地下構造物の上床版撤去方法
【課題】安全性の向上、工期短縮、コスト縮減、道路占有時間の短縮を図りながら、地下構造物の上床版を解体・撤去する。
【解決手段】地中に埋設され、上床版2と下床版3と両側壁版4とから構成される中空状の地下構造物1において前記上床版2を解体・撤去するための方法であって、支保工9上で上床版2を大切りブロック10状に切断する大切りブロック切断工程と、大切りブロック10をセンターホール型の油圧ジャッキ20により吊下げ支持した後、支保工9を撤去する支保工撤去工程と、大切りブロック10を下床版3上に降下させる大切りブロック降下工程と、大切りブロック10を下床版3上で小切りブロック11状に切断する小切りブロック切断工程と、小切りブロック11を坑内に設けたウインチ22によって搬出口12近傍の下床版上に横移動した後、搬出口12から坑外へ搬出する小切りブロック搬出工程とからなる。
【解決手段】地中に埋設され、上床版2と下床版3と両側壁版4とから構成される中空状の地下構造物1において前記上床版2を解体・撤去するための方法であって、支保工9上で上床版2を大切りブロック10状に切断する大切りブロック切断工程と、大切りブロック10をセンターホール型の油圧ジャッキ20により吊下げ支持した後、支保工9を撤去する支保工撤去工程と、大切りブロック10を下床版3上に降下させる大切りブロック降下工程と、大切りブロック10を下床版3上で小切りブロック11状に切断する小切りブロック切断工程と、小切りブロック11を坑内に設けたウインチ22によって搬出口12近傍の下床版上に横移動した後、搬出口12から坑外へ搬出する小切りブロック搬出工程とからなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上床版と下床版と両側壁版とから構成される中空状の地下構造物の撤去に係り、特に安全性の向上、工期短縮、コスト縮減、道路占有時間の短縮を図りながら、前記上床版を解体・撤去するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ボックスカルバートなど地中に埋設され、上床版と下床版と両側壁版とから構成される中空状の地下構造物の解体工事の内、上床版の解体工事は、一般的に上床版を支保工で支持した後、ワイヤーソーなどによって前記上床版を搬出可能な大きさまで切断(小切り)し、この小切りしたブロックを地上のレッカーなどによって吊り上げて搬出する方法が採用されている。
【0003】
ところが、前記地下構造物と地上との間に下水管やガス管、電線管などの埋設物が埋設されている場合は、前記小切りブロックを直上に吊り上げて搬出することが不可能か困難である。また、解体場所の地上が交差点であったり、幹線道路であったりする場所には、小切りブロックを搬出する搬出口などの占有作業帯域を常時確保することができない。そこで、坑外へ吊り上げ可能な位置まで、前記小切りブロックを横移動させる必要がある。
【0004】
例えば下記特許文献1においては、上床版の上側に撤去作業可能な空間を設け、前記上床板の上面に既設躯体の長手方向に沿う溝型線路を敷設するとともに、溝型線路上を滑走するチルタンクを配しておき、上床版を小切りした部分躯体を、既設躯体の横方向外側に配されているスーパーリフターを用いて持ち上げてチルタンク上に載置して、溝型線路に沿ってウインチで牽引して地上への出口位置まで横移動させ、搬出する地下躯体の切断撤去方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の方法では、前述のような埋設物が存在する場合には適用できない。また、上床板上に溝型線路を敷設する手間が掛かり、工期短縮又はコスト縮減が図り難い。
【0006】
このため、前記埋設物等が存在する場合には、従来より、図10〜図14に示される手順によって、小切りブロックの解体・横移動・搬出が行われていた。具体的には、図10に示されるように、解体する上床版50を支保工51で支持した後、下水管52などの埋設物との接続部分を切断し縁切りした上で、所定の大きさの小切りブロック状に切断する。次に図11に示されるように、小切りブロック54をジャーナルジャッキ55、55…により仮受け支持した後、支保工51の高さを所定量(1回約10cmづつ、3回で約30cm下げる。)だけ下げておく。そして、図12に示されるように、前記ジャーナルジャッキ55…を徐々に下げることによって小切りブロック54を支保工51上に載置する。その後、図13に示されるように、小切りブロック54に、埋設物近傍の覆工体56を支点としたチェーンブロック57と、搬出口近傍の覆工体56を支点としたウインチ58とを取付けるとともに、前記チェーンブロック57及びウインチ58を操作して、小切りブロック54を吊下げ移動し、搬出口近傍の坑内に仮置きする。しかる後、図14に示されるように、レッカー59により搬出口60から坑外に搬出する。
