説明

在床状態検出装置

【課題】 ベッド上の人体の位置や移動、姿勢を推定できる在床状態検出装置を提供すること。
【解決手段】 在床状態検出装置20は、ベッド10に配置され、ベッド10に与えられる振動のベッド10の長手方向に沿う成分とベッド10の床面に対して鉛直方向に沿う成分とを別々に検出する振動検出部30と、振動検出部30が検出した振動から前記ベッド10上に存在する生体の心拍に由来する心拍振動信号を抽出する信号抽出部40と、信号抽出部40が抽出した心拍振動信号に基づいてベッド10上の前記生体の姿勢を推定する状態推定部50と、を備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッド上の人の位置および姿勢を検出する在床状態検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベッド上の人の体動や寝返り、心臓の拍動や呼吸による体の細かな体動によって生じたベッド上を伝わる微小な振動を、ベッドの両サイドに内蔵された圧電素子を用いて検出し、センサ上に人体がなくても人体の位置や移動を知ることができる就寝装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2830661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の就寝装置では、人体の位置や移動を知ることはできるが、人の姿勢まで判定できるものではなく、人がベッド上に寝た姿勢であるか、座った姿勢であるかを知ることはできない。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、人体の位置および移動に加え、姿勢を推定できる在床状態検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の課題解決手段は、ベッドに配置され前記ベッドに与えられる振動の前記ベッドの長手方向に沿う成分と前記ベッドの床面に対して鉛直方向に沿う成分とを別々に検出する振動検出部と、前記振動検出部が検出した振動から前記ベッド上に存在する生体の心拍に由来する心拍振動信号を抽出する信号抽出部と、前記信号抽出部が抽出した前記心拍振動信号に基づいて前記ベッド上の前記生体の姿勢を推定する状態推定部と、を備えた在床状態検出装置である。
【0007】
本発明の第2の課題解決手段は、前記信号抽出部が抽出した前記心拍振動信号の強度および信号発生時刻の少なくともいずれか一方に基づいて前記ベッド上に存在する前記生体の位置を検出することである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、振動検出部はベッドに与えられる振動のベッドの長手方向に沿う成分とベッドの床面に対して鉛直方向に沿う成分とを別々に検出し、信号抽出部は振動検出部が検出した振動からベッド上に存在する生体(例えば人体)の心拍に由来する心拍振動信号を抽出する。そのため、状態推定部は、信号抽出部が抽出した心拍振動信号に基づき、ベッド上に存在する生体の位置および位置の径時変化を示す移動を推定できる。さらに、生体の心拍振動は胴体の縦方向(頭から足への方向)に沿う性質があるため、ベッドに与えられる振動のベッドの長手方向に沿う成分とベッドの床面に対して鉛直方向に沿う成分とを別々に検出することにより、ベッドの長手方向と床面に対して鉛直方向とのなす面に対して生体の胴体がどの角度にあるのかを検出できる。生体が寝ている状態か起きている状態かによって生体の胴体の角度が変化するため、生体の姿勢を推定できる。
【0009】
また、状態推定部は、心拍振動信号の強度および心拍振動信号の位相差から求められる信号発生時刻の少なくともいずれか一方に基づいて、ベッド上に存在する生体の位置をより高精度に推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例に係る在床状態検出装置を備えるベッドを示す斜視図である。
【図2】実施例に係る在床状態検出装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図3】ベッドの床面の領域を長手方向に二分割、横方向に三分割した説明図である。
