説明

圧電アクチュエータ及び圧電アクチュエータの製造方法

【課題】構造が簡単で変位の伝達効率が高いと共に、変位対象の変位量を大きくしつつ変位対象を精密に変位させることが可能な圧電アクチュエータ等を提供する。
【解決手段】圧電アクチュエータ1は、支持基板3と、第1圧電積層体7、第2圧電積層体9、及び変位部11を有する本体部13と、第1弾性体層15とを備え、第1弾性体層15は、第1圧電積層体7の下面7RD、7TDと、第2圧電積層体9の下面9RD、9TDと、第1圧電積層体7の側面7Sと、第2圧電積層体9の側面9Sとを接続するように本体部13に固定されており、第1弾性体層15の第1〜第4領域15A、15B、15C、15Dは、第1〜第4ボンディング部5A、5B、5C、5Dによって支持基板3の主面3Mに固定されており、非ボンディング面15Rは、支持基板3の主面3Mに固定されていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエータ及び圧電アクチュエータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、磁気ディスク装置に使用されるヘッド支持機構が記載されている。このヘッド支持機構は、変位体としての薄膜圧電体素子(圧電積層体)を有する圧電アクチュエータを備える。この圧電アクチュエータによってヘッド支持機構のスライダ保持基板に固定された磁気ヘッドを微小変位させることにより、磁気ディスクに対して磁気ヘッドを高精度に位置決めすることが可能であることが記載されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、セラミックアクチュエータ(圧電アクチュエータ)が記載されている。このセラミックアクチュエータは、それぞれ片持ち梁構造として同一面上に相対して配置された変位体としての一対の圧電バイモルフ(圧電積層体)と、一対の圧電バイモルフのそれぞれの先端部に嵌合する連結体とを備えている。この一対の圧電バイモルフによって、連結体を変位させることが可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−134807号公報
【特許文献2】特開平4−313286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の圧電アクチュエータにおいて、変位体である薄膜圧電体素子は、変位対象であるヘッドスライダを所定の態様とするために構成される部材であるフレクシャに接着固定されている。フレクシャには、変位対象であるヘッドスライダが固定されるスライダ支持板がヒンジ部を介して接続されている。これにより、薄膜圧電体素子の直線的変位を、ヒンジ部を回転中心としたスライダ支持板の回転変位に変換している。このような圧電アクチュエータ及びフレクシャを有するサスペンション構造により、高精度なヘッド位置決めを実現している。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の圧電アクチュエータにおいては、薄膜圧電体素子の変位は、複数の伝達機構を介して制御対象のヘッドスライダに伝達される。そのため、このような圧電アクチュエータにおいては、アクチュエータ全体の構造が複雑となる上に、変位の伝達効率が低下したり、これらの伝達機構の伝達材の特性、寸法のずれに起因して制御対象のヘッドスライダ変位量にばらつきが生じたりする問題がある。
【0007】
この点、上記特許文献2に記載の圧電アクチュエータにおいては、変位体である一対の圧電バイモルフは、片持ち梁構造として基板に支持されており、一対の圧電バイモルフのうち基板に固定した部分以外の領域は、変位を阻害する部材に接触していない。即ち、一対の圧電バイモルフのうち基板に固定した基端部分以外は、基板から離れた状態になっている。その上、一対の圧電バイモルフを変位対象である連結体に直接固定している。そのため、圧電アクチュエータの構造は簡単になり、変位の伝達効率は高くなる。
【0008】
上記特許文献2に記載の圧電アクチュエータのように変位体である圧電積層体が片持ち梁構造として基板に支持された圧電アクチュエータにおいて、変位対象の変位量を大きくするためには、圧電積層体を長手構造とし、圧電積層体の基板に支持された基端部分から変位体までの長さを長くする必要がある。しかしながら、圧電積層体の一部が基板から離れた構造を有する圧電アクチュエータにおいて、このように圧電積層体の長さを長くすると、基板による圧電積層体の支持が不十分になるため、圧電積層体が逆圧電効果とは無関係に変位してしまう事や圧電積層体が予期しない態様で変位してしまう事等が原因で、変位対象を精密に変位させることが困難となる。そのため、変位対象の変位量を大きくすることと、変位対象を精密に変位させることの両立が困難という問題がある。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、構造が簡単で変位の伝達効率が高いと共に、変位対象の変位量を大きくしつつ変位対象を精密に変位させることが可能な圧電アクチュエータ、及び、そのような圧電アクチュエータの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため、本発明に係る圧電アクチュエータは、支持基板と、第1上部電極層、第1下部電極層、及び、これらの間に介在する第1圧電体層を含む第1圧電積層体と、第2上部電極層、第2下部電極層、及び、これらの間に介在する第2圧電体層を含む第2圧電積層体と、支持基板に対して相対的に変位可能な変位部とを有する本体部と、第1弾性体層と、を備え、本体部は、支持基板の主面の上方に設けられており、第1圧電積層体は、支持基板の主面と交差する方向を積層方向とし、支持基板の主面と平行な面内における第1仮想線に沿って延び、第2圧電積層体は、支持基板の主面と交差する方向を積層方向とし、支持基板の主面と平行な面内における第2仮想線に沿って延びると共に、第1圧電積層体と離間し、変位部は、第1圧電積層体の先端部と第2圧電積層体の先端部との間に固定され、第1弾性体層は、第1圧電積層体の支持基板と対向する下面と、第2圧電積層体の支持基板と対向する下面と、第1圧電積層体の側面の少なくとも一部と、第2圧電積層体の側面の少なくとも一部と、を接続するように本体部に固定されており、第1弾性体層のうち第1圧電積層体の基端部の下面に設けられた第1領域は、第1ボンディング部によって支持基板の主面に固定されており、第1弾性体層のうち第2圧電積層体の基端部の下面に設けられた第2領域は、第2ボンディング部によって支持基板の主面に固定されており、第1弾性体層のうち、第1圧電積層体の側面に設けられた第3領域の少なくとも一部は、第3ボンディング部によって支持基板の主面に固定されており、第1弾性体層のうち、第2圧電積層体の側面に設けられた第4領域の少なくとも一部は、第4ボンディング部によって支持基板の主面に固定されており、第1弾性体層の支持基板と対向する下面のうち、第1ボンディング部、第2ボンディング部、第3ボンディング部、及び、第4ボンディング部と接する面以外の非ボンディング面は、支持基板の主面に固定されていない、又は、第1ボンディング部、第2ボンディング部、第3ボンディング部、及び、第4ボンディング部よりも弾性率の低い部材によって支持基板の主面に固定されている。
【0011】
本発明に係る圧電アクチュエータにおいては、第1圧電積層体は、その基端部のみにおいて第1弾性体層の第1領域を介して支持基板の主面に第1ボンディング部によって固定され、第2圧電積層体は、その基端部のみにおいて第1弾性体層の第2領域を介して支持基板の主面に第2ボンディング部によって固定されており、第1圧電積層体及び第2圧電積層体は、支持基板の主面の上方に固定されている。その上、第1圧電積層体及び第2圧電積層体の下面と側面には第1弾性体層が固定され、第1弾性体層の非ボンディング面は、支持基板の主面に固定されていない、又は、第1ボンディング部、第2ボンディング部、第3ボンディング部、及び、第4ボンディング部よりも弾性率の低い部材によって支持基板の主面に固定されている。これにより、第1圧電積層体及び第2圧電積層体は、それらの基端部以外の部分において、支持のための剛性の高い部材に固定されていない。さらに、第1圧電積層体の先端部と第2圧電積層体の先端部との間に、直接変位対象である変位部が固定されている。その結果、本発明に係る圧電アクチュエータは、構造が簡単であり、変位の伝達効率が高くなる。
【0012】
さらに、本発明に係る圧電アクチュエータにおいては、非ボンディング面と、支持基板の主面との間には、非ボンディング面と接する空間ギャップが形成されていることが好ましい。これにより、第1圧電積層体及び第2圧電積層体の変位を阻害する要因がさらに減少する。その結果、本発明に係る圧電アクチュエータにおいては、変位の伝達効率がさらに高くなる。
【0013】
さらに、本発明に係る圧電アクチュエータは、第1圧電積層体及び第2圧電積層体の下面と側面を接続する第1弾性体層を備え、この第1弾性体層は、第1領域、第2領域、第3領域、及び、第4領域において、支持基板の主面に固定されている。これにより、第1圧電積層体の先端部及び第2圧電積層体の先端部の下面と側面は、第1弾性体層によって、間接的に支持基板の主面に支持される。さらに、第1弾性体層は、弾性材料からなるため、第1圧電積層体の先端部及び第2圧電積層体の先端部の下面や側面が剛性の高い部材によって直接支持される場合と比較して、第1圧電積層体及び第2圧電積層体の変位が妨げられ難い。そのため、第1圧電積層体及び第2圧電積層体の形状をそれぞれ第1仮想線及び第2仮想線に沿って長く延ばしても、支持基板によって第1圧電積層体及び第2圧電積層体を十分に支持することができるため、第1圧電積層体及び第2圧電積層体が、逆圧電効果とは無関係に変位してしまったり、予期しない態様で変位してしまったりする事を抑制することができる。その結果、本発明に係る圧電アクチュエータは、変位対象である変位部の変位量を大きくすることと、変位部を精密に変位させることの両立が可能となる。
【0014】
以上より、本発明に係る圧電アクチュエータによれば、構造が簡単で変位の伝達効率が高いと共に、変位対象の変位量を大きくしつつ変位対象を精密に変位させることが可能となる。
【0015】
