説明

在庫推移処理方法、在庫推移処理プログラム、および、在庫推移処理装置

【課題】在庫推移を提示することにより、異常在庫となる商品の早期発見を効率的に支援すること。
【解決手段】在庫推移処理装置1は、グラフ作成部21、グラフ表示部22を有し、グラフ作成部21が、入力された在庫データと、サムネイルの表示範囲を規定する表示設定定義データ65とを記憶装置13から読み取り、在庫データの各成分がサムネイルの横範囲に収まるようにし、かつ、在庫データの各グラフの高さがサムネイルの縦範囲に収まるように、各グラフの高さの数値を所定数で除算することで各サムネイルを作成し、作成した各サムネイルを画像形式に変換し、グラフ表示部22が、画像形式の各サムネイルを表示画面に並べて表示することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、在庫推移処理方法、在庫推移処理プログラム、および、在庫推移処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製造、物流、小売業では、扱う商品の在庫管理が行われる。在庫管理では、長期滞留在庫の発生、欠品の発生など在庫の異常を早期に検知し、対策することが重要である。
【0003】
特許文献1には、経営指標の一つとして在庫回転率を表示する旨が記述されている。在庫回転率は在庫管理の指標として用いられ、回転率が低いと在庫の動きが小さく長期滞留在庫の発生の可能性を示す。
【0004】
特許文献2には、在庫日数などの在庫に関わる数値を集計して表示する旨が記述されている。特許文献2の図13には、グラフによる集計値の表示例が示されている。
【特許文献1】特開2005−292878号公報
【特許文献2】特開2007−213519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
商品の在庫推移を表示することは、どの商品の在庫が異常であるかを目で判断し、異常である商品はその在庫を減らすように生産計画を見直し、販売のてこ入れや中止などの意思決定を行う上で、有効である。しかし、従来の在庫管理における在庫データの表示では、在庫の異常を発見するためにいくつもの画面を参照し、多くの操作を必要とするため、発見効率がよくなかった。
【0006】
特許文献1の方式では、在庫回転率という1つの尺度のみで在庫の善し悪しを判断せざるを得ない。よって、保守部品や趣味性の高い商品など、年に数回しか売れないような品物の場合、在庫回転率が低いのは当然であり、このような正常なものまで一見では異常に見えてしまう。
【0007】
特許文献2の方式では、1品目ずつ在庫推移を表示するため、一人の担当者が管理する在庫の品目数(数百から数千)を全てのチェックし、在庫異常のある品目を見つけ出すまでに長時間を要する。
【0008】
そこで、本発明は、前記した問題を解決し、在庫推移を提示することにより、異常在庫となる商品の早期発見を効率的に支援することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、商品の在庫に関する数量または金額を時系列で示す在庫データを、表示装置の表示画面にサムネイルとして表示する在庫推移処理装置であって、
前記在庫推移処理装置が、グラフ作成部、グラフ表示部を有し、
前記グラフ作成部が、
入力された前記在庫データと、サムネイルの表示範囲を規定する表示設定定義データとを記憶装置から読み取り、
前記在庫データの全期間がサムネイルの横範囲に収まるように、1つ以上の隣接する前記在庫データの総和を前記在庫データの1つのグラフの高さとして計算し、かつ、前記在庫データの各グラフの高さがサムネイルの縦範囲に収まるように、各グラフの高さの数値を所定数で除算することで、各サムネイルを作成し、
前記作成した各サムネイルを画像形式に変換し、
前記グラフ表示部が、
