説明

圧縮機の音響長さ試験のための方法及びデバイス

【課題】圧縮機に取り付けるための容積−チョーク−容積ダンプナーの複数の構成要素の周波数を特定するためのコンピュータシステム及び方法を確立する。
【解決手段】圧縮機20にダンプナー30、50を取り付けずに圧縮機のキャビティ22、24の音響スペクトルを測定する段階と、キャビティの音響波長を計算する段階と、ダンプナーの近位ノズル52の長さを受け取る段階と、キャビティの音響波長及びダンプナーの近位ノズルの長さに基づいて、ダンプナーの近位ノズル及び圧縮機のキャビティに関連する高次周波数を計算する段階とを含み、ダンプナーの近位ノズルは、ダンプナーを圧縮機に取り付けるときに圧縮機のキャビティに最も近接しているようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、システム、ソフトウェア、及び方法に関し、より具体的には、圧縮機の音響長さ試験のための機構及び技術に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業界では、例えば、精製所又は化学プラントからユーザに又は産出地からポンプ送給するために圧縮機を利用している。オイルフリースクリュー(Oil Free Screw、OFS)圧縮機の利用を必要とする多くの産業上の応用がある。OFS圧縮機とは、文字通り、スクリューと接触する油がない。しかしながら、これらの業界は全て、容積OFS圧縮機を使用する際に圧縮機及び/又は圧縮機に関連する配管内でのノイズ及び振動の発生という共通の問題を共有している。容積式圧縮機とは、一定の容積を出力することができる圧縮機である。以下で議論するように、音響共振による振動は、圧縮装置及びそのサポートするプロセス配管に損傷を与え、又は破壊する場合があり、従って、可能であれば減衰及び/又は除去すべきである。
【0003】
例えば、大口径配管において、高周波エネルギーは、サーモウェル、計装、及び取り付けられた小口径配管の過剰なノイズ及び振動、並びに障害を生じさせることがある。深刻な場合には、パイプ自体が破裂することがある。同じことが、配管に取り付けられた圧縮機にも当てはまる。これらの問題は、ほとんどの場合、スクリュー圧縮機及びサイレンサにおいて顕在化する。以下では、簡潔にするためにスクリュー圧縮機について議論する。スクリュー圧縮機は通常、2つのロータ、すなわち雄及び雌ロータを有する。ロータのローブの組み合わせは、設計意図の変化(3x5、4x6、6x8)に伴って変えることができる。
【0004】
2つの高周波エネルギー発生機構、すなわち、流れ誘起(渦流励振)と運転速度の倍数での脈動(遠心圧縮機におけるブレード通過と、スクリュー圧縮機におけるポケット通過又はローブ通過)とが、ほとんどの業界のプロセスにおいて優位を占めている。スクリュー圧縮機の場合、螺旋ローブの噛み合いがポケット通過周波数において脈動を生じさせ、これは、雄ロータ上のローブの数と圧縮機の運転速度を乗算したものに等しい。通常、最大脈動振幅は、基本ポケット通過周波数にて発生する。より高い倍数の振幅は通常、但し常にそうであるとは限らないが、一次ポケット周波数の振幅よりも小さい。このエネルギーが生成されると、音響及び/又は構造共振から増幅が発生することがあり、高い振幅の振動及びノイズを生じる結果となる。
【0005】
サイレンサを圧縮機の入口及び/又は出口に取り付けて、上述の動圧及びノイズを低減することができる。圧縮機に取り付けられた入口サイレンサ(ダンプナー)及び出口サイレンサの実施例を図1に示す。図1に示すサイレンサは、容積−チョーク−容積タイプである。図1は、圧縮機20、入口脈動ダンプナー30、及び吐出脈動ダンプナー50を含む圧縮機システム10を示している。矢印Aで示すように、ガスがダンプナー30内に流入し、矢印Bで示すように、加圧されたガスがダンプナー50から流出する。圧縮機20は、特に、入口キャビティ22及び出口キャビティ24を含む。入口キャビティ22は、入口ダンプナー30に接続されたフランジ26を有し、出口キャビティは、吐出ダンプナー50に接続されたフランジ28を有する。
【0006】
入口ダンプナー30は、ノズル長NLによって特徴付けられるノズル32を有する。ノズル32に接続されているのは、チョーク管36を含むキャビティ34である。キャビティ34は、λ又は横断壁長38及び軸方向チャンバ長40によって特徴付けられる上部37を有する。チョーク管36は長さ42を有する。入口ダンプナー30は、圧縮機20のフランジ26に接続されたフランジ44を有する。
【0007】
吐出ダンプナー50は、キャビティ54に接続されたノズル52を含み、該キャビティは、チョーク管56を含む。ノズル52に直接接続されたキャビティ54の軸方向チャンバ58は、長さ60及びλ又は横断壁長62を有する。ノズル52は、ノズル長NLを有し、チョーク管56は長さ64を有する。ノズル52を圧縮機20のフランジ28に接続するために、ノズル52にフランジ66が取り付けられている。容積58、チョーク56、及び他の容積(ラベル表示せず)を有するこのようなダンプナーを、容積−チョーク−容積ダンプナーと呼ぶ。