さらに、本発明に係る圧電アクチュエータは、第1弾性体層の上面のうち第1ボンディング部、第2ボンディング部、第3ボンディング部、及び、第4ボンディング部の上方の領域と、第1圧電積層体の上面と、第2圧電積層体の上面と、を接続するように本体部に固定された第2弾性体層をさらに有することが好ましい。
【0016】
これにより、第1圧電積層体及び第2圧電積層体の上面は、第2弾性体層によって、間接的に支持基板の主面に支持される。さらに、第2弾性体層は、弾性材料からなるため、第1圧電積層体及び第2圧電積層体の上面が直接支持基板に支持される場合と比較して、第1圧電積層体及び第2圧電積層体の変位が妨げられ難い。そのため、第1圧電積層体及び第2圧電積層体が逆圧電効果とは無関係に変位してしまったり、予期しない態様で変位してしまったりする事を抑制することができる。その結果、変位対象である変位部の変位量をより大きくすること、及び、変位部をより精密に変位させることが可能となる。
【0017】
さらに、本発明に係る圧電アクチュエータにおいて、第1弾性体層は、樹脂からなり、第2弾性体層は、樹脂からなることが好ましい。
【0018】
さらに、本発明に係る圧電アクチュエータでは、支持基板の主面と平行な面内において、第1仮想線の少なくとも一部における接線は、接点が第1仮想線の第1圧電積層体の基端部に対応する端点側から第1圧電積層体の先端部に対応する端点側に移動するに従って、支持基板の主面と交差する方向を回転軸とする回転方向に回転し、支持基板の主面と平行な面内において、第2仮想線の少なくとも一部における接線は、接点が第2仮想線の第2圧電積層体の基端部に対応する端点側から第2圧電積層体の先端部に対応する端点側に移動するに従って、支持基板の主面と交差する方向を回転軸とする回転方向に回転することが好ましい。
【0019】
これにより、第1圧電積層体及び第2圧電積層体の少なくとも一部は、支持基板の主面と交差する方向を回転軸とする回転方向に沿って曲線的に曲がりながら延びる形状となる。そのため、第1圧電積層体及び第2圧電積層体を直線的に同じ長さ延びる形状とした場合と比較して、変位体の変位量を同等に保ちつつ、圧電アクチュエータ全体の形状を小型化することが可能となる。
【0020】
さらに、本発明に係る圧電アクチュエータにおいて、第1圧電積層体及び第2圧電積層体は、第1圧電積層体が第1仮想線に沿って伸びると同時に第2圧電積層体が第2仮想線に沿って伸びた際に、支持基板の主面と交差する方向を回転軸とする第1回転方向に変位部を回転させるように、それぞれ変位部に固定されていることが好ましい。
【0021】
これにより、第1回転方向に変位部を第1回転方向に回転させることが可能となる。
【0022】
さらに、本発明に係る圧電アクチュエータでは、支持基板の主面と平行な面内において、第1仮想線の少なくとも第1圧電積層体の先端部に対応する部分における接線は、接点が第1仮想線の第1圧電積層体の基端部に対応する端点側から第1圧電積層体の先端部に対応する端点側に移動するに従って、上記第1回転方向に回転し、支持基板の主面と平行な面内において、第2仮想線の少なくとも第2圧電積層体の先端部に対応する部分における接線は、接点が第2仮想線の第2圧電積層体の基端部に対応する端点側から第2圧電積層体の先端部に対応する端点側に移動するに従って、第1回転方向に回転することが好ましい。
【0023】
これにより、第1圧電積層体を第1仮想線に沿って伸縮させると、第1圧電積層体の先端部は、第1回転方向に沿うように伸縮する。同様に、第2圧電積層体を第2仮想線に沿って伸縮させると、第2圧電積層体の先端部は、第1回転方向に沿うように伸縮する。その結果、変位部を回転させる際の変位の伝達効率がさらに高くなる。
【0024】
さらに、本発明に係る圧電アクチュエータにおいて、第1仮想線の少なくとも第1圧電積層体の先端部に対応する部分と、第2仮想線の少なくとも第2圧電積層体の先端部に対応する部分とは、支持基板の主面と垂直な方向から見て、変位部内の点に対して略点対称に配置されていることが好ましい。
【0025】
これにより、第1圧電積層体の先端部と、第2圧電積層体の先端部は、変位部内の上記点に対して略点対称に伸縮する。その結果、変位部を回転させる際の変位の伝達効率がさらに高くなる。
【0026】
さらに、本発明に係る圧電アクチュエータにおいて、変位部は、第3上部電極層、第3下部電極層、及び、第3圧電体層を含み、第1圧電体層、第2圧電体層、及び、第3圧電体層は、一体形成されており、第1上部電極層、第2上部電極層、及び、第3上部電極層は、一体形成されており、第1下部電極層、第2下部電極層、及び、第3下部電極層は、一体形成されていることが好ましい。これにより、圧電アクチュエータ全体の構造を簡単にすることができる。
【0027】
さらに、本発明に係る圧電アクチュエータにおいて、第2弾性体層には、第1仮想線とそれぞれ交差する方向に延びると共に第1仮想線に沿って並ぶ複数のスリットからなる第1スリット構造と、第2仮想線とそれぞれ交差する方向に延びると共に第2仮想線に沿って並ぶ複数のスリットからなる第2スリット構造が形成されていることが好ましい。
【0028】
これにより、第1圧電積層体は第1仮想線に沿って伸縮しやすくなり、第2圧電積層体は第2仮想線に沿って伸縮しやすくなる。その結果、変位の伝達効率をさらに高くすることが可能となる。
【0029】
また、本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法は、仮基板上に、第1上部電極層、第1下部電極層、及び、これらの間に介在する第1圧電体層を含み、仮基板の主面と平行な面内における第1仮想線に沿って延びる第1圧電積層体と、第1上部電極層、第1下部電極層、及び、これらの間に介在する第2圧電体層を含み、仮基板の主面と平行な面内における第2仮想線に沿って延びると共に、第1圧電積層体と離間する第2圧電積層体と、第1圧電体層の先端部と第2圧電体層の先端部との間に固定された変位部と、を有する本体部を形成する本体部形成工程と、本体部上に、この本体部を覆うように第1弾性体層を形成する第1弾性体層形成工程と、第1弾性体層のうち、第1圧電積層体の基端部上に設けられた第1領域、第2圧電積層体の基端部上に設けられた第2領域、第1圧電積層体の側面に設けられた第3領域の少なくとも一部、及び、第2圧電積層体の側面に設けられた第4領域の少なくとも一部、を覆うと共に、これらの領域以外の第1弾性体層を露出させるパターンを有するボンディング層を形成するボンディング層形成工程と、ボンディング層上に支持基板を固定することにより、第1弾性体層のうちボンディング層が形成されていない非ボンディング面と、支持基板の主面との間に、この非ボンディング面と接する空間ギャップを形成する支持基板固定工程と、仮基板を除去する仮基板除去工程とを備える。
【0030】
本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法によれば、得られる圧電アクチュエータにおいて、第1圧電積層体は、その基端部のみにおいて第1弾性体層の第1領域を介して支持基板の主面に第1ボンディング部によって固定され、第2圧電積層体は、その基端部のみにおいて第1弾性体層の第2領域を介して支持基板の主面に第2ボンディング部によって固定されており、第1圧電積層体及び第2圧電積層体は、支持基板の主面の上方に固定されている。その上、第1圧電積層体及び第2圧電積層体の下面と側面には第1弾性体層が固定され、第1弾性体層の非ボンディング面と、支持基板の前記主面との間には、非ボンディング部と接する空間ギャップが形成されている。そのため、第1圧電積層体及び第2圧電積層体は、それらの基端部以外の部分において、支持のための剛性の高い部材に接触しない。さらに、第1圧電積層体の先端部と第2圧電積層体の先端部との間に、直接変位対象である変位部が固定されている。その結果、本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法によれば、構造が簡単であり、変位の伝達効率が高い圧電アクチュエータが得られる。
【0031】
さらに、本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法によれば、得られる圧電アクチュエータは、第1圧電積層体及び第2圧電積層体の下面と側面を接続する第1弾性体層を備え、この第1弾性体層は、第1領域、第2領域、第3領域、及び、第4領域において、支持基板の主面に固定されている。これにより、第1圧電積層体及び第2圧電積層体の下面と側面は、第1弾性体層によって、間接的に支持基板の主面に支持される。さらに、第1弾性体層は、弾性材料からなるため、第1圧電積層体及び第2圧電積層体の下面や側面が直接支持基板に支持される場合と比較して、第1圧電積層体及び第2圧電積層体の変位が妨げられ難い。そのため、第1圧電積層体及び第2圧電積層体の形状をそれぞれ第1仮想線及び第2仮想線に沿って長く延ばしても、支持基板によって第1圧電積層体及び第2圧電積層体を十分に支持することができるため、第1圧電積層体及び第2圧電積層体が逆圧電効果とは無関係に変位してしまったり、予期しない態様で変位してしまったりする事を抑制することができる。その結果、本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法によれば、変位対象である変位部の変位量を大きくすることと、変位部を精密に変位させることの両立が可能な圧電アクチュエータが得られる。
【0032】
以上より、本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法によれば、構造が簡単で変位の伝達効率が高いと共に、変位対象の変位量を大きくしつつ変位対象を精密に変位させることが可能な圧電アクチュエータが得られる。
【0033】
さらに、本発明に係る圧電アクチュエータの製造方法は、仮基板除去工程の後に、仮基板除去工程において仮基板が除去されることにより露出した第1圧電積層体、第2圧電積層体、及び、第1弾性体層上に、第1弾性体層の露出面のうちボンディング層の上方の領域と、第1圧電積層体の上面と、第2圧電積層体の上面と、を接続するように第2弾性体層を形成する第2弾性体層形成工程をさらに備えることが好ましい。
【0034】