前記画像形式の各サムネイルを前記表示画面に並べて、サムネイルリストとして表示することを特徴とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、在庫推移を提示することにより、異常在庫となる商品の早期発見を効率的に支援することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明が適用される在庫推移処理装置の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、在庫推移処理装置を示す構成図である。在庫推移処理装置1は、プロセッサ11と、主記憶装置12と、外部記憶装置13と、入出力部14と、表示装置15と、を有する。
プロセッサ11は、CPU(Central Processing Unit)により構成される。
主記憶装置12は、プロセッサ11に読み取られ、実行される処理部として、グラフ作成部21、グラフ表示部22、グラフソート部23、グラフ変形部24、および、グラフ絞り込み部25を格納する。これらの各処理部の詳細は、後記する説明で明らかにする。
外部記憶装置13は、画像ファイル80を格納する。この画像ファイル80は、在庫推移を示すグラフを表示するためのファイルである。
入出力部14は、在庫推移処理装置1の外部との入出力を実行するための構成要素であり、例えば、入力手段としてのキーボードやマウス、出力手段としてのスピーカなどにより構成される。
表示装置15は、表示画面30を表示する。
【0013】
また、図1の在庫推移処理装置1は、入力ファイル50と、定義ファイル60と、表示用ファイル70とを、外部記憶装置13内に記憶する。
【0014】
【表1】

【0015】
表1に示す入力ファイル50は、在庫に関するデータであり、在庫推移処理装置1への入力を受け付けるデータである。この入力ファイル50は、入出力部14を介してユーザから入力を受け付けてもよいし、SCM(Supply Chain Management)システムなどの他システムから入力を受け付けてもよい。入力ファイル50は、在庫数量入力データ51、在庫金額入力データ52、および、商品粗利入力データ53により構成される。
在庫数量入力データ51は、在庫の数量に着目したデータであり、ある品番のある年月日について、生産実績数、在庫実績数、販売実績数、生産計画数、在庫計画数、および、販売計画数を関連づけるデータである。
在庫金額入力データ52は、在庫の金額に着目したデータであり、ある品番のある年月日について、生産実績金額、在庫実績金額、販売実績金額、生産計画金額、在庫計画金額、および、販売計画金額を関連づけるデータである。
商品粗利入力データ53は、品番ごとの粗利金額を示すデータである。
【0016】
【表2】

【表3】

【0017】
表2、表3に示す定義ファイル60は、管理者などにより入力されるデータであり、商品名定義テーブル61、事業定義テーブル62、商品カテゴリ定義テーブル63、商品ブランド定義テーブル64、および、表示設定定義データ65により構成される。
商品名定義テーブル61は、品番ごとにその品番に対応する品名を示す。
事業定義テーブル62は、事業グループごとに、その事業グループが扱う商品の属するカテゴリを、それぞれのコードにより示す。
商品カテゴリ定義テーブル63は、商品(品番)と、その商品が属するカテゴリ(カテゴリコード)との関係を示す。
商品ブランド定義テーブル64は、商品(品番)と、その商品が属するブランド(ブランドコード)との関係を示す。
表示設定定義データ65は、表示画面30への表示処理に必要な定義を示す。これらの定義は、表示画面30を表示するモニタの大きさや、表示処理に関するグラフィックの解像度などにより規定される。
【0018】
【表4】

【0019】
表4に示す表示用ファイル70は、在庫推移を時系列に示すグラフを表示するためのデータである。このグラフの横軸(X軸)は1〜Wの範囲で、縦軸(Y軸)は0〜Hの範囲であり、数値の単位はピクセルである。
【0020】
表示用ファイル70のうち、商品別グラフデータ73は、在庫数量入力データ51における商品の品番ごとの在庫実績数を表示画面30内に収まるように正規化したデータである。例えば、品番「I001」の高さ1「68」という値は、(X,Y)=(1,68)にグラフが描画される旨を示す。まず、描画されるグラフが折れ線グラフの場合には、その折れ線が交点(1,68)を通過する。一方、描画されるグラフが棒グラフの場合には、X=1の位置に、高さが68の棒グラフが表示される。
