説明

地図画像生成装置及びプログラム

【課題】位置を示す記号を持たないため配置の自由度が低い注記の文字列について、文字列と図形又は文字列同士の重なりによる表示情報量の低下を低減する。
【解決手段】注記情報に基づいて注記を描画する際、注記情報が記号付きか否かを判定する(S42)。記号無しの注記の配置位置が既に描画された注記(文字、記号)と重なるか否かを判定し(S43)、重なる場合(S43:YES)、その位置に描画出来ないため、記号を付けて位置を変更し(S45)、重なるか否かを判定する(S46)。重なる場合(S46:YES)、消してよい記号か否かを判定し(S48)、消してよい記号でない場合(S48:NO)、記号のみを描画する(S49)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーナビゲーション装置や携帯型電話機などに提供する地図画像を生成する装置、及びその装置をコンピュータにより実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーション装置や携帯型電話機などにおいて、地図を電子的に表示してユーザを案内することが行われている。このような地図には、地名、店舗名、レストラン名、ビル名、公園名、道路名、鉄道路線名などの文字列である所謂「注記」が表示される。
【0003】
ここで、地図を表示する場合、限られたサイズの画面中に、一覧出来るように表示する必要がある。そのため、表示する注記が多ければ、その位置が重なって表示される。
【0004】
このような問題に対処した装置として、地図上の位置を表す「点(・)」の近傍にその「点」の地名を表す注記の文字列を配置する際、文字列と海岸線などの図形との重なり、又は文字列同士の重なりによる表示情報量の低下が最小となるように、文字列の配置を求める図中文字表示装置がある(特許文献1)。
【0005】
具体的には、地図上の位置を表す「点」の周囲のどこかに注記を配置している。つまり、注記付与対象物である「点」は、位置を表すという目的があることから、移動させることが出来ないのに対し、注記自体は「点」の近くに配置されていれば、その「点」に対応する注記であることが分かる訳である。
【0006】
ところで、詳細な地図における地域、公園、ビルなど、地図上で一定以上の面積を占有する注記付与対象物の場合、特許文献1に記載されている「点」のような記号は無く、その占有範囲内に注記を配置することが一般的である。この注記の場合、占有範囲外に配置すると、注記付与対象物の正しい名称を表さなくなることから、「点」に対する注記とは異なり、注記付与対象物の周辺に配置することは出来ないため、配置の自由度が低い。
【0007】
特許文献1に記載されている図中文字表示装置は、位置を示す記号を持つ注記付与対象物に対しては、文字列と図形又は文字列同士の重なりによる表示情報量の低下を低減する効果があるとしても、位置を示す記号を持たないため配置の自由度が低い注記付与対象物に関しては、その効果が得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−56988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、位置を示す記号を持たないため配置の自由度が低い注記の文字列について、文字列と図形又は文字列同士の重なりによる表示情報量の低下を低減出来るようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の地図画像生成装置は、図形情報が格納されている図形情報格納部と、注記情報が格納されている注記情報格納部と、前記図形情報を用いて図形を描画する図形描画手段と、前記注記情報を用いて注記を描画する注記描画手段とを有する地図画像生成装置であって、前記注記情報は、記号付きの注記情報と、記号無しの注記情報とからなり、前記注記描画手段は、前記注記情報が記号付きか記号無しかを判定する記号有無判定手段と、該記号有無判定手段により記号付きと判定された注記情報については、注記の描画位置を該記号の周囲で描画済みの注記に重ならない位置を探索する記号付き注記描画位置探索手段と、前記記号有無判定手段により記号無しと判定された注記情報については、予め定められている描画位置が描画済みの注記に重ならないか否かを判定する記号無し注記描画位置確認手段と、前記記号付き注記描画位置探索手段により発見された位置に当該注記を描画し、予め定められている描画位置に当該記号を描画する記号付き注記描画手段と、前記記号無し注記描画位置確認手段により重ならないと判定されたとき、予め定められている描画位置に当該注記を描画する記号無し注記描画手段と、前記記号無し注記描画位置確認手段により重なると判定されたとき、当該注記情報に記号を付加するとともに、当該注記の描画位置を付加された記号の周囲で描画済みの注記に重ならない位置を探索する記号付加注記描画位置探索手段と、該記号付加注記描画位置探索手段により発見された位置に当該注記を描画し、予め定められている描画位置に当該記号を描画する記号付加注記描画手段とを有することを特徴とする地図画像生成装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、位置を示す記号を持たないため配置の自由度が低い注記の文字列に対して、位置を示す記号を付加することにより配置の自由度を高め、文字列と図形又は文字列同士の重なりによる表示情報量の低下を低減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の地図画像生成装置を含む地図情報提供システムを示す図である。
