説明

圧縮機の健全性を監視するための方法及びシステム

【課題】ガスタービンの圧縮機ブレードの初期の故障の正確な検出を、オンラインで行うシステムを提供する。
【解決手段】複数のタービンデータポイントを受信するステップ302を含む方法300であって、複数のタービンデータポイントは、1つ又は複数の運転パラメータと、圧縮機吐出温度(CTD)及び1つ又は複数の性能パラメータのうちの少なくとも1つとを含むことができる。複数のタービンデータポイントを、1つ又は複数の運転パラメータに基づいて、カテゴリ化すること304ができる。複数のバンドのそれぞれについて、CTD及び1つ又は複数の性能パラメータのうちの少なくとも1つの統計的ばらつき測定を計算すること306ができる。少なくとも1つの統計的ばらつき測定に基づいて、アラームインジケータを計算すること308ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で提示する実施形態は、一般にガスタービンに関し、詳細には、ガスタービン圧縮機のオンラインでの健全性監視に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、重量を最小限にしつつ高出力を要する用途に幅広く利用されている。軸流ガスタービンは、補助電力装置、産業用発電プラント、推進エンジン、その他などのさまざまな用途に配備されている。軸流ガスタービンは一般的に、多段圧縮機と、燃焼室と、単段タービン又は多段タービンとを含む。
【0003】
多段圧縮機の各段は、ロータブレードの列と、それに続くステータブレードの列とを含む。作動流体が、可変入口案内翼(IGV)を通って、圧縮機の第1の段の中に流れ込む。IGVの角度が、ロータの回転速度によって作動流体の流れを制御して、ガスタービンのオフデザイン性能を向上させる。各段では、ロータブレードが作動流体を加速させる。作動流体は次いで、作動流体の運動エネルギーが静圧に変換されるステータブレード通路において減速する。必要な全体の圧力比は、必要な圧縮機段の数を追加することによって、こうして得られる。運動エネルギーから静圧への変換のプロセスにより、ロータブレード及びステータ翼に応力サイクルがかかる。応力サイクルは、ロータブレード及びステータブレードの疲労を引き起こす。疲労は、ブレードの亀裂、及びそれに続くブレードの離脱を招くことがある。ブレードの離脱は、通常、圧縮機の完全な故障を招く。
【0004】
圧縮機ブレードの損傷を検出するためのいくつかの知られている方法は、圧縮機ブレードの定期的な点検に頼っている。定期的な点検からの観察は次いで、圧縮機ブレードの故障を予測するための複合的なシミュレーションを実行するのに使用されてもよい。しかしながら、そのような方法は、一般に、点検のためにガスタービンをシャットダウンする必要があることがある。さらに、正確なシミュレーションは、高い計算能力を必要とすることがあり、運転条件の変化を明らかにしないことがある。いくつかの他の知られている方法は、異常な振動を検出するための振動測定値に頼っている。しかしながら、振動測定値に基づく方法は、高い割合で誤アラームに見舞われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0240471号明細書
【発明の概要】
【0006】
したがって、圧縮機ブレードの初期の故障の正確な検出を、オンラインで行うシステムの必要性が存在する。
【0007】
圧縮機の健全性を監視するための方法が開示される。方法は、複数のタービンデータポイントを受信するステップを含み、タービンデータポイントのそれぞれは、1つ又は複数の運転パラメータと、圧縮機吐出温度(CTD)及び1つ又は複数の性能パラメータのうちの少なくとも1つとを含む。方法は、1つ又は複数の運転パラメータに基づいて、タービンデータポイントを複数のバンドにカテゴリ化するステップと、複数のバンドのそれぞれについて、CTD及び1つ又は複数の性能パラメータのうちの少なくとも1つの、少なくとも1つの統計的ばらつき測定を計算するステップと、少なくとも1つの統計的ばらつき測定に基づいて、アラームインジケータを生成するステップとをさらに含む。
【0008】