これにより、得られる圧電アクチュエータにおいて、第1圧電積層体及び第2圧電積層体は、第2弾性体層によって、間接的に支持基板の主面に支持される。さらに、第2弾性体層は、弾性材料からなるため、第1圧電積層体及び第2圧電積層体上面が剛性の高い部材によって直接支持される場合と比較して、第1圧電積層体及び第2圧電積層体の変位が妨げられ難い。そのため、第1圧電積層体及び第2圧電積層体の形状をそれぞれ第1仮想線及び第2仮想線に沿って長く延ばしても、支持基板によって第1圧電積層体及び第2圧電積層体を十分に支持することができるため、第1圧電積層体及び第2圧電積層体が逆圧電効果とは無関係に変位してしまったり、予期しない態様で変位してしまったりする事を抑制することができる。その結果、変位対象である変位部の変位量をより大きくすること、及び、変位部をより精密に変位させることが可能な圧電アクチュエータが得られる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、構造が簡単で変位の伝達効率が高いと共に、変位対象の変位量を大きくしつつ変位対象を精密に変位させることが可能な圧電アクチュエータ、及び、そのような圧電アクチュエータの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、実施形態の圧電アクチュエータの斜視図である。
【図2】図2は、実施形態の圧電アクチュエータの分解斜視図である。
【図3】図3(A)は、図1のIIIA−IIIA線に沿った圧電アクチュエータの断面図であり、図3(B)は、図1のIIIB−IIIB線に沿った圧電アクチュエータの断面図である。
【図4】図4は、圧電アクチュエータのうち、ボンディング層、第1圧電積層体、第2圧電積層体、及び、変位部のみを示す平面図である。
【図5】図5(A)は、図4に対応して第1仮想線の形状を示す図であり、図5(B)は、図4に対応して第2仮想線の形状を示す図である。
【図6】図6は、本体部の平面図である。
【図7】図7(A)は、実施形態の圧電アクチュエータの製造方法を説明するための平面図であり、図7(B)は、図7(A)におけるVIIB−VIIB線に沿った断面図であり、図7(C)は、図7(A)におけるVIIC−VIIC線に沿った断面図である。
【図8】図8(A)は、実施形態の圧電アクチュエータの製造方法を説明するための平面図であり、図8(B)は、図8(A)におけるVIIIB−VIIIB線に沿った断面図であり、図8(C)は、図8(A)におけるVIIIC−VIIIC線に沿った断面図である。
【図9】図9(A)は、実施形態の圧電アクチュエータの製造方法を説明するための平面図であり、図9(B)は、図9(A)におけるIXB−IXBに沿った断面図である。
【図10】図10(A)は、実施形態の圧電アクチュエータの製造方法を説明するための平面図であり、図10(B)は、図10(A)のXB−XB線に沿った断面図である。
【図11】図11(A)は、図10(A)のXIA−XIA線に沿った断面図であり、図11(B)は、図10(A)のXIB−XIB線に沿った断面図であり、図11(C)は、図10(A)のXIC−XIC線に沿った断面図であり、図11(D)は、図10(A)のXID−XID線に沿った断面図である。
【図12】図12(A)は、実施形態の圧電アクチュエータの製造方法を説明するための平面図であり、図12(B)は、図12(A)のXIIB−XIIB線に沿った断面図である。
【図13】図13(A)は、実施形態の圧電アクチュエータの製造方法を説明するための平面図であり、図13(B)は、図13(A)のXIIIB−XIIIB線に沿った断面図である。
【図14】図14(A)は、実施形態の圧電アクチュエータの製造方法を説明するための平面図であり、図14(B)は、図14(A)のXIVB−XIVB線に沿った断面図であり、図14(C)は、図14(A)のXIVC−XIVC線に沿った断面図である。
【図15】図15(A)は、実施形態の圧電アクチュエータの製造方法を説明するための平面図であり、図15(B)は、図15(A)のXVB−XVB線に沿った断面図である。
【図16】図16(A)は、実施形態の圧電アクチュエータの製造方法を説明するための平面図であり、図16(B)は、図16(A)のXVIB−XVIB線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、実施の形態に係る圧電アクチュエータ、及び、圧電アクチュエータの製造方法について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、可能な場合には同一要素には同一符号を用いる。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
【0038】
まず、本実施形態に係る圧電アクチュエータについて説明する。
【0039】
図1は、本実施形態の圧電アクチュエータの斜視図であり、図2は、本実施形態の圧電アクチュエータの分解斜視図である。
【0040】
図1及び図2に示すように、本実施形態の圧電アクチュエータ1は、主として、支持基板3と、ボンディング層5と、本体部13と、第1弾性体層15と、第2弾性体層17と、を備えている。ボンディング層5、本体部13、第1弾性体層15、及び、第2弾性体層17は、支持基板3の主面3M上に積層されている。なお、図1と図2においては、第2弾性体層17は破線で示している。
【0041】
支持基板3は、シリコン、ガラス、ステンレスなどの金属等からなる基板である。支持基板3は、剛性が高く、具体的には第1弾性体層15や第2弾性体層17よりも剛性が高い。なお、図1及び図2には、直交座標系2が示されており、支持基板3の厚さ方向をZ軸方向に設定し、支持基板3の主面3Mと平行な方向にX軸とY軸を設定している。図3以下の各図面においても、必要に応じて直交座標系2を示している。
【0042】
支持基板3のX軸方向の長さ、及び、Y軸方向の長さは、特に制限されないが、例えばそれぞれ1mm〜5mm、及び、0.5mm〜3mmとすることができる。支持基板3のZ軸方向の厚さは、特に制限されないが、例えば0.05mm〜2mmとすることができる。
【0043】
ボンディング層5は、主面3M上に積層されている。ボンディング層5は、支持基板3と第1弾性体層15とを固定するための層であり、例えば、ポリイミド、エポキシ、アクリル等の接着剤からなる。ボンディング層5のZ軸方向の厚さは、特に制限されないが、例えば、1μm〜50μmとすることができる。このようなボンディング層5によって、支持基板3と第1弾性体層15とを確実に固定することができる。
【0044】
図2に示すように、ボンディング層5は、主面3MのX軸負側の端部に設けられた第1ボンディング部5Aと、主面3MのX軸正側の端部に設けられた第2ボンディング部5Bと、主面3MのY軸負側の端部に設けられた第3ボンディング部5Cと、主面3MのY軸正側の端部に設けられた第4ボンディング部5Dと、からなる。このように、ボンディング層5は、主面3Mの一部のみを覆うようなパターンを有している。
【0045】
図1及び図2に示すように、本体部13は、第1圧電積層体7と、第2圧電積層体9と、変位部11と、を有している。また、図2及び図4に示すように、第1圧電積層体7は、主面3MのX軸負側の端部の上方に設けられた基端部7Tと、基端部7Tと連続し基端部7TよりもX軸正方向に設けられた先端部7Rと、からなる。第2圧電積層体9は、主面3MのX軸正側の端部の上方に設けられた基端部9Tと、基端部9Tと連続し基端部9TよりもX軸負方向に設けられた先端部9Rと、からなる。第1圧電積層体7と第2圧電積層体9とは離間しており、変位部11は、先端部7Rと先端部9Rとの間に固定されている。
【0046】
第1圧電積層体7、第2圧電積層体9、及び、変位部11の形状をより詳細に説明する。図3(A)は、図1のIIIA−IIIA線に沿った圧電アクチュエータの断面図であり、図3(B)は、図1のIIIB−IIIB線に沿った圧電アクチュエータの断面図である。図4は、圧電アクチュエータのうち、ボンディング層、第1圧電積層体、第2圧電積層体、及び、変位部のみを示す平面図である。
【0047】
図3(A)(B)に示すように、第1圧電積層体7は、Z軸方向を積層方向とする積層体である。第1圧電積層体7は、第1圧電体層7aを含み、第1圧電体層7aは、第1上部電極層7bと第1下部電極層7cとの間に介在する。同様に、第2圧電積層体9は、Z軸方向を積層方向とする積層体である。第2圧電積層体9は、第2圧電体層9aを含み、第2圧電体層9aは、第2上部電極層9bと第2下部電極層9cとの間に介在する。同様に、変位部11は、本実施形態においては、Z軸方向を積層方向とする積層体である。変位部11は、第3圧電体層11aを含み、第3圧電体層11aは、第3上部電極層11bと第3下部電極層11cとの間に介在する。
【0048】
第1圧電体層7a、第2圧電体層9a、及び、第3圧電体層11aは、それぞれ圧電性を有する材料からなり、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr、Ti1−X)O)、チタン酸バリウム(BaTiO)等の強誘電材料からなる。第1圧電体層7a、第2圧電体層9a、及び、第3圧電体層11aのZ軸方向の厚さは、特に制限されないが、例えば、1μm〜10μmとすることができる。第1圧電体層7a、第2圧電体層9a、及び、第3圧電体層11aは、それぞれ厚さ方向に自発分極の成分を有している。また、本実施形態においては、第1圧電体層7a、第2圧電体層9a、及び、第3圧電体層11aは、一体形成されており、それぞれ同一の大きさ及び向きの自発分極の成分を有している。
【0049】
第1上部電極層7b及び第1下部電極層7cは、第1圧電体層7aに電圧を印加するための一対の電極層であり、第2上部電極層9b及び第2下部電極層9cは、第2圧電体層9aに電圧を印加するための一対の電極層であり、第3上部電極層11b及第3下部電極層11cは、第3圧電体層11aに電圧を印加するための一対の電極層である。第1上部電極層7b、第1下部電極層7c、第2上部電極層9b、第2下部電極層9c、第3上部電極層11b、及び、第3下部電極層11cは、それぞれ例えば白金(Pt)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)等の金属材料からなる。