【図4】第一状態推定例にて、実施例に係る振動検出部により検出された、ベッドの長手方向に沿った振動に対応する信号を示すグラフである。
【図5】第一状態推定例にて、実施例に係る振動検出部により検出された、ベッドの鉛直方向に沿った振動に対応する信号を示すグラフである。
【図6】荷重センサにより検出されたピーク値の和の大小関係と人の推定位置との関係を示す説明図である。
【図7】荷重センサにより検出されたピーク値の和の大小関係と人の推定位置との関係を示す説明図である。
【図8】荷重センサにより検出されたピーク値の和がほぼ等しいときの、ピーク値の和の大小関係と人の推定位置との関係を示す説明図である。
【図9】ベッドに人が寝た姿勢で存在する状態を示す説明図である。
【図10】第二状態推定例にて、実施例に係る振動検出部により検出された、ベッドの長手方向に沿った振動に対応する信号を示すグラフである。
【図11】第二状態推定例にて、実施例に係る振動検出部により検出された、ベッドの鉛直方向に沿った振動に対応する信号を示すグラフである。
【図12】ベッドに人が座った姿勢で存在している状態を示す説明図である。
【図13】報知手段を備えた在床状態検出装置を示すブロック図である。
【図14】荷重センサへの振動到達時刻のずれを利用した振動発生位置及び発生時刻の計算の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1は、実施例に係る在床状態検出装置20を備えるベッド10を示す斜視図である。在床状態検出装置20を備えるベッド10は、ベッドフレーム11と、ベッドフレーム11に載置されるマットレス12と、ベッドフレーム11を床に対して支持する四本の足13と、ベッドフレーム11の長手方向の片側に設けられるヘッドボード14とを備える。
【0013】
図2は、実施例に係る在床状態検出装置20のシステム構成を示すブロック図である。
【0014】
在床状態検出装置20は、ベッド10に配置され、配置された場所の振動の、ベッド10の長手方向(図1のY方向)に沿う成分と、ベッド10の床面に対して鉛直方向(図1のZ方向)に沿う成分とを別々に検出する複数の振動検出部30と、振動検出部30が検出した振動からベッド10上に存在する生体(特に人体、本実施例では人体の例を取って説明する)の心拍に由来する心拍振動信号を抽出する信号抽出部40と、信号抽出部40が抽出した心拍振動信号に基づいてベッド10上の生体の状態(位置、姿勢)を推定する状態推定部50と、状態推定部50により検出されたベッド上の人の状態(位置、姿勢)を表示する表示部60とを備える。
【0015】
振動検出部30としては、荷重センサ、加速度センサ、圧電素子、ロードセルなどを利用できる。本実施例では、荷重センサを用いた例を示す。荷重センサは、人がベッド10に仰向けに寝た状態で頭側(ヘッドボード14側)の右側から左側(図1のX方向)へ、第一荷重センサ31、第二荷重センサ32、第三荷重センサ33の順に、足側の右側から左側(図1のX方向)へ、第四荷重センサ34、第五荷重センサ35、第六荷重センサ36の順に、ベッド10のマットレス12の上面に配置されている。第一荷重センサ31〜第六荷重センサ36の各々は、少なくとも二本の検出軸を備える。第一検出軸は、ベッド10の長手方向(図1のY方向)に平行に配置され、第二検出軸は、ベッド10の床面に対して鉛直方向(図1のZ方向)に平行に配置される。
【0016】
第一荷重センサ31〜第六荷重センサ36は、ベッド10に配置され、配置された場所における振動を検出する。ベッド10の振動は、ベッド10上に存在する人の移動、呼吸、心拍などによって発生する。ベッド10上に存在する人により近い荷重センサでの信号がより強くなることを利用して、人の位置が検出される。人が移動する(寝返り、ベッド10への着席など)と、各荷重センサの信号は、人の体重による荷重を受けて変化する。人が呼吸をすると、息を吸って肺が膨らむ時にベッド10を押す力が生じ、息を吐くときにその力が緩むため荷重センサの信号が変化する。これらの信号から、ベッド10上の人の位置や状態(呼吸)を調べることができる。
【0017】
