説明

圧電振動片および物理量検出装置

【課題】WT型圧電振動片における駆動アーム、支持アーム、および検出アームのうちの少なくとも1つの折れ防止を図ることのできる圧電振動片を提供する。
【解決手段】基部12と、基部12を基準として反対方向へ延設された一対の検出アーム14(14a,14b)と、基部12を基準として検出アーム14と直交する方向へ延設された一対の支持アーム18(18a,18b)と、延設された支持アーム18のそれぞれから、検出アーム14に平行に延設された対を成す駆動アーム24(24a〜24d)とを有する圧電振動片10であって、支持アーム18に、先端面46を駆動アーム24へ向けて延設される第1の突起部40を設け、第1の突起部40の先端面46と駆動アーム24との間には、駆動アーム24の振動変位以上で、駆動アーム24が屈曲した際の弾性限界となる変位未満の隙間を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片およびこの圧電振動片を搭載した物理量検出装置に係り、特にいわゆるWT型と称される形態を有する圧電振動片、および物理量検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図14に示すように、基部2と一対の検出アーム3、および検出アーム3と直交する方向へ延設された一対の支持アーム4のそれぞれから検出アーム3に平行に延設された対を成す駆動アーム5とを有し、WT型と称される圧電振動片1が知られている。
【0003】
このような構成の圧電振動片1は主に、角速度や加速度といった物理量を検出するセンサーの検出用素子片として用いられており、例えば特許文献1、特許文献2、及び特許文献3等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−294450号公報
【特許文献2】特開2005−10034号公報
【特許文献3】特開2006−3336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような構成の圧電振動片1はパッケージに実装される際、TAB基板等における可撓性を有するインナーリードにより基部2が支持され、全体としてはパッケージ底面から浮いた状態で支持されることとなる。
【0006】
このような状態で支持される圧電振動片1は、パッケージに対して外部から衝撃が加えられた際、支持状態に無い箇所、すなわち検出アーム3や支持アーム4、及び駆動アーム5が、支持部である基部2や、交差部6を基点として大きく変形することとなる。
【0007】
水晶等の圧電効果部材により構成される圧電振動片1には、塑性変形領域が殆ど無く、変形が弾性限界を超えた段階で破断する。このため、外部衝撃を受けた圧電振動片1には、駆動アーム5や支持アーム4、あるいは検出アーム3が、その接続箇所(基部2や交差部6)の根元から折れるといった現象が生ずることがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]基部と、前記基部を基準として反対方向へ延設された一対の検出アームと、前記基部を基準として前記検出アームと直交する方向へ延設された一対の支持アームと、延設された前記支持アームのそれぞれから、前記検出アームに平行に延設された対を成す駆動アームとを有する圧電振動片であって、前記支持アームに、先端面を前記駆動アームへ向けて延設される第1の突起部を設け、前記第1の突起部の前記先端面と前記駆動アームとの間には、前記駆動アームの振動変位以上で、前記駆動アームが屈曲した際の弾性限界となる変位未満の隙間を設けたことを特徴とする圧電振動片。
【0009】
このような特徴を有する圧電振動片によれば、駆動アームが屈曲した際、当該駆動アームの屈曲が弾性限界を超える前に第1の突起部における先端面を駆動アームに接触させることができる。このため、駆動アームの励振を妨げる事無く、駆動アームの折れ防止を図ることが可能となる。
【0010】
[適用例2]適用例1に記載の圧電振動片であって、前記第1の突起部は、前記支持アームに接続された基端部と、前記基端部から前記駆動アームへ向けて延設される先端部から構成されることを特徴とする圧電振動片。
【0011】
このような特徴を有する圧電振動片によれば、第1の突起部をいわゆるカギ型に構成することができる。このため、基端部を基点として多少の撓み性を持たせることが可能となり、駆動アームが第1の突起部の先端面に接触した際の衝撃を緩和することができる。よって、接触時の衝撃による欠けや割れを防止することができる。
【0012】
[適用例3]適用例2に記載の圧電振動片であって、前記基端部には、可撓性を向上させる波状部を設けたことを特徴とする圧電振動片。
このような特徴を有する圧電振動片によれば、基端部の可撓性を向上させることができ、先端面と駆動アームとの接触時の衝撃緩和効果を高めることができる。