表示用ファイル70のうち、他のグラフデータ(事業別グラフデータ71、カテゴリ別グラフデータ72、ブランド別グラフデータ74)は、商品別グラフデータ73で示される各商品の品番について、1つの着目する要素が属する全ての品番についてのグラフデータの高さの総和を取って、表示画面30内に収まるように正規化したデータである。
【0021】
例えば、事業別グラフデータ71は、事業グループごとに、その事業グループが扱う全商品の在庫について、日時ごとの総和を取って、正規化したデータである。同様に、カテゴリ別グラフデータ72は、商品のカテゴリごとの時系列の在庫データであり、ブランド別グラフデータ74は、商品のブランドごとの時系列の在庫データである。
【0022】
ここで、表示用ファイル70に記載されたグラフ値の解釈の一例を説明する。事業別グラフデータ71を読み取り、高さ1が1月1日の時刻に対応するときに、事業グループ「JGR001」の在庫量は「80」であるのに対し、事業グループ「JGR002」の在庫量は「40」である。よって、1月1日の時点では、事業グループ「JGR001」は、事業グループ「JGR002」よりも多くの在庫を抱えている。
【0023】
一方、高さWが3月31日の時刻に対応するときに、事業グループ「JGR001」の在庫量は「20」であるのに対し、事業グループ「JGR002」の在庫量は「50」である。よって、3月31日の時点では、事業グループ「JGR001」は、事業グループ「JGR002」よりも少ない在庫を抱えている。
【0024】
【表5】

【0025】
表5は、商品別グラフデータ73の正規化処理を示す。商品別グラフデータ73は、以下のようにして作成される。
まず、在庫数量入力データ51(在庫金額入力データ52でもよい)から年月日ごとの在庫実績量(在庫実績金額でもよい)を抽出する。
次に、3日分の在庫実績量を合計して、1つのグラフの高さにグルーピングする。この3日分というのは、在庫実績量の抽出した期間(360日分)÷1サムネイルの横ピクセル数(W)である120で計算される。
そして、グラフの高さの値(正規化前)に所定乗数をかけることで、グラフの高さの値(正規化後)に正規化する。所定乗数は、「1サムネイルの縦ピクセル数(H)」90÷「グラフの高さの値(正規化前)の最大値」である。
【0026】
なお、正規の差異の除算(÷)において、割り切れない場合には、小数点以下を四捨五入してもよい。別の方法としては、商が整数になるように、割られる数(分母)を構成する値に所定数を乗算することとしてもよい。例えば、3日分の在庫実績量を合計した値が割られる数であるときに、両端の値(1日目と3日目)にそれぞれ所定数(0.2など)をかけることにより、商が整数になるように丸める。
【0027】
図2は、在庫推移の表示処理を示すフローチャートである。当該表示処理を開始する前提として、入力ファイル50と、定義ファイル60と、表示用ファイル70とが、外部記憶装置13内に記憶されているものとする。
【0028】
まず、グラフ作成部21は、入力ファイル50を読み込み、定義ファイル60に基づいて、表示用ファイル70を作成する(S11)。そして、グラフ作成部21は、グラフ作成コントロールなどを介して、S11で作成した表示用ファイル70を画像ファイル80に形式変換する(S12)。グラフ表示部22は、S12で変換した画像ファイル80をサムネイルリスト31(図3)として表示画面30に表示する(S13)。
【0029】
ここで、在庫推移処理装置1は、入出力部14を介して、サムネイルリスト31に表示されている各サムネイルから、在庫が悪化した商品に対応するサムネイルの発見を支援するための指示操作を受け付ける。
【0030】
グラフソート指示を受け付けると(S21,Yes)、グラフソート部23は、サムネイルリスト31に表示されている各サムネイルのグラフ内容は変更せず、サムネイル単位での順序の整列(ソート)を実行する(S22)。S22でソートされたサムネイルリスト31は、S13に戻って表示画面30上に表示される。
【0031】
グラフ変形指示を受け付けると(S23,Yes)、そのグラフ変形指示が「特徴点抽出」のときにはS24へ、そのグラフ変形指示が「平滑化」のときにはS25へ、それぞれ進む。S24またはS25で変形されたサムネイルリスト31は、S13に戻って表示画面30上に表示される。