ベッド10上での人の移動、呼吸による振動の他、人の心臓の拍動により、心臓から血液が上方向(頭方向)へ拍出され、血液が拍出される際に反作用で下方向(足方向)に力を受けて心臓が人体の縦方向(頭から足への方向)に沿って振動し、この振動が人体を介してベッド10へ伝わるため、ベッド10に人体(特に胴体)の縦方向に沿った振動が生じる。人がベッド10の長手方向に沿って寝た姿勢である場合、心臓の拍動によってベッド10には主に長手方向(図1のY方向)の振動が伝わり、人がベッド10の上に座った姿勢である場合、ベッド10には主に鉛直方向(図1のZ方向)の振動が伝わる。よって、ベッド10に伝わる心拍振動の方向を調べることで、ベッド10上の人の姿勢を調べることができる。
【0018】
信号抽出部40はバンドパスフィルタによって構成される。バンドパスフィルタは、第一荷重センサ31〜第六荷重センサ36が検出した信号から、人の心拍に対応する所定の周波数帯の振動を抽出する。
【0019】
状態推定部50は、電子回路、マイクロプロセッサ、コンピュータ等により構成され、後述の動作を行うプログラムを備えている。
【0020】
実施例に係る在床状態検出装置20を備えるベッド10の動作を図面を参照して説明する。
【0021】
図3は、ベッド10の床面の領域を長手方向に二分割、横方向に三分割した説明図である。状態推定部50は、ベッド10の横方向(図1のX方向)に区切られた三つの領域a,b,cと、ベッド10の長手方向(図1のY方向)に区切られた二つの領域d,eのどの領域に人がいるかを推定する。領域a,b,cのいずれかと領域d,eのいずれかとの組合せにより、六分割されたベッド10の床面の領域のいずれかが特定される。
【0022】
図4は、第一状態推定例にて、実施例に係る振動検出部30により検出された、ベッド10の長手方向に沿った振動に対応する信号を示すグラフである。図5は、第一状態推定例にて、実施例に係る振動検出部30により検出された、ベッド10の鉛直方向に沿った振動に対応する信号を示すグラフである。
【0023】
状態推定部50は、第一荷重センサ31〜第六荷重センサ36により検出されたベッド10の長手方向に沿った心拍振動信号(強度)のピーク値の平均値((P31+P32+P33+P34+P35+P36)/6、各ピーク値はY方向の値)と、ベッド10の鉛直方向に沿った心拍振動信号のピーク値の平均値((P31+P32+P33+P34+P35+P36)/6、各ピーク値はZ方向の値)とを比較し、平均値が他方の平均値よりも大きい方向に沿って、ベッド10に振動が生じていると推定する。上記のように、心拍振動は人体の縦方向に沿って振動するので、ベッド10の長手方向に沿って振動が生じていると推定された場合、ベッド10上の人はベッド10の長手方向に沿って寝ている姿勢であると推定され、ベッド10の鉛直方向に沿って振動が生じていると推定された場合、ベッド10上の人はベッド10上に座った姿勢であると推定される。
【0024】
なお、心拍振動の方向を推定するため、上記では第一荷重センサ31〜第六荷重センサ36により検出されたベッド10の長手方向に沿った心拍振動信号のピーク値の平均値およびベッド10の鉛直方向に沿った心拍振動信号のピーク値の平均値を用いたが、これらの平均値を心拍複数回分の移動平均値としてもよい。
【0025】
状態推定部50は、第一荷重センサ31〜第六荷重センサ36のピーク値を比較して、ベッド上の人の存在位置を推定する。このとき、ベッド10の長手方向に沿って振動が生じていると推定された場合はベッド10の長手方向に沿った振動のピーク値を、ベッド10の鉛直方向に沿って振動が生じていると推定された場合はベッド10の鉛直方向に沿った振動のピーク値を用いて推定する。
【0026】
状態推定部50は、第一荷重センサ31のピーク値P31と第四荷重センサ34のピーク値P34の和Saと、第二荷重センサ32のピーク値P32と第五荷重センサ35のピーク値P35の和Sbとを比較する。次に、第二荷重センサ32のピーク値P32と第五荷重センサ35のピーク値P35の和Sbと、第三荷重センサ33のピーク値P33と第六荷重センサ36のピーク値P36の和Scとを比較する。この比較結果から、和Sa、和Sbおよび和Scの大小関係を求める。
【0027】
図6、図7は、第一荷重センサ31〜第六荷重センサ36により検出されたピーク値の和の大小関係と人の推定位置との関係を示す説明図である。図6のように、Sa>Sb>Sc、Sa>Sb=Scならば領域aに、Sa<Sb>Sc、Sa=Sb=Scならば領域bに、Sa<Sb<Sc、Sa=Sb<Scならば領域cに人がいると推定する。図7のように、Sa=Sb>Scならば領域aと領域bの境界付近に、Sa<Sb=Scならば領域bと領域cの境界付近に人が存在していると推定する。