【0013】
[適用例4]適用例2に記載の圧電振動片であって、前記基端部には、可撓性を向上させるための溝を設けたことを特徴とする圧電振動片。
このような特徴を有する圧電振動片によっても、基端部の可撓性を向上させることができ、先端面と駆動アームとの接触時の衝撃緩和効果を高めることができる。
【0014】
[適用例5]適用例1乃至適用例4のいずれかに記載の圧電振動片であって、前記第1の突起部の先端面に、前記駆動アームを前記突起部に接触させた際の接触面に沿った傾斜角を持たせたことを特徴とする圧電振動片。
【0015】
このような特徴を有する圧電振動片によれば、駆動アームと先端面との接触を面接触とすることができる。よって、点接触や線接触に比べ、接触時に生ずる応力を分散させることが可能となる。このため、接触時の集中応力により接触部に欠けや割れが生ずるといった事態を避けることが可能となる。
【0016】
[適用例6]適用例1乃至適用例5のいずれかに記載の圧電振動片であって、前記第1の突起部の先端面の幅を、前記駆動アームにおける前記第1の突起部接触面に配された励振電極の幅よりも狭くしたことを特徴とする圧電振動片。
【0017】
このような特徴を有する圧電振動片によれば、駆動アームと先端面との接触により励振電極が傷ついたとしても、励振電極が断線する虞がなくなる。このため、製品としての信頼性を向上させることが可能となる。
【0018】
[適用例7]適用例1乃至適用例6のいずれかに記載の圧電振動片であって、前記基部に、前記先端面を前記支持アームへ向けて延設される第2の突起部を設け、前記第2の突起部の前記先端面と前記支持アームとの間には、前記支持アームの駆動変位以上で、前記支持アームが撓んだ際の弾性限界となる変位未満の隙間を設けたことを特徴とする圧電振動片。
【0019】
このような特徴を有する圧電振動片によれば、支持アームが屈曲した際、当該支持アームの屈曲が弾性限界を超える前に第2の突起部における先端面を支持アームに接触させることができる。このため、駆動アームの折れ防止を図る他に、支持アームの通常の揺動を妨げる事無く、衝撃印加時等の激しい屈曲に対する支持アームの折れの防止を図ることが可能となる。
【0020】
[適用例8]適用例1乃至適用例7のいずれかに記載の圧電振動片であって、前記基部に、前記先端面を前記検出アームへ向けて延設される第3の突起部を設け、前記第3の突起部の前記先端面と前記検出アームとの間には、前記検出アームの駆動変位以上で、前記検出アームが撓んだ際の弾性限界となる変位未満の隙間を設けたことを特徴とする圧電振動片。
【0021】
このような特徴を有する圧電振動片によれば、検出アームが屈曲した際、当該検出アームの屈曲が弾性限界を超える前に第3の突起部における先端面を検出アームに接触させることができる。このため、駆動アームや支持アームの折れ防止を図る他に、検出アームの振動を妨げる事無く、衝撃印加時等の激しい屈曲に対する検出アームの折れの防止を図ることが可能となる。
【0022】
[適用例9]適用例1乃至適用例8のいずれかに記載の圧電振動片を搭載したことを特徴とする物理量検出装置。
このような特徴を有する物理量検出装置によれば、落下や衝突等の大きな衝撃等が付与された場合であっても、駆動アームが折れてしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施形態に係る圧電振動片の構成を示す図である。
【図2】圧電振動片における駆動アームと検出アームの断面構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る圧電振動片の駆動アームと検出アームに対して溝を形成した場合の例を示す図である。
【図4】第2の実施形態に係る圧電振動片の構成を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係る圧電振動片の駆動アームの断面と、第1の突起部の先端部の形状を示す図である。
【図6】第1の突起部における第1の応用形態を示す図である。
【図7】第1の突起部における第2の応用形態を示す図である。
【図8】第1の突起部における第3の応用形態を示す図である。
【図9】第3の実施形態に係る圧電振動片の構成を示す図である。
【図10】第4の実施形態に係る圧電振動片の構成を示す図である。
【図11】第5の実施形態に係る圧電振動片の構成を示す図である。
【図12】物理量検出装置の構成を示す側断面図である。
【図13】物理量検出装置に収容される支持基板の構成を示す図である。
