説明

地中線判定装置及び地中線判定方法

【課題】地中線のバンク設計を迅速かつ容易に行う。
【解決手段】地中線判定装置1は、幹線ケーブルの各区間長、顧客宅の引込動力相最大電流及び引込電灯相最大電流、新設すべき引込ケーブル長、新設用に選択した引込ケーブル線種を取得する。次に、取得した情報に基づいて、幹線電流、引込共用相電流、引込許容電流、幹線電圧降下、引込電圧降下、変圧器利用率等を計算する。そして、引込共用相電流が引込許容電流以下か、引込電圧降下が上限値以下か、設計短絡電流が許容短絡電流以上かを判定し、判定結果に応じて○×を表示する。×のときには、取得した引込ケーブル線種より一段上位の(太い)線種を選択し、その線種を用いて再度計算を行う。一方、幹線電圧降下が上限値以下か、幹線電流が上限値以下か、変圧器利用率が100%以下を判定し、判定結果に応じて○×を表示する。×のときには、バンクの設計レイアウトの変更を行い、再度計算を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線共同溝の変圧器、低圧幹線ケーブルや低圧引込ケーブルに関するバンク設計を行う際に、変圧器の利用率、各ケーブルの許容電流、電圧降下及び保護協調の判定を行う装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電線共同溝(CCBOX)は、道路の地下空間を利用して、光ファイバ、電力線等をまとめて収容するものである。近年の電線共同溝による電力供給方式では、路上変圧器から低圧幹線ケーブルを延ばし、引込分岐枡内で幹線ケーブルから引込ケーブルをヒューズなしで直接分岐させて、需要家宅まで延ばしている。従来使っていたヒューズをなくしたのは、低コスト化、道路上の省スペース化、設置作業の簡略化のためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4094993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、1つの変圧器が担当する各需要家への配電区分であるバンクの設計は、1つの変圧器からどの範囲の需要家に給電するかを調整するものである。そして、地中線のバンク設計を行う際には、変圧器容量、低圧幹線ケーブル及び低圧引込ケーブルを選定するにあたって、変圧器の利用率(100%以内)、ケーブルの許容電流、電圧降下及び保護協調のすべてを同時にクリアしなければならないため、非常に難解であり、計算に時間がかかる。特に、引込ケーブルに保護ヒューズがないので、低圧幹線ケーブル及び引込ケーブルの保護協調が不可欠になる。
【0005】
なお、特許文献1に「架空配電線最適自動設計システムおよびその方法」が開示されているが、架空線に特化したシステムであり、地中線とは電力供給方式が異なることから、バンク設計の考え方も異なる。例えば、架空線の場合には、低圧引込ケーブルに保護ヒューズが取り付けられるため、低圧幹線ケーブルとの保護協調を考える必要はないし、また、低圧引込ケーブルの選定も考慮されていない。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、地中線のバンク設計を迅速かつ容易に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、変圧器に接続される1以上の幹線ケーブルと、前記幹線ケーブル上に設けられた分岐点から分岐し、電力を消費する負荷が接続される引込ケーブルと、を含む地中線に関する判定を行う地中線判定装置であって、前記変圧器の内部インピーダンス、ヒューズ容量、電圧及び前記幹線ケーブルの太さ、単位長インピーダンスを記憶する手段と、前記幹線ケーブルの、前記変圧器と、直近の分岐点との間の長さ、前記分岐点と、次の分岐点との間の長さを含む各区間長と、前記引込ケーブルの線長及び線種である引込線長及び引込線種とを取得する手段と、前記ヒューズ容量及び前記太さに基づいて、前記変圧器のヒューズが作動する電流の下限値である許容短絡電流を特定する手段と、前記引込線種に基づいて前記引込ケーブルの単位長インピーダンスを特定し、当該単位長インピーダンス及び前記引込線長に基づいて前記引込ケーブルのインピーダンスを計算する手段と、前記区間長に基づいて、前記幹線ケーブルの前記変圧器と、前記分岐点との間の長さである幹線長を計算し、当該幹線長及び前記幹線ケーブルの単位長インピーダンスに基づいて前記変圧器と、前記分岐点との間の前記幹線ケーブルのインピーダンスを計算する手段と、前記変圧器の内部インピーダンス、電圧、前記引込ケーブルのインピーダンス及び前記幹線ケーブルのインピーダンスに基づいて、前記引込ケーブルに流れる最大電流である設計短絡電流を計算する手段と、前記設計短絡電流が前記許容短絡電流以上か否かを判定し、その判定結果を出力する手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
地中線においては、幹線ケーブルから引込ケーブルを直接分岐させており、引込ケーブルに保護ヒューズがないので、幹線ケーブル及び引込ケーブルの保護協調が不可欠になる。この構成によれば、地中線のバンク設計の際に、引込ケーブルに流れる電流最大値の設計短絡電流が、変圧器のヒューズが作動する電流下限値の許容短絡電流以上か否かが分かるので、変圧器のヒューズにより引込ケーブルを過電流から保護可能か否かを確認することができる。
【0009】
また、本発明の上記地中線判定装置において、前記引込ケーブルに流れる電流である引込電流を取得する手段と、前記引込線種に基づいて、前記引込ケーブルに許容される電流である引込許容電流を特定する手段と、前記引込電流が前記引込許容電流以下か否かを判定し、その判定結果を出力する手段と、前記引込ケーブルのインピーダンス及び前記引込電流に基づいて前記引込ケーブルにおける電圧降下である引込電圧降下を計算する手段と、前記引込電圧降下が所定値以下か否かを判定し、その判定結果を出力する手段と、をさらに備えることとしてもよい。
