア供給設備の構成図
【図2】同実施の形態の要部である演算部12のフローチャート図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の圧縮エア供給方法を図1と図2に示す具体例に基づいて説明する。
図1は、本発明の圧縮エア供給方法を実施する圧縮エア供給設備を示している。
この圧縮エア供給設備では、コンプレッサ6とブロワ1を使用して圧縮空気が生産されている。コンプレッサ6で生産された圧縮空気は、ドライヤ7を介して設備14へエアを供給している。8はドライヤ7後のコンプレッサエアの露点を計測する露点計である。
【0016】
ブロワ1で生産された低圧エア(10kPa〜100kPa未満)は、配管15を介して設備13に供給されている。2はブロワ1の吸気温度を測定する温度センサ、3はブロワ1の吸気湿度を測定する湿度センサ、4はブロワ1の圧力を測定する圧力センサ、5はブロワ1を駆動するインバータ電源である。
【0017】
さらに、配管15は、コンプレッサ6からドライヤ7を介して設備14へエアを供給している高圧エアラインに減圧弁9と流量制御弁10を介して接続されている。11は配管15の温度を検出する温度センサ、12は演算部で、各種の入力信号に基づいて流量制御弁10とインバータ5を制御している。
【0018】
次に、演算部12の構成を、図2に示したフローチャートに基づいて説明する。
ステップS1aでは、温度センサ2からはブロワ1の吸気温度を読み込み、湿度センサ3からブロワ1の吸気湿度を読み込み、圧力センサ4からブロワ1の圧力を読み込んで、これらからブロワエアの露点:T0を計算する。
【0019】
これと共にステップS1bでは、温度センサ11から配管内の温度:T1を読み込む。
ステップS2では、露点:T0と配管内の温度:T1とを比較する。ここで、“T0 < T1”でブロワ1の吐出エアの露点が、配管内温度よりも低ければ、ブロワ1のみによって設備13へ圧縮空気を供給することで、省エネルギーでのエア供給が可能である。具体的には、ステップS3において演算部12は流量制御弁10をオフする。
【0020】
ステップS2において“T0 ≧ T1”を検出した場合には。ブロワ1の吐出エアの露点が、配管内温度よりも高くて配管15内で結露してしまう。これを防ぐために、次いでステップS4を実行する。
【0021】
ステップS4では、ブロワ1の露点からブロワエアの水分量を算出するとともに、露点計8から得たコンプレッサエアの露点を用いてコンプレッサエアの水分量を算出し、エア露点が配管内温度未満になり結露しないように、ブロワエアとコンプレッサエアの混合比を算出する。
【0022】
ステップS5では、ステップS4で算出した混合比になるように、コンプレッサ6側の流量制御弁10と、ブロワ1側のインバータ5で混合比を調整する演算を行うことでブロワにおける露点を制御し、省エネルギーで運転し、所定のエアを設備13に供給する。
【0023】
つまり、前記ステップS1aで読み取ったブロワ1の吸気温度が19.4℃、吸気湿度が62%、吐出圧力を50kPaの場合には、前記ステップS1aで算出された露点は18.17℃であり、ステップS1bで温度センサ11より読み込んだ配管15内の温度が19.4℃であった場合には、配管15内での結露が起こらないと判断してステップS3を実行する。
【0024】
一方、前記ステップS1aで読み取ったブロワ1の吸気温度が23.2℃、吸気湿度が69%、吐出圧力を50kPaの場合には、露点は23.69℃であり、ステップS1bで温度センサ11より読み込んだ配管15内の温度が23.2℃であったので、配管内で結露が生じると判断してステップS4を実行する。この場合のステップS4でのブロワエアとコンプレッサエアの混合比は、ブロワエアの露点が23.69℃であるので、水分量は35963ppm、コンプレッサエアの露点は、露点計8の値より5℃であったため、水分量は8964ppmであり、エアの露点を配管内温度23.2℃以下にコントロールするためには、水分量を34755pppm以下にする必要がある。これより、ブロワエアとコンプレッサエアの混合比は、92対8となる。
【0025】
この算出した混合比になるように、ステップS5では、コンプレッサ6側の流量制御弁10と、ブロワ1側のインバータ5で混合比を調整する演算を行い、ブロワにおける露点を制御し、省エネルギーで運転し、所定のエアを設備13に供給した。ここでは、1mのエアが必要であったので、コンプレッサエアを0.08mになるように、流量制御弁の開度を調整し、ブロワエアが0.92mになるようにインバータ5を介してブロワ1の回転数を制御する。
【0026】