【特許文献1】特開2007−138595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図10〜図14に示される手順による小切りブロックの解体方法の場合は、不安定な支保工上での切断作業、ジャーナルジャッキによる盛替え、チェーンブロック及びウインチによる吊下げ移動などの一連の作業を、切り出す小切りブロック毎に繰り返し行う必要があった。このため、作業時間及び作業コストが増すとともに、高所作業による危険性が増すといった問題があった。また、作業が長期に亘るため、小切りブロックを搬出するための道路占有期間が長くなる欠点があった。近年、インフラ改良工事においては、道路使用上の制限、坑外吊り上げのための上空使用の制限、地下活用による埋設物の増加など、施工条件は今後ますます厳しくなる状況にあり、このような厳しい施工条件下でも効率的に解体・撤去が行える方法が強く望まれている。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、安全性の向上、工期短縮、コスト縮減、道路占有時間の短縮を図りながら、地下構造物の上床版を効率的に解体・撤去し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、上床版と下床版と両側壁版とから構成される中空状の地下構造物において前記上床版を解体・撤去するための方法であって、
前記地下構造物の上載土砂を撤去するとともに、路面覆工体を設置する準備工程と、
前記下床版上に支保工を設置し、該支保工上で前記上床版を大切りブロック状に切断する大切りブロック切断工程と、
前記路面覆工体上に設置した吊下げ降下設備によって前記大切りブロックを吊下げ支持した後、前記支保工を撤去する支保工撤去工程と、
前記大切りブロックを前記下床版上まで降下させる大切りブロック降下工程と、
前記大切りブロックを下床版上で小切りブロック状に切断する小切りブロック切断工程と、
前記小切りブロックをウインチによって搬出口近傍の下床版上まで横移動した後、前記搬出口から坑外へ搬出する小切りブロック搬出工程と、
からなることを特徴とする地下構造物の上床版撤去方法が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、下床版上に支保工を設置し、地下構造物の上床版を支保工上で大切りブロック状に切断し、この大切りブロックを下床版上まで降下させてから小切りブロック状に切断するようにしたため、高所での作業が減少し、安全性の向上が図れるようになるとともに、切断効率も飛躍的に向上できるようになる。また、従来のように小切りブロックを支保工上で小切りにして、ジャーナルジャッキで降下させるという一連の作業を繰り返し行う必要が無くなり、飛躍的に工期短縮が図れるとともに、作業コストも縮減できるようになる。また、工期短縮に伴い、地上の道路占有期間も短縮でき、交通などへの影響も最小化できるようになる。
【0011】
請求項2に係る本発明として、前記小切りブロック搬出工程において、小切りブロックをウインチによって搬出口近傍の下床版上まで横移動した後、搬出口から坑外へ搬出する請求項1記載の地下構造物の上床版撤去方法が提供される。
【0012】
請求項3に係る本発明として、前記吊下げ降下設備は、中心部にPC鋼棒が縦方向に挿通されたセンターホール型の油圧ジャッキを用いる請求項1、2いずれかに記載の地下構造物の上床版撤去方法が提供される。
【0013】
上記請求項3記載の発明は、大切りブロックを吊下げ支持するとともに、そのまま降下させる設備として、センターホール型の油圧ジャッキを使用するようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
以上詳説のとおり本発明によれば、安全性の向上、工期短縮、コスト縮減、道路占有時間の短縮を図りながら、地下構造物の上床版を解体・撤去することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。図1は本発明の撤去方法の対象となる地下構造物例を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【0016】