【0028】
図8は、第一荷重センサ31〜第六荷重センサ36により検出されたピーク値の和がほぼ等しいときの、ピークの和の大小関係と人の推定位置との関係を示す説明図である。ピーク値同士が等しいかどうかを比較する際には、和同士の比が所定の範囲以内(例えば、90%〜110%)になるかどうかを調べ、所定の範囲以内になるときはほぼ等しい(≒)としてもよい。この場合、上記SaとSb、SbとScとの比較に加えて、第一荷重センサ31のピーク値P31と第四荷重センサ34のピーク値P34の和Saと、第三荷重センサ33のピーク値P33と第六荷重センサ36のピーク値P36の和Scとをさらに比較する。Sa≒Sb、Sb≒ScおよびSa>Scの全てを満たすときは領域aに、Sa≒Sb、Sb≒ScおよびSa≒Scの全てを満たすときは領域bに、Sa≒Sb、Sb≒ScおよびSa<Scを全て満たすときは領域cに人が存在していると推定する。
【0029】
状態推定部50は、第一荷重センサ31のピーク値P31、第二荷重センサ32のピーク値P32および第三荷重センサ33のピーク値P33の和Sdと、第四荷重センサ34のピーク値P34、第五荷重センサ35のピーク値P35および第六荷重センサ36のピーク値P36の和Seとを比較する。この比較結果から、和Sdと和Seの大小関係を求める。
【0030】
状態推定部50は、Sd>Seならば領域dに、Sd<Seならば領域eに、Sd=Se(またはSd≒Se)ならば領域dと領域eの境界付近に人が存在していると推定する。
【0031】
実施例に係る在床状態検出装置20によるベッド上の人の第一状態推定例を図面を参照して説明する。
【0032】
ベッド10上に配置された第一荷重センサ31〜第六荷重センサ36により検出された信号から、信号抽出部40により心拍振動信号を抽出した結果、ベッド10の長手方向(図1のY方向)については図4、ベッド10の鉛直方向(図1のZ方向)については図5となった。状態推定部50は上述のように、第一荷重センサ31〜第六荷重センサ36により検出したベッド10の長手方向に沿った心拍振動信号のピーク値の平均値((P31+P32+P33+P34+P35+P36)/6、各ピーク値はY方向の値)と、ベッド10の鉛直方向に沿った心拍振動信号のピーク値の平均値((P31+P32+P33+P34+P35+P36)/6、各ピーク値はZ方向の値)とを比較する。その結果、ベッド10の長手方向に沿った心拍振動信号のピーク値の平均値が、ベッド10の鉛直方向に沿った心拍振動信号のピーク値の平均値より大きいため、状態推定部50は、ベッド10に伝わる心拍振動はベッド10の長手方向に沿っていると推定し、人はベッド10上に寝ている姿勢であると推定する。
【0033】
次に、状態推定部50は上述のように、ベッド10の長手方向に沿った心拍振動信号を検出した第一荷重センサ31のピーク値P31と第四荷重センサ34のピーク値P34との和Sa、第二荷重センサ32のピーク値P32と第五荷重センサ35のピーク値P35との和Sb、第三荷重センサ33のピーク値P33と第六荷重センサ36のピーク値P36との和Scを求め、それぞれを比較する。その結果、Sa<SbかつSb>Scとなるため、状態推定部50は、人が領域bに存在していると推定する。
【0034】
次に、状態推定部50は上述のように、ベッド10の長手方向に沿った心拍振動信号を検出した第一荷重センサ31のピーク値P31、第二荷重センサ32のピーク値P32および第三荷重センサ33のピーク値P33の和Sdと、第四荷重センサ34のピーク値P34、第五荷重センサ35のピーク値P35および第六荷重センサ36のピーク値P36の和Seを求め、両者を比較する。その結果、Sd≒Seとなるため、状態推定部50は、人が領域dと領域eの境界付近に存在していると推定する。
【0035】
図9は、ベッド10に人が寝た姿勢で存在している状態を示す説明図である。人がベッド10に寝た姿勢であり、領域b内、かつ領域dと領域eの境界付近に存在することから、状態推定部50は、図9に示すような人の存在位置および姿勢を推定する。状態推定部50により推定された人の存在位置および姿勢は、表示部60により表示される。