このようにブロワ1のエアをできるだけ使用し、露点を確保しつつ、省エネルギーで設備13にエアを供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は各種生産工場での省エネルギー化に寄与して、CO2の削減などに貢献することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 ブロワ
2 吸気温度を測定する温度センサ
3 吸気湿度を測定する湿度センサ
4 ブロワ1の圧力を測定する圧力センサ
5 インバータ
6 コンプレッサ
7 ドライヤ
8 露点計
9 減圧弁
10 流量制御弁
11 配管内の温度センサ
12 演算部
13 設備
14 設備
15 設備13へ圧縮エアを供給する配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧エアを発生するコンプレッサと低圧エアを発生するブロワを有し、低圧エアを必要とする設備へ圧縮エアを供給するに際し、
低圧エアを吐出するブロワの吸気温度、前記ブロワの吸気湿度、前記ブロワの圧力を測定して前記ブロワから送り出される低圧エアの露点を演算し、
前記ブロワから前記設備へ圧縮エアを供給する配管の測定温度と演算で求めた低圧エアの露点を比較して前記ブロワから送り出された低圧エアをそのまま前記配管に供給した場合に前記配管の内部での結露の有無を判断し、
前記ブロワから送り出された低圧エアをそのまま前記配管に供給しても結露しないと判定された場合には、前記高圧エアを使用せずに前記ブロワから設備へ圧縮エアを供給し、
前記ブロワから送り出された低圧エアをそのまま前記配管に供給すると結露すると判定された場合には、前記高圧エアの圧力と流量を減圧弁と流量制御弁によって調整した低圧エアを前記ブロワから設備へ送られる圧縮エアに混合して供給する
圧縮エア供給方法。
【請求項2】
前記高圧エアの圧力と流量を減圧弁と流量制御弁によって調整した低圧エアを前記ブロワから設備へ送られる圧縮エアに混合して供給する場合には、
前記高圧エアの露点計から計算した前記高圧エアの水分量と、
前記低圧エアの露点と、
前記配管の測定温度
に基づいて前記高圧エアと前記ブロワから送られる低圧エアとの混合比を計算し、
この計算した混合比になるように前記流量制御弁と前記ブロワの回転数を制御する
請求項1記載の圧縮エア供給方法。
【請求項3】
高圧エアを発生するコンプレッサと低圧エアを発生するブロワを有し、低圧エアを必要とする設備へ圧縮エアを供給する圧縮エア供給設備であって、
低圧エアを吐出するブロワの吸気温度を測定する第1の温度センサと、
前記ブロワの吸気湿度を測定する湿度センサと、
前記ブロワの圧力を測定する圧力センサと、
前記ブロワから前記設備へ圧縮エアを供給する配管の温度を測定する第2の温度センサと、
前記高圧エアの圧力と流量を調節する減圧弁と流量制御弁と、
前記ブロワの電源周波数を可変するインバータと、
前記流量制御弁と前記インバータを制御する演算部と
を設け、
前記演算部を、
低圧エアを吐出するブロワの吸気温度、前記ブロワの吸気湿度、前記ブロワの圧力を測定して前記ブロワから送り出される低圧エアの露点を演算し、前記ブロワから前記設備へ圧縮エアを供給する配管の測定温度と演算で求めた低圧エアの露点を比較して前記ブロワから送り出された低圧エアをそのまま前記配管に供給した場合に前記配管の内部での結露の有無を判断し、前記ブロワから送り出された低圧エアをそのまま前記配管に供給しても結露しないと判定された場合には、前記高圧エアを使用せずに前記ブロワから設備へ圧縮エアを供給し、前記ブロワから送り出された低圧エアをそのまま前記配管に供給すると結露すると判定された場合には、前記高圧エアの圧力と流量を減圧弁と流量制御弁によって調整した低圧エアを前記ブロワから設備へ送られる圧縮エアに混合して供給するよう構成した
圧縮エア供給設備。
【請求項4】
前記演算部を、
前記高圧エアの露点計から計算した前記高圧エアの水分量と、
前記低圧エアの露点と、
前記配管の測定温度
に基づいて前記高圧エアと前記ブロワから送られる低圧エアとの混合比を計算し、
この計算した混合比になるように前記流量制御弁と前記インバータの周波数を制御するよう構成した
請求項3記載の圧縮エア供給設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−99361(P2011−99361A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253558(P2009−253558)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】