説明

地図データ編集装置及び地図データ編集装置用サーバ

【課題】画像データ地図転送方式により地図データを編集する上で、地図に含まれる図形の幾何構造または描画情報を編集することができる地図データ編集装置を得るものである。
【解決手段】ベクトルデータ格納手段及びラスタデータ格納手段を有するサーバと、ラスタデータ描画手段及び編集する対象の編集対象情報が入力される編集対象入力手段を有するクライアントとを備えた地図データ編集装置であって、前記サーバは、ベクトルデータの中から、前記編集対象情報に基づく検索条件を満たす図形のベクトルデータを検索する編集対象図形検索手段を備え、前記クライアントは、前記ベクトルデータを描画する編集対象図形表示手段及び描画された前記ベクトルデータの変更が入力される図形編集手段を備え、前記サーバは、前記変更情報に基づき前記ベクトルデータ格納手段に格納された対応する図形の情報を更新する編集後図形更新手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地理情報システムなどの地図データを用いたアプリケーションにおいて、地図データの編集機能を備えた装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の地図データ編集装置においては、クライアントからの要求に対して、サーバが、イントラネットやインターネットなどのネットワーク通信を介して、地図画像をクライアントに送信していた。従来、ベクトルデータで表された地図データを送信すると、データ量が多いため、レスポンスが悪くなる課題および自由に加工されて複製又は流用される課題があった。この課題を解決する地図データ編集装置の地図データ転送方式として、サーバが、外部記憶装置に格納されている地図を表現するベクトルデータやラスタデータから格子状に分割されたピクセルの集合によって表現されたラスタ地図を作成し、ネットワーク通信を使用して格子状に分割されたラスタ地図をクライアントに送信し、クライアントが、地図画像を表示する画像データ地図転送方式が用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、従来の大規模な地図データを扱う地図データ編集装置においては、地図画像を編集する際、編集する地図の一部を切出すとともに、同時に切り出し位置情報も合わせて記憶し、切出した画像に対して直接編集を行った後、前記切り出し位置情報を元に切出した場所に戻すことによって、地図データを編集することが開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−70174号公報
【特許文献2】特開2002−56399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の地図データ編集装置では、地図を表現する地図データとして、ベクトルデータでなく、ラスタデータで表現したラスタ地図を用いる。このため、ラスタ地図を受取ったクライアントでは、地図を構成する図形の幾何構造または図形の座標情報、色並びに線種などの描画情報をラスタデータから取出し及び格納することができず、クライアントで図形の幾何構造、描画情報の編集ができないという問題があった。
【0006】
また、ラスタ地図の一部を切出して編集し、編集後元の位置にはめ込む方法は、同様にラスタデータである画像を直接編集するため、ラスタ地図を作成する元データであるベクトルデータが表現する図形の幾何構造または描画情報などを編集できない問題があった。
【0007】
この発明は、画像データ地図転送方式により地図データを編集する上で、地図に含まれる図形の幾何構造または描画情報を編集することができる地図データ編集装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る地図データ編集装置においては、地図に含まれる図形の幾何情報、描画情報を有する図形のベクトルデータを格納するベクトルデータ格納手段と、前記ベクトルデータをピクセルで構成される画像に変換して前記地図の図形を表現する画像であるラスタデータを格納するラスタデータ格納手段と、前記ラスタデータをクライアントへ送信するラスタデータ送信手段とを有するサーバ、および送信された前記ラスタデータを受信するラスタデータ受信手段と、受信した前記ラスタデータを描画するラスタデータ描画手段と、描画した前記ラスタデータに対して編集する対象の編集対象情報が入力される編集対象入力手段と、前記編集対象情報を前記サーバへ送信する編集対象送信手段とを有するクライアントを備えた地図データ編集装置であって、前記サーバは、前記クライアントから前記編集対象情報を受信する編集対象受信手段と、前記ベクトルデータ格納手段に格納された前記ベクトルデータの中から、前記編集対象情報に基づく検索条件を満たす図形のベクトルデータを検索する編集対象図形検索手段と、前記検索された前記図形のベクトルデータをクライアントに送信する編集対象図形送信手段とを備え、前記クライアントは、検索された前記図形のベクトルデータを受信するベクトルデータ受信手段と、受信した前記図形のベクトルデータを描画する編集対象図形表示手段と、描画された前記図形のベクトルデータの変更箇所および変更内容を含む変更情報が入力される図形編集手段と、前記変更情報をサーバに送信する編集後図形情報送信手段とを備え、前記サーバは、前記変更情報に基づき前記ベクトルデータ格納手段に格納された前記変更箇所に対応する図形の情報を前記変更内容に更新する編集後図形更新手段を備えたものである。
【0009】
また、この発明に係る地図データ編集装置用サーバにおいては、地図に含まれる図形の幾何情報、描画情報を有する図形のベクトルデータを格納するベクトルデータ格納手段と、前記ベクトルデータをピクセルで構成される画像に変換して前記地図の図形を表現する画像であるラスタデータを格納するラスタデータ格納手段と、前記ラスタデータをクライアントへ送信するラスタデータ送信手段と、送信された前記ラスタデータを受信するラスタデータ受信手段、受信した前記ラスタデータを描画するラスタデータ描画手段、描画した前記ラスタデータに対して編集する対象の編集対象情報が入力される編集対象入力手段、および前記編集対象情報を送信する編集対象送信手段を有するクライアントからの前記編集対象情報を受信する編集対象受信手段と、前記ベクトルデータ格納手段に格納されたベクトルデータの中から、前記編集対象情報に基づく検索条件を満たす図形のベクトルデータを検索する編集対象図形検索手段と、検索された前記図形のベクトルデータを前記クライアントに送信する編集対象図形送信手段と、前記クライアントが検索された前記図形のベクトルデータを受信して前記図形のベクトルデータを描画し、前記クライアントにて入力された前記図形のベクトルデータの変更箇所および変更内容を含む変更情報を受信し、前記変更情報に基づき前記ベクトルデータ格納手段に格納された前記変更箇所に対応する図形の情報を前記変更内容に更新する編集後図形更新手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、描画負荷低減や、通信コスト削減などといった前記画像データ地図転送方式の利点を生かしつつ、これまでの課題であったベクトルデータの編集を、ラスタ地図を表示するクライアントにおいて、任意図形が有する幾何情報、描画情報、属性情報といった図形が持つ情報の編集を行い、元のベクトルデータを更新することで実現することができる。