【0010】
この構成によれば、引込ケーブルに流れる電流が許容電流以下か否かが分かるので、選択した引込ケーブルの線種が使用可能か否かを確認することができる。そして、引込ケーブルにおける電圧降下が上限値以下か否かが分かるので、引込ケーブルの線種及び線長が使用可能か否かを確認することができる。
【0011】
また、本発明の上記地中線判定装置において、前記幹線ケーブルから分岐した各引込ケーブルの前記引込電流を合計し、前記幹線ケーブルに流れる電流である幹線電流を算出する手段と、前記幹線電流が所定値以下か否かを判定し、その判定結果を出力する手段と、前記区間長のうち、前記変圧器と、直近の分岐点との間の区間長及び前記幹線ケーブルの単位長インピーダンスに基づいて、前記幹線ケーブルのインピーダンスを計算する手段と、前記幹線ケーブルのインピーダンス及び前記幹線電流に基づいて、前記幹線ケーブルにおける電圧降下である幹線電圧降下を計算する手段と、前記幹線電圧降下が所定値以下か否かを判定し、その判定結果を出力する手段と、前記変圧器に接続された各幹線ケーブルの前記幹線電流を合計し、前記変圧器から供給される電流である変圧器電流を算出する手段と、前記変圧器電流が前記ヒューズ容量以下か否かを判定し、その判定結果を出力する手段と、をさらに備えることとしてもよい。
【0012】
この構成によれば、幹線ケーブルにおける電流及び電圧降下が上限値以下か否かが分かり、また、変圧器から供給される電流がヒューズ容量以下か否かが分かるので、幹線ケーブルにおける分岐点の位置や変圧器の配下にある負荷の割り当て等の設計レイアウトが適当か否かを確認することができる。
【0013】
また、本発明の上記地中線判定装置において、前記設計短絡電流が前記許容短絡電流より小さい、前記引込電流が前記引込許容電流より大きい、又は、前記引込電圧降下が所定値より大きいときに、取得した前記引込線種を別の線種に変更して、計算、判定及び判定結果の出力を再度行うこととしてもよい。
【0014】
この構成によれば、地中線のバンク設計において、引込ケーブルの線種による調整を行うことができる。別の線種に変更する際は、例えば、1段上の太さの線種を選択する。これによれば、引込ケーブルは太い方が高価なので、少しずつ太さを上げることで、極力コストを抑えることができる。
【0015】
また、本発明の上記地中線判定装置において、前記幹線電流が所定値より大きい、前記幹線電圧降下が所定値より大きい、又は、前記変圧器電流が前記ヒューズ容量より大きいときに、前記負荷を前記変圧器とは別の変圧器の配下に変更して、計算、判定及び判定結果の出力を再度行うこととしてもよい。
【0016】
この構成によれば、地中線のバンク設計において、変圧器配下の負荷変更による調整を行うことができる。
【0017】
なお、本発明は、地中線判定方法を含む。その他、本願が開示する課題及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、地中線のバンク設計を迅速かつ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】電線共同溝の内部の構成例を示す図である。
【図2】低圧幹線ケーブル及び引込ケーブルの構成例を示す図である。
【図3】地中線判定装置1のハードウェア構成を示す図である。
【図4】記憶部15に記憶されるデータの構成を示す図である。
【図5】記憶部15に記憶される各データの詳細な構成を示す図であり、(a)は許容短絡電流データ15Aの構成を示し、(b)は設計短絡電流計算式データ15Bを示し、(c)は引込ケーブルデータ15Cの構成を示す。
【図6】記憶部15に記憶される各データの詳細な構成を示す図であり、(a)は定数データ15Dの構成を示し、(b)は閾値データ15Eの構成を示す。
【図7】地中線判定装置1の処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】地中線判定装置1の入力情報及び判定表示をエクセル(登録商標)により実現した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施の形態に係る地中線判定装置は、路上変圧器から低圧の幹線ケーブルを延ばし、引込分岐枡内で幹線ケーブルから引込ケーブルを直接分岐させる作業に際して、幹線ケーブル長、引込ケーブル長及び線種、電灯相及び動力相の引込最大電流を入力し、変圧器利用率、幹線ケーブルと引込ケーブルの許容電流、変圧器〜低圧幹線ケーブル〜引込ケーブルの電圧降下、幹線ケーブルと引込ケーブルの保護協調の各項目に関して判定し、その判定結果を出力するものである。
【0021】
これによれば、変圧器の容量、各ケーブルの線長や線種が使用可能か否かをまとめて確認できるので、地中線のバンク設計を迅速かつ容易に行うことができる。
【0022】
≪電線共同溝の構成≫
図1は、電線共同溝の内部の構成例を示す図である。路上変圧器から2本の低圧幹線ケーブルが延びており、各低圧幹線ケーブル上に所定の区間長を空けて引込分岐枡が設けられる。引込分岐枡と、顧客宅とは、所定の引込ケーブル長を有する引込ケーブルにより接続される。路上変圧器は、例えば、高さ1m、幅50〜60cmの機器であり、配電ケーブル(図示せず)から給電される高電圧(6600V)を低電圧(100V、200V)に変換し、その低電圧を低圧幹線ケーブルに供給する。低圧幹線ケーブル、引込分岐枡及び引込ケーブルは、地中空間内に配設される。低圧幹線ケーブルは、路上変圧器から顧客宅付近を通るように延設される。引込分岐枡は、例えば、高さが1m、幅が60cmぐらいのコンクリート製箱型の機器であり、低圧幹線ケーブル上に引込ケーブルへの分岐点として設けられる。引込ケーブルは、引込分岐枡から各顧客宅の負荷に電力を供給する。
