説明

地中掘削用の掘削装置、回転式掘削機及び地中掘削工法

【課題】低振動、低騒音で掘削作業ができるようにした地中掘削用の掘削装置、回転式掘削機及び地中掘削工法を提供する。
【解決手段】
地中掘削用の掘削装置1は、掘削装置本体2よりも外径が小さく、掘削側へ進退する複数のビット42a,・・・と、作動流体のエネルギーによって各ビット42a,・・・に打撃力を与えるピストン61を内蔵するピストンケース部材22b,・・・と、各ピストンケース部材22b,・・・に送られる作動流体を貯留する流体貯留部30と、各ピストンケース部材22b,・・・に送られる作動流体が通る作動流体流通経路352と、上記流体貯留部30から各作動流体流通経路352の流通口3a,・・・へ作動流体を送るべく、流体貯留部30と各流通口3a,・・・を連通させる複数の連通孔4a,・・・を備えた回転体40を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中掘削用の掘削装置、回転式掘削機及び地中掘削工法に関する。
更に詳しくは、低振動、低騒音で掘削作業ができるようにした地中掘削用の掘削装置、回転式掘削機及び地中掘削工法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木や建築の分野において、主に岩盤、転石、コンクリート等がある硬質の地盤の掘削に「ダウンザホールハンマ」と称される掘削装置が使用されている。ダウンザホールハンマは、圧縮空気を供給して内部のピストンを駆動させることにより、先端のハンマビットを上下動させ、その打撃によって掘削を行うものである(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−328983号公報(第1図)
【0003】
また、らせん形の錐で孔を掘削する「アースオーガ」と称される掘削装置もあるが、アースオーガは上記したダウンザホールハンマと比べ、岩盤、転石、コンクリート等が存在する硬質の地盤の掘削には適していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の第1図に示すように、従来のダウンザホールハンマでは、掘削する孔とほぼ同じ径のハンマビットを上下動させて地盤を打撃するため、一回の打撃ごとに受ける地盤の衝撃が大きく、掘削時に激しい騒音と振動が発生していた。このため、より低振動、低騒音での作業が望まれる例えば住宅密集地や都市部のオフィス街での使用には、適していなかった。
【0005】
このように、低振動、低騒音での作業が強く望まれる場所では、騒音と振動の発生を防止することが最重要課題の一つではあるが、多少の振動や騒音が発生しても支障がない場所(住宅密集地やオフィス街から少し離れた場所等)では、掘削作業の効率を高めて施工日数を短縮することも重要である。即ち、施工日数の短縮によってコスト縮減を図ることができると共に、ひいては現場周辺に及ぼす振動・騒音被害の発生日数の短縮にも繋がるからである。
【0006】
(本発明の目的)
そこで本発明の目的は、低振動、低騒音で掘削作業ができるようにした地中掘削用の掘削装置、回転式掘削機及び地中掘削工法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、低振動、低騒音で掘削作業ができると共に、掘削作業の効率を高めることによって掘削作業に要する施工日数を短縮できるようにした地中掘削用の掘削装置、回転式掘削機及び地中掘削工法を提供することにある。
その他の本発明の目的は以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
なお、後述する作用の説明の理解を助けるため、図面において使用した符号を括弧を用いて記載しているが、各構成要件を図面記載のものに限定するものではない。
【0009】
本発明は、掘削装置本体(2)よりも外径が小さく、掘削側へ進退する複数のビット(42a,42b,42c,42d,42e)と、ビット(42a,42b,42c,42d,42e)の数に対応して掘削装置本体(2)内に複数収容されており、作動流体のエネルギーによって各ビット(42a,42b,42c,42d,42e)に打撃力を与えるピストン(61)を内蔵するピストンケース部材(22b,22b,22b,22b,22b)と、各ピストンケース部材(22b,22b,22b,22b,22b)に送られる作動流体を貯留する流体貯留部(30)と、上記ピストンケース部材(22b,22b,22b,22b,22b)の数に対応して複数設けてあり、各ピストンケース部材(22b,22b,22b,22b,22b)に送られる作動流体が通る作動流体流通経路(352,352,352,352,352)と、上記流体貯留部(30)から各作動流体流通経路(352,352,352,352,352)の流通口(3a,3b,3c,3d,3e)へ作動流体を送るべく、流体貯留部(30)と各流通口(3a,3b,3c,3d,3e)を連通させる複数の連通孔(4a,4b,4c,4d,4e)を備えた回転体(40)と、を有しており、上記各ビット(42a,42b,42c,42d,42e)が互いに時間をずらしながら打撃駆動するようにすべく、上記流通口(3a,3b,3c,3d,3e)は回転体(40)の回転方向に沿って設けてあり、上記連通孔(4a,4b,4c,4d,4e)は、各流通口(3a,3b,3c,3d,3e)と同時に同じ開度で連通することを防ぐために各流通口(3a,3b,3c,3d,3e)の配置とは異なる配置で回転方向に沿って設けられている、地中掘削用の掘削装置である。
【0010】
本発明は、上記回転体(40)が、作動流体を受けて回転体(40)を回転させるための作動流体受け羽根(45)を備えている、地中掘削用の掘削装置である。
【0011】
本発明は、上記回転体(40)が、連通孔(4a,4b,4c,4d,4e)とは別に、流体貯留部(30)と各流通口(3a,3b,3c,3d,3e)を連通させる作動流体供給孔(46)を備えており、該作動流体供給孔(46)はビット(42a,42b,42c,42d,42e)に打撃力を与えるために必要な作動流体の一部を供給するために連通孔(4a,4b,4c,4d,4e)よりも内径が小さく設定されている、地中掘削用の掘削装置である。
【0012】
本発明は、互いに時間をずらしながら打撃駆動する複数のビット(42a,42c,42d)とは別途独立して同時に打撃駆動する複数のビット(41,42b,42e)を備えており、別途独立して駆動する該ビット(41,42b,42e)に対応する各ピストンケース部材(22a,22b,22b)の作動流体流通経路(352,352,352,352,352)は、回転体(40)による制御を受けることなく流体貯留部(30)と常時連通した状態となっている、地中掘削用の掘削装置である。
【0013】
本発明は、上記流体貯留部(30)に、流体貯留部(30)に供給された作動流体を受けて流通口(3a,3b,3c,3d,3e)に案内する作動流体案内部材(8)が設けてある、地中掘削用の掘削装置である。
【0014】
本発明は、上記掘削装置本体(2)に、各ピストンケース部材(22b,22b,22b,22b,22b)の周りを囲むようにして防振材または/及び防音材(230)が設けてある地中掘削用の掘削装置である。
【0015】
本発明は、上記記載の掘削装置(1)(1b)と、該掘削装置(1)(1b)に回転運動を与えることができる回転駆動装置(5)とを備えた、回転式掘削機である。
【0016】
本発明は、上記記載の掘削装置(1)(1a)を使用した地中掘削工法であって、掘削装置(1)(1a)に回転運動を与えながら地中掘削を行うことを特徴とする、地中掘削工法である。
【0017】
本明細書及び特許請求の範囲にいう「作動流体」としては、エア(例えば圧搾空気)等の気体や、水、油などいった液体を採用することができる。
【0018】
回転体の回転方向に沿ってそれぞれ設けてある作動流体流通経路の流通口の数と回転体の連通孔の数は、連通孔が各流通口と同時に同じ開度で連通することを防ぐことができれば、同数であっても、異なる数(多いまたは少ない)であっても良い。
【0019】
連通孔が各流通口と同時に同じ開度で連通することを防ぐための連通孔と流通口の配置としては、以下のような場合を挙げることができる。
連通孔と流通口が同数であれば、連通孔と流通口のいずれか一方を等間隔とし、連通孔と流通口のいずれか他方を等間隔ではなく、間隔をずらして配置することができる。また、どちらも等間隔に配置せずにずらして配置しても良い。更に連通孔の数と流通口の数が異なる場合は、その数によってはどちらも等間隔に配置しても良い場合がある。例えば回転体の回転方向に沿って等間隔に五箇所設けてある流通口に対し、連通孔を六個所設けた場合には連通孔を等間隔で配置した場合であっても、連通孔が各流通口と同時に同じ開度で連通することを防ぐことができる。
【0020】
