説明

地上における航空機の自律移動用装置

【課題】航空機が地上で自律的に移動するのを可能にするために、システムは航空機の少なくとも1つの車輪を回転させる。
【解決手段】車輪は機械的歯車箱(6)を備える機械的伝動アセンブリ(42)によって前記車輪と連結した少なくとも1つのモーターを備える回転駆動手段(4)と連結され、機械的歯車箱の減速比は、航空機の車輪(10)の制限された回転角度について、ねじれ歯車(61、62)を用いて連続的に可変であり、ねじれ歯車の半径は前記ねじれ歯車のほぼ全回転にわたって連続的に変化し、ねじれ歯車の減速比は前記制限された回転角度外で航空機の車輪(10)の回転角度の制限無しに一定である。連続的に可変する減速比は、起動時に航空機の車輪を回転させるのに必要な最初のトルクを得ることを可能にするために、モーターの容量を増大させずに駆動手段によって起動時に供給されるトルクを増大させるために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地上において航空機を移動させる分野に関するものである。より詳細には、本発明は地上において航空機を航空機の外部の手段を必要とせずに、かつ推進機関を作動せずに移動させるように設計した装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飛行局面外で、航空機は、さまざまな駐機スタンドの間で、あるいは離陸区域または着陸区域と駐機スタンドとの間で地上を移動できなければならない。
【0003】
これらの地上移動を実行するために、通常航空機は車輪を装備し、車輪のいくつかは操縦可能である。状況に応じて、現在2つの移動方法が旅客機の作動で使用されている。
【0004】
第1方法は、駐機スタンドの間を、または航空機を航空ターミナルから離れて移動させるために通常使用され、この方法では、地上手段、例えば牽引棒を用いる特殊陸上車で航空機を引っ張るか、または押し進める。
【0005】
第2方法は、駐機スタンドと離陸または着陸区域との間を移動するために航空機によって広く使用され、この方法では、航空機の推進機関、プロペラー、または噴射推進機関を用いて、航空機をその車輪で移動させるのに十分な推進力を航空機に生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】仏国特許第2065734号明細書
【特許文献2】米国特許第3098399号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
第1方法は、機材および要員が航空機から独立している手段を必要とするという欠点を有する。特に安全のために、かかる手段は航空機が離陸区域に達するために移動する区域では望ましくなく、その使用は通常航空機の駐機スタンド間移動に限定される。
【0008】
一方、第2方法は、航空機の自律がその移動を提供するという利点を有するけれども、最新の航空機の使用について、または空港の運営についていくつかの点に関して不利である。
【0009】
特に、地上では、航空機の推進機関は空港の周辺環境で騒音および大気汚染の源、ますます許容できなくなっている汚染源である。移動する航空機の数が増えるにつれて、かつ空港のサイズがますます長くなる航空機の移動および待機時間を必要とするので、この汚染は増大する。長い移動および待機時間の別の結果は、飛行に提供される燃料を減らし、かつ極端な場合は、ミッションに必要な燃料の量を補給するために航空機をやむを得ずその駐機ポイントへ戻す可能性がある、推進機関の燃料の過剰消費である。
【0010】
従来、これらの問題は重大ではなく、現在のように一般化されなかったけれども、これらは長い間知られており、さまざまな装置は航空機が推進機関の使用を必要とせずに自律的に移動することを可能にすることが知られている。
【0011】
それゆえに、航空機が、この使用に専用のモーターを用いて着陸歯車の1つ以上の車輪を駆動するために、それ自体の手段によって地上を移動することを可能にすることが知られている。
【0012】
かかる専用モーターは、例えば、航空機に搭載の発電機によって電力を供給される電気モーター、空気圧モーター、または油圧モーターである。
【0013】
