説明

圧縮成形浴用剤

【課題】有機酸としてフマル酸を用いながらも、使用前における製品としての良好な錠剤硬度を保持しつつ、崩壊時間が極めて短縮された高速発泡性の圧縮成形浴用剤を提供する。
【解決手段】本発明は、(A)メジアン径が1〜40μmであるフマル酸、(B)分子量が60〜600である2〜3価のポリオール、及び(C)炭酸塩を含有する圧縮成形浴用剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮成形浴用剤に関し、特に、炭酸塩と有機酸を含有する圧縮成形浴用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、炭酸塩と有機酸とを配合した圧縮成形浴用剤は、浴水に投入すると炭酸ガスを発泡しながら溶解し、浴水中に溶け込んだ炭酸ガスによって高い温浴効果をもたらすことができるものとして知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、フマル酸と炭酸塩とを含有する浴用剤において、HLB7以上の非イオン界面活性剤等を用いて入浴剤が浴湯中に溶ける際に生ずるフマル酸の浮きや泡立ちを抑制する技術が開示されており、ここでは平均粒子径50〜500μmのフマル酸を用いると操作上好ましいと記載されている(特許文献1)。
【0004】
一方、特許文献2には、クエン酸、フマル酸、酒石酸、アジピン酸及びコハク酸からなる群より選択される1種または2種以上の有機酸及び炭酸塩からなる発泡成分と、無水硫酸ナトリウムと、ジプロピレングリコール及び/又は1,3−ブチレングリコールを含む溶剤により流動化させた平均分子量500〜3700のポリエチレングリコールとを含む水溶性湿潤粉末を、低圧成形することにより得られる均一溶解性に優れた入浴剤が開示されている。ここでは有機酸の粒径について、原料として加圧によって成形しうるものであればよいと記載されているのみである(特許文献2)。
【0005】
他方、特許文献3には、高強度で且つ速崩壊性の超音波振動圧縮成型物が開示されている。本文献には、主剤である原料粉末は、重量平均粒径が20〜300μmであると十分に満足すべき結果が得られると記載されており、実際に実施例1において、重量平均粒径172μmのフマル酸が記載されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−238520号公報
【特許文献2】特開2002−275051号公報
【特許文献3】特開2007−209963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、フマル酸は、他の有機酸に比べて水への溶解性が低いために、特に錠剤やブリケット等の剤形(以下、「錠剤等」ともいう)に圧縮成形した浴用剤の場合、崩壊するまでに、ある程度の長い時間がかかる傾向にある。
本発明は、有機酸としてフマル酸を用いながらも、使用前における製品としての良好な錠剤硬度を保持しつつ、崩壊時間(浴水に投入した直後から、発泡しながら溶解して次第に剤の形状が崩壊するまでの時間)が極めて短縮された高速発泡性の圧縮成形浴用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決すべく種々検討した結果、フマル酸を粉砕して粒子径を小さくすると、水への溶解性が粉砕前と比較して低下するという新たなる知見を得、さらに検討し続けた結果、全く意外にも、この粉砕して粒子径を小さくしたフマル酸に特定のポリオールを配合した圧縮成形浴用剤とすると、水への溶解性が低下するのとは逆に、粉砕前のフマル酸を用いた場合に比べ、崩壊時間を著しく短縮することが可能となり、加えて使用前の錠剤硬度も良好に保持することが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(A)メジアン径が1〜40μmであるフマル酸、
(B)分子量が60〜600である2〜3価のポリオール、及び
(C)炭酸塩
を含有する圧縮成形浴用剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の圧縮成形用浴用剤によれば、錠剤等に圧縮成形した際、使用前における良好な錠剤硬度を保持しながら極めて短縮された崩壊時間を実現でき、浴水に投入した直後から非常に高速で発泡し、浴湯中の炭酸ガス濃度をすばやく高めることが可能となる。また、フマル酸を用いているにもかかわらず水への溶解性が極めて改善されているため、溶け残りや湯面での泡立ちをも有効に抑制することができる。
【0011】
こうした高速発泡性が付与された浴用剤によれば、使用者に対し、温浴効果の高い実効感だけでなく、楽しさや快適感をもたらすことが可能となり、精神疲労改善効果等の付加価値をも実感させることが充分に期待される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】表1における実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた浴用剤の崩壊時間(秒)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において圧縮成形浴用剤とは、浴用剤成分を圧縮して固形に成形した浴用剤を意味し、錠剤やブリケット等の形状に圧縮成形された浴用剤が含まれる。この圧縮成形浴用剤の崩壊時間とは、かかる浴用剤を浴水に投入した直後から、発泡しながら溶解して次第に剤の形状が崩壊し、完全に崩壊が完了するまでの時間を意味する。なお、かかる崩壊時間を経過した後であっても、浴用剤の溶解性が低いと、その一部が沈降もしくは湯面に浮遊してそれ以上浴水に溶解しない場合があり、これを溶け残りと称する。
【0014】
本発明の圧縮成形浴用剤は、(A)メジアン径が1〜40μmであるフマル酸を含有する。なお、本明細書においてメジアン径とは、電子顕微鏡、X線CT、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置等を用いて測定される粒子径の積算分布曲線の50%に相当する粒子径を意味する。
【0015】
上記メジアン径は、好ましくは3〜38μm、より好ましくは4〜35μm、最も好ましくは5〜30μmである。上記範囲内のメジアン径であると、後述するポリオール(B)とも相まって、フマル酸(A)の水への溶解性を著しく向上させ、且つ、錠剤等に製した際の崩壊時間を効果的に短縮することが可能となる。
【0016】
一般に、粉体の水への溶解性を考慮する場合、より微細な粒子径であるほど溶解性が向上する傾向にあると考えられている。現に、浴用剤に配合する有機酸として多用されているリンゴ酸や酒石酸は、粒子径が小さくなるほど水への溶解性が増大し、粒子径が大きくなるほど溶解性が低下する性質を有する。ところが、元来水への溶解性が低いフマル酸は、逆に粒子径が小さくなるほど水への溶解性が低下するという特異な性質を有することが、本発明者によって明らかにされた。更に本発明者は、このように粒子径を小さくしたフマル酸が、全く意外にも、後述するポリオール(B)を組み合わせることによって錠剤等に成形した場合、水への溶解性が低下するのとは逆に、粉砕前のフマル酸を成形した場合に比べ、崩壊時間を著しく短縮することを見出し、加えて使用前の錠剤硬度も良好に保持することが可能であることも見出した。
【0017】
なお、通常、市販されているフマル酸は、上記範囲内のメジアン径より大きいものであるため、上記範囲内のメジアン径とするには、粉砕するのが望ましい。かかる粉砕には、ハンマーミル、ジェットミル、ビーズミル、ボールミル、ヘンシェルミキサーを用いることができる。特に好ましい粉砕方法としては、ヘンシェルミキサーを用いた乾式粉砕法や、他の成分とともに混合しながら粉砕する混合粉砕法が挙げられる。したがって、本発明では、予めフマル酸を粉砕して上記範囲内のメジアン径に調製し、これを後述する他の成分と混合した後、圧縮成形する製造方法を採用すると好ましい。また、混合粉砕法を用いる場合、フマル酸と後述するポリオール(B)及び/又は非イオン界面活性剤(D)とをともに混合粉砕して、上記範囲内のメジアン径のフマル酸を調製する製造方法を採用することもでき、かかる方法が特に好ましい。
【0018】
上記フマル酸(A)の含有量は、圧縮成形浴用剤全量100質量%中、好ましくは15〜75質量%、より好ましくは25〜65質量%の量である。かかる範囲内の含有量であると、良好な溶解性を保持して溶け残りを有効に抑制するとともに、崩壊時間の短縮化に良好に寄与する。
【0019】
本発明の圧縮成形浴用剤は、上記フマル酸(A)のほか、(B)分子量が60〜600である2〜3価のポリオールを含有する。かかるポリオール(B)を上記フマル酸(A)と組み合わせることで、良好な溶解性を保持しつつ崩壊時間が短縮化された高速発泡性の浴用剤を容易に実現することができる。なお、上記フマル酸(A)の代わりに通常のフマル酸(メジアン径50μm以上)を用いた場合(例えば、後述する比較例3)は、ポリオール(B)を組み合わせない場合(例えば、後述する比較例1)と比べて崩壊時間にほとんど変化がなく、浴用剤に充分な高速発泡性を付与するには至らない。上記分子量は、好ましくは70〜400、より好ましくは80〜150である。上記範囲内の分子量であると、生産性の向上をも図ることが可能となる。