対象となる地下構造物1は、箱形断面トンネル(ボックスカルバート)などのように地中に埋設され、上床版2と下床版3と両側の側壁版4、4とから構成される中空状の構造物である。図示された地下構造物1の例では、下水管6やガス管7、電線管8などの埋設物が埋設されているとともに、前記下水管6の下面部は、上床版2の上部に埋設された状態で設置されており、かつ地上が常時占有できない施工条件である。
【0017】
以下、前記上床版2の解体・撤去方法について図面(図2〜図9)を参照しながら具体的に詳述する。なお、図2〜図9に示される上床版2の解体・撤去手順は、解体対象区間Sの内、埋設物6〜8が存在している最終ブロックS3の解体手順を示したものである(図2参照)。
【0018】
(準備工程)
前記地下構造物1は、地盤内に埋設されているが、解体・撤去に当たっては、先ず図1に示されるように、上床版2の上側に存在する上載土砂を撤去するとともに、路面覆工体5を設置し、上床版2の撤去作業空間を確保するとともに、上床版2の撤去に伴って土砂が落下しないようにしておく。
【0019】
(大切りブロック切断工程)
図2に示されるように、撤去予定の上床版2を支保工9で支持する。次に、図3に示されるように、前記撤去予定の上床版2と、その他の接続部分、すなわち前記埋設物6、両側壁版4、4及び対面側で接続されている垂壁14との接続部分などの接続部分を、すべて所定の切断手段によって切断することによって、大切りブロック10に切断する。なお、両側壁版4,4との切断は、上床版2を落し込みできるように、上床版端部の鉛直面で切断する。
【0020】
ここで、前記切断手段としては、ワイヤーソー(図示せず)を用いることが好ましい。前記ワイヤーソーによる切断は、切断用ビーズをはめ込んだエンドレス状ワイヤーソーを、上床版2の切断予定部分の端部に穿設した孔などに通して巻き付け、駆動機によって張力を与えながら循環走行させることにより、上床版2を切断するものである。これにより、上床版2の大型切断が可能となり、埋設物などが接続している場合でも複雑な形状に切断でき、地下作業においても騒音、振動、粉塵の発生が少なく作業環境に優れるなどの効果を有する。
【0021】
前記大切りブロック10は、一度で、できる限り大型に切り出すことが作業効率上好ましいが、支保工9の支持強度、路面覆工体5の強度、及び後述する吊下げ降下設備20の吊下げ能力、設置台数との関係等を考慮して決定する。作業性の点からは、概ね80t(トン)〜120t程度のブロックとなるように切断することが望ましい。なお、切断後の大切りブロック10は、前記支保工9によって支持されている状態である。
【0022】
(支保工撤去工程)
次に、図4に示されるように、支保工9によって支持されている大切りブロック10を、路面覆工体5上に設置した吊下げ降下設備20により、複数箇所、図示例では吊下物が安定するように例えば4点で吊下げ支持する。前記吊下げ降下設備20としては、図4に示されるように、汎用のセンターホール型の油圧ジャッキ20を用いることができる。このセンターホール型の油圧ジャッキ20は、油圧シリンダと作動ロッドとの中心部にPC鋼棒21が挿通する貫通孔を備え、上部側と下部側とに夫々、PC鋼棒21のクランプ手段を備えるとともに、上部側クランプ部分が伸縮ジャッキにより昇降可能とされたものであり、前記PC鋼棒21が大切りブロック10に挿通されるとともに、下端が大切りブロック10の下面に定着され、前記油圧ジャッキ20によってPC鋼棒21を上部側クランプと下部側クランプとで順に盛替えしながら、下降させることにより大切りブロック10を徐々に降下させるようになっている。
【0023】
その後、図5に示されるように、前記油圧ジャッキ20により僅かだけ大切りブロック10を持上げ、支保工9から地切りした状態で、大切りブロック10下部の支保工9をすべて撤去する。
【0024】
(大切りブロック降下工程)
次に、図6に示されるように、前記油圧ジャッキ20によって吊下げ支持された大切りブロック10を、油圧ジャッキ20の操作によって、下床版3上まで徐々に降下させる。
【0025】
(小切りブロック切断工程)
次に、図7に示されるように、下床版3上に置かれた大切りブロック10を、複数の小切りブロック11、11…に切断する。この切断の際にも、前述のワイヤーソーを用いた切断方法とすることが好ましい。
【0026】
前記小切りブロック11は、例えば1t〜5t程度の大きさとすることができる。ここで、従来の解体方法では、支保工上で小切りが行われていたため、支保工の安定性などの観点から、小切りブロック1つ当たりの大きさを2t程度としていたが、本発明では、下床版3上で切断するため、後述する搬出口から搬出可能な程度の大きさであればよく、小切りブロック11を大型化することも可能となり、作業が安全かつ効率的に行われるようになる。
