説明

地下埋設物浮上防止工法

【課題】本発明は、地震による地下埋設物の浮上を防止するために、地盤改良工法を組み入れて、地下埋設物浮上防止工法とする。
【解決手段】地下埋設物を囲むように複数のガイド孔を所定間隔で穿孔しておき、いずれかのガイド孔から地中に圧入管を垂直方向に建て込み、該圧入管を介して粉粒体を粉粒体圧入ポンプで地中に圧入することで地下埋設物の周囲の土質を改良する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震等による液状化現象に伴うマンホールその他の地下埋設物の浮上を防止する工法に係り、特に非開削で前記地下埋設物の周囲の地盤を改良して液状化現象を生じさせないようにした地下埋設物浮上防止工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国内では最近大きな地震が頻繁に発生し、激しい揺れと地盤の液状化現象により建物は倒壊し人的被災も多大になっている。また、地下に埋設されている重要なライフラインも各所で寸断して災害復旧にも長期の日数を要し、住民生活への影響も計り知れないものがある。
【0003】
地震による地盤の液状化現象に伴う建造物の倒壊、沈下、地下埋設物の沈下、浮上等の災害は、昭和39年の新潟沖地震により広く認識されるようになった。本発明者らは従来より震災復旧工事の一部として、地盤の液状化で傾いた建造物、下水等施設の修整、補修に携わってきたが、その経験からすると、被害の状況として多いのは、開削工法で埋設された塩化ビニール製下水道本管やマンホールが地盤の液状化により浮上したために下水道として機能していない箇所が多発していることである。
【0004】
地震による液状化現象の発生原因の多くは次の点にあるものと考えられている。すなわち、地下の水位が地上近くまであり、土質は砂の粒径が小さく、土に含む水の量と関係を有していて、平常時には砂の粒子同士がゆるくかみ合って安定しているが、激しい振動により砂の粒子同士のかみ合わせが外れ、泥水状になって地盤の支持力がなくなり、建物の倒壊、沈下、地下構造物の浮上を惹起する。
【0005】
通常、開削工法は、綱矢板を工事区域の両側へ連続的に打設したのち、目的深度まで掘削し、底部を砕石等で地均して、下水道本管、マンホール、地下構造物等を敷設し、埋め戻しに際しては安価で量的に豊富な山砂や他の材料で埋め戻しし、転圧を繰り返しながら綱矢板を引き抜いて舗装工事等を経て埋設工事が完了する。その後周囲の地下水が埋め戻し材の中へ徐々に浸透し、飽和状態になってはいるものの、平常時は地下水とのバランスが微妙に保たれている。
【0006】
前記のように、開削工法で埋設された地下埋設物は、その周囲の土質と地下水との微妙なバランスで安定を確保しているが、地震や余震による振動を受け続けると液状化現象に発展し、比重の軽い塩化ビニール製の本管、マンホールその他の地下埋設物が浮上して多大の被害をもたらすこととなる。
【0007】
これに対し、非開削工法で埋設された地下埋設物は、その周囲の土質がそのまま保たれることから、土質と地下水とのバランスが長年月にわたってある程度とれており、地震による液状化現象の発生は比較的少ないが、このような非開削工法で埋設された地下埋設物であっても液状化現象による地下埋設物の浮上は皆無ではないから、地下埋設物の周辺の土質を改良して液状化を抑えることは重要である。
【0008】
従来より、我々は、下水道等の地下埋設管が振動等により所定の埋設位置から沈下している場合にその移動修正を非開削で行うことができる地中埋設管の移動修正工法を提案し(特許文献1)、その実施によって多大の効果を発揮している。また、軟弱地盤や地震により液状化し易い地盤等を非開削で改良する地盤改良工法を提案し(特許文献2)、この工法の実施によって各地、各所の地盤改良に優れた効果を発揮している。
【特許文献1】特許第2688911号公報
【特許文献2】特許第3292801号公報
【0009】
特許文献1に記載の地中埋設管の移動修正工法は、地中では埋設管は軽量物であるから、移動しようとする埋設管の移動予定域の土砂に高圧水を注入すると共に加振して液状化し、その液状化によって軽量物たる埋設管を浮上させて移動修正する工法であり、この工法は土砂の液状化により地下の軽量物が浮上する現象をむしろ積極的に利用する工法である。
【0010】
一方、特許文献2に記載の地盤改良工法は、地盤を改良すべき地中に管を建て込んでその管を介して地盤改良剤を注入する地盤改良工法において、普通ポルトランドセメントを主材料とする硬化材と廃棄物焼却灰を主材料とする骨材とを混合して得られた粉粒体からなる地盤改良剤を前記管を介して地中に圧入し、その圧入された粉粒体の周囲の水分を吸水させて硬化させ、管を引き上げて順次上層域に施す工法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