方法はまた、CTDと1つ又は複数の性能パラメータとを組み合わせるステップと、組み合わせたパラメータに基づいて、アラームインジケータを生成するステップとを含むことができる。ある実施形態においては、1つ又は複数の振動パラメータと、CTDと、1つ又は複数の性能パラメータとを組み合わせて、組み合わせたパラメータを得ることができる。組み合わせたパラメータに基づいて、アラームインジケータを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】圧縮機健全性監視システムの実施形態が動作可能である環境のブロック図である。
【図2】一実施形態に従った、圧縮機健全性監視システムのブロック図である。
【図3】一実施形態に従った、圧縮機吐出温度に基づく圧縮機予知診断の例示的なプロセスを示す流れ図である。
【図4】一実施形態に従った、ガスタービン性能パラメータに基づく圧縮機予知診断の例示的なプロセスを示す流れ図である。
【図5】一実施形態に従った、融合方法論を使用する圧縮機予知診断の例示的なプロセスを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で提示する実施形態は、ガスタービンの圧縮機の健全性を監視するための方法及びシステムを開示する。図1は、圧縮機健全性監視システムの実施形態が動作可能である環境のブロック図である。環境は、ガスタービン102と、ガスタービンセンサシステム104と、圧縮機健全性監視システム106とを含む。
【0011】
ガスタービン102は、圧縮機セクションと、燃焼室と、1つ又は複数の入口抽気弁と、ロータとを一般的に含む。ガスタービン102は、圧縮機入口を通して周囲空気を取り入れる。圧縮機セクションは、多段圧縮機を含むことができる。多段圧縮機の各段は、ロータブレードの列と、それに続くステータブレードの列とを含む。作動流体が、可変入口案内翼(IGV)を通って、圧縮機の第1の段の中に流れ込む。IGVの角度が、ロータの回転速度によって作動流体の流れを制御して、ガスタービンのオフデザイン性能を向上させる。各段では、ロータブレードが作動流体を加速させる。作動流体は次いで、作動流体の運動エネルギーが静圧に変換されるステータブレード通路において減速する。必要な全体の圧力比は、必要な圧縮機段の数を追加することによって、こうして得られる。加圧された空気が次いで、燃焼室に移される。燃焼室で、圧縮された空気は好適な燃料と混合されて、点火される。燃料が燃焼すると、高圧排気となって、これがタービンロータを駆動する。タービンロータは、それに結合した機械的負荷を駆動することができる。代替的には、高圧排気ガスが吐き出されて、スラストを生成してもよい。抽気弁は、作動すると、圧縮機吐出空気の一部を、直接ガスタービン排気の中に吸い上げる。抽気弁は、ガスタービン102が起動時などの加速状態にある間、及びガスタービン102がシャットダウン時などの減速状態にある間にのみ、作動する。抽気弁は、失速状態又はサージ状態から圧縮機を保護する。抽気弁は、空気圧によって作動しても、電気機械的に作動してもよい。
【0012】
ガスタービンセンサシステム104は、ガスタービン102のさまざまな運転パラメータを監視するためのセンサを含むことができる。ガスタービンセンサシステムは、限定はしないが、たとえば、タービン負荷、圧縮機入口温度、入口抽気熱状態、圧縮機圧力比(CPR)などの運転パラメータを監視するためのセンサを有することができる。圧縮機入口温度は、圧縮機入口の1つ又は複数の周囲位置で検知されてもよい。ガスタービンセンサシステム104は、限定はしないが、たとえば、タービン効率、タービン入口流れ、タービン出力、排気温度などの、ガスタービン102の性能パラメータを監視するためのセンサをさらに含むことができる。ガスタービンセンサシステム104は、圧縮機吐出温度(CTD)を監視するためのセンサをさらに含むことができる。CTDは、圧縮機の出口の1つ又は複数の周囲位置で監視されてもよい。ガスタービンセンサシステム104はまた、ガスタービンの運転に関連付けられた1つ又は複数の振動パラメータを測定するためのセンサを含むことができる。振動パラメータは、振動の振幅、振動の周波数を含むことができる。振動パラメータは、圧縮機のさまざまな位置で監視されてもよい。
【0013】
ガスタービンセンサシステム104は、監視したパラメータを、圧縮機段の健全性状態を検出するための圧縮機健全性監視システム106に転送する。
【0014】
図2は、一実施形態に従った、圧縮機健全性監視システム106のブロック図である。圧縮機監視システム106は、複数のタービンデータポイントを受信することができる。タービンデータポイントは、タービンの1つ又は複数の運転パラメータ、圧縮機の出口のさまざまな周囲位置で測定された1つ又は複数のCTD、1つ又は複数の性能パラメータなどを含むことができる。
