説明

圧縮永久歪みが低いゴム状ポリマー

(a)ブチルアクリレートまたはブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの混合物、(b)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびエチルアクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種、(c)アクリロニトリル、(d)スチレン、(e)マレイン酸半エステル石けん、ならびに(f)アリルメタクリレート、ならびにアリルメタクリレートとグリシジルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、およびジビニルベンゼンとの混合物から選ばれた架橋剤を含むゴム状ポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールおよびガスケットに有用な圧縮永久歪みの低いゴム状ポリマーおよびそれらの組成物の調製への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体用途(窓、ボンネット、トランク、およびドアなど)ならびに建設用途(窓ガラス工事用ガスケットおよび目詰めストリップ)向けのシール材は、寸法安定性を有し、圧縮永久歪みが低く、広い温度範囲にわたって顕著なシール特性を与えることが求められる。この種のシール材は長期の耐紫外線性を示すとともに、騒音、風および水を封じることができなければならない。同時に、シールに使用される材料はその使用用途に必要な程度の柔軟性を与えなければならない。自動車およびトラック用の窓およびドアの目詰め(weather stripping)は、かかるシール材の高い割合を占める用途である。しかし、本質的に同じ特性を与えるシール材が、サンルーフのシール、ハンドルガスケット、ウィンドウスペーサ、ウィンドウガイド、ロックシール、ワイパーピボットシール、ならびに窓ガラス工事用ガスケットおよび目詰めシールなどの建設用途にも求められる。
【0003】
ポリ塩化ビニル(PVC)とニトリルゴム(NBR)とのゴム状ブレンドが自動車車体用途向けシール材に時に使用されてきた。かかるブレンドにおいて、ニトリルゴムはPVCに高度の柔軟性を付与するPVCの永久改質剤として含有される。しかし、かかるブレンドにおける標準的なニトリルゴムの利用は、典型的には中程度の圧縮永久歪み特性しか生じない。シールにとって多くの用途において圧縮永久歪み特性が良好であることは非常に重要である。例えば、水漏れおよび風切り音の対する耐性の改善は圧縮永久歪み特性が低いシールの利用により達成されうる。
【0004】
英国特許出願公開第2,271,115号の開示から、アゾ化合物又は有機ペルオキシドのような遊離基(フリーラジカル)発生剤を経た「動的加硫」と呼ばれる方法を利用することにより低圧縮永久歪み特性を改善することができることが知られている。しかし、この「動的加硫」法には、必要なアゾ化合物又は有機ペルオキシドがポリ塩化ビニル樹脂の熱安定性とニトリルゴムの耐紫外線性を低下させるという弱点がある。また、処理中の早期架橋の危険性が高まり、それは焼け発生(スコーチング)およびリサイクル性の低下につながる。
【0005】
米国特許第5,362,787号は、PVCと容易にブレンドすることができ、自動車お建設用途用のシールおよびガスケットの製造に使用するための優れた組み合わせの特性を有する組成物を与える高架橋ニトリルゴムを開示している。この高架橋ニトリルゴムから作られたPVCブレンドは、優れた分散挙動、寸法安定性、低い圧縮永久歪み、顕著なシール特性および低温柔軟性を示す。
【0006】
米国特許第5,362,787号は、より具体的には、ポリ塩化ビニルとブレンドすることにより、寸法安定性、低い圧縮永久歪み、顕著なシール特性および良好な低温柔軟性を含む、シールおよびガスケット用の優れた特性を有する組成物を作ることができる高架橋ニトリルゴム組成物を開示しており、この高架橋ニトリルゴム組成物は、(1) (a)1,3−ブタジエン、(b)アクリロニトリル、および(c)架橋剤から誘導された反復単位を有する高架橋ニトリルゴム(ただし、この高架橋ニトリルゴムは、ムーニー粘度が約50〜約120、膨潤指数が約10%以下、ミル収縮率が10%以下、そしてゲル含有率が90%以上である)、ならびに(2)約1〜約30phrの可塑剤、からなる。
【0007】
米国特許第5,380,785号および米国特許第5,415,940号は、ポリ塩化ビニルとブレンドすることにより良好な耐熱性および耐紫外線性を有する皮革(レザー)様の組成物を作ることができるゴム状ポリマーを開示している。このゴム状ポリマーは、(a)ブチルアクリレート、もしくは場合によりブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの混合物(2−エチルヘキシルアクリレートの含有量は約40%以下)、(b)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびエチルアクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種、(c)アクリロニトリル、(d)スチレン、(e)マレイン酸半エステル石けん、ならびに(f)架橋剤からなる反復単位からなる。好ましい架橋剤は、エチレングリコールメタクリレート、ジビニルベンゼンおよび1,4−ブタンジオールジメタクリレートである。
【0008】