本明細書及び特許請求の範囲にいう「防振材または/及び防音材」には、防振材または防音材のいずれか一方を含む場合もあるし、あるいは防振材及び防音材の両方(防振及び防音の両方の作用を備えたものも含む)を含む場合もある。
【0021】
(作 用)
本発明に係る地中掘削用の掘削装置は、掘削装置本体(2)よりも外径が小さく、掘削側へ進退する複数のビット(42a,42b,42c,42d,42e)を備え、次のように作用する。
【0022】
(a)回転体(40)が回転することで、回転体(40)に設けてある複数の連通孔(4a,4b,4c,4d,4e)を介して流体貯留部(30)と各作動流体ピストン経路(352,352,352,352,352)の流通口(3a,3b,3c,3d,3e)とが連通する。これにより、流体貯留部(30)から各作動流体ピストン経路(352,352,352,352,352)へ作動流体が送られる。その結果、各ピストンケース部材(22b,22b,22b,22b,22b)に内蔵されたピストン(61)によって各ビット(42a,42b,42c,42d,42e)に打撃力が与えられて、各ビット(42a,42b,42c,42d,42e)は掘削装置本体(2)の掘削側へ進退して掘削を行う。
【0023】
更に本発明では、各流通口(3a,3b,3c,3d,3e)は、連通孔(4a,4b,4c,4d,4e)との連通が可能なように上記回転体(40)の回転方向に沿って設けてあり、各連通孔(4a,4b,4c,4d,4e)は、各流通口(3a,3b,3c,3d,3e)と同時に同じ開度で連通することを防ぐために、各流通口(3a,3b,3c,3d,3e)の配置とは異なる配置で設けられている。これによって、同時に同じ流量の作動流体が流体貯留部(30)から各ピストンケース部材(22a,22b,22b,22b,22b)に送られることが防止される。その結果、各ビット(42a,42b,42c,42d,42e)は互いに時間をずらしながら打撃駆動する。したがって、各ビット(42a,42b,42c,42d,42e)の一回の打撃ごとに受ける地盤の衝撃は小さい。
【0024】
(b)作動流体を受けて回転体(40)を回転させるための作動流体受け羽根(45)を回転体(40)が備えているものは、回転体(40)は他から動力を受けないで自ら回転する。よって、他の動力を備えている場合と比べて、構造が複雑になったり、部品点数が多くなったりすることを防止できる。
【0025】
(c)回転体(40)が連通孔(4a,4b,4c,4d,4e)とは別に、流体貯留部(30)と各流通口(3a,3b,3c,3d,3e)を連通させる作動流体供給孔(46)を備えているものは、回転体(40)の回転に伴い、連通孔(4a,4b,4c,4d,4e)よりも内径が小さい作動流体供給孔(46)を介して上記流体貯留部(30)から流通口(3a,3b,3c,3d,3e)へ作動流体が送られ、ビット(42a,42b,42c,42d,42e)に打撃力を与える前の待機状態までピストン(61)が移動する。これにより、連通孔(4a,4b,4c,4d,4e)が流通口(3a,3b,3c,3d,3e)と連通すると、ビット(42a,42b,42c,42d,42e)は迅速に打撃駆動し、円滑に掘削を行う。
【0026】
(d)互いに時間をずらしながら打撃駆動する複数のビット(42a,42c,42d)とは別途独立して同時に打撃駆動する複数のビット(41,42b,42e)を備えているものは、同時に打撃駆動される複数のビット(41,42b,42e)により地面に対して同時に大きな衝撃力を与えることができるため、すべてのビットが互いに時間をずらしながら打撃駆動するものと比べて、掘削の作業効率が高い。
【0027】
(e)流体貯留部(30)に作動流体案内部材(8)が設けてあるものは、作動流体案内部材(8)が流体貯留部(30)に供給された作動流体を受けて流通口(3a,3b,3c,3d,3e)に案内され、回転体(40)の各連通孔(4a,4b,4c,4d,4e)に均等またはできるだけ均等に作動流体が送られる。これにより、各ピストンケース部材(22a,22b)に送られる作動流体にムラが生じることを防止でき、その結果、各ビット(42a,42b,42c,42d,42e)毎の衝撃力を同じかできるだけ同じにして掘削面を均等に打撃できるようになる。
【0028】
(f)掘削装置本体(2)にピストンケース(22)の周りを囲むようにして防振材または/及び防音材(230)が設けてあるものでは、ピストンの駆動時に発生する振動や音を防振材または/及び防音材(230)が緩和される。
【0029】
本発明に係る回転式掘削機は、回転駆動装置(5)によって掘削装置(1)(1b)に回転運動を与えながら掘削作業を行う。回転運動を与えることにより、掘削装置(1)(1b)が有するビッド(42a,42b,42c,42d,42e)の掘削位置が掘削面に対して移動する。これにより、ビッド(42a,42b,42c,42d,42e)が掘削面全体を満遍なく打撃する。
【発明の効果】
【0030】
本発明は上記構成を備え、次の効果を有する。
(a)本発明に係る地中掘削用の掘削装置によれば、上記した回転体の作用により各ビットは互いに時間をずらして打撃駆動する。よって、掘削する孔とほぼ同じ径のハンマビットを上下動させて地盤を打撃していた従来のダウンザホールハンマに比べて、ビット一回の打撃ごとに受ける地盤の衝撃は小さく、低振動、低騒音で掘削作業ができる。したがって、より低振動、低騒音での作業が望まれる住宅密集地や都市部のオフィス街などでの使用に適している。
また従来では、掘削する孔とほぼ同じ大きな径のハンマビットを駆動させる必要があったため、必然的にハンマビットを上下動させるために必要なエアの消費量が多く、比較的大きなエアコンプレッサーが必要であった。これに対し、本発明では、比較的小さなビットを駆動させれば良いので、一つのビットを進退させるための作動流体(例えばエア)の消費量が小さく、その結果、作動流体を供給する供給装置(例えば、作動流体がエアの場合にはエアコンプレッサー)を小型化できる。よって、供給装置の設置面積も小さくて済み、住宅密集地や都市部のオフィス街等といったスペースの限られた場所での施工に好適である。また供給装置の小型化により、供給装置を駆動させるエンジン等の駆動手段の小型化も可能となるので、駆動手段から発生する振動や騒音も低く抑えることができる。
【0031】
(b)回転体が作動流体を受けて回転体を回転させるための作動流体受け羽根を備えているものは、回転体は他から動力を受けないで自ら回転するので、他の動力を備えている場合と比べて、構造が複雑になったり、部品点数が多くなったりすることを防止できる。
【0032】
(c)回転体が連通孔とは別に、流体貯留部と各流通口を連通させる作動流体供給孔を備えているものは、ビットは迅速に打撃駆動するので、円滑な掘削作業が可能である。
【0033】
(d)互いに時間をずらしながら打撃駆動するビットとは、別途独立して同時に打撃駆動する複数のビットを備えているものは、同時に打撃駆動される複数のビットにより地面に対して同時に大きな衝撃力を与えることができるため、掘削の作業効率が高い。また、互いに時間をずらしながら打撃駆動する複数のビットも備えているので、すべてのビットが時間をずらしながら打撃駆動するものと比べ、掘削作業に要する施工日数を短縮できる。
【0034】
(e)流体貯留部に作動流体案内部材が設けてあるものは、各ビット毎の衝撃力を同じかできるだけ同じにして掘削面を均等に打撃できるようになる。
【0035】
(f)掘削装置本体にピストンケースの周りを囲むようにして防振材または/及び防音材が設けてあるものでは、ピストンの駆動時に発生する振動や音が外に漏れたり伝わることをより効果的に防止できる。
【0036】
(g)本発明に係る回転式掘削機及び地中掘削工法によれば、上記した効果を備えた掘削装置に回転運動を与えながら使用することにより、低振動、低騒音での掘削作業ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0038】
図1ないし図9は、本発明に係る地中掘削用の掘削装置の第一の実施例を説明するための図である。
図1は、本実施例に係る掘削装置を先端側から見た斜視説明図、
図2は、図1に示す掘削装置の縦断面説明図、
図3は、図1に示す掘削装置の分解斜視説明図であり、エアタンク部材と、エアタンク部材から取り外した掘削ビット部材を分解した状態で示している。なお、図3においてエアタンク部材3の基部側(上方側)は図示を省略している。
図4は、掘削ビット部材に収容されているピストンケース部材を縦断面して内部構造を表した側面視説明図であり、内蔵されたピストンが上下動(進退動)している状態を図4(a)〜(d)で経時的に示している。
【0039】
図5は、図2に示す掘削装置のエアタンク部材内に配置される流体案内部材を示す斜視説明図、
図6は、図5に示す流体案内部材の内部に配置される回転体を示す斜視説明図、
図7は、図5に示す流体案内部材を水平方向に断面して回転体を含む内部構造を表した平面視説明図、
