説明

地下タンクの液漏れ検出装置

【課題】漏出した液体によるフロートの浮上を検出する地下タンクの液漏れ検出装置において、作動を点検する紐ないしワイヤの引き上げ力がバランスよくフロートに伝達されて、点検時に誤動作を起こすことがなく、かつ構造が簡単で部品点数が少ない装置を得る。
【解決手段】タンクの貯留部と遮断されて内部がタンクの内殻と外殻との間の間隙に連通された筒体と、この筒体の底部に配置した直線ガイドに昇降方向を案内されたフロートと、このフロートの上昇動作を検出するスイッチと、直線ガイドと平行に設けた第2の直線ガイドと、フロートに固定したブラケットに装着されてフロートの側方において第2の直線ガイドに沿って昇降する移動体とを備え、動作確認のためにこのフロートを引上げる紐ないしワイヤがフロートと移動体との間の位置で前記ブラケットの一箇所に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地下に設置された液体貯蔵用のタンクの液漏れを検出する装置に関するものである。ここで言う液漏れは、タンク内の液体(以下、「貯蔵液」と言う。)のタンク外への漏れ及びタンク外の地下水のタンク内への漏れの両方を意味する。
【背景技術】
【0002】
地下に設置されるガソリンタンクその他の液体貯蔵用の地下タンクは、その殻(壁)に孔や亀裂ができて液漏れが生じても、当該液漏れを発見するのが困難である。そこで、地下タンクの殻を二重構造、すなわち内殻と外殻との2層で形成して、内殻と外殻との間に間隙を設け、この間隙に貯蔵液や地下水が浸入したときにこれを検出する液漏れ検出装置を設けている。
【0003】
図3は、このような液漏れ検出装置を設けたタンク1の模式的な断面図で、地下タンク1の殻を内殻31と外殻33との二重構造とし、その間に間隙34を介在させる。内殻31は例えば鋼製で、外殻33はFRP(繊維強化樹脂)製である。タンク1には、下端がタンク底部に達し、上端が地上に開口している筒体2を設ける。この筒体2の下端の周縁は、内殻31に溶接などにより液封状態で固着され、貯蔵液を貯蔵する空間32とは遮断されている。筒体2の底となる部分の内殻31には、間隙34に連通する小孔35が設けられ、筒体2の内部と間隙34とが小孔35を介して連通している。
【0004】
筒体2の底部には、検出装置37が設置されている。検出装置37は、フロートと、このフロートの上昇動作を検出するスイッチとを備えている。このスイッチから引き出されたリード線7は、筒体2の中を通して地上に設置した監視装置36に接続されている。一般には、スイッチとしてリードスイッチが用いられ、前記フロートには、このリードスイッチをオンオフさせる磁石が取付けられている。筒体2の上端の開口には、蓋41が設けられている。
【0005】
上記構造の検出装置37は、タンクに液漏れが生じたとき、漏出した液によってフロートが浮上し、この上昇をリードスイッチが検出することによって、液漏れを検出する。すなわち、内殻31に孔や亀裂が生じて貯蔵液が間隙34に漏出すると、漏出した液は間隙34を通ってタンクの底部側へと移動し、小孔35から筒体2内へと流入する。流入した液はフロートを浮上させ、このフロートの上昇がリードスイッチを動作させ、リードスイッチの動作が地上の監視装置で検出されて、警報等により液漏れの発生を知らせる。
【0006】
また、外殻33に孔や亀裂が生じて地下水が間隙34に漏出すると、漏出した地下水は間隙34を通って小孔35から筒体2内へと流入する。流入した地下水はフロートを浮上させてリードスイッチを動作させ、リードスイッチの動作が地上の監視装置で検出されて、警報等により液漏れの発生を知らせる。貯蔵液と地下水が同時に漏れたときも、同様な作用で液漏れが検出される。また、筒体2内に貯蔵液が漏れたときも、漏れた液がフロートを上昇させて液漏れが検出される。
【0007】
タンク1に液漏れが生ずるのは異常事態であり、通常は液漏れが生ずることはない。従って、検出装置37が動作することもないから、検出装置37が故障してもそれを認識できない。そこで、定期的にフロートを上昇させて検出装置37が正常に動作するかどうかの点検が行われる。この点検は、下端をフロートに連結したワイヤ24を筒体2内を通して地上に引き出しておくことによって行われる。すなわち、このワイヤ24を引き上げることによってフロートを上昇させ、この上昇動作が検出されて警報が発せられるかどうかを調べることによって行われる。
【0008】
この点検の際に、例えばワイヤが絡まってワイヤを引き上げてもフロートを引き上げることができなかったり、ワイヤを引き上げたときにフロートが傾いて正しい姿勢で上昇しなかったりすると、フロートの上昇を検出することができず、実際には検出装置が故障していないにも関わらず、故障していると判断されてしまうことになる。
【0009】
このような事態を避けるために、ワイヤとフロートとをどのような構造で連結するかは重要な問題である。下記特許文献1には、フロートの下にワイヤを引き上げたときに支点回りに揺動するレバーを設けて、ワイヤの引き上げ動作でフロートを上昇させる構造が示されている。また、特許文献2には、ワイヤの下端を二股にしてフロートの両側に連結することにより、ワイヤの引き上げ力をフロートの中心に位置する検出位置に一致させた構造の液漏れ検出装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−159850号公報