米国特許第5,552,469号は、ポリ塩化ビニルとブレンドすることにより、寸法安定性、低い圧縮永久歪み、および顕著なシール特性を含むシールおよびガスケット用の優れた特性を有する組成物を作ることができる高架橋ニトリルゴム組成物を開示している。この高架橋ニトリゴム組成物は、(1) (a)1,3−ブタジエン、(b)アクリロニトリル、および(c)架橋剤から誘導された反復単位を有する高架橋ニトリルゴム(ただし、この高架橋ニトリルゴムはムーニー粘度が約50〜約120、膨潤指数が約10%以下、ミル収縮率が10%以下、そしてゲル含有率が90%以上である)、ならびに(2)約1〜約30phr(ゴム100部あたりの部,parts per hundred parts of rubber)の可塑剤からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】英国特許第2,271,115号
【特許文献2】米国特許第5,362,787号
【特許文献3】米国特許第5,380,785号
【特許文献4】米国特許第5,415,940号
【特許文献5】米国特許第5,552,469号
【発明の概要】
【0010】
着色が薄い自動車および建設ガスケット用途に対して、寸法安定性、低温柔軟性、および顕著なシール特性を保持しながら低い圧縮永久歪みを達成するための熱可塑性樹脂とブレンドされるゴム状ポリマーが大きく求められている。
【0011】
本発明は、熱可塑性樹脂とブレンドすると自動車および建設用途向けのシールおよびガスケットに使用することができるポリマー組成物を与えることができるゴム状ポリマーに関する。このポリマー組成物は引張強度、耐引き裂き性、耐紫外線性、および耐圧縮永久歪み性が良好である。
【0012】
従って、本発明は熱可塑性樹脂にブレンドすることにより該熱可塑性樹脂に低い圧縮永久歪みを付与することができるゴム状ポリマーに関する。
より正確には、熱可塑性樹脂にブレンドすることができる本発明のゴム状ポリマーは下記成分から構成され:
(a)ブチルアクリレートまたはブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの混合物、
(b)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびエチルアクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種、
(c)アクリロニトリル、
(d)スチレン、
(e)マレイン酸半エステル石けん、ならびに
(f)アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジビニルベンゼン、ならびにそれらの混合物から選ばれた架橋剤:
ここで、前記ゴム状ポリマーは下記工程を含む方法により得られうるものである:
(I)上述した(a)〜(f)から選ばれたモノマーを乳化重合条件下で重合して、エラストマー性の種(シード)ポリマーを含有するラテックスを調製し、ただし、アリルメタクリレートは必ず存在させ、
(II)このエラストマー性種ポリマーを含有するラテックスに、乳化重合条件下で、上記の(a)〜(f)から選ばれた追加のモノマーを添加し、
(III)ゴム状ポリマーを含有するエマルジョンからゴム状ポリマーを回収する。
【0013】
本発明の目的にとって、「エラストマー性」なる用語は、室温以上の温度でゴム状特性を示し、DIN53520規格に従ったガラス転移温度が0(℃)以下である架橋ポリマーを意味するものである。例えば、エラストマー性種ポリマーを含有するラテックスは、工程(I)において少なくとも50重量%のブチルアクリレートを使用する場合に得ることができる。
【0014】
有利には、工程(I)は、モノマー(a)、(b)、(c)、(e)および(f)を重合させることからなり(ただし、アリルメタクリレートを必ず存在させる)、そして工程(II)は追加のモノマー(c)、モノマー(d)および追加のモノマー(f)を添加することからなる。
【0015】
技術的には、本発明のゴム状ポリマーは、下記から誘導される反復単位(連鎖結合)を含有する:
(a)ブチルアクリレートまたはブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの混合物、
(b)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびエチルアクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種、
(c)アクリロニトリル、
(d)スチレン、
(e)マレイン酸半エステル石けん、ならびに
(f)アリルメタクリレート、ならびにアリルメタクリレートとグリシジルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、またはジビニルベンゼンとの混合物から選ばれた架橋剤。
【0016】
これらの反復単位は、それぞれのモノマーに存在するのより1つ少ない炭素−炭素二重結合を含有する点において、それらを誘導するのに用いたモノマーとは異なる。換言すると、モノマーを重合させてゴム状ポリマー中の反復単位にする際に、炭素−炭素二重結合が1つ消費される。すなわち、ゴム状ポリマーが上記各種のモノマーから構成されると言うのは、実際上は、これが上記モノマーから誘導される反復単位を含有するということを意味している。
【0017】
有利には、本発明に係るゴム状ポリマーは、下記成分から構成される:
(a)ブチルアクリレートを40〜80重量%または約40重量%までの2−エチルヘキシルアクリレートを含有するブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの混合物を40〜80重量%、
(b)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびエチルアクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種を1〜35重量%、
(c)アクリロニトリルを4〜30重量%、
(d)スチレンを3〜25重量%、
(e)マレイン酸半エステル石けんを0.5〜8重量%、ならびに
(f)アリルメタクリレート、ならびにアリルメタクリレートとグリシジルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートおよびジビニルベンゼンとの混合物から選ばれた架橋剤を0.2〜8重量%。