まず、「特徴点抽出」が指示されたときには、グラフ変形部24は、サムネイルリスト31に表示されている各サムネイルのグラフから特徴点を抽出して(S24)、各サムネイルのグラフ内容を更新する。
一方、「グラフの平滑化」が指示されたときには、グラフ変形部24は、サムネイルリスト31に表示されている各サムネイルのグラフについて平滑化処理を実行し(S25)、各サムネイルのグラフ内容を更新する。
【0032】
グラフ絞り込み指示を受け付けると(S26,Yes)、サムネイルリスト31に表示されているサムネイルから選択された1つのサムネイルに関する詳細なサムネイルリスト31に更新する(S27)。S27で更新された詳細なサムネイルリスト31は、S13に戻って表示画面30上に表示される。
【0033】
グラフ詳細表示を受け付けると(S28,Yes)、グラフ表示部22は、サムネイルリスト31から選択されたサムネイルに関する在庫推移グラフ32(図8)を表示する(S29)。そして、在庫推移処理装置1は、処理をS13に戻す。なお、S13の表示状態で終了指示(例えば、ウィンドウ右上の×アイコンのクリック)を受け付けた場合は、在庫推移の表示処理(図2)は、終了する。
【0034】
以上、図2の処理を説明した。サムネイルリスト31の表示処理(S13)は、指示(S21〜S29)を受け付ける度に繰り返し実行されるが、サムネイルリスト31を構成する画像ファイル80の作成処理(S11,S12)は、1回だけで済む。これにより、計算機資源の節約および処理時間の短縮が可能になるので、サムネイルリスト31の表示内容を適宜変更しつつ、異常な在庫を示すサムネイルを発見することが容易になる。さらに、画像ファイル80は、他のアプリケーションでも利用可能なため、応用範囲が広い。
【0035】
図3は、在庫推移を示すサムネイル画像を示す画面図である。図3(a)は、1つのサムネイルを示し、図3(b)は、複数のサムネイルが縦横に並べて表示されるサムネイルリスト31を示す。
【0036】
図3(a)のサムネイルは、グラフ説明欄、および、グラフ表示欄を1つにまとめて表示する。グラフ説明欄には、グラフ表示欄に表示されている在庫推移の時系列グラフを説明するための情報が、表示される。例えば、図3(a)のサムネイルは、品名が「商品い」でその品番が「I001」である1つの商品についての在庫推移の時系列グラフを示す。
【0037】
図3(b)のサムネイルリスト31は、図2のS13において表示画面30上に表示される。サムネイルリスト31は、サムネイルを互いに重ならないように並べて表示する。サムネイルの数が表示画面30内に収まらないほど多い場合には、表示する一部のサムネイル群を切り替えるためのスクロールバーが、併せて表示される。
【0038】
図4は、サムネイルのソート処理を示す説明図である。図4左側がソート前を示し、図4右側がソート後を示す。
【0039】
サムネイルリスト31の上には、「在庫指標値ソート」というタイトルでくくられているグラフソート指示(S21)の受付欄が表示されている。受付欄には、ソート前の暫定的な順番を決める情報としての品番に加え、ソート時に参照される各在庫指標値(在庫回転率、在庫回転期間、交叉比率)が、それぞれのラジオボタンの右に表示されている。
【0040】
例えば、グラフソート指示(S21)として、「在庫回転率」が選択されたとする。グラフソート部23は、サムネイルリスト31の各サムネイルに対応する商品について、各商品の「在庫回転率」を計算し、その結果をもとに各サムネイルの順序を決定する。例えば、「在庫回転率」は、数値が少ないほど在庫が停滞していて、望ましくない状態を示すパラメータなので、「在庫回転率」の値が小さいものほど先に(上に)表示されるように順序を決定する。
【0041】
グラフソート部23は、例えば、以下に例示する在庫指標値を、品目ごとに計算する。
・在庫回転率は、「販売実績金額の合計値÷在庫実績金額の平均値」により計算する。計算した在庫回転率が低いほど、異常在庫の可能性が高くなる。
・在庫回転期間(日単位)は、在庫データが365日分存在するときには「365÷在庫回転率」で計算する。在庫回転期間(月単位)は、「12÷在庫回転率」で計算する。それぞれの在庫回転期間が長いほど異常在庫の可能性が高くなる。
