説明

圧電スピーカ及びその製造方法,電子機器

【課題】品質のばらつきを抑え、音圧の確保にも有利であって、小型化に適した防水構造を有する圧電スピーカを提供する。
【解決手段】圧電スピーカ10は、第1の筐体20と第2の筐体30の間に発音体ユニット40を挟み込んだ構造となっている。前記発音体ユニット40の振動板42の縁部42Aは、前記第1及び第2の筐体20,30の縁部26,36の内周側と外周側の間にくるように配置され、前記縁部26,36により挟まれる。前記第1及び第2の筐体20,30の双方の縁部26,36と、前記発音体ユニット40の振動板42の縁部42Aによって全周にわたって形成される溝部48に、接着剤50からなる防水壁52が形成される。また、第2の筐体30と振動板42は粘着層46により接着され、他方の筐体20の縁部26と振動板縁部42Aの間は、前記接着剤50の一部からなる接着層54により接着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電スピーカ及びその製造方法,電子機器に関し、更に具体的には、圧電スピーカの防水技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電体を利用した発音体ユニットの筐体への取り付けについては、従来、下記特許文献1の公報の第4図に示すように、片面のみを接着剤により取り付ける方法や、同公報の第5図に示すように、発音体ユニットの両主面縁部を筐体の突起で挟み込む方法が知られている。また、下記特許文献2には、接着剤を用いた取り付けにおける精度確保(接着剤の塗布量の制御)に関する接着構造が開示されている。筐体と発音体ユニットとを接着する接着剤の量が一定でないと、発音特性がばらつく等、品質に影響があるため、当該技術では、剰余の接着剤を逃がすための液溜めを設けることを特徴としている。
【0003】
一方、近年では、モバイル製品の防水対応に伴い、そこに内蔵される電子部品へも同様の耐水性能が要求されている。圧電スピーカにおける防水機能は、放音孔側から侵入する水を、圧電素子が配置された面に流さないことにより実現される。従って、放音孔側の板金部分(筐体の縁部)と振動板との接合部分に防水機能を付与する必要がある。この接合部分は、従来は、1mm以上の幅を有していることが多く、両面テープによって接着がなされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−224697号公報
【特許文献2】特開昭62−131699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、以上のような背景技術には、次のような不都合がある。圧電スピーカの主用途である携帯電話等の電子機器は多機能化が進み、圧電スピーカが専有できるスペースが少なくなり、小型化が求められている。その中で、発音体ユニットをなるべく大きくしようとすると、前記特許文献1に示すような取り付け精度確保のための突起や、前記特許文献2に示すような液溜め等の手段を筐体に設けることが困難になる。従って、別の手段で発音特性のばらつきを抑えることが必要となる。一方、前記両面テープを用いた接着方法では、確実な接着をして防水性を確保するためには、1mm以上の接着幅が必要となり、圧電スピーカの外形寸法が大きくなる。また、板金(筐体縁部)の反りが50μm程度はあるため、それ以上の厚みの両面テープが必要となり、スピーカの厚みが増してしまう。更に、接着するのは発音体ユニットの外周部だけであるが、両面テープを使用する場合は、スピーカの面積分用意する必要があるためコストがかかる。また、両面テープの加工工程や、セパレータの剥離工程も必要になるという不都合がある。
【0006】
本発明は、以上のような点に着目したもので、筐体側に複雑な構造を設けることなく、発音特性のばらつきを抑え、音圧の確保にも有利であって、小型化にも適した防水機能を有する圧電スピーカを提供することである。他の目的は、前記圧電スピーカを簡単な製造工程で製造できる製造方法を提供することである。