図8(a)ないし(d)は、図7に示した回転体の回転状態を経時的に示した一部省略説明図であり、図8(a)は図7に示す状態に対応している。なお、図8では、図7で示したエア受け羽根45とエア供給孔46を省略している。
図9は、掘削装置と回転駆動装置で主に構成される回転式掘削機を示す側面視説明図である。
【0040】
図9に示す回転式掘削機6は、図1に示す地中掘削用の掘削装置1と、掘削装置1に回転運動を与えることができる回転駆動装置5とを備えている。
まず、掘削装置1について説明し、その後、回転駆動装置5について説明する。
【0041】
[掘削装置1]
図1及び図2に示すように、掘削装置1はその全体が略円柱状に形成されている。掘削装置1は、掘削側(先部側)に位置する掘削装置本体である掘削ビット部材2と、基部側に位置する作動流体貯留部材であるエアタンク部材3を備えている。
【0042】
掘削ビット部材2は、その先端側に複数(本実施例では6つ)のビット41,42a,42b,42c,42d,42eを備えている。各ビット41,42a,・・・は、掘削ビット部材2よりも小さくなって複数設けてある。掘削装置1は、後述する図9に示すように、クレーン(図示省略)により懸吊されることにより、先端の各ビット41,42,・・・が下を向くように立てた状態で使用される。
【0043】
本実施例では、図1に示すように、各ビット41,42a,・・・は、掘削ビット部材2の軸心部に一箇所設けられた中央ビット41と、中央ビット41を中心とする円周上に等間隔で(中央ビット41の周りに)五箇所設けられた周辺ビット42a,42b,42c,42d,42eで構成されている。後述するように、中央ビット41はヘッド部が円形状に形成されているのに対し、周辺ビット42a,・・・はヘッド部が略三角形状に形成されている。
【0044】
各周辺ビット42a,・・・は、同時でなく互いに時間をずらして打撃駆動するように構成されている。これに対し、中央ビット41は、他の周辺ビット42a,・・・の打撃動作とは別途独立して打撃駆動される。
【0045】
エアタンク部材3は、固着具であるボルト31とナット32(図1では隠れて見えず、図2を参照)により掘削ビット部材2の基部側に着脱可能に接続されている。図2に示すように、エアタンク部材3には、各ビット41,42a,・・・を駆動させる作動流体であるエアを高圧状態で貯留できるエア貯留部30を備えている。
【0046】
以下、掘削装置1の各構成部材について順を追って詳しく説明する。
【0047】
(掘削ビット部材2)
図3に示すように、掘削ビット部材2は、上から順に、接続体21を備えると共にピストンを含む駆動手段等を収容したピストンケース部材22a,22b,22b,22b,22b,22bの他、ピストンケース取付体23、ドライブチャック24、チャックガイド25、ビット41,42a,・・・等を備えている。
【0048】
各ピストンケース部材22a,22b,・・・は、金属製で円筒形状のピストンケース本体220を有している。各ピストンケース本体220の基端部(図3で上部)には接続体21が螺合されている。各ピストンケース本体220の先端部(図3で下部)には、ドライブチャック24、チャックガイド25を介して各ビット41,42a,・・・が接続される。各ピストンケース部材22a,22bは、各ビット41,42a,・・・と同じ数(本実施例では複数、全体で六ヶ所)設けられている。
【0049】
なお、以下、説明の便宜上、中央ビット41に対応するピストンケース部材22aを「中央ピストンケース部材22a」といい、各周辺ビット42a,・・・に対応するピストンケース部材22bを「周辺ピストンケース部材22b」という場合がある。
【0050】
図4を参照する。図4では、掘削ビット部材に収容されているうちの一つの中央ピストンケース部材22aについて表しているが、その他の周辺ピストンケース部材22bについても、ビット41の形状が異なるだけで同じか大体同じ構造であり、ピストン61は同じように往復運動する。
【0051】
図4に示すように、ピストンケース本体220には、ビット41を作動させるピストン61を含む駆動手段等が内蔵(収容)されている。即ち、ピストンケース本体220には、ピストン61の他、シリンダー62、チェックバルブ63、エアディストリビータ64(リジットバルブ)、バルブスプリング65、フートバルブ66、メイクアップリング、O−リング、ピストンリタイナーリング、ビットリティーナリング等が設けてある。この駆動手段については、公知のダウンザホールハンマの駆動機構(例えば特開昭61−92288号公報記載)と同じか大体同じであるので、詳しい説明を省略する。
【0052】
図4(a)〜(d)を参照して、この駆動機構について簡単に説明する。
まず、図9に示す掘削作業前の掘削装置1を吊り下げた状態では、図4(a)に示すように、先端のビット41はその自重によりピストンケース部材22aの先端へ突出した状態となっている。この状態では、ピストン61の先部側周面部がピストンケース本体220の内周面に接しており、エアホース351から導入されるエアがピストン61の先部側にまわらない(送られない)。これにより、ピストン61が上昇することはなく(ピストンケース本体220の基部側へ移動することはなく)、ビット41は駆動停止状態となっている。
【0053】
そして、図4(b)のように、地面(または接地面)である掘削面Lにビット41が当接するまで、吊り下げた状態の掘削装置1を降ろすと、掘削装置1の自重によってビット41がピストンケース本体220内部に移動する。これにより、ピストン61の先部側周面部とピストンケース本体220の内周面の間にできた間隙から、エアがピストン61の下部側にまわり、図4(c)、更に図4(d)に示すようにピストン61を高速で押し上げる。
【0054】
その後、ピストン61が所要の位置まで上昇すると、再び、ピストン61の先部側周面部がピストンケース本体220の内周面に接し、エアがピストン61の先部側にまわらないようになる。これにより、エアがピストン61の上部側にまわり、押し上げられたピストン61が逆に高速で押し下げられ、図4(a)に示すように先端のビット41の基部側を打撃する。これによって、フートバルブ66から入ったエアがビット41内を通ってビット41先部側から排出されると共に、ビット41が先端に突出して打撃駆動される。この繰り返されるピストン61の上下の往復運動に伴う衝撃力によって、掘削側のビット41が(他のピストンケース部材22bのビット42aも同様に)進退し、地中を掘り込んでいく。各ビット41,42の進退ストロークは、例えば約1〜3センチである。
【0055】
各ビット41,42a,・・・は、高速で打撃振動し(上下動または進退し)地盤を掘削する。例えば一つのビット当たり、1分間に1200〜1300回、ビット全体で1分間に7200〜7800回程度打撃駆動される。なお、この時間あたりの打撃回数は、同じ掘削装置1を用いても、掘削対象である地層の硬さにより変動する。硬い地層の場合、地盤を打撃した後のビット41,42a,・・・の戻りが速く、これに追従してピストン61の上下動が激しくなるため、各ビット41,42a,・・・の打撃回数が増加する。
【0056】
図2に示すように、各ピストンケース本体220の基端部に位置する接続体21は、作動流体の経路である孔211(図3では見えず)を有し、基端側が断面凸状に形成されている。その凸状部分が差込部222を構成し、差込部222がエアタンク部材3へ差し入れられて装着される。そうして、エアタンク部材3から接続体21の差込部222を介して送られるエアによって、各ピストンケース部材22内の駆動手段が駆動する。
【0057】
各ピストンケース部材22a,22b,・・・(本実施例では合計で6本)は、略円柱形状の取付体であるピストンケース取付体23(図3参照)に着脱可能に取り付けられている。ピストンケース取付体23は、筒状本体231(図2参照)と、筒状本体231の先部側の開口部に固着されているカバー体233(以下、「先部カバー体233」という)と、筒状本体231の基部側の開口部に固着されているカバー体234(以下、「基部カバー体234」という)で主に構成されている。
【0058】
更にピストンケース取付体23の内部には、円筒形状で細長いケーシングであるピストンケースケーシング232(図2参照)が収容されている。このピストンケースケーシング232に、ピストンケース本体220が差し入れられた状態で取り付けられる。ピストンケースケーシング232はピストンケース本体220と同じ数設けられており、その軸心方向がピストンケース取付体23の長手方向と同じになるように設けてある。
【0059】
先部カバー体233は所要の厚みを有し、ピストンケース部材22を挿設するための孔である挿通孔235がそれぞれ設けられている。同じく、基部カバー体234は所要の厚みを有し、ピストンケース部材22a,22bを挿設するための孔である挿通孔236(図2参照)がそれぞれ設けられている。本実施例では、挿通孔235,236は中央部に一箇所、中央部を中心とする円周上に等間隔で五箇所の合計で六ヶ所に設けてある。