【0011】
この発明は、画像データ地図転送方式にて地図データを編集する場合において、同方式の描画処理の負荷低減、通信量削減の効果を保ちながら、元の地図データの図形のベクトルデータ、具体的には図形の幾何情報、描画情報、属性情報を編集できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1を示す地図データ編集装置を構成するシステムの全体構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1を示すサーバ側地図データ編集部の機能構成を示す図である。
【図3】実施の形態1を示す地図DBを構成するデータを示す図である。
【図4】実施の形態1を示すクライアント側地図データ編集部の機能構成を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1を示すサーバ側地図データ編集部のハードウェア構成を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1を示すクライアント側地図データ編集部のハードウェア構成を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1を示す地図データ編集装置の構成図である。
【図8】実施の形態1を示す地図データ編集の動作を説明する図である。
【図9】実施の形態1を示すクライアント側地図データ編集部での処理を説明する図である。
【図10】実施の形態1を示すクライアントシステムで地図上に表示されている編集対象図形を選択する処理を説明する図である。
【図11】実施の形態1を示すクライアントシステムで住宅地を示す地図上に表示されている編集対象図形を選択する処理を説明する図である。
【図12】実施の形態1を示すクライアントシステムで地図上に表示されている図形が重なった編集対象図形を選択する処理を説明する図である。
【図13】実施の形態1を示すデバイス座標から地図座標へ変換する処理を説明する図である。
【図14】実施の形態1を示すサーバ側地図データ編集部での処理を説明する図である。
【図15】実施の形態1を示す図形が持つ情報を示す図である。
【図16】実施の形態1を示すクライアント側地図データ編集部の処理を説明する図である。
【図17】実施の形態1を示すクライアント側地図データ編集部での図形の幾何形状を変更する処理を説明する図である。
【図18】実施の形態1を示す編集前後の図形形状の違いを示す図である。
【図19】実施の形態1を示すクライアント側地図データ編集部で図形の色等の描画情報を説明する図である。
【図20】クライアント側地図データ編集部で図形の属性情報を変更する手段を説明する図である。
【図21】実施の形態1を示す編集前後での図形の持つ情報の違いを示す図である。
【図22】実施の形態1を示す編集後の図形情報を示す図である。
【図23】実施の形態1を示すサーバ側地図データ編集部の処理を説明する図である。
【図24】実施の形態1を示すクライアントシステムで編集後再生成されたラスタ地図を表示する処理を説明する図である。
【図25】実施の形態2における編集対象図形を検索する条件を示す図である。
【図26】実施の形態2を示す編集対象図形を検索する条件としてレイヤ設定するレイヤ選択方法を示す図である。
【図27】実施の形態3を示すクライアントで任意図形を用いて選択する処理を説明する図である。
【図28】実施の形態3を示すクライアント側地図データ編集部の処理を説明する図である。
【図29】実施の形態3を示す編集対象図形を1つ選択するための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施の形態1における地図データ編集装置8のシステム構成図である。地図データ編集装置8は、図のように、ラスタ地図送信サーバ1およびラスタ地図送信サーバ1とネットワーク7を介して接続されたクライアント側のシステム6(以下、「クライアントシステム6」と呼ぶ。)で構成されている。ここで、ネットワーク7は、インターネット、イントラネットなどの双方向伝送路であれば良い。
【0014】
ラスタ地図送信サーバ1には、ネットワーク7を介してクライアントシステム6と通信を行う通信サーバ3、クライアントシステム6から送信された地図データの編集を実行する地理情報システムサーバ2、クライアントシステム6で表示するラスタ地図を生成する元となるベクトルデータを有する地図データを格納する地図データベース4(以下、「地図DB4」と呼ぶ。)、及びラスタ地図を保存するラスタ地図データベース5(以下、「ラスタ地図DB5」と呼ぶ。)が設けられている。ここで、ラスタデータとは、格子状に並んだピクセル(画素)の集合体で構成されたデータ形式であり、ラスタ地図とは、前記ラスタデータにより表現された地図である。また、ベクトルデータとは、点、線、面といった図形要素を座標値の集合により構成されたデータ形式である。
【0015】
ここで、ラスタ地図送信サーバ1は、1つの計算機で構成しても良いし、4つの計算機で構成しても良い。さらに、地図DB4及びラスタ地図DB5は、1つのデータベースサーバ9(以下、「DBサーバ9」と呼ぶ。)で構成しても良い。また、通信サーバ3は、ネットワーク7が、インターネットまたはイントラネットであれば、Webサーバ3として構成する。
【0016】
地理情報システムサーバ2は、特許文献1のシステムと同様に、ベクトルデータを有する地図データからラスタ地図を生成するラスタ地図生成機能、ラスタ地図を要求に応じてクライアントシステム6に配信するラスタ地図配信機能を有する。これらの機能に加えて、サーバ側地図データ編集部を有する。
【0017】
図2は、サーバ側地図データ編集部51の構成について示した図である。図において、サーバ側地図データ編集部51は、編集対象図形検索手段52、通信サーバ3との通信をするためのサーバ通信手段511、サーバ通信手段511から受け取ったクライアントシステム6で作成された図形編集内容を読み込み、編集内容が適切か否かを判断する。編集内が適切か不適切の判断は、例えば色を表現するRGB値が適切でなかったり、移動した座標値がはるか遠方になっていたりと図形を表現する上で不適切と思われる値が設定されているかを判断する。この判断は、クライアント側でも可能であるが、座標演算などの高負荷な判断をする場合、その処理がクライアントPCのスペックに依存する。よって、サーバ側で判断するのが望ましい。編集後図形情報解釈手段512と、編集結果を地図DB4に反映するための図形更新情報を作成する編集後図形更新情報作成手段513、地図DBから編集対象図形を検索するために地図DB4と通信するための地図DB通信手段514、編集後図形情報からラスタ地図を再生成するラスタ地図再生成手段515及び再生成したラスタ地図をラスタ地図DB5に格納するためのラスタ地図DB通信手段516を有する。
【0018】