【0018】
より有利には、本発明に係るゴム状ポリマーは、下記成分から構成される:
(a)ブチルアクリレートを50〜80重量%または約40重量%までの2−エチルヘキシルアクリレートを含有するブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの混合物を50〜80重量%、
(b)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびエチルアクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種を1〜25重量%、
(c)アクリロニトリルを6〜30重量%、
(d)スチレンを5〜18重量%、
(e)マレイン酸半エステル石けんを1〜5重量%、ならびに
(f)アリルメタクリレート、ならびにアリルメタクリレートとグリシジルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートおよびジビニルベンゼンとの混合物から選ばれた架橋剤を0.25〜4重量%。
【0019】
さらにより有利には、本発明に係るゴム状ポリマーは、下記成分から構成される:
(a)ブチルアクリレート、または約40重量%までの2−エチルヘキシルアクリレートを含有するブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの混合物を55重量%から75重量%、
(b)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびエチルアクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種を1〜20重量%、
(c)アクリロニトリルを10〜25重量%、
(d)スチレンを8〜14重量%、
(e)マレイン酸半エステル石けんを2〜4重量%、ならびに
(f)アリルメタクリレート、ならびにアリルメタクリレートとグリシジルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートおよびジビニルベンゼンとの混合物から選ばれた架橋剤を0.25〜3重量%。
【0020】
本発明によると、好ましい架橋剤はアリルメタクリレートであり、本ゴム状ポリマーは0.25〜3重量%、好ましくは0.5重量%前後のアリルメタクリレートを含有する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るゴム状ポリマーは、当業者に知られた任意の方法により製造することができる。例えば、米国特許第5,380,785号および米国特許第5,616,651号に詳述されているラジカル重合法を利用して水性反応混合物中で該ポリマーを合成することができる。
【0022】
本発明のゴム状ポリマーは、ラジカル重合法を利用して水性反応混合物中で合成される。この重合法で利用する反応混合物は、水、適当なモノマー類、適当な遊離基(ラジカル重合)開始剤、ならびにアリルメタクリレート、およびアリルメタクリレートとグリシジルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートおよびジビニルベンゼンとの混合物から選ばれた架橋剤、マレイン酸半エステル石けん、ならびにアルキルスルホネートの金属塩もしくはアルキルサルフェートの金属塩から構成される。この重合法で利用する反応混合物は、普通は、反応混合物の全重量に基づいて5〜80重量%のモノマー類を含有する。反応混合物中のモノマー類の含有量は、好ましくは15〜70重量%、より好ましくは25〜50重量%である。
【0023】
この重合反応を実施するのに利用される反応混合物は、典型的にはアルキルサルフェートの金属塩およびアルキルスルホネートの金属塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種を0.005phm(モノマー100重量部あたりの重量部)から1phmの量で含有する。反応混合物がアルキルスルホネートの金属塩またはアルキルサルフェートの金属塩を0.008〜0.5phmの量で含有することが一般に好ましい。普通は反応混合物がアルキルスルホネートの金属塩またはアルキルサルフェートの金属塩を0.05〜0.3phmの量で含有することがより好ましい。
【0024】
この合成法で利用されるラジカル重合法は、普通は反応混合物中に遊離基開始剤を含有させることにより開始される。実際上は遊離基を発生させることができる任意の種類の化合物を遊離基開始剤として利用することができる。遊離基発生剤は0.01〜1phmの範囲内の濃度で使用されるのが普通である。慣用されている遊離基発生剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、アセチルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、コハク酸ペルオキシド、ジセチルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシマレイン酸、t−ブチルペルオキシベンゾエート、アセチルシクロヘキシルスルホニルペルオキシドなどの各種ペルオキシ(過酸素)化合物;2−t−ブチルアゾ−2−シアノプロパン、アゾジイソ酪酸ジメチル、アゾジイソブチロニトリル、2−t−ブチルアゾ−1−シアノシクロヘキサン、1−t−アミラゾ−1−シアノシクロヘキサンなどの各種アゾ化合物;2,2−ビス−(t−ブチルペルオキシ)ブタンなどの各種アルキルペルケタール類などが挙げられる。このような水性重合には水溶性のペルオキシ遊離基開始剤が特に有用である。
【0025】