更に他の目的は、前記圧電スピーカを搭載した電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の圧電スピーカは、底部と、該底部に連続して形成されており前記底部と反対側が開口した周壁と、該周壁の開口側に連続して形成された縁部と、からなる第1の筐体と、前記第1の筐体の底部と相似形又は略同一形状及び寸法の底部と、該底部に連続して形成されており前記底部と反対側が開口した周壁と、該周壁の開口側に連続して形成されており、形状が前記第1の筐体の縁部と略同一である縁部と、からなる第2の筐体と、少なくとも、圧電性磁器からなる圧電振動体と、主面外形寸法が、前記圧電振動体の外形及び前記第1及び第2の筐体の両縁部の内側寸法よりも大きく、かつ、前記第1及び第2の筐体の両縁部の外形寸法よりも小さい振動板とからなり、前記振動板の一方の主面上に、前記圧電振動体が、前記振動板の縁部を露出するように取り付けられる発音体ユニットと、から構成されており、前記第1又は第2の筐体のいずれか一方の底部に放音孔が形成されており、該放音孔が形成されていない筐体側に前記圧電振動体が配置され、前記発音体ユニットは、前記振動板の縁部が、前記第1及び第2の筐体の両縁部の端よりも内側となるように配置された状態で、前記両縁部により挟まれており、前記第1及び第2の筐体の両縁部と、前記振動板の縁部によって、該縁部の全周にわたって形成される溝部に、接着剤による防水壁が形成されていることを特徴とする。
【0008】
主要な形態の一つは、前記振動板は、いずれか一方の主面の縁部が粘着層により前記第1又は第2の筐体の縁部に接着されており、前記防水壁を形成する接着剤の一部は、前記粘着層が設けられていない側において、振動板の主面の縁部と第1又は第2の筐体の縁部とを接着する接着層を形成することを特徴とする。
【0009】
本発明の圧電スピーカの製造方法は、発音体ユニットと、該発音体ユニットの縁部を挟み込むための縁部が全周にわたって形成されている第1の筐体と第2の筐体を用意するとともに、前記第1又は第2の筐体のいずれかに放音孔が形成されており、前記第1の筐体又は第2の筐体のいずれかの縁部の所定位置に、接着剤を全周にわたって環状に塗布するにあたり、前記環状の接着剤の内周側が、前記発音体ユニットの外縁よりも内側の一定距離w1に位置し、前記環状の接着剤の外周側が、前記発音体ユニットの外縁よりも外側の一定距離w2に位置するように塗布幅がw1+w2であって、かつ、前記環状の接着剤の外周側が、前記第1及び第2の筐体の縁部の外周よりも一定距離の内側に位置し、更に、前記接着剤の塗布厚みが、前記発音体ユニットの縁部の厚み寸法誤差の最大許容値と同一となるように前記接着剤を塗布し、該接着剤が塗布された第1又は第2の筐体と、前記発音体ユニットと、前記接着剤が塗布されていない第1又は第2の筐体とを重ね、押圧して組み立てることを特徴とする。
【0010】
本発明の他の圧電スピーカの製造方法は、発音体ユニットと、該発音体ユニットの縁部を挟み込むための縁部が全周にわたって形成されている第1の筐体と第2の筐体を用意するとともに、前記第1又は第2の筐体のいずれかに放音孔が形成されており、前記第1の筐体又は第2の筐体のいずれかの縁部の所定位置に、接着剤を全周にわたって環状に塗布するにあたり、前記環状の接着剤の外周及び内周の形状が、前記発音体ユニットの外形形状と相似であり、かつ、前記環状の接着剤の内周側が、前記発音体ユニットの外形よりも小さく、前記環状の外周側が、前記発音体ユニットの外形よりも大きく、更に、塗布厚みが前記発音体ユニットの縁部の厚み寸法誤差の最大許容値と同一となるように前記接着剤を塗布し、前記接着剤が塗布された第1又は第2の筐体と、前記発音体ユニットと、前記接着剤が塗布されていない第1又は第2の筐体とを、前記環状に塗布された接着剤の内周側の辺部と、前記発音体ユニットの外形辺部との間隔が、全周にわたって均一となるように重ね、押圧して組み立てることを特徴とする。
【0011】
主要な形態の一つは、前記第1又は第2の筐体のうち、前記接着剤が塗布されない方の筐体の縁部と前記発音体ユニットを粘着層によって貼り合わせた後に、他方の筐体への前記接着剤の塗布と、押圧による組み立てを行い、前記防水壁を形成する接着剤の一部によって、前記粘着層が設けられていない側における圧電発音体の縁部と筐体の縁部とを接着する接着層を形成することを特徴とする。
【0012】