編集対象図形検索手段52は、受け取った検索条件が適切か否かを判断して内部の検索条件式に展開する検索条件解釈手段521、検索条件式を満たす図形検索する地図DB検索手段522及び検索結果からクライアントシステム6へ返信する情報を作成する検索結果作成手段523を有する。まず、ネットワーク7及び通信サーバ3を介してクライアントから送信された情報に含まれる編集対象図形を検索するための検索条件を込みこむ。次に、検索条件解釈手段521が、検索条件が適切かどうかを判断する。次に、地図DB検索手段522が、地図DB4から検索条件を満たす図形を検索する。次に、検索結果作成手段523が、地図DB検索手段522の検索結果を読み込んでクライアントシステム6へ返信する情報を作成する。
【0019】
通信サーバ3は、ネットワーク7との接続を管理、クライアントシステム6からの要求の処理(リクエスト)、クライアントシステム6への応答の処理(レスポンス)を行う。Webサーバ3の場合で、大規模Webサービスを行う場合、負荷分散のためにロードバランサの機能を含んでも良い。
【0020】
図3は、地図DB4の構成を示す図である。地図DB4は、磁気ディスクなどの記憶装置に、ベクトルデータまたはラスタデータからなる地図データ及び地図データに関連する属性データを格納する。地図データは、データごとに、図形のベクトルデータを有する。ベクトルデータには、図形ごとに線種、線色、面色などの描画情報を有する。また、地図データは、ラスタデータを有しても良い。さらに、地図データは、人口、面積などの属性情報を有することもできる。
【0021】
ラスタ地図DB5は、クライアントシステム6の表示設定に基づき、磁気ディスク等の記憶装置に、地図DB4に格納された地図データ(ベクトルデータ及びラスタデータ)から作成されたラスタ地図を格納する。
【0022】
クライアントシステム6は、ネットワーク7を介してラスタ地図編集装置8から受信したラスタ地図を表示し、当該ラスタ地図の移動、拡大、縮小等の地図操作機能を有する。さらに、クライアントシステム6は、クライアント側地図データ編集部61を備える。
【0023】
図4は、クライアント側地図データ編集部61の構成を示した図である。図において、クライアント側地図データ編集部61は、クライアントシステム6が備えるラスタ地図表示プログラムにより、以下の手段を備える装置としてクライアントシステム6を機能させる。
【0024】
クライアント側地図データ編集部61は、表示装置35に表示されたラスタ地図上で、ユーザに編集対象図形が選択される編集対象図形選択手段611、検索結果情報作成手段523で作成された編集対象図形情報を読み込み、表示装置35に表示できる形式に変換する編集対象図形情報解釈手段612、変換された編集対象図形情報を前記表示装置35上に表示する編集対象図形表示手段613、入力装置34を操作することで編集対象図形をユーザに編集させる図形編集手段614、前記編集結果からサーバ側地図データ編集部51に送信する情報を作成する編集後図形情報作成手段615及び編集後図形情報をラスタ地図送信サーバ1に送信するラスタ地図送信サーバ通信手段616を有する。
【0025】
ここで、編集対象図形選択手段611は、ディスプレイなどの表示装置35に表示されているラスタ地図上において、マウスやキーボードなどの入力装置34を用いて、所望する編集対象図形を選択する。編集対象図形情報解釈手段612は、サーバ側地図データ編集部51が備える編集対象図形検索手段52が有する検索結果情報作成手段523で作成された編集対象図形に関する情報を読み込み、後記編集対象図形表示手段613を用いて表示装置35に表示できる形式にする前記編集対象図形に関する情報を変換する。編集対象図形表示手段613は、変換された編集対象図形情報を前記表示装置35上に表示する。図形編集手段614は、編集対象図形をクライアントシステム6が具備するマウスやキーボード等の入力装置34を操作することで編集対象図形を編集する。編集後図形情報作成手段615は、編集後、編集結果を地理情報システムサーバ2が備える地図データ編集サーバ装置51に送信するための情報を作成する。ラスタ地図送信サーバ通信手段616は、編集後図形情報作成手段615にて作成された編集後図形情報をラスタ地図送信サーバ1に送信する。
【0026】
図5は、本実施の形態の地図データ編集サーバ装置8のハードウェア構成を示した図である。本実施の形態の地図データ編集サーバ装置8のハードウェアは、パソコン、サーバなどの計算機である。図において、地図データ編集サーバ装置8のハードウェアは、キーボード、テンキー、カーソルキー、マウス、ジョイスティックから情報を入力する入力装置24と、情報を記憶するメモリ22及び外部記憶装置23と、情報に基づき演算処理を行うCPU21と、演算処理結果を文字、画像などの表示情報として液晶ディスプレイ、CRTに表示する表示装置25と、演算結果やメモリ22又は外部記憶装置23の情報を外部と通信する通信装置26とから構成される。外部記憶装置23は、磁気ディスクを備えたハードディスクにより構成される。
【0027】
地理情報システムサーバ2は、編集対象図形検索装置52を含むサーバ側地図データ編集部51の処理動作を定義したプログラム等が、外部記憶装置23またはメモリ22に格納される。また、地理情報システムサーバ2は、Webサーバ3、地図DB4及びラスタ地図DB5と通信装置26で通信を行う。また、地理情報システムサーバ2は、CPU21がメモリ22に格納された上記プログラムを実行する。これによって、サーバ側地図データ編集部51の処理動作を実行する。
【0028】
図6は、本実施の形態のクライアント側地図データ編集部61を有するクライアントシステム6のハードウェア構成を示した図である。本実施の形態のクライアントシステム6のハードウェアは、パソコン、サーバなどの計算機である。図において、クライアントシステム6のハードウェアは、地図データ編集サーバ装置8のハードウェアと同様に、上記キーボード、テンキー、カーソルキー、マウス、ジョイスティックから情報を入力する入力装置34と、情報を記憶するメモリ32及び外部記憶装置33と、情報に基づき演算処理を行うCPU31と、演算処理結果を文字、画像などの表示情報として液晶ディスプレイ、CRTに表示する表示装置35と、演算結果やメモリ32又は外部記憶装置33の情報を外部と通信する通信装置36とから構成される。外部記憶装置33は、磁気ディスクを備えたハードディスクにより構成される。
【0029】
クライアントシステム6は、入力装置34により地図画像の編集のための情報が入力され、この入力された情報を編集するためクライアント側地図データ編集部61を含むクライアントシステム6の処理を記載したプログラムは、メモリ32または外部記憶装置33に格納される。CPU31は、上記プログラムに従って、編集を行う演算処理を行い、結果がメモリ32または外部記憶装置33に格納される。さらにクライアントシステム6は、上記プログラムにしたがって、通信サーバ3と情報を送受信してクライアントシステム6の処理を行う。
【0030】
図7は、地図データ編集装置8の構成について示した図である。地図データ編集装置8は、クライアント側地図データ編集部61を有するクライアントシステム6と、編集対象図形検索手段52を含むサーバ側地図データ編集部51を実現する通信サーバ3、地理情報システムサーバ2、地図DB4及びラスタ地図DB5とから成っている。
【0031】