特許文献1は、車輪の軸に配置され、かつ実施形態に応じて、モーターにクラッチ結合したり、クラッチ結合を解除したりする機械的手段、一組の関連ピニオン、および車輪を備えるとよい油圧モーターを介して車輪を駆動する解決策を提案している。
【0014】
かかる装置の欠点は特に油圧モーターの制限に関連する。
【0015】
これらの制限は従来の航空機では少なくとも全部で3つある。
【0016】
一方で、必要な動力および流量のために航空機への設置に限定される可能性がある専用油圧回路を生成することが必要である。
【0017】
他方で、通常油圧動力は推進機関によって航空機に供給され、従って推進機関が停止した場合の作動は、特別な発生装置を例えば補助動力装置に組み込むことを伴う。
【0018】
最後に、最新の航空機は車輪を装備し、このタイヤは、しばしば15バールよりも大きい、高いタイヤ空気圧、および従来の陸上車の場合よりもはるかに大きい、タイヤの断面のおよそ30%のかなりの電界偏向で機能する。これらの理由によって、車輪を静止位置から回転させるために加えられるトルクは航空機が移動局面にある場合に加える必要があるトルクよりもはるかに大きい。
【0019】
タイヤおよびその荷重の特性に応じて、2つのトルクの間の比は3程度であり、特定の状況ではこの値を超えることさえもある。
【0020】
従って、可能な減速装置を含む、モーターおよび前記モーターを車輪に結合させる手段のすべてが、移動中に過剰な機能を有するアセンブリに至る移動を開始するために、必要なトルクを供給するように設計することが必要である。
【0021】
車輪の駆動モーターは空気圧モーターであってもよいが、この場合、発生する必要があるトルクおよび動力は、空気を輸送するのに必要なホースの直径および高圧力と関連する破裂の危険のせいで装置の設置に不利である、かなりの流量の空気を必要とする。加えて、モーターの出口における空気の漏れは解決すべき問題に悪影響を及ぼす騒音公害の源である。
【0022】
車輪の駆動モーターは電気モーターであってもよいが、電気モーターのトルクが前記モーターの電力供給装置に基づいて作動することによって作動中に変更され得るけれども、設定された移動に必要であるトルクを超える駆動手段を設計せずに必要な範囲全体で前記トルクを変化させることは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0023】
推進機関によって発生する力を用いて航空機の地上における自律移動を提供するために、本発明は車輪と関連するモーターによって航空機の少なくとも1つの車輪を駆動する装置を提案する。この装置では、前記モーターは機械的減速歯車を備える駆動手段によって前記車輪と結合され、この減速歯車の減速比は、航空機の車輪の制限された回転角度に対して、ほぼ1回転にわたって半径が連続的に可変するねじれ歯車を用いて、連続的に可変であり、この減速歯車の減速比は前記制限された回転角度の外で一定であり、これにより駆動手段によって航空機の車輪に伝えられるトルクはモーターによる設定された移動中よりも航空機の移動開始時の方が大きく、モーターのトルクは設定された移動の状況によって事実上決定される。
【0024】
好ましくは、航空機の車輪の制限された回転角度に対して連続的に可変する減速比は、航空機の車輪が動かない第1端位置と航空機の車輪が制限された回転角度を超えて回転する第2端位置との間で減少して、航空機の停止位置と前記航空機の設定された移動との間の連続する変移を確かにする。
【0025】
駆動手段が一定減速比を有する方式で係合する場合にトルクの不連続を防止するために、連続的に可変する減速比は、駆動手段が第2端位置にある場合に、一定減速比にほぼ等しい。
【0026】
回転減速アセンブリの大きさを制限することを可能にする一実施形態では、可変減速比方式から一定減速比方式への変化は機械的減速歯車を用いて達成され、この減速歯車は、連続的に可変する減速比伝動方式から一定減速比伝動方式へ移るために、選択手段、クラッチおよび/またはキーを備える。
【0027】
キーまたはクラッチのような選択手段を備える結合手段の使用を回避する別の実施形態では、ねじれ歯車の1つは次に示す減速歯車に取り付けられる。
- 減速比は一定であり、ねじれ歯車の最小減速比にほぼ等しく、そして
- 前記減速歯車の入力軸の軸線はねじれ歯車に取り付けられた出力軸の軸線と同一線上にあり、そして