【図14】従来のWT型圧電振動片の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の圧電振動片および物理量検出装置に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。まず、第1の実施形態に係る圧電振動片について、図1、図2を参照して説明する。なお図1において図1(A)は圧電振動片の平面図であり、図1(B)は同図(A)における部分拡大図である。また図2において図2(A)は図1(A)におけるA−A断面を示し、図2(B)は図1(A)におけるB−B断面を示す。
【0025】
本実施形態に係る圧電振動片10は、基部12と、検出アーム14(14a,14b)、支持アーム18(18a,18b)、および駆動アーム24(24a〜24d)を基本として構成される。構成部材としては、水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等、圧電効果を奏する種々の部材を挙げることができるが、本実施形態では構成部材を水晶とした場合の例を挙げて説明する。
【0026】
基部12は、圧電振動片10の中心に位置する被支持部であり、図1に示す例では、その平面形状が略矩形となるように形成されている。
検出アーム14は、圧電振動片10を搭載するジャイロセンサーや加速度センサー等の物理量検出センサーに印加された角速度や加速度を検出し、電気信号として出力する作用を担う。検出アーム14は、基部12を基点として、結晶軸における+Y軸方向と−Y軸方向の双方に延設された一対のアームである。検出アーム14には、検出電極34,36と錘16(16a,16b)が備えられている。検出電極34,36は、角速度や加速度を印加された際の検出アーム14の屈曲によって生じた電圧を電気信号として伝達するための電極である。検出電極34,36は、図1(A)におけるB−B断面を図2(B)に示すように、断面矩形状の検出アーム14において、X軸方向とZ軸方向に位置する2対の面に備えられて、対を成す面と同電位の電圧を検出可能となるように配置される。錘16は、検出アーム14が振動する際の共振周波数を調整するための重み付けの役割を担う。
【0027】
支持アーム18は、詳細を後述する駆動アーム24を支えるためのアームである。支持アーム18は、基部12を基点として、詳細を上述した検出アーム14と直交する方向に一対設けられる。すなわち支持アーム18は、+X軸方向と−X軸方向の双方に延設されている。支持アーム18には、図示しない引出し電極が配されている。なお支持アーム18の先端には、詳細を後述する駆動アーム24を延設する際の基点となる交差部22(22a,22b)が設けられている。また交差部22には、支持アーム18の延設方向と同一方向に、突出部20a,20bが設けられている。
【0028】
駆動アーム24は、上述した2つの支持アーム18のそれぞれにおける先端側から、上述した検出アーム14に平行に延設される対を成すアームである。すなわち駆動アーム24は、各支持アーム18の先端に設けられた交差部22から、この交差部22を基点として+Y軸方向と−Y軸方向のそれぞれへ延設されている。駆動アーム24には、図1(A)におけるA−A断面を図2(A)に示すように励振電極34,36と錘26(26a〜26d)が備えられている。励振電極34,36は、駆動アーム24に対して電圧を印加することで駆動アーム24を屈曲させ、駆動アーム24による発振を生じさせるための電極である。駆動アーム24も検出アーム14と同様に、その断面は矩形とされており、励振電極34,36は対をなす面に同電位の電圧を印加することができるように配置される。錘26は、駆動アーム24を励振させる際の共振周波数を調整するための重み付けの役割を担う。
【0029】
本実施形態に係る圧電振動片10は支持アーム18と突出部20に、先端面46を駆動アーム24に向けるように延設される第1の突起部40を備えている。第1の突起部40は、支持アーム18に接続された基端部42(42a,42b)と、基端部42を基点として駆動アーム24に先端を向ける先端部44(44a,44b)から成る。第1の突起部40の基端部42は、支持アーム18と突出部20のそれぞれに、+Y軸方向と−Y軸方向に延設される。先端部44は、支持アーム18から延設された基端部42aを基点とするものと、突出部20から延設された基端部42bを基点とするものとで、その延設方向が異なる。支持アーム18から延設された基端部42aを基点とする先端部44aは、+X軸方向に延設される。一方、突出部20から延設された基端部42bを基点とする先端部44bは、−X軸方向に延設される。このような配置形態とすることで、交差部22を基点として延設された駆動アーム24の側面(X軸方向を向いた面)に、第1の突起部40の先端部44における先端面46がそれぞれ対向することとなる。
【0030】