次に、図8に基づき地図データ編集装置8の動作を説明する。あらかじめ、従来の地図データ編集装置と同様に、クライアントシステム6の要求によって、地理情報システムサーバ2からラスタ地図のデータが、クライアントシステム6へ送信され、クライアントシステム6は、ラスタ地図のデータを表示装置35に表示している。
【0032】
まず、クライアントシステム6のクライアント側地図データ編集部61は、編集対象図形選択手段611が、ユーザが入力装置34を用いて入力した情報から、表示装置34に表示されているラスタ地図から編集対象図形を選択する(ステップS1)。
次に、ステップS2は、ステップS1で選択された編集対象図形を地理情報システムサーバ2で検索するための検索条件を作成して、ラスタ地図送信サーバ通信手段616により、作成した検索条件をサーバ側に送信する。ここでは、ステップS1とS2とを合わせてS10とする。ステップS2により送信した情報は、ネットワーク7を介して通信サーバ(Webサーバ)3に伝送され、さらに地理情報システムサーバ2に伝送される。
【0033】
ステップS3は、前記ステップS10によりクライアントシステム6から送信された編集対象図形検索のための情報をサーバ通信手段511により受信し、編集対象図形検索装置52の検索条件解釈手段521を用いて前記編集対象図形検索のための情報を読み込み、整合性チェックを行ったのち、地図DB通信手段514により編集対象図形検索のための情報をDBサーバ9へ送信する。編集対象図形検索のための情報を受け取ったDBサーバ9は、地図DB検索手段522を用いて地図DB4から対象図形の検索を行う。
【0034】
ステップS4は、検索結果作成手段523を用いてDBサーバ9から検索結果を読み込んでクライアントシステム6に返信する情報を作成し、この検索結果情報をサーバ通信手段511により、前記ネットワーク7を介してクライアントシステム6に検索結果送信する。以上のステップS4とS5とをまとめてステップS20とする。検索結果を送信するステップS4において、地理情報システムサーバ2が送信した検索結果情報は、通信サーバ(Webサーバ)3、ネットワーク7を介してクライアントシステム6のラスタ地図送信サーバ通信手段616が、受信する。
【0035】
ステップS5は、編集対象図形情報解釈手段612を用いて編集対象図形情報を読み込み編集対象図形表示手段613で表示可能な情報へと変換し、編集対象図形表示手段613によりクライアントシステム6が備えるディスプレイ等の表示装置35に表示する。
【0036】
ステップS6は、図形編集手段614より入力装置34を用いて図形編集を実施する。ステップS7は、上記編集後、編集後図形情報作成手段615を用いて編集後の図形情報を作成し、ラスタ地図送信サーバ通信手段616により編集後の図形情報を地理情報システムサーバ2に送信する。以上のステップS5,S6及びS7をまとめてステップS30とする。クライアントシステム6から送信された編集後図形情報は、ネットワーク7を介して通信サーバ(Webサーバ)3が受信し、地理情報システムサーバ2へ伝送される。
【0037】
ステップS8は、地図データ編集サーバ装置51のサーバ通信手段511により上記編集後図形情報を地理情報システムサーバ2が受信し、編集後図形情報解釈手段512により編集後図形情報を読み込み、情報の整合性を確認後、DBサーバ9に編集後図形情報を伝送して、地図DB4に保存されている対象図形の更新を行う。
【0038】
ステップS9は、ラスタ地図再生成手段515によって、対象図形が含まれているラスタ地図の再生成を行い、ラスタ地図DB通信手段516によって、再生成したラスタ地図をDBサーバ9に送信する。DBサーバ9は、受信したラスタ地図のデータでラスタ地図DB5を更新する。
【0039】
ステップS10は、地理情報システムサーバ2のサーバ通信手段511によって、クライアントシステム6へ上記再生成したラスタ地図を送信する。以上ステップS8,S9及びS10をまとめてステップS40とする。
【0040】
ステップS11は、通信サーバ(Webサーバ)3、ネットワーク7を介して地理情報システムサーバ2から送信されたラスタ地図をクライアントシステム6内にあるラスタ地図送信サーバ通信手段616より受信し、クライアントシステム6のラスタ地図表示システムを用いて上記ラスタ地図を表示する。
【0041】
図9は、ステップS11の手続きを示したフローチャートである。ステップS1は、上述のように、地図データ編集クライアント装置61が、クライアントシステム6の入力装置34を用いてクライアントシステム6により表示されているラスタ地図を構成する図形の中から編集対象図形を選択する。
【0042】
次に、ステップS102は、ステップS1で選択された編集対象図形の情報から、編集対象図形を地理情報システムサーバ2で検索するための図形検索条件100を作成する。さらにステップS103は、図形検索条件100をサーバ側、具体的にはネットワーク7を介して通信サーバ(Webサーバ)3に送信する。
【0043】
図10は、ステップS1の説明図であり、クライアントシステム6の表示装置35に表示されているラスタ地図101上で編集対象図形を選択するステップS1を図示したものである。ラスタ地図101にはラスタ地図101を構成する図形102が存在する。ここでは、図形102の1つとして、編集対象図形103が表示されている。クライアントシステム6において、ユーザが、編集対象図形103が表示されている箇所を画面上でマウスクリック等によるマウス操作(図10中のマウスポインタ104)により位置を指定する。この時、クライアントシステム6は、上記マウス操作により選択されたラスタ地図上の画面座標(ピクセル)から、クライアントシステム6に定義された画面座標と、地球上における対象図形の位置を特定する座標(例えば緯度経度や平面直角座標)とを対応付ける基点と縮尺値をもとにして、画面座標から上記地球上の座標へ変換する。上記地球上の座標は、地図上の座標と考えることもできる。
【0044】
また、図11は、クライアントで住宅地図を示す地図上に表示されている編集対象図形を選択する処理を説明する図である。図において、住宅地図を示すようなラスタ地図301においても、クライアントは、編集対象図形302をマウスクリックなどのマウス操作303により選択する。
【0045】
また、図12は、クライアントシステム6で地図上に表示されている図形が重なった編集対象図形を選択する処理を説明する図である。図のように、編集対象図形103とラスタ地図を構成する図形102とが重なっている場合には、表示が上位にあるレイヤの図形が対象となる。この例では、編集対象図形103の属するレイヤが、図形102の属するレイヤよりも上位に設定されている。このため、編集対象図形103が図形102の上に表示される。この例では、より上位のレイヤに属する編集対象図形103が選択される。
【0046】
図13は、クライアントが備える表示装置35に表示されているラスタ地図上で指定した画面座標(デバイス座標ともいう)から地図上の座標(地図座標)に変換する処理フローを示した図である。ステップS1001は、ラスタ地図上の任意位置をマウス等の入力措置を用いて指定する。次に、ステップS1002は、指定された表示装置上での座標(デバイス座標)位置を取得する。次に、ステップS1003は、前記画面座標と緯度経度や平面直角座標などの地図上の座標(地図座標)とを関連付ける基点と縮尺などの変換情報をもとに地図座標に変換し、地図座標105を出力する。この地図座標105は、編集対象図形位置を特定する座標情報として、ステップS102にて編集対象図形検索ための情報が図形検索条件100として作成され、ステップS103にてラスタ地図送信サーバ通信手段616を用いて地理情報システムサーバ2に送信される。