- ねじれ歯車は、駆動手段が第2端位置にある場合に、前記ねじれ歯車を互いに対して動かさなくするストッパを備え、そして
- 前記減速歯車およびねじれ歯車は、入力および出力軸の軸線を中心とする総体的回転運動で駆動され得る、側板または減速歯車ケースのような、支持体に取り付けられ、これにより出力軸は入力軸の速度で回転する。
【0028】
駆動手段のモーターの寸法を発動および設定された移動の状態に同時に適合させるために、連続的に可変する機械的減速歯車の減速比は2つの端位置の間で実質上、一方で航空機の設定された移動を提供するために、他方で航空機を静止位置から発動させるために、必要な駆動トルクの比で変化する。
【0029】
好ましくは、航空機に装置される駆動手段の重量を制限するために、航空機の1つの車輪だけが航空機を移動させるために回転し、または、発生される力が単一車輪の接触によって発生することができない場合に、2つ以上の車輪が航空機を移動させるために回転する。
【0030】
伝達される力にもよるが、航空機の車輪は、航空機の前部着陸歯車の車輪あるいは主着陸歯車の車輪であり、好ましくは、ブレーキを通常装備しない前部着陸歯車の方がより簡単なので、前部着陸歯車である。
【0031】
航空機で利用できるエネルギー、特に補助動力装置によって供給されるエネルギーにもよるが、回転車輪は1つ以上の電気モーター、1つ以上の油圧モーター、または1つ以上の空気圧モーターを用いて駆動される。
【0032】
航空機が本発明による自律駆動装置を使用せずに移動しているときに、駆動手段の機械的応力を制限するために、有利なことに、駆動手段は、例えばクラッチ装置を用いて、好ましくは出来るだけ車輪に近接して車輪から切り離すことが可能である。
【0033】
特に車輪が航空機の着陸中に回転し始めるときに、駆動手段の機械的応力を制限するために、航空機を移動させるために回転する車輪の回転速度は、少なくとも一時的に前記車輪が航空機を動かしていないとき、前記車輪の接線速度が地上に対する航空機の速度にほぼ等しいように、地上に対する航空機の速度に追従する。
【0034】
好ましくは、航空機の移動中に推進機関が作動しないように、航空機を移動させるのに必要なエネルギーは少なくとも1つの補助動力装置によって発生する。
【発明の効果】
【0035】
特定または代替の作動方式では、航空機を移動させるのに必要なエネルギーは、例えば、少なくとも1つの推進機関が航空機の着陸に先立つ進入局面中に必ず作動しているとき、または少なくとも1つの機関が地上でアイドル速度で作動しているときに、航空機の少なくとも1つの推進機関によって発生する。
【0036】
駆動モーターの作動はコックピット内に制御装置を備えるコマンドおよび制御手段によって管理され、コックピットの前記制御装置は、推進機関の動力を制御する制御装置のような既存の制御装置であることが有利である。
【0037】
本発明の一実施形態の詳細な説明が図面を参照して与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明によるシステムおよび航空機に搭載のその主部材を示す図である。
【図2】図2は、駆動手段を装備した車輪を示す図である。
【図3a】図3aは、連続的に可変する減速比を有する減速歯車の作動原理を示す図である。
【図3b】図3bは、同じく連続的に可変する減速比を有する減速歯車の作動原理を示す図である。
【図3c】図3cは、同じく連続的に可変する減速比を有する減速歯車の作動原理を示す図である。
【図4a】図4aは、出力軸が入力軸と同じ速度で駆動される作動モードにおける図3の減速歯車を示す図である。
【図4b】図4bは、同じく出力軸が入力軸と同じ速度で駆動される作動モードにおける図3の減速歯車を示す図である。
【図5】図5は、駆動歯車およびさまざまな伝動軸の構成を示す図3および4の減速歯車の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1の例示的な実施形態では、航空機1が地上において推進機関の使用を必要とせずに自律移動するための装置は次を備える。
a-航空機を移動させるために十分な電力を供給可能である航空機に搭載の少なくとも1つの動力源2
b-航空機の少なくとも1つの車輪10を駆動する、かつ少なくとも1つの電気モーター41を備える手段4
