説明

地中管取替え装置

【課題】既設管が硬い鋼製カラーが用いられたコンクリート管や伸び易い塩化ビニル管の場合にも、既設管を容易に破壊できる地中管取替え装置を提供する。
【解決手段】頭部(52)と胴部(53)と新設管連結部(54)とを備える地中管取替え装置(50)において、頭部は、胴部の先端周縁部(56)に径方向に揺動可能に結合された複数の後方ペタル(58)と、後方ペタルの先端に径方向に揺動可能に支持された複数の前方ペタル(60)と、前方ペタルの先端をそれぞれ軸支する先端コーン(62)と、少なくとも1つ以上の前方ペタルの後端部付近に設けられた前方刃(64)と、この前方刃の直後に位置して後方ペタルの前端部付近に設けられ後方刃(66)と、前方ペタル及び後方ペタルを揺動させるアクチュエータ(70)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面を開削することなく地下に埋設された下水道管等の既設管を破壊しながら新設管に取り替えていくときに使用する地中管取替え装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の地中管取替え装置としては、下記特許文献1に開示されたようなものが知られている。この地中管取替え装置を図7に示す。
【0003】
この地中管取替え装置は、図7に示したように、鋼製の頭部22と胴部23と新設管連結部24とからなる。頭部22は、破壊する既設管45と同じかいくらか細くされており、その前端には図示しない牽引ケーブルを接続する目41を有するシャックルハウジング40が設けられる。胴部23は、破壊する既設管45よりいくらか太くされており、その先端には頭部22へ連続するテーパが設けられている。新設管締部24には、新たに設置する新設管43が接続される。
【0004】
頭部22には溝25が設けられていて、この溝25内に切削羽根26が配置されており、頭部22の中心軸に沿って流体圧アクチュエータのラム39が配置されている。切削羽根26は、その前端をピン27によって頭部22に軸支されており、その外方側が刃29になっており、その内面に流体圧アクチュエータのラム39が当接しており、ラム39を前後させることによって、切削羽根26を頭部22から出没させることができるようになっている。
【0005】
この地中管取替え装置によって既設管45を新設管43に取り替えるときは、この地中管取替え装置の新設管連結部24に新設管43を接続し、切削羽根26の刃29を頭部22から突出させ、シャックルハウジング40に牽引ケーブルを接続して前方の縦抗内に設置した牽引手段によって牽引する。これによって、この地中管取替え装置は、切削羽根26の刃29によって既設管45を切断破壊しながら前進して、既設管45を新設管43に置き換えていく。
【0006】
この地中管取替え装置によれば、地面を開削することなく地下に埋設された下水道管等の既設管45を破壊しながら、既設管45を新設管43に取り替えていくことができるため、取替えの費用軽減や工期短縮を実現できる。
【0007】
【特許文献1】特公昭60−27873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に開示された地中管取替え装置は、切削羽根26の刃29を頭部22に設けられた溝25内からいくらか突出させた状態で前進することによってコンクリート製の既設管45を破壊しているが、既設管45が、継ぎ手に硬い鋼製カラーが用いられたコンクリート管や、伸び易い塩化ビニル管の場合には、切削羽根26の刃29によって既設管45を容易に破壊できない事態が起き易いという問題があった。
【0009】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであって、既設管が硬い鋼製カラーが用いられたコンクリート管や伸び易い塩化ビニル管の場合にも、既設管を容易に破壊できる地中管取替え装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、頭部と胴部と新設管連結部とを備える地中管取替え装置において、前記頭部は、前記胴部の先端の周縁部に径方向に揺動可能に連結された複数の後方ペタルと、該後方ペタルの先端に径方向に揺動可能に連結された複数の前方ペタルと、該前方ペタルの先端に連結された先端コーンと、1つ以上の前記前方ペタルの後端部又は1つ以上の前記後方ペタルの前端部に設けられた刃と、前記前方ペタル及び後方ペタルを揺動させるアクチュエータとを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、頭部と胴部と新設管連結部とを備える地中管取替え装置において、前記頭部は、前記胴部の先端の周縁部に径方向に揺動可能に連結された複数の後方ペタルと、該後方ペタルの先端に径方向に揺動可能に連結された複数の前方ペタルと、該前