【0008】
しかしながら、サイレンサ内で音響共振が確実に発生しないようにするには、ダンプナー及びこれらの構成要素(ノズル、軸方向チャンバ、チョーク管、その他)を適切なサイズにする必要がある。これは、最終的に振動及び/又はノイズの減少をもたらすことになる。従って、上述の問題及び欠点を回避するデバイス及び方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
例示的な一実施形態によれば、圧縮機に取り付けるためのダンプナーの複数の構成要素の周波数を特定するための方法がある。本方法は、圧縮機にダンプナーを取り付けずに圧縮機のキャビティの音響スペクトルを測定する段階と、キャビティの音響波長を計算する段階と、ダンプナーの近位ノズルの長さを受け取る段階と、キャビティの音響波長及びダンプナーの近位ノズルの長さに基づいて、ダンプナーの近位ノズル及び圧縮機のキャビティに関連する高次周波数を計算する段階とを含み、ダンプナーの近位ノズルは、ダンプナーを圧縮機に取り付けるときに圧縮機のキャビティに最も近接しているようにする。
【0010】
別の例示的な実施形態によれば、コンピュータ実行可能命令を含むコンピュータ読み出し可能媒体があり、当該命令は、実行されたときに、圧縮機に取り付けるためのダンプナーの複数の構成要素の周波数を特定するための方法を実施する。本方法は、周波数計算モジュール、特殊計算モジュール、及び音響Campbellモジュールを有する個別のソフトウェアモジュールを含むシステムを提供する段階と、圧縮機にダンプナーを取り付けずに圧縮機のキャビティの音響スペクトルを測定する段階と、周波数計算モジュールによりキャビティの音響波長を計算する段階と、ダンプナーの近位ノズルの長さを受け取る段階と、キャビティの音響波長及びダンプナーの近位ノズルの長さに基づいて、特殊計算モジュールによりダンプナーの近位ノズル及び圧縮機のキャビティに関連する高次周波数を計算する段階とを含み、ダンプナーの近位ノズルは、ダンプナーを圧縮機に取り付けるときに圧縮機のキャビティに最も近接するようにする。
【0011】
更に別の例示的な実施形態によれば、圧縮機に取り付けるためのダンプナーの複数の構成要素の周波数を特定するためのコンピュータシステムがある。当該コンピュータシステムは、圧縮機にダンプナーを取り付けずに圧縮機のキャビティの音響スペクトルを測定し、キャビティの音響波長を計算し、ダンプナーの近位ノズルの長さを受け取り、キャビティの音響波長及びダンプナーの近位ノズルの長さに基づいて、ダンプナーの近位ノズル及び圧縮機のキャビティに関連する高次周波数を計算するように構成されたプロセッサを含み、ダンプナーの近位ノズルは、ダンプナーを圧縮機に取り付けるときに圧縮機のキャビティに最も近接しているようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】入口ダンプナー、圧縮機、及び吐出ダンプナーを含む圧縮機システムの概略図。
【図2】例示的な実施形態による圧縮機に取り付けられた試験システムの概略図。
【図3】例示的な実施形態による、図2の試験システムによって記録される音響スペクトルのグラフ。
【図4】例示的な実施形態による試験システムの一部であるコンピューティングシステムの概略図。
【図5】例示的な実施形態によるCampbell図モジュールの入力データを示す図。
【図6】例示的な実施形態による圧縮機システムの様々な構成要素の周波数を示すグラフ。
【図7】例示的な実施形態による、図6に示す周波数を計算するための方法の段階を示すフロー図。
【図8】例示的な実施形態による、図6に示す周波数を計算するための方法段階を示すフロー図。
【図9】例示的な実施形態による圧縮機システムの様々な構成要素の周波数を計算するための方法段階を示すフロー図。
【図10】試験システムによって用いられるコンピューティングシステムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付図面は、1つ又はそれ以上の実施形態を例証しており、本明細書と共にこれらの実施形態を説明する。
【0014】
例示的な実施形態の以下の説明は添付図面を参照する。異なる図面における同じ参照符号は、同じ又は同様の要素を示している。以下の詳細な説明は、本発明を限定するものではない。むしろ本発明の範囲は、添付の請求項によって定義される。以下の実施形態は、簡潔にするために、OFS容積式圧縮機の用語及び構造に関連して議論している。産業用処理プラントで使用される様々な種類の圧縮機の中でも、スクリュー圧縮機は、互いに噛み合う螺旋ローブを備えた2つのスクリュー又はロータを有し、吸気区域から圧縮機の送出区域まで漸次的に移動するキャビティを形成するようにし、従って、流体が加圧される。更に簡潔にするために、容積−チョーク−容積ダンプナーについて議論する。しかしながら、以下で議論する実施形態は、これらの圧縮機及びダンプナーに限定されず、他の既存の圧縮機にも適用することができる。