【0060】
図2に示すように、この上下二つのカバー体233,234によって挟まれた状態で、上記した各ピストンケースケーシング232が固着され、筒状本体231内に収容されている。ピストンケースケーシング232の先端側の孔(符号省略)は、先部カバー体233の挿通孔235と連通している。ピストンケースケーシング232の基端側の孔(符号省略)は、基部カバー体234の挿通孔236と連通している。
【0061】
更に、ピストンケース取付体23(筒状本体231)内のピストンケース本体220,220間に形成されている空隙部分には、防振材または/及び防音材として砂230(図2参照)が充填されている。
【0062】
また各ピストンケース本体220の先端部は、先部カバー体233から一部突出している。この突出部分の孔(符号省略)に、図3に示す略筒状のドライブチャック24の基端側がややきつく押し込まれた状態で取り付けられる。ドライブチャック24の先端側の孔241には、チャックガイド25を介し各ビット41,42a,・・・の基部側が進退自在に収納される。
【0063】
チャックガイド25は平面視略円形状で所要の厚みを有し、ピストンケース取付体23の先端(先部カバー体233)に固着されている。チャックガイド25の固着には、固着具であるボルト251と、ピストンケース取付体23側から取り付けられるナット252(図3でピストンケース取付体23の左側に図示)が使用されている。
【0064】
チャックガイド25の先部側には、中央に底面視円形の凹部253と、凹部253を取り囲むようにして底面視V字状の溝である所要数の凹部254が放射状に設けてある。凹部253には、底面視円形状のヘッド部411を備えた中央ビット41が配置される。各凹部254には、底面視略三角形状のヘッド部421を備えた周辺ビット42aが配置される。各ビット41,42a,・・・のヘッド部411,421には、超硬合金製のボタンチップ412が多数設けてある。
【0065】
チャックガイド25には、各ビット41,42a,・・・と同じ数の孔で構成された取付部である取付孔255が設けてある。取付孔255は上記した凹部253と凹部254内に位置している。この取付孔255の基部側にはドライブチャック24の先端部が嵌め入れられる。ドライブチャック24は六角ナット状の回り止め部242を有し、チャックガイド25の取付孔255には回り止め部242が嵌め入れられる六角状の凹部256(図2参照)が形成されている。
【0066】
各ビット41,42a,・・・の基部側はスプライン軸として形成され、この基部側が取付孔255の先端部から嵌め入れられることにより、内周壁に凹凸の係合用の溝条(図示省略)を形成したドライブチャック24の内部に装着されている。各ビット41,42a,・・・の基部側は、上記したビットリティーナリングとO−リングにより、ドライブチャック24側から外れないように装着される。
【0067】
また図1に示すように、ピストンケース取付体23の外周には軸方向に沿って突条であるフラットバー26が所要数設けられている。本実施例では、フラットバー26は周方向に所要の間隔をおいて複数(合計で六箇所)設けてある。そして、地盤の掘削作業時に掘削した孔の内部に発生する粉砕した岩盤や土砂(スライム)は、掘削ビット部材2(チャックガイド25)の先部側から噴射されるエアによって掘削した孔とフラットバー26,26間との隙間を通って地表面へ送り出される。
【0068】
(エアタンク部材3)
エアタンク部材3の基端部(図2で上端部)には、エアを導入するための連結ジョイント34が突出して設けてある。連結ジョイント34から導入されたエアは、エアタンク部材3内のエア貯留部30内に貯留される。符号340は、連結ジョイント34の吹き出し孔を示している。
【0069】
図3に示すように、エアタンク部材3の先部側には、掘削ビット部材2の基端部(各ピストンケース部材22aの差込部222側)と連結するための連結体33が設けられている。更に図2に示すように、連結体33よりも基部側(図2で上方側)の内部にエア貯留部30が設けてある。エア貯留部30は、平面視円形状の板状体で構成された区画体300によって連結体33側と区画されている。
【0070】
図3に示すように、連結体33の先部には連結孔331が所要数設けてある。そして、図2に示すように、この各連結孔331に差し込まれたピストンケース部材22a,・・・の差込部222に、各エアホース351,352の一端部(図2で下端部)がそれぞれ接続されている。
【0071】
各エアホース351,352の他端部(図2で上端部)は、上記区画体300に形成された作動流体の流通孔である各区画孔3a,3c,3d,3e,3f(図7で破線で示す)にそれぞれ接続されている。各区画孔3a,・・・及び各エアホース351,352は、各ピストンケース部材22a,22bへ作動流体を送るための作動流体ピストン経路を構成している。
【0072】
なお、図2ではすべてのエアホースを図示してないが、エアホースはピストンケース部材22a,22bの全数に対応して(ピストンケース部材22a,22bと同じ数、本実施例では6本)設けられている。また本実施例では、各エアホース351,352が収容されている連結体33は、全体として中空の略筒状体となっているが、中実状に形成することもできる。
【0073】
本実施例では、図7で破線で示す各区画孔3a,・・・は円形の孔で構成されている。各区画孔3a,・・・は、各ピストンケース部材22a,22b,・・・の数に対応して設けてある。即ち、図7で破線で示すように、区画体300の中心部に区画孔3f(以下、「中央区画孔3f」という場合がある。)が一箇所設けてあり、この中央区画孔3fを中心とする円周上に区画孔3a,3b,3c,3d,3e(以下、「各周辺区画孔3a」という場合がある。)が等間隔で五箇所設けてある。
【0074】
中央区画孔3fには、図1に示す中央ビット41に対応する中央ピストンケース部材22aから導出されたエアホース351(図2参照。以下、「中央エアホース351」という)が接続されている。中央区画孔3fを囲む残りの各周辺区画孔3a,・・・は、図1に示す周辺ビット42a,・・・に対応するピストンケース部材22bから導出されたエアホース352(図2参照。以下、「周辺エアホース352」という)がそれぞれ接続されている。この各周辺エアホース352の内径と長さはすべて同じである。
【0075】
更に、図2でエア貯留部30側には、エア貯留部30内でエアを受けて回転する回転体40(図6も参照)が設けてある。回転体40は、区画体300と接して設けられている。回転体40の詳細については後述する。
【0076】
(エア案内部材8)
図6に示す回転体40は、図2及び図5に示す盃(さかずき)のような形をした作動流体案内部材であるエア案内部材8の内部に配置されている。エア案内部材8は、連結ジョイント34の吹き出し孔340からエアを受ける半球状(ボール状)の作動流体案内受部であるエア案内受部81と、エア案内受部81を支える略円錐体の錐壁部で構成される回転体収容体82を有している。本実施例では、回転体収容体82の基端部823(図2で下端部)は区画体300の周縁部付近に固定されているが、エア貯留部30の内壁面304に直接的または間接的に固定することもできる。
【0077】
図5に示す回転体収容体82には、回転体収容体82内部にエアを取り入れる所要数の取入部821,822を有している。本実施例では、取入部821,822は、回転体収容体82の先部側(図5で上側)に設けられた取入孔821と、回転体収容体82の基部側(図5で下側)に設けられた取入管822で構成されている。
【0078】
取入孔821(図2も参照)は、回転体収容体82の周面方向に沿って等間隔で三箇所設けてある。各取入孔821は、内部の回転体40に向かって放出されるように、図2で下斜め方向に傾けて設けてある。取入管822は、図7に示すように、回転体40に所要数設けてある後述する半円形状のエア受け羽根45(図6も参照)にエアが当たって回転体40が円滑に回転するように、回転体40の回転方向に沿うようにしてやや傾けて設けてある。更に取入管822は、回転体40に向けて図2でやや下斜め方向に傾けて設けてある。
【0079】
このような構成により、図2で上方に示す連結ジョイント34の吹き出し孔340から供給されたエアは、エア案内部材8の受部81に当たった後、受部81の凹部面に沿って跳ね返り、更に弧を描くようにして回転体収容体82側へ戻って取入孔821及び取入管822を抜け、回転体40側へ送られる。
【0080】
(回転体40)
図6及び図7に示すように、回転体40は、平面視円形の回転板43と、回転板43を回転可能に軸支する軸部である筒状の回転軸4fを備えている。図2に示すように、回転軸4fは、区画体300中央の中央区画孔3f(図7も参照)に回転可能に差し込まれ、中央区画孔3fから抜けない構造となっている。
【0081】