【特許文献2】特開平10−293057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
検出装置37は、誤動作や故障が発生しないことが強く要請される。誤動作や故障の発生を避けるには、部品点数を少なくして、構造を単純化することが望ましい。このことは、装置を安価に提供する上でも望ましいことである。
【0012】
この発明は、漏出した液体の浮力によるフロートの上昇動作を検出することによって液漏れを検出する液漏れ検出装置であって、動作点検時にフロートに連結したワイヤを引き上げることによってフロートを上昇させて作動を点検するようにした地下タンクの液漏れ検出装置において、ワイヤの引き上げ力がバランスよくフロートに伝達されて、点検時に誤動作を起こすことがなく、かつ構造が簡単で部品点数が少ないために誤動作や故障の発生を防止できる検出装置を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の地下タンクの液漏れ検出装置は、二重構造の殻31、33を備えた液体貯蔵用の地下タンク1の液漏れを検出する装置であって、タンク1の貯蔵液の貯留部32と遮断されて内部がタンク1の内殻31と外殻33との間の間隙34に連通された筒体2と、この筒体の底部に配置した鉛直方向の直線ガイド5と、この直線ガイド5に昇降方向を案内されたフロート11と、このフロートの上昇動作を検出するスイッチ6と、動作確認のためにこのフロート11を引上げる紐ないしワイヤ24とを備えた地下タンクの液漏れ検出装置である。
【0014】
この発明の地下タンクの液漏れ検出装置は、前記フロート11の側方において前記直線ガイド5と平行に設けた第2の直線ガイド22と、この第2の直線ガイドに沿って移動自在に案内される滑り移動体ないし転がり移動体19とを備え、この移動体は、前記フロート11に固定したブラケット15に装着され、前記紐ないしワイヤ24は、前記フロート11と移動体19との間の位置で前記ブラケット15の一箇所に連結されていることを特徴とする。
【0015】
この発明の好ましい構造の液漏れ検出装置37は、筒体2の底面に載置される枠体3を備えている。フロート11の昇降を案内するガイド5はこの枠体3の略中央に立設され、第2の直線ガイド22は、この枠体3の側壁3aに設けたレールないし長孔とし、移動体19は、このレールないし長孔22に案内されて移動するスライダないしローラ19とする。
【0016】
ブラケット15は、フロート11の上面又は下面に固定した板材で形成するのが良く、その板材の側部一箇所を上方又は下方に90度屈曲してその屈折部16に移動体19を装着し、当該屈折部16の上端部分に前記紐ないしワイヤ24を連結する構造が、装置全体を単純化できる点で好ましい。
【発明の効果】
【0017】
上記のように構成されたこの発明の地下タンクの液漏れ検出装置は、筒体2内に漏れ出した液によりフロート11が浮上して当該浮上動作をスイッチ6で検出することにより、地下タンクの液漏れを検出する。動作を点検するときは、地上に達している筒体2の上端の蓋41を開け、紐ないしワイヤ24を引上げることにより、フロート11を上昇させて当該上昇が検出されるかどうかにより点検する。
【0018】
この発明の検出装置は、構造を単純化でき、故障が少なく、安価に提供できる。また、一本の紐ないしワイヤ24の下端を一箇所にのみ連結して、フロート11を、バランス良くかつフロート11の傾斜による障害を生ずることなく、確実に引上げることができる。そして、第2の直線ガイド22を枠体の側壁3aに設けた長孔として移動体19を当該長孔22の両側の直線縁に案内される溝付きのスライダないしローラ19とすることにより、簡単な構造で、漏出した液の浮力によるフロート11の上昇動作、及び、紐ないしワイヤ24の引上げ時のフロート11の上昇動作が円滑に行われるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の液漏れ検出装置の一実施例を示す側面図
【図2】図1の装置の正面図
【図3】地下タンクと液漏れ検出装置の関係を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、この発明の液漏れ検出装置の一実施例を説明する。図示した液漏れ検出装置は、地下タンク1の内部に設けた筒体2の底部に位置する枠体3を備えている。枠体3の中心には、合成樹脂などの被磁性材のガイドパイプ5が立設され、このガイドパイプ5内にリードスイッチ6が固定されている。リードスイッチ6のリード線7は、ガイドパイプ5の中を通って枠体3から筒体2内に引出され、筒体2を通ってその上端から地上に引き出されている。
【0021】