【0015】
圧縮機健全性監視システム106は、ガスタービンセンサシステム104から複数のタービンデータポイントを受信するための受信モジュール202を含むことができる。ガスタービンは、有線又は無線様式で、複数のタービンデータポイントを送り出すことができる。
【0016】
圧縮機健全性監視システム106は、データビニングモジュール204をさらに含むことができる。データビニングモジュール204は、運転パラメータに基づいて、複数のタービンデータポイントを複数のバンドにカテゴリ化する。複数のタービンデータポイントは、ある時間にわたって得られることがある。この時間の間に、タービンの運転条件が変化していることがある。したがって、得られた複数のタービンデータポイントを複数のバンドにカテゴリ化することが有益であることがあり、ここで、複数のバンドのそれぞれは、特定の運転条件に対応していてよい。したがって、バンド内のCTD及び性能パラメータの変動は、ガスタービン102の運転条件から独立している。
【0017】
たとえば、複数のタービンデータポイントは、ガスタービン102の抽気熱状態に基づいて、2つのバンドにカテゴリ化されてもよい。第1のバンドが、抽気熱がオフにされたときに得られたタービンデータポイントを含んでもよく、第2のバンドが、抽気熱がオンにされたときに得られたタービンデータポイントを含んでもよい。上の2つのバンドは、圧縮機入口の2つ以上の周囲位置で測定された圧縮機入口温度(CTIF)の違いの差に基づいて、さらに2つのバンドに分割されてもよい。たとえば、CTIFの差が閾値よりも高くてもよいときに得られたタービンデータポイントが、1つのバンドにカテゴリ化されてもよく、CTIFの差が閾値よりも低いときに得られたタービンデータポイントが、もう1つのバンドにカテゴリ化されてもよい。同様のカテゴリ化が、圧縮機圧力比(CPR)に基づいて行われてもよい。
【0018】
ビニングモジュール204は、運転パラメータの組合せに基づいて、タービンデータポイントをバンドにカテゴリ化することができる。たとえば、バンドは、抽気熱がオンにされたとき、CTIFの差がCTIF閾値よりも高いとき、及びCPRがCPR閾値よりも高いときに得られたタービンデータポイントのみからなってもよい。CPRについての閾値は13であってもよい。そのようにタービンデータポイントをバンドに分類するのは、例示の目的のためであり、タービンデータポイントは、他の運転パラメータ、又は運転パラメータの他の組合せに基づいてもまたカテゴリ化されてもよい。さらに、運転パラメータについての閾値はまた、動的に決定されてもよい。
【0019】
圧縮機健全性監視システム106はさらに、ばらつきモジュール206から構成されてもよい。ばらつきモジュール206は、複数のバンドのそれぞれについて、CTD及び1つ又は複数の性能パラメータのうちの少なくとも1つの統計的ばらつき測定を計算する。
【0020】
ばらつきモジュール206は、ベースラインのばらつきモジュールを含むことができる。ベースラインのばらつきモジュールは、CTD及び1つ又は複数の性能パラメータの、ベースラインのばらつき測定を計算することができる。ベースラインのばらつき測定を、第1の時間ウィンドウにわたり、複数のバンドのそれぞれについて計算することができる。さまざまな実施形態において、第1の時間ウィンドウは、3〜12時間の範囲であってもよく、たとえば、6時間であってもよい。
【0021】
ベースラインのばらつき測定は、圧縮機出口のさまざまな周囲位置で得られたCTDの差の平均値を含むことができる。ベースラインの統計的ばらつき測定は、1つ又は複数の性能パラメータの平均値を含むことができる。代替的には、ベースラインの統計的ばらつき測定は、CTDの差の中央値又は標準偏差を含むことができる。ベースラインのばらつき測定は、第1の時間ウィンドウにわたって得られた性能パラメータの中央値又は標準偏差をさらに含むことができる。
【0022】
ばらつきモジュール206は、CTDの差及び1つ又は複数の性能パラメータの現在のばらつき測定を計算するための、現在のばらつきモジュールをさらに含むことができる。現在のばらつき測定は、その中にタービンデータポイントがカテゴリ化されていてよいすべての複数のバンドについて、計算されてもよい。さらに、現在の統計的ばらつき測定を、第2の時間ウィンドウ内で得られたタービンデータポイントについて得ることができる。第2の時間ウィンドウは、第1の時間ウィンドウよりも短くてもよい。ある実施形態においては、第2の時間ウィンドウは、15分又は30分の長さであってもよい。