先端面46と駆動アーム24との隙間は、駆動アーム24の振動変位量以上で、駆動アーム24が屈曲した際に弾性限界となる変位量未満とする。このような構成とすることで、第1の突起部40が駆動アーム24の励振を妨げることが無く、駆動アーム24が塑性変形に至る前、すなわち駆動アーム24が折れる前に、第1の突起部40の先端面46を駆動アーム24の側面に接触させることができる。第1の突起部40と接触した駆動アーム24は、屈曲方向の力が第1の突起部40によって受け止められることとなり、それ以上の屈曲が抑制される。このため、駆動アーム24の破断を防止することが可能となる。
【0031】
ここで第1の突起部40の先端面46には、傾斜面を持たせることが望ましい。具体的には、駆動アーム24が屈曲し、第1の突起部40の先端面46に接触する際の駆動アーム24側面の傾斜に沿った傾斜角θを持たせるようにすると良い。このような構成とすることで、第1の突起部40の先端と駆動アーム24の側面との接触を面接触とすることが可能となる。これにより、両者の接触が点接触や線接触となり、集中応力が生ずることにより接触部において破断や欠けが生ずるといった事態を避けることができる。
【0032】
駆動アーム24は検出アーム14に比べて長いため、外部衝撃によって折れが生ずる確率が高い。このため、駆動アーム24の基端部である交差部20の周囲に上記のような第1の突起部40を設けることは、駆動アーム24の折れを防止する効果が大きい。
【0033】
このような構成の圧電振動片10は、所定のカット角(例えばXカットと呼ばれるカット角)に従って切り出された水晶素板に対してマスクを形成し、水晶のエッチングを行い、形状が形成される。この際、第1の突起部40の形状形成も同時に行う。
【0034】
エッチングによる形状形成終了後、検出電極30,32や駆動電極34,36を構成するための金属膜を形成する。金属膜形成後、検出電極30,32、駆動電極34,36、および引出し電極等の各種電極形状に合わせて形成したマスクを用い、金属膜のエッチングを行うことで圧電振動片10が形成される。
【0035】
上記のような構成の圧電振動片10によれば、外部衝撃の印加による駆動アーム24の折れを防止することができる。また、製造工程においては、第1の突起部40を形成するために特別な工程を必要とせず、従来の製造工程において形状形成のためのマスクの形態を変更するだけで対応することができる。さらに第1の突起部40は、従来エッチングにより削っていた部分に設けられるため無駄が無く、基礎となる水晶素板が大型化することも無い。このため、1つのウェハーからバッチ処理により形成可能な圧電振動片10の数が減少する事も無い。
【0036】
上記実施形態では、検出アーム14、駆動アーム24の断面形状は矩形である旨記載した。しかしながら、検出アーム14、駆動アーム24にはそれぞれ、図3に示すような溝15,25を設ける構成としても良い。ここで、図3において、図3(A)は圧電振動片の平面図であり、図3(B)は同図(A)におけるA−A断面、図3(C)は同図(A)におけるB−B断面をそれぞれ示す。
【0037】
溝15,25は、検出アーム14、駆動アーム24におけるZ軸方向に位置する面に凹部を形成することで構成される。このような溝15,25を形成することにより、検出アーム14、駆動アーム24の断面形状は、いわゆるH型を構成することとなる。検出アーム14や駆動アーム24の断面にH型断面を採用し、溝15,25に検出電極30,32や励振電極34,36を配置する構成とすることで、検出感度や振動特性の向上を図ることが可能となる。
【0038】
次に、第2の実施形態に係る圧電振動片について、図4、図5を参照して説明する。なお、本実施形態に係る圧電振動片は、その殆どの構成を上述した第1の実施形態に係る圧電振動片と同様としている。よって、その構成を同一とする箇所には図面に同一符号を付して、その詳細な説明は省略することとする。なお、図4において図4(A)は圧電振動片の平面図であり、図4(B)は同図(A)における部分拡大図である。また、図5は、図4(A)におけるA−A断面を示す図である。
【0039】
本実施形態に係る圧電振動片10aは、第1の突起部40における先端部44の先端面46の幅を、駆動アーム24の側面に配された励振電極36の幅よりも狭くするために、先端部44に切欠き47を設けた点を特徴としている。このような構成とすることにより、外部衝撃が印加されたことにより駆動アーム24が屈曲し、駆動アーム24の側面が第1の突起部40の先端面46に接触した際、接触時の衝撃により接触部分に配された励振電極36が傷つけられたとしても、励振電極36の断線を防止することができることとなる。
【0040】
このような構成の圧電振動片10aを形成する場合、第1の突起部40における先端面46の幅の削り込み、すなわち切欠き47の形成は、検出アーム14や駆動アーム24に対する溝15,25の形成と同時に行うことが望ましい。切欠き47の形成を検出アーム14や駆動アーム24の溝15,25の形成と同時に行うことによれば、先端面46の幅を調整するための工程を増やす必要性が無くなるからである。なお、その他の構成、作用、効果については、上述した第1の実施形態に係る圧電振動片と同様である。