【0015】
本明細書全体にわたり「一実施形態」又は「実施形態」として言及することは、実施形態に関連して説明される具体的な特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体で種々の箇所において「一実施形態において」又は「ある実施形態において」の表現が現れるが、必ずしも同じ実施形態について言及している訳ではない。更に、具体的な特徴、構造、又は特性は、1つ又はそれ以上の実施形態においてあらゆる好適な方法で組み合わせることができる。
【0016】
圧縮機の入口及び吐出キャビティにダンプナーを提供することは、当該分野で公知であるが、圧縮機及び関連する装置内に現れる可能性がある振動及び/又はノイズを減少させるために、これらのダンプナーのサイズを決定する方法及びシステムは、あまり効果的ではない。従って、以下の例示的な実施形態は、振動及び/又はノイズの低減を達成するためにダンプナーの構成要素の適切な形状及びサイズを決定するための新規の方法及びシステムを開示する。
【0017】
例示的な実施形態によれば、圧縮機の音響長さを測定するためのシステムが図2に示される。図2は、圧縮機20上に設置された音響長さ測定システム100を示している。圧縮機20のフランジ26と測定用フランジ72との間にパイプ70が取り付けられる。入口ダンプナー30及び吐出ダンプナー50は、圧縮機20から取り外されている点に留意されたい。マイクロフォン74、スピーカ76、及び熱電対78は全て、測定用フランジ72に取り付けられる。パイプ70は、例示的な実施形態によれば、自己の直径の5倍よりも大きい長さを有することができる。1つの応用において、パイプ70の直径は、圧縮機20のフランジ26の直径に実質的に等しい。
【0018】
スピーカ76は、図2に示すように、増幅器80に接続することができる。増幅器80は、0から10kHzまでの周波数を有する音響信号を生成可能な公知の増幅器とすることができる。増幅器80は、関数発生器装置82に接続することができる。関数発生器装置82は、所望の関数(例えば正弦波)を生成するように構成されている。
【0019】
スピーカ76によって生成された音響は、パイプ70及び圧縮機20の入口キャビティ26内に伝搬する。マイクロフォン74によって反射音がキャプチャされて、制御装置90に提供される。電源84は、所用電力をマイクロフォン74に供給することができる。キャプチャされた音響信号は、制御装置90に伝送される前に、計装ブーム86のマイクロフォンチャンネルに通すことができる。熱電対78をパイプ70内に配置し、パイプ内の空気の温度を測定する。温度信号が計装ブーム86を介して制御装置90に提供され、音響速度を計算するのに用いられる。
【0020】
圧縮機20の音響長さを決定する際に、圧縮機20は起動されず、すなわち、ロータは停止しており、圧縮機20を通って液体又はガスが循環しておらず、すなわち、圧縮機内には空気だけが存在する。別の例示的な実施形態によれば、音響長さを決定する際に、圧縮機を起動し、圧縮機20内にガス又は液体を循環させることができる。
【0021】
図2は、圧縮機20の入口キャビティ22の音響長さを測定する測定システム100を示しているが、同じ測定システム100を用いて、圧縮機20の吐出キャビティ24を測定することができる。簡潔にするために、以下の実施形態では、入口キャビティ22の音響長さの測定ついてのみ図示し議論する。
【0022】
制御装置90は、マイクロフォン74によって記録された音響信号を解析して判定するように構成された信号アナライザ92と、記録された音響信号から(以下で議論するように)種々の物理量を抽出して計算するためのコンピュータシステム94と、コンピュータシステム94に温度信号を提供するための温度トランスデューサ96とを含むことができる。
【0023】
(i)スピーカによって生成された音響掃引に応答して、マイクロフォンによって音響スペクトルを記録させ、(ii)パイプ70内の熱電対によって空気の温度を記録させると、コンピュータシステム94において以下の処理を行うことができる。記録された音響スペクトルの実施例を図3に示しており、華氏63.6度における周波数fに対する音響エネルギー(強度)が記録されている。スペクトル内で複数のピークp1からp5が識別される。この例示的な実施形態では、0から1000Hzまでの周波数レンジを有する音響が放出されている。スペクトルが信号アナライザ92によって解析されて、ピークp1からp5がコンピュータシステム94に提供される。
【0024】