本発明の乳化重合は、典型的には20℃(60°F)から88℃(190°F)までの温度範囲で行われる。温度が88℃より高くなると、ブチルアクリレートなどのアルキルアクリレートモノマーが沸騰する傾向がある。従って、このようなアルキルアクリレートモノマーを約88℃より高温に加熱するには加圧ジャケットが必要となろう。他方、重合温度が55℃より低い場合には、満足すべき重合速度を確保するためにレドックス開始剤系が必要となる。
【0026】
本発明において有用なスルホネート系界面活性剤は、多様な会社から市販されている。例えば、デュポン社はアルカノール(Alkanol)(登録商標)なる商品名でアルキルアリールスルホン酸ナトリウムを販売し、ステパン (STEPAN) 社はポリステップ (Polystep) なる商品名でドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを販売し、そしてニース・パフォーマンス・ケミカルズ (Nease Performance Chemicals) 社はナキソネート・ハイドロトロープ (Naxonate Hydrotrope)(登録商標) なる商品名でクメンスルホン酸ナトリウムを販売している。使用できるスルホネート系界面活性剤の代表例をいくつか挙げると、トルエン・キシレンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム、デシルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、1-オクタンスルホン酸ナトリウム、テトラデカンスルホン酸ナトリウム、ペンタデカンスルホン酸ナトリウム、ヘプタデカンスルホン酸ナトリウム、およびトルエンスルホン酸カリウムがある。
【0027】
アルキルベンゼンスルホン酸の金属塩が特に好ましい種類のスルホネート系界面活性剤である。金属は一般にナトリウムまたはカリウムであり、ナトリウムが好ましい。アルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩は下記構造式で示される。
【0028】
【化1】

【0029】
式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基を意味する。アルキル基は炭素数8〜14のものが好ましい。
本発明のゴム状ポリマーの合成で使用されるラジカル(遊離基)乳化重合は、典型的には10〜95℃の範囲内の温度で行われる。ほとんどの場合、使用する重合温度は約20〜80℃の範囲内であろう。
【0030】
本技術分野で周知の方法に従って、乳化重合中にポリマー(重合)を停止させ、その鎖長を制御するために、変性剤(または連鎖移動剤と呼ばれる)を反応混合物に添加することができる。この変性剤は有利にはt−ドデシルメルカプタンであるが、当業者であれば他の変性剤を選択することもできる。
【0031】
重合は有利には二段の回分式方法により行われる。第1工程ではエラストマー性の種ポリマーを含有するラテックスを合成し、アリルメタクリレート(=メタクリル酸アリル)を必ず存在させる。
【0032】
この工程は、有利には、(a)ブチルアクリレート、またはブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの混合物、(b)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびエチルアクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種、(c)アクリロニトリル、(e)マレイン酸半エステル石けん、ならびに(f)アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジビニルベンゼン、またはこれらの混合物を重合させることにより行うことができ、アリルメタクリレートは必ず存在させる。
【0033】
種ポリマーのラテックスが合成された後、種ポリマーを含有するラテックスに追加のモノマーを添加する。
これは有利には、スチレンモノマー、追加のアクリロニトリルモノマー、ならびにアリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジビニルベンゼン、およびこれらの混合物から得られた追加の架橋剤を、第1工程で得られたエラストマー性種ポリマーを含有するラテックスに添加することにより行うことができる。
【0034】
ほとんどの場合、重合は高いモノマー転化率が達成されるまで続ける。こうなった後で、有利にはこの2段回分式重合方法により合成されたゴム状ポリマーをエマルジョン(ラテックス)から回収する。この回収は、標準的な凝集法を利用して行うことができる。例えば、凝集は、本技術分野で公知の方法に従って、塩、酸、またはその両方をラテックスに添加することにより行うことができる。
【0035】
この重合に利用されるマレイン酸半エステル石けんは、無水マレイン酸を炭素数10〜24の脂肪アルコールと反応させることにより合成される。炭素数が12〜16の脂肪アルコールを利用することが普通は好ましい。マレイン酸半エステル石けんを製造するには、無水マレイン酸1モルに脂肪アルコール1モルを反応させる。この反応は、典型的には50〜80℃の範囲内の温度で行われ、次式のように示すことができる。
【0036】
【化2】

【0037】
その後、典型的には水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを添加すると、マレイン酸半エステル石けんが得られる。この工程は次のように示すことができる。
【0038】
【化3】

【0039】
ゴム状ポリマーを凝集により回収した後、それを乾燥する。その使用を容易にするために、得られたゴム状ポリマーを粉末に転換することが有利となることもある。この場合、ゴム状ポリマーに分離助剤(partitioning agent)を添加することが有益となろう。分離助剤の代表例をいくつか挙げると、炭酸カルシウム、ポリ塩化ビニルエマルジョン、およびシリカである。炭酸カルシウムが、この分野で利用できる非常に望ましい分離助剤である。
【0040】