【0023】
現在のばらつき測定は、第2の時間ウィンドウにわたって得られたタービンデータポイントのCTDの差の平均値であってもよい。現在のばらつき測定は、1つ又は複数の性能パラメータの平均値をさらに含むことができる。ある実施形態においては、現在のばらつき測定は、第2の時間ウィンドウにわたって得られたタービンデータポイントの、CTDの差及び1つ又は複数の性能パラメータの中央値又は標準偏差であってもよい。
【0024】
ベースラインのばらつき測定及び現在のばらつき測定は、アラームインジケータを得るために利用されてもよい。アラームモジュール208が、アラームインジケータを生成することができる。アラームインジケータは、ベースラインのばらつき測定と現在のばらつき測定との差であってもよい。たとえば、第1の時間ウィンドウにわたって得られた平均CTDの差と、第2の時間ウィンドウにわたって得られた平均CTDの差との違いを計算することによって、アラームインジケータを得ることができる。同様に、第1の時間ウィンドウにわたって得られた性能パラメータの平均値と、第2の時間ウィンドウにわたって得られた性能パラメータの平均値との差を計算することによって、アラームインジケータを得ることができる。一実施形態においては、第1の時間ウィンドウ及び第2の時間ウィンドウにわたって得られたCTDの差の中央値又は標準偏差の差を計算することによって、アラームインジケータを得ることができる。別の実施形態においては、第1の時間ウィンドウ及び第2の時間ウィンドウのそれぞれにわたって得られた性能パラメータの中央値又は標準偏差の差を計算することによって、アラームインジケータをさらに得ることができる。
【0025】
アラームモジュール208は、アラームインジケータを閾値と比較することができ、アラームインジケータが特定の時間よりも長い時間にわたって閾値を超えた場合に、アラームが発動してもよい。ある実施形態においては、アラームインジケータが15分よりも長い間、閾値を超えた場合に、アラームが発動する。さまざまな実施形態において、アラームインジケータが10〜60分までの範囲の時間にわたって閾値を超えた場合に、アラームが発動してもよい。
【0026】
圧縮機健全性監視システム106は、運転パラメータ、CTD、及び性能パラメータを、ISO標準パラメータに正規化するためのISO正規化モジュールをさらに含むことができる。パラメータをISO標準パラメータに変換することによって、あらゆる環境で運転する、あらゆるガスタービンユニットに対する圧縮機健全性監視システム106の適用性を保証する。運転パラメータ、CTD、及び性能パラメータのユニット及びプロパティは、測定デバイスに依存してもよい。たとえは、CTDは、華氏及び摂氏の両方において測定されてもよい。正規化されたCTD及び正規化された性能パラメータは、ベースラインの統計的ばらつき測定及び現在のベースラインの統計的ばらつき測定を得るために、及び引き続きアラームインジケータを得るために、使用されてもよい。パラメータの正規化により、パラメータが測定されるユニットにかかわらず、システムを適用可能にすることができる。
【0027】
圧縮機健全性監視システム106は、CTDと1つ又は複数のパラメータとを組み合わせるためのセンサ融合モジュールをさらに含むことができる。Kalmanフィルタアルゴリズム、Bayesianネットワークアルゴリズム、Dempster−Shaferアルゴリズムなどの本技術分野で知られている融合アルゴリズムが、運転パラメータ、CTD、及び性能パラメータを融合するために適用されてもよい。パラメータの融合により、運転パラメータ、CTD、及び性能パラメータのそれぞれのプロパティからなる融合されたパラメータを生成することができる。一実施形態においては、第1の時間ウィンドウ及び第2の時間ウィンドウの両方について、融合されたパラメータを得ることができる。さらに、融合されたパラメータに基づいて、ベースラインのばらつき測定及び現在のばらつき測定を計算することができる。また、融合されたパラメータに対応した、ベースラインの統計的ばらつき測定と現在の統計的ばらつき測定との差に基づいて、アラームインジケータを得ることができる。
【0028】
