説明

圧電振動子の駆動装置

【課題】
本発明は、常に圧電振動子を共振点にて確実に駆動することにある。
【解決手段】
本発明は、圧電振動子10と、これに高周波駆動電圧を与える発振源50を設け、圧電振動子10と並列に補正用コンデンサ20を接続する。圧電振動子10に流れる電流と補正用コンデンサ20に流れる電流を、鉄心30の芯線を中心に、互いに左右反対に回転させることで、圧電振動子10の寄生容量の影響が打ち消され、電流位相が正確に計測されるので、制御回路を用いて共振点で確実に駆動することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子を用いて、超音波振動を安定して発生する技術を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なランジュバン型超音波圧電振動子には共振周波数frがあり、共振周波数に合致した駆動信号を与えると、最も効率よく振動する共振という性質がある。ただし共振の範囲は狭くかつ温度等で推移するため、常に共振周波数を正確に追いかける必要がある。
一方、圧電振動子は図2の等価回路のとおり、質量にあたるインダクタンスLとバネ定数に当るコンデンサCと負荷に当る抵抗Rが直列につながっている。このLCR直列回路が機械系の振動にあたる。他方、電気的に寄生する容量Cdも存在する。共振が起きている時は、LのインピーダンスとCのインピーダンスが相殺され、LCR直列回路に流れる電流の位相と印加電圧の位相が一致する。
そこで、圧電振動子に流れる電流と印加電圧の位相が一致するようにPLL回路を組むことで共振に近い状態を保つことができる。共振点との誤差は、寄生コンデンサCdに流れる電流が原因である。
この誤差をなくすために、特許文献1のとおり圧電振動子と並列に補正用コンデンサを挿入し、その電流値を引き算することで寄生コンデンサCdに流れる電流を相殺する回路がある。これは共振周波数が変わっても誤差が生じない長所がある。ただし、比較回路、乗算回路、減算回路が必要となり、回路が複雑となる欠点があった。また周波数が高くなればなるほど、各回路の動作速度が問題となり限界があった。
【特許文献1】特開平8−117687
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
圧電振動子から流れる電流から、圧電振動子と並列に接続された補正用コンデンサから流れる電流を減算する機能を、単純な構造で実現し、かつより高い周波数で動作可能とすることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、圧電振動子から流れる電流から、圧電振動子と並列に接続された補正用コンデンサから流れる電流を減算する機能を、高透磁率の磁性材料で作られる鉄心の芯線を中心に、互いに左右反対に回転させることで、鉄心の磁路には両者の電流を減算した値の磁力が生じ、この磁力を変換器で電気信号として取り出すことにより、両電流の減算結果が取り出せる。
【発明の効果】
【0005】
本発明の請求項1の方法により、単純な構造で確実に寄生コンデンサCdの影響をなくすことが出来る。これにより、常に共振周波数を正確に追従でき、効率の高い振動を発生することができる。また、鉄心は単純なため、回路が簡単になるとともに、高い周波数での動作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実施例を説明する図である。
【図2】圧電振動子の等価回路を説明する図である。
【図3】請求項3の変換器を説明する図である。
【図4】請求項4の変換器を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0008】
図1に本発明の実施例を示す。圧電振動子10と、これに高周波駆動電圧を与える発振源50を設け、圧電振動子10と並列に補正用コンデンサ20を接続し、高周波駆動電圧を印加する。圧電振動子10に流れる電流と補正用コンデンサ20に流れる電流を、高透磁率の磁性材料で作られる鉄心30の芯線を中心に互いに左右反対に回転させることで、鉄心30の磁路には両者の電流を減算した値の磁力が生じる。この磁力を変換器40で電気信号として取り出し、正しく補正された電流位相を検出する。PLL回路等で電流位相と電圧位相を比べ、同位相となるように印加電圧の周波数を制御することで、正確な共振周波数追従が可能となる。
【0009】
圧電振動子10の寄生コンデンサ容量Cdと補正用コンデンサ20の容量Ddが同じなら、鉄心30への巻き数比は1:1でよい。Cd:Dd=N:1ならば、巻数を1:Nにすれば同じ効果が得られる。
鉄心30は透磁率の高い材質(フェライト等)を用い、形状は棒状またはリング状とする。
変換器40は、請求項3のとおり、鉄心30にコイルを巻き、両端に抵抗を接続することで実現できる。抵抗両端電圧には、圧電振動子の電流から寄生コンデンサの電流を差し引いた電流位相が得られる。
別の方式として、請求項4のとおり、鉄心30の磁路の中にホール素子を埋め込み、ホール素子の抵抗値から電流位相を計測する方式もある。
【産業上の利用可能性】
【0010】
超音波の利用は洗浄や計測や加工や医療にまで広がっている。効率の高い振動発生が実現することにより、製品の出力向上やコスト削減や省エネ化などが期待できる。
【符号の説明】
【0011】
10 圧電振動子
20 補正用コンデンサ
30 鉄心
40 鉄心の磁路の磁力を電気信号に変える変換器
50 高周波駆動電圧を与える発振源



【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動子10と、前記圧電振動子10に高周波駆動電圧を与える発振源50を設け、前記圧電振動子10と並列に補正用コンデンサ20を接続し、前記圧電振動子10に流れる電流と前記補正用コンデンサ20に流れる電流を、鉄心30の芯線を中心に互いに左右反対に回転させることで、鉄心30の磁路には両者の電流を減算した値の磁力が生じ、変換器40で電気信号として取り出し、補正された電流位相を検出する方法。
【請求項2】
圧電振動子10と、前記圧電振動子10に高周波駆動電圧を与える発振源50と、前記圧電振動子10と並列に接続された補正用コンデンサ20と、前記圧電振動子10に流れる電流と前記補正用コンデンサ20に流れる電流を、芯線を中心に互いに左右反対に回転させた鉄心30と、前記鉄心30の磁路に流れる磁力を電流信号に位相合成する変換器40とから構成され、
前記圧電振動子10を共振点で駆動すべく前記発振源50を制御する制御回路とを具備したことを特長とする圧電振動子の駆動装置。
【請求項3】
前記変換器40が、前記鉄心30に巻かれたコイルと、前記コイル両端に並列に電気的接続された抵抗器から構成される請求項2の駆動装置。
【請求項4】
前記変換器40が、前記鉄心30の磁路の中に配置されたホール素子と、前記ホール素子を通過する磁界を計測する回路から構成される請求項2の駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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