【0020】
上記ポリオール(B)としては、上記範囲内の分子量を有し、かつ2〜3価のものであれば特に制限されないが、例えば、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、重量平均分子量600以下のポリエチレングリコール等が好適なものとして挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、更なる崩壊時間の短縮化を実現する観点から、ジプロピレングリコールが特に好ましい。
【0021】
なお、本明細書において分子量とは、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールのような単量体の場合には、化学構造から算出される相対分子質量を意味し、ポリエチレングリコールのような重合体の場合には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められるポリスチレン換算値から算出される重量平均分子量を意味する。
【0022】
上記ポリオール(B)の含有量は、圧縮成形浴用剤全量100質量%中、好ましくは0.1〜5質量%であり、より好ましくは0.5〜3質量%であり、更に好ましくは1〜2.5質量%の量である。かかる範囲内の含有量であると、フマル酸(A)の溶解性の向上に大きく寄与しながら、崩壊時間の短縮化を有効に実現することができる。
【0023】
本発明の圧縮成形浴用剤は、上記フマル酸(A)及びポリオール(B)のほか、炭酸塩(C)を含有する。かかる炭酸塩(C)を含有することにより浴水中で溶解しながら炭酸ガスが放出されるので、フマル酸(A)とともに得られる浴用剤に発泡性を付与することができる。かかる炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、セスキ炭酸ナトリウムが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、より良好な発泡性を付与する観点から、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウムが好ましい。
【0024】
上記炭酸塩(C)の含有量は、圧縮成形浴用剤全量100質量%中、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは30〜60質量%の量である。かかる範囲内の含有量であると、崩壊時間の短縮化を図りながら、使用者に対して発泡力を充分に実感させることが可能である。
【0025】
本発明の圧縮成形浴用剤は、更に、(D)HLBの総和が9.8〜10.4である非イオン界面活性剤を含有してもよい。この際、圧縮成形浴用剤全量中における上記ポリオール(B)と非イオン界面活性剤(D)との含有量比(質量比)は、95:5〜80:20であるのがよく、好ましくは90:10〜85:15であるのがよい。ポリオール(B)と非イオン界面活性剤(D)とが上記範囲内の含有量比であると、崩壊時間の短縮化を有効に図ることができるとともに、フマル酸の溶け残りや湯面の泡立ち等の問題も起こすおそれがない。
【0026】
上記非イオン界面活性剤(D)としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは、1種単独であっても2種以上組み合わせてもよく、これらのHLBの総和が9.7〜10.4、好ましくは9.8〜10.2、より好ましくは9.9〜10.1であればよい。なかでも、崩壊時間の短縮化の観点からだけでなく、フマル酸(A)の溶け残り防止や湯面の泡立ち防止の観点から、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。このような非イオン界面活性剤(D)とは、より具体的には、モノオレイン酸POEソルビタン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヤシ油脂肪酸ソルビタン等である。更にこれらのなかでも、モノオレイン酸POEソルビタンが好ましく、特にモノオレイン酸POE(6)ソルビタン[HLB10]が、更なる崩壊時間の短縮化、溶け残りや泡立ち防止の観点から殊更好ましい。また、製造上の観点から、常温(25℃)で液状であるのが好ましい。
【0027】
なお、HLBとは、Griffinの式より求められる値を意味し、HLBの総和とは、各非イオン界面活性剤のHLBにそれぞれの含有量を乗じた値の総和を非イオン界面活性剤の含有量の総和で割ることにより決定される値を意味する。非イオン界面活性剤を1種類単独で用いる場合は、Griffinの式より求められた値を意味する。