図4に示すように、コンピュータシステム94は、周波数計算モジュール102を含むことができ、これは、音速及び各2つの連続するピークp1からp5間の差を計算するように構成されている。音響速度は、空気の定数ns、空気の分子量、パイプ70内の空気の温度、及び空気の圧縮率Zに基づいて計算される。例示的な実施形態によれば、音響速度は、sqrt[(K1×ns)×(K2/分子量)×(T+K3)×Z]として計算され、ここでsqrtは平方根演算であり、K1からK3は定数である。各2つの連続するピークp1からp5間の差を計算することによって、複数の周波数差Δfが得られる。計算モジュール102はまた、周波数差Δfの平均を計算し、平均周波数差Δfaveを算出するように構成されている。1/2波長は、音響速度をΔfaveの2倍で除算することにより算出される。1/2波とパイプ70の長さとの間の差を計算することによって、圧縮機20の入口キャビティ22の実効音響長が得られる。圧縮機20の吐出キャビティ24の実効音響長は、同様の方法で計算することができる。
【0025】
上記のデータは、周波数計算モジュール102によって特殊計算モジュール104に供給され、該特殊計算モジュールは、ノズル周波数、3−Dチャンバ横断壁周波数、軸方向チャンバ周波数、及びチョーク管周波数のうちの少なくとも1つを計算するように構成されている。1つの応用において、ノズル周波数(次数1、3、5、7、及び9)を以下で説明するように計算する。圧縮機のキャビティの実効音響長(ユニット102によって計算された)が、ダンプナーと圧縮機との間のスプール要素のスプール要素長(システム内に存在する場合、存在しない場合には、ダンプナーのノズル長を使用)に、及びノズル32のダンプナーノズルの物理長に加算されて、その和を定数で乗算して、総ノズル実効長を算出する。音響速度を総ノズル実効長で除算することにより、ノズルの次数n=1の完全一致励起周波数が得られる。残りの次数は、完全一致励起周波数を次数に相当する数字で乗算することによって得られる。複数のローブ通過周波数は、対応する完全一致の励起速度(完全一致励起周波数を雄スクリューのローブ数で除算して、60を乗算することによって得られる)をスクリューの定格速度で除算することによって計算することができる。同様の計算は、擬似拡張を有するノズルでも可能にすることができ、唯一の相違点は、擬似拡張の長さを総ノズル実効長に加算しなければならない点である。擬似拡張は、物理的幾何形状に対する拡張として使用され、より正確な音響予測を可能にすることができる。
【0026】
別の例示的な実施形態によれば、3−Dチャンバ横断壁の完全一致励起周波数は、横断壁の値λ(図1の62)を音響速度で乗算し、その積をチャンバシェルの直径(図1の38又は62)で除算することによって計算される。複数のローブ通過周波数は、対応する完全一致の励起速度(完全一致励起周波数を雄スクリューのローブ数で除算して、60を乗算することによって得られる)をスクリューの定格速度で除算することによって計算することができる。
【0027】
別の例示的な実施形態によれば、軸方向チャンバの完全一致励起周波数は、音響速度を軸方向長さ60(図1に示す)の2倍で除算することによって計算することができる。複数のローブ通過周波数は、対応する完全一致の励起速度(完全一致励起周波数を雄スクリューのローブ数で除算して、60を乗算することによって得られる)をスクリューの定格速度で除算することによって計算することができる。
【0028】
別の例示的な実施形態によれば、チョーク管の一次完全一致励起周波数は、音響速度を総チョーク管実効長64(図1に示す)の2倍で除算することによって計算することができる。複数のローブ通過周波数は、対応する完全一致の励起速度(完全一致励起周波数を雄スクリューのローブ数で除算して、60を乗算することによって得られる)をスクリューの定格速度で除算することによって計算することができる。
【0029】
上述の各段階に基づいてモジュール104により計算されたデータは、更なる処理及び表示のために音響Campbellモジュール106に送られる。このようなデータの実施例を図5に示す。ここでも例示の目的で、図5に示すデータの一部分は、音響Campbell図である図6に示すように、音響Campbellモジュール106によってグラフ化される。図5及び6に示すデータは、このデータが圧縮機特有であるので、例示的な実施形態を限定するものではない点に留意されたい。言い換えれば、各圧縮機は固有の特性を有し、様々な圧縮機を説明することができる一連のデータは存在しない。更には、圧縮機に取り付けるダンプナーは様々であり、図5及び6に示すデータは、圧縮機の特性だけでなく圧縮機に取り付けられるダンプナーの特性も考慮する。更に、図5は、雄及び雌スクリューの特定の速度を示しており、これらは、圧縮機毎に異なり、同じ圧縮機でも加圧されるガス又は液体によって異なる場合がある。
【0030】
図5及び6に示す数字が例示的であることを明確にした上で、図6は、ノズル周波数の最初の3つの次数及び横断壁周波数の最初の3つの次数(横線)、雄ロータの速度及び雌ロータの速度(縦線)、並びに雄及び雌のローブ通過周波数の最初の2つの次数を示している。前述のように、雄及び雌のローブ通過周波数は、対応するロータの速度を対応するローブの数及び更に周波数の次数(すなわちn=1、3、5、7、その他)で乗算することによって計算される。