【0047】
図14は、サーバ側地図データ編集部51で図形検索条件を受信してから検索結果情報をクライアントシステム6に送信するまでの処理を説明する図である。すなわち、ステップS20の処理を示したフローチャートである。ステップS201は、クライアントシステム6の編集対象図形選択手段611により送信された(ステップS10)図形検索条件100をサーバ通信手段511によって受信する。ステップS202は、編集対象図形検索装置52により図形検索条件100を読み込み、ステップS3で行う図形検索のための命令へと変換する。
【0048】
ステップS3では、上述のように地図データを構成する図形を示すベクトルデータが保存されている地図DB4から、前記検索条件100で指定された座標位置と地図DB4に格納されている図形の中から、図形を構成する座標値との距離が最短となる図形を検索する。次に、ステップS204は、ステップS3で実行された図形検索結果で得られた図形から、検索が正しく実行されたか否かの解釈を行う。次に、ステップS205では、検索結果の図形の情報から、当該図形を構成する座標配列、線色、線幅などの描画情報及び人口や面積などの図形が有する属性情報の各情報を抽出する。
【0049】
図15は、図形が持つ情報を説明する図である。図のように、図形が持つ情報として、検索に結果図形に対して、図形を一意に識別する図形識別子(以下、「図形ID」と呼ぶ。)と、地図上での緯度経度や平面直角座標に基づく位置を示す幾何情報(図15で示す座標情報は平面直角座標系で表されるXY座標)と、図形の描画の定義を示す描画情報、図形が持つ属性情報とがある。ステップS205は、これら図形ID、幾何情報、描画情報及び属性情報を含む検索結果情報120を作成する。なお、検索結果が無い場合、つまり該当する図形が無い場合は、検索結果情報120は空となる。また、図形がいずれかの情報を持たない場合は、その情報は検索結果情報120には含まれない。
【0050】
次にステップS4は、サーバ通信手段511により、クライアントシステム6に検索結果情報120を送信する。
【0051】
図16は、ステップS30の処理を示したフローチャートである。ステップS301は、ステップS20の手続きによって、クライアント側地図データ編集部61が備えるラスタ地図送信サーバ通信手段616が、サーバ通信手段511により送信された検索結果情報120を受信する。
【0052】
検索結果情報120は、図15に示したように、検索結果に該当した図形を識別する図形IDと、幾何(座標配列)情報や線や面などの色、線種などの描画情報や例えば街区という自治体が定義するエリアを構成するポリゴン図形が有する人口や面積といった属性情報などからなる。ただし、編集対象図形が無い場合、つまり前記検索結果情報に図形が存在しない場合には、図形編集を実行することができないため、図形編集を終了する。
【0053】
編集対象図形がある場合には、ステップS5にて、クライアントシステム6の表示装置35に対して検索結果情報120から、図形を構成する地図上の位置を示す座標情報を抽出し、前記デバイス座標に変換したのち、検索結果情報に含まれる図形の描画情報をもとに図形描画機能を用いて検索結果情報120の編集対象図形を描画する。
【0054】
次にステップS6は、クライアントシステム6において、地図上に描画された編集対象図形の幾何情報、描画情報又は属性情報のユーザによる編集を受け付ける。
【0055】
図17は、図形の幾何情報の編集を説明した図である。編集対象図形103の幾何情報の頂点座標には四角形の頂点マーク150を表示し、頂点の場所が分かりやすく表示する。クライアントシステム6は、入力装置35を用いて任意の頂点を移動したり、新たに頂点を追加したり、削除したりすることにより、ユーザに幾何情報の編集を行わせることができる。
【0056】
図18は、図形の頂点座標を移動する編集をする場合の説明図である。具体的には、入力装置35のマウス操作により、8頂点から成る図形103の1頂点の座標(X3、Y3)の移動前後を示す図である。左図は、移動前、右図は移動後を示す。右図中の破線は移動前の図形形状を示している。座標(X3’,Y3’)は移動後の図形103の移動した頂点の座標値を示している。
【0057】
さらに、図形の線や面の色や線種などの描画情報を変更する場合、図19に示すような新たに表示されたウィンドウ上で、それら描画情報である線種、線色、線幅、面色及び塗潰しパターンを変更することが可能である。
【0058】
また、図形が持つ属性情報の変更をする場合、図20に示す新たに表示されたウィンドウ上で図形が持つ属性情報を変更することが可能である。
【0059】
図21は、図形の編集前後での表示及び図形の持つ情報の変化を説明する図である。図に示すように、編集前図形103を前記幾何情報、描画情報、属性情報から成る図形情報107を編集することによって、編集後図形130のように変化し、また当該編集後図形情報の各情報131も併せて変更される。
【0060】
ステップS6にて図形編集が終了した後、ステップS304にて編集後図形を構成する幾何情報、描画情報、属性情報を抽出し、図22に示すように前記検索結果情報に含まれていた図形を一意に識別する図形IDと、前記編集後対象図形を構成する幾何情報、描画情報、属性情報からなる編集後図形情報132を作成する。作成後、ステップS7において、ラスタ地図送信サーバ通信手段616によって、編集後図形情報132がサーバ側へ送信される。
【0061】
なお、ステップS30で図形を編集する際、編集対象図形と他の図形とを区別するため、例えば編集対象図形が分かりやすいように、地図画像を不透明な画像で覆い、その上から編集対象図形のみを描画する構成を取っても良い。
【0062】
図23は、ステップS40の処理を示したフローチャートである。ステップS401は、サーバ通信手段511により編集後図形情報132を受信する。次に、ステップS402は、編集後図形情報132を読み込み、編集後図形情報132を構成する地図上での位置を示す座標からなる幾何情報、図形の描画を定義した描画情報及び属性情報が正しく構成されているかを判断する。ここで、幾何形状を示す座標情報に誤った情報が含まれているなど間違って編集された場合には、ステップS407で編集内容が正しくない旨のエラー情報200を作成し、ステップS408でサーバ通信手段511によりクライアントシステム6に送信する。また、編集後図形が正しい場合には、ステップS8は、地図DB通信手段514を用いて地図DB4が格納する対象地図データに対して、編集後図形情報132に含まれる図形IDと一致する編集対象図形を検索し、当該図形に関する幾何情報、描画情報、属性情報を編集後対象情報132の図形の幾何情報、描画情報、属性情報にそれぞれ置き換えることで編集内容を更新する。
【0063】