【0027】
(小切りブロック搬出工程)
次に、図8に示されるように、小切りブロック11に、路面覆工体5の下面を支点として張設され、ウインチ22から繰り出されるワイヤ23を取り付け、ウインチ22によるワイヤ23の操作によって、小切りブロック11を搬出口12近傍の下床版3上まで横移動する。このとき、小切りブロック11は、1個ずつ横移動するようにするが、場合によっては複数個纏めて同時に横移動するようにしてもよい。これにより、小切りブロックの移動に要する作業工数を飛躍的に低減することができる。
【0028】
しかる後、図9に示されるように、小切りブロック11は、地上のレッカー車(図示せず)などによって、搬出口12から坑外へ搬出する。
【0029】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、図2に示されるように、上床版2のほぼ全幅を1ブロックとして、大切りブロック10として切断したが、上床版2の全幅が長い場合は、幅方向に分割し、分割領域毎に本発明を適用するようにしてもよい。また、占有可能ならば、作業帯の形状寸法によって大型ブロックの形状寸法も変化させるようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る撤去方法の対象となる地下構造物1を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図2】本発明に係る撤去方法の作業手順(その1)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図3】本発明に係る撤去方法の作業手順(その2)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図4】本発明に係る撤去方法の作業手順(その3)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図5】本発明に係る撤去方法の作業手順(その4)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図6】本発明に係る撤去方法の作業手順(その5)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図7】本発明に係る撤去方法の作業手順(その6)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図8】本発明に係る撤去方法の作業手順(その7)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図9】本発明に係る撤去方法の作業手順(その8)を示す、横断面図である。
【図10】従来の撤去方法の作業手順(その1)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図11】従来の撤去方法の作業手順(その2)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図12】従来の撤去方法の作業手順(その3)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図13】従来の撤去方法の作業手順(その4)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図14】従来の撤去方法の作業手順(その5)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1…地下構造物、2…上床版、3…下床版、4…側壁版、5…路面覆工体、6…下水管、7…ガス管、8…電線管、9…支保工、10…大切りブロック、11…小切りブロック、12…搬出口、20…油圧ジャッキ、21…PC鋼棒、22…ウインチ、23…ワイヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、上床版と下床版と両側壁版とから構成される中空状の地下構造物の撤去に係り、特に安全性の向上、工期短縮、コスト縮減、道路占有時間の短縮を図りながら、前記上床版を解体・撤去するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ボックスカルバートなど地中に埋設され、上床版と下床版と両側壁版とから構成される中空状の地下構造物の解体工事の内、上床版の解体工事は、一般的に上床版を支保工で支持した後、ワイヤーソーなどによって前記上床版を搬出可能な大きさまで切断(小切り)し、この小切りしたブロックを地上のレッカーなどによって吊り上げて搬出する方法が採用されている。