方ペタルの先端に連結された先端コーンと、前記前方ペタルの後端部に設けられた前方刃と、該前方刃の直後で前記後方ペタルの前端部に設けられた後方刃と、前記前方ペタル及び後方ペタルを揺動させるアクチュエータとを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記アクチュエータは頭部後方の中心軸上に設置され、前記アクチェータのラムの先端部と前記前方ペタル又は後方ペタルとはリンクによって連結されたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1,2又は3に係る発明において、前記前方ペタル及び前記後方ペタルの両側にはそれぞれ側方張出し部が設けられ、該側方張出し部は隣接する前方ペタル及び後方ペタルの側方張出し部と摺動可能に重なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、地中管取替え装置において、頭部は、胴部の先端の周縁部に径方向に揺動可能に連結された複数の後方ペタルと、該後方ペタルの先端に径方向に揺動可能に連結された複数の前方ペタルと、該前方ペタルの先端に連結された先端コーンと、1つ以上の前記前方ペタルの後端部又は1つ以上の前記後方ペタルの前端部に設けられた刃と、前記前方ペタル及び後方ペタルを揺動させるアクチュエータとを備えたから、地中管取替え装置を既設管内に進入させて、アクチュエータを作動させ、前方ペタル及び後方ペタルを揺動させ、刃の設けられた部分の直径を増大させることによって、既設管を破壊できる。そして、地中管取替え装置の前進と、刃の設けられた部分の直径増大による既設管の破壊とを繰り返すことにより、容易に既設管を新設管へ取り替えることができる。しかも、刃の設けられた部分は最も直径を増減できる位置であるから、既設管が伸び易い塩化ビニル管であっても既設管を容易に破壊できる。また、既設管の継ぎ手に硬い鋼製のカラーが用いられていても、地中管取替え装置を強い力で引張るか又は押す必要なく、刃の設けられた部分の直径を増すだけで既設管を容易に破壊できる。このため、地中管取替え装置を推進させるには、大きな力を必要としないので、地中管取替えが従来ののものより容易である。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、さらに、既設管を破壊する刃として、前方ペタルの後端部に設けられた前方刃と、該前方刃の直後で後方ペタルの前端部に設けられた後方刃とを備えるから、前方刃と後方刃を合わせた全長が長くなり、一度に破壊できる長さが長くなって、いっそう効率的な地中管取替えが可能になる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、さらに、アクチュエータは頭部後方の中心軸上に設置され、前記アクチェータのラムの先端部と前方ペタル又は後方ペタルとはリンクによって連結されたから、1つのアクチュエータによって多数の前方ペタル及び後方ペタルを揺動させることができ、コストとスペースを節減できる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、さらに、前記前方ペタル及び前記後方ペタルの両側にはそれぞれ側方張出し部が設けられ、該側方張出し部は隣接する前方ペタル及び後方ペタルの側方張出し部と摺動可能に重なるから、地中管取替え装置内に土砂や既設管の破片が浸入することがなく、故障の発生が少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明の地中管取替え装置の一実施例を説明する。図1は、地中管取替え装置50の頭部52の直径を縮めたときの縦断面図である。図2は、地中管取替え装置50の頭部52直径を拡大したときの縦断面図である。図3は、図1においてIII−III線に沿う横断面図である。図4は、図1においてIV−IV線に沿う横断面図である。図5は、図2においてV−V線に沿う横断面図である。図6は、図2においてVI−VI線に沿う横断面図である。
【0019】
この地中管取替え装置50も鋼製の頭部52と胴部53と既設管連結部54とからなり、胴部53と既設管連結部54とは従来のものと略同じ構成である。ただし、頭部52については、以下に述べるように改良されている。
【0020】
頭部52は、胴部53の先端周縁部56に径方向に揺動可能に連結された3対の後方ペタル58と、この後方ペタル58の先端に径方向に揺動可能に連結された3対の前方ペタル60と、この前方ペタル60の先端に連結された先端コーン62とからなる。地中管取替え装置50の鉛直面に位置する一対の前方ペタル60の後端部、同じく一対の後方ペタル58の前端部には、それぞれ前方刃64及び後方刃66が溶接等によって固定される。前方刃64と後方刃66の前端側には、既設管45内を前進し易いようにテーパ部が設けられる。
【0021】
