説明

地中埋設箱の構造

【目的】ダクト接続が必要な場合にも短時間で工場生産可能なハンドホール等の地中埋設管の新規な構造を提供する。
【構成】四周側壁面のうち少なくとも一壁面に開口(15a〜15c)を有する略箱状の本体11と、本体開口に本体の外側から嵌着可能な略板状体の壁面ブロックと、本体開口に嵌着した壁面ブロックを固定する固定手段とを有してなるハンドホールなどの地中埋設箱10であって、壁面ブロックは、任意箇所に任意数の穴が設けられ且つ各々の穴にダクト35’の一端が内側面に開口した状態で固定されたダクト付き壁面ブロック30’と、ダクト無し壁面ブロック(20)の2種類が共通の外形状で用意され、必要に応じていずれか一方を用いて固定手段36(25)により本体開口に嵌着固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハンドホール等の地中埋設箱の構造に関し、特にダクト接続が必要な場合にも容易に適合可能な地中埋設箱の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では電力ケーブルや通信ケーブルを地中に埋設することの要請が大きくなってきており、可撓性のある螺旋状波付ポリエチレン管(FEP)等の軽量で可撓性のあるダクトをハンドホールに接続するようにしている。
【0003】
従来は、ダクトを地中埋設箱(以下ハンドホールとして説明する)の壁面に形成した穴に取り付ける方法として、現場取付(図7)と工場取付(図8)の2通りの方法が採用されていた。
【0004】
現場取付はハンドホール2の施工現場においてダクト1を取り付けるものであり、ダクト1の先端をハンドホール2壁面の穴3を通してハンドホール内側に引き込んでその先端をカットした(図7(A))後、エポキシ系接着剤やモルタル4で穴3の隙間を塞ぎ(図7(B))、その硬化を待って取付を完了する。しかしながら、現場取付は地中に掘削された箇所での作業が要求されるため、エポキシ系接着剤やモルタルで穴を防ぐ作業を行うことが容易ではなく、作業性が悪い。加えて、ポリエチレン等の軟質材料で成形されるダクトは接着性が弱く、十分な接着強度が得られないため、接着剤硬化後にダクトが脱落する恐れがあり、防水性や耐震性にも問題がある。
【0005】
工場取付は工場作業にてダクト5を取り付けるものであり、ハンドホール2の穴3をあけてこの穴3に所定長のダクト5を差し込み(図8(A))、エポキシ系接着剤等4で穴3の隙間を防ぎ(図8(B))、その硬化を待って工場より製品出荷する。
【0006】
なお、図7および図8に符号7で示されるのはベルマウスと呼ばれるもので、ダクト1,5内を通るケーブル(図示せず)がこれらの端部に当たって損傷することを防ぐためにハンドホール2の内部からダクト1,5の先端に嵌着されるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
工場取付は作業性の面では優れているが、四側壁面を有する一体型の既製ハンドホールを、ダクト接続が必要な壁面に穴あけ加工を施し、この穴にダクトを取付且つ固定する作業が要求されるため、製造時間が長くなるという問題を抱えている。ダクトはハンドホールの複数の壁面に取り付けることが要求されることがあり、また、一つの壁面に複数のダクトを接続すべき場合もあるため、これらの要求を満たすものを製造する場合はより長時間を要することになっていた。
【0008】
そこで本発明は、従来技術における上記問題に鑑み、ダクト接続が必要な場合にも短時間で工場生産可能なハンドホール等の地中埋設管の新規な構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、請求項1にかかる本発明は、四周側壁面のうち少なくとも一壁面に開口を有する略箱状の本体と、本体開口に本体の外側から嵌着可能な略板状体の壁面ブロックと、本体開口に嵌着した壁面ブロックを固定する固定手段と、壁面ブロックが嵌着される本体開口の開口縁に設けられる止水手段とを有してなり、壁面ブロックは、任意箇所に任意数の穴が設けられ且つ各々の穴にダクトの一端が内側面に開口した状態でコンクリート打設時に一体に固定されたダクト付き壁面ブロックと、ダクト無し壁面ブロックの2種類が共通の外形状で用意され、必要に応じていずれか一方を用いて固定手段により本体開口に嵌着固定されることを特徴とする地中埋設箱の構造である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1にかかる本発明による地中埋設箱の構造によれば、四周側壁面のうち少なくとも一壁面に開口を有する略箱状の本体と、本体開口に本体の外側から嵌着可能な略板状体の壁面ブロックと、本体開口に嵌着された壁面ブロックを固定する固定手段とを有してなり、しかも、壁面ブロックとして、任意箇所に任意数の穴が設けられ且つ各々の穴にダクトの一端が内側面に開口した状態で固定されたダクト付き壁面ブロックと、ダクト無し壁面ブロックの2種類が共通の外形状で用意されるので、必要に応じていずれか一方を用いて固定手段により本体開口に嵌着固定することができる。したがって、ダクトを取り付けた加工品としての地中埋設箱を受注した場合、その受注内容に応じたダクト付き壁面ブロックを固定手段により本体開口に嵌着固定することにより容易に工場生産することができ、加工手間が省略される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1ないし図5を参照して、本発明による地中埋設箱の構造の一実施形態としてのハンドホール構造について以下詳述する。