地震等による地盤の液状化により地下埋設物が浮上する事故が多発していることに鑑み、地下埋設物の浮上を防止するために、前記特許文献2に記載のような地盤改良工法を組み入れて、地下埋設物浮上防止工法として構築することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、マンホール等の地下埋設物が地震その他の振動時の液状化現象に伴って浮上するのを防止する地下埋設物浮上防止工法であって、前記地下埋設物を囲むようにその周辺域に複数のガイド孔を所定間隔で穿孔しておき、いずれかのガイド孔から地中に圧入管設置機により圧入管を垂直方向に建て込み、該圧入管を介して、普通ポルトランドセメントを主材料とする硬化剤と廃棄物焼却灰等の吸水性を有する粉体を主材料とする骨材とを混合して得られた粉粒体を粉粒体圧入ポンプで地中に圧入することによりその圧入された粉粒体の周囲の水分を吸収させて硬化させ、最深部に粉粒体を圧入した後、圧入管を垂直方向に所定量引き上げて粉粒体を再度圧入し、このようにして圧入管の引き上げと粉粒体の圧入とを繰り返して施工し、前記地下埋設物を囲む他のガイド孔を介して圧入管を圧入して順次施工することにより地下埋設物の周囲の地盤を改良することを特徴とする。
【0013】
この場合、圧入管を介しての粉粒体の圧入を断続的に行うことが有効であり、また、地下埋設物の周囲の対角位置に穿孔されたガイド孔を介して順次施工することが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の地下埋設物浮上防止工法によれば、地下埋設物の周辺の地盤が液状化し易い土質であっても、液状化の要素である水分を骨材により吸水すると共に周辺の土砂等を硬化させることができ、このように地盤を改良することにより液状化に伴う地下埋設物の浮上を防止することができる。
【0015】
特に本発明では、圧入管の引き上げと粉粒体の圧入とを繰り返して施工し、しかも地下埋設物を囲む他のガイド孔を介して圧入管を圧入して順次施工するするから、地下埋設物周辺の深層部から表層部にわたり土質を改良することができ、しかも地下埋設物を囲む周辺の土質を改良することができるから、地震等による液状化現象に伴う地下埋設物の浮上を的確に防止することができる。
【0016】
この場合、圧入管を介しての粉粒体の圧入を断続的に行うことにより、粉粒体の浸透及び硬化材による硬化をより確実に行うことができる。また、地下埋設物の周囲の対角位置に穿孔されたガイド孔を介して順次施工することにより、地下埋設物の周囲を偏ることなく施工することができる。
【実施例】
【0017】
図面は本発明に係る地下埋設物浮上防止工法を地下埋設物としての組立マンホールに実施した例を示し、図1は地中Gに埋設された組立マンホール1を囲むようにその周辺域に複数のガイド孔3を所定間隔で穿孔した状態を示す平面図であり、図示例ではガイド孔3は4箇所に穿孔されている。図において、1aはマンホールの蓋、2は下水本管を示している。
【0018】
図2は前記ガイド孔3を穿孔する工程を示す断面図、図3は粉粒体圧入工程を示す断面図、図4は施工を完了した状態を示す平面図、図5は施工を完了した状態を示す断面図、図6は施工前の砂粒の状態を拡大して示す断面図、図7は粉粒体の圧入により砂粒が圧密されている状態を示す拡大断面図である。
【0019】
図2において、4は下端部にコアビット4aを備えたコアドリル装置であって、舗装路面GLにガイド孔用ホール3aを穿孔するために使用され、これを使用することにより施工終了後に容易に舗装復旧できるようにする。
【0020】
施工区域内は他のライフライン等の埋設が多いから、これらのライフラインを破損しないように、前記ガイド孔3の穿孔及び探針はウォータージェット方式で行われ、高圧ポンプ7からの高圧水を探針ロッド5内に送って先端からジェット噴流6させて掘り進みながら、探針ロッド5を降下させる。ガイド孔3からはウォータージェット推進に伴う泥流水8が地上に噴出するから、これをバキューム装置9で吸い取る。図2において、15は組立マンホール1の床盤、16は砕石である。
【0021】
図3に示すように、4箇所のうちのいずれかのガイド孔3を介して地中Gに圧入管設置機11により圧入管10を垂直方向に、例えば、前記砕石16の下方、約500mm程度の深さまで建て込む。12は圧入管設置機11の油圧ホースである。
【0022】