【0036】
実施例に係る在床状態検出装置20によるベッド10上の人の第二状態検出例を図面を参照して説明する。
【0037】
図10は、第二状態推定例にて、実施例に係る振動検出部30により検出された、ベッド10の長手方向(図1のY方向)に沿った振動に対応する信号を示すグラフである。図11は、第二状態推定例にて、実施例に係る振動検出部30により検出された、ベッド10の鉛直方向(図1のZ方向)に沿った振動に対応する信号を示すグラフである。
【0038】
ベッド10上に配置された第一荷重センサ31〜第六荷重センサ36により検出された信号から、信号抽出部40により心拍振動信号を抽出した結果、ベッド10の長手方向については図10、ベッド10の鉛直方向については図11のグラフが得られた。状態推定部50は上述のように、第一荷重センサ31〜第六荷重センサ36により検出されたベッド10の長手方向に沿った心拍振動信号のピーク値の平均値((P31+P32+P33+P34+P35+P36)/6、各ピーク値はY方向の値)と、ベッド10の鉛直方向に沿った心拍振動信号のピーク値の平均値((P31+P32+P33+P34+P35+P36)/6、各ピーク値はZ方向の値)とを比較する。その結果、ベッド10の鉛直方向に沿った心拍振動信号のピーク値の平均値が、ベッド10の長手方向に沿った心拍振動信号のピーク値の平均値より大きいため、状態推定部50は、ベッド10に伝わる心拍振動はベッド10の鉛直方向に沿っていると推定し、人はベッド10上に座った姿勢であると推定する。
【0039】
次に、状態推定部50は上述のように、ベッド10の長手方向に沿った心拍振動信号を検出した第一荷重センサ31のピーク値P31と第四荷重センサ34のピーク値P34との和Sa、第二荷重センサ32のピーク値P32と第五荷重センサ35のピーク値P35との和Sb、第三荷重センサ33のピーク値P33と第六荷重センサ36のピーク値P36との和Scを求め、それぞれを比較する。その結果、Sa>SbかつSb>Scとなるので、状態推定部50は、人が領域aに存在していると推定する。
【0040】
次に、状態推定部50は上述のように、ベッド10の長手方向に沿った心拍振動信号を検出した第一荷重センサ31のピーク値P31、第二荷重センサ32のピーク値P32および第三荷重センサ33のピーク値P33との和Sdと、第四荷重センサ34のピーク値P34、第五荷重センサ35のピーク値P35および第六荷重センサ36のピーク値P36との和Seを求め、両者を比較する。その結果、Sd<Seとなるので、状態推定部50は、人が領域eに存在していると推定する。
【0041】
図12は、ベッド10に人が座った姿勢で存在している状態を示す説明図である。人がベッド10に座った姿勢であり、領域aかつ領域eに存在することから、状態推定部50は、図12に示すような人の存在位置および姿勢を推定する。状態推定部50により推定された人の存在位置および姿勢は、表示部60により表示される。
【0042】
上記のように、実施例に係る在床状態検出装置20によれば、生体(特に人体)の位置及び姿勢を検出できる。特に、人がベッドの端に座った姿勢になったことを検出できるため、人がベッドの端に座った姿勢から立ち上がる際の安全性の向上に寄与することができる。
【0043】
図13は、報知手段70を備えた在床状態検出装置20を示すブロック図である。上記実施例の構成に加え、所定の姿勢が検出された際に報知する報知手段70を設け、例えば人がベッドの端に座った姿勢になったことを検出して報知し、その報知を受けた介助者等がその人のところへ介助に向かえるような構成にしてもよい。
【0044】
なお、上記実施例では荷重センサを六つ設けたが、荷重センサは少なくとも三つ設けられることで振動源の位置を推定できる。
【0045】
