説明

圧電スピーカ

【課題】
安定した電気的接続状態を形成して、音再現性の良好な薄型の圧電スピーカを提供する。
【解決手段】
圧電スピーカ10の振動板12の主面には、表面に電極層16を備えた圧電素子14が貼着されている。前記圧電素子14は、十分な駆動力を得るために、少なくとも3層以上の圧電層と電極層を交互に積層した構造とする。前記電極層16の表面には、裏面に導電性粘着材層からなる第1の導電接続部22を備えた帯状の金属箔からなる導電路20が設けられる。このような導電路20の上から、該導電路20上と前記電極層16の表面にわたって、前記導電路20の両側にそれぞれ,あるいは、該導電路20を横切るように、剛性が低く、体積抵抗率が高い導電ペーストを塗布し、第2の導電接続部24(ないし26,28)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電スピーカに関し、更に具体的には、薄型の圧電スピーカの音再現性の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、厚さ1mm以下の超薄型圧電スピーカは、金属製の振動板の片面あるいは両面に、板厚方向に分極した圧電体素子(圧電体薄板)を貼り付けた構造となっている。十分な音圧を得るためには、この圧電体素子を、圧電体(圧電層)と電極層を積層した積層体とする必要がある。そのため、電極を同時焼成する必要があり、焼成に耐えうる材料として銀/パラジウム合金電極を用いている。そして、圧電体表面の電極に信号を印加するための導電路として、厚さ0.1mm以下の導電性粘着材つきの金属箔を用いてスピーカ全体としての薄さを確保している(例えば、以下の特許文献1)。また、コストを下げるために電極中のパラジウム比率を下げる方法が有効であることから、低温で焼結する圧電体を用いることで、例えば、銀/パラジウム比を9:1程度としている。ただし、このようなパラジウム含有量を下げた電極では、収縮が母材である圧電体よりも低温で進むため、焼結中に収縮の不整合で発生する応力により、圧電素子が変形したり破壊したりしてしまう。そこで、電極中に母材と同じ圧電体材料を添加し、収縮率の整合を取る方法が用いられている。
【特許文献1】特開2003−078995公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、以上のように電極に添加された圧電体材料は、焼結中に金属から排除されてしまうため、圧電素子の外部電極では、電極表面に圧電体材料の粒子が析出してしまう。圧電体材料自身は不導体であるため、導電性粘着材で電気的接触を取る場合には障害となり、導電性粘着材と電極との接触が不安定となる。これにより、振動に伴い接触抵抗が変化し、音の再現性が著しく損なわれるという問題がある。
【0004】
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、安定した電気的接続状態を形成して、音再現性の良好な薄型の圧電スピーカを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、圧電体の少なくとも一方の主面に電極層を備えた圧電素子と、該圧電素子の他方の主面側に貼着された振動板を含む圧電スピーカであって、前記圧電素子の電極層同士,あるいは、前記圧電素子のいずれか一方の電極層と外部回路とを導電接続するために、前記電極層上に導電固着される帯状金属箔からなる導電路,前記導電路の裏面に設けられた導電性粘着材層により形成される第1の導電接続部,導電ペーストの塗布によって、前記電極層の表面から前記導電路の上面にわたって設けられた導電層により形成される第2の導電接続部,を備えるとともに、前記第2の導電接続部を、前記導電路の縁部に沿って複数箇所で、前記電極層に接続するように形成したことを特徴とする。好ましくは、前記第2の導電接続部を、前記導電路の両側にそれぞれ、もしくは、該導電路を横切るように形成したことを特徴とする。主要な形態の一つは、前記第2の導電接続部を構成する導電層が、ヤング率100MPa以下,かつ、体積抵抗率6×10−3Ωcm以下であることを特徴とする。
【0006】
他の形態は、前記電極層表面と導電層との接触面積,ならびに、前記導電路と導電層との接触面積が、それぞれ0.8mm以上であり、前記導電層の厚みが0.01mm以上であることを特徴とする。更に他の形態は、前記電極層表面と導電層との接触面積が、好ましくは、20mm以下であることを特徴とする。また、前記振動板の直径が10mm〜50mmであることを特徴とする。
【0007】