図3は、一実施形態に従った、CTDに基づく圧縮機予知診断のプロセス300を示す流れ図である。ステップ302で、複数のタービンデータポイントを得ることができる。図2に関連して言及したように、複数のタービンデータポイントは、1つ又は複数の運転パラメータを含むことができ、運転パラメータは、タービン負荷と、圧縮機入口温度と、入口抽気状態と、CPRとを含むことができる。複数のタービンデータポイントはまた、圧縮機出口の1つ又は複数の周囲位置で測定されたCTDを含むことができる。複数のタービンデータポイントは、1つ又は複数の性能パラメータをさらに含むことができ、性能パラメータは、タービン効率と、タービン入口流れと、タービン出力と、排気温度とを含むことができる。
【0029】
プロセス300のステップ304で、タービンデータポイントは、1つ又は複数の運転パラメータに基づいて、複数のバンドにカテゴリ化される。たとえば、複数のタービンデータポイントは、ガスタービン102の抽気熱状態に基づいて、2つのバンドにカテゴリ化されてもよい。第1のバンドが、抽気熱がオフにされたときに得られたタービンデータポイントを含んでもよく、第2のバンドが、抽気熱がオンにされたときに得られたタービンデータポイントを含んでもよい。上の2つのバンドは、圧縮機入口の2つの周囲位置で測定されたCTIFの差に基づいて、さらに2つのバンドに分割されてもよい。たとえば、CTIFの差が閾値よりも高くてもよいときに得られたタービンデータポイントが、1つのバンドにカテゴリ化されてもよく、CTIFの差が閾値よりも低いときに得られたタービンデータポイントが、別のバンドにカテゴリ化されてもよい。同様のカテゴリ化が、圧縮機圧力比(CPR)に基づいて行われてもよい。
【0030】
タービンデータポイントのバンドへのカテゴリ化は、2つ以上の運転パラメータに同時に基づいていてもよいことが、当業者であれば理解できるであろう。たとえば、バンドは、抽気熱がオンにされたとき、CTIFの差が閾値よりも高かったとき、及びCPRが別の閾値よりも高くてもよいときに得られたタービンデータポイントのみからなってもよい。ある実施形態においては、CPRについての閾値は13であってもよい。上記で言及したバンドの分類は例示の目的のためであり、タービンデータポイントは、他の運転パラメータ、又は運転パラメータの他の組合せに基づいてカテゴリ化されてもよいことが、当業者であれば理解できるであろう。また、それぞれの運転パラメータについての閾値は、やはり動的に決定されてもよいことが理解できるであろう。
【0031】
プロセス300のステップ306で、CTDの差についての統計的ばらつき測定を計算することができる。統計的ばらつき測定は、その中にタービンデータポイントがカテゴリ化されている複数のバンドのそれぞれについて計算されてもよい。ステップ306で、CTDの差についてのベースラインのばらつき測定及び現在のばらつき測定の両方を計算することができる。図2に関連して示したように、ベースラインのばらつき測定は、第1のウィンドウ期間にわたって得られたCTDの差の平均値、中央値、又は標準偏差であってもよい。同様に、現在のばらつき測定は、第2の時間ウィンドウにわたって得られたCTDの差の平均値、中央値、又は標準偏差であってもよい。
【0032】
ステップ308で、ベースラインの統計的ばらつき測定及び現在の統計的ばらつき測定に基づいて、アラームインジケータが生成される。ある実施形態においては、アラームインジケータは、ベースラインのばらつき測定と現在のばらつき測定との差であってもよい。アラームインジケータが特定の時間よりも長い時間にわたって閾値よりも高い場合に、アラームが発動してもよい。ある実施形態においては、アラームインジケータが15分よりも長い間、閾値を超えた場合に、アラームが発動する。さまざまな実施形態において、アラームインジケータが10〜60分までの範囲の時間にわたって閾値を超えた場合に、アラームが発動してもよい。
【0033】
プロセス300は、第1の時間ウィンドウ及び第2の時間ウィンドウにわたる、CTDの差の測定値に基づいて、アラームインジケータを評価する。アラームインジケータはまた、ガスタービン102の性能パラメータに基づいて得られてもよいことが、当業者であれば理解できるであろう。ガスタービン102の性能パラメータに基づく圧縮機予知診断のプロセスが、図4に関連して示される。
【0034】
図4は、ガスタービン102の性能パラメータに基づく圧縮機予知診断のプロセス400を示す流れ図である。ステップ402で、複数のタービンデータポイントを得ることができる。複数のタービンデータポイントを得ることは、プロセス300のステップ302に関連して説明したように行われてもよい。