【0023】
図2は、低圧幹線ケーブル及び引込ケーブルの構成例を示す図である。幹線ケーブルは、アース線、電灯線、動力線及び共用線の4本が一組になって地中空間内に配設されている。そして、引込ケーブルは、幹線ケーブルの各線から分岐される。なお、引込ケーブルは、顧客(需要家)と電力会社との契約内容によって、顧客宅である建物に引き込まれる本数が4本未満(アース線と、電灯線、動力線及び共用線のいずれか1本とを合わせた2本、又は、アース線と、電灯線、動力線及び共用線のいずれか2本とを合わせた3本等)の場合もある。
【0024】
アース線は、電位が0の線である。電灯線は、一般家庭の電気製品等である電灯負荷に電力を供給する。動力線は、小規模工場の負荷であるポンプや工作機械、動力機器等の動力負荷に電力を供給する。共用線は、電灯負荷及び動力負荷の両方に電力を供給する。なお、電灯線を流れる電流を電灯相電流、動力線を流れる電流を動力相電流、共用線を流れる電流を共用相電流という。
【0025】
≪装置の構成≫
図3は、地中線判定装置1のハードウェア構成を示す図である。地中線判定装置1は、通信部11、表示部12、入力部13、処理部14及び記憶部15を備え、各部がバス16を介してデータを送受信可能なように接続されている。通信部11は、ネットワークを介して他の装置とIP(Internet Protocol)通信等を行う部分であり、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。表示部12は、処理部14からの指示によりデータを表示する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等によって実現される。入力部13は、オペレータがデータ(例えば、幹線ケーブルの区間長等のデータ)を入力する部分であり、例えば、キーボードやマウス等によって実現される。処理部14は、所定のメモリを介して各部間のデータの受け渡しを行うととともに、地中線判定装置1全体の制御を行うものであり、CPU(Central Processing Unit)が所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部15は、処理部14からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶装置によって実現される。なお、地中線判定装置1は、スタンドアロンの装置(PC(Personal Computer)等)であってもよいし、複数の端末とネットワークを介して通信可能となっている装置(サーバ等)であってもよい。
【0026】
≪データの構成≫
図4は、記憶部15に記憶されているデータの構成を示す図である。記憶部15には、地中線のバンク設計に用いられるデータとして、許容短絡電流データ15A、設計短絡電流計算式データ15B、引込ケーブルデータ15C、定数データ15D及び閾値データ15Eが記憶される。
【0027】
図5及び図6は、各データの詳細な構成を示す図である。図5(a)は、許容短絡電流データ15Aの構成を示す。許容短絡電流データ15Aは、変圧器のヒューズ容量及び幹線ケーブルの太さにより変圧器の許容短絡電流の大きさを特定するためのテーブルデータであり、低圧限流ヒューズ15A1と、CVQケーブル太さ15A2とに対応する許容短絡電流(単位:A)及び許容時間(括弧内、単位:秒)が設定され、各容量のヒューズが何アンペアの短絡電流に何秒間耐えられるかを示す。低圧限流ヒューズ15A1は、幹線ケーブルに流れる電流に対する変圧器内ヒューズの容量(単位:A)である。CVQケーブル太さ15A2は、幹線ケーブルに用いられるCVQケーブル(詳細は後記)の太さ(単位:sq)である。
【0028】
図5(b)は、設計短絡電流計算式データ15Bを示す。設計短絡電流Iは、電圧E、変圧器内部インピーダンスZT及び線路インピーダンス(1線分)Zlにより算出される。計算式における分母のインピーダンスは、短絡回路の平衡分インピーダンスZ+不平衡分インピーダンスZ’であり、Z=ZT+Zl、Z’=0.5ZT+3Zlであるので、Z+Z’=1.5ZT+4Zlになる。
【0029】
図5(c)は、引込ケーブルデータ15Cの構成を示す。引込ケーブルデータ15Cは、引込ケーブルの線種ごとの特性を示すテーブルデータであり、線種15C1、単位長インピーダンス15C2及び許容電流15C3を含む、線種ごとのレコードから構成される。線種15C1は、引込ケーブルに用いられるCVQケーブルやCVTケーブルの種類を示し、CVQ250やCVT100等が設定される。単位長インピーダンス15C2は、当該線種の引込ケーブル単位長あたりの抵抗値(単位:Ω/Km)を示す。許容電流15C3は、当該線種の引込ケーブルにおける許容電流の大きさ(単位:A)を示す。
【0030】
なお、CVQケーブル及びCVTケーブルは、単心のCVケーブルを撚り合わせた電力ケーブルであり、CVケーブルは「架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル」の略称である。CVQケーブルは、CVケーブルを4本撚った電力ケーブルで、三相4線式の電路等に採用される。CVTケーブルは、3本撚りとなっているため、曲げ易いという特長がある。
【0031】
図6(a)は、定数データ15Dの構成を示す。定数データ15Dは、判定すべき数値を計算するのに用いられる定数のデータであり、変圧器内部インピーダンス15D1、変圧器ヒューズ容量15D2、幹線ケーブル単位長インピーダンス15D3、係数15D4、負荷減少率15D5、需要率15D6、電圧15D7及び幹線ケーブル太さ15D8を含む。変圧器内部インピーダンス15D1は、変圧器が有する内部インピーダンスの値(単位:Ω)であり、例えば、0.0087が設定される。変圧器ヒューズ容量15D2は、幹線ケーブルの電流に対する変圧器内ヒューズの容量(単位:A)を示し、予め入力された値又は前提値として、例えば、300が設定される。なお、変圧器に付いている電流ヒューズにより、引込ケーブルが保護される。