更に他の形態は、(1)前記振動板の少なくとも一方の主面に前記圧電素子を貼着した構造であること,(2)前記圧電素子が、圧電層と電極層を交互に複数積層した積層構造であること,(3)前記圧電素子が、少なくとも3層以上の圧電層を含むこと,を特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、振動板の主面に設けられた圧電素子の表面の電極層上に、裏面に導電性粘着材層からなる第1の導電接続部を備えた帯状金属箔の導電路を設けて、前記電極層同士あるいは電極層と外部回路との接続を行うとともに、剛性が低く体積抵抗率の高い導電ペーストを利用して、前記電極層の表面から前記導電路の上面にわたって、前記導電路の縁部に沿って複数箇所で、前記電極層に接続するように第2の導電接続部を形成することとした。このため、安定した電気的接続状態を得て、音再現性の良好な薄型の圧電スピーカを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の圧電スピーカの基本構造を示す図であり、図1(A)は実施形態1の平面図,図1(B)はその斜視図,図1(C)は導電路の裏面を示す斜視図,図1(D)は実施形態2の平面図,図1(E)は実施形態3の平面図である。
【0010】
図1に示すように、本発明の圧電スピーカ10は、金属製の振動板12に、圧電体の積層体の少なくとも一方の主面に電極層16を備えた圧電素子14を貼り付けたものである。前記圧電スピーカ10は、前記圧電素子14を振動板12のいずれか一方の主面に設けたユニモルフ型であってもよいし、振動板12の両面に設けたバイモルフ型であってもよい。圧電スピーカ10の全体の厚さを1mm以下とするために、前記振動板12は、例えば厚さを0.1mm以下とする。また、十分な駆動力を得るために、圧電素子14は、少なくとも3層以上の圧電層を電極層と交互に積層した積層構造とし、総厚が0.1mmを越えないものとする。
【0011】
前記圧電素子14の層間及び表裏面の電極層16の材質としては、例えば、圧電体と同時焼成可能な、銀/パラジウム=9/1〜10/0の比率(モル比)の合金あるいは銀が利用される。電極層16は、合金(ないし銀)と圧電体粉末を、バインダーとともに適当な溶剤に加えてペーストとし、圧電体のグリーンシートに、例えば、スクリーン印刷法により形成する。このような圧電素子14の表面の電極層16に、裏面に第1の導電接続部22が設けられた厚さ0.1mm以下の帯状の金属箔を貼り付ける。該金属箔により、前記電極層16同士や、該電極層16と外部回路を接続するための導電路20が形成される。なお、前記第1の導電接続部22は、導電性の粘着材層により構成されている。このため、振動板12との短絡を防ぐために、粘着材層と振動板12が触れる部分に絶縁性テープ23を貼るなど(図1(C)参照)、絶縁するための処置を適宜講じる必要がある。
【0012】
次いで、導電路20の上から、該導電路20上と前記電極層16の表面にわたるように、剛性が低く、体積抵抗率が高い導電ペーストを塗布し、導電層からなる第2の導電接続部を形成する。導電ペーストの塗布形状は、前記導電路20の縁部に沿って複数箇所で前記電極層16に接続するように形成すればよいが、好ましくは、前記導電路20の両側にそれぞれ形成するか,あるいは、前記導電路20を横切るように形成する。例えば、図1(A)に示す圧電スピーカ10のように、円形の導電接続部24を2つ形成するか、図1(D)に示す導電接続部26のように長方形にすると都合がよい。なお、図1(E)に示す圧電スピーカ10のように、導電路20の位置を圧電素子14の縁寄りとすると、前記図1(A)又は(D)の例のように導電路20の両側に塗布することができないが、この場合には、円形の導電接続部28を、導電路20片側と先端部の2箇所に塗布することによって対応することができる。
【0013】
前記第2の導電接続部24,26,28としては、剛性が低く体積抵抗率の高い導電性ペーストを利用する。具体的には、ヤング率100MPa以下,かつ、体積抵抗率が6×10−3Ωcm以下の物性を満たすものが好適である。ヤング率が、これ以上では、振動板12が変形するときの応力に耐えられず破壊してしまう。例えば、以下の表1は、第2の導電接続部を形成する導電層として利用する導電ペーストのヤング率と圧電スピーカ10の駆動による破壊の有無の関係を示す一例である。使用ペーストAはポリエステル系,使用ペーストBはシリコーン系,使用ペーストCはエポキシ系,使用ペーストDはポリイミド系の樹脂を利用したものであり、いずれの使用ペーストも導電フィラーとして銀を含んでいる。
【表1】

表1から分かるように、使用ペーストB〜Dは、体積抵抗率は6×10−3Ωcm以下の条件を満たすものの、剛性が高すぎるため駆動によって破壊してしまう。
【0014】
また、以下の表2には、導電ペーストによって図1(D)に示す形状の第2の導電接続部26を形成し、導電ペーストのヤング率を変えた場合の音圧変化が示されている。