・交差比率は、「在庫回転率×粗利益率」または「粗利益÷在庫実績金額の平均値」で計算する。交差比率が低いほど異常在庫の可能性が高くなる。
【0042】
図5は、サムネイルのグラフ表示欄のグラフに対する変形処理を示す説明図である。図5(a)は、グラフの特徴点抽出処理(S24)を示し、図5(b)は、グラフの平滑化処理(S25)を示す図である。
【0043】
図5(a)では、特徴点として、在庫量が増大する直前(在庫の谷間日)の点が選択されている。この特徴点は、在庫が増えた日の前日、または、生産のあった日の前日における在庫量である。そして、選択された特徴点を抽出し、その選択点間をスプライン補間などで接続することにより、グラフを変形する。
【0044】
図5(b)では、スライダ欄にスライドバーと、そのスライドバーのアイコンの横位置によって決定されるスライド幅が表示されている。このスライドバーを右にスライドすると、スライド幅が連動して増加する。スライド幅は、平滑化処理を実現するための移動平均演算におけるグラフ値の個数に対応する。1つのグラフ値は、そのグラフ値に加え、隣接する複数のグラフ値を参照して更新される。よって、スライド幅は、1つのグラフ値が更新されるために参照される更新前のグラフ値の個数である。スライド幅を増加させるほど、1つのグラフ値がグラフに与える影響が弱まるため、平滑化の度合いが高まる。
【0045】
【表6】

【0046】
表6は、移動平均演算の一例を示す。
例えば、1月8日の在庫実績量(平滑化後)は、スライド幅が示す3日分(1月7,8,9日)の在庫実績量(平滑化前)の平均値((1000+800+600)÷3=800)として計算される。
【0047】
なお、境界値(1月7日、1月15日)の計算は、例えば、次のように行う。1月7日の在庫実績量(平滑化後)の計算には、3日分(1月6,7,8日)の在庫実績量(平滑化前)が必要だが、1月6日の在庫実績量(平滑化前)は入手できない。そこで、隣接する1月7日の在庫実績量(平滑化前)を、1月6日のものと同じとみなして、計算する。つまり、1月7日の在庫実績量(平滑化後)は、平均値((1000+1000+800)÷3=933)として計算される。
【0048】
以上説明した図5(a)または図5(b)の処理により、グラフから微小変化を示すギザギザの成分が見えなくなり、グラフの大まかな傾向を示す線が見やすくなる。そして、変形後のグラフの任意の時刻における線の傾きを参照し、傾きが正(右上がりのグラフ)なら、在庫が異常であると判断できる。また、線の傾きを理解しやすくするため、任意の時点での傾きが正なら赤色、負なら青色などの色を変えてグラフの線を表示することにより、在庫の異常を視覚的に発見しやすくしてもよい。
【0049】
図6は、サムネイルリストの絞り込み処理(S27)を示す説明図である。図6(a)→図6(b)→図6(c)の順に、絞り込みの条件(度合い)が厳しくなる。
【0050】
図6(a)では、1つのサムネイルが1つの事業部に対応するサムネイルリスト31を表示する。このサムネイルのグラフは、事業別グラフデータ71をもとに作成される。図6(a)において、1つのサムネイル(事業部A)が選択(ダブルクリック)されると、図6(b)の表示画面に移行する。ここで、図6(b)の表示画面にフォーカスは移動するが、図6(a)の表示画面は消去せずに残しておくことで、図6(b)から図6(a)にフォーカスが戻る操作をスムーズに実行できる。
【0051】
図6(b)では、1つのサムネイルが1つのカテゴリに対応するサムネイルリスト31を表示する。このサムネイルのグラフは、カテゴリ別グラフデータ72をもとに作成される。このサムネイルリスト31は、図6(a)で選択された1つの事業部(事業部A)が扱うカテゴリに絞り込んだものである。図6(b)において、1つのサムネイル(カテゴリC2)が選択(ダブルクリック)されると、図6(c)の表示画面に移行する。
【0052】
【表7】

【0053】
表7は、1つのサムネイルが1つのカテゴリに対応するような、サムネイルのグラフデータを作成する方法を示す。1つのカテゴリ(JAN001)は、2つの商品(品番=I001,I002)が属する。よって、各商品のグラフの高さ(1行目なら、67,33)の総和が、カテゴリ(JAN001)の正規化前のグラフの高さ(1行目なら、100)となる。そして、カテゴリ(JAN001)のグラフの高さを正規化する(1行目なら、100→45)ことで、サムネイルのグラフ表示欄に収まるグラフを作成する。