【0032】
幹線ケーブル単位長インピーダンス15D3は、幹線ケーブル単位長あたりの抵抗値(単位:Ω/Km)を示し、例えば、0.159が設定される。係数15D4は、変圧器利用率を計算する際に動力負荷に掛ける係数であり、例えば、1.6が設定される。負荷減少率15D5は、電灯及び動力を合成することにより負荷を節減できる程度を示し、例えば、0.9が設定される。需要率15D6は、“最大需要電力/設備容量”により計算され、例えば、0.6が設定される。電圧15D7は、変圧器の出力電圧(単位:V)を示し、例えば、105[V]が設定される。幹線ケーブル太さ15D8は、幹線ケーブルの太さ(単位:sq)を示し、予め記憶されるか、又は、入力部13から取得、設定されるものであり、許容短絡電流を特定する際に用いられる。
【0033】
図6(b)は、閾値データ15Eの構成を示す。閾値データ15Eは、各項目の判定に用いられる閾値のデータであり、変圧器利用率上限値15E1、幹線共用相電流上限値15E2、幹線動力相電流上限値15E3、幹線共用相電圧降下上限値15E4、幹線動力相電圧降下上限値15E5、引込共用相電圧降下上限値15E6及び引込動力相電圧降下上限値15E7を含む。
【0034】
変圧器利用率上限値15E1は、変圧器利用率の上限値(単位:%)を示し、例えば、100[%]が設定される。幹線共用相電流上限値15E2は、幹線ケーブルにおける幹線共用相電流の上限値(単位:A)を示し、例えば、459[A]が設定される。幹線動力相電流上限値15E3は、幹線ケーブルにおける幹線動力相電流の上限値(単位:A)を示し、例えば、330[A]が設定される。幹線共用相電圧降下上限値15E4は、幹線ケーブルの各区間における共用相電圧降下の上限値(単位:V)を示し、例えば、5[V]が設定される。幹線動力相電圧降下上限値15E5は、幹線ケーブルの各区間における動力相電圧降下の上限値(単位:V)を示し、例えば、10[V]が設定される。引込共用相電圧降下上限値15E6は、引込ケーブルにおける共用相電圧降下の上限値(単位:V)を示し、例えば、2[V]が設定される。引込動力相電圧降下上限値15E7は、引込ケーブルにおける動力相電圧降下の上限値(単位:V)を示し、例えば、4[V]が設定される。
【0035】
≪装置の処理≫
以下に、地中線判定装置1の入力情報、計算処理及び判定・表示処理の詳細を説明する。
【0036】
1.入力情報
地中線判定装置1は、以下に示す入力情報を取得する。
(1)1以上の幹線ケーブルの各区間長(変圧器〜引込分岐枡、引込分岐枡〜次の引込分岐枡)
(2)顧客名称
以下の情報は、顧客名称ごとに入力する。
(3)各幹線ケーブルから分岐する、新設の引込ケーブル長及び線種(各顧客の引込ケーブルの線種をドロップダウンリストから任意に選択可能)
(4)引込電灯相最大電流
(5)引込動力相最大電流
できるだけ顧客宅の実情に合わせるために、例えば、引込最大電流には、各顧客宅のブレーカの容量を入力し、ブレーカの容量が確認できない場合には、顧客宅への引込線の電線ヒューズの容量を入力する。
【0037】
2.計算処理
地中線判定装置1は、1.の入力情報及び記憶部15のデータを用いて、以下に示す計算を行う。
(C1)幹線ケーブル長の計算
入力情報である幹線ケーブルの各区間長[Km]を保持する。また、それらを合計して、変圧器〜各引込分岐枡の幹線ケーブル長を算出する。
【0038】
(C2)引込許容電流の特定
引込許容電流は、引込ケーブルデータ15Cを参照して、入力情報である線種により、当該線種15C1に対応する許容電流15C3を特定する。
【0039】
(C3)引込共用相電流の計算
引込共用相電流は、各引込ケーブルの共用線に流れる電流であり、入力情報である引込電灯相最大電流及び引込動力相最大電流を用いて計算する。
・引込動力相最大電流が0の場合
引込共用相電流=引込電灯相最大電流×需要率15D6
・引込動力相最大電流が0でない場合
引込共用相電流=(引込電灯相最大電流×需要率15D6+引込動力相最大電流)×負荷減少率15D5
【0040】
(C4)引込電圧降下の計算
まず、引込ケーブルデータ15Cを参照して、入力情報である線種により、当該線種15C1に対応する単位長インピーダンス15C2を、引込ケーブル単位長インピーダンスとして特定する。
引込共用相電圧降下=引込ケーブル単位長インピーダンス×引込ケーブル長[入力情報]×引込共用相電流[C3参照]
引込動力相電圧降下は、
・引込動力相最大電流[入力情報]が0の場合、
引込動力相電圧降下=0
・引込動力相最大電流が0でない場合、
引込動力相電圧降下=(引込共用相電圧降下+引込ケーブル単位長インピーダンス×引込ケーブル長×引込動力相最大電流)×√3/2
【0041】
(C5)幹線電流の計算
幹線電流は、幹線ケーブル上の各引込分岐枡に流れる電流である。
幹線共用相電流=引込分岐枡以下(変圧器から離れる方向)にある各引込ケーブルの引込共用相電流[C3参照]の合計×需要率15D6
幹線動力相電流=引込分岐枡以下(変圧器から離れる方向)にある各引込ケーブルの引込動力相電流[C3参照]の合計×需要率15D6
【0042】
(C6)幹線電圧降下の計算
幹線電圧降下は、幹線ケーブルの各区間における電圧降下である。
幹線共用相電圧降下=幹線ケーブル単位長インピーダンス15D3×区間長[入力情報]×幹線共用相電流[C5参照]
幹線動力相電圧降下は、
・幹線動力相電流[C5参照]が0の場合、
幹線動力相電圧降下=0
・幹線動力相電流が0でない場合、
幹線動力相電圧降下=(幹線共用相電圧降下+幹線ケーブル単位長インピーダンス15D3×区間長×幹線動力相電流)×√3/2