【0041】
次に、上記第1、第2の実施形態に係る圧電振動片における第1の突起部の応用形態について、図6〜図8を参照して説明する。
まず、第1の突起部の第1の応用形態について、図6を参照して説明する。本応用形態に係る第1の突起部40は、基端部42の一部に波状部43を形成している。このような構成とすることにより、支持アーム18、あるいは突出部20から先端部44までの距離を変えること無く、基端部を構成する部材の長さを長くすることができる。これにより、先端部44を逃がす方向に対する第1の突起部40の実質的な撓み量、撓み易さを増すことができる。よって、駆動アーム24が屈曲し、第1の突起部40の先端面46に接触した際の衝撃を逃がすことができる。すなわち、基端部42にいわゆるバネ性を持たせることができるのである。なお、基端部42の長さを単純に(ストレート構造で)長くして第1の突起部40の撓み量増加を図る場合、第1の突起部40自体が圧電振動片を構成するアームのような形態となってしまい、振動特性に影響を与えることとなってしまう可能性がある。
【0042】
次に、第1の突起部の第2の応用形態について、図7を参照して説明する。本応用形態に係る第1の突起部40も、その実質的な撓み量、撓み易さを向上させるという点では同じである。その構成は、基端部42におけるZ軸方向の面に溝41を形成するというものである。このような構成とした場合であっても、矩形断面を有していた基端部の断面二次モーメントは減少するため、基端部42の曲げ易さが増加する。よって、上記応用形態と同様に、駆動アーム24が屈曲し、第1の突起部40の先端面46に接触した際の衝撃を逃がすことができるようになる。
【0043】
なお、基端部42における溝41の形成は、駆動アーム24や、検出アーム14における溝25,15の形成と同時に行うようにすると良い。溝41を形成するための工程を別途設ける必要が無くなるからである。
【0044】
次に、第1の突起部の第3の応用形態について、図8を参照して説明する。本応用形態に係る第1の突起部40aは、上述した種々の第1の突起部40とは異なり、支持アーム18および突出部20から駆動アーム24へ向けて斜めに延設されるストレート構造の突起部である。このような形態の第1の突起部40aであっても、上述した種々の第1の突起部40と同様な効果を得ることができる。
【0045】
次に、第3の実施形態に係る圧電振動片について、図9を参照して説明する。なお、本実施形態に係る圧電振動片も、その殆どの構成を上述した第1の実施形態に係る圧電振動片と同様としている。よって、その構成を同一とする箇所には図面に同一符号を付して、その詳細な説明は省略することとする。
【0046】
本実施形態に係る圧電振動片10bでは、上記実施形態において支持アーム18に設けていた第1の突起部を、基部12から支持アーム18に沿って延設されたストレート構造の第1の突起部40bとした点を特徴としている。このような形態とした場合であっても、上述した実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0047】
次に、第4の実施形態に係る圧電振動片について、図10を参照して説明する。なお、本実施形態に係る圧電振動片も、その殆どの構成を上述した第1の実施形態に係る圧電振動片と同様としている。よって、その構成を同一とする箇所には図面に同一符号を付して、その詳細な説明は省略することとする。
【0048】
本実施形態に係る圧電振動片10cでは、基部12に、先端面を支持アーム18へ向けて延設された第2の突起部50を設けた点を特徴としている。このような構成により、外部衝撃等により支持アームが屈曲した場合であっても、その撓みを抑制することができ、支持アームが根元(基部12との接合部)から折れてしまうことを防止することができる。
【0049】
なお、第2の突起部50の先端面と支持アーム18との間には、支持アーム18の駆動変位以上で、支持アーム18が撓んだ際の弾性限界となる変位未満の隙間を設けるようにする。また、第2の突起部50の形態については、第1の突起部と同様に、基端部と先端部から成る構造としても良いし、図8に示したようにストレート構造としても良い。いずれの場合であっても、ストッパーとしての役割を果たすからである。
【0050】
このような構成の圧電振動片10cによれば、駆動アーム24の折れを防止することができる他、駆動アーム24を支える支持アームの折れも防止することが可能となる。なお、その他の構成、作用、効果については、上述した第1の実施形態に係る圧電振動片と同様である。
【0051】
次に、第5の実施形態に係る圧電振動片について、図11を参照して説明する。なお、本実施形態に係る圧電振動片も、その殆どの構成を上述した第1の実施形態に係る圧電振動片と同様としている。よって、その構成を同一とする箇所には図面に同一符号を付して、その詳細な説明は省略することとする。