【0031】
図6の音響Campbell図に示すデータに基づいて、選択モジュール108又はコンピューティングシステム94のオペレータは、入口及び吐出ダンプナーの構成要素の周波数をダンプナーの音響ポケット周波数及び/又は共振周波数から離間して配置させるために、入口及び吐出ダンプナーの構成要素に対して実施されることになる種々の変更を決定することができる。固有共振周波数は、圧縮機のサイレンサシステム内で発生する予測値である。一部又は全ての音響共振は、図6のCampbell図において横線としてグラフ化することができる。これらの共振周波数は、ノズル、チョーク管、横断壁、及び軸方向周波数を含むことができる。例示的な実施形態によれば、図5に示したダンプナーの音響周波数は、共振ローブ通過又はポケット通過周波数から少なくとも20%離間して配置されるのが望ましい。このことは、この例示的な実施形態によれば、図6内の曲線I(雌ロータ2Xローブ通過周波数)が、曲線IIIで定義される速度において所定値よりも曲線II(横断壁周波数)に接近している場合(図6内のΔ)、ダンプナーの図1の横断壁のサイズ38又は62を変更し、圧縮機作動時の圧縮機の振動及び/又はノイズの発生を回避する必要があることを意味する。例示的な実施形態によれば、励起周波数と音響固有周波数との間の比率差は、以下のように計算される。
:(音響固有周波数−励起周波数)/励起周波数×100倍
この数字は20%を超えることが望ましい。
【0032】
例示的な図6に基づいて、当業者であれば理解されるように、ノズル、横断壁、チャンバ長、及びチョーク管周波数をローブ通過周波数から離間して分布させるように変更可能なダンプナーの様々なサイズ及び配置があり、これらのサイズ及び配置は、圧縮機に固有である。このサイレンサのタイプは、容積−チョーク−容積タイプである。
【0033】
従って、図1の圧縮機システム10の様々な構成要素の周波数分布を決定するための方法段階について、図7及び8に関して以下で議論する。段階700において、パイプ70(図2)及び入口キャビティ22又は吐出キャビティ24(図1)の音響速度を計算する。この段階は、空気の温度を測定する段階と、使用するガス(この場合は空気)の分子量、圧縮率、及びns指標をオペレータから受け取るか又はテーブル内で検索する段階を含む。段階702において、音響スペクトル(図2に関連して議論した)を測定して解析する。段階704において、音響スペクトルからピーク周波数を抽出して、隣接ピーク間の差Δfを計算する。段階706において、平均Δfaveを計算し、段階710において、この値と段階700で測定した音響速度とに基づいて1/2λを計算する。
【0034】
段階712において入力されるか又は既存ファイル内で見いだされるダンプナーの構成要素のサイズに基づいて、ダンプナーに関連する周波数を段階714で計算する。これらの周波数は、ノズル周波数、横断壁周波数、チャンバ長周波数、チョーク管周波数、その他とすることができる。段階716において、システムは、対応するロータの速度によって決まるローブ通過周波数を計算することができる。段階714及び716で計算された周波数は、段階718で音響Campbell図として表示することができる。段階720において、ユーザか又はコンピュータシステムにインストールされたコンピュータソフトウェアの何れかは、段階714で計算された周波数が、段階716で計算された周波数及び/又は圧縮機の固有共振周波数から十分に離間しているかどうかを判断する。段階714で計算された周波数が十分に離間していない場合、ダンプナー及び圧縮機は、ローブ通過周波数によって影響を受けることになる。従って、オペレータ又はコンピュータシステムは、段階712でダンプナーの構成要素に関して他のサイズを選択することができ、その後、所望の周波数分散が達成されるまで、段階714から720を繰り返すことができる。段階712で選択したサイズが、段階720で良好な結果をもたらした場合、処理は停止する。
【0035】
従って、図4に示した制御システム94において実施することができるこれらの特定の段階によれば、入口及び吐出ダンプナーの構成要素は、圧縮機のローブ通過周波数及び/又は他の共振周波数の影響を確実に最小限にするように選択することができる。従って、図7及び8に示す特定の段階は、この結果を達成するための特定の様態で図4のコンピューティングデバイスを構成する。
【0036】