c-電力を分配する手段3
d-装置に命令し、制御する手段5
【0040】
動力源2はAPUと呼ばれる補助動力装置であることが有利であり、この装置は、ほとんどの最新航空機で、後者が地上の源に接続されず、かつ推進機関が作動していないときに、航空機に圧縮空気および電気を供給するために既に使用されている。補助動力装置は、航空機の連続的な移動を確かにし、かつ必要ならばタイヤの静的変形を克服するのに必要な力を超え、かつより大きい動力が移動開始局面に必要である場合は移動を開始するために必要な動力を少なくとも供給することが可能である。この動力は各航空機モデルに固有の特性および電気モーターと回転車輪との結合手段の関数である。
【0041】
1つの簡単な実施形態では、駆動手段4は機械的伝動アセンブリ42を用いて車輪10と結合した電気モーター41を備える。
【0042】
結合は任意の既知の手段によって、例えば、車輪のタイヤ上で、または車輪のリムの所定ゾーン上で回転するローラーの摩擦、チェーン、ベルト、歯付きピニオンなどによって達成され得る。
【0043】
前記機械的伝動アセンブリ42は、航空機の電気モーター41と車輪10との間に、駆動歯車61、62を用いた連続的に可変する減速比を有する機械的減速歯車6を備え、この減速歯車の原理は図3、4、および5に示され、各歯車はそれぞれ回転軸610、620を中心に回転し、例えば歯車は歯付きであり、そして減速装置では、外周から回転軸までの距離は前記歯車の1回転にわたって、または回転のわずかにわたって連続的に変化する。前記歯車の外周はスパイラルの一部に追従し、これにより前記歯車(これは説明の残りの部分でねじれ歯車として識別される)の1回転にわたって、または回転のわずかにわたって、2つの歯車の回転軸の間の減速比は、スパイラルのパラメタによって選ばれ、かつ決定された2つのねじれ歯車の相対角位置によって変化する。連続的に可変する減速比を有するかかる減速歯車は既知である。特許文献2には、かかる減速歯車を用いる例示的な実施形態が記載されている。
【0044】
前記伝動アセンブリはまた、連続的に可変する減速比を有する減速歯車6を車輪10から連結解除し、かつ電気モーター41を車輪10と減速比無しで、または一定の減速比で連結することを可能にする手段(図示せず)、例えばクラッチまたはキー付きの装置も備える。かかる手段は周知であり、機械的伝動装置で使用され、それらは非常に多様な形をとることができる。
【0045】
前記伝動アセンブリはまた、駆動車輪の駆動手段の完全な連結解除が航空機のいくつかの作動モードで要求される場合に、伝動アセンブリと車輪を機械的に分離することを可能にする連結/連結解除手段(図示せず)も備える。これらの連結/連結解除手段は例えばクラッチあるいは駆動ローラーまたはピニオンを動かす手段の形をとる。
【0046】
本機械的伝動アセンブリ42では、電気モーター41が航空機1の停止位置から一方向に回転する場合に、連続的に可変する減速比を有する減速歯車6は前記アセンブリの最大減速比に相当する図3aに示す位置にあり、すなわち、駆動ねじれ歯車61はその最小半径で駆動されるねじれ歯車62とその最大半径で接触している。駆動ねじれ歯車またはMと呼ばれている、モーターによって駆動されたねじれ歯車61の回転中徐々に、前記歯車間の接触点に相当する、ねじれ歯車M61と歯車Mによって駆動されるねじれ歯車62(駆動されるねじれ歯車またはEと呼ばれている)との間の半径の変化によって、図3cに示すように端位置に達するまで、伝動アセンブリの減速比は図3bに示すように小さくなり、図3cでは、連続的に可変する比を有する歯車6の減速比は最小である。そのとき機械的伝動アセンブリの構成はモーター41と車輪10との間で一定の減速比を用いるために変更される。
【0047】
好ましくは、伝動アセンブリ42を製作するために用いる部材の特性は、一定の減速比を有する構成の減速比が、前記アセンブリ42が可変モードから一定モードへ移る場合に、連続的に可変する比を有する構成の最小減速比にほぼ相当するように選ばれる。減速比のこの選定はモードの移行時におけるトルクの著しい急激な変化(航空機の乗客の快適さおよび駆動手段4の機械的強度に悪影響を及ぼすだろう変化)を伴わない移行を確かに可能にする。
【0048】