上記したように中央区画孔3f(図2参照)には、中央エアホース351が接続されている。これにより、エア貯留部30と中央エアホース351は、回転軸4fを介して常時連通した状態となっている。したがって、エア貯留部30内のエアは、連続的に中央エアホース351に送られて中央ピストンケース部材22a内のピストン61を駆動し、それによって中央ビット41が周辺ビット42a,・・・とは別途独立して打撃駆動される。符号301は、ボールベアリング(玉軸受孔)の転動体を示している。
【0082】
図10は、図2に示した回転体の他の実施例を示す部分拡大説明図である。
図6に示した回転体40では、回転軸4fと回転板43とが一体化しており、共に回転する。これに対し、図10に示すように、区画体300に固定された軸部44aを軸中心として、回転板43aが回転するように構成することもできる。
【0083】
この場合、軸部44aを長くしてその他端部441(図10で下端部)を中央ピストンケース部材22aの孔211に挿設等することで連結し、回転軸4gの先部をボルトの頭部のように区画孔3fよりも径大に形成することができる。符号302はボールベアリングの転動体を示している。
【0084】
また図7に示すように、回転板43は、エア貯留部30(図7で回転板43よりも紙面側にエア貯留部30が位置している。)と、破線で示す各周辺区画孔3a,3b,3c,3d,3eとの開度を制御すべく、各周辺区画孔3a,・・・が設けてある区画体300部分を覆うことができる大きさで、尚かつ区画体300と接して設けられている。回転板43は、エア貯留部30と各周辺区画孔3a,・・・とを連通させる回転孔4a,4b,4c,4d,4eを有している。各回転孔4a,・・・は、エアを流通させる連通経路を構成している。
【0085】
図6に示すように、各回転孔4a,4b,4c,4d,4eは、回転軸4fを中心とする円周上に(回転体40の回転方向に沿って)所要の間隔をおいて所要数配置されている。本実施例では、各回転孔4a,・・・は、各周辺ビット42a,・・・を駆動する周辺ピストンケース部材22b,・・・の数に対応して五箇所設けてある。各回転孔4a,・・・は円形の孔で構成されており、各周辺区画孔3a,・・・と同じ内径か大体同じ内径の孔である。
【0086】
なお、各回転孔4a,・・・及び周辺区画孔3a,・・・は、いずれか一方または双方を平面視で長円形状(楕円状)の孔とすることもできるし、方形または矩形状等のその他の形状の孔とすることもできる。更に各回転孔4aの内径を周辺区画孔3aの内径よりも大きくすることもできるし、その逆にすることもできる。
【0087】
各回転孔4a,・・・は、回転体40の回転によって回転方向側の回転孔4a,・・・から徐々に各周辺区画孔3a,・・・との開度が増大するように、回転体40の回転方向に沿って等間隔ではなく間隔を変えて(間隔をずらして)配置されている。
【0088】
即ち、図7で破線で示す各周辺区画孔3a,・・・が同一円周上に等間隔で五箇所設けられているのに対し、実線で示す各回転孔4a,・・・は、同一円周上に等間隔ではなく、後述するように間隔を変えて五箇所設けられている。ここで、説明の便宜上、図7で右下の周辺区画孔3aと連通していない回転孔4aを第一回転孔4aとし、その周辺区画孔3aを第一区画孔3aとする。
【0089】
また第一回転孔4aから図7で時計回りに(回転方向と反対方向に)順に第二回転孔4b、第三回転孔4c、第四回転孔4d、第五回転孔4eとする。同様に、破線で示す第一区画孔3aから図7で時計回り(回転方向と反対方向)に順に第二区画孔3b、第三区画孔3c、第四区画孔3d、第五区画孔3eとする。
【0090】
そうすると、図7で示す状態では、第二回転孔4bは第二区画孔3bとその内径の1/3程度重ねって連通し、第三回転孔4cは第三区画孔3cとその内径の1/2程度重ねって連通し、第四回転孔4dは第四区画孔3dとその内径の2/3程度重ねって連通し、更に第五回転孔4eは第五区画孔3eと全体が重ねって完全に連通している。そして、回転体40の回転によって各回転孔4a,・・・が各周辺区画孔3a,・・・と連通していき、エアが各周辺エアホース352を通って周辺ピストンケース部材22bに送られ、図1に示す周辺ビット42a,・・・が駆動される。回転体40の詳細な作用については、後述する。
【0091】
図6及び図7に示すように、隣り合う回転孔4a,4bのほぼ中間付近には、半円形状のエア受け羽根45(合計で五箇所に)が設けてある。エア受け羽根45は、回転板43の周縁部に沿って配置されている。エア受け羽根45は、棒状の支持部451(図6参照)を介して回転体40の回転板43に固定されている。エア受け羽根45は、回転体40が図6で左回りに(反時計回りに)回転するように、エア受け羽根45の凹部面を回転方向とは逆に向けて取り付けてある。なお、エア受け羽根45の数は図示したものに限定するものではない。
【0092】
更に隣り合うエア受け羽根45と各回転孔4a,・・・の間には、各回転孔4aの内径よりも小径の貫通した作動流体供給孔であるエア供給孔46が所要数(本実施例では一箇所、回転板43全体で10箇所)設けてある。エア供給孔46は、各周辺区画孔3a,3b,3c,3d,3eと連通するように、回転軸4gを中心とする円周上に設けてある。回転体40の回転によって各エア供給孔46が各周辺区画孔3a,・・・と連通することにより、エア貯留部30からエアが各周辺ピストンケース部材22bに少量ずつ送られ、内部のピストン61を打撃前の待機状態まで駆動させる。この作用については後述する。
【0093】
(エアタンク部材3の外周部分)
図2に示すように、エアタンク部材3の連結体33よりも基部側(図2で上部側)は、連結体33をほぼ境にして基部側にむかってややすぼまって形成されている。この連結体33よりもやや径小に形成された径小部分36の外径は、後述する回転駆動装置5(図9参照)に設けてある筒状のドライブブッシュ51の内径と合うように作られている。
【0094】
そして、図9に示すように、掘削装置1を立てた状態で、掘削装置1の基端部からドライブブッシュ51を嵌め込んで落とし込むと、ドライブブッシュ51はエアタンク部材3の径大となっている部分(連結体33付近)で止まり、下に落ちない。これについての詳しい作用は、後述する。
【0095】
更に、図1に示すように、エアタンク部材3の外周には軸方向に沿って突条であるフラットバー361が所要数設けられている。本実施例では、フラットバー361は複数(合計で六箇所)設けてある。そして、掘削作業時に、このフラットバー361が後述する回転テーブル(ロータリテーブル)を備えた回転駆動装置5(図9参照)のドライブブッシュ51の内壁部に設けてある係合溝に係合し、ドライブブッシュ51の回転駆動力(回転運動)が掘削装置1に伝達される。
【0096】
[回転駆動装置5]
一方、図9に示す回転駆動装置5は、上記したように掘削装置1に回転運動を与えるものである。回転駆動装置5は、回転駆動装置本体50と、回転駆動装置本体50を支えるアウトリガ52を備えている。上記したように、回転駆動装置本体50は、ドライブブッシュ51を介して掘削装置1を装着でき、掘削装置1に回転運動を与える回転テーブル(図9では隠れて表れない)を備えている。
【0097】
(作 用)
掘削装置1を備えた回転式掘削機6の作用について説明する。
なお、本実施例では、地盤に杭用の孔を掘削する場合を例に挙げて、回転式掘削機6の作用を説明する。
【0098】
まず、図9に示すように、回転式掘削機6を構成する回転駆動装置5は、例えばH鋼等で組んだ仮設足場600上に載置される。一方、掘削装置1の基端部に、地盤に掘削する孔の長さに応じてケリーロッド7を所要数(必要数)接続する。本実施例では、ケリーロッド7を一つ繋げているが、二以上(複数)接続しても良い。
【0099】
ケリーロッド7はエア供給管を内蔵している。ケリーロッド7と掘削装置1はピン、ボルト、ナット等からなる固着具(図示省略)で固着される。ケリーロッド7を繋いだ掘削装置1は、クレーン(図面では表れず)によって懸吊支持される。図9で符号73は、クレーンに接続されたワイヤを示している。
【0100】
そして、回転駆動装置5の回転テーブル(図5では隠れて表れず)にドライブブッシュ51をセットする。更にクレーンで懸吊支持しながら、掘削装置1のエアタンク部材3のフラットバー361をドライブブッシュ51の内壁の溝である係合溝(図面では隠れて表れず)に係合させる。そうして、クレーンにより掘削装置1を吊り降ろしながら掘削を開始する。
【0101】
掘削時において、回転テーブルからドライブブッシュ51に伝達される回転駆動力はエアタンク部材3に伝達されて掘削装置1が回転する。ケリーロッド7の上端には、クレーンにより懸吊支持するための支持軸71が設けてある。この支持軸71に、掘削装置1にエアを供給する供給管72が接続されている。また支持軸71にはエアスイベル(図示省略)が設けてある。
【0102】
供給管72から送られるエアは、ケリーロッド7のエア供給管を通って掘削装置1に送られる。掘削装置1に送られたエアは、図2に示す連結ジョイント34の吹き出し孔340から放出されエア貯留部30に貯留される。