別の例示的な実施形態によれば、圧縮機に取り付けられるダンプナーの様々な構成要素の周波数を特定するための方法がある。このような方法の段階を図9に示す。本方法は、圧縮機にダンプナーを取り付けずに圧縮機のキャビティの音響スペクトルを測定する段階900と、キャビティの音響波長を計算する段階902と、ダンプナーの近位ノズルの長さを受け取る段階904と、キャビティの音響波長及びダンプナーの近位ノズルの長さに基づいて、ダンプナーの近位ノズル及び圧縮機のキャビティに関連する高次周波数を計算する段階906と、を含み、ダンプナーの近位ノズルは、ダンプナーが圧縮機に取り付けられたときに圧縮機のキャビティに最も近接する。
【0037】
限定ではなく例証の目的で、例示的な実施形態に従って動作を実行することができる代表的なコンピューティングシステムの実施例を図10に示す。しかしながら、本発明の例示的な実施形態の原理は、他のコンピューティングシステムに均等に適用可能である点は認識されたい。
【0038】
例示的なコンピューティングシステム1000は、マイクロプロセッサ、縮小命令セット・コンピュータ(RISC)、又は他の中央処理モジュールなどの処理/制御ユニット1002を含むことができる。処理ユニット1002は、単一のデバイスである必要はなく、1つ又はそれ以上のプロセッサを含むことができる。例えば、処理ユニット1002は、マスタプロセッサ、及びマスタプロセッサと通信するように結合された関連のスレーブプロセッサを含むことができる。
【0039】
処理ユニット1002は、ストレージ/メモリ1004内で利用可能なプログラムによって決まるシステムの基本機能を制御することができる。従って、処理ユニット1002は、図7及び8で説明した機能を実行することができる。より具体的には、ストレージ/メモリ1004は、オペレーティングシステムと、コンピューティングシステム上で機能及びアプリケーションを実行するためのプログラムモジュールとを含むことができる。例えば、プログラムストレージは、読み出し専用メモリ(ROM)、フラッシュROM、プログラム可能及び/又は消去可能ROM、ランダムアクセスメモリ(RAM)、加入者インタフェースモジュール(SIM)、無線インタフェースモジュール(WIM)、スマートカード、又は他の取り外し可能メモリデバイス、その他のうちの1つ又はそれ以上を含むことができる。プログラムモジュール及び関連する機能はまた、インターネットなどのネットワークを介して電子的にダウンロードされるようなデータ信号を介して、コンピューティングシステム1000に伝送することもできる。
【0040】
ストレージ/メモリ1004内に格納可能なプログラムの1つが、専用プログラム1006である。前述のように、専用プログラム1006は、メモリ内に格納されたテーブルと対話して、音響スペクトル測定時に使用されるガス(空気)の適切な特性、及びダンプナーの構成要素のサイズもまた特定することができる。プログラム1006及び関連する機能は、プロセッサ1002を用いて動作可能なソフトウェア及び/又はファームウェアで実施することができる。また、プログラムストレージ/メモリ1004を用いて、ガス及び/又はダンプナーデータ1008、或いは本発明の例示的な実施形態に関連する他のデータを格納することができる。例示的な一実施形態において、プログラム1006及びデータ1008は、不揮発性の電気的消去可能ROM(EEPROM)、フラッシュROM、その他に格納され、その結果、情報は、コンピューティングシステム1000の電源が切られたときでも失われることはない。
【0041】
プロセッサ1002はまた、ユーザインタフェース1010要素に結合することができる。ユーザインタフェース要素1010は、例えば、液晶ディスプレイなどのディスプレイ1012、キーパッド1014、スピーカ1016、及びマイクロフォン1018を含むことができる。これら及び他のユーザインタフェース構成要素は、当該分野で公知のプロセッサ1002に結合される。キーパッド1014は、番号をダイヤルすること、及び1つ又はそれ以上のキーに割り当てられたオペレーションを実行することを含む、各種機能を実行するための英数字キーを含むことができる。代替的に、音声コマンド、スイッチ、タッチパッド/画面、ポインティング・デバイスを用いたグラフィカルユーザインタフェース、トラックボール、ジョイスティック、又は他のあらゆるユーザインタフェース機構など、他のユーザインタフェース機構を利用することができる。
【0042】
コンピューティングシステム1000はまた、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)1020を含むことができる。DSP1020は、アナログ−デジタル(A/D)変換、デジタル−アナログ(D/A)変換、音声コーディング/デコーディング、暗号化/復号化、誤り検出及び訂正、ビットストリーム変換、フィルタリング、音響処理、その他を含む様々な機能を実行することができる。トランシーバ1022は、一般にアンテナ1024に結合されており、無線デバイスに関連する無線信号を送受信することができる。
【0043】