前記のようにして地中に建て込まれた圧入管10を介して、普通ポルトランドセメントを主材料とする硬化剤と廃棄物焼却灰等の吸水性を有する粉体を主材料とする骨材とを混合して得られた粉粒体CPを粉粒体圧入ポンプ13で最深部に圧入する。図3において、14は粉粒体CPの圧送ホースである。
【0023】
前記のようにして地中Gに圧入された粉粒体CPはその周囲の祖粒子砂を圧密して絞り出した水分を吸収し、粉粒体CPは流動性を失って改良体になり、その周囲は圧密土GA(図4,図5)となる。この粉粒体CPの地中への圧入が断続的に行われると、粉粒体CPは改良体部分及び圧密土GAを避けて軟らかい方向へと流動し、前記圧密、吸水を繰り返して軟弱土質が順次改良される。また、粉粒体CPは最深部に圧入されたのち、前記圧入管10を所定量引き上げた高さで再度圧入し、このようにして圧入管10の引き上げと粉粒体CPの圧入とを繰り返して施工する。
【0024】
図6は施工前の土質を模式的に表示した断面図であり、G1は砂粒、G2は過剰間隙水を示し、過剰間隙水G2は飽和状態になっていて、液化現象が生じやすい状態となっている。図7は本発明の地下埋設物浮上防止工法を施工した後の土質を模式的に表示した断面図であり、粉粒体CPが圧入されると、間隙水G2を吸収し砂粒G1が圧密されて液化現象が生じない状態となっている。
【0025】
前記のようにして1箇所のガイド孔3を介して施工したのち、組立マンホール1の周囲の各ガイド孔3を介して順次施工する。この場合、前記組立マンホール1の周囲の対角位置に穿孔されたガイド孔3を介して順次施工することにより、図4、図5に示すように、組立マンホール1の周囲を偏ることなく施工することができる。最後に、図5に示すように、前記ガイド孔用ホール3aを塞いで路面復旧17をする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】組立マンホールを囲むようにその周辺域に複数のガイド孔を所定間隔で穿孔した状態を示す平面図である。
【図2】ガイド孔を穿孔する工程を示す断面図である。
【図3】粉粒体圧入工程を示す断面図である。
【図4】施工を完了した状態を示す平面図である。
【図5】施工を完了した状態を示す断面図である。
【図6】施工前の砂粒の状態を拡大して示す断面図であり、液化現象が生じやすい状態を示している。
【図7】施工前の砂粒の状態を拡大して示す断面図であり、粉粒体の圧入により砂粒が圧密されて、液化現象が生じない状態を示している。
【符号の説明】
【0027】
1 地下埋設物としての組立マンホール
2 下水本管
3 ガイド孔
4 コアドリル装置
5 探針ロッド
6 ジェット噴流
7 高圧ポンプ
9 バキューム装置
10 圧入管
11 圧入管設置機
12 油圧ホース
13 圧入ポンプ
14 圧送ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホール等の地下埋設物が地震その他の振動時の液状化現象に伴って浮上するのを防止する地下埋設物浮上防止工法であって、前記地下埋設物を囲むようにその周辺域に複数のガイド孔を所定間隔で穿孔しておき、いずれかのガイド孔から地中に圧入管設置機により圧入管を垂直方向に建て込み、該圧入管を介して、普通ポルトランドセメントを主材料とする硬化剤と廃棄物焼却灰等の吸水性を有する粉体を主材料とする骨材とを混合して得られた粉粒体を粉粒体圧入ポンプで地中に圧入することによりその圧入された粉粒体の周囲の水分を吸収させて硬化させ、最深部に粉粒体を圧入した後、圧入管を垂直方向に所定量引き上げて粉粒体を再度圧入し、このようにして圧入管の引き上げと粉粒体の圧入とを繰り返して施工し、前記地下埋設物を囲む他のガイド孔を介して圧入管を圧入して順次施工することにより地下埋設物の周囲の地盤を改良することを特徴とする地下埋設物浮上防止工法。
【請求項2】
圧入管を介しての粉粒体の圧入を断続的に行うことを特徴とする請求項1に記載の地下埋設物浮上防止工法。
【請求項3】
地下埋設物の周囲の対角位置に穿孔されたガイド孔を介して順次施工することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の地下埋設物浮上防止工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−114685(P2009−114685A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286975(P2007−286975)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(595136771)
【Fターム(参考)】