【表2】

表2の結果から分かるように、音圧劣化を例えば0.1dB以内におさめるためには、導電ペーストのヤング率は100MPaが上限であることがわかる。従って、駆動による破壊を防止し、音質の劣化を最小限にするためには、導電ペーストのヤング率を100MPa以下にするのが好ましいことが分かる。
【0015】
また、体積抵抗率が6×10−3Ωcm以上では、接触抵抗を十分小さくすることができない。導電ペーストの塗布形状は、上述したように、前記導電路20の両側にそれぞれ形成するか,あるいは、前記導電路20を横切るものであれば、円形・長方形など任意の形状とすることができるが、導電路20に重なる部分と、電極層16に重なる部分の双方とも0.8mm以上となるようにする。これより小さい面積では、導電ペースト部分(第2の導電接続部24,26,28)の抵抗値が十分低くならず、安定した接触状態が得られない。また、ヤング率60MPaの導電ペーストを用いて、電極層16上の導電ペースト(導電接続部24,26,28)の塗布面積を変えた場合の音圧劣化が、以下の表3に示されている。表3に示す通り、面積が20mmよりも大きい場合に音圧劣化が0.1dBを越えるため、電極層16上の塗布面積は20mm以下であることが好ましい。なお、このような導電ペーストの塗布面積が音質に与える影響は、前記振動板12の直径が10〜50mm程度の比較的小型の圧電スピーカの場合に顕著となる。これは、比較的小型の圧電スピーカの場合は、振動板12の剛性が高くなるため、導電ペーストの影響を受けにくくなるからである。
【表3】

前記導電ペーストの塗布方法としては、例えば、印刷法,スプレー法など公知の各種の方法を用いることができる。また、第2の導電接続部24(ないし26,28)の厚みは、例えば、0.01mm(10μm)以上とする。これより厚みが少ないと、抵抗値が高くなり過ぎて安定した接触状態を形成できない。塗布後に導電ペーストを紫外線照射や加熱などの所定の方法で硬化させることにより、接触状態が安定した圧電スピーカ10を得ることができる。
【実施例1】
【0016】
次に、本発明の実施例と比較例について説明する。図2には、実施例及び比較例の圧電スピーカの主要断面が示されている。まず、実施例1について説明すると、実施例1の圧電スピーカ30は、振動板32の表裏両面に、積層構造の圧電素子34及び40を貼り合わせたバイモルフ型となっており、前記圧電素子34,40の表面の電極層38A,44Aには、帯状金属箔からなる導電路46A,46Bが設けられている。前記振動板32としては、例えば、直径23mm,厚さ0.03mmの鉄−ニッケル合金が用いられる。前記圧電素子34は、3層の圧電層36A〜36Cと4層の電極層38A〜38Dを交互に積層した積層体であって、前記圧電層36A〜36Cとしては、例えば、直径19mm,厚さ0.018mm(18μm)のジルコン酸チタン酸鉛が用いられ、電極層36A〜36Cとしては、例えば、直径18.5mm,厚さ0.001mmの銀−パラジウム合金が用いられる。前記電極層38A〜38Dは、スルーホールなどにより互いに接続されている。他方の圧電素子40も、前記圧電素子34と同じ構成となっており、3層の圧電層42A〜42Cと、4層の電極層44A〜44Dが交互に積層された積層構造である。
【0017】
前記導電路46A,46Bは、導電性の粘着材層からなる第1の導電接続部48A,48Bが裏面に設けられた銅箔であって、例えば、厚さ0.07mm,長さ10mm,幅2mmの寸法のものが用いられる。更に、前記振動板32の周辺部の金属が剥き出しになっている部分での短絡を防止するために、前記導電路46A,46Bの内側には、絶縁性テープ50A,50Bが貼り付けられている。そして、このような導電路46A,46Bの上から、銀を導電フィラーとするポリエステル系導電ペースト(品名:DW−250H−5,東洋紡(株)製,ヤング率:60MPa,体積抵抗:1×10−3Ωcm)を塗布し、第2の導電接続部52A及び52Bを形成する。塗布形状は、図1(A)に示す形態のように、スプレー法により直径1.0mmの円形を2ヶ所とし、導電路46A(46B)および電極層38A(44A)上の面積をそれぞれ0.9mm,厚さを0.015mmとした。得られた圧電スピーカ30を、周辺を固定する治具に設置し、端子に電圧3Vrms,周波数1kHzの正弦波を印加した。そして、発生する音をマイクで集音し、プリアンプで増幅された信号をオシロスコープで確認して波形のひずみの有無を観察した。その結果を以下の表4に示す。なお、表4においては、波形のひずみがあるものを不安定な接触状態,ひずみがないものを安定した接触状態として判定した。
【実施例2】
【0018】