図10のコンピューティングシステム1000は、本発明の例示的な実施形態の原理を適用可能なコンピューティング環境の代表的な実施例として示している。本明細書で提供された説明から、本発明が、現在公知の及び将来的な様々な移動及び固定コンピューティング環境で均等に適用可能である点は、当業者であれば理解されるであろう。例えば、専用アプリケーション1006及び関連する機能、並びにデータ1008は、様々な様態で格納することができ、様々な処理デバイス上で動作可能とすることができ、追加の、より少ない、又は異なるサポート回路及びユーザインタフェース機構を有する移動デバイスにおいて動作可能とすることができる。本発明の例示的な実施形態の原理は、非移動端末、すなわち地上通信コンピューティングシステムにも均等に適用可能である点は留意されたい。
【0044】
開示される例示的な実施形態は、圧縮機のポール通過周波数及び/又は固有共振周波数との相互作用を最小限にするダンプナー構成要素の周波数を特定し選択するためのコンピューティングシステム、方法、及びコンピュータプログラム製品を提供する。本明細書は、本発明を限定するものではなく、スクリュー圧縮機だけでなく他の種類の圧縮機にも適用できる点は理解されたい。更に、例示的な実施形態は、代替形態、修正形態、及び均等物を対象とするものであり、これらは、添付の請求項によって定義される本発明の精神及び範囲内に含まれる。更に、例示的な実施形態の詳細な説明において、請求項に記載されている発明の包括的な理解をもたらすために数多くの特定の詳細を示している。しかしながら、当業者であれば、このような特定の詳細なしでも様々な実施形態を実施することができる点は理解されるであろう。
【0045】
例示的な実施形態は、完全にハードウェアの実施形態又はハードウェア及びソフトウェアの態様を組み合わせた実施形態の形式をとることができる。更に、例示的な実施形態は、コンピュータ読み出し可能媒体上に格納されていて、コンピュータ読み出し可能命令を媒体内で具現化させるコンピュータプログラム製品の形式をとることができる。ハードディスク、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、光学ストレージデバイス、或いはフロッピー(登録商標)ディスク又は磁気テープなどの磁気ストレージデバイスを含む、あらゆる好適なコンピュータ読み出し可能媒体を利用することができる。コンピュータ読み出し可能媒体の他の非限定的な実施例は、フラッシュタイプのメモリ又は他の公知のメモリを含む。
【0046】
本発明の例示的な実施形態の特徴及び要素は、実施形態において特定の組み合わせで説明したが、各特徴又は要素は、実施形態の他の特徴及び要素がなく単独で、或いは、本明細書で開示する他の特徴及び要素と組み合わせて又は組み合わせなしで使用することができる。本出願において提供した方法又はフロー図は、専用にプログラムされたコンピュータ又はプロセッサによって実行するために、コンピュータ読み出し可能ストレージ媒体内で有形に具現化されるコンピュータプログラム、ソフトウェア、又はファームウェアで実施することができる。
【符号の説明】
【0047】
20 圧縮機
26 フランジ
70 パイプ
72 測定用フランジ
74 マイクロフォン
76 スピーカ
78 熱電対
80 増幅器
82 関数発生器装置
84 電源
86 計装ブーム
90 制御装置
92 信号アナライザ
94 コンピュータシステム
96 温度トランスデューサ
100 音響長さ測定システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(20)に取り付けるためのダンプナー(30、50)の複数の構成要素の周波数を特定するための方法であって、
前記圧縮機(20)に前記ダンプナー(30、50)を取り付けずに前記圧縮機のキャビティ(22、24)の音響スペクトルを測定する段階と、
前記キャビティ(22、24)の音響波長を計算する段階と、
前記ダンプナー(30、50)の近位ノズル(52)の長さを受け取る段階と、
前記キャビティの音響波長及び前記ダンプナー(30、50)の近位ノズル(52)の長さに基づいて、前記ダンプナー(30、50)の近位ノズル(52)及び前記圧縮機(20)のキャビティ(22、24)に関連する高次周波数を計算する段階と、
を含み
前記ダンプナー(30、50)の近位ノズル(52)が、前記ダンプナー(30、50)を前記圧縮機(20)に取り付けるときに前記圧縮機のキャビティ(22、24)に最も近接しているようにする、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記キャビティ(22、24)が、前記圧縮機(20)の入口キャビティ(22)又は吐出キャビティ(24)である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記音響波長を計算する段階が、前記圧縮機(20)が停止している間に前記圧縮機(20)のキャビティ(22、24)内のガスの音響速度を計算する段階を含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記音響波長を計算する段階が、