【0103】
吹き出し孔340から供給されたエアは、エア案内部材8の受部81に当たった後、受部81の凹部面に沿って跳ね返り、更に弧を描くようにして回転体収容体82側に戻って回転体40へ送られる。
【0104】
そして、回転体40はエア受け羽根45にエアを受けながら、図8(a)の状態から図8(b)、(c)、(d)の順で、左回りに(反時計回りに)回転する。なお、図8(a)〜(d)では、回転体40の回転状態を経時的に示しているが、説明の便宜上、各図面間の時間間隔はすべて同じではない。
【0105】
エアは、回転体40を回転させると共に、図2に示す回転体40の筒状の回転軸4gと各回転孔4a,・・・から各エアホース351,352を通して、対応する各ピストンケース部材22a,22bに送られ、中央ビット41及び各周辺ビット42a,・・・を打撃駆動する。
【0106】
このうち、中央ビット41は、回転体40によるエアの流量制御を受けないため、回転軸4gから連続的にエアが中央ピストンケース部材22aに送られることにより、他の周辺ビット42aの打撃動作とは独立して打撃駆動される。
これに対し、各周辺ビット42a,・・・は、回転体40の回転によって、エア貯留部30と各周辺区画孔3aとの開度を制御されて、以下のように打撃駆動される。
【0107】
即ち、図8(b)の状態では、図8(a)で第五区画孔3eと連通していた第五回転孔4eが移動して非連通状態となっており、その他の各回転孔4a,4b,4c,4dも他の周辺区画孔3a,3b,3c,3dと非連通状態となっている。
【0108】
また図8(c)の状態では更に回転して、図8(b)の状態で非連通状態だった第一回転孔4aが第五区画孔3eとその内径の2/3程度連通しており、第二回転孔4bも第二区画孔3bとその内径の1/3程度連通し、第三回転孔4cは未だ非連通状態である。
【0109】
更に図8(d)の状態では、図8(c)の状態で2/3程度連通していた第一回転孔4aが第五区画孔3eと完全に連通し、1/3程度連通していた第二回転孔4bが第一区画孔3aとその内径の1/2程度連通し、非連通状態だった第三回転孔4cが第二区画孔3bとその内径の1/3程度連通している。
【0110】
以上のように、回転体40が回転することで、回転方向側の第一回転孔4a,・・・側から徐々に各区画孔3a,・・・との開度が増大していき、それぞれの第一回転孔4a,・・・が順に連通した後は、また図8(b)のような非連通状態に戻って、更にこれを繰り返していく。
【0111】
このように、回転体40の回転方向に沿って順番に各回転孔4a,・・・が連通していくことにより、エア貯留部30から各周辺ピストンケース部材22bに同時でなく、順次時間をずらしながらエアが導入される。これにより、周辺ピストンケース部材22bに対応する各周辺ビット42a,・・・(図1参照)が周方向に周辺ビット42a,42b,42c,42d,42eの順で順番にずれながら打撃していく。したがって、掘削面に対して満遍なく、ほぼ均等に各ビット41,42a,・・・の打撃による衝撃力が与えられる。
【0112】
また上記したように、回転体40の回転によって回転孔4aよりも内径が小さい各エア供給孔46が各周辺区画孔3a,・・・と連通することにより、エア貯留部30から各周辺ピストンケース部材22bにエアが少量ずつ送られる。これにより、各周辺ピストンケース部材22b内部のピストン61が打撃前の待機状態となるまで(ピストン61が上方へ移動した状態か、あるいは上昇しないまでも周辺ピストンケース部材22bへある程度のエアが送られた状態まで)作動流体が送られる。その結果、各回転孔4aが各周辺区画孔3aと一致した際に、ピストン61が迅速に下降してビット41を打撃する。つまり、各回転孔4aが各周辺区画孔3aと一致してからビット41が打撃するまでの時間的なずれが解消または短縮される。
【0113】
以上のようにして、各ビット42a,・・・が互いに時間をずらしながら打撃駆動することから、掘削する孔とほぼ同じ径の一つのハンマビットを上下動させて地面を打撃していた従来のダウンザホールハンマを比べ、低騒音、低振動で掘削作業ができる。したがって、住宅密集地や都市部のオフィス街等での使用に好適である。
【0114】
更に、回転駆動装置5によって掘削装置1に回転運動が与えられることで、掘削装置1が有する各周辺ビット42a,・・・の掘削位置が掘削面に対して移動する。これにより、各ビッド41,42が掘削面全体を満遍なく打撃する。また、掘削装置1が回転することにより、掘削時に発生する粉砕した岩盤や土砂(スライム)が円滑に地表面へ送り出される。
【0115】
また図2に示すように、各ビット41,42a,・・・を作動させるピストン61等の駆動手段はピストンケース本体220内に収容され、更に筒状のピストンケースケーシング232によって覆われており、更には防振材または/及び防音材である砂230が充填された筒状本体231内に収容されている。これにより、駆動手段の駆動時に発生する音や振動が外部に漏れたり伝わることが防止し、低騒音・低振動化を可能としている。
【0116】
また本実施例では、回転駆動装置5がアウトリガ52を備えているので、アウトリガ52によって掘削作業時の安定性が向上するだけでなく、回転駆動装置本体50を接地面に直接載置して掘削を行う場合に比べ、回転駆動装置本体50から接地面に伝わる振動が緩和される。これにより、より効果的に低振動、低騒音化を図ることができる。
【0117】
更に上記したように、従来では、掘削する孔とほぼ同じ大きな径のハンマビットを駆動させる必要があったため、必然的にハンマビットを上下動させるために必要なエアの消費量が多く、比較的大きなエアコンプレッサーが必要であった。
【0118】
これに対し、本実施例では、掘削する孔に対して径小の各ビット41,42a,・・・を駆動させれば良いので、一つのビットを上下動させるためのエアの消費量が小さく、その結果、使用するエアコンプレッサーを小型化できる。よって、エアコンプレッサーの設置面積も小さくて済み、住宅密集地や都市部のオフィス街等といったスペースの限られた場所での施工に好適である。またエアコンプレッサーの小型化により、エアコンプレッサーを駆動させる原動機の小型化も可能になるので、原動機から発生する振動や騒音も低く抑えることができる。
【0119】
なお、本実施例では各ビット41,42a,・・・を合計で六ヶ所設けた掘削ビット部材2を使用しているが、特にその数を限定するものではない。本実施例では、掘削ビット部材2の直径は例えば450〜700mmである。
【0120】
本実施例とは相違して、例えばビットを五箇所設けて掘削ビット部材2を構成した場合(軸心部に一箇所、その周りに四箇所)では、掘削ビット部材2の直径を例えば450mm以下とすることができる。更に、例えばビットを六〜七箇所設けて掘削ビット部材2を構成した場合(軸心部に一箇所、その周りに五箇所または六箇所)では、掘削ビット部材2の直径は例えば700mm以上とすることができる。
【0121】
なお、ケリーロッド7の代わりに、エア供給管を有するスクリュー軸を使用することもできる。スクリュー軸を使用すれば、掘削時に発生する粉砕した岩盤や土砂(スライム)をより円滑に地表面へ送り出す(排土する)ことができる。またエアタンク部材3の周面部に排土用の螺旋羽根を設けることもできる。
【0122】
また本実施例では、回転テーブルを備えた回転駆動装置5を用いて掘削作業を行った場合について説明したが、掘削装置1に回転運動を与える手段は特に回転テーブルに限定するものではなく、三点式杭打ち機やリーダー等といった公知の回転駆動手段を採用することができる。
【実施例2】
【0123】
図11及び図12は、本発明に係る地中掘削用の掘削装置の第二の実施例を説明するための図である。
図11は、掘削装置の縦断面説明図、
図12は、図11に示すエア案内部材を水平方向に断面して回転体を含む内部構造を表した平面視説明図であり、実施例1でいう図7に対応する図である。
【0124】
なお、実施例1と同一または同等箇所には同一の符号を付して示している。また、実施例1で説明した箇所については、説明を省略し、主に相異点を説明する。
【0125】
上記した実施例1(図2及び図7参照)では、 回転体40によって五つの周辺区画孔3a,3b,3c,3d,3eとの開度を制御している。これに対し、本実施例に係る掘削装置1aでは、図12で示す回転体40aによって3つの区画孔5a,5b,5c(以下、「内方区画孔5a,5b,5c」という。)との開度を制御している。更に、回転体40aの外方には、3つの区画孔5d,5e,5f(以下、「外方区画孔5d,5e,5f」という。)が配置されている。
【0126】
以下、本実施例に係る掘削装置1aについて更に詳細に説明する。
図11に示す回転体40aの回転軸4gは、実施例1(図2参照)と相違して筒状に形成されておらず、エアホースは接続されていない。回転軸4gは、区画体300aの中央の軸受孔303に回転可能に挿設され、軸受孔303から抜けることはない。軸受孔303を中心とする区画体300a(図12参照)の円周上には、上記した内方区画孔5a,5b,5c(破線で示す)が等間隔で三箇所配置されている。