頭部52の中心軸68上で後端付近には流体圧(油圧又は空気圧)で作動するアクチェータ70が設置され、アクチュエータ70のラム72の先端部74と後方ペタル58の先端とはリンク76によって連結されている。もちろん、ラム72の先端部74と前方ペタル60の後端とをリンク76によって連結するように変更してもよい。ここで、アクチュエータ70を作動させてラム72を前進させると、頭部52における前方刃64及び後方刃66の位置する部分の直径を大きく増大させることができ、ラム72を後進させると、頭部52における前方刃64及び後方刃66の位置する部分の直径を小さくして、前方ペタル60及び後方ペタル58を一直線にできる。前方刃64及び後方刃66の位置する部分の直径は、頭部52を縮径して既設管45に挿入したとき、前方刃64が既設管45に当接する程度が望ましい。前方ペタル60の後端に前方刃64を取付、後方ペタル58の前端に後方刃66を取り付けたのは、最も直径を増減できる位置で、なるべく両刃64、66を合わせた全長を長くするためである。
【0022】
各前方ペタル60と各後方ペタル58の両側には側方張出し部80a、80bが設けられる。各ペタル58、60の一側の側方張出し部80aは隣接するペタル58、60の他側の側方張出し部80bと摺動可能に重なり、各ペタル58、60の他側の側方張出し部80bは隣接するペタル58、60の一側の側方張出し部80aと摺動可能に重なる。この側方張出し部80a、80bを設けたことにより、前方刃64及び後方刃66の位置する部分の直径を大きく増大させても、隣接するペタル58、60の間に隙間を生ずることがないので、地中管取替え装置50内に土砂や既設管45の破片が浸入することがなくなる。
【0023】
先端コーン62には、図示しない牽引ケーブルを接続するために、図示しないスイベルジョイントが設けられる。
【0024】
この地中管取替え装置50によって既設管45を新設管43に取り替えるときは、図1に示したように、この地中管取替え装置50の新設管連結部54に新設管43を接続し、頭部52を縮径した状態で、先端コーン62を図示しない牽引ケーブルで引張るとともに、新設管43の後部を図示しないジャッキで押して、前方刃64が破壊前の既設管45に当接するか浅い傷を与える程度に地中管取替え装置50を前進させる。次に、図2に示したように、アクチュエータ70を作動させてラム72を前進させて、頭部52における前方刃64及び後方刃66の位置する部分の直径を大きく増大させる。すると、前方刃64及び後方刃66によって既設管45が切断破壊される。次に、アクチュエータ70を作動させてラム72を後進させて、再び図1に示したように、頭部52における前方刃64及び後方刃66の位置する部分の直径を小さくして、地中管取替え装置50を前進させる。
【0025】
以下、頭部52の縮径した状態での地中管取替え装置50の前進と、頭部52の拡径による既設管45の破壊とを繰り返すことによって、既設管45を新設管43に取り替えていくことができる。
【0026】
本実施例によれば、地中管取替え装置50を既設管45内に進入させて、アクチェータ70を作動させ、前方ペタル60及び後方ペタル58を揺動させ、前方刃64及び後方刃66の設けられた部分の直径を増大させることによって、容易に既設管45を破壊できる。そして、地中管取替え装置50の前進と、前方刃64及び後方刃66の設けられた部分の直径増大による既設管45の破壊とを繰り返すことにより、地面を開削することなく既設管45を新設管43へ取り替えることができる。しかも、前方ペタル60の後端と後方ペタル58の前端に前方刃64及び後方刃66を配置して、両刃64、66を合わせた全長を長くしたから、既設管45を一度にできるだけ長く破壊でき、効率的な地中管取替えが可能になる。
【0027】
また、前方ペタル60の後端と後方ペタル58の前端の最も直径を増減できる位置に前方刃64及び後方刃66を配置したから、既設管45が伸び易い塩化ビニル管であっても容易に破壊できる。既設管45が継ぎ手に硬い鋼製のカラーが用いられたコンクリート管であっても、地中管取替え装置50を強い力で引張るか又は押す必要なく、前方刃64及び後方刃66の設けられた部分の直径を増すだけで既設管45を容易に破壊できるので、地中管取替え装置50を前進させる推進力が小さくて済む。したがって、地中管取替え装置50の後部に接続された新設管43の後部を小出力のジャッキで押すとともに、先端コーン62に接続された牽引ケーブルを小出力のウインチで引張ることで、地中管取替え装置50を前進させることが可能となるので、地中管取替えを容易に行える。
【0028】
さらに、アクチュエータ70は頭部52後方の中心軸68上に設置され、アクチュエータ70のラム72の先端部と前方ペタル60又は後方ペタル58とはリンク76によって連結されたから、1つのアクチュエータ70によって多数の前方ペタル60及び後方ペタル58を揺動させることができ、コストとスペースを節減できる。