特定の実施形態では、連続的に可変する減速比を有する減速歯車のねじれ歯車61、62はストッパ611、621を備え、これにより最小減速比に達したとき、図3cに示す状況では、ねじれ歯車は互いに対して動かなくなり、可変する減速比を有する減速歯車を連結解除する手段を用いない選定が行われるとき、図4aおよび図4bに示すように、電気モーター41によって総体的回転運動で駆動される。
【0049】
このために、連続的に可変する減速比を有する減速歯車6は入力軸63をモーター41の側に、そして出力軸64を車輪10の側に備え、これらの軸線は一直線になっている。この結果は、減速比がそのストッパに達したときに減速比がねじれ歯車を用いて得られる減速比の逆である減速アセンブリを用いて得られる。
【0050】
図3および4にも相当する図5に提案する構成では、ねじれ歯車Mは、共通回転軸67を用いて、入力軸63に取り付けられた一定半径の歯車66によって駆動される一定半径の歯車65に取り付けられている。一定半径の歯車65、66は減速歯車を形成し、この減速比は半径の値の関数である。入力軸63、出力軸64、および共通軸67は図示されていない保持構造、例えばケーシングに取り付けられた軸受または回転軸受で保持されている。
【0051】
2つのねじれ歯車61、62が互いに対して動かない場合に、一定半径の歯車65、66もまた互いに対して、かつねじれ歯車に対して動かない。そのとき入力軸63および出力軸64はさまざまな歯車の相対位置の不動のせいで固定され、2つの軸、入力軸63および出力軸64に共通の軸線620を中心として、保持構造のように、同じ速度で回転する。この構成によって、機械的クラッチ手段が可変する減速比を有する伝動モードから一定の減速比を有する伝動モードへ移行するのを防止することが可能である。
【0052】
さまざまな軸およびピニオンの他の構成も、例えば、ねじれ歯車M61に取り付けた入力軸、一定半径の歯車65に取り付けた出力軸、およびねじれ歯車E62と一定半径の歯車66との間の連結軸を用いて、同じ結果を達成することが可能である。
【0053】
有利なことに、一定半径の歯車65、66は歯車対のピニオンであり、入力軸63に取り付けた歯車66の半径はねじれ歯車E62の最小半径に等しく、そしてねじれ歯車61、62とストッパ611、621が接触するときに出力軸64が入力軸63と同じ速度で回転するように、ねじれ歯車M61に取り付けた歯車65の半径はねじれ歯車Mの最大半径に等しい。
【0054】
航空機が駆動装置によって駆動されない場合に、駆動手段は抵抗トルク、および特に着陸時に急速に回転し始める車輪によって損傷する恐れを生じないように車輪から連結解除されることが好ましい。
【0055】
代替実施形態では、駆動手段は車輪と取り外せないように連結され、必要ならば、駆動装置は航空機の地上速度に追従し、これによりモーターは連結された車輪を駆動することによって、その接線速度は速度に対する航空機の速度に対応する。この方式は着陸前に使用されることが好ましく、これにより駆動手段と連結した車輪が着地したとき、後者は既に回転しており、駆動手段、モーター、または機械的減速歯車を損傷させる可能性がある、どんな急激な加速も受けない。この特定の作動モードでは、推進機関は作動しており、装置に必要な電気エネルギーを発生させるために動力源として使用することが有利である。さらに、車輪が地上と未だ接触しておらず、その回転は航空機の重量を動かすことを含まないので、必要な動力は比較的中程度である。
【0056】
駆動手段は、問題の動力に適している、電気的スイッチング手段、接触器、または無接点リレーを経由して電気エネルギー発生源2に接続されている。有利なことに、前記スイッチング手段は航空機の電気エネルギー供給網に接続され、この供給網によって、補助動力装置2をエネルギー源として、また必要ならば、特に既に考慮したように着陸局面で、機関と関連する他の源を使用することが可能になる。
【0057】
電気モーター41に使用する技術に応じて、電気モーターは制御コンピュータ51によってトルクおよび速度が制御され、この制御コンピュータは航空機の他のシステムに由来するパラメタによってモーターの供給に作用し、そして制御コンピュータの主要なものについて説明の残りの部分で説明される。前記制御コンピュータおよび/またはそれが機能的に連結している航空機1の他の手段はまた、移動またはその準備中、装置と相互に作用する航空機のシステムに作用する。