【0012】
図1はハンドホール本体11を示し、コンクリート打設により底面12と四周壁面13a〜13dとを有する上面開口の箱形に形成された一体成型品である。四周壁面13a〜13dは、底面12の四周端から若干の角度外方に傾斜して立ち上がっている。底面12の中央には本体内に溜まった水分を排出するための排水口14が開口形成されている。四周壁面13a〜13dのうち、三方の壁面13a〜13cは開口部15a〜15cを有する開口壁面であり、残り一つの壁面13dは開口部を有しない閉塞壁面である。
【0013】
壁面13a〜13cに形成された開口部15a〜15cはすべて同一形状および同一寸法であり、内方から外方に向けて開口面積が大きくなるような傾斜開口縁面16によって与えられる内側開口部と、該内側開口部の外側においてこれを完全に取り囲むようにより大きな開口面積を有して形成された外側段設部17とから構成されている。内側開口部は開口壁面13a〜13cの壁厚の大半を占めており、外側段設部17は比較的薄く形成されている。外側段設部17の四隅部にはナット部となるインサート18がコンクリート打設時に埋め込まれて一体的に固定されている。
【0014】
このハンドホール本体11の開口壁面13a〜13cの各開口部15a〜15cには、図2に示すダクト無し壁面ブロック20または図3に示すダクト付き壁面ブロック30のいずれかを嵌着固定することができる。したがって、ダクト無し壁面ブロック20とダクト付き壁面ブロック30は共通の外形状を有している。
【0015】
図2を参照して、ダクト無し壁面ブロック20は、コンクリート打設により、開口部15a〜15cの内側開口部に嵌着される内側突出部21と、外側段設部17に嵌着される平板状の外側被覆体22とを有する一体成型品として製造されたものである。外側被覆体22には、外側段設部17の四隅部に設けられたナット部18の位置に合わせて貫通孔23が形成されている。内側突出部21の四周側面は、内側開口部の傾斜開口縁面16に沿うように略同一角度で傾斜しているが、傾斜開口縁面16が略平面状に形成されているのに対し、内側突出部21の四周側面は外方を凸とする曲面24を呈するように形成されている。
【0016】
図3を参照して、ダクト付き壁面ブロック30も、コンクリート打設により、開口部15a〜15cの内側開口部に嵌着される内側突出部31と、外側段設部17に嵌着される平板状の外側被覆体32とを有する一体成型品として製造されたものである。外側被覆体32には、外側段設部17の四隅部に設けられたナット部18の位置に合わせて貫通孔33が形成されている。内側突出部31の四周側面は、内側開口部の傾斜開口縁面16に沿うように略同一角度で傾斜しているが、傾斜開口縁面16が略平面状に形成されているのに対し、内側突出部31の四周側面は外方を凸とする曲面34を呈するように形成されている。以上の形状および構成は図2のダクト無し壁面ブロック20と同様であり、各部の寸法も同一である。
【0017】
ダクト付き壁面ブロック30がダクト無し壁面ブロック20と異なる点は、そのコンクリート打設時に任意箇所に任意数のダクトの一端を埋め込んだ状態で硬化させることにより、ダクト35の該一端を内側突出部31側で開口させるとともに他端側を外側被覆体32から外側に突出させて固定一体化させた点である。図3に示す実施形態では、壁面ブロック30の高さ方向略中央に3本のダクト35が左右方向に等間隔で並設されている。
【0018】
なお、上記のようにコンクリート打設時にダクト35を一体化させてダクト付き壁面ブロック30を工場生産したものにおいて、ダクト35の材質とコンクリートとの熱膨張率の違いにより、時間経過とともにこれらの間に隙間が発生して、水漏れの原因となる可能性がある。これを解決するため、図6に示すように、ダクト35の根元部分に止水部材40を巻き付けておき、この状態でコンクリート打設を行ってダクト付き壁面ブロック30とすることが好ましい。止水部材40としては、たとえば、ブチルゴム、ブチルゴムと合成スポンジの複合品などのゴム系弾性部材や、水膨張性不織布(高吸水・高吸湿繊維を加工した不織布)、水膨張性ブチルゴムなどの水膨張性部材、エポキシ変性弾性接着剤やエポキシ樹脂系接着剤などの接着剤を用いることができる。
【0019】
図4は、図1のハンドホール本体11の3つの壁面開口部15a〜15cにそれぞれダクト付き壁面ブロック30’を嵌着固定して製造したハンドホール10を示す。このダクト付き壁面ブロック30’は図3に示すダクト付き壁面ブロック30とは若干構成が異なるもので、2本の比較的大径のダクト35’が取り付けられている。ダクト付き壁面ブロック30,30’を各壁面開口部15a〜15cに嵌着固定するには、その内側突出部31を外側から壁面開口部15a〜15cに嵌め込んだ後、外側被覆体32に形成された各貫通孔33に外側からネジ36を挿通し、その先端を外側段設部17の四隅部に設けたナット部18にねじ込むことにより行う。
【0020】