【0028】
上記非イオン界面活性剤(D)の含有量は、圧縮成形浴用剤全量100質量%中、好ましくは0.05〜1質量%、より好ましくは0.1〜0.5質量%の量である。かかる範囲内の含有量であると、崩壊時間の短縮化を図りながら、使用者に対して充分な発泡力を実感させることができる。
【0029】
本発明の圧縮成形浴用剤は、更に、(E)4価以上の糖アルコールを含有してもよい。糖アルコール(E)を含有することで、崩壊時間の短縮化を図りながら、好適な保湿性を付与することが可能となる。かかる糖アルコール(E)としては、例えば、ソルビトール(6価)、マルチトール(6価)、マンニトール(6価)、エリトリトール(4価)、キシリトール(5価)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、崩壊時間の短縮化を図りながら、より望ましい保湿性を付与する観点から、4価以上12価以下の糖アルコール、具体的には、ソルビトール又はマンニトールが好ましい。
【0030】
上記糖アルコール(E)の含有量は、圧縮成形浴用剤全量100質量%中、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%の量である。かかる範囲内の含有量であると、高速発泡性等の所望の効果を阻害することなく良好な保湿性を付与することができる。
【0031】
本発明の圧縮成形浴用剤は、プレス打錠機やブリケットマシーンを用いた圧縮成形法に従って、上記成分を圧縮して固形化することによって得られる錠剤等の成形品である。圧縮する際、通常1〜10MPa、好ましくは2〜6MPaの圧力で加圧する。これによって、かかる浴用剤は、使用前における製品としての良好な錠剤密度や錠剤硬度を保持している。このような錠剤硬度とは、具体的には、木屋式硬度計により測定したときの1kgf以上の硬度を意味する。このように、本発明の圧縮成形浴用剤は、特殊な製造方法を特段要することなく、上述のような通常圧縮成形に用いられる簡易な製造方法によって得られる。したがって、表面の硬度のみ高めて保形性を持たせるような超音波成型等の特殊な製造方法を採用する必要がなく、簡易な製造方法を採用することで充分に良好な錠剤硬度を保持しつつ、優れた高速発泡性が付与された浴用剤を得ることができる。
【0032】
上記浴用剤の錠剤密度は、通常1.3〜1.5g/cm3、好ましくは1.35〜1.45g/cm3である。錠剤密度が上記範囲内の値であると、適切な値の錠剤硬度を確保することが可能となるため、ハンドリングの際に割れが発生しにくく、崩壊時間の短縮効果をも充分に発揮させることができる。
【0033】
また、本発明の圧縮成形浴用剤は、使用前には上記のような良好な錠剤密度や錠剤硬度を保持しながら、浴水に投入した後には非常に短縮化された崩壊時間を実現する。かかる短縮化された崩壊時間とは、具体的には、例えば45g/錠の浴用剤である場合、通常10〜120秒、好ましくは20〜90秒であり、70g/錠の浴用剤である場合、通常15〜150秒、好ましくは25〜120秒である。したがって、従来よりも崩壊時間が極めて短縮されてかかる短時間内に発泡が完了するため、使用者に対して、非常に爽快感を伴う高速発泡性を実感させることができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、下記方法に従って、所望の物性を測定した。
【0035】
《フマル酸のメジアン径測定方法》
フマル酸のメジアン径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(HELOS/BFM,Sympatec GmbH社製)を用い、常法により粒度分布を測定し、50%径をメジアン径とした。
【0036】
《錠剤密度の算出方法》
錠剤1錠の重量をその錠剤の体積で割ることにより算出した。
【0037】
[比較例1〜4、実施例1〜6]
表1に示す組成に従って、各成分を常法により混合し、3MPaの圧力で圧縮成形することにより、45g/錠の錠剤密度1.3〜1.5g/cm3である錠剤型浴用剤を製造した。実施例1〜5、比較例1〜3に配合したフマル酸(A)として、ハンマーミルを用いて粉砕したものを用いた。実施例6ではフマル酸(A)、ポリオール(B)、及び非イオン界面活性剤(D)を、ヘンシェルミキサーを用いて混合粉砕したものを用いた。
【0038】
[評価方法]
得られた各浴用剤について、以下の方法に従って各評価を行った。結果を表1及び図1に示す。
【0039】
(1)崩壊時間
40℃/150Lの浴槽の湯に各浴用剤1錠を投入し、1錠が崩壊し終わるまでの時間を測定した。