【0043】
(C7)設計短絡電流の計算
設計短絡電流は、幹線ケーブル及び各引込ケーブルについて、図5(b)に示す設計短絡電流計算式データ15Bを用いて、設計短絡電流Iとして算出する。
電圧Eは、電圧15D7を設定する。変圧器内部インピーダンスZTは、変圧器内部インピーダンス15D1を設定する。線路インピーダンスZlは、引込ケーブルインピーダンスと、幹線ケーブルインピーダンスとの合計値を設定する。引込ケーブルインピーダンスは、引込ケーブルデータ15Cを参照して、入力情報である線種に該当する線種15C1に対応する単位長インピーダンス15C2を特定し、特定した単位長インピーダンスと、入力情報である引込ケーブル長とを乗算して算出する。幹線ケーブルインピーダンスは、幹線ケーブル単位長インピーダンス15D3と、変圧器から当該引込分岐枡までの幹線ケーブル長[C1参照]とを乗算して算出する。
例えば、幹線ケーブルインピーダンスは、低圧幹線がCVQ250/150であれば、単位長インピーダンスが0.159[Ω/Km]であり、幹線ケーブル長が100[m]であれば、0.0159[Ω]になる。
【0044】
(C8)許容短絡電流の特定
許容短絡電流は、変圧器のヒューズが作動する電流の下限値である。許容短絡電流データ15Aを参照して、変圧器ヒューズ容量15D2に該当する低圧限流ヒューズ15A1と、幹線ケーブル太さ15D8に該当するCVQケーブル太さ15A2とから、許容短絡電流を特定する。
【0045】
(C9)変圧器利用率の計算
変圧器共用相電流は、変圧器に接続された各幹線ケーブルの、変圧器の直近にある引込分岐枡の幹線共用相電流[C5参照]の合計である。変圧器動力相電流は、変圧器に接続された各幹線ケーブルの、変圧器の直近にある引込分岐枡の幹線動力相電流[C5参照]の合計である。変圧器の直近にある引込分岐枡の幹線電流は、変圧器から各幹線ケーブルに供給される電流を意味する。
【0046】
変圧器利用率は、変圧器のヒューズ容量に対する変圧器電流の割合であり、以下のように算出する。
変圧器の定格容量が100/50KVA(共用/動力用)の場合、
・共用相電流の変圧器利用率=[{(変圧器共用相電流+変圧器動力相電流×係数)×負荷減少率}/100]×100
・動力相電流の変圧器利用率=(変圧器動力相電流/50)×100
変圧器の定格容量が50/30KVA(共用/動力用)の場合、
・共用相電流の変圧器利用率=[{(変圧器共用相電流+変圧器動力相電流×係数)×負荷減少率}/50]×100
・動力相電流の変圧器利用率=(変圧器動力相電流/30)×100
【0047】
3.判定・表示処理
地中線判定装置1は、2.の各計算値に関して、以下に示す判定を行い、数値及び○×を表示する。
(D1)変圧器利用率の判定・表示
変圧器利用率≦100[%](上限値15E1)の場合、○を表示する。そうでない場合、×を表示する。変圧器利用率が100%ということは、変圧器から各幹線ケーブルに供給される電流の合計が変圧器のヒューズ容量と等しく、許容される最大電流になっていることを意味する。
【0048】
(D2)低圧幹線ケーブル許容電流の判定・表示
変圧器に接続された各幹線ケーブルについて、変圧器の直近にある引込分岐枡における幹線共用相電流≦459[A](上限値15E2)の場合、○を表示する。そうでない場合、×を表示する。また、各幹線ケーブルについて、変圧器の直近にある引込分岐枡における幹線動力相電流≦330[A](上限値15E3)の場合、○を表示する。そうでない場合、×を表示する。なお、変圧器の直近にある引込分岐枡における幹線電流は、変圧器から各幹線ケーブルに供給される電流を意味する。
【0049】
(D3)引込ケーブル許容電流の判定・表示
各引込ケーブルの引込共用相電流≦線種に応じた引込許容電流の場合、○を表示する。そうでない場合、×を表示する。
【0050】
(D4)幹線ケーブル電圧降下の判定・表示
変圧器に接続された各幹線ケーブルの各区間について、幹線共用相電圧降下≦5[V](上限値15E4)の場合、○を表示する。そうでない場合、×を表示する。また、各幹線ケーブルの各区間について、幹線動力相電圧降下≦10[V](上限値15E5)の場合、○を表示する。そうでない場合、×を表示する。
【0051】
(D5)引込ケーブル電圧降下の判定・表示
各引込ケーブルについて、引込共用相電圧降下≦2[V](上限値15E6)の場合、○を表示する。そうでない場合、×を表示する。また、引込動力相電圧降下≦4[V](上限値15E7)の場合、○を表示する。そうでない場合、×を表示する。
【0052】
(D6)低圧幹線ケーブル及び引込ケーブルの保護協調の判定・表示
保護協調に関しては、変圧器の電流ヒューズにより引込ケーブルを過電流から保護できるか否かを判定する。幹線ケーブル及び各引込ケーブルについて、設計短絡電流≧許容短絡電流の場合、○を表示する。そうでない場合、×を表示する。これによれば、引込ケーブルに過電流が流れたときに路上変圧器の低圧限流ヒューズが必ず作動するように、各引込ケーブルに流れる最大電流である設計短絡電流が、低圧限流ヒューズが作動する下限電流である許容短絡電流以上であることが求められる。逆に、引込ケーブルの設計短絡電流が、変圧器ヒューズの許容短絡電流より小さいとすれば、引込ケーブルに過電流が流れても、変圧器ヒューズが作動しないので、引込ケーブルを過電流から保護できなくなる。
【0053】
≪実施例≫
図7は、地中線判定装置1の処理の流れを示すフローチャートである。本処理は、地中線判定装置1において、主として処理部14が、入力部13により入力情報を取得し、記憶部15のデータを参照しながら、各数値の計算及び各項目の判定を行うものであり、実際の処理の一例を示すものである。なお、計算及び判定の詳細は、上記≪装置の処理≫の説明通りである(各ボックスの括弧内に示したC1〜C9及びD1〜D6をそれぞれ参照のこと)。