【0050】
第1上部電極層7b、第1下部電極層7c、第2上部電極層9b、第2下部電極層9c、第3上部電極層11b、及び、第3下部電極層11cのZ軸方向の厚さは、特に制限されないが、例えばそれぞれ0.01μm〜5μmとすることができる。また、本実施形態においては、第1上部電極層7b、第2上部電極層9b、及び、第3上部電極層11bは、一体形成されており、第1下部電極層7c、第2下部電極層9c、及び、第3下部電極層11cは、一体形成されている。そのため、本実施形態においては、第1圧電積層体7、第2圧電積層体9、及び、変位部11は、一体形成されている。また、第1圧電積層体7、第2圧電積層体9、変位部11のZ軸方向の厚さは、特に制限されないが、例えば1μm〜10μmとすることができる。
【0051】
また、図2及び図4に示すように、第1圧電積層体7は、XY平面に沿って延びる第1仮想線7Hに沿って延び、第2圧電積層体9は、XY平面に沿って延びる第2仮想線9Hに沿って延びる。第1仮想線7Hは、第1圧電積層体7の基端部7Tに対応する第1仮想線基端部7HTと、第1圧電積層体7の先端部7Rに対応する第1仮想線先端部7HRと、からなり、第1圧電積層体7の基端部7Tに対応する基端点7HTEから、第1圧電積層体7の先端部7Rに対応する先端点7HREまで延びている。第2仮想線9Hは、第2圧電積層体9の基端部9Tに対応する第2仮想線基端部9HTと、第2圧電積層体9の先端部9Rに対応する第2仮想線先端部9HRと、からなり、第2圧電積層体9の基端部9Tに対応する基端点9HTEから、第2圧電積層体9の先端部9Rに対応する先端点9HREまで延びている。
【0052】
また、図4に示すように、Z軸方向から見ると、ボンディング層5の第1ボンディング部5Aと第1圧電積層体7の基端部7Tは重なっており、ボンディング層5の第2ボンディング部5Bと第2圧電積層体9の基端部9Tは重なっている。一方、Z軸方向から見ると、ボンディング層5の第3ボンディング部5Cは、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9と離間しており、ボンディング層5の第4ボンディング部5Dは、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9と離間している。
【0053】
図5(A)は、図4に対応して第1仮想線の形状を示す図であり、図5(B)は、図4に対応して第2仮想線の形状を示す図である。図5(A)には、第1仮想線7H上の点におけるXY平面内での接線7T1、7T2、7T3、7T4が示されている。接線7T1は、基端点7HTEにおける接線であり、接線7T2は、接線7T1の接点よりも先端点7HRE側の第1仮想線7H上の点における接線であり、接線7T3は、接線7T2の接点よりも先端点7HRE側の第1仮想線7H上の点における接線であり、接線7T4は、先端点7HREにおける接線である。図5(A)に示すように、第1仮想線7Hの接線は、接点が基端点7HTE側から先端点7HRE側に移動するに従って、接線7T1、接線7T2、接線7T3、及び、接線7T4の順に変化するように、Z軸を回転軸として図5(A)における時計回り方向(第1回転方向)に回転する。
【0054】
また、図5(B)には、第2仮想線9H上の点におけるXY平面内での接線9T1、9T2、9T3、9T4が示されている。接線9T1は、基端点9HTE近傍の点における接線であり、接線9T2は、接線9T1の接点よりも先端点9HRE側の第2仮想線9H上の点における接線であり、接線9T3は、接線9T2の接点よりも先端点9HRE側の第2仮想線9H上の点における接線であり、接線9T4は、先端点9HREにおける接線である。図5(B)に示すように、第2仮想線9Hの接線は、接点が基端点9HTE側から先端点9HRE側に移動するに従って、接線9T1、接線9T2、接線9T3、及び、接線9T4の順に変化するように、Z軸を回転軸として図5(B)における時計回り方向(第1回転方向)に回転する。
【0055】
また、図4に示すように、変位部11は、本実施形態では、Z軸方向から見て矩形状である。そして、第1仮想線7Hの少なくとも第1仮想線先端部7HRと、第2仮想線9Hの少なくとも第2仮想線先端部9HRとは、Z軸方向から見て、変位部11内の中心点11Xに対して、略点対称に配置されていることが好ましい。
【0056】
続いて、第1弾性体層15、及び、第2弾性体層17について説明する。第1弾性体層15は、図2及び図3に示すように、第1圧電積層体7の基端部7Tの下面7TDに設けられた第1領域15Aと、第2圧電積層体9の基端部9Tの下面9TDに設けられた第2領域15Bと、第1圧電積層体7の側面7Sに設けられた第3領域15Cと、第2圧電積層体9の側面9Sに設けられた第4領域15Dと、第1圧電積層体7の先端部7Rの下面7RDに設けられた第5領域15Eと、第2圧電積層体9の先端部9Rの下面9RDに設けられた第6領域15Fと、変位部11の下面11Dに設けられた第7領域15Gと、からなる。
【0057】
第1弾性体層15は、第1圧電積層体7の上面7U、第2圧電積層体9の上面9U、及び、変位部11の上面11U以外の部分について、第1圧電積層体7と第2圧電積層体9と変位部11を埋め込むように設けられている。これにより、第1弾性体層15は、第1圧電積層体7の支持基板3と対向する下面7TD及び下面7RDと、第2圧電積層体9の支持基板3と対向する下面9TD及び下面9RDと、変位部11の支持基板3と対向する下面11Dと、第1圧電積層体7の側面7Sの一部と、第2圧電積層体9の側面9Sの一部と、変位部11の側面11Sの一部と、を接続するように本体部13に固定されている。
【0058】
そして、第1弾性体層15は、ボンディング層5を介して支持基板3の主面3Mに固定されている。具体的には、第1弾性体層15の第1領域15Aは、ボンディング層5の第1ボンディング部5Aを介して支持基板3の主面3Mに固定され、第1弾性体層15の第2領域15Bは、ボンディング層5の第2ボンディング部5Bを介して支持基板3の主面3Mに固定され、第1弾性体層15の第3領域15Cは、ボンディング層5の第3ボンディング部5Cを介して支持基板3の主面3Mに固定され、第1弾性体層15の第4領域15Dは、ボンディング層5の第4ボンディング部5Dを介して支持基板3の主面3Mに固定されている。これにより、図3(A)(B)に示すように、第1弾性体層15の下面のうち、第1ボンディング部5A、第2ボンディング部5B、第3ボンディング部5C、及び、第4ボンディング部5Dと接する面以外の非ボンディング面15Rと、支持基板3の主面3Mとの間には、非ボンディング面15Rと接する空間ギャップ5Gが形成されている。本実施形態においては、空間ギャップ5GのZ軸方向の高さは、ボンディング層5のZ軸方向の厚さと等しい。
【0059】
第1弾性体層15は、例えば、ポリイミド樹脂、ポリイミドシリコン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素系樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)樹脂等の弾性体材料からなる。第1弾性体層15は、本体部13を構成する材料よりも弾性率の低い材料からなることが好ましい。何故なら、本体部13の変位に追従して弾性変形し易くなるためである。また、第1弾性体層15は、本体部13との接着性の良い材料からなることが好ましい。また、第1弾性体層15は、第1弾性体層15が繰り返し変形した場合であっても本体部13から剥離し難くなるような弾性及び本体部13との密着性を有することが好ましい。第1弾性体層15のZ軸方向の厚さは、特に制限されないが、第1圧電積層体7、第2圧電積層体9、及び、変位部11を埋め込んでいない部分において、例えば1μm〜10μmとすることができる。
【0060】
第2弾性体層17は、図2及び図3に示すように、本体部13及び第1弾性体層15の略上面全体に形成されている。これにより、第2弾性体層17は、第1弾性体層15の上面15Uのうち、第1ボンディング部5A、第2ボンディング部5B、第3ボンディング部5C、及び、第4ボンディング部5Dの上方の領域である第1領域15A、第2領域15B、第3領域15C、及び、第4領域15Dと、第1圧電積層体7の上面7Uと、第2圧電積層体9の上面9Uとを接続するように、本体部13上に固定されている。また、第2弾性体層17の本体部13の上部には、第2弾性体層17を厚さ方向に貫通し、断面が円形のホール部17Hが形成されている。そのため、本体部13の変位部11は、露出している。
【0061】
また、第2弾性体層17には、第1スリット構造17S1と、第2スリット構造17S2が形成されている。第1スリット構造17S1は、第1仮想線7Hとそれぞれ交差する方向に延びると共に、第1仮想線7Hに沿って並ぶ複数のスリットからなる。同様に、第2スリット構造17S2は、第2仮想線9Hとそれぞれ交差する方向に延びると共に、第2仮想線9Hに沿って並ぶ複数のスリットからなる。
【0062】
このような第1スリット構造17S1と第2スリット構造17S2を設ける目的は、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9の変位方向を異方性化すること、及び、製品信頼性を向上させることにある。具体的に説明すると、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9に接する第2弾性体層17は、外気等の外部環境から製品を保護すること、及び、可動部となる本体部13と、非可動部となるボンディング層5及び第1弾性体層15との接合界面周辺に加わる応力による製品劣化(接合界面の剥離、信頼性低下)を抑制することを目的としている。この際、第1圧電積層体7や第2圧電積層体9に接する材料が増えることで本体部13の変位量が低下する可能性がある。しかしながら、本体部13の上面に接する第2弾性体層17に第1スリット構造17S1と第2スリット構造17S2を設けることで、本体部13の変位を阻害することなく、上記の目的を達成することができる。さらに、スリットの形状、大きさにより本体部13の変位方向に異方性化することができるので、本体部13の変位方向の制御性が向上する。
【0063】