本発明は、従って、下記工程を含む、本発明に係るゴム状ポリマーの製造方法にも関する:
(I)上述した(a)〜(f)から選ばれたモノマーを乳化重合条件下で重合して、エラストマー性の種(シード)ポリマーを含有するラテックスを調製し、ただし、アリルメタクリレートは必ず存在させ、
(II)このエラストマー性種ポリマーを含有するラテックスに、乳化重合条件下で、上記の(a)〜(f)から選ばれた追加のモノマーを添加し、
(III)ゴム状ポリマーを含有するエマルジョンからゴム状ポリマーを回収する。
【0041】
本発明に係る方法の好適態様において、工程(I)はモノマー(a)、(b)、(c)、(e)および(f)を重合させることからなり(ただし、アリルメタクリレートを必ず存在させ)、そして工程(II)は追加のモノマー(c)、モノマー(d)および追加のモノマー(f)を添加することからなる。
【0042】
本発明はまた、少なくとも1種の熱可塑性樹脂と既に開示した本発明のゴム状ポリマーとからなるブレンドであるポリマー組成物にも関する。
多様な熱可塑性樹脂を本発明のブレンドに利用することができる。例えば、熱可塑性樹脂は、ハロゲン化熱可塑性樹脂であってもよく、またはハロゲンを含有しない熱可塑性樹脂であってもよい。利用可能な熱可塑性樹脂の代表例をいくつか挙げると、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリエチレン、ビニルアセテートグラフト化ポリ塩化ビニル、ブチルアセテートグラフト化ポリ塩化ビニル、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアセテート/一酸化炭素コポリマー、エチレン/ブチルアクリレート/一酸化炭素ターポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、アクリロニトリル/スチレン/アクリロニトリルブロックコポリマー(ASA樹脂)、スチレン/ブタジエン/スチレンブロックコポリマー(SBS樹脂)、スチレン/エチレンである。約5〜40重量%がゴム状ポリマーであり、残り約60〜95重量%が熱可塑性樹脂である。
【0043】
本発明のポリマー組成物は、例えば、米国特許第5,362,787号に記載されているような標準的な混合法を利用して、少なくとも1種の熱可塑性樹脂中にゴム状ポリマーをブレンドすることにより調製することができる。
【0044】
本発明に係るポリマー組成物は場合により可塑剤を含有することができる。
使用する熱可塑性樹脂と相溶性のある多様な可塑剤を使用することができる。この用途に非常に適している可塑剤の代表例をいくつか挙げると、ヒドロアビエチルアルコール、アビエチン酸メチルおよび水素化アビエチン酸メチルなどのアビエチン酸誘導体;クミルフェニルアセテートなどの酢酸誘導体;ベンジルオクチルアジペート、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソオクチル、アジピン酸ジノニル、C7−9線状アルキルアジペート、アジピン酸ジカプリル、オクチルデシルアジペート(アジピン酸n−オクチル、n−デシル)、直鎖アルコールアジペート、アジピン酸ジデシル(アジピン酸ジイソデシル)、ジブトキシエチルアジペート、高分子量アジペート、ポリプロピレンアジペート、変性ポリプロピレンアジペートなどのアジピン酸誘導体;アゼライン酸ジシクロヘキシル、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、アゼライン酸ジ−n−ヘキシル、低温可塑剤、アゼライン酸ジイソオクチルなどのアゼライン酸誘導体;ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエートとジプロピレングリコールジベンゾエートとのブレンド、有標(プロプリエタリー)低歪み、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、グリセリルトリベンゾエート、トリメチロールエタントリベンゾエート、ペンタエリスリトールトリベンゾエート、クミルフェニルベンゾエートなどの安息香酸誘導体;水素化ターフェニルなどのポリフェニル誘導体;クエン酸トリエチル、クエン酸トリ−n−ブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリ−n−ブチル、クエン酸アセタールトリブチルなどのクエン酸誘導体;ブチルエポキシステアレート、エポキシタイプ可塑剤、エポキシタイプ可塑剤タレート(タル酸エステル)、アルキルエポキシステアレート、エポキシ化ブチルエステル、エポキシ化オクチルタレート、エポキシ化大豆油、エポキシ化トリグリセライド、エポキシ化大豆油、エポキシ化ひまわり油、エポキシ化タイプ可塑剤、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化タル酸エステル、2−エチルヘキシルエポキシタレート、オクチルエポキシステアレートなどのエポキシ誘導体;プロプリエタリー(proprietary、有標)エステルおよび混合エステルのようなプロプリエターエステル類;クミルフェニル・ベンジルエーテルなどのエーテル誘導体;ブチルカルビトールホルマールなどのホルマール誘導体;フマル酸ジブチル、フマル酸ジイソオクチル、フマル酸ジオクチルなどのフマル酸誘導体;混合ジアルキルグルタレートおよびグルタル酸ジクミルフェニルなどのグルタル酸誘導体;ジエチレングリコールジペラルゴネート、トリエチレングリコールジペラルゴネート、トリエチレングリコールジ(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ−カプリレートカプレート、トリエチレングリコールジ(2−エチルヘキソエート)、トリエチレングリコールジカプリレート、テトラエチレングリコールジカプリレート、ポリエチレングリコールジ(2−エチルヘキソエート)、ブチルフタリルブチルグリコーレート、植物油脂肪酸のトリグリコエステル、脂肪酸のトリエチレングリコールエステルなどのグリコール誘導体;混合二塩基性エステルなどの線状二塩基酸誘導体;芳香族炭化水素類などの石油誘導体;2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートなどのイソ酪酸誘導体;イソフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、イソフタル酸ジイソオクチル、ジオクチルイソフタレートなどのイソフタル酸誘導体;ブチルラウレート、1,2−プロピレングリコールモノラウレート、エチレングリコールモノエチルエーテルラウレート、エチレングリコールモノブチルエーテルラウレート、グリセロールモノラウレート、ポリエチレングリコール−400ジラウレートなどのラウリン酸誘導体;n−オクチル、n−デシルトリメリテート、トリ−n−オクチル−n−デシルトリメリテート、トリメリト酸トリイソノニル、トリメリト酸トリイソオクチル、トリメリト酸トリカプリル、ジイシオクチルモノイソデシルトリメリテート、トリメリト酸トリイソデシル、トリ(C7−9)トリメリテート、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテートなどのメリト酸誘導体;脂肪酸ニトリルなどのニトリル誘導体;オレイン酸ブチル、1,2−プロピレングリコールモノオレエート、エチレングリコールモノブチルエーテルオレエート、テトラヒドロフルフリルオレエート、グリセリルモノオレエートなどのオレイン酸誘導体;塩素化パラフィン、ジエチレングリコールジペラルゴネート、トリエチレングリコールジペラルゴネート、2−ブトキシエチルジペラルゴネートなどのパラフィン誘導体;アセチルパラクミルフェノールなどのフェノキシ系可塑剤;トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、リン酸トリフェニル、クレシルジフェニルホスフェート、リン酸トリクレシル、リン酸トリイソプロピルフェニル、アルキルアリールホスフェート類、ジフェニル−キシレニルホスフェート、フェニルイソプロピルフェニルホスフェートなどのリン酸誘導体;アルキルベンゼンフタレート類、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ブチルオクチル、フタル酸ブチルイソデシル、フタル酸ブチルイソヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−オクチル−n−デシル、フタル酸ヘキシルオクチルデシル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ブチル−エチルヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸オクチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジフェニル、アルキルアリールフタレート類および2−エチルヘキシルイソデシルフタレートなどのフタル酸誘導体;リシノール酸メチルアセチル、リシノール酸n−ブチルアセチル、リシノール酸グリセリルトリアセチルなどのリシノール酸誘導体;セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジブチル、およびセバシン酸ジブトキシエチルなどのセバシン酸誘導体;グリセリルトリアセトキシステアレート、ブチルアセトキシステアレート、メチルペンタクロロステアレート、およびメトキシエチルアセトキシステアレートなどのステアリン酸誘導体;スクロースベンゾエートなどのスクロース(しょ糖)誘導体;フェノールのアルキルスルホン酸エステル類などのスルホン酸誘導体;トール油のメチルエステルおよびトール油のイソオクチルエステルなどのトール油誘導体;ならびにテレフタル酸ジオクチルなどのテレフタル酸誘導体がある。
【0045】
酸化防止剤および充填剤などの他の成分も、望ましい特性または低コスト化を達成するために本発明のポリマー組成物に添加することができる。各種着色剤および/または顔料も典型的には望ましい色を得るために組成物に添加されよう。
【0046】
本発明はまた少なくとも1種の熱可塑性樹脂と既に開示したようなゴム状ポリマーとを含有するブレンドからなる、低い圧縮永久歪みのガスケットも開示する。
本発明に係るゴム状ポリマーは、熱可塑性樹脂に低い圧縮永久歪みを付与し、得られたブレンドはドイツRAL−GZ716/1規格(Reichsausschuss fur Lieferbedingungen、外用動的ガスケットの規格)を満たし、特に熱可塑性樹脂がPVCである場合にそうであり、圧縮永久歪みは50%を下回る。本発明のゴム状ポリマーから調製されたブレンドは、優れた挙動、寸法安定性、低い圧縮永久歪み、淡い色、著しいシール特性および低温安定性を与える。
【0047】
本発明を以下の実施例により例示する。実施例は単に例示を目的とし、本発明の範囲または本発明の実施形態を制限するものと見なすべきではない。特に指摘しない限り、部および%はすべて重量部および重量%である。
【0048】
例1(比較例):標準的方法によるゴム状ポリマーの調製
米国特許第5,380,785号に記載の手順に従って自由流動性粉末を調製した。モノマーおよび反応試薬の量は、容量5リットルの反応器に合うように調整した。
【0049】
例2:ゴム状ポリマーの調製
本実験では、本発明の方法を利用してゴム状ポリマーを調製した。重合は容量5リットルの反応器内で実施した。この反応器は350rpm(回転/秒)で動作する軸方向流れのタービン撹拌器を備えていた。
【0050】