このようにしてダクト付き壁面ブロック30,30’が三側面に取り付けられたハンドホール本体11を工場生産した後、工事現場に搬送して所定箇所に埋設した後、その上に略同一の平面形状および寸法を有する枠体37を載置して接着剤により接合し、枠体37上にさらに円形開口を有する略円筒状の縁塊38を載置して接着剤により接合し、縁塊38の円形開口を鉄蓋39で閉塞して、図4のダクト付きハンドホール10として設置される。
【0021】
図5は、図1のハンドホール本体11の3つの壁面開口部15a〜15cにそれぞれダクト無し壁面ブロック20を嵌着固定した状態を示す。ダクト無し壁面ブロック20を各壁面開口部15a〜15cに嵌着固定するには、その内側突出部21を外側から壁面開口部15a〜15cに嵌め込んだ後、外側被覆体22に形成された各貫通孔23に外側からネジ25を挿通し、その先端を外側段設部17の四隅部に設けたナット部18にねじ込むことにより行う。
【0022】
このようにしてダクト無し壁面ブロック20が三側面に取り付けられたハンドホール本体11を工場生産した後、工事現場に搬送して所定箇所に埋設した後、その上に、図4に示すと同様に、略同一の平面形状および寸法を有する枠体37を載置して接着剤により接合し、枠体37上にさらに円形開口を有する略円筒状の縁塊38を載置して接着剤により接合し、縁塊38の円形開口を鉄蓋39で閉塞することにより、ダクト無しハンドホールとして設置される。
【0023】
なお、前述の開口部15a〜15cの開口縁形状およびこれに対応するダクト無し壁面ブロック20、ダクト付き壁面ブロック30,30’の四周縁形状によって、ハンドホール本体11を地中に埋設して使用したときに雨水や地下水などが本体内に侵入することを実質的に防止または抑制することができるが、浸水効果をより向上させるために付加的な手段を採用しても良い。たとえば、壁面ブロック20,30,30’の四周縁が当接する開口部15a〜15cの開口縁部分に止水部材を貼着することができる。止水部材としては、前述の止水部材40と同様に、たとえば、ブチルゴム、ブチルゴムと合成スポンジの複合品などのゴム系弾性部材や、水膨張性不織布(高吸水・高吸湿繊維を加工した不織布)、水膨張性ブチルゴムなどの水膨張性部材、エポキシ変性弾性接着剤やエポキシ樹脂系接着剤などの接着剤を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態によるハンドホール構造におけるハンドホール本体を示す横断面図(A)および片側断面正面図である。
【図2】図1のハンドホール本体の壁面開口部に嵌着固定可能なダクト無し壁面ブロックの一例を示す平面図(A)、正面図(B)、側面図(C)および側面図中のA部拡大図(D)である。
【図3】図1のハンドホール本体の壁面開口部に嵌着固定可能なダクト付き壁面ブロックの一例を示す平面図(A)、正面図(B)および側面図(C)である。
【図4】図1のハンドホール本体の3つの壁面開口部にそれぞれダクト付き壁面ブロックを嵌着固定して製造したハンドホールを示す平面図(A)および正面図(B)である。
【図5】図1のハンドホール本体の3つの壁面開口部にそれぞれダクト無し壁面ブロックを嵌着固定した状態を示す平面図(A)および正面図(B)である。
【図6】根元部分に水膨張性部材を巻き付けたダクトを示す説明図である。
【図7】従来技術である現場取付によりダクトをハンドホールに取り付ける作業工程を示す説明図である。
【図8】別の従来技術である工場取付による作業工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
10 ハンドホール
11 ハンドホール本体
12 本体底面
13a〜13d 本体壁面
13a〜13c 開口部を有する開口壁面
13d 開口部を有しない閉塞壁面
14 排水口
15a〜15c 開口部
16 開口部の内側傾斜開口縁面
17 開口部の外側段設部
18 インサート(ナット部)
20 ダクト無し壁面ブロック
21 内側突出部(内側部分)
22 外側被覆体(外側部分)
30,30’ ダクト付き壁面ブロック
31 内側突出部(内側部分)
32 外側被覆体(外側部分)
35,35’ ダクト
40 止水部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四周側壁面のうち少なくとも一壁面に開口を有する略箱状の本体と、本体開口に本体の外側から嵌着可能な略板状体の壁面ブロックと、本体開口に嵌着した壁面ブロックを固定する固定手段と、壁面ブロックが嵌着される本体開口の開口縁に設けられる止水手段とを有してなり、壁面ブロックは、任意箇所に任意数の穴が設けられ且つ各々の穴にダクトの一端が内側面に開口した状態でコンクリート打設時に一体に固定されたダクト付き壁面ブロックと、ダクト無し壁面ブロックの2種類が共通の外形状で用意され、必要に応じていずれか一方を用いて固定手段により本体開口に嵌着固定されることを特徴とする地中埋設箱の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−101575(P2006−101575A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281498(P2004−281498)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(500471951)株式会社北関東工業 (2)
【Fターム(参考)】