前記実施例1と同様の条件の導電ペーストを、導電路46A,46Bの上から印刷法にて塗布し、図1(D)に示す形態のように、1.6×4mmの長方形の第2の導電接続部52A,52Bを形成した。なお、導電路46A(46B)と電極層38A(44A)上の面積は、それぞれ3.2mmとなるようにし、厚みを0.03mmとなるように制御した。作製した圧電スピーカの波形のひずみの有無を、前記実施例1と同様の条件で観察した。
【0019】
[比較例1]
上述した実施例1と同様の方法で、導電ペーストを用いないもの,すなわち、第2の導電接続部52A,52Bを形成しない圧電スピーカを作製し、上述した方法で波形ひずみの有無の観察を行った。
【0020】
[比較例2]
前記実施例2との比較用に、第2の導電接続部52A,52Bのヤング率を1000MPa,体積抵抗率を2×10−3Ωcm,厚みを0.02mmとした圧電スピーカを作製し、上述した方法で波形ひずみの有無の観察を行った。
【0021】
[比較例3]
前記実施例1との比較用に、第2の導電接続部52A,52Bのヤング率を40MPa,体積抵抗率を1×10−1Ωcmとした圧電スピーカを作製し、上述した方法で波形ひずみの有無の観察を行った。
【0022】
[比較例4]
前記実施例2との比較用に、第2の導電接続部52A,52Bの厚みを0.005mmとした圧電スピーカを作成し、上述した方法で波形ひずみの有無の観察を行った。
【0023】
表4は、前記実施例1及び2と、比較例1〜4について、第2の導電接続部52A及び52Bの物性,塗布形状,塗布面積,厚みと、作製した圧電スピーカの波形ひずみの有無を示したものである。
【表4】

【0024】
結果を見ると、本発明で規定する条件,すなわち、第2の導電接続部52A及び52を設けるとともに、該導電接続部52A,52Aのヤング率が100MPa以下,体積抵抗が6×10−3Ωcm以下,電極層38A(44A)と導電接続部52A(52B)との接触面積、ならびに、導電路46A(46B)と導電接続部52A(52B)との接触面積がそれぞれ0.8mm以上,導電接続部52A,52Bの厚みが0.01mm(10μm)以上,を満たす実施例1と実施例2においては、塗布形状に関わらず、波形ひずみが見られないという結果が得られた。すなわち、安定した接触状態であることが確認された。
【0025】
これに対し、導電ペースト未使用の比較例1では、波形ひずみが発生するほか、音そのものが発生しなかった。また、導電ペーストの物性や厚みを変えて、上述した条件の範囲外で作製した比較例2〜4では、全て波形ひずみが発生しており、良好な音再現性が得られなかったことが分かる。特に、ヤング率の高い導電ペーストを用いた比較例2の場合は、導電ペーストが振動により破壊してしまい、音そのものが発生しなかった。
【0026】
このように、少なくとも一方の主面に電極層を備えた圧電素子と振動板からなる圧電スピーカにおいて、裏面に導電性粘着材層からなる第1の導電接続部を備えた帯状金属箔の導電路によって、前記電極層同士あるいは電極層と外部回路との接続を行うとともに、剛性が低く体積抵抗率が高い導電ペーストを利用して、前記電極層の表面から前記導電路の上面にわたって、前記導電路の縁部に沿って複数箇所で前記電極層に接続するように第2の導電接続部を形成することとした。これにより、抵抗値の低い導電路が形成されるため、低コストの電極材料を用いた同時焼結法によって、電極層表面に障壁となる圧電体微粒子が析出する場合であっても、振動によって接触抵抗値が変動することなく、安定した電気的接続状態を形成して安価で音再現性の良好な薄型の圧電スピーカを得ることができる。
【0027】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例に示した材料,形状,寸法は一例であり、同様の作用を奏するように適宜変更可能である。例えば、前記第2の導電接続部24,26,28,52A,52Bの塗布形状は一例であり、導電路の両側にそれぞれ形成するか,あるいは、該導電路を横切るように形成するものであれば、上述した条件(面積,厚み)の範囲内で、塗布形状は適宜変更してよい。また、例えば、圧電スピーカがバイモルフ型の場合、一方の圧電素子の電極層上に形成される第2の導電接続部と、他方の圧電素子の電極層上に形成される第2の導電接続部の形状を異なるようにしてもよい。
【0028】
(2)圧電層と電極層の積層数も必要に応じて変更してよい。前記実施例では、十分な駆動力を得るために、圧電層を3層積層することとしたが、積層体の総厚が0.1mmを越えないものであれば、更に多数積層することを妨げるものではない。また、内部電極層の接続構造なども必要に応じて適宜変更可能である。
【0029】