【0054】
図6(c)では、1つのサムネイルが1つの商品に対応するサムネイルリスト31を表示する。このサムネイルのグラフは、商品別グラフデータ73をもとに作成される。このサムネイルリスト31は、図6(b)で選択された1つのカテゴリ(カテゴリC2)に属する商品に絞り込んだものである。図6(c)において、1つのサムネイル(商品X)が選択(ダブルクリック)されると、その商品の在庫推移グラフ32(図8)を表示する(S29)。
【0055】
以上、図6で説明した絞り込み処理は、事業グループ→事業部→カテゴリ→商品、の順に行うこととした。しかし、これらの属性(事業グループ、事業部、カテゴリ)やその順序は、あくまで一例であり、他の属性(ブランド別グラフデータ74で示されるブランドなど)をいくつか定義しておくことにより、様々な属性(切り口)で集計した在庫推移を見ることができ、在庫推移の分析をすることができる。
【0056】
図7は、グラフの表示形態を示す説明図である。この表示形態は、図6のサムネイルリスト31に表示されているサムネイルのグラフ表示欄に表示されている在庫推移の時系列グラフを示す。図6(b)および図6(c)では、複数の商品の在庫データの集計値が表示される。この集計値の成分となる各商品の在庫データを区別可能な形式で表示する。これにより、集計値の中で影響の大きい(ボトルネックとなる)商品などを特定することができる。
【0057】
図6(a)では、集計値の成分を見せずに1つの値として表示する。例えば、3つの在庫データ(商品い+商品ろ+商品は)の総和となる集計値だけが表示される。
図6(b)では、集計値の成分を商品ごとに表示する。例えば、3つの在庫データ(商品い、商品ろ、商品は)は、互いに区別可能な形式で表示される。
図6(c)では、2種類の成分(所定条件を満たす成分、満たさない成分)を区別して表示する。なお、所定条件は、在庫指標値などを用いて定義できる。例えば、「在庫回転期間が1ヶ月より長い商品」という条件を、所定条件に設定する。
【0058】
図8は、在庫推移グラフを示す画面図である。在庫推移グラフ32は、表示画面30上に表示される(S29)。在庫推移グラフ32は、品名表示欄108a、表示種別選択欄108b、グラフ表示欄108c、および、数値表示欄108dにより構成される。
品名表示欄108aは、商品名定義テーブル61に記載されている商品名を表示する。
表示種別選択欄108bは、2種類の在庫データ(在庫数量入力データ51、在庫金額入力データ52)の内、どちらの在庫データに着目するかを選択させる。
グラフ表示欄108cは、品名表示欄108aで指定され、表示種別選択欄108bで選択された在庫データの数値を、グラフ形式で表示する。
数値表示欄108dは、グラフ表示欄108cのグラフ形式で表示されている数値を表示する。
【0059】
以上説明した本実施形態により、以下に示す効果を得ることができた。
ある日用品消費財メーカの物流部門では、数千の商品を扱っている。その数千の商品から異常在庫の商品を発見する作業が、在庫管理の重要な作業である。この作業を実施するために、在庫推移を示す数値を表データから確認することは、コストがかかりすぎる。
そこで、本実施形態の絞込み機能(図6参照)、ソート機能(図4参照)を活用し、異常在庫の可能性の高い候補商品を見つけ出し、さらにサムネイルで一覧表示されたグラフから異常なグラフをすばやく発見し、異常在庫を発見できるようになった。
なお、個々のサムネイルには、グラフ表示が含まれているので、数値による表示よりもすばやく異常在庫を発見できる。また、ソート機能では、複数の種類の在庫指標値から1つの在庫指標値を選択することができる。これにより、在庫回転率など一つの尺度では読み取れないような異常も読み取ることができ、早期対策により異常在庫を大幅に減らすことができた。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態に関する在庫推移処理装置を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に関する在庫推移の表示処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に関する在庫推移を示すサムネイル画像を示す画面図である。