本発明の他の圧電スピーカは、請求項3〜5のいずれか一項に記載の製造方法によって形成されており、前記第1及び第2の筐体の縁部と、前記発音体ユニットの縁部との間に、前記接着剤による防水壁が形成されたことを特徴とする。本発明の電子機器は、前記いずれかに記載の圧電スピーカを搭載したことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1の筐体と第2の筐体の間に発音体ユニットを挟み込むにあたり、前記発音体ユニットの振動板の縁部が、前記第1及び第2の筐体の縁部の内周側と外周側の間にくるように配置し、前記第1及び第2の筐体の双方の縁部と、前記発音体ユニットの振動板の縁部によって全周にわたって形成される溝部に、接着剤からなる防水壁を形成することとした。このため、発音体ユニットの縁部の厚みやエッジ部そのものを、接着剤が濡れ広がる際の制御・規制に利用して、発音特性のばらつきを抑えた防水性能を有する圧電スピーカを提供できる。また、筐体と発音体ユニットの接合部のマージンを従来よりも少なくできるため、圧電スピーカの外形寸法を変えずに、発音体の面積を大きくすることで、音圧確保に有利となる。更に、特殊な加工や部材が不要であるため、製造コストの低減及び生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1を示す図であり、(A)は本実施例の圧電スピーカの分解斜視図,(B)は前記圧電スピーカの筐体の接着前の状態を示す断面図,(C)は前記圧電スピーカの筐体の接着後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
最初に、図1を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1(A)は本実施例の圧電スピーカの分解斜視図,図1(B)は前記圧電スピーカの筐体の接着前の状態を示す断面図,図1(C)は前記圧電スピーカの筐体の接着後の状態を示す断面図である。図1(A)〜(C)に示すように、本実施例の圧電スピーカ10は、第1の筐体20と、第2の筐体30と、発音体ユニット40と、これらを接着するための接着剤50により形成された防水壁52及び接着層54により構成されている。
【0017】
前記第1の筐体20は、略円形の底部22と、該底部22に連続して形成されており前記底部22と反対側が開口した周壁24と、該周壁24の開口側に連続して形成された縁部26を有しており、本実施例では、前記底部22の略中央には、放音孔28が形成されている。一方、第2の筐体30は、略円形の底部32と、該底部32に連続して形成されており前記底部32と反対側が開口した周壁34と、該周壁34の開口側に連続して形成された縁部36を有している。前記底部32は、前記第1の筐体20の底部22と同様に円形であるが、その直径は、前記底部22と同一であってもよいし、底部22と異なっていてもよい。また、第1の筐体20の縁部26の幅と、第2の筐体30の縁部36の幅は、同一であってもよいし、後述した状態で発音体ユニット40を挟み込むことができれば、異なっていてもよい。
【0018】
前記発音体ユニット40は、圧電性磁器からなる圧電振動体44を、振動板42の一方の主面上に、該振動板42の縁部42Aが露出するように、粘着層46を介して貼り合わせた構成となっている。前記振動板42としては、公知の金属板や樹脂製(PET,ウレタンエラストマーなど)の板などが用いられる。なお、本実施例では、第1の筐体20側に放音孔28を設けているため、前記圧電振動体44は、防水上の観点から、第2の筐体30側に取り付けられる。また、前記振動板42の外形寸法は、前記第1の筐体20の縁部26及び第2の筐体30の縁部36の内側寸法よりも大きく、かつ、前記縁部26及び36の外形寸法よりも小さく設定されている。すなわち、振動板42を第1の筐体20と第2の筐体30で挟み込んだときに、振動板42の縁部42Aと、前記第1の筐体20の縁部26と、第2の筐体30の縁部36の間に、図1(C)の右側に示す溝部48が全周にわたって形成される。
【0019】
前記溝部48には、第1の筐体20と第2の筐体30の貼り合わせの際に使用される接着剤50により、防水壁52が形成される(図1(A)及び(C)参照)。更に、本実施例では、前記発音体ユニット40は、前記振動板42の一方の主面上に設けられた粘着層46を利用して、第2の筐体30の縁部36に対して接着されるが、前記粘着層46を設けない側の筐体(第1の筐体20)の縁部26と前記振動板42の縁部42Aの間は、前記接着剤50の一部により形成された接着層54により接着される。すなわち、図1(C)の左側で点線で囲った領域Aの部分においては、主として、接着剤50からなる防水壁52により防水機能が発揮され、同図に点線で囲った領域Bの部分においては、接着層54及び粘着層46により振動板42と筐体20及び筐体30の固定が行われる。