(3)本発明の好適な応用例としては、携帯電話(PHS含む),携帯情報端末(PDA),ボイスレコーダ,PC(パソコン)などの各種電子機器のスピーカがある。もちろん、他の各種の用途に適用することを妨げるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、振動板の主面に設けられた圧電素子の表面の電極層上に、裏面に導電性粘着材層からなる第1の導電接続部を設けた帯状金属箔の導電路を設けて、前記電極層同士あるいは電極層と外部回路との接続を行うとともに、剛性が低く体積抵抗率の高い導電ペーストを利用して、前記電極層の表面から前記導電路の上面にわたって、前記導電路の縁部に沿って複数箇所で前記電極層に接続するように第2の導電接続部を形成することとした。このため、安定した電気的接続状態が得られ、薄型の圧電スピーカの用途に適用できる。特に、厚さが1mm以下の超薄型圧電スピーカの用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の圧電スピーカの基本構造を示す図であり、(A)は実施形態1の平面図,(B)は実施形態1の斜視図,(C)は実施形態1の導電路の裏面を示す斜視図,(D)は実施形態2の平面図,(E)は実施形態3の平面図である。
【図2】本発明の実施例の圧電スピーカの主要断面図である。
【符号の説明】
【0032】
10:圧電スピーカ
12:振動板
14:圧電素子
16:電極層
20:導電路
22:第1の導電接続部
23:絶縁性テープ
24,26,28:第2の導電接続部
30:圧電スピーカ
32:振動板
34,40:圧電素子
36A〜36C,42A〜42C:圧電層
38A〜38D,44A〜44D:電極層
46A,46B:導電路
48A,48B:第1の導電接続部
50A,50B:絶縁性テープ
52A,52B:第2の導電接続部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体の少なくとも一方の主面に電極層を備えた圧電素子と、該圧電素子の他方の主面側に貼着された振動板を含む圧電スピーカであって、
前記圧電素子の電極層同士,あるいは、前記圧電素子のいずれか一方の電極層と外部回路とを導電接続するために、前記電極層上に導電固着される帯状金属箔からなる導電路,
前記導電路の裏面に設けられた導電性粘着材層により形成される第1の導電接続部,
導電ペーストの塗布によって、前記電極層の表面から前記導電路の上面にわたって設けられた導電層により形成される第2の導電接続部,
を備えるとともに、
前記第2の導電接続部を、前記導電路の縁部に沿って複数箇所で前記電極層に接続するように形成したことを特徴とする圧電スピーカ。
【請求項2】
好ましくは、前記第2の導電接続部を、前記導電路の両側にそれぞれ、もしくは、該導電路を横切るように形成したことを特徴とする請求項1記載の圧電スピーカ。
【請求項3】
前記第2の導電接続部を構成する導電層が、ヤング率100MPa以下,かつ、体積抵抗率6×10−3Ωcm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の圧電スピーカ。
【請求項4】
前記電極層表面と第2の導電接続部との接触面積,ならびに、前記導電路と第2の導電接続部との接触面積が、それぞれ0.8mm以上であり、前記第2の導電接続部の厚みが0.01mm以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧電スピーカ。
【請求項5】
前記電極層表面と第2の導電接続部との接触面積が、好ましくは、20mm以下であることを特徴とする請求項4記載の圧電スピーカ。
【請求項6】
前記振動板の直径が、10mm〜50mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の圧電スピーカ。
【請求項7】
前記振動板の少なくとも一方の主面に前記圧電素子を貼着した構造であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の圧電スピーカ。
【請求項8】
前記圧電素子が、圧電層と電極層を交互に複数積層した積層構造であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の圧電スピーカ。
【請求項9】
前記圧電素子が、少なくとも3層以上の圧電層を含むことを特徴とする請求項8記載の圧電スピーカ。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−5801(P2006−5801A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181816(P2004−181816)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】