フロート11は、その中心に上下に貫通するガイド孔を備えており、このガイド孔にガイドパイプ5を挿通して、下ストッパ12と上ストッパ13の間で上下に自由移動できるように装着されている。フロート11のガイド孔の周壁部分には、磁石が埋設され、フロート11が上動したときに、この磁石がリードスイッチ6を動作させるようになっている。フロート11が下ストッパ12に当接している状態では、磁石がリードスイッチ6から離れており、リードスイッチ6は動作しない。下ストッパ12と上ストッパ13は、枠体3及びガイドパイプ5に固定して設けられている。
【0022】
フロート11の底部には、板材からなるブラケット15が固定されており、このブラケット15は、フロート11の側方一箇所の位置に、上方に屈折した屈折部16を備えている。この屈折部の外側、すなわち反フロート側に、片側に鍔19aを備えた円形のスライダ19と水滴形の座金17とが、重ね合わされてねじ18で締付けて固定されている。
【0023】
スライダ19の鍔19aと座金17との間には、溝21が形成されている。スライダ19は、枠体3の側壁3aに形成した上下方向の長孔22の縁に溝21を嵌め込んだ状態で、当該長孔22に案内されている。フロート11を引き上げるためのワイヤ24は、座金17の上端に連結されている。
【0024】
ワイヤ24は、上ストッパ13を支持している中間板23及び枠体の天板26に設けたガイド孔27を通って上方に延び、その上端は筒体2の上端内側に設けたフック(図示されていない)に係止されている。
【0025】
筒体2の下端の周縁は、タンクの内殻31に液封状態で溶接されており、貯蔵液を貯蔵する空間32とは完全に遮断されている。筒体2の底となる部分の内殻31には、タンクの内殻31と外殻33との間の間隙34に連通する小孔35が設けられ、筒体2の内部と間隙34とが小孔35を介して連通している。筒体2の上端は地上に位置し、当該上端には蓋が取り付けられている。
【0026】
上記構造において、タンクの内殻31や外殻33に孔や亀裂ができて液漏れが生じたときは、漏れ出した貯蔵液ないし地下水が間隙34及び小孔35を通って筒体2の底部に流入し、ある量の液が流入したとき、フロート11を浮上させる。フロート11が上ストッパ13に当接する高さ近くまで上昇すると、リードスイッチ6が動作して、その動作信号が監視装置36(図3参照)に送られ、液漏れ警報が発せられる。
【0027】
検出装置の動作を点検するときは、筒体2の上端に取り付けられている蓋を開け、ワイヤ24の上端を引き上げる。この引き上げ力は、座金17に伝達され、スライダ19を長孔22に沿って上昇させると共に、ブラケット15を介してフロート11を上昇させる。ワイヤ24の引き上げ力に逆らう力は、フロート11、ブラケット15、座金17及びスライダ19の自重と、フロート11とガイドパイプ5との間及び長孔22とスライダ19との間の摩擦抵抗である。この発明の構造では、これらの抵抗力の略中間の位置にワイヤ24の引き上げ力が作用するので、ワイヤ24の下端の一点を連結するだけて、フロート11をバランスよく、かつガイドパイプ5とスライダ19に案内させて、傾けることなく正しい姿勢で上昇させることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 地下タンク
2 筒体
3 小孔
5 ガイドパイプ
6 リードスイッチ
11 フロート
15 ブラケット
16 屈折部
19 スライダ
21 溝
22 長孔
24 ワイヤ
31 内殻
32 空間
34 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重構造の殻(31,33)を備えた液体貯蔵用の地下タンク(1)の液漏れ検出装置であって、当該タンク(1)内の液の貯留部(32)と遮断されて内部がタンク(1)の内殻(31)と外殻(33)との間の間隙(34)に連通された筒体(2)と、この筒体の底部に配置した鉛直方向の直線ガイド(5)と、この直線ガイド(5)に案内されたフロート(11)と、このフロートの上昇動作を検出するスイッチ(6)と、このフロート(11)を引上げる紐ないしワイヤ(24)とを備えた地下タンクの液漏れ検出装置において、
前記フロート(11)の側方において前記直線ガイド(5)と平行に設けた第2の直線ガイド(22)と、この第2の直線ガイドに案内される移動体(19)とを備え、この移動体は、前記フロート(11)に固定したブラケット(15)に装着され、前記紐ないしワイヤ(24)は、前記フロート(11)と移動体(19)との間の位置で前記ブラケット(15)の一箇所に連結されている、地下タンクの液漏れ検出装置。
【請求項2】
枠体(3)と、前記フロート(11)の上面ないし下面に固定された板材からなる前記ブラケット(15)とを備え、前記第2の直線ガイド(22)がこの枠体(3)に設けられ、前記移動体(19)がこのブラケット(15)の一側部に設けた鉛直方向の屈折部(16)の反フロート側の面に装着されている、請求項1記載の液漏れ検出装置。
【請求項3】
前記第2の直線ガイドが長孔(22)であり、移動体(19)が当該長孔の縁で案内される溝(21)を備えたスライダないしローラ(19)である、請求項2記載の液漏れ検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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