前記反応器に水3040g(グラム)、マレイン酸半エステル石けん(C16脂肪アルコールから調製)35.6g、45%水酸化カリウム水溶液15.2g、25%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液8.4g、ピロリン酸四ナトリウム2.6g、n−ブチルアクリレート907g、アクリロニトリル107g、メチルメタクリレート53g、アリルメタクリレート6.4g、t−ドデシルメルカプタン1.02g、トリエタノールアミン0.77g、および5%過硫酸カリウム水溶液64gを装入した。この第一段階の重合では約40℃の温度を保持した。約20%の固形分に達した時点で反応温度を60℃まで上げた。この第一段の重合は、約26%の全固形分に達した段階で完結したと考えた。こうして得られた種ポリマーラテックスを第二段階の重合に使用した。
【0051】
第二段の重合では、アクリロニトリル61g、スチレン142g、ジビニルベンゼン2.3gおよびt−ドデシルメルカプタン0.38gを、種ポリマーラテックスが入っている前記反応器に投入した。重合は、固形分が約30%に達するまで続けた。生成したラテックスは白色で、pHが約7、表面張力は約52ダイン/cm、粒子サイズは約80ナノメートルであった。
【0052】
得られたラテックスを凝集させ、団粒(クラム)状態の乾燥ゴムを回収した。この団粒をついで炭酸カルシウム(分離助剤)と混合して粉砕すると、自由流動性の粉末が得られた。
【0053】
例3:ゴム状ポリマーの調製
本実験では、例3で採用した手順と類似の手順を利用してゴム状ポリマーを合成した。
前記の反応器に、水3040g(グラム)、マレイン酸半エステル石けん(C16脂肪アルコールから調製)35.6g、45%水酸化カリウム水溶液15.2g、25%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液8.4g、ピロリン酸四ナトリウム2.6g、n−ブチルアクリレート907g、アクリロニトリル107g、メチルメタクリレート53g、アリルメタクリレート6.4g、t−ドデシルメルカプタン1.02g、トリエタノールアミン0.77g、および5%過硫酸カリウム水溶液64gを装入した。この第一段階の重合では約40℃の温度を保持した。約20%の固形分に達した時点で反応温度を60℃まで上げた。この第一段の重合は、約26%の全固形分に達した段階で完結したと考えた。こうして得られた種ポリマーラテックスを第二段階の重合に使用した。
【0054】
第二段の重合では、アクリロニトリル61g、スチレン142g、アリルメタクリレート15.2gおよびt−ドデシルメルカプタン0.38gを、種ポリマーラテックスが入っている前記反応器に投入した。重合は、固形分が約30%に達するまで続けた。生成したラテックスは白色で、pHが約7、表面張力は約52ダイン/cm、粒子サイズは約85ナノメートルであった。
【0055】
得られたラテックスを凝集させ、団粒(クラム)状態の乾燥ゴムを回収した。この団粒をついで炭酸カルシウム(分離助剤)と混合して粉砕すると、自由流動性の粉末が得られた。
【0056】
例4:ゴム状ポリマーの調製
本実験では、第二段の重合において、ジビニルベンゼンの代わりにトリメチロールプロパントリメタクリレート5gを追加架橋剤として使用した以外は例3で採用した手順と類似の手順を利用してゴム状ポリマーを合成した。
【0057】
例5:ブレンドの調製
本実験では、K値が71のポリ塩化ビニル100部、フタル酸ジイソデシル80部、およびCa/Zn安定剤3部を含有する乾燥ブレンドマスターバッチを、ヘンシェルミキサーを用いて作製した。次いで、このポリ塩化ビニル乾燥ブレンドに、例2に記載した手順により作製した自由流動性粉末(純ポリマー100部と炭酸カルシウム約7〜10部を含有)80部を混合した。このBと称するコンパウンドを、二軸スクリュー押出機によりゲル化し(gelified)、射出成形して、表1に報告する特性を有する試験サンプルを得た。
【0058】
Cと称する第2の組成物を、例2で作製したゴム状ポリマーの代わりに例3で作製した自由流動性粉末を利用して調製した。
Dと称する第3の組成物も、例2で作製したゴム状ポリマーの代わりに例4で作製した自由流動性粉末を利用して調製した。
【0059】
比較のために、Aと称する組成物を、例1(比較例)のポリマーを利用して調製した。
【0060】
【表1】

【0061】
ポリマーB、CおよびDについて得られた圧縮永久歪みの値は、符号Aのサンプルに比べて著しく改善されていたが、一方で、破断点伸びの値は同等の値を保持し、かつポリマーブレンドの硬さの増大もなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂にブレンドすることができる、下記成分から構成されるゴム状ポリマーであって:
(a)ブチルアクリレートまたはブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの混合物、
(b)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびエチルアクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種、
(c)アクリロニトリル、
(d)スチレン、
(e)マレイン酸半エステル石けん、ならびに
(f)アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジビニルベンゼン、ならびにそれらの混合物から選ばれた架橋剤:
下記工程を含む方法により得られうる前記ゴム状ポリマー:
(I)上述した(a)〜(f)から選ばれたモノマーを乳化重合条件下で重合して、エラストマー性の種ポリマーを含有するラテックスを調製し、ただし、アリルメタクリレートは必ず存在させ、
(II)このエラストマー性種ポリマーを含有するラテックスに、乳化重合条件下で、上記の(a)〜(f)から選ばれた追加のモノマーを添加し、
(III)ゴム状ポリマーを含有するエマルジョンからゴム状ポリマーを回収する。
【請求項2】