第2弾性体層17は、例えば、ポリイミド、シリコーン、エポキシ、アクリル、BCB(ベンゾシクロブテン)等の樹脂に加え、金属、セラミックなどからなる薄膜材料であっても良い。第2弾性体層17は、本体部13を構成する材料よりも弾性率の低い材料からなることが好ましい。何故なら、本体部13の変位に追従して弾性変形し易くなるためである。第2弾性体層17は、第1弾性体層15が本体部13を支持固定できて、充分な信頼性を維持できる場合は無くても良い。圧電アクチュエータ1が第2弾性体層17を備える場合は、本体部13の変位を大きく阻害するものは好ましくない。この観点から、第2弾性体層17が本体部13より充分薄い薄膜として構成される場合は、第2弾性体層17を比較的大きな弾性率の材料で構成することもできるが、第2弾性体層17が本体部13よりも厚い場合は、本体部13を構成する材料よりも弾性率の小さい材料で第2弾性体層17を構成することが好ましい。第2弾性体層17のZ軸方向の厚さは、特に制限されないが、例えば0.01μm〜10μmとすることができる。
【0064】
次に、圧電アクチュエータ1の動作について説明する。図6は、本体部の平面図である。圧電アクチュエータ1を動作させる際には、第1上部電極層7b、第2上部電極層9b、及び、第3上部電極層11bに電気的に接続された電極パッド(図1〜図6においては図示せず、図16参照)と、第1下部電極層7c、第2下部電極層9c、及び、第3下部電極層11cに電気的に接続された電極パッド(図1〜図6においては図示せず、図16参照)間に、電圧を印加する。すると、逆圧電効果により、印加する電圧の極性に応じて、第1圧電体層7a及び第2圧電体層9aが、それらの面内(XY平面内)において伸びる、又は、縮むように変位する。このような第1圧電体層7a及び第2圧電体層9aの面内おける伸縮は、第1圧電積層体7や第2圧電積層体9の延び方向に沿った方向で最も大きくなり、この延び方向の長さが長い程大きくなる。そのため、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9は、それぞれ第1仮想線7H及び第2仮想線9Hに沿って伸縮する。
【0065】
本実施形態においては、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9は、第1圧電積層体7が逆圧電効果によって第1仮想線7Hに沿って伸びると同時に第2圧電積層体9が逆圧電効果によって第2仮想線9Hに沿って伸びた際に、矢印11Yに示す回転方向(第1回転方向、図6における反時計回り方向)に変位部11を回転させるように、それぞれ変位部11に固定されている。そのため、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9を伸縮させると、これらの変位は直接変位部11に伝わり、変位部11は、Z軸方向から見て中心点11Xを回転中心として、第1回転方向、及び、第一回転方向とは逆の回転方向(図6における時計回り方向)に回転する。
【0066】
即ち、変位部11の回転方向は、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9の伸縮方向により決まる。具体的には、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9に対して、それらの分極方向に電圧を印加すると、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9は厚さ方向に伸び、第1仮想線7H及び第2仮想線9Hに沿った方向に縮むため、変位部11は、矢印11Yに示す回転方向に回転する。一方、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9に対して、それらの分極方向と逆方向に電圧を印加すると、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9は厚さ方向に縮み、第1仮想線7H及び第2仮想線9Hに沿った方向に伸びるため、変位部11は、矢印11Yに示す回転方向とは逆方向に回転する。
【0067】
上述のような本実施形態の圧電アクチュエータ1によれば、以下の理由により、構造が簡単で変位の伝達効率が高いと共に、変位対象である変位部11の変位量を大きくしつつ変位対象である変位部11を精密に変位させることが可能となる。
【0068】
本実施形態の圧電アクチュエータ1においては、第1圧電積層体7は、その基端部7Tのみにおいて第1弾性体層15の第1領域15Aを介して支持基板3の主面3Mに第1ボンディング部5Aによって固定され、第2圧電積層体9は、その基端部9Tのみにおいて第1弾性体層15の第2領域15Bを介して支持基板3の主面3Mに第2ボンディング部5Bによって固定されており、ボンディング層5及び第2圧電積層体9は、支持基板3の主面3Mの上方に固定されている(図2〜図4参照)。
【0069】
その上、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9の下面7TD、7RD、9TD、9RDと側面7S、9Sには第1弾性体層15が固定され、第1弾性体層15の非ボンディング面15Rと、支持基板3の主面3Mとの間には、非ボンディング面15Rと接する空間ギャップ5Gが形成されている。これにより、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9は、それらの基端部7T、9T以外の部分において、支持のための剛性の高い部材に固定されていない。そのため、第1圧電積層体7や第2圧電積層体9の変位が、剛性の高い部材によって妨げられることはない。さらに、第1圧電積層体7の先端部7Rと第2圧電積層体9の先端部9Rとの間に、直接変位対象である変位部11が固定されている。その結果、本実施形態の圧電アクチュエータ1は、構造が簡単であり、変位の伝達効率が高くなる。
【0070】
また、本実施形態の圧電アクチュエータ1は、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9の下面7TD、7RD、9TD、9RDと第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9の側面7S、9Sとを接続する第1弾性体層15を備え、この第1弾性体層15は、第1領域15A、第2領域15B、第3領域15C、及び、第4領域15Dにおいて、支持基板3の主面3Mに固定されている(図2〜図4参照)。これにより、第1圧電積層体7の先端部7R及び第2圧電積層体9の先端部9Rの下面7RD、9RDと側面7S、9Sは、第1弾性体層15を介して、間接的に支持基板3の主面3Mに支持される。さらに、第1弾性体層は、弾性材料からなるため、第1圧電積層体の先端部7R及び第2圧電積層体の先端部9Rの下面7RD、9RDや側面7S、9Sが剛性の高い部材によって直接支持される場合と比較して、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9の変位が妨げられ難い。
【0071】
これにより、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9をそれぞれ第1仮想線7H及び第2仮想線9Hに沿って長く延ばした形状にしても、支持基板3によって第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9を十分に支持することができる。そのため、第1圧電積層体及び第2圧電積層体が、逆圧電効果とは無関係に変位してしまったりする事(例えば、図6において、第1圧電積層体7や第2圧電積層体9に電圧を印加していないときに、変位部11がXY平面内で回転したり、Z軸方向に変位したりする事)や、予期しない態様で変位してしまったりする事(例えば、図6において、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9を逆圧電効果によって伸縮させた際に、変位部11がZ軸方向に変位してしまったり、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9が、それぞれ第1仮想線7H及び第2仮想線9Hと交差する方向に大きく変位してしまったりする事)を抑制することができる。その結果、本実施形態の圧電アクチュエータ1は、変位対象である変位部11の変位量を大きくすることと、変位部11を精密に変位させることの両立が可能となる。
【0072】
以上の理由により、本実施形態の圧電アクチュエータ1によれば、構造が簡単で変位の伝達効率が高いと共に、変位対象である変位部11の変位量を大きくしつつ変位対象である変位部11を精密に変位させることが可能となる。
【0073】
さらに、本実施形態の圧電アクチュエータ1では、支持基板3の主面3Mと平行な面内において、第1仮想線7Hの接線7T1、7T2、7T3、7T4は、それらの接点が第1仮想線7Hの第1圧電積層体7の基端部7Tに対応する基端点7HTE側から第1圧電積層体7の先端部7Rに対応する先端点7HRE側に移動するに従って、Z軸方向を回転軸とする回転方向(第1回転方向)に回転し、支持基板3の主面3Mと平行な面内において、第2仮想線9Hの接線9T1、9T2、9T3、9T4は、接点が第2仮想線9Hの第2圧電積層体9の基端部9Tに対応する基端点9HTE側から第2圧電積層体9の先端部9Rに対応する先端点9HRE側に移動するに従って、Z軸方向を回転軸とする回転方向(第1回転方向)に回転している(図4及び図5参照)。
【0074】