次に、ステップS9は、ラスタ地図再生成手段515によりクライアントシステム6で表示する緯度経度や平面直角座標などの地図座標からなる地図表示領域、表示するレイヤ情報、表示縮尺からなる地図表示情報をもとに、地図DB4から上記地図表示情報に該当する地図データを取得して、ラスタ地図再生成手段515によりラスタ地図140の再生成を実施する。さらに、再生成されたラスタ地図140をラスタ地図DB通信手段516によってラスタ地図DB5に格納する。この後、ステップS10は、サーバ通信手段511を用いてラスタ地図140をクライアントシステム6に送信する。
【0064】
図24は、ステップS11の手続きを示したフローチャートである。ステップS402にて解釈された編集後図形情報が正しくなかった場合には、ステップS408にてエラー情報がクライアントシステム6に送信される。クライアントシステム6は、ラスタ地図送信サーバ通信手段616を使って受信した前記エラー情報をステップS163で受信し、ステップS164で当エラー情報をクライアントシステム上で表示し、図形編集を終了する。
【0065】
一方、ステップS402にて解釈された編集後図形情報が正しかった場合には、ステップS161で、ラスタ地図送信サーバ通信手段616を使って受信したラスタ地図140をステップS162でクライアントシステム6が具備する表示装置35で表示し、図形編集を終了する。
【0066】
なお、ステップS40で図形を更新する際、地図DB4を構成する図形に対して、それぞれの図形を一意に識別する図形IDが存在しない場合は、編集後図形情報に編集前の図形情報である幾何情報を含め、更新対象図形を検索する際に編集前の幾何情報から編集対象の幾何情報を検索する方法を取っても良い。
【0067】
上記の説明では、地図DB4はラスタ地図を生成するベクトルデータからなる地図データを管理するデータベースとしたが、例えば前記地図データを検索、追加するなど地理情報システムが備えるデータ操作機能を持った地図データベースで構成してもよい。
【0068】
上記では、図1に示すようにインターネットやイントラネットなどのネットワークを通じて地図データ編集クライアント装置と地図データサーバ装置とが通信することにより地図データ編集を実現する構成を採った。しかし、一つのコンピュータ上に地図データ編集クライアント装置と地図データサーバ装置とを配置して、ネットワークを介さず一つのコンピュータ内で連携する構成を採っても良い。
【0069】
本実施の形態の地図データ編集装置8によれば、クライアントシステム6からサーバ側に送信された検索条件に基づき検索された編集対象図形のみのベクトルデータを用いて図形編集するため、クライアントシステム6とラスタ地図送信サーバとの通信コストを抑制した上で、地図DB4のベクトルデータの編集をすることができる。
【0070】
また、本実施の形態の地図データ編集装置8によれば、クライアントシステム6からサーバ側に送信された検索条件に基づき検索された編集対象図形のみのベクトルデータをクライアントシステム6にて描画し、図17で示した座標頂点編集や図19で示した線種、線幅といった描画属性を編集するウィンドウを用いることにより図形編集することとしたので、クライアントシステム6における編集コストも併せて抑制できる。
【0071】
実施の形態2.
実施の形態1では、地図データのレイヤを考慮しない実施の形態を説明した。本実施の形態では、複数のレイヤを有する地図データを扱う場合について説明する。
【0072】
従来、サーバから送信された複数のレイヤを有する(階層化された)地図データを画像データ地図転送方式でラスタ地図データをクライアントシステム6にて地図表示する場合における地図データ編集では、実施の形態1で示したように所望の編集対象図形をクライアントが指定した座標よりラスタ地図送信サーバ1が有する地図DB4から検索していた。そのためラスタ地図送信サーバ1は、地図DB4にあるすべての図形からクライアントが指定した座標値に最も近接する図形を検索するため、検索負荷が大きくなり、検索処理に時間がかかるという問題があった。また、レイヤの非表示の図形を誤って選択されて編集される問題があった。
【0073】
本実施の形態では、編集対象図形の選択の処理において、図形検索条件100に編集対象図形のレイヤ名を加えて検索し、当該レイヤの地図データのベクトルデータを編集するものである。このようにすることによって、上記問題点を解決できる。以下に、実施の形態1の処理と異なる部分のみについて説明する。
【0074】
編集処理の前に、予め地理情報システムサーバ2からクライアントシステム6へ送信する地図データは、クライアントシステム6で表示指定されたレイヤに対応するラスタ地図データであり、クライアントシステム6は、表示指定されたレイヤのラスタ地図を表示する。
【0075】
実施の形態1におけるステップS10にて示した編集対象図形を選択する手続きでは、図形検索条件100として図13で示したようにラスタ地図上で編集対象図形の座標情報を図形検索条件100としてラスタ地図送信サーバ通信手段616を用いて地図データ編集サーバ装置に送信した。本実施の形態は、図形検索条件100として、座標情報に加えて、図25に示すように、図形検索条件100にクライアントシステム6で表示対象となっているレイヤの名称も含める。そして、図形検索条件100を実施の形態1と同様に送信する。
【0076】
サーバ側は、地理情報システムサーバ2が図形検索条件100を受信すると、地図DB4に格納されている図形が有するレイヤ名と前記図形検索条件100に含まれるレイヤ名とが一致する図形の中から、検索条件100で指定された座標位置と当該図形を構成する座標値との距離が最短となる図形を検索する。実施の形態1と同様に、検索した図形をクライアントシステム6に送信し、クライアントシステム6で編集対称図形のベクトルデータを編集する。編集した図形のベクトルデータは、地理情報システムサーバ2に送信され、地図DB4の当該図形データのベクトルデータを更新する。
【0077】
なお、地図情報の表示時には、地理情報システムサーバ2は、クライアントからのレイヤの表示・非表示の要求に合わせて、地図DB4のベクトルデータから、レイヤの表示レイヤを組合せてラスタ地図を作成して、クライアント側に送信する。
【0078】
上記では、図形検索条件100を構成するレイヤ名称は、クライアントシステム6で表示対象となっているレイヤ名称を自動的に設定したが、別途図26に示すようなレイヤ選択画面170を用いて、例えば、HTMLが備えるチェックボックス等の選択手段を用いてレイヤ名称を選択する手段をとってもよい。
【0079】
本実施の形態の地図データ編集装置8によれば、クライアントシステム6で表示指定しているレイヤ名称を図形検索条件に含めて検索するため、クライアントシステム6で表示されているラスタ地図上から、ラスタ地図送信サーバが有する地図DB4に格納されているベクトルデータの編集対象図形を正確に検索することができる。
【0080】
また、本実施の形態の地図データ編集装置8によれば、クライアントシステム6で表示指定しているレイヤの組合せに対応するラスタ地図を予め送信するため、データ転送量が少なく、ネットワーク負荷が軽いという効果がある。また、表示指定しているレイヤの組合せに対応するラスタ地図を表示するため、クライアントシステム6の表示負荷も軽いという効果がある。
【0081】
実施の形態3.