【0003】
ところが、前記地下構造物と地上との間に下水管やガス管、電線管などの埋設物が埋設されている場合は、前記小切りブロックを直上に吊り上げて搬出することが不可能か困難である。また、解体場所の地上が交差点であったり、幹線道路であったりする場所には、小切りブロックを搬出する搬出口などの占有作業帯域を常時確保することができない。そこで、坑外へ吊り上げ可能な位置まで、前記小切りブロックを横移動させる必要がある。
【0004】
例えば下記特許文献1においては、上床版の上側に撤去作業可能な空間を設け、前記上床板の上面に既設躯体の長手方向に沿う溝型線路を敷設するとともに、溝型線路上を滑走するチルタンクを配しておき、上床版を小切りした部分躯体を、既設躯体の横方向外側に配されているスーパーリフターを用いて持ち上げてチルタンク上に載置して、溝型線路に沿ってウインチで牽引して地上への出口位置まで横移動させ、搬出する地下躯体の切断撤去方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の方法では、前述のような埋設物が存在する場合には適用できない。また、上床板上に溝型線路を敷設する手間が掛かり、工期短縮又はコスト縮減が図り難い。
【0006】
このため、前記埋設物等が存在する場合には、従来より、図10〜図14に示される手順によって、小切りブロックの解体・横移動・搬出が行われていた。具体的には、図10に示されるように、解体する上床版50を支保工51で支持した後、下水管52などの埋設物との接続部分を切断し縁切りした上で、所定の大きさの小切りブロック状に切断する。次に図11に示されるように、小切りブロック54をジャーナルジャッキ55、55…により仮受け支持した後、支保工51の高さを所定量(1回約10cmづつ、3回で約30cm下げる。)だけ下げておく。そして、図12に示されるように、前記ジャーナルジャッキ55…を徐々に下げることによって小切りブロック54を支保工51上に載置する。その後、図13に示されるように、小切りブロック54に、埋設物近傍の覆工体56を支点としたチェーンブロック57と、搬出口近傍の覆工体56を支点としたウインチ58とを取付けるとともに、前記チェーンブロック57及びウインチ58を操作して、小切りブロック54を吊下げ移動し、搬出口近傍の坑内に仮置きする。しかる後、図14に示されるように、レッカー59により搬出口60から坑外に搬出する。
【特許文献1】特開2007−138595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図10〜図14に示される手順による小切りブロックの解体方法の場合は、不安定な支保工上での切断作業、ジャーナルジャッキによる盛替え、チェーンブロック及びウインチによる吊下げ移動などの一連の作業を、切り出す小切りブロック毎に繰り返し行う必要があった。このため、作業時間及び作業コストが増すとともに、高所作業による危険性が増すといった問題があった。また、作業が長期に亘るため、小切りブロックを搬出するための道路占有期間が長くなる欠点があった。近年、インフラ改良工事においては、道路使用上の制限、坑外吊り上げのための上空使用の制限、地下活用による埋設物の増加など、施工条件は今後ますます厳しくなる状況にあり、このような厳しい施工条件下でも効率的に解体・撤去が行える方法が強く望まれている。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、安全性の向上、工期短縮、コスト縮減、道路占有時間の短縮を図りながら、地下構造物の上床版を効率的に解体・撤去し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、上床版と下床版と両側壁版とから構成される中空状の地下構造物において前記上床版を解体・撤去するための方法であって、
前記地下構造物の上載土砂を撤去するとともに、路面覆工体を設置する準備工程と、
前記下床版上に支保工を設置し、該支保工上で前記上床版を大切りブロック状に切断する大切りブロック切断工程と、
前記路面覆工体上に設置した吊下げ降下設備によって前記大切りブロックを吊下げ支持した後、前記支保工を撤去する支保工撤去工程と、
前記大切りブロックを前記下床版上まで降下させる大切りブロック降下工程と、
前記大切りブロックを下床版上で小切りブロック状に切断する小切りブロック切断工程と、
前記小切りブロックをウインチによって搬出口近傍の下床版上まで横移動した後、前記搬出口から坑外へ搬出する小切りブロック搬出工程と、