【0029】
さらに、各ペタル58、60の側方張出し部80a、80bは、隣接するペタル58、60の側方張出し部80a、80bとは摺動可能に重なるようにされているから、地中管取替え装置50内に土砂や既設管45の破片が浸入することがなく、故障の発生が少なくなる。
【0030】
ところで、本発明は前記実施例に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、前記実施例では3対の前方ペタル60及び後方ペタル58を備えたが、前方ペタル60及び後方ペタル58は、それぞれ一対以上の複数個であればよく、偶数個に限らず奇数個でもよい。
【0031】
また、前記実施例では横断面で対角線上の一対の前方ペタル60、同じく一対の後方ペタル58にのみ前方刃64及び後方刃66を設けたが、少なくと1つ以上の適宜前方ペタル60又は適宜後方ペタル58のいずれかにに刃64、66を設けるだけでもよい。もちろん、全ての前方ペタル60及び後方ペタル58に前方刃64及び後方刃66を設けてもよい。
【0032】
さらに、前記実施例ではアクチュエータ70のラム72の先端部74と後方ペタル58とをリンク76によって連結したが、複数のアクチュエータ70を備え、各アクチュエータ70のラム72の先端を直接に後方ペタル58又は前方ペダル60に接続してもよい。もちろん、アクチュエータ70の設置位置も適宜変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の1実施例に係る地中管取替え装置の頭部を縮径した状態の縦断面図である。
【図2】前記地中管取替え装置の頭部を拡径した状態の縦断面図である。
【図3】図1におけるIII−III線に沿う横断面図である。
【図4】図1におけるIV−IV線に沿う横断面図である。
【図5】図2におけるV−V線に沿う横断面図である。
【図6】図2におけるVI−VI線に沿う横断面図である。
【図7】従来の地中管取替え装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0034】
50 地中管取替え装置
52 頭部
54 胴部
56 新設管連結部
58 後方ペタル
60 前方ペタル
62 先端コーン
64 前方刃
66 後方刃
70 アクチュエータ
72 ラム
74 リンク
80a、80b 側方張出し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部と胴部と新設管連結部とを備える地中管取替え装置において、
前記頭部は、前記胴部の先端の周縁部に径方向に揺動可能に連結された複数の後方ペタルと、該後方ペタルの先端に径方向に揺動可能に連結された複数の前方ペタルと、該前方ペタルの先端に連結された先端コーンと、1つ以上の前記前方ペタルの後端部又は1つ以上の前記後方ペタルの前端部に設けられた刃と、前記前方ペタル及び後方ペタルを揺動させるアクチュエータとを備えたことを特徴とする地中管取替え装置。
【請求項2】
頭部と胴部と新設管連結部とを備える地中管取替え装置において、
前記頭部は、前記胴部の先端の周縁部に径方向に揺動可能に連結された複数の後方ペタルと、該後方ペタルの先端に径方向に揺動可能に連結された複数の前方ペタルと、該前方ペタルの先端に連結された先端コーンと、前記前方ペタルの後端部に設けられた前方刃と、該前方刃の直後で前記後方ペタルの前端部に設けられた後方刃と、前記前方ペタル及び後方ペタルを揺動させるアクチュエータとを備えたことを特徴とする地中管取替え装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは頭部後方の中心軸上に設置され、前記アクチェータのラムの先端部と前記前方ペタル又は後方ペタルとはリンクによって連結されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の地中管取替え装置。
【請求項4】
前記前方ペタル及び前記後方ペタルの両側にはそれぞれ側方張出し部が設けられ、該側方張出し部は隣接する前方ペタル及び後方ペタルの側方張出し部と摺動可能に重なることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の地中管取替え装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−277974(P2007−277974A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107235(P2006−107235)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(000127259)株式会社イセキ開発工機 (9)
【Fターム(参考)】