そのため、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9は、Z軸方向を回転軸とする回転方向(第1回転方向)に沿って曲線的に曲がりながら延びる形状となる(図4及び図5参照)。そのため、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9を直線的に同じ長さ延びる形状とした場合と比較して、変位部11の変位量を同等に保ちつつ、圧電アクチュエータ1全体の形状を小型化することが可能となる。なお、第1仮想線7Hの一部における接線について、それらの接点が第1仮想線7Hの第1圧電積層体7の基端部7Tに対応する基端点7HTE側から第1圧電積層体7の先端部7Rに対応する先端点7HRE側に移動するに従って、Z軸方向を回転軸とする回転方向(第1回転方向)に回転すれは、変位部11の変位量を同等に保ちつつ、圧電アクチュエータ1全体の形状を小型化することが可能という効果を得ることができる。同様に、第2仮想線9Hの一部における接線について、それらの接点が第2仮想線9Hの第2圧電積層体9の基端部9Tに対応する基端点9HTE側から第2圧電積層体9の先端部9Rに対応する先端点9HRE側に移動するに従って、Z軸方向を回転軸とする回転方向(第1回転方向)に回転すれは、変位部11の変位量を同等に保ちつつ、圧電アクチュエータ1全体の形状を小型化することが可能という効果を得ることができる。
【0075】
さらに、本実施形態の圧電アクチュエータ1においては、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9は、第1圧電積層体7が第1仮想線7Hに沿って逆圧電効果によって伸びると同時に第2圧電積層体9が逆圧電効果によって第2仮想線9Hに沿って伸びた際に、Z軸方向を回転軸とする第1回転方向に変位部11を回転させるように、それぞれ変位部11に固定されている(図6参照)上、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9は、上述のようにZ軸方向を回転軸とする第1回転方向に沿って曲線的に曲がりながら延びる形状となっている。これにより、第1圧電積層体7を第1仮想線7Hに沿って伸縮させると、第1圧電積層体7の先端部7Rは、第1回転方向に沿うように伸縮する。同様に、第2圧電積層体9を第2仮想線9Hに沿って伸縮させると、第2圧電積層体9の先端部9Rは、第1回転方向に沿うように伸縮する。その結果、変位部11を回転させる際の変位の伝達効率がさらに高くなっている。
【0076】
さらに、本実施形態の圧電アクチュエータ1においては、好ましは、第1仮想線7Hの少なくとも第1仮想線先端部7HRと、第2仮想線9Hの少なくとも第2仮想線先端部9HRとは、Z軸方向から見て、変位部11内の中心点11Xに対して略点対称に配置されている(図4及び図6参照)。
【0077】
この場合、第1圧電積層体7の先端部7Rと、第2圧電積層体9の先端部9Rは、逆圧電効果によって変位部11内の中心点11Xに対して略点対称に伸縮する。そのため、変位部11を回転させる際の変位の伝達効率がさらに高くなる。
【0078】
さらに、本実施形態の圧電アクチュエータ1においては、変位部11は、第3上部電極層11b、第3下部電極層11c、及び、第3圧電体層11aを含み、第1圧電体層7a、第2圧電体層9a、及び、第3圧電体層11aは、一体形成されており、第1上部電極層7b、第2上部電極層9b、及び、第3上部電極層11bは、一体形成されており、第1下部電極層7c、第2下部電極層9c、及び、第3下部電極層11cは、一体形成されている(図2〜図4参照)。そのため、第1圧電積層体7、第2圧電積層体9、及び、変位部11は、一体形成されている。これにより、第1圧電積層体7と第2圧電積層体9を逆圧電効果によって伸縮させるためには、第1上部電極層7b、第2上部電極層9b、及び、第3上部電極層11bのいずれかと、第1下部電極層7c、第2下部電極層9c、及び、第3下部電極層11cのいずれかと、の間に電圧を印加すればよいため、圧電アクチュエータ1全体の構造を簡単にすることができる(図16参照)。
【0079】
さらに、本実施形態の圧電アクチュエータ1においては、第2弾性体層17には、第1仮想線7Hとそれぞれ交差する方向に延びると共に第1仮想線7Hに沿って並ぶ複数のスリットからなる第1スリット構造17S1と、第2仮想線9Hとそれぞれ交差する方向に延びると共に第2仮想線9Hに沿って並ぶ複数のスリットからなる第2スリット構造17S2が形成されている(図1〜図3参照)。これにより、第1圧電積層体7は逆圧電効果によって第1仮想線7Hに沿って伸縮しやすくなり、第2圧電積層体9は逆圧電効果によって第2仮想線9Hに沿って伸縮しやすくなる。その結果、変位の伝達効率をさらに高くすることが可能となっている。
【0080】
次に、本実施形態に係る圧電アクチュエータの製造方法について説明する。本実施形態に係る圧電アクチュエータは、通常、大型の仮基板を用いて多数個の圧電アクチュエータを同時に製造するが、以下の説明においては、1個の圧電アクチュエータを製造する場合を中心に説明する。
【0081】
図7(A)、図8(A)、図9(A)、図10(A)、図12(A)、図13(A)、図14(A)、図15(A)、及び、図16(A)は、本実施形態の圧電アクチュエータの製造方法を説明するための平面図である。図7(B)、図7(C)、図8(B)、及び、図8(C)は、それぞれ図7(A)におけるVIIB−VIIB線、VIIC−VIIC線、図8(A)におけるVIIIB−VIIIB線、及び、VIIIC−VIIIC線に沿った断面図であり、図9(B)は、図9(A)におけるIXB−IXBに沿った断面図であり、図10(B)、図11(A)、図11(B)、図11(C)、及び、図11(D)は、それぞれ、図10(A)のXB−XB線、XIA−XIA線、XIB−XIB線、XIC−XIC線、及び、XID−XID線に沿った断面図であり、図12(B)、及び、図13(B)は、それぞれ図12(A)のXIIB−XIIB線、及び、図13(A)のXIIIB−XIIIB線に沿った断面図であり、図14(B)、及び、図14(C)は、それぞれ図14(A)のXIVB−XIVB線、及び、XIVC−XIVC線に沿った断面図であり、図15(B)、及び、図16(B)は、それぞれ図15(A)のXVB−XVB線、及び、図16(A)のXVIB−XVIB線に沿った断面図である。
【0082】
(本体部形成工程)
本実施形態の圧電アクチュエータの製造方法においては、まず、図7(A)(B)(C)に示すように、仮基板21上に、例えば、蒸着法、スパッタリング法等の物理気相成長法や、MOD法(Metal Organic Decomposition)による金属有機化合物溶液を基板上に塗布し加熱して熱分解を行う化学溶液プロセス、AD法(Aerosol Deposition)による材料微粒子をガスと混合してエアロゾル化し高速で基板に衝突させ、解放された運動エネルギーを利用して基板−粒子間、粒子同士を結合する方法などを用いて、バッファ層25、第1圧電積層体7、第2圧電積層体9、及び、変位部11を有する本体部13と、金属層9dと、を順次積層する。これらの層の積層には、エピタキシャル成長法を用いることができる。より具体的に説明すると、まず、仮基板21上にバッファ層25をエピタキシャル成長させる。バッファ層25は、例えば(100)方向、(010)方向、又は(001)方向に配向し、その上面が{111}ファセット面であるエピタキシャル成長膜とすることができる。
【0083】
続いて、バッファ層25上に本体部下部電極層(第1下部電極層7c、第2下部電極層9c、及び、第3下部電極層11c)、及び、本体部圧電体層(第1圧電体層7a、第2圧電体層9a、及び、第3圧電体層11a)を順にエピタキシャル成長させ、更に本体部圧電体層上に本体上部電極層(第1上部電極層7b、第2上部電極層9b、及び、第3上部電極層11b)を形成する。なお、この本体上部電極層はエピタキシャル成長膜でなくてもよい。これにより、仮基板21、バッファ層25、本体部下部電極層、本体部圧電体層、及び、本体部上部電極層からなる積層体が形成される。バッファ層25のシード層としての効果により、本体部圧電体層は、その結晶配向方向が分極方向(001)に揃った配向圧電体膜となるため、自発分極を有する。
【0084】
仮基板21としては、例えばシリコン(Si)、酸化マグネシウム(MgO)等からなる結晶性を有する基板を用いることができる。バッファ層25を構成する材料としては、例えばジルコニア等の酸化物を用いることができる。バッファ層25は、仮基板21と本体部圧電体層との格子定数マッチングの制御、及び、本体部圧電体層の配向方向の制御を行うために設けられている。
【0085】
第1圧電積層体7は、第1上部電極層7b、第1下部電極層7c、及び、これらの間に介在する第1圧電体層7aを含む。第2圧電積層体9は、第2上部電極層9b、第2下部電極層9c、及び、これらの間に介在する第2圧電体層9aを含む。変位部11は、第3上部電極層11b、第3下部電極層11c、及び、これらの間に介在する第3圧電体層11aを含む。第1圧電体層7a、第2圧電体層9a、及び、第3圧電体層11aは、一体形成し、第1上部電極層7b、第2上部電極層9b、及び、第3上部電極層11bは、一体形成し、第1下部電極層7c、第2下部電極層9c、及び、第3下部電極層11cは、一体形成する。第1圧電積層体7は、第1仮想線7Hに沿って延び、第2圧電積層体9は、第2仮想線9Hに沿って延びるようにする。金属層9dは、本体部13と離間して、第2圧電積層体9に近接する位置に設けられる。
【0086】
このような本体部13は、例えば、第1下部電極層7c、第2下部電極層9c、及び、第3下部電極層11cと同様の材料からなる層と、第1圧電体層7a、第2圧電体層9a、及び、第3圧電体層11aと同様の材料からなる層と、第1上部電極層7b、第2上部電極層9b、及び、第3上部電極層11bと同様の材料からなる層をこの順に仮基板21上の全面に形成し、フォトリソグラフィー法によって、所定の形状に加工することにより、形成することができる。金属層9dは、例えば、第2下部電極層9cと同様の材料で形成することができ、フォトリソグラフィー法によって、所定の位置に所定の形状で形成することができる。
【0087】
(第1弾性体層形成工程)
続いて、図8(A)(B)(C)に示すように、本体部13を覆うように第1弾性体層15を形成する。この際、金属層9dの少なくとも一部と、第2上部電極層9bの一部が露出するように、第1弾性体層15に2つのスルーホール15hを形成する。第1弾性体層15の形成は、例えば、スピン塗布法によって行うことができる。これにより、第1弾性体層15の上面は、略平坦になるようにする。本体部13は、第1弾性体層15内に埋め込まれる。また、第1弾性体層15は、第1圧電積層体7の基端部7T上に設けられた第1領域15Aと、第2圧電積層体9の基端部9T上に設けられた第2領域15Bと、第1圧電積層体7の側面に設けられた第3領域15Cと、第2圧電積層体9の側面に設けられた第4領域15Dと、第1圧電積層体7の先端部7R上に設けられた第5領域15Eと、第2圧電積層体9の先端部9R上に設けられた第6領域15Fと、変位部11上に設けられた第7領域15Gと、からなる。