からなることを特徴とする地下構造物の上床版撤去方法が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、下床版上に支保工を設置し、地下構造物の上床版を支保工上で大切りブロック状に切断し、この大切りブロックを下床版上まで降下させてから小切りブロック状に切断するようにしたため、高所での作業が減少し、安全性の向上が図れるようになるとともに、切断効率も飛躍的に向上できるようになる。また、従来のように小切りブロックを支保工上で小切りにして、ジャーナルジャッキで降下させるという一連の作業を繰り返し行う必要が無くなり、飛躍的に工期短縮が図れるとともに、作業コストも縮減できるようになる。また、工期短縮に伴い、地上の道路占有期間も短縮でき、交通などへの影響も最小化できるようになる。
【0011】
請求項2に係る本発明として、前記小切りブロック搬出工程において、小切りブロックをウインチによって搬出口近傍の下床版上まで横移動した後、搬出口から坑外へ搬出する請求項1記載の地下構造物の上床版撤去方法が提供される。
【0012】
請求項3に係る本発明として、前記吊下げ降下設備は、中心部にPC鋼棒が縦方向に挿通されたセンターホール型の油圧ジャッキを用いる請求項1、2いずれかに記載の地下構造物の上床版撤去方法が提供される。
【0013】
上記請求項3記載の発明は、大切りブロックを吊下げ支持するとともに、そのまま降下させる設備として、センターホール型の油圧ジャッキを使用するようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
以上詳説のとおり本発明によれば、安全性の向上、工期短縮、コスト縮減、道路占有時間の短縮を図りながら、地下構造物の上床版を解体・撤去することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。図1は本発明の撤去方法の対象となる地下構造物例を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【0016】
対象となる地下構造物1は、箱形断面トンネル(ボックスカルバート)などのように地中に埋設され、上床版2と下床版3と両側の側壁版4、4とから構成される中空状の構造物である。図示された地下構造物1の例では、下水管6やガス管7、電線管8などの埋設物が埋設されているとともに、前記下水管6の下面部は、上床版2の上部に埋設された状態で設置されており、かつ地上が常時占有できない施工条件である。
【0017】
以下、前記上床版2の解体・撤去方法について図面(図2〜図9)を参照しながら具体的に詳述する。なお、図2〜図9に示される上床版2の解体・撤去手順は、解体対象区間Sの内、埋設物6〜8が存在している最終ブロックS3の解体手順を示したものである(図2参照)。
【0018】
(準備工程)
前記地下構造物1は、地盤内に埋設されているが、解体・撤去に当たっては、先ず図1に示されるように、上床版2の上側に存在する上載土砂を撤去するとともに、路面覆工体5を設置し、上床版2の撤去作業空間を確保するとともに、上床版2の撤去に伴って土砂が落下しないようにしておく。
【0019】
(大切りブロック切断工程)
図2に示されるように、撤去予定の上床版2を支保工9で支持する。次に、図3に示されるように、前記撤去予定の上床版2と、その他の接続部分、すなわち前記埋設物6、両側壁版4、4及び対面側で接続されている垂壁14との接続部分などの接続部分を、すべて所定の切断手段によって切断することによって、大切りブロック10に切断する。なお、両側壁版4,4との切断は、上床版2を落し込みできるように、上床版端部の鉛直面で切断する。
【0020】
ここで、前記切断手段としては、ワイヤーソー(図示せず)を用いることが好ましい。前記ワイヤーソーによる切断は、切断用ビーズをはめ込んだエンドレス状ワイヤーソーを、上床版2の切断予定部分の端部に穿設した孔などに通して巻き付け、駆動機によって張力を与えながら循環走行させることにより、上床版2を切断するものである。これにより、上床版2の大型切断が可能となり、埋設物などが接続している場合でも複雑な形状に切断でき、地下作業においても騒音、振動、粉塵の発生が少なく作業環境に優れるなどの効果を有する。
【0021】
前記大切りブロック10は、一度で、できる限り大型に切り出すことが作業効率上好ましいが、支保工9の支持強度、路面覆工体5の強度、及び後述する吊下げ降下設備20の吊下げ能力、設置台数との関係等を考慮して決定する。作業性の点からは、概ね80t(トン)〜120t程度のブロックとなるように切断することが望ましい。なお、切断後の大切りブロック10は、前記支保工9によって支持されている状態である。