【0052】
本実施形態に係る圧電振動片10dでは、基部12に、第2の突起部50に加え、第3の突起部60を設けた点を特徴としている。第3の突起部60は、先端面を検出アーム14へ向けた突起部であり、検出アーム14の折れ防止を図る。第3の突起部60の形態としては、上述した第2の突起部50と同様に、基端部と先端部から成るものでも良いし、ストレート構造のものでも良い。なお、第3の突起部60の先端面と検出アーム14との間には、検出アーム14の駆動変位以上で、検出アーム14が撓んだ際の弾性限界となる変位未満の隙間を設けるようにする。
【0053】
このような構成の圧電振動片10dによれば、駆動アーム24、支持アーム18の折れ防止に加え、検出アーム18の折れ防止も図ることができる。なお、その他の構成、作用、効果については、上述した第1の実施形態に係る圧電振動片と同様である。
【0054】
次に、本発明の物理量検出装置について図12を参照して説明する。本実施形態に係る物理量検出装置70は、上記それぞれの実施形態に係る圧電振動片10(10a〜10d)と支持基板80、IC94、パッケージ72、およびリッド90を基本として構成される。なお、図12はジャイロセンサーの側断面を示す図である。圧電振動片10は、角速度を検出する役割を担う。
【0055】
支持基板80は、詳細を後述するパッケージ72の底面74、あるいは段部76,78から圧電振動片10を浮かせた状態で支持する役割を担う。その構成としては図13に示すように、可撓性を有する導電性のワイヤ(インナーリード)86(86a〜86f)と、当該インナーリード86を被覆する絶縁性の樹脂フィルム82とより構成される。支持基板80の中心付近の樹脂フィルム82には開口部84が設けられ、インナーリード86が剥き出しにされている。開口部84に位置するインナーリード86は、圧電振動片10を浮かせた状態で支持するために、支持基板80の主面に対して圧電振動片10を配置する側へオフセットさせるように屈曲している。ここで、オフセットさせたインナーリード86の先端(一端)が、圧電振動片10の入出力電極(不図示)に接続される接続端子となる。また、各インナーリード86の他端は、詳細を後述するパッケージ72の段差部78に配された内部接続端子(不図示)と接続される接続端子となる。
【0056】
IC94は、上述した圧電振動片10の駆動アーム24a〜24dを制御すると共に、圧電振動片10の検出アーム14a,14bによって得られた信号を検出する役割等を担う集積回路である。なお、IC94は、パッケージ72の底面74に対して接着剤96等を介して搭載される。また、能動面に形成された接続パッド(不図示)とパッケージ72の段部76に配された内部接続端子(不図示)は、金属ワイヤ77を介して電気的に接続される。
【0057】
パッケージ72は、上述した圧電振動片10と支持基板80、及びIC94を収容する箱体である。パッケージ72の内側には、段部76,78、および底面74から構成される階段状のキャビティ99が形成されている。なお、構成部材としては絶縁性を有するセラミックス等とすると良い。
【0058】
パッケージ72の底面74、及び段部76,78には、上述した支持基板80やIC94を実装するための内部接続端子(不図示)が設けられている。また、パッケージ72の外部底面(裏面)には、外部接続端子(不図示)が設けられている。なお上述した内部接続端子と外部接続端子とは、図示しないスルーホール等により、電気的に接続されている。
【0059】
リッド90は、上述したパッケージ72の開口部を封止する蓋体である。一般的には構成部材として、パッケージ72と線膨張係数の近似する金属(合金:例えばコバール)やガラス(例えばソーダガラス)等が用いられる。パッケージ72とリッド90の接合に関しては接続部材92として、リッド90を金属とした場合にはコバール等の低融点金属が、リッド90をガラスとした場合には低融点ガラスが、それぞれ用いられる。
【0060】
上記のような構成要素を有する物理量検出装置70は、パッケージ72の底面74に接着剤96を塗布し、IC94を搭載する。IC94を搭載した後、金属ワイヤ77を介したワイヤボンディングを行い、パッケージ72の内部実装端子との電気的な接続を図る。
【0061】
次に、バンプ97を介して支持基板80のインナーリード86を圧電振動片10に接合する。圧電振動片10を接合した後、パッケージ72の段部78に設けた内部実装端子に導電性接着剤98を塗布し、支持基板80を実装する。このような構成とすることで、圧電振動片10はインナーリード86により弾性的に支持されることとなる。
【0062】
なお、支持基板80のインナーリード86に対する圧電振動片10の搭載方法は、バンプ97を介した超音波ボンディングの他、スポット溶接や導電性接着剤、ハンダ付け等であっても良い。また、支持基板のパッケージ段差部に対する実装も同様に、バンプを介した接合等であっても良い。