【0127】
このうちの一つの内方区画孔5a(図12で右側に位置)は、図1に示す周辺ビット42aに対応する周辺ピストンケース部材22b(図11参照)から導出された周辺エアホース353に接続されている。また残りの一方(図12で区画孔5aの左下)の内方区画孔5bは、図1に示す周辺ビット42cに対応する周辺ピストンケース部材22bから導出された周辺エアホース354(図11参照、一部省略)に接続されている。更に残り他方の内方区画孔5c(図12で区画孔5aの左上)は、図1に示す周辺ビット42dに対応する周辺ピストンケース部材22bから導出された周辺エアホース355(図11参照)に接続されている。なお、これら内方区画孔5a,5b,5cが接続されている各エアホース353,354,355は、同じ内径で同じ長さである。
【0128】
回転板43aは、エア貯留部30と各内方区画孔5a,5b,5cとを連通させる回転孔6a,6b,6cを有している。各内方回転孔6a,・・・は、エアを流通させる連通経路を構成している。
【0129】
各回転孔6a,6b,6cは、回転板43aの回転中心を中心とする円周上に(回転体40aの回転方向に沿って)所要の間隔をおいて所要数配置されている。本実施例では、各回転孔6a,6b,6cは、上記した内方区画孔5a,5b,5cの数に対応して合計で三箇所設けてある。本実施例では、各回転孔6a,6b,6cは円形の孔で構成されており、内方区画孔5a,5b,5cと同じか大体同じ内径の孔である。
【0130】
上記したように、内方区画孔5a,5b,5c(破線で示す)は等間隔で設けてある。これに対し、各回転孔6a,・・・は、回転体40aの回転によって回転方向側の回転孔6aから徐々に各区画孔5a,5b,5cとの開度が増大するように、回転体40aの回転方向に沿って等間隔ではなく間隔を変えて(間隔をずらして)配置されている。
【0131】
説明の便宜上、図12で右側の内方区画孔5aと円全体が完全に連通している回転孔6aを第一回転孔6aとする。そして、第一回転孔6aから図12で時計回り(回転方向と反対方向)に順に第二回転孔6b、第三回転孔6cとする。また同様に、上記した右側の内方区画孔5aから図12で時計回り(回転方向と反対方向)に順に第二内方区画孔5b、第三内方区画孔5cとする。
【0132】
本実施例では、図12に示す状態で、第二回転孔6bは第二内方区画孔5bとその内径の1/3程度重ねって連通し、第三回転孔6cは第三内方区画孔5cとその内径の1/2程度重ねって連通している。回転体40aの回転による各回転孔6a,・・・と各内方区画孔5a,・・・との連通状態とその作用については、後述する。
【0133】
図12に示すように、隣り合う各回転孔6a,・・・の間には、エア受け羽根45が所要間隔をおいて所要数(各回転孔6a,・・・の間に二箇所、合計で六箇所に)設けてある。更に、各回転孔6aの内径よりも小さいエア供給孔46が各回転孔6a及びエア受け羽根45を避けるようにして、それらの間の所要の位置に設けてある。エア受け羽根45とエア供給孔46の作用は、実施例1と同じであるため、説明を省略する。
【0134】
図11に示すように、回転体収容体82の基端部823(図11で下端部)は、区画体300aの周縁部よりもやや内方に固定されている。更に、この基端部823とエア貯留部30の内壁面304の間に位置する区画体300aの部分(図12も参照)に、作動流体の流通孔である外方区画孔5d,5e,5fが所要の間隔をおいて所要数(本実施例では正三角形の頂点を作るように等間隔で三箇所)設けてある。
【0135】
このうちの一つの外方区画孔5d(図12で右側に位置)は、図1に示す中央ビット41に対応する中央ピストンケース部材22a(図11参照)から導出された中央エアホース356に接続されている。また残りの一方(図12で左下に位置)の外方区画孔5eは、図1に示す周辺ビット42bに対応する周辺ピストンケース部材22bから導出された周辺エアホース(図示省略)に接続されている。更に、残り他方の外方区画孔5f(図12で左上に位置)は、図1に示す周辺ビット42eに対応する周辺ピストンケース部材22aから導出された周辺エアホース(図示省略)に接続されている。これら外方区画孔5d,5e,5fが接続されている各エアホースは、同じ径及び同じ長さである。
【0136】
(作 用)
本実施例に係る掘削装置1aは、以下のように作用する。なお、原則的に実施例1で示した作用のうち同様のものは説明を省略する。
【0137】
図11に示す連結ジョイント34の吹き出し孔340から供給されたエアは、実施例1と同様に、エア案内部材8に当たってエア貯留部30の先部側に送られ、その一部は回転体収容体82内の回転体40aに送られる。
【0138】
エア貯留部30の先部側に送られたエアは、図12で回転体収容体82の外方側に位置する各外方区画孔5d,5e,5fに送られる。そして、回転体40aによるエアの流通制御を受けることなく、各外方区画孔5d,5e,5fから対応する各ピストンケース部材22a,22b,22bにエアが連続的に送られ、図1に示す各中央ビット41、周辺ビット42b,周辺ビット42eは同時に打撃駆動する。
【0139】
一方、回転体収容体82の内部に送られたエアは、図12に示す回転体40aを左回りに(反時計回りに)回転させる。そして、この回転体40aの回転によって、エア貯留部30と各内方区画孔5a,5b,5cとの開度が制御される。即ち、図12で実線で示す各回転孔6a,6b,6cが破線で示す各内方区画孔5a,5b,5cと一致することで、エア貯留部30と各内方区画孔5a,5b,5cとが連通し、図1に示す周辺ビット42a,・・・が順番にずれながら打撃駆動される。
【0140】
詳しくは、実施例1で説明した回転体40と同様に、内方区画孔5a,5b,5cは、等間隔ではなく間隔を変えて(間隔をずらして)配置されている。そして、回転体40aが回転することで、回転方向側の第一回転孔6a,・・・から徐々に各内方区画孔5a,5b,5cとの開度が増大していくことで、エア貯留部30から各周辺ピストンケース部材22bに同時でなく順次時間がずれながらエアが導入される。これにより、図1に示す周辺ビット42a,42c,42dの順で順番にずれながら打撃していく。
【0141】
以上説明した各ビット41,42a,・・・の駆動状態を図1を参照しながら、改めて説明すると、中央ビット41、周辺ビット42b,42eの三つは同時に打撃駆動され、更に残りの周辺ビット42a,42c,42dの三つはこの順で順番にずれながら打撃駆動される。
【0142】
このように、実施例1(全ての周辺ビット42b,・・・が順番にずれながら打撃駆動されていく構成されているもの)と相違して、本実施例(実施例2)では、順番に時間をずらしながら打撃駆動される周辺ビット42a,42c,42と共に、同時に打撃駆動される中央ビット41及び周辺ビット42b,42eを併せ持っている。
【0143】
よって、本実施例(実施例2)では、この同時に打撃駆動される中央ビット41及び周辺ビット42b,42eによって、地面に対して同時に大きな衝撃力を与えることができるため、掘削の作業効率が高い。つまり、低振動、低騒音化に関しては実施例2よりも実施例1の方が優れているものの、掘削の作業効率については実施例2の方が優れている。
【0144】
したがって、多少の振動や騒音が発生してもそれほど支障がない現場(住宅密集地や都市部のオフィス街から少し離れた場所等)では、実施例2の掘削装置1aを使用する方が掘削の作業効率を高めて施工日数の短縮化を図ることができる。
【0145】
また同じ施工現場での掘削作業であっても、孔を地中深く掘り込んでいけば、現場周辺に及ぼす振動や騒音の影響は次第に小さくなる。よって、第1段階として実施例1に係る掘削装置1(図2参照)を使用して地表面から所要の深さまで掘り進み、次に第2段階として実施例2に係る掘削装置1a(図11参照)に交換してから続けて掘削作業を行うようにすれば、現場周辺に及ぼす振動や騒音を最小限に抑えながら、尚かつ、掘削の作業効率を向上させて施工日数の短縮化も図ることができる。
【0146】
なお、掘削する孔とほぼ同じ径の一つのハンマビットを打撃駆動させていた従来のダウンザホールハンマを比べ、実施例2の方が低振動、低騒音化に優れていることは言うまでもない。
【0147】
また本実施例では、図1に示す複数のビット41,42a,・・・のうち、中央ビット41及び周辺ビット42b,42eの三つを同時に打撃駆動できるが、その同時に駆動させるビットの数や位置については特に限定しない。
【0148】
更に図13は、ビットの数や位置を変えて製造した掘削装置の各種のバリエーションを示しており、ビットの先端から掘削装置を見た状態を概略的に示している。図13では、各ビット47を小さな円で示し、掘削ビット部材2を大きな円で示している。