工程(I)が、モノマー(a)、(b)、(c)、(e)および(f)を重合させることからなり(ただし、アリルメタクリレートを必ず存在させる)、そして工程(II)は追加のモノマー(c)、モノマー(d)および追加のモノマー(f)を添加することからなり、(a)〜(f)は請求項1に記載の通りである、請求項1に記載のゴム状ポリマー。
【請求項3】
下記成分から構成される請求項1に記載のゴム状ポリマー:
(a)ブチルアクリレートを40〜80重量%または約40重量%までの2−エチルヘキシルアクリレートを含有するブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの混合物を40〜80重量%、
(b)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびエチルアクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種を1〜35重量%、
(c)アクリロニトリルを4〜30重量%、
(d)スチレンを3〜25重量%、
(e)マレイン酸半エステル石けんを0.5〜8重量%、ならびに
(f)アリルメタクリレート、ならびにアリルメタクリレートとグリシジルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートおよびジビニルベンゼンとの混合物から選ばれた架橋剤を0.2〜8重量%。
【請求項4】
下記成分から構成される請求項1に記載のゴム状ポリマー:
(a)ブチルアクリレートを50〜80重量%または約40重量%までの2−エチルヘキシルアクリレートを含有するブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの混合物を50〜80重量%、
(b)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびエチルアクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種を1〜25重量%、
(c)アクリロニトリルを6〜30重量%、
(d)スチレンを5〜18重量%、
(e)マレイン酸半エステル石けんを1〜5重量%、ならびに
(f)アリルメタクリレート、ならびにアリルメタクリレートとグリシジルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートおよびジビニルベンゼンとの混合物から選ばれた架橋剤を0.25〜4重量%。
【請求項5】
下記成分から構成される請求項1に記載のゴム状ポリマー:
(a)ブチルアクリレート、または約40重量%までの2−エチルヘキシルアクリレートを含有するブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートとの混合物を55重量%から75重量%、
(b)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレートおよびエチルアクリレートよりなる群から選ばれた少なくとも1種を1〜20重量%、
(c)アクリロニトリルを10〜25重量%、
(d)スチレンを8〜14重量%、
(e)マレイン酸半エステル石けんを2〜4重量%、ならびに
(f)アリルメタクリレート、ならびにアリルメタクリレートとグリシジルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートおよびジビニルベンゼンとの混合物から選ばれた架橋剤を0.25〜3重量%。
【請求項6】
架橋剤がアリルメタクリレートである、請求項1に記載のゴム状ポリマー。
【請求項7】
0.25〜3重量%、好ましくは0.5重量%前後のアリルメタクリレートを含有する、請求項6に記載のゴム状ポリマー。
【請求項8】
少なくとも1種の熱可塑性樹脂および請求項1〜7のいずれか1項に記載のゴム状ポリマーを含むブレンドであるポリマー組成物。
【請求項9】
可塑剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、顔料およびこれらの混合物から選ばれた成分をさらに含有する、請求項8に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
熱可塑性樹脂がPVCである、請求項8または9に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載のポリマー組成物からなる、圧縮永久歪みの低いガスケット。
【請求項12】
下記工程を含む、請求項1に記載のゴム状ポリマーの製造方法:
(I)請求項1に記載の(a)〜(f)から選ばれたモノマーを乳化重合条件下で重合して、エラストマー性の種ポリマーを含有するラテックスを調製し、ただし、アリルメタクリレートは必ず存在させ、
(II)このエラストマー性種ポリマーを含有するラテックスに、乳化重合条件下で、上記の(a)〜(f)から選ばれた追加のモノマーを添加し、
(III)ゴム状ポリマーを含有するエマルジョンからゴム状ポリマーを回収する。
【請求項13】
工程(I)が、請求項1に記載のモノマー(a)、(b)、(c)、(e)および(f)を重合させることからなり(ただし、アリルメタクリレートを必ず存在させ)、そして工程(II)が追加のモノマー(c)、モノマー(d)および追加のモノマー(f)を添加することからなる、請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2010−540708(P2010−540708A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526315(P2010−526315)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062978
【国際公開番号】WO2009/040432
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(510079031)
【氏名又は名称原語表記】ELIOKEM
【Fターム(参考)】