【0054】
まず、地中線判定装置1は、幹線ケーブルの各区間長を取得し(S701)、取得した各区間長により変圧器〜各引込分岐枡の幹線ケーブル長を計算する(S702)。次に、顧客宅の引込動力相最大電流を取得し(S703)、取得した引込動力相最大電流により幹線動力相電流を計算する(S704)。そして、顧客宅の引込電灯相最大電流を取得し(S705)、取得した引込電灯相最大電流及び引込動力相最大電流により引込共用相電流を計算し(S706)、計算した引込共用相電流により幹線共用相電流を計算する(S707)。さらに、新設すべき引込ケーブル長を取得し(S708)、新設用に選択した引込ケーブル線種を取得し(S709)、取得した線種により引込許容電流を特定する(S710)。
【0055】
続いて、地中線判定装置1は、引込共用相電流が、選択した引込ケーブル線種による引込許容電流以下であれば(S721のY)、表示部12に○を表示し(S722)、そうでなければ(S721のN)、表示部12に×を表示する(S723)。次に、取得した引込ケーブル長及び線種と、引込共用相電流及び引込動力相最大電流とにより、引込共用相電圧降下及び引込動力相電圧降下を計算し(S724)、計算した引込電圧降下が上限値以下であれば(S725のY)、表示部12に○を表示し(S726)、そうでなければ(S725のN)、表示部12に×を表示する(S727)。そして、取得した引込ケーブル長及び線種により設計短絡電流を計算し(S728)、一方で許容短絡電流を計算し(S729)、設計短絡電流が許容短絡電流以上であれば(S730のY)、表示部12に○を表示し(S731)、そうでなければ(S730のN)、表示部12に×を表示する(S732)。
【0056】
地中線判定装置1は、表示部12に×を表示した(S723、S727又はS732)ときには、引込ケーブルの太さが足りないということなので、取得した線種より一段上位の(太い)線種を選択し、その線種により再度計算を行い(S710、S724及びS728)、判定及び出力を行う。
【0057】
さらに、地中線判定装置1は、幹線共用相電圧降下及び幹線共用相電圧降下を計算し(S741)、計算した幹線電圧降下が上限値以下であれば(S742のY)、表示部12に○を表示し(S743)、そうでなければ(S742のN)、表示部12に×を表示する(S744)。次に、計算した幹線共用相電流及び幹線動力相電流が上限値以下であれば(S745のY)、表示部12に○を表示し(S746)、そうでなければ(S745のN)、表示部12に×を表示する(S747)。そして、変圧器利用率を計算し(S748)、計算した変圧器利用率が100%以下であれば(S749のY)、表示部12に○を表示し(S750)、そうでなければ(S749のN)、表示部12に×を表示する(S751)。
【0058】
地中線判定装置1は、表示部12に×を表示した(S744、S747又はS751)ときには、変圧器配下が過負荷になっている等が考えられるので、隣接の変圧器へ顧客の負荷を振り分ける等の設計レイアウトの変更を行う(S752)。例えば、変圧器のヒューズ容量が足りなければ、顧客負荷を減らし、幹線ケーブルにおける電圧降下が大き過ぎれば、幹線ケーブルを延ばし過ぎなので、短くする等の設計レイアウトの変更を行う。そして、設計変更後の入力情報を用いて、再度計算、判定及び判定結果の出力を行う。なお、S752においては、設計者が、現地の状況に応じて変圧きや引込分岐枡が設置可能な場所を選びながら、設計レイアウトの変更を行い、設計変更後の幹線ケーブルや引込ケーブルの情報を地中線判定装置1に入力するようにしてもよい。
【0059】
図8は、地中線判定装置1の入力情報及び判定表示をマイクロソフト社のエクセル(登録商標)のシートにより実現した例を示す図である。シート上において、入力情報として、顧客名称(名称1〜12)、引込ケーブル長、引込電灯相最大電流、引込動力相最大電流、引込ケーブル線種、幹線ケーブルの区間長(例えば、T1〜A)が、灰色の箇所(セル)に設定可能になっている。引込ケーブル線種については、引込線種のドロップダウンリストにより選択入力可能である。そして、マクロを使って、計算及び判定の処理が行われ、下線を施した箇所に、引込許容電流判定、引込電圧降下判定、保護協調判定、幹線電圧降下判定、幹線許容電流判定及び変圧器利用率判定の結果が○×により表示される。
【0060】
なお、架空引込線種の欄は、現状の架空線を地中化するときに、現在の線種の覚え書きとして用いる。また、(共)は共用相を意味し、(力)は動力相を意味する。
【0061】
上記実施の形態では、図3に示す地中線判定装置1内の各部を機能させるために、処理部14で実行されるプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録し、その記録したプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行させることにより、本発明の実施の形態に係る地中線判定装置1が実現されるものとする。この場合、プログラムをインターネット等のネットワーク経由でコンピュータに提供してもよいし、プログラムが書き込まれた半導体チップ等をコンピュータに組み込んでもよい。
【0062】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、地中線のバンク設計を迅速かつ容易に行うことができ、引込ケーブル長等の複数の入力パラメータに対して、その妥当性を評価する複数の項目について一括して判定することができる。複数の項目とは、変圧器利用率(変圧器のヒューズ容量)、変圧器〜低圧幹線ケーブル〜引込ケーブルの電圧降下、低圧幹線ケーブル及び引込ケーブルの許容電流、低圧幹線ケーブル及び引込ケーブルの保護協調に関する判定である。特に、地中線については、引込ケーブルが低圧幹線ケーブルから保護ヒューズなしで直接分岐するため、保護協調の判定を行う。