【0058】
装置の作動を制御するために、後者は次の事項を特に受け取る。
- 例えば「地上」または「飛行中」における、航空機の状態およびその状況に関する情報。
- さまざまなシステムの状態、および装置の正確かつ安全な作動に必要である手段の状態に関する情報。この情報は電気エネルギーの可用性ばかりでなく、いくつかの他のシステムの起動、特に、航空機が安全上の理由によって単独で移動するときに絶対に作動可能でなければならない制動システムにも関連する。
- 速度設定点または移動の力に相当する情報の項目。主作動モードでは、この情報は移動を指揮する航空機乗務員によって与えられる命令に相当する。有利なことに、推進機関の推力または動力を制御するために飛行中に用いる制御部材52は、前記推進機関が停止しているので、この情報項目を生成するために使用され、これは、追加の制御装置をコックピットに配置する必要がなく、かつ乗務員の行動を変更しない(大抵の航空機では、乗務員はこの制御装置を移動中に推進機関の推力を制御するために使用する)という利点がある。高いレベルの作動モードでは、この情報は航空機の地上における移動を管理することが可能である自動移動システムによって例えば地上交通情報の機能として生成される。推進機関が作動しており、特に着陸局面または機関による移動の局面で、かつ駆動手段がクラッチを切られていないとき、情報は駆動手段の力を最小にして前記手段の損傷を防止する車輪速度設定点に相当することが有利である。
- 駆動手段4の減速比、そしてさまざまなクラッチ手段が使用される場合はその減速比を決定するねじれ歯車61、62の相対位置。
【0059】
駆動手段4のモーター41のエネルギー供給を制御するのに加えて、コンピュータ51は駆動手段をクラッチ結合/クラッチ解除する任意の手段に対する命令を生成する。前記コンピュータはまた装置の作動、例えば駆動される車輪の速度、電力などに関する情報を航空機の他のシステムへ伝送する。
【0060】
地上における移動に要する電力は装置の重要な特徴であり、移動中に絶対必要ではない航空機の電気的負荷、例えば快適装備に相当するいくつかの負荷を軽くする必要がある場合は、航空機の電気エネルギーを管理するシステムはこのパラメタをリアルタイムに有利に使用する。
【0061】
装置に必要な発生電力を最適化するために、第1局面では、航空機1を設定された方式で移動させるのに必要な電力を決定する。かかる設定された方式は、航空機の作動上の必要、例えば最大で2%の勾配における25km/h(約7m/s)の移動速度(これらの値の1つを超える場合に性能低下は許容されるとよい)によって、かつ航空機およびその着陸歯車に特有の特性、特にタイヤの数、大きさ、および空気圧によって規定される。
【0062】
旅客機を低速度で移動させる場合は、水平な地上において設定された方式で確かに移動させるために発生される力は動かされる重量のほぼ1.6%程度である。
【0063】
例えば、重量77トンの航空機が移動する場合は、設定された移動中に及ぼされる力は水平な地上において加速なしにほぼ1250DaN程度であり、勾配に対応してこの力に追加されるべき力は、2%の勾配の場合は、ほぼ1550DaNである。
【0064】
従って、航空機を25km/h(〜7m/s)で移動させるために電気モーターによって発生する全動力はほぼ200kW程度である。
【0065】
一車輪当たりのトルクは、例えば電気モーターを装着した主着陸歯車の2つの車輪(49インチのタイヤを装着、または約0.51mの荷重下半径)を仮定すると、ほぼ7KN.m程度である。
【0066】
第2局面で、電気モーターは設定された移動のために決定され、電気モーターが起動時に供給可能である最大トルク(トルクはモーターに用いる技術に依存する)は、荷重下のタイヤの静的変形の部分と関連する起動力および航空機を設定された移動速度まで加速するために発生する力を克服するのに必要な最初のトルクと比較される。この最初のトルクは、実際には、タイヤの特性に応じて可変し、水平な地上における連続移動で必要なトルクのほぼ3倍程度、すなわち用いた例では、モーターによって駆動される2つの車輪(選ばれた例で)の各々の軸において21KN.mである。求める2つの極端なトルクの間の3つのこの比は、設定された移動局面よりも大きいトルクを発生させるためにモーターの容量を増大せずに説明されているように2つのねじり歯車を含む減速歯車を用いて得られる。