【0022】
(支保工撤去工程)
次に、図4に示されるように、支保工9によって支持されている大切りブロック10を、路面覆工体5上に設置した吊下げ降下設備20により、複数箇所、図示例では吊下物が安定するように例えば4点で吊下げ支持する。前記吊下げ降下設備20としては、図4に示されるように、汎用のセンターホール型の油圧ジャッキ20を用いることができる。このセンターホール型の油圧ジャッキ20は、油圧シリンダと作動ロッドとの中心部にPC鋼棒21が挿通する貫通孔を備え、上部側と下部側とに夫々、PC鋼棒21のクランプ手段を備えるとともに、上部側クランプ部分が伸縮ジャッキにより昇降可能とされたものであり、前記PC鋼棒21が大切りブロック10に挿通されるとともに、下端が大切りブロック10の下面に定着され、前記油圧ジャッキ20によってPC鋼棒21を上部側クランプと下部側クランプとで順に盛替えしながら、下降させることにより大切りブロック10を徐々に降下させるようになっている。
【0023】
その後、図5に示されるように、前記油圧ジャッキ20により僅かだけ大切りブロック10を持上げ、支保工9から地切りした状態で、大切りブロック10下部の支保工9をすべて撤去する。
【0024】
(大切りブロック降下工程)
次に、図6に示されるように、前記油圧ジャッキ20によって吊下げ支持された大切りブロック10を、油圧ジャッキ20の操作によって、下床版3上まで徐々に降下させる。
【0025】
(小切りブロック切断工程)
次に、図7に示されるように、下床版3上に置かれた大切りブロック10を、複数の小切りブロック11、11…に切断する。この切断の際にも、前述のワイヤーソーを用いた切断方法とすることが好ましい。
【0026】
前記小切りブロック11は、例えば1t〜5t程度の大きさとすることができる。ここで、従来の解体方法では、支保工上で小切りが行われていたため、支保工の安定性などの観点から、小切りブロック1つ当たりの大きさを2t程度としていたが、本発明では、下床版3上で切断するため、後述する搬出口から搬出可能な程度の大きさであればよく、小切りブロック11を大型化することも可能となり、作業が安全かつ効率的に行われるようになる。
【0027】
(小切りブロック搬出工程)
次に、図8に示されるように、小切りブロック11に、路面覆工体5の下面を支点として張設され、ウインチ22から繰り出されるワイヤ23を取り付け、ウインチ22によるワイヤ23の操作によって、小切りブロック11を搬出口12近傍の下床版3上まで横移動する。このとき、小切りブロック11は、1個ずつ横移動するようにするが、場合によっては複数個纏めて同時に横移動するようにしてもよい。これにより、小切りブロックの移動に要する作業工数を飛躍的に低減することができる。
【0028】
しかる後、図9に示されるように、小切りブロック11は、地上のレッカー車(図示せず)などによって、搬出口12から坑外へ搬出する。
【0029】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、図2に示されるように、上床版2のほぼ全幅を1ブロックとして、大切りブロック10として切断したが、上床版2の全幅が長い場合は、幅方向に分割し、分割領域毎に本発明を適用するようにしてもよい。また、占有可能ならば、作業帯の形状寸法によって大型ブロックの形状寸法も変化させるようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る撤去方法の対象となる地下構造物1を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図2】本発明に係る撤去方法の作業手順(その1)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図3】本発明に係る撤去方法の作業手順(その2)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図4】本発明に係る撤去方法の作業手順(その3)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図5】本発明に係る撤去方法の作業手順(その4)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図6】本発明に係る撤去方法の作業手順(その5)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図7】本発明に係る撤去方法の作業手順(その6)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図8】本発明に係る撤去方法の作業手順(その7)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図9】本発明に係る撤去方法の作業手順(その8)を示す、横断面図である。