【0088】
(電気接続工程)
続いて、図9(A)(B)(C)に示すように、2つのスルーホール15hを介して金属層9dと第2上部電極層9bとを電気的に接続するように、露出した金属層9dから露出した第2上部電極層9bに亘って、例えば真空蒸着法、スパッタリング法等の物理気相成長法や電解メッキや導電性樹脂の印刷等によって、例えば銀(Ag)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銅(Cu)等からなる金属導体層23を形成する。
【0089】
(ボンディング層形成工程)
続いて、図10(A)(B)及び図11(A)(B)(C)(D)に示すように、第1弾性体層15上にボンディング層5を形成する。ボンディング層5は、第1弾性体層15の第1領域15Aの一部、第2領域15Bの一部、第3領域15Cの一部、及び、第4領域15Dの一部、を覆うと共に、これらの領域以外の第1弾性体層15(非ボンディング面15R)を露出させるパターンを有する。
【0090】
このようなパターンを有するボンディング層5は、例えば、ボンディング層5を形成する材料として感光性の材料を用いる場合、ボンディング層5を第1弾性体層15上の全面に形成した後、ボンディング層5を露光及び現像し、所定の形状に加工することにより形成することができる。また、ボンディング層5を形成する材料として非感光性の材料を用いる場合、ボンディング層5を第1弾性体層15上の全面に形成した後、その層上にレジスト層を形成し、フォトリソグラフィー法によってボンディング層5を所定の形状に加工することにより、上述のようなパターンを有するボンディング層5を形成することができる。
【0091】
(支持基板固定工程)
続いて、図12(A)(B)に示すように、ボンディング層5上に支持基板3を固定する。ボンディング層5上への支持基板3の固定は、例えば、ボンディング層5上に支持基板3を押し付けた状態でボンディング層5を加熱することにより行うことができる。これにより、非ボンディング面15Rと、支持基板3の主面3Mとの間に、非ボンディング面15Rと接する空間ギャップ5Gを形成する。
【0092】
(仮基板除去工程)
続いて、図13(A)(B)に示すように、仮基板21を除去する。これにより、バッファ層25が露出する。仮基板21の除去は、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)法やウェットエッチング法により行うことができる。このバッファ層25はジルコニア等の酸化物膜からなるため、本工程において仮基板21をエッチングによって除去する場合、バッファ層25はバリア層(エッチングストッパー層)として機能する。
【0093】
(バッファ層除去工程)
続いて、図14(A)(B)に示すように、仮基板除去工程後に露出したバッファ層25の所定箇所を、フォトリソグラフィー法とエッチング工程により除去する。これにより、変位部11の上方、第1圧電積層体7の基端部の上方、第2圧電積層体9の基端部の上方、及び、スルーホール15hの上方以外の領域にあるバッファ層25を除去する。
【0094】
(電極パッド形成工程)
続いて、図15(A)(B)に示すように、2つのスルーホール15hの上方の第2下部電極層9cと金属層9d上に、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等の物理気相成長法や電解メッキや導電性樹脂の印刷等によって、金(Au)、銀(Ag)等の金属導体等からなる2つの電極パッド27を形成する。これにより、一方の電極パッド27は、第1下部電極層7c、第2下部電極層9c、及び、第3下部電極層11cと電気的に接続され、他方の電極パッド27は、第1上部電極層7b、第2上部電極層9b、及び、第3上部電極層11bと電気的に接続される。
【0095】
(第2弾性体層形成工程)
続いて、図16(A)(B)に示すように、仮基板除去工程において仮基板21が除去されることにより露出した第1圧電積層体7、第2圧電積層体9、変位部11、及び、第1弾性体層15上に、第2弾性体層17を形成する。この際、第2弾性体層17によって、第1弾性体層15の露出面のうちボンディング層5の上方の領域と、第1圧電積層体7の上面と、第2圧電積層体9の上面とが接続されるようにする。また、第2弾性体層17には、第1スリット構造17S1と、第2スリット構造17S2を形成する。このような第2弾性体層17の形成は、例えば、スピン塗布法によって第2弾性体層17を全面に形成した後、フォトリソグラフィー法によって、所定の形状に加工することにより、行うことができる。その後、ダイシンング加工等を行い、個別の素子ごとの個片化を行う。このような工程を経ることにより、本実施形態の圧電アクチュエータ1が製造される。
【0096】
本実施形態の圧電アクチュエータの製造方法によれば、得られる圧電アクチュエータ1は、上述のような特徴を有するため、構造が簡単で変位の伝達効率が高いと共に、変位対象の変位量を大きくしつつ変位対象を精密に変位させることが可能となる。
【0097】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形態様が可能である。
【0098】
例えば、上述の実施形態においては、第1圧電積層体7、第2圧電積層体9、及び、変位部11は、一体形成されているが(図2及び図3参照)、これらは、別々の部材であってもよい。この場合、変位部11は、圧電体層(第3圧電体層11a)を有していなくてもよい。さらに、この場合、第1圧電積層体7に電圧を印加するための一対の第1電極パッド対と、第2圧電積層体9に電圧を印加するための一対の第2電極パッド対を圧電アクチュエータ1に設けることにより、第1圧電積層体7と第2圧電積層体9を別々の態様(例えば、一方がその延び方向に沿って逆圧電効果によって伸びたとき、他方がその延び方向に沿って逆圧電効果によって縮む態様)で、それぞれ変位させることができる。これにより、例えば変位部11を、支持基板3の主面3Mと平行な方向に直線的に変位させることができる。即ち、第1圧電積層体7と第2圧電積層体9は、変位部11を支持基板3の主面3Mと平行な方向に直線的に変位させるように、それぞれ変位部11に固定されていてもよい。
【0099】
また、上述の実施形態においては、第1仮想線7Hは曲線的であったが、直線であってもよい。即ち、第1圧電積層体7は、支持基板3の主面3Mと平行な面内において、直線的に延びる形状であってもよい。同様に、上述の実施形態においては、第2仮想線9Hは曲線的であったが、直線であってもよい。即ち、第2圧電積層体9は、支持基板3の主面3Mと平行な面内において、直線的に延びる形状であってもよい。
【0100】
また、上述の実施形態においては、第2弾性体層17には、第1スリット構造17S1と第2スリット構造17S2が形成されているが、第2弾性体層17には、これらの構造が形成されていなくてもよい。
【0101】
また、上述の実施形態においては、圧電アクチュエータ1は、第2弾性体層17を備えているが、第2弾性体層17を備えていなくてもよい。
【0102】
また、上述の実施形態においては、非ボンディング面15Rと支持基板3の主面3M
圧電アクチュエータ1には空間ギャップ5Gが形成されているが(図3参照)、非ボンディング面15Rは、第1ボンディング部5A、第2ボンディング部5B、第3ボンディング部5C、及び、第4ボンディング部5Dよりも弾性率の低い部材(例えば、ゴム弾性を有する弾性部材)によって支持基板3の主面3Mに固定されていてもよい。このような場合であっても、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9は、それらの基端部7T、9T以外の部分において、支持のための剛性の高い部材に固定されていないため、第1圧電積層体7や第2圧電積層体9の変位が、剛性の高い部材によって妨げられることはない。その結果、構造が簡単であり、変位の伝達効率が高い圧電アクチュエータとすることができる。
【0103】
また、上述のような圧電アクチュエータ1において、非ボンディング面15Rと支持基板3の主面3Mとが固定されていなければ、空間ギャップ5Gは有機材料、無機材料、金属材料などからなる部材で埋められていてもよい。例えば、非ボンディング面15Rとの動摩擦係数が十分に低い部材で空間ギャップ5Gを埋めた態様、即ち、本体部13が変位した場合に、空間ギャップ5Gを埋めた部材と接する面において本体部13が滑るような態様も可能である。このような場合であっても、第1圧電積層体7及び第2圧電積層体9は、それらの基端部7T、9T以外の部分において、支持のための剛性の高い部材に固定されていないため、第1圧電積層体7や第2圧電積層体9の変位が、剛性の高い部材によって妨げられることはない。その結果、構造が簡単であり、変位の伝達効率が高い圧電アクチュエータとすることができる。
【0104】
また、上述の圧電アクチュエータ1は、本体部13を変位させた際に本体部13がXY平面内で広がることを有効に抑制するためのガイド部をさらに備えていてもよい。具体的には、圧電アクチュエータ1は、例えば、Z軸の正方向から見て、第2弾性体層17の側面を囲うように第2弾性体層17に近接又は接すると共に、支持基板3との相対位置が固定されたガイド部としての枠部材をさらに備えていてもよい。このようなガイド部を設けることにより、本体部13がXY平面で広がることが抑制されるため、本体部13を変位させた際の変位部11の回転変位効率を向上させることができる。なお、このようなガイド部は、支持基板3と一体形成されたものであってもよいし、支持基板3とは別部材であって支持基板3との相対位置が固定されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0105】