【0067】
起動時のトルクと移動中のトルクの比がより大きい場合は、連続的に可変する減速比を有する減速歯車は、例えば9の比で変化する減速比を生成するために、2段のねじれ歯車を備えることが有利である。
【0068】
駆動される車輪は主着陸歯車および/または前部着陸歯車の歯車である。
【0069】
本発明の他の実施形態または応用も可能である。
【0070】
例えば、別のエネルギーが受入れ難い不利益無しに使用できるならば、電気モーター41は、別のエネルギー源、例えば油圧または空気を用いるモーターによって置き換えられるとよい。
【0071】
エネルギーはまた、特に地上における移動中、騒音および汚染を制限するためにアイドリングパワーに出来るだけ近いように調整される推進機関によって生成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
従って本発明によって、航空機の推進機関を用いた移動の欠点を防止することを可能にする、かつ既に思い付いたシステムの欠点の多くを防止する、かつ本発明者の知る限りでは決して適用されることのなかった移動システムを用いて、地上における移動中に自律航空機を生成することが可能になる。
【符号の説明】
【0073】
1 航空機
2 動力源
4 駆動手段
6 減速歯車
10 車輪
41 電気モーター
42 機械的伝動アセンブリ
51 制御コンピュータ
52 制御部材
61 駆動歯車
62 駆動歯車
63 入力軸
64 出力軸
65 一定半径の歯車
66 一定半径の歯車
67 共通回転軸
610 回転軸
611 ストッパ
620 回転軸
621 ストッパ
E ねじれ歯車
M ねじれ歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機(1)を地上で自律的に移動させるシステムであって、前記航空機の少なくとも1つの車輪(10)が機械的減速歯車(6)を備える機械的伝動アセンブリ(42)によって少なくとも1つのモーター(41)を備える回転駆動手段(4)と連結されたシステムにおいて、前記機械的減速歯車(6)は、ねじれ歯車(61、62)を用いて、前記航空機の前記車輪(10)の制限された回転角度について2つの端位置の間に連続的に可変する減速比を有し、前記ねじれ歯車の半径が前記ねじれ歯車のほぼ一回転にわたって連続的に変化し、前記ねじれ歯車の減速比が前記制限された回転角度外で前記航空機の前記車輪(10)の回転角度の制限無しに一定であるとともに、前記2つの端位置の間の前記減速比は、一方で前記航空機の設定された移動を提供するために、他方で前記航空機を静止位置から動かすために必要な駆動トルクに対応するトルク比に実質上あることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記航空機の前記車輪(10)の制限された回転角度について前記連続的に可変する減速比が、前記航空機の前記車輪が動かない第1端位置と前記航空機の前記車輪が前記制限された回転角度を超えて回転する第2端位置との間で減少する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記駆動手段が前記第2端位置にある場合に、前記連続的に可変する減速比が一定の減速比にほぼ等しい請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記機械的減速歯車(6)が、連続的に可変する減速比を有する前記伝動手段か、あるいは一定の減速比を有する前記手段を用いて前記モーター(41)を前記航空機の前記車輪(10)に連結するために、選択手段、クラッチ、およびキーを備える請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記ねじれ歯車(61)の1つが減速歯車(63、65)に取り付けられ、
- 前記減速比が一定であり、前記ねじれ歯車(61、62)の最小減速比にほぼ等しく、そして、
- 前記減速歯車の入力軸(63)の軸線がねじれ歯車(62)に取り付けられた出力軸