【図10】従来の撤去方法の作業手順(その1)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図11】従来の撤去方法の作業手順(その2)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図12】従来の撤去方法の作業手順(その3)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図13】従来の撤去方法の作業手順(その4)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【図14】従来の撤去方法の作業手順(その5)を示す、(A)は横断面図、(B)は縦断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1…地下構造物、2…上床版、3…下床版、4…側壁版、5…路面覆工体、6…下水管、7…ガス管、8…電線管、9…支保工、10…大切りブロック、11…小切りブロック、12…搬出口、20…油圧ジャッキ、21…PC鋼棒、22…ウインチ、23…ワイヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上床版と下床版と両側壁版とから構成される中空状の地下構造物において前記上床版を解体・撤去するための方法であって、
前記地下構造物の上載土砂を撤去するとともに、路面覆工体を設置する準備工程と、
前記下床版上に支保工を設置し、該支保工上で前記上床版を大切りブロック状に切断する大切りブロック切断工程と、
前記路面覆工体上に設置した吊下げ降下設備によって前記大切りブロックを吊下げ支持した後、前記支保工を撤去する支保工撤去工程と、
前記大切りブロックを前記下床版上まで降下させる大切りブロック降下工程と、
前記大切りブロックを下床版上で小切りブロック状に切断する小切りブロック切断工程と、
前記小切りブロックを搬出口から坑外へ搬出する小切りブロック搬出工程と、
からなることを特徴とする地下構造物の上床版撤去方法。
【請求項2】
前記小切りブロック搬出工程において、小切りブロックをウインチによって搬出口近傍の下床版上まで横移動した後、搬出口から坑外へ搬出する請求項1記載の地下構造物の上床版撤去方法。
【請求項3】
前記吊下げ降下設備は、中心部にPC鋼棒が縦方向に挿通されたセンターホール型の油圧ジャッキを用いる請求項1、2いずれかに記載の地下構造物の上床版撤去方法。
【請求項1】
上床版と下床版と両側壁版とから構成される中空状の地下構造物において前記上床版を解体・撤去するための方法であって、
前記地下構造物の上載土砂を撤去するとともに、路面覆工体を設置する準備工程と、
前記下床版上に支保工を設置し、該支保工上で前記上床版を大切りブロック状に切断する大切りブロック切断工程と、
前記路面覆工体上に設置した吊下げ降下設備によって前記大切りブロックを吊下げ支持した後、前記支保工を撤去する支保工撤去工程と、
前記大切りブロックを前記下床版上まで降下させる大切りブロック降下工程と、
前記大切りブロックを下床版上で小切りブロック状に切断する小切りブロック切断工程と、
前記小切りブロックを搬出口から坑外へ搬出する小切りブロック搬出工程と、
からなることを特徴とする地下構造物の上床版撤去方法。
【請求項2】
前記小切りブロック搬出工程において、小切りブロックをウインチによって搬出口近傍の下床版上まで横移動した後、搬出口から坑外へ搬出する請求項1記載の地下構造物の上床版撤去方法。
【請求項3】
前記吊下げ降下設備は、中心部にPC鋼棒が縦方向に挿通されたセンターホール型の油圧ジャッキを用いる請求項1、2いずれかに記載の地下構造物の上床版撤去方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−68275(P2009−68275A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238707(P2007−238707)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】
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