【図4】本発明の一実施形態に関するサムネイルのソート処理を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に関するグラフの変形処理を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に関するサムネイルリストの絞り込み処理を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に関するグラフの表示形態を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施形態に関する在庫推移グラフを示す画面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 在庫推移処理装置
11 プロセッサ
12 主記憶装置
13 外部記憶装置
14 入出力部
15 表示装置
21 グラフ作成部
22 グラフ表示部
23 グラフソート部
24 グラフ変形部
25 グラフ絞り込み部
30 表示画面
31 サムネイルリスト
32 在庫推移グラフ
50 入力ファイル
51 在庫数量入力データ
52 在庫金額入力データ
53 商品粗利入力データ
60 定義ファイル
61 商品名定義テーブル
62 事業定義テーブル
63 商品カテゴリ定義テーブル
64 商品ブランド定義テーブル
65 表示設定定義データ
70 表示用ファイル
71 事業別グラフデータ
72 カテゴリ別グラフデータ
73 商品別グラフデータ
74 ブランド別グラフデータ
80 画像ファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品の在庫に関する数量または金額を時系列で示す在庫データを、表示装置の表示画面にサムネイルとして表示する在庫推移処理装置による在庫推移処理方法であって、
前記在庫推移処理装置は、グラフ作成部、グラフ表示部を有し、
前記グラフ作成部は、
入力された前記在庫データと、サムネイルの表示範囲を規定する表示設定定義データとを記憶装置から読み取り、
前記在庫データの全期間がサムネイルの横範囲に収まるように、1つ以上の隣接する前記在庫データの総和を前記在庫データの1つのグラフの高さとして計算し、かつ、前記在庫データの各グラフの高さがサムネイルの縦範囲に収まるように、各グラフの高さの数値を所定数で除算することで、各サムネイルを作成し、
前記作成した各サムネイルを画像形式に変換し、
前記グラフ表示部は、
前記画像形式の各サムネイルを前記表示画面に並べて、サムネイルリストとして表示することを特徴とする
在庫推移処理方法。
【請求項2】
前記在庫推移処理装置は、さらに、グラフソート部を有し、
前記グラフソート部は、
前記在庫データに対応する各商品について、各商品の販売実績金額の合計値を在庫実績金額の平均値で割った在庫回転率値、各商品の在庫データのデータ分量を在庫回転率で割った在庫回転期間値、および、各商品の在庫回転率と粗利益率とをかけた交差比率値のうち、少なくとも1つの値を各商品の在庫指標値として計算し、その計算結果を前記在庫データと対応づけて前記記憶装置に格納し、
ソートの尺度となる前記在庫指標値が指定されると、
前記グラフ表示部により表示されている前記サムネイルリストについて、そのサムネイルリストを構成する各サムネイルに対応する前記在庫指標値のうち、指定された在庫指標値を前記記憶装置から読み取り、
読み取った前記在庫指標値をもとに、前記サムネイルリストを構成する各サムネイルをソートし、前記ソートされたサムネイルリストを前記グラフ表示部に再表示させるようにすることを特徴とする
請求項1に記載の在庫推移処理方法。
【請求項3】
前記在庫推移処理装置は、さらに、グラフ変形部を有し、
前記グラフ変形部は、
在庫の谷間日における前記在庫データを表示する旨が指示されると、