【0063】
詳細には、変圧器利用率の判定により、変圧器容量が不足とされた場合に、一部の顧客負荷の接続を隣の変圧器のバンクへ変更する等の設計変更を容易に行うことができる。そして、電圧降下、許容電流及び保護協調の判定によれば、引込ケーブルの太さ(線種)を容易に選定することができる。さらに、電線共同溝本体(管路、ハンドホール等)の設計協議において、変圧器(ハンドホール)及び引込分岐枡の位置を迅速かつ容易に決定し、道路管理者へ適切な要望内容を提示することができる。
【0064】
さらに、エクセル(登録商標)のシートにより、地中線判定装置1の入力情報及び判定表示を実現し、必要事項を入力することで、上記条件を一括して容易かつ短時間に自動判定が行うことができる。
【0065】
≪その他の実施の形態≫
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、以下のような実施の形態が考えられる。
【0066】
(1)上記実施の形態における地中線判定装置1による判定方法は、家庭内のブレーカ以下の配線設計にも適用することができる。さらに、次世代(共用FA方式等)の電線共同溝にも適用することができる。特に、「大元に電流を許容、遮断できるスイッチがあり、そのスイッチ又はスイッチに接続される幹線から分岐し、複数の負荷につながる電線がある構成において、どういう使い方であっても、途中の電線に流れる電流が許容値を越えたときには、大元のスイッチにより必ず遮断できるように設計する」という保護協調の考え方は有用である。
【0067】
(2)上記実施の形態において、幹線ケーブルの単位長あたりのインピーダンスは定数(幹線ケーブル単位長インピーダンス15D3)として記憶するように記載したが、実際には太さによって変わるので、太さと、単位長あたりのインピーダンスとを対応付けたテーブルデータを記憶部15に記憶しておいてもよい。
【0068】
(3)上記実施の形態においては、○×の判定結果を表示部12に表示するように記載したが、判定結果のデータを、通信部11によりネットワークにつながる端末等に送信してもよいし、音声により出力してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 地中線判定装置
11 通信部
12 表示部
13 入力部
14 処理部
15 記憶部
15A 許容短絡電流データ
15B 設計短絡電流計算式データ
15C 引込ケーブルデータ
15D 定数データ
15D1 変圧器内部インピーダンス(変圧器の内部インピーダンス)
15D2 変圧器ヒューズ容量(変圧器のヒューズ容量)
15D3 幹線ケーブル単位長インピーダンス(幹線ケーブルの単位長インピーダンス)
15D7 電圧(変圧器の電圧)
15D8 幹線ケーブル太さ(幹線ケーブルの太さ)
15E 閾値データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器に接続される1以上の幹線ケーブルと、
前記幹線ケーブル上に設けられた分岐点から分岐し、電力を消費する負荷が接続される引込ケーブルと、
を含む地中線に関する判定を行う地中線判定装置であって、
前記変圧器の内部インピーダンス、ヒューズ容量、電圧及び前記幹線ケーブルの太さ、単位長インピーダンスを記憶する手段と、
前記幹線ケーブルの、前記変圧器と、直近の分岐点との間の長さ、前記分岐点と、次の分岐点との間の長さを含む各区間長と、前記引込ケーブルの線長及び線種である引込線長及び引込線種とを取得する手段と、
前記ヒューズ容量及び前記太さに基づいて、前記変圧器のヒューズが作動する電流の下限値である許容短絡電流を特定する手段と、
前記引込線種に基づいて前記引込ケーブルの単位長インピーダンスを特定し、当該単位長インピーダンス及び前記引込線長に基づいて前記引込ケーブルのインピーダンスを計算する手段と、
前記区間長に基づいて、前記幹線ケーブルの前記変圧器と、前記分岐点との間の長さである幹線長を計算し、当該幹線長及び前記幹線ケーブルの単位長インピーダンスに基づいて前記変圧器と、前記分岐点との間の前記幹線ケーブルのインピーダンスを計算する手段と、
前記変圧器の内部インピーダンス、電圧、前記引込ケーブルのインピーダンス及び前記幹線ケーブルのインピーダンスに基づいて、前記引込ケーブルに流れる最大電流である設計短絡電流を計算する手段と、
前記設計短絡電流が前記許容短絡電流以上か否かを判定し、その判定結果を出力する手段と、
を備えることを特徴とする地中線判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地中線判定装置であって、
前記引込ケーブルに流れる電流である引込電流を取得する手段と、
前記引込線種に基づいて、前記引込ケーブルに許容される電流である引込許容電流を特定する手段と、
前記引込電流が前記引込許容電流以下か否かを判定し、その判定結果を出力する手段と、
前記引込ケーブルのインピーダンス及び前記引込電流に基づいて前記引込ケーブルにおける電圧降下である引込電圧降下を計算する手段と、
前記引込電圧降下が所定値以下か否かを判定し、その判定結果を出力する手段と、
をさらに備えることを特徴とする地中線判定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の地中線判定装置であって、
前記幹線ケーブルから分岐した各引込ケーブルの前記引込電流を合計し、前記幹線ケーブルに流れる電流である幹線電流を算出する手段と、
前記幹線電流が所定値以下か否かを判定し、その判定結果を出力する手段と、
前記区間長のうち、前記変圧器と、直近の分岐点との間の区間長及び前記幹線ケーブルの単位長インピーダンスに基づいて、前記幹線ケーブルのインピーダンスを計算する手段と、