【0149】
ビット全体の数や位置についても、実施例1及び実施例2に特に限定するものではなく、図13に示すような様々なバリエーションの掘削装置1b〜1jが考えられる。即ち、図13に示すように、例えば四箇所〜十箇所設けることもできるし、三箇所あるいは十一箇所以上設けることもできる。また中央のビット47を省略しても良く、中央に一箇所、二箇所、あるいは3箇所またはそれ以上設けることもできる。
【0150】
なお、本明細書で使用している用語と表現はあくまで説明上のものであって、限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。また、本発明は図示の実施例に限定されるものではなく、技術思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【0151】
更に、特許請求の範囲には、請求項記載の内容の理解を助けるため、図面において使用した符号を括弧を用いて記載しているが、特許請求の範囲を図面記載のものに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】実施例1に係る掘削装置を先端側から見た斜視説明図。
【図2】図1に示す掘削装置の縦断面説明図。
【図3】図1に示す掘削装置の分解斜視説明図。
【図4】掘削ビット部材に収容されているピストンケース部材を縦断面して内部構造を表した側面視説明図。
【図5】図2に示す掘削装置のエアタンク部材内に配置される流体案内部材を示す斜視説明図。
【図6】図5に示す流体案内部材の内部に配置される回転体を示す斜視説明図。
【図7】図5に示す流体案内部材を水平方向に断面して回転体を含む内部構造を表した平面視説明図。
【図8】図7に示した回転体の回転状態を経時的に示した一部省略説明図。
【図9】掘削装置と回転駆動装置で主に構成される回転式掘削機を示す側面視説明図。
【図10】図2に示した回転体の他の実施例を示す部分拡大説明図。
【図11】実施例2に係る掘削装置の縦断面説明図。
【図12】図11に示すエア案内部材を水平方向に断面して回転体を含む内部構造を表した平面視説明図。
【図13】ビットの数や位置を変えて製造した掘削装置の各種のバリエーションを示す概略説明図。
【符号の説明】
【0153】
1,1a 掘削装置
2 掘削ビット部材
3 エアタンク部材
3a,3c,3d,3e,3f,4a,4b,4c,4d 回転孔
5 回転駆動装置
5a,5b,5c,5d,5e 区画孔
6 回転式掘削機
6a,6b,6c 回転孔
7 ケリーロッド
8 エア案内部材
21 接続体
22a,22b ピストンケース部材
23 ピストンケース取付体
24 ドライブチャック
25 チャックガイド
26 フラットバー
30 エア貯留部
31 ボルト
32 ナット
33 連結体
34 連結ジョイント
36 径小部分
40,40a 回転体
41,42a〜42e 周辺ビット
43,43a 回転板
44a 軸部
45 エア受け羽根
46 エア供給孔
47 ビット
50 回転駆動装置本体
51 ドライブブッシュ
52 アウトリガ
61 ピストン
62 シリンダー
63 チェックバルブ
64 エアディストリビータ
65 バルブスプリング
66 フートバルブ
71 支持軸
72 供給管
73 ワイヤ
81 エア案内受部
81 受部
82 回転体収容体
211 孔
220 ピストンケース本体
222 差込部
230 砂
231 筒状本体
232 ピストンケースケーシング
233 先部カバー体
234 基部カバー体
235,236 挿通孔
241 孔
242 回り止め部部
251 ボルト
252 ナット
253,254 凹部
255 取付孔
256 凹部
300,300a 区画体
301 転動体
303 軸受孔
304 内壁面
331 連結孔
340 吹き出し孔
351,352 エアホース
353〜355 周辺エアホース
356 中央エアホース
361 フラットバー
411,421 ヘッド部
412 ボタンチップ
421 ヘッド部
441 他端部
451 支持部
600 仮設足場
821,822 取入部
823 基端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削装置本体(2)よりも外径が小さく、掘削側へ進退する複数のビット(42a,42b,42c,42d,42e)と、
ビット(42a,42b,42c,42d,42e)の数に対応して掘削装置本体(2)内に複数収容されており、作動流体のエネルギーによって各ビット(42a,42b,42c,42d,42e)に打撃力を与えるピストン(61)を内蔵するピストンケース部材(22b,22b,22b,22b,22b)と、
各ピストンケース部材(22b,22b,22b,22b,22b)に送られる作動流体を貯留する流体貯留部(30)と、
上記ピストンケース部材(22b,22b,22b,22b,22b)の数に対応して複数設けてあり、各ピストンケース部材(22b,22b,22b,22b,22b)に送られる作動流体が通る作動流体流通経路(352,352,352,352,352)と、
上記流体貯留部(30)から各作動流体流通経路(352,352,352,352,352)の流通口(3a,3b,3c,3d,3e)へ作動流体を送るべく、流体貯留部(30)と各流通口(3a,3b,3c,3d,3e)を連通させる複数の連通孔(4a,4b,4c,4d,4e)を備えた回転体(40)と、
を有しており、
上記各ビット(42a,42b,42c,42d,42e)が互いに時間をずらしながら打撃駆動するようにすべく、上記流通口(3a,3b,3c,3d,3e)は回転体(40)の回転方向に沿って設けてあり、上記連通孔(4a,4b,4c,4d,4e)は、各流通口(3a,3b,3c,3d,3e)と同時に同じ開度で連通することを防ぐために各流通口(3a,3b,3c,3d,3e)の配置とは異なる配置で回転方向に沿って設けられている、
地中掘削用の掘削装置。
【請求項2】
回転体(40)は、作動流体を受けて回転体(40)を回転させるための作動流体受け羽根(45)を備えている、
請求項1記載の地中掘削用の掘削装置。
【請求項3】
回転体(40)は、連通孔(4a,4b,4c,4d,4e)とは別に、流体貯留部(30)と各流通口(3a,3b,3c,3d,3e)を連通させる作動流体供給孔(46)を備えており、該作動流体供給孔(46)はビット(42a,42b,42c,42d,42e)に打撃力を与えるために必要な作動流体の一部を供給するために連通孔(4a,4b,4c,4d,4e)よりも内径が小さく設定されている、
請求項1または2記載の地中掘削用の掘削装置。
【請求項4】
互いに時間をずらしながら打撃駆動する複数のビット(42a,42c,42d)とは別途独立して同時に打撃駆動する複数のビット(41,42b,42e)を備えており、
別途独立して駆動する該ビット(41,42b,42e)に対応する各ピストンケース部材(22a,22b,22b)の作動流体流通経路(352,352,352,352,352)は、回転体(40)による制御を受けることなく流体貯留部(30)と常時連通した状態となっている、
請求項1ないし3のいずれかに記載の地中掘削用の掘削装置。
【請求項5】
流体貯留部(30)には、流体貯留部(30)に供給された作動流体を受けて流通口(3a,3b,3c,3d,3e)に案内する作動流体案内部材(8)が設けてある、
請求項1ないし4のいずれかに記載の地中掘削用の掘削装置。
【請求項6】
掘削装置本体(2)には、各ピストンケース部材(22b,22b,22b,22b,22b)の周りを囲むようにして防振材または/及び防音材(230)が設けてある、
請求項1ないし5のいずれかに記載の地中掘削用の掘削装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の掘削装置(1)(1b)と、該掘削装置(1)(1b)に回転運動を与えることができる回転駆動装置(5)とを備えた、
回転式掘削機。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の掘削装置(1)(1a)を使用した地中掘削工法であって、
掘削装置(1)(1a)に回転運動を与えながら地中掘削を行うことを特徴とする、
地中掘削工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−138473(P2008−138473A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327638(P2006−327638)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【特許番号】特許第4076564号(P4076564)
【特許公報発行日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(505046282)
【Fターム(参考)】