【0020】
次に、本実施例の圧電スピーカ10の製造方法を説明する。まず、第1の筐体20と、第2の筐体30と、発音体ユニット40を用意する。前記発音体ユニット40は、例えば金属製の振動板42の上に、粘着層46を介して圧電振動体44を接着して形成する。そして、該圧電振動体44を第2の筐体30側へ向けて、発音体ユニット40の振動板42の縁部42Aと、第2の筐体30の縁部36を前記粘着層46により接着する。本実施例では、前記第2の筐体30の縁部36の幅WAは、例えば、0.6mmであり、該縁部36の外縁と、前記振動板42の縁部42Aの外縁との間の距離WBは、例えば、0.3mmとなるように設定されている(図1(B)参照)。
【0021】
次に、前記第1の筐体20の縁部26の所定の位置に、接着剤50を全周にわたって環状に塗布する。このとき、環状の接着剤50の内周側50Aが、前記発音体ユニット40の振動板縁部42Aの外縁よりも内側の一定距離w1に位置し、前記環状の接着剤50の外周側50Bが、前記振動板縁部42Bの外縁よりも外側の一定距離w2に位置するように塗布する。すなわち、接着剤50の塗布幅Wはw1+w2となる。また、前記環状の接着剤50の外周側50Bが、前記第1の筐体20の縁部26の外周及び第2の筐体30の縁部36の外周よりも一定距離WC(例えば、0.1mm)の内側に位置し、更に、前記接着剤50の塗布厚みT2が、前記発音体ユニット40の外縁部の厚み(すなわち、振動板42と粘着層46の合計厚み)の厚み寸法誤差の最大許容値と略同一となるように塗布する。例えば、振動板42と粘着層46の合計厚みT1が0.14mmであるときに、寸法誤差を考慮して、接着剤50の塗布厚みT2を0.18mmにするという具合である。なお、本例では、第1の筐体20の縁部26の幅(すなわち、W+WC)と、第2の筐体30の縁部36の幅WAは必ずしも一致する必要はなく、(W+WC)<WAであればよいことから、前記接着剤30の塗布幅Wは、例えば、0.3mm程度とする。このように接着剤50を塗布したら、振動板42が接着された第2の筐体30と、放音孔28側の第1の筐体20とを重ね、前記振動板42が、第1の筐体20の縁部26に接触するまで(手応えがあるまで)押圧する。このとき、第1の筐体20と第2の筐体30とを、前記環状に塗布された接着剤50の内周側50Aの辺部と、発音体ユニット40の外形辺部との間隔が全周にわたって均一となるように重ねる。なお、押圧時には、例えば、弱いばねを適宜位置に配置させ、組立て時のばねのたわみ量を管理することで、適度な圧力をかけるようにしている。
【0022】
押圧により、前記接着剤50が広がるが、前記発音体ユニット40の振動板42の外形厚みやエッジ部そのものが、接着剤50が濡れ広がる際の制御・規制に利用される。前記接着剤50の一部は、上記防水壁52を形成し、残りは、発音体ユニット40の縁部42Aの一方の面と第1の筐体20の縁部26とを接着する接着層54となる。なお、振動板42が接触するまで押しつけるため、縁部26,36の反りや厚みのばらつき、あるいは、振動板42の厚みのばらつき等があっても、防水機能を持たせることができる。接着後の防水壁52の厚みT1´は、振動板42と粘着層46の厚み合計T1に、接着層54の厚みを加えたものに相当する。
【0023】
このように、実施例1によれば、第1の筐体20と第2の筐体30の間に発音体ユニット40を挟み込むにあたり、前記発音体ユニット40の振動板42の縁部42Aが、前記第1及び第2の筐体20,30の縁部26,36の内周側と外周側の間にくるように配置し、前記第1及び第2の筐体20,30の双方の縁部26,36と、前記発音体ユニット40の振動板縁部42Aによって全周にわたって形成される溝部48に、接着剤50からなる防水壁52を形成することとしたので次のような効果がある。
(1)発音体ユニット40の振動板42の外縁部の厚みやエッジ部そのものを、接着剤50が濡れ広がる際の制御・規制に利用するため、第1の筐体20や第2の筐体30側に位置規制手段や塗布余り吸収手段を設けることなく、発音特性のばらつきを抑えた防水性能を有する圧電スピーカ10が得られる。
【0024】
(2)第1の筐体20及び第2の筐体30と、発音体ユニット40の接合部のマージンを従来よりも少なくできるため、圧電スピーカ10の外形寸法を変えずに、圧電振動体44の面積を大きくでき、音圧確保が有利となる。