1・・・圧電アクチュエータ、3・・・支持基板、3M・・・支持基板の主面、5・・・ ボンディング層、5A・・・第1ボンディング部、5B・・・第2ボンディング部、5C・・・第3ボンディング部、5D・・・第4ボンディング部、5G・・・空間ギャップ、7・・・第1圧電積層体、7a・・・第1圧電体層、7b・・・第1上部電極層、7c・・・第1下部電極層、7H・・・第1仮想線、7R・・・先端部、7RD・・・第1圧電積層体の先端部の下面、7S・・・第1圧電積層体の側面、7T・・・第1圧電積層体の基端部、7TD・・・第1圧電積層体の基端部の下面、9・・・第2圧電積層体、9a・・・第2圧電体層、9b・・・第2上部電極層、9c・・・第2下部電極層、9H・・・第2仮想線、9R・・・第2圧電積層体の先端部、9RD・・・第2圧電積層体の先端部の下面、9S・・・第2圧電積層体の側面、9T・・・第2圧電積層体の基端部、9TD・・・第2圧電積層体の基端部の下面、11・・・変位部、13・・・本体部、15・・・第1弾性体層、15A・・・第1弾性体層の第1領域、15B・・・第1弾性体層の第2領域、15C・・・第1弾性体層の第3領域、15D・・・第1弾性体層の第4領域、15R・・・非ボンディング面、17・・・第2弾性体層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
第1上部電極層、第1下部電極層、及び、これらの間に介在する第1圧電体層を含む第1圧電積層体と、第2上部電極層、第2下部電極層、及び、これらの間に介在する第2圧電体層を含む第2圧電積層体と、前記支持基板に対して相対的に変位可能な変位部と、を有する本体部と、
第1弾性体層と
を備え、
前記本体部は、前記支持基板の主面の上方に設けられており、
前記第1圧電積層体は、前記支持基板の前記主面と交差する方向を積層方向とし、前記支持基板の前記主面と平行な面内における第1仮想線に沿って延び、
前記第2圧電積層体は、前記支持基板の前記主面と交差する方向を積層方向とし、前記支持基板の前記主面と平行な面内における第2仮想線に沿って延びると共に、前記第1圧電積層体と離間し、
前記変位部は、前記第1圧電積層体の先端部と前記第2圧電積層体の先端部との間に固定され、
前記第1弾性体層は、前記第1圧電積層体の前記支持基板と対向する下面と、前記第2圧電積層体の前記支持基板と対向する下面と、前記第1圧電積層体の側面の少なくとも一部と、前記第2圧電積層体の側面の少なくとも一部と、を接続するように前記本体部に固定されており、
前記第1弾性体層のうち前記第1圧電積層体の基端部の下面に設けられた第1領域は、第1ボンディング部によって前記支持基板の前記主面に固定されており、
前記第1弾性体層のうち前記第2圧電積層体の基端部の下面に設けられた第2領域は、第2ボンディング部によって前記支持基板の前記主面に固定されており、
前記第1弾性体層のうち、前記第1圧電積層体の側面に設けられた第3領域の少なくとも一部は、第3ボンディング部によって前記支持基板の前記主面に固定されており、
前記第1弾性体層のうち、前記第2圧電積層体の側面に設けられた第4領域の少なくとも一部は、第4ボンディング部によって前記支持基板の前記主面に固定されており、
前記第1弾性体層の前記支持基板と対向する下面のうち、前記第1ボンディング部、前記第2ボンディング部、前記第3ボンディング部、及び、前記第4ボンディング部と接する面以外の非ボンディング面は、前記支持基板の前記主面に固定されていない、又は、前記第1ボンディング部、前記第2ボンディング部、前記第3ボンディング部、及び、前記第4ボンディング部よりも弾性率の低い部材によって前記支持基板の前記主面に固定されている圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記非ボンディング面と、前記支持基板の前記主面との間には、前記非ボンディング面と接する空間ギャップが形成されている請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記第1弾性体層の上面のうち前記第1ボンディング部、前記第2ボンディング部、前記第3ボンディング部、及び、前記第4ボンディング部の上方の領域と、前記第1圧電積層体の上面と、前記第2圧電積層体の上面と、を接続するように前記本体部に固定された第2弾性体層をさらに有する請求項1又は2に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項4】
前記第1弾性体層は、樹脂からなり、
前記第2弾性体層は、樹脂からなる請求項3に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項5】
前記支持基板の前記主面と平行な面内において、前記第1仮想線の少なくとも一部における接線は、接点が前記第1仮想線の前記第1圧電積層体の基端部に対応する端点側から前記第1圧電積層体の先端部に対応する端点側に移動するに従って、前記支持基板の前記主面と交差する方向を回転軸とする回転方向に回転し、
前記支持基板の前記主面と平行な面内において、前記第2仮想線の少なくとも一部における接線は、接点が前記第2仮想線の前記第2圧電積層体の基端部に対応する端点側から前記第2圧電積層体の先端部に対応する端点側に移動するに従って、前記支持基板の前記主面と交差する方向を回転軸とする回転方向に回転する請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項6】
前記第1圧電積層体及び前記第2圧電積層体は、当該第1圧電積層体が前記第1仮想線に沿って伸びると同時に当該第2圧電積層体が前記第2仮想線に沿って伸びた際に、前記支持基板の前記主面と交差する方向を回転軸とする第1回転方向に前記変位部を回転させるように、それぞれ前記変位部に固定されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項7】
前記支持基板の前記主面と平行な面内において、前記第1仮想線の少なくとも前記第1圧電積層体の前記先端部に対応する部分における接線は、接点が前記第1仮想線の前記第1圧電積層体の前記基端部に対応する端点側から前記第1圧電積層体の前記先端部に対応する端点側に移動するに従って、前記第1回転方向に回転し、
前記支持基板の前記主面と平行な面内において、前記第2仮想線の少なくとも前記第2圧電積層体の前記先端部に対応する部分における接線は、接点が前記第2仮想線の前記第2圧電積層体の前記基端部に対応する端点側から前記第2圧電積層体の前記先端部に対応する端点側に移動するに従って、前記第1回転方向に回転する請求項6に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項8】
前記第1仮想線の少なくとも前記第1圧電積層体の前記先端部に対応する前記部分と、前記第2仮想線の少なくとも前記第2圧電積層体の前記先端部に対応する前記部分とは、
前記支持基板の前記主面と垂直な方向から見て、前記変位部内の点に対して略点対称に配置されている請求項7に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項9】
前記変位部は、第3上部電極層、第3下部電極層、及び、第3圧電体層を含み、
前記第1圧電体層、前記第2圧電体層、及び、前記第3圧電体層は、一体形成されており、
前記第1上部電極層、前記第2上部電極層、及び、前記第3上部電極層は、一体形成されており、
前記第1下部電極層、前記第2下部電極層、及び、前記第3下部電極層は、一体形成されている請求項1〜8のいずれか一項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項10】
前記第2弾性体層には、前記第1仮想線とそれぞれ交差する方向に延びると共に前記第1仮想線に沿って並ぶ複数のスリットからなる第1スリット構造と、前記第2仮想線とそれぞれ交差する方向に延びると共に前記第2仮想線に沿って並ぶ複数のスリットからなる第2スリット構造が形成されている請求項3〜9のいずれか一項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項11】
仮基板上に、第1上部電極層、第1下部電極層、及び、これらの間に介在する第1圧電体層を含み、前記仮基板の主面と平行な面内における第1仮想線に沿って延びる第1圧電積層体と、第2上部電極層、第2下部電極層、及び、これらの間に介在する第2圧電体層を含み、前記仮基板の前記主面と平行な面内における第2仮想線に沿って延びると共に、前記第1圧電積層体と離間する第2圧電積層体と、前記第1圧電体層の先端部と前記第2圧電体層の先端部との間に固定された変位部と、を有する本体部を形成する本体部形成工程と、
前記本体部上に、当該本体部を覆うように第1弾性体層を形成する第1弾性体層形成工程と、
前記第1弾性体層のうち、前記第1圧電積層体の基端部上に設けられた第1領域、前記第2圧電積層体の基端部上に設けられた第2領域、前記第1圧電積層体の側面に設けられた第3領域の少なくとも一部、及び、前記第2圧電積層体の側面に設けられた第4領域の少なくとも一部、を覆うと共に、これらの領域以外の前記第1弾性体層を露出させるパターンを有するボンディング層を形成するボンディング層形成工程と、
前記ボンディング層上に支持基板を固定することにより、第1弾性体層のうち前記ボンディング層が形成されていない非ボンディング面と、前記支持基板の主面との間に、前記非ボンディング面と接する空間ギャップを形成する支持基板固定工程と、
前記仮基板を除去する仮基板除去工程と、
を備える圧電アクチュエータの製造方法。
【請求項12】
前記仮基板除去工程の後に、前記仮基板除去工程において前記仮基板が除去されることにより露出した前記第1圧電積層体、前記第2圧電積層体、及び、前記第1弾性体層上に、前記第1弾性体層の露出面のうち前記ボンディング層の上方の領域と、前記第1圧電積層体の上面と、前記第2圧電積層体の上面と、を接続するように第2弾性体層を形成する第2弾性体層形成工程をさらに備える請求項11に記載の圧電アクチュエータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−283038(P2010−283038A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133442(P2009−133442)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】