また、上記実施例では荷重センサはベッド10のマットレス12の上面に設けられたが、それに限らず、マットレス12の中、マットレス12の下面、ベッドフレーム11の上面、ベッドフレーム11に設けられた足13の下面、ベッドフレーム11の裏面に設けられても良い。荷重センサがベッド10のマットレス12の上面に配置される場合、荷重センサへ伝わる振動が大きくなる利点があるが、ベッド10上に寝る人に違和感を与えるおそれがある。荷重センサがマットレス12の中に配置される場合、人に違和感を与えない利点があるが、配置が難しく、後付けが難しいおそれがある。荷重センサがマットレス12の下面に配置される場合、ベッド10上の人に違和感を与えない利点があるが、荷重センサへ伝わる振動がマットレス12の上面に設けた場合と比較すると小さくなるおそれがある。荷重センサがベッドフレーム11の上面、ベッドフレーム11の裏面に配置される場合、ベッド10上の人に違和感を与えない、後付けが容易であるという利点があるが、荷重センサへ伝わる振動がマットレス12の上面に設けた場合と比較すると小さくなる、通気用の穴が設けられたベッドフレームや網状のベッドフレームへの設置が困難であるなどの不利な点がある。荷重センサがベッドフレーム11に設けられた足13の下面に配置される場合、足のついたあらゆるベッドに後付けでき、ベッド上に寝る人に違和感を与えない利点があるが、ベッド上の人の姿勢を検出できても位置を検出することが難しくなるおそれがある。本実施例の在床状態検出装置20の配置場所は任意であり、上記利点と不利点とを考慮して状況に応じ適した配置場所を選択することができる。
【0046】
なお、上記実施例では、状態推定部50は、荷重センサの信号のピーク値を用いて位置を検出したが、その代わりに、またはそれに加えて、少なくとも三箇所に配置された各荷重センサへの振動到達時刻のずれ(位相差)から、心拍振動の振動源の位置を求めてもよい。この方法では、心拍振動は心拍振動の振動源からベッド10上を等速度Vで伝搬する(剛体上での振動の伝搬を仮定)ため荷重センサまでの距離が長いほど遅れて荷重センサに到達することを利用する。この方法でも、状態推定部50は、ベッド10上の人の存在位置を推定できる。
【0047】
図14は、荷重センサへの振動到達時刻のずれを利用した振動発生位置及び発生時刻の計算の説明図である。三箇所に配置された荷重センサへの振動到達時刻のずれを利用して、振動源位置と振動発生時刻を求めるには、次のようにする。第一荷重センサが位置座標(x1,y1)に、第二荷重センサが位置座標(x2,y2)に、第三荷重センサが位置座標(x3,y3)に配置され、それぞれ時刻t1、t2、t3に振動を検出したとする。心拍振動発生時刻をt0、振動源位置を(x0,y0)と仮定すると、第一荷重センサから心拍振動の振動源までの距離d1、第二荷重センサから心拍振動の振動源までの距離d2、第三荷重センサから心拍振動の振動源までの距離d3は、次式で与えられる。これら三つの連立方程式から、三つの未知変数x0,y0,t0を求めることができる。
【数1】

【数2】

【数3】

【0048】
これにより、状態推定部50は、心拍振動信号の強度および心拍振動信号の位相差から求められる信号発生時刻の少なくともいずれか一方に基づいて、ベッド10上に存在する生体の位置をより高精度に推定できる。
【符号の説明】
【0049】
10 ベッド
20 在床状態検出装置
30 振動検出部
40 信号抽出部
50 状態推定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドに配置され、前記ベッドに与えられる振動の前記ベッドの長手方向に沿う成分と前記ベッドの床面に対して鉛直方向に沿う成分とを別々に検出する振動検出部と、
前記振動検出部が検出した振動から前記ベッド上に存在する生体の心拍に由来する心拍振動信号を抽出する信号抽出部と、
前記信号抽出部が抽出した前記心拍振動信号に基づいて前記ベッド上の前記生体の姿勢を推定する状態推定部と、を備えることを特徴とする在床状態検出装置。
【請求項2】
前記状態推定部は、前記信号抽出部が抽出した前記心拍振動信号の強度および信号発生時刻の少なくともいずれか一方に基づいて前記ベッド上に存在する前記生体の位置を検出することを特徴とする請求項1に記載の在床状態検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−120667(P2011−120667A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279139(P2009−279139)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】