前記音響スペクトル内のピーク周波数を識別する段階と、
前記隣接ピーク周波数間の周波数差を計算する段階と、
前記周波数差の平均周波数差を計算する段階と、
前記音響速度及び前記平均周波数差の比率として前記音響波長を計算する段階と、
を更に含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記測定段階が、
前記圧縮機(20)のキャビティ(22)に取り付けられた管体(70)のフランジ(72)にスピーカ(76)及びマイクロフォン(74)を取り付ける段階と、
前記スピーカによって前記管体(70)内に放出される初期音響から前記キャビティ(22)によって反射された音響を記録する段階と、
を含む、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
軸方向チャンバ(37)の横断壁長(38)、前記軸方向チャンバ(37)の軸方向チャンバ長(40)、及びチョーク管(36、56)のチョーク管長(42)のうちの少なくとも1つを受け取る段階を更に含み、
前記ダンプナー(30)の軸方向チャンバ(37)が、前記圧縮機(20)に接続された前記ダンプナー(30、50)の端部から遠位方向に前記チョーク管(36、56)と前記ダンプナー(30、50)の遠位ノズル(52)との間に配置され、前記チョーク管(36、56)が、前記ダンプナー(30、50)内部に前記ダンプナー(30、50)の近位ノズルと前記遠位ノズル(52)との間に配置される、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記横断壁長、前記軸方向チャンバ長(37)、及び前記チョーク管長(42)について対応する高次周波数を計算する段階を更に含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記圧縮機(20)の雄ロータ及び雌ロータに関連する複数のローブ通過周波数を計算する段階と、
前記ノズル、前記軸方向チャンバ(37)、及び前記チョーク管(36)の計算された高次周波数が、前記ローブ通過周波数から少なくとも所定値だけ離間して配置されているかどうかを判断する段階と、
を更に含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ノズルの長さ、前記軸方向チャンバ(37)の横断壁長(38)、前記軸方向チャンバの軸方向チャンバ長(40)、及び前記チョーク管(36)のチョーク管長(42)のうちの少なくとも1つを変更する段階と、
前記段階を繰り返す段階と、
を更に含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記横断壁長(38)、前記軸方向チャンバ長(40)、及び前記チョーク管長(42)の対応する高次周波数、並びに前記圧縮機(20)の雄ロータ及び雌ロータに関連する前記複数のローブ通過周波数を音響Campbell図としてプロットする段階を更に含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項11】
圧縮機(20)に取り付けるためのダンプナー(30、50)の複数の構成要素の周波数を特定するためのコンピュータシステム(94、1000)であって、
前記圧縮機(20)に前記ダンプナー(30、50)を取り付けずに前記圧縮機(20)のキャビティ(22、24)の音響スペクトルを測定し、
前記キャビティ(22、24)の音響波長を計算し、
前記ダンプナー(30、50)の近位ノズル(52)の長さを受け取り、
前記キャビティ(22、24)の前記音響波長及び前記ダンプナー(30、50)の近位ノズル(52)の長さに基づいて、前記ダンプナー(30、50)の近位ノズル(52)及び前記圧縮機(20)のキャビティ(22、24)に関連する高次周波数を計算する、
ように構成されたプロセッサ(1002)を備え、
前記ダンプナー(30、50)の近位ノズル(52)が、前記ダンプナー(30、50)を前記圧縮機(20)に取り付けるときに前記圧縮機(20)のキャビティ(22、24)に最も近接しているようになる、
ことを特徴とするコンピュータシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−144729(P2010−144729A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285850(P2009−285850)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(500445479)ヌオーヴォ ピニォーネ ホールディング ソシエタ ペル アチオニ (34)
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Holding S.p.A.
【Fターム(参考)】