【0035】
プロセス400のステップ404で、タービンデータポイントは、1つ又は複数の運転パラメータに基づいて、複数のバンドにカテゴリ化される。複数のタービンデータポイントを複数のバンドに編成することは、プロセス300のステップ304に関連して説明したように行われてもよい。
【0036】
プロセス400のステップ406で、ガスタービン102の1つ又は複数の性能パラメータについての統計的ばらつき測定を計算することができる。統計的ばらつき測定は、その中にタービンデータポイントがカテゴリ化されている複数のバンドのそれぞれについて計算されてもよい。ステップ406で、1つ又は複数の性能パラメータについてのベースラインのばらつき測定及び統計的ばらつき測定の両方を計算することができる。図2に関連して示したように、ベースラインの統計的ばらつき測定は、第1のウィンドウ期間にわたって得られた1つ又は複数の性能パラメータの平均値、中央値、又は標準偏差であってもよい。同様に、現在の統計的ばらつき測定は、第2の時間ウィンドウにわたって得られた1つ又は複数の性能パラメータの平均値、中央値、又は標準偏差であってもよい。
【0037】
ステップ408で、ベースラインの統計的ばらつき測定及び現在の統計的ばらつき測定に基づいて、アラームインジケータを計算することができる。アラームインジケータを計算することは、プロセス300のステップ308に関連して説明したように実行されてもよい。
【0038】
プロセス300及び400はさらに、運転パラメータ、CTD、及び性能パラメータを、ISO標準パラメータに正規化することができる。ある実施形態においては、ベースラインのばらつき測定及び現在のばらつき測定の両方を、正規化されたパラメータに基づいて計算することができる。さらに、アラームインジケータもまた、正規化されたパラメータに基づいて計算することができる。そのようにして得られたアラームインジケータに基づいて、アラームが発動してもよい。
【0039】
図5は、一実施形態に従った、融合方法論を使用する圧縮機診断のプロセス500を示す流れ図である。プロセスは、ガスタービンセンサシステム104から、運転パラメータ、CTD、及び性能パラメータを得る。プロセスは、ガスタービン102の振動パラメータをさらに得ることができる。振動パラメータは、振動の振幅、振動の周波数などを含むことができる。
【0040】
CTD特徴502、性能特徴504、及び振動特徴506が、それぞれ、ガスタービンセンサシステムについてのCTD、1つ又は複数の性能パラメータ、及び振動パラメータを得ることができる。CTD、性能パラメータ、振動パラメータは次いで、組合せモジュール508に伝達される。組合せモジュール508は、CTD、性能パラメータ、及び振動パラメータのうちの少なくとも2つを融合して、融合パラメータを得ることができる。組合せモジュール508は、たとえば、Kalmanフィルタアルゴリズム、Bayesianネットワークアルゴリズム、Dempster−Shaferアルゴリズムなどの、さまざまな融合アルゴリズムを使用することができる。ある実施形態においては、CTDと運転パラメータとが融合されて、融合パラメータを得る。代替的な実施形態においては、CTDと、運転パラメータと、性能パラメータとが融合されて、融合パラメータを得ることができる。
【0041】
融合されたパラメータは、圧縮機健全性監視モジュール106に伝達されてもよい。圧縮機健全性監視モジュールは、融合されたパラメータに基づいて、アラームインジケータを計算することができる。融合されたパラメータは、ベースラインのばらつき測定及び現在のばらつき測定を計算するために、第1の時間ウィンドウ及び第2の時間ウィンドウにわたって得られる。ベースラインのばらつき測定及び現在のばらつき測定に基づいて、アラームインジケータを計算することができる。
【0042】