(64)の軸線(620)と同一線上にあり、そして
- 前記ねじれ歯車(61、62)が、前記駆動手段が第2端位置にある場合に
前記ねじれ歯車を互いに対して動かさなくするストッパを備え、そして
- 前記減速歯車および前記ねじれ歯車が、前記入力および出力軸(63、64)の軸線(620)を中心とする総体的回転運動で駆動され得る支持体に取り付けられ、これにより前記出力軸は前記入力軸の速度で回転する請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記航空機(1)の1つだけの車輪(10)が前記航空機を移動させるために回転する請求項1〜5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
2つ以上の車輪が前記航空機を移動させるために回転する請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記航空機の前部着陸歯車の少なくとも1つの車輪が回転する請求項1〜7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記航空機の主着陸歯車の少なくとも1つの車輪が回転する請求項1〜8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記回転車輪(10)が1つ以上の電気モーター(41)を用いて駆動される請求項1〜9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記回転車輪(10)が1つ以上の油圧モーター(41)を用いて駆動される請求項1〜9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記回転車輪(10)が1つ以上の空気圧モーター(41)を用いて駆動される請求項1〜9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
1つの車輪の回転が前記駆動手段を駆動しないように、前記回転駆動手段(4)が前記車輪(10)から切り離され得る請求項1〜12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記航空機(1)を移動させるために回転する前記車輪(10)が、少なくとも一時的に前記車輪が前記航空機を動かしていないとき、前記車輪の接線速度が地上に対する前記航空機の速度にほぼ等しいように、地上に対する前記航空機の速度に追従するその回転速度を有する請求項1〜13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
前記航空機を移動させるのに必要なエネルギーが補助動力装置(2)によって発生する請求項1〜14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記航空機を移動させるのに必要なエネルギーが、少なくとも該システムのいくつかの使用状態について、前記航空機(1)の少なくとも1つの推進機関によって発生する請求項1〜15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記駆動モーター(41)の作動が、コックピット内に制御装置(52)を備えるコマンドおよび制御手段(5)によって管理される請求項1〜16のいずれか1項
に記載のシステム。
【請求項18】
前記推進機関の前記動力を制御する制御装置が前記コマンドおよび制御手段(5)用の制御装置(52)として使用される請求項17に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−541142(P2009−541142A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517353(P2009−517353)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051545
【国際公開番号】WO2008/001013
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(501446228)エアバス・フランス (93)
【Fターム(参考)】