(3)特殊な加工や部材が不要であるため、製造コストの低減及び生産性の向上を図りながら、品質のばらつきを抑えられる。
(4)接着剤50によって接着を行うため、両面テープを用いた背景技術の場合と異なり、必要な部分のみに接着材料を設ければよく、また、加工の装置費用が安価で済むため、コスト低減を図ることができる。特に、接着部分のマージンが1mm以下のような小型の圧電スピーカの場合に好適である。
【0025】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法は一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。例えば、前記実施例では、筐体20,30の底部22,32や、縁部26,36の形状を略円形とし、環状に塗布する接着剤50の内周側及び外周側も略円形としたが、これも一例であり、これらの形状は正多角形状や長方形,あるいは、楕円形などであってもよい。また、第1の筐体20の底部22と第2の筐体30の底部32の寸法は完全に一致している必要はなく、相似形であってもよい。第1の筐体20の縁部26の幅と第2の筐体30の縁部36の幅についても、同様の効果を奏する範囲内で適宜変更可能である。更に、圧電スピーカに信号入力するための端子を設け、該端子と圧電振動体を接続するためのルートを設ける場合には、前記第1の筐体20又は第2の筐体30もルート部を避けた形状とし、該形状に合わせて接着剤50を塗布するようにすればよい。
(2)前記実施例で示した材料も一例であり、同様の効果を奏する範囲内であれば、公知の各種の材料を用いてよい。
(3)前記実施例で示した放音孔28の位置,大きさ,数も一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。また、前記実施例では、第1の筐体20側に放音孔28を設けたが、第2の筐体30側に設けるようにしてもよく、その場合は、防水性の観点から、圧電振動体44は、第1の筐体20側に配置すればよい。
(4)本発明の圧電スピーカは、携帯電話などへの搭載が好適な利用例であるが、これに限定されるものではなく、公知の各種の圧電スピーカを搭載する電子機器全般に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、第1の筐体と第2の筐体の間に発音体ユニットを挟み込むにあたり、前記発音体ユニットの振動板の縁部が、前記第1及び第2の筐体の縁部の内周側と外周側の間にくるように配置し、前記第1及び第2の筐体の双方の縁部と、前記発音体ユニットの振動板の縁部によって全周にわたって形成される溝部に、接着剤からなる防水壁を形成することとした。そして、発音体ユニットの外縁部の厚みやエッジ部そのものを、接着剤が濡れ広がる際の制御・規制に利用することで、特殊な加工や部材を要することなく、発音特性のばらつきを抑えるため、防水性能を備えた圧電スピーカの用途に適用できる。また、筐体と発音体ユニットの接合部のマージンを従来よりも少なくして、圧電スピーカの外形寸法を変えずに、発音体の面積を大きくすることで音圧確保が有利となるため、小型化が要求される圧電スピーカの用途に好適である。
【符号の説明】
【0027】
10:圧電スピーカ
20:第1の筐体
22:底部
24:周壁
26:縁部
28:放音孔
30:第2の筐体
32:底部
34:周壁
36:縁部
40:発音体ユニット
42:振動板
42A:縁部
44:圧電振動体
46:粘着層
48:溝部
50:接着剤
50A:内周側
50B:外周側
52:防水壁
54:接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、
該底部に連続して形成されており前記底部と反対側が開口した周壁と、
該周壁の開口側に連続して形成された縁部と、
からなる第1の筐体と、
前記第1の筐体の底部と相似形又は略同一形状及び寸法の底部と、
該底部に連続して形成されており前記底部と反対側が開口した周壁と、
該周壁の開口側に連続して形成されており、形状が前記第1の筐体の縁部と略同一である縁部と、
からなる第2の筐体と、
少なくとも、圧電性磁器からなる圧電振動体と、主面外形寸法が、前記圧電振動体の外形及び前記第1及び第2の筐体の両縁部の内側寸法よりも大きく、かつ、前記第1及び第2の筐体の両縁部の外形寸法よりも小さい振動板とからなり、前記振動板の一方の主面上に、前記圧電振動体が、前記振動板の縁部を露出するように取り付けられる発音体ユニットと、