【0040】
(2)溶け残り
各浴用剤1錠が全て崩壊したときの、浴槽の底に沈降もしくは湯面に浮遊した溶け残りを以下の基準で目視により評価した。
5:溶け残りなし
4:溶け残りほとんどなし
3:溶け残りあり
2:溶け残りが非常に多い
1:溶け残りが非常に多い
【0041】
(3)湯面の泡立ち
各浴用剤1錠が全て崩壊したときの湯面の泡立ちを以下の基準で目視により評価した。
5:泡立ちなし
4:泡立ち僅かにあり
3:泡立ち少々あり
2:泡立ちが多い
1:泡立ちが非常に多い
【0042】
【表1】

【0043】
表1及び図1から明らかなように、比較例1〜4では、崩壊時間が長く、溶け残りが認められたのに対し、実施例1〜6の浴用剤では、崩壊時間が大きく短縮され、溶け残りも認められなかった。
【0044】
[実施例7〜10]
表2に示した組成に従い、上記と同様にして錠剤密度1.3〜1.5g/cm3の錠剤型浴用剤を製造し、各評価を行った。フマル酸(A)は、実施例4と同様のものを配合した。実施例4を含めた結果を表2に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
表2から明らかなように、溶け残りや湯面のあわ立ちをより効果的に抑制できる点のみならず、崩壊時間を有効に短縮する点から、非イオン界面活性剤(D)のHLBの総和が特定数値であるのがより望ましいことがわかる。
【0047】
[実施例11〜15]
表3に示す組成に従い、上記と同様にして錠剤密度1.3〜1.5g/cm3の錠剤型浴用剤を製造し、各評価を行った。フマル酸(A)は、実施例1と同様のものを配合した。実施例1を含めた結果を表3に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
表3から明らかなように、崩壊時間を有効に短縮しつつ、溶け残りや湯面のあわ立ちをより効果的に抑制できる点から、ポリオール(B)と非イオン界面活性剤(D)との含有量比が特定比率であるのがより望ましいことがわかる。
【0050】
以上のことから、本発明品は、崩壊時間が非常に短いために炭酸ガスを速やかに発泡する入浴剤であることが明らかとなった。また、溶け残りや泡立ちのない入浴剤であることも明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)メジアン径が1〜40μmであるフマル酸、
(B)分子量が60〜600である2〜3価のポリオール、及び
(C)炭酸塩
を含有する圧縮成形浴用剤。
【請求項2】
前記ポリオール(B)が、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール及び1,3−ブチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上のポリオールである請求項1に記載の圧縮成形浴用剤。
【請求項3】
更に、(D)HLBの総和が9.7〜10.4である非イオン界面活性剤を含有し、且つ
前記圧縮成形浴用剤全量中における前記ポリオール(B)と非イオン界面活性剤(D)との含有量比(質量比)が、95:5〜80:20である請求項1又は2に記載の圧縮成形浴用剤。
【請求項4】
前記非イオン界面活性剤(D)が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上の非イオン界面活性剤である請求項3に記載の圧縮成形浴用剤。
【請求項5】
更に、4価以上の糖アルコールを含有する請求項1〜4のいずれかに記載の圧縮成形浴用剤。
【請求項6】
予め粉砕してメジアン径を1〜40μmに調製したフマル酸と、前記ポリオール(B)及び前記(C)炭酸塩とを混合した後、圧縮成形する工程を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の圧縮成形浴用剤の製造方法。
【請求項7】
フマル酸を前記ポリオール(B)及び/又は前記非イオン界面活性剤(D)とともに混合粉砕してメジアン径を1〜40μmに調製し、次いで前記(C)炭酸塩及び/又は前記ポリオール(B)若しくは前記非イオン界面活性剤(D)を添加した後、圧縮成形する工程を含む、請求項3〜5のいずれかに記載の圧縮成形浴用剤の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−92031(P2012−92031A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239702(P2010−239702)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】