前記幹線ケーブルのインピーダンス及び前記幹線電流に基づいて、前記幹線ケーブルにおける電圧降下である幹線電圧降下を計算する手段と、
前記幹線電圧降下が所定値以下か否かを判定し、その判定結果を出力する手段と、
前記変圧器に接続された各幹線ケーブルの前記幹線電流を合計し、前記変圧器から供給される電流である変圧器電流を算出する手段と、
前記変圧器電流が前記ヒューズ容量以下か否かを判定し、その判定結果を出力する手段と、
をさらに備えることを特徴とする地中線判定装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の地中線判定装置であって、
前記設計短絡電流が前記許容短絡電流より小さい、前記引込電流が前記引込許容電流より大きい、又は、前記引込電圧降下が所定値より大きいときに、取得した前記引込線種を別の線種に変更して、計算、判定及び判定結果の出力を再度行う
ことを特徴とする地中線判定装置。
【請求項5】
請求項3に記載の地中線判定装置であって、
前記幹線電流が所定値より大きい、前記幹線電圧降下が所定値より大きい、又は、前記変圧器電流が前記ヒューズ容量より大きいときに、前記負荷を前記変圧器とは別の変圧器の配下に変更して、計算、判定及び判定結果の出力を再度行う
ことを特徴とする地中線判定装置。
【請求項6】
変圧器に接続される1以上の幹線ケーブルと、
前記幹線ケーブル上に設けられた分岐点から分岐し、電力を消費する負荷が接続される引込ケーブルと、
を含む地中線に関する判定を、コンピュータにより行う地中線判定方法であって、
前記コンピュータは、
前記変圧器の内部インピーダンス、ヒューズ容量、電圧及び前記幹線ケーブルの太さ、単位長インピーダンスを記憶するステップと、
前記幹線ケーブルの、前記変圧器と、直近の分岐点との間の長さ、前記分岐点と、次の分岐点との間の長さを含む各区間長と、前記引込ケーブルの線長及び線種である引込線長及び引込線種とを取得するステップと、
前記ヒューズ容量及び前記太さに基づいて、前記変圧器のヒューズが作動する電流の下限値である許容短絡電流を特定するステップと、
前記引込線種に基づいて前記引込ケーブルの単位長インピーダンスを特定し、当該単位長インピーダンス及び前記引込線長に基づいて前記引込ケーブルのインピーダンスを計算するステップと、
前記区間長に基づいて、前記幹線ケーブルの前記変圧器と、前記分岐点との間の長さである幹線長を計算し、当該幹線長及び前記幹線ケーブルの単位長インピーダンスに基づいて前記変圧器と、前記分岐点との間の前記幹線ケーブルのインピーダンスを計算するステップと、
前記変圧器の内部インピーダンス、電圧、前記引込ケーブルのインピーダンス及び前記幹線ケーブルのインピーダンスに基づいて、前記引込ケーブルに流れる最大電流である設計短絡電流を計算するステップと、
前記設計短絡電流が前記許容短絡電流以上か否かを判定し、その判定結果を出力するステップと、
を実行することを特徴とする地中線判定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の地中線判定方法であって、
前記コンピュータは、
前記引込ケーブルに流れる電流である引込電流を取得するステップと、
前記引込線種に基づいて、前記引込ケーブルに許容される電流である引込許容電流を特定するステップと、
前記引込電流が前記引込許容電流以下か否かを判定し、その判定結果を出力するステップと、
前記引込ケーブルのインピーダンス及び前記引込電流に基づいて前記引込ケーブルにおける電圧降下である引込電圧降下を計算するステップと、
前記引込電圧降下が所定値以下か否かを判定し、その判定結果を出力するステップと、
をさらに実行することを特徴とする地中線判定方法。
【請求項8】
請求項7に記載の地中線判定方法であって、
前記コンピュータは、
前記幹線ケーブルから分岐した各引込ケーブルの前記引込電流を合計し、前記幹線ケーブルに流れる電流である幹線電流を算出するステップと、
前記幹線電流が所定値以下か否かを判定し、その判定結果を出力するステップと、
前記区間長のうち、前記変圧器と、直近の分岐点との間の区間長及び前記幹線ケーブルの単位長インピーダンスに基づいて、前記幹線ケーブルのインピーダンスを計算するステップと、
前記幹線ケーブルのインピーダンス及び前記幹線電流に基づいて、前記幹線ケーブルにおける電圧降下である幹線電圧降下を計算するステップと、
前記幹線電圧降下が所定値以下か否かを判定し、その判定結果を出力するステップと、
前記変圧器に接続された各幹線ケーブルの前記幹線電流を合計し、前記変圧器から供給される電流である変圧器電流を算出するステップと、
前記変圧器電流が前記ヒューズ容量以下か否かを判定し、その判定結果を出力するステップと、
をさらに実行することを特徴とする地中線判定方法。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の地中線判定方法であって、
前記コンピュータは、
前記設計短絡電流が前記許容短絡電流より小さい、前記引込電流が前記引込許容電流より大きい、又は、前記引込電圧降下が所定値より大きいときに、取得した前記引込線種を別の線種に変更して、計算、判定及び判定結果の出力を再度行う
ことを特徴とする地中線判定方法。
【請求項10】
請求項8に記載の地中線判定方法であって、
前記コンピュータは、
前記幹線電流が所定値より大きい、前記幹線電圧降下が所定値より大きい、又は、前記変圧器電流が前記ヒューズ容量より大きいときに、前記負荷を前記変圧器とは別の変圧器の配下に変更して、計算、判定及び判定結果の出力を再度行う
ことを特徴とする地中線判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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