本明細書で提示する実施形態は、図3、図4、及び図5で説明したステップを実行するためのコンピュータプログラム製品をさらに含む。コンピュータプログラム製品は、一時的でないコンピュータ可読媒体に記憶された符号化された命令を含む。コンピュータ可読媒体は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、プログラマブル読取り専用メモリ(PROM)、消去可能プログラマブル読取り専用メモリ(EPROM)などのうちのいずれか1つであってもよい。符号化された命令は、1つ又は複数のプロセッサによって実行されてもよい。コンピュータプログラム製品の符号化された命令は、複数のタービンデータポイントを受信するための命令と、1つ又は複数の運転パラメータに基づいて、タービンデータポイントを複数のバンドにカテゴリ化するための命令と、CTD及びガスタービン102の性能パラメータのベースラインのばらつき測定及び現在のばらつき測定を計算するための命令とを含むことができる。コンピュータプログラム製品はまた、ベースラインのばらつき測定及び現在のばらつき測定に基づいて、アラームインジケータを計算するための命令を含むことができる。コンピュータプログラム製品は、1つ又は複数の運転パラメータ、CTD、1つ又は複数の性能パラメータを、ISO標準レーティングに正規化するための命令を有することができる。
【0043】
コンピュータプログラム製品は、タービン102の1つ又は複数の振動パラメータを受信するための命令をさらに含むことができる。コンピュータプログラム製品は、1つ又は複数のセンサ融合技法を使用して、CTDと1つ又は複数の性能パラメータとを組み合わせるための命令をさらに含むことができる。ある実施形態においては、コンピュータプログラム製品は、1つ又は複数の融合技法を使用して、1つ又は複数の振動パラメータと、CTDと、1つ又は複数の性能パラメータとを組み合わせるための命令を含むことができる。センサ融合技法は、Kalmanフィルタアルゴリズム、Bayesianネットワークアルゴリズム、Dempster−Shaferアルゴリズムなどのうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0044】
本明細書で説明した実施形態は、ひとえに例示の目的のためである。当業者は、この説明から、本明細書で提示した教示が、説明した実施形態に限定されず、添付の特許請求項の趣旨及び範囲によってのみ限定される修正形態及び変更形態により実践されてもよいことを認識するであろう。
【符号の説明】
【0045】
102 ガスタービン
104 ガスタービンセンサシステム
106 圧縮機健全性監視システム
202 受信モジュール
204 データビニングモジュール
206 ばらつきモジュール
208 アラームモジュール
210 出力デバイス
502 CTD特徴ブロック
504 性能特徴ブロック
506 振動特徴ブロック
508 組合せモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンデータポイントのそれぞれが1つ又は複数の運転パラメータと、圧縮機吐出温度(CTD)及び1つ又は複数の性能パラメータのうちの少なくとも1つとを含む、複数の前記タービンデータポイントを受信するステップ(302、402)と、
前記1つ又は複数の運転パラメータに基づいて、前記タービンデータポイントを複数のバンドにカテゴリ化するステップ(304、404)と、
前記複数のバンドのそれぞれについて、前記CTD及び前記1つ又は複数の性能パラメータのうちの少なくとも1つの、少なくとも1つの統計的ばらつき測定を計算するステップ(306、406)と、
前記少なくとも1つの統計的ばらつき測定に基づいて、アラームインジケータを生成するステップ(308、408)と
を含む、圧縮機の健全性を監視するための方法(300、400)。
【請求項2】
前記1つ又は複数の運転パラメータが、タービン負荷と、圧縮機入口温度と、入口抽気熱状態と、圧縮機圧力比(CPR)とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記1つ又は複数の性能パラメータが、タービン効率と、タービン入口流れと、タービン出力と、排気温度とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの統計的ばらつき測定を計算するステップ(306、406)が、
第1の時間ウィンドウにわたり、前記複数のバンドのそれぞれについて、前記CTD及び前記1つ又は複数の性能パラメータのうちの少なくとも1つのベースラインのばらつき測定を計算するステップと、
前記第1の時間ウィンドウよりも短い第2の時間ウィンドウにわたり、前記複数のバンドのそれぞれについて、前記CTD及び前記1つ又は複数の性能パラメータのうちの少なくとも1つの現在のばらつき測定を計算するステップと
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記アラームインジケータを生成するステップ(308、408)が、