実施の形態1では、クライアントシステム6にて編集対象図形を指定するのに1点を指定したが、ラスタ地図上のある領域を指定して行うこともできる。本実施の形態では、ラスタ地図上で領域を指定して編集対象図形を特定する方法について、以下実施の形態1と異なる点のみ説明する。
【0082】
図27は、クライアントで地図上に表示されている編集対象図形をラバーバンド等の任意図形を用いて選択する処理を説明する図である。ステップS101にてクライアントシステム6が備える入力装置34で編集対象図形を検索する手続きに関して、図27に示すように編集対象図形をラバーバンドなどの任意形状の選択領域110にて囲むことにより選択するように構成する。ここで、図形検索条件100は、任意領域を構成する座標配列で表現される。この場合、前記座標配列に包含される図形が検索に該当する図形となり、ステップS203により実施される検索結果は複数図形から構成される。この時、ステップS206でそれら複数図形をクライアントシステム6に送信する。
【0083】
図28は、検索結果情報を得た後のクライアントシステム6の処理のフローチャートである。具体的には、サーバ側地図データ編集部51から受信した編集対象図形が複数あった場合、クライアント側地図データ編集部61で編集対象図形を1つ選択し、選択図形情報をサーバ側地図データ編集部に送信するまでの処理を説明する図である。編集対象図形が2以上の場合には、ステップS306へ処理が移る。ステップS306は、図29に示すようなウィンドウにて複数対象図形リスト表示を行う。図29は、図28の編集対象図形を1つ選択するための方法を示す図である。ステップS307は、編集対象図形を1つ選択する。ステップS308は、選択された図形情報160を作成し、ステップS309でクライアントシステム6が備える地図画像配信サーバ通信手段616を使って、地理情報システムサーバ2に選択図形情報160を送信する。
【0084】
地理情報システムサーバ2では、受信した選択図形情報160を元に図14に示したステップS205の手続き同様に当該図形情報から検索結果情報120を作成し、ステップS206の手続きにより再度クライアントシステム6に検索結果情報120を送信する形態をとってもよい。
【0085】
上記のステップS307では、図29に示すウィンドウを用いて編集対象図形を1つ選択させる手段を採ったが、編集図形を例えば面積や人数など図形が持つ属性情報も使用して編集対象図形を絞り込む手段を取っても良い。例えば、面積が10km以下であり、かつ人口が10000人以上といった属性検索条件により編集対象図形を段階的に絞り込む手段を採っても良い。
【0086】
本実施の形態の地図データ編集装置8によれば、編集対象情報は、任意形状の領域を特定する座標情報を含み、編集対象図形検索手段は、前記編集対象情報の前記座標値で特定される領域に入る1又は2以上の図形を検索するようにしたので、多数の編集対象がある倍などに対象を選択しやすくなる効果がある。
【0087】
実施の形態4.
実施の形態1では、クライアントシステム6が、編集対象図形のベクトルデータを受け取り、ベクトルデータを描画するように説明したが、クライアントシステム6が、編集対象図形のラスタデータ(画像データ)を受け取るようにして、ベクトルデータを描画しないように構成することもできる。
【0088】
実施の形態1において示したステップS30の処理過程において編集対象図形をクライアントシステム6が備える描画機能を用いて地図上に描画し、入力装置を用いて図形編集するとしたが、クライアントシステム6が備える入力装置34を用いて、図形が持つ幾何情報や描画情報を変更する度に、変更された幾何情報や描画情報をラスタ地図送信サーバ通信手段616を用いて地理情報システムサーバ2に送信し、受け取った幾何構造を元に画像化し、画像作成後、再度クライアントシステム6に返信し、クライアントシステム6にて同画像を表示する形態を取っても良い。
【0089】
本実施の形態の地図データ編集装置8によれば、変更された幾何情報や描画情報を地理情報システムサーバ2に送信し、地理情報システムサーバ2が幾何構造を元に画像化した画像を、再度クライアントシステム6に返信し、クライアントシステム6にて同画像を表示するので、クライアントシステム6のブラウザが持つベクトル描画機能を使用せずに対象図形の幾何構造の編集途中の図形を表現することが可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 ラスタ地図送信サーバ、2 地理情報システムサーバ、3 通信サーバ(Webサーバ)、4 地図DB、5 ラスタ地図DB、6 クライアントシステム、7 ネットワーク、8 地図データ編集装置、9 DBサーバ、21 CPU、22 メモリ、23 外部記憶装置、24 入力装置、25 表示装置、26 通信装置、31 CPU、32 メモリ、33 外部記憶装置、34 入力装置、35 表示装置、36 通信装置、51 サーバ側地図データ編集部、52 編集対象図形検索装置、61 クライアント側地図データ編集部、511 サーバ通信手段、512 編集後図形情報解釈手段、513 編集後図形更新情報作成手段、514 地図DB通信手段、515 ラスタ地図再生成手段、516 ラスタ地図DB通信手段、521 検索条件解釈手段、522 地図DB検索手段、523 検索結果作成手段、611 編集対象図形選択手段、612 編集対象図形情報解釈手段、613 編集対象図形表示手段、614 図形編集手段、615 編集後図形情報作成手段、616 ラスタ地図送信サーバ通信手段、100 図形検索条件、101 ラスタ地図、102 ラスタ地図を構成する図形、103 編集対象図形、104 マウスポインタ、105 地図座標、107 図形情報、110 選択領域、120 検索結果情報、130 編集後図形、131 編集後図形情報の各情報、132 編集後図形情報、140 再生成されたラスタ地図、150 頂点マーク、160 選択図形情報、170 レイヤ選択画面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図に含まれる図形の幾何情報、描画情報を有する図形のベクトルデータを格納するベクトルデータ格納手段と、
前記ベクトルデータをピクセルで構成される画像に変換して前記地図の図形を表現する画像であるラスタデータを格納するラスタデータ格納手段と、
前記ラスタデータをクライアントへ送信するラスタデータ送信手段とを有するサーバ、
および送信された前記ラスタデータを受信するラスタデータ受信手段と、
受信した前記ラスタデータを描画するラスタデータ描画手段と、