から構成されており、
前記第1又は第2の筐体のいずれか一方の底部に放音孔が形成されており、該放音孔が形成されていない筐体側に前記圧電振動体が配置され、
前記発音体ユニットは、前記振動板の縁部が、前記第1及び第2の筐体の両縁部の端よりも内側となるように配置された状態で、前記両縁部により挟まれており、
前記第1及び第2の筐体の両縁部と、前記振動板の縁部によって、該縁部の全周にわたって形成される溝部に、接着剤による防水壁が形成されていることを特徴とする圧電スピーカ。
【請求項2】
前記振動板は、いずれか一方の主面の縁部が粘着層により前記第1又は第2の筐体の縁部に接着されており、
前記防水壁を形成する接着剤の一部は、前記粘着層が設けられていない側において、振動板の主面の縁部と第1又は第2の筐体の縁部とを接着する接着層を形成することを特徴とする請求項1記載の圧電スピーカ。
【請求項3】
発音体ユニットと、該発音体ユニットの縁部を挟み込むための縁部が全周にわたって形成されている第1の筐体と第2の筐体を用意するとともに、前記第1又は第2の筐体のいずれかに放音孔が形成されており、
前記第1の筐体又は第2の筐体のいずれかの縁部の所定位置に、接着剤を全周にわたって環状に塗布するにあたり、
前記環状の接着剤の内周側が、前記発音体ユニットの外縁よりも内側の一定距離w1に位置し、前記環状の接着剤の外周側が、前記発音体ユニットの外縁よりも外側の一定距離w2に位置するように塗布幅がw1+w2であって、かつ、
前記環状の接着剤の外周側が、前記第1及び第2の筐体の縁部の外周よりも一定距離の内側に位置し、更に、
前記接着剤の塗布厚みが、前記発音体ユニットの縁部の厚み寸法誤差の最大許容値と同一となるように前記接着剤を塗布し、
該接着剤が塗布された第1又は第2の筐体と、前記発音体ユニットと、前記接着剤が塗布されていない第1又は第2の筐体とを重ね、押圧して組み立てることを特徴とする圧電スピーカの製造方法。
【請求項4】
発音体ユニットと、該発音体ユニットの縁部を挟み込むための縁部が全周にわたって形成されている第1の筐体と第2の筐体を用意するとともに、前記第1又は第2の筐体のいずれかに放音孔が形成されており、
前記第1の筐体又は第2の筐体のいずれかの縁部の所定位置に、接着剤を全周にわたって環状に塗布するにあたり、
前記環状の接着剤の外周及び内周の形状が、前記発音体ユニットの外形形状と相似であり、かつ、
前記環状の接着剤の内周側が、前記発音体ユニットの外形よりも小さく、前記環状の外周側が、前記発音体ユニットの外形よりも大きく、更に、
塗布厚みが前記発音体ユニットの縁部の厚み寸法誤差の最大許容値と同一となるように前記接着剤を塗布し、
前記接着剤が塗布された第1又は第2の筐体と、前記発音体ユニットと、前記接着剤が塗布されていない第1又は第2の筐体とを、前記環状に塗布された接着剤の内周側の辺部と、前記発音体ユニットの外形辺部との間隔が、全周にわたって均一となるように重ね、押圧して組み立てることを特徴とする圧電スピーカの製造方法。
【請求項5】
前記第1又は第2の筐体のうち、前記接着剤が塗布されない方の筐体の縁部と前記発音体ユニットを粘着層によって貼り合わせた後に、他方の筐体への前記接着剤の塗布と、押圧による組み立てを行い、
前記防水壁を形成する接着剤の一部によって、前記粘着層が設けられていない側における圧電発音体の縁部と筐体の縁部とを接着する接着層を形成することを特徴とする請求項3又は4記載の圧電スピーカの製造方法。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項に記載の製造方法によって形成されており、前記第1及び第2の筐体の縁部と、前記発音体ユニットの縁部との間に、前記接着剤による防水壁が形成されたことを特徴とする圧電スピーカ。
【請求項7】
請求項1,2,6のいずれか一項に記載の圧電スピーカを搭載したことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【公開番号】特開2013−48346(P2013−48346A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185907(P2011−185907)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】