前記グラフ表示部により表示されている前記サムネイルリストについて、そのサムネイルリストを構成する各サムネイルのグラフから、在庫が増えた日の前日、または、生産のあった日の前日のいずれか一方の日に対応するグラフの高さを抽出し、
抽出したグラフの高さどうしを補完するグラフの線を追加することにより、各サムネイルのグラフを変形し、
変形したグラフを含む各サムネイルの前記サムネイルリストを前記グラフ表示部に再表示させるようにすることを特徴とする
請求項1に記載の在庫推移処理方法。
【請求項4】
前記在庫推移処理装置は、さらに、グラフ変形部を有し、
前記グラフ変形部は、
前記在庫データの平滑化指示およびその平滑化の範囲となるスライド幅が入力されると、
前記グラフ表示部により表示されている前記サムネイルリストについて、そのサムネイルリストを構成する各サムネイルのグラフの各グラフの高さを順に選択し、
選択したグラフの高さを中心として、隣接するグラフの高さを前記スライド幅の範囲分だけ抽出し、抽出したグラフの高さの平均値を、新たな選択したグラフの高さとする移動平均演算により各サムネイルのグラフを変形し、
変形したグラフを含む各サムネイルの前記サムネイルリストを前記グラフ表示部に再表示させるようにすることを特徴とする
請求項1に記載の在庫推移処理方法。
【請求項5】
前記記憶装置には、前記在庫データの各商品と、その各商品の属性が対応づけて記憶され、
前記在庫推移処理装置は、さらに、グラフ絞り込み部を有し、
前記グラフ絞り込み部は、
商品の属性が指定されると、
指定された属性を有する商品群を抽出し、抽出した商品群を構成する各商品、または、抽出した各商品が属する下位属性ごとに、サムネイルを構成し、
構成したサムネイルが複数の商品で構成されるときは、その構成元の複数の商品の前記在庫データの総和を集計して構成したサムネイルのグラフを構成し、
グラフが構成された個々のサムネイルを並べた前記サムネイルリストを前記グラフ表示部に再表示させ、
再表示されたサムネイルが選択されると、その選択されたサムネイルが1つの商品で構成されるときには、その商品の在庫推移グラフを表示するとともに、その選択されたサムネイルが複数の商品が属する前記下位属性で構成されるときには、その下位属性を新たに指定された商品の属性として、前記サムネイルリストを再構成することを特徴とする
請求項1に記載の在庫推移処理方法。
【請求項6】
前記グラフ絞り込み部は、
サムネイルのグラフについて、複数の商品で構成されるサムネイルを表示するときに、その複数の商品を互いに区別可能な形式で成分表示することを特徴とする
請求項5に記載の在庫推移処理方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の在庫推移処理方法を、コンピュータに実行させるための在庫推移処理プログラム。
【請求項8】
商品の在庫に関する数量または金額を時系列で示す在庫データを、表示装置の表示画面にサムネイルとして表示する在庫推移処理装置であって、
前記在庫推移処理装置は、グラフ作成部、グラフ表示部を有し、
前記グラフ作成部は、
入力された前記在庫データと、サムネイルの表示範囲を規定する表示設定定義データとを記憶装置から読み取り、
前記在庫データの各成分がサムネイルの横範囲に収まるように、1つ以上の隣接する前記在庫データの総和から前記在庫データの1つのグラフの高さを計算し、かつ、前記在庫データの各グラフの高さがサムネイルの縦範囲に収まるように、各グラフの高さの数値を所定数で除算することで各サムネイルを作成し、
前記作成した各サムネイルを画像形式に変換し、
前記グラフ表示部は、
前記画像形式の各サムネイルを前記表示画面に並べて、サムネイルリストとして表示することを特徴とする
在庫推移処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−187449(P2009−187449A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28920(P2008−28920)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000233538)株式会社 日立東日本ソリューションズ (53)
【出願人】(390008866)STARLECS株式会社 (8)
【Fターム(参考)】