前記ベースラインのばらつき測定と、前記現在のばらつき測定とを比較するステップと、
前記現在のばらつき測定が前記ベースラインのばらつき測定からあらかじめ定義された差だけ外れた場合に、前記アラームインジケータを生成するステップと
を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
タービンデータポイントのそれぞれが1つ又は複数の運転パラメータと、圧縮機吐出温度(CTD)及び1つ又は複数の性能パラメータのうちの少なくとも1つとを含む、複数の前記タービンデータポイントを受信するための受信モジュール(202)と、
前記1つ又は複数の運転パラメータに基づいて、前記タービンデータポイントを複数のバンドにカテゴリ化するためのデータビニングモジュール(204)と、
前記複数のバンドのそれぞれについて、前記CTD及び前記1つ又は複数の性能パラメータのうちの少なくとも1つの、少なくとも1つの統計的ばらつき測定を計算するためのばらつきモジュール(206)と、
前記少なくとも1つの統計的ばらつき測定に基づいて、アラームインジケータを生成するためのアラームモジュール(208)と
を含む、圧縮機の健全性を監視するためのシステム(106)。
【請求項7】
前記ばらつきモジュール(206)が、
第1の時間ウィンドウにわたり、前記複数のバンドのそれぞれについて、前記CTD及び前記1つ又は複数の性能パラメータのうちの少なくとも1つのベースラインのばらつき測定を計算するためのベースラインのばらつきモジュールと、
前記第1の時間ウィンドウよりも短い第2の時間ウィンドウにわたり、前記複数のバンドのそれぞれについて、前記CTD及び前記1つ又は複数の性能パラメータのうちの少なくとも1つの現在のばらつき測定を計算するための現在のばらつきモジュールと
を含む、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
圧縮機の健全性を監視するためのコンピュータ実行可能命令が符号化されている一時的でないコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータ実行可能命令が、実行されるときに、1つ又は複数のプロセッサに、
タービンデータポイントのそれぞれが1つ又は複数の運転パラメータと、圧縮機吐出温度(CTD)及び1つ又は複数の性能パラメータのうちの少なくとも1つとを含む、複数の前記タービンデータポイントを受信する(302、402)ようにさせ、
前記1つ又は複数の運転パラメータに基づいて、前記タービンデータポイントを複数のバンドにカテゴリ化する(304、404)ようにさせ、
前記複数のバンドのそれぞれについて、前記CTD及び前記1つ又は複数の性能パラメータのうちの少なくとも1つの、少なくとも1つの統計的ばらつき測定を計算する(306、406)ようにさせ、
前記少なくとも1つの統計的ばらつき測定に基づいて、アラームインジケータを生成する(308、408)ようにさせる、
コンピュータプログラム製品。
【請求項9】
前記1つ又は複数のプロセッサに、
第1の時間ウィンドウにわたり、前記複数のバンドのそれぞれについて、前記CTD及び前記1つ又は複数の性能パラメータのうちの少なくとも1つのベースラインのばらつき測定を計算するようにさせ、
前記第1の時間ウィンドウよりも短い第2の時間ウィンドウにわたり、前記複数のバンドのそれぞれについて、前記CTD及び前記1つ又は複数の性能パラメータのうちの少なくとも1つの現在のばらつき測定を計算するようにさせる、
コンピュータ実行可能命令をさらに含む請求項8記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項10】
前記1つ又は複数のプロセッサに、
前記ベースラインのばらつき測定と、前記現在のばらつき測定とを比較するようにさせ、
前記現在のばらつき測定が前記ベースラインのばらつき測定からあらかじめ定義された差だけ外れた場合に、前記アラームインジケータを生成するようにさせる、
コンピュータ実行可能命令をさらに含む請求項9記載のコンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−132450(P2012−132450A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−278135(P2011−278135)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】