描画した前記ラスタデータに対して編集する対象の編集対象情報が入力される編集対象入力手段と、
前記編集対象情報を前記サーバへ送信する編集対象送信手段とを有するクライアントを備えた地図データ編集装置であって、
前記サーバは、前記クライアントから前記編集対象情報を受信する編集対象受信手段と、
前記ベクトルデータ格納手段に格納された前記ベクトルデータの中から、前記編集対象情報に基づく検索条件を満たす図形のベクトルデータを検索する編集対象図形検索手段と、
前記検索された前記図形のベクトルデータをクライアントに送信する編集対象図形送信手段とを備え、
前記クライアントは、検索された前記図形のベクトルデータを受信するベクトルデータ受信手段と、
受信した前記図形のベクトルデータを描画する編集対象図形表示手段と、
描画された前記図形のベクトルデータの変更箇所および変更内容を含む変更情報が入力される図形編集手段と、
前記変更情報をサーバに送信する編集後図形情報送信手段とを備え、
前記サーバは、前記変更情報に基づき前記ベクトルデータ格納手段に格納された前記変更箇所に対応する図形の情報を前記変更内容に更新する編集後図形更新手段を備えたことを特徴とする地図データ編集装置。
【請求項2】
編集対象情報は、編集対象入力手段で入力された座標値を含み、
編集対象図形検索手段は、前記編集対象情報の前記座標値に最も近い図形を検索することを特徴とする請求項1に記載の地図データ編集装置。
【請求項3】
図形は、レイヤに分けられ、
クライアントは、描画するラスタデータで表示対象のレイヤ情報を有し、
編集対象情報は、前記表示対象のレイヤ情報を含み、
編集対象図形検索手段は、前記編集対象の前記表示対象のレイヤ情報に対応する図形に検索対象図形を絞ることを特徴とする請求項1に記載の地図データ編集装置。
【請求項4】
編集対象情報は、編集対象入力手段で入力された座標値を含み、
編集対象図形検索手段は、前記編集対象情報の前記座標値に最も近い図形を検索することを特徴とする請求項3に記載の地図データ編集装置。
【請求項5】
クライアントは、編集対象のレイヤ情報が入力される編集対象レイヤ入力手段を備え、
編集対象情報のレイヤ情報は、前記編集対象レイヤ入力手段により入力された前記レイヤ情報であることを特徴とする請求項3に記載の地図データ編集装置。
【請求項6】
編集対象情報は、図形が有する属性情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の地図データ編集装置。
【請求項7】
編集対象情報は、任意形状の領域を特定する座標情報を含み、
編集対象図形検索手段は、前記編集対象情報の前記座標値で特定される領域に入る1又は2以上の図形を検索し、
図形編集手段は、2以上の図形が描画された場合には、2以上の図形のうち1つの編集対象を選択することを特徴とする請求項1に記載の地図データ編集装置。
【請求項8】
地図に含まれる図形の幾何情報、描画情報を有する図形のベクトルデータを格納するベクトルデータ格納手段と、
前記ベクトルデータをピクセルで構成される画像に変換して前記地図の図形を表現する画像であるラスタデータを作成する地図画像データ作成手段と、
前記ラスタデータを格納するラスタデータ格納手段と、
前記ラスタデータをクライアントへ送信するラスタデータ送信手段とを有するサーバ、
および送信された前記ラスタデータを受信するラスタデータ受信手段と、
受信した前記ラスタデータを描画するラスタデータ描画手段と、
描画した前記ラスタデータに対して編集する対象の編集対象情報が入力される編集対象入力手段と、
前記編集対象情報を前記サーバへ送信する編集対象送信手段とを有するクライアントを備えた地図データ編集装置であって、
前記サーバは、前記クライアントから前記編集対象情報を受信する編集対象受信手段と、
前記ベクトルデータ格納手段に格納された前記ベクトルデータの中から、前記編集対象情報に基づく検索条件を満たす図形のベクトルデータを検索する編集対象図形検索手段と、
前記検索された前記図形のベクトルデータをクライアントに送信する編集対象図形送信手段とを備え、
前記クライアントは、検索された前記図形のベクトルデータを受信するベクトルデータ受信手段と、
受信した前記図形のベクトルデータを描画する編集対象図形表示手段と、
描画された前記図形のベクトルデータの変更箇所および変更内容を含む変更情報が入力される図形編集手段と、
前記変更情報をサーバに送信する編集後図形情報送信手段とを備え、
前記サーバは、前記変更情報に基づき前記ベクトルデータ格納手段に格納された前記変更箇所に対応する図形の情報を前記変更内容に更新する編集後図形更新手段を備えたことを特徴とする地図データ編集装置。
【請求項9】
地図に含まれる図形の幾何情報、描画情報を有する図形のベクトルデータを格納するベクトルデータ格納手段と、
前記ベクトルデータをピクセルで構成される画像に変換して前記地図の図形を表現する画像であるラスタデータを格納するラスタデータ格納手段と、
前記ラスタデータをクライアントへ送信するラスタデータ送信手段と、
送信された前記ラスタデータを受信するラスタデータ受信手段、受信した前記ラスタデータを描画するラスタデータ描画手段、描画した前記ラスタデータに対して編集する対象の編集対象情報が入力される編集対象入力手段、および前記編集対象情報を送信する編集対象送信手段を有するクライアントからの前記編集対象情報を受信する編集対象受信手段と、
前記ベクトルデータ格納手段に格納されたベクトルデータの中から、前記編集対象情報に基づく検索条件を満たす図形のベクトルデータを検索する編集対象図形検索手段と、
検索された前記図形のベクトルデータを前記クライアントに送信する編集対象図形送信手段と、
前記クライアントが検索された前記図形のベクトルデータを受信して前記図形のベクトルデータを描画し、前記クライアントにて入力された前記図形のベクトルデータの変更箇所および変更内容を含む変更情報を受信し、前記変更情報に基づき前記ベクトルデータ格納手段に格納された前記変更箇所に対応する図形の情報を前記変更内容に更新する編集後図形更新手段とを備えたことを特徴とする地図データ編集装置用サーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2010−191889(P2010−191889A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38212(P2009−38212)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】