【0063】
支持基板80を実装した後、パッケージ72の開口部にリッド90を接合する。リッド90の接合は、シームリングを用いたシーム溶接や、低融点ガラスを用いた溶着により行えば良い。なおリッド90の接合は真空雰囲気中で行い、パッケージ72の内部空間を真空とする。圧電振動片10の励振を妨げないようにするためである。
【0064】
このような構成の物理量検出装置70によれば、圧電振動片10の駆動アーム24や支持アーム18、あるいは検出アーム14等が、衝撃等により折れることを防止することができる。よって、物理量検出装置70として信頼性の高いものとすることができる。
【符号の説明】
【0065】
10………圧電振動片、12………基部、14(14a,14b)………検出アーム、16(16a,16b)………錘、18(18a,18b)………支持アーム、20(20a,20b)………突出部、22(22a,22b)………交差部、24(24a〜24d)………駆動アーム、26(26a〜26d)………錘、30,32………検出電極、34,36………励振電極、40………第1の突起部、42(42a,42b)………基端部、44(44a,44b)………先端部、46………先端面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、前記基部を基準として反対方向へ延設された一対の検出アームと、前記基部を基準として前記検出アームと直交する方向へ延設された一対の支持アームと、延設された前記支持アームのそれぞれから、前記検出アームに平行に延設された対を成す駆動アームとを有する圧電振動片であって、
前記支持アームに、先端面を前記駆動アームへ向けて延設される第1の突起部を設け、
前記第1の突起部の前記先端面と前記駆動アームとの間には、前記駆動アームの振動変位以上で、前記駆動アームが屈曲した際の弾性限界となる変位未満の隙間を設けたことを特徴とする圧電振動片。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動片であって、
前記第1の突起部は、前記支持アームに接続された基端部と、前記基端部から前記駆動アームへ向けて延設される先端部から構成されることを特徴とする圧電振動片。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電振動片であって、
前記基端部には、可撓性を向上させる波状部を設けたことを特徴とする圧電振動片。
【請求項4】
請求項2に記載の圧電振動片であって、
前記基端部には、可撓性を向上させるための溝を設けたことを特徴とする圧電振動片。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の圧電振動片であって、
前記第1の突起部の先端面に、前記駆動アームを前記突起部に接触させた際の接触面に沿った傾斜角を持たせたことを特徴とする圧電振動片。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の圧電振動片であって、
前記第1の突起部の先端面の幅を、前記駆動アームにおける前記第1の突起部接触面に配された励振電極の幅よりも狭くしたことを特徴とする圧電振動片。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の圧電振動片であって、
前記基部に、前記先端面を前記支持アームへ向けて延設される第2の突起部を設け、
前記第2の突起部の前記先端面と前記支持アームとの間には、前記支持アームの駆動変位以上で、前記支持アームが撓んだ際の弾性限界となる変位未満の隙間を設けたことを特徴とする圧電振動片。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の圧電振動片であって、
前記基部に、前記先端面を前記検出アームへ向けて延設される第3の突起部を設け、
前記第3の突起部の前記先端面と前記検出アームとの間には、前記検出アームの駆動変位以上で、前記検出アームが撓んだ際の弾性限界となる変位未満の隙間を設けたことを特徴とする圧電振動片。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の圧電振動片を搭載したことを特徴とする物理量検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−169457(P2010−169457A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10546(P2009−10546)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】