【図2】図1における携帯端末装置のブロック図である。
【図3】図1における地図情報提供サーバのブロック図である。
【図4】本発明の実施形態の地図情報提供システムの動作を示すフローチャートである。
【図5】図4における地図画像描画処理を示すフローチャートである。
【図6】注記を配置する手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
〈システム構成〉
図1に本発明の実施形態の地図画像生成装置を含む地図情報提供システムを示す。この地図情報提供システムは、インターネットなどのネットワーク1、ネットワーク1に接続される地図情報提供サーバ2、及び基地局3経由でネットワーク1に接続される携帯端末装置4からなる。なお、便宜上携帯端末装置4を1台図示したが、実際には多数の携帯端末装置4がネットワーク1に接続されることは言うまでもない。
【0014】
地図情報提供サーバ2は、携帯端末装置4からの要求に応じて、地図画像を提供する機能を備えている。
【0015】
携帯端末装置4は携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、PND(Personal Navigation Device)などからなり、内蔵するROMに所定のアプリケーションプログラムを格納することで、地図情報提供サーバ2に対して地図の要求を送信し、地図情報提供サーバ2から提供される地図画像を表示部に表示することが出来る。
【0016】
〈携帯端末装置の構成〉
図2は携帯端末装置4のブロック図である。この携帯端末装置4は制御部41、操作部42、表示部43、及び無線通信部44を備えている。
【0017】
制御部41は携帯端末装置4の各部を制御するためのコントローラであり、CPU(Central Processing Unit)411と、ROM(Read Only Memory)412と、RAM(Random Access Memory)413とを備えている。CPU411はROM412に記憶されたプログラムをRAM413にロードして実行することで、後述する種々の処理を実現する。
【0018】
操作部42は、この携帯端末装置4をユーザが操作するための各種ボタンからなる。表示部43は、この携帯端末装置4の動作状態や、操作部42からユーザが入力した情報などを表示するための液晶表示装置などからなる。無線通信部44は基地局3との間で無線通信を行うための回路である。
【0019】
〈地図情報提供サーバの構成〉
地図情報提供サーバ2は、図3に示すように、制御部21、通信部22、及び記憶部23を備えている。
【0020】
制御部21はCPU211、ROM212、及びRAM213を含み、この地図情報提供サーバ全体の制御などを行う。CPU211は、ROM212に記憶されたプログラムをRAM213にロードして実行することで、後述する種々の処理を実現する。通信部22はネットワーク1及び基地局3を介して携帯端末装置4と通信を行う。記憶部23はHDDからなり、地図情報DB(データベース)231が設けられている。
【0021】
地図情報DB231には、地図に表示される道路、鉄道、建物などの図形のベクトル情報からなる図形情報231a、及び注記情報231bが格納されている。注記情報231bは、「注記情報ID」、「注記付与対象物」、「記号」、「文字列」、及び「位置情報(緯度情報、経度情報)」からなる。「記号」は付いているものと付いていないものがある。「記号」には、前述した「点」のように注記付与対象の位置のみを表すもの、「郵便局を表す記号(〒)」、「寺院を表す記号(卍)」などのように、注記付与対象の位置に加えて、属性や種類を表す固有のものがある。「位置情報」は注記付与対象の位置を1/1000秒(約30cm)の分解能で表す。即ち例えば平面図が矩形となるビルの場合、矩形の各辺の約30cm毎の位置情報が格納されている。
【0022】
〈地図画像提供動作〉
次に地図情報提供サーバ2が携帯端末装置4に地図画像を提供する動作について、図4を用いて説明する。
【0023】
まず携帯端末装置4は、ユーザの操作に応じて地図情報提供サーバ2に接続要求を送信する(ステップS1)。この接続要求には携帯端末装置4の装置IDが含まれている。
【0024】
地図情報提供サーバ2では、接続要求が通信部22で受信され、制御部21へ送られる。制御部21は、接続要求を受信すると、検索用画面を記憶部23から読み出し、通信部22を通して携帯端末装置4へ送信する(ステップS11)。携帯端末装置4は検索用画面を受信し、表示部43に表示する(ステップS2)。
【0025】
携帯端末装置4では、ユーザが操作部42から検索用画面の目的地入力欄に所望の目的地を入力し、所定のボタンを押下することで検索指示を入力すると、目的地情報を含む検索指示を地図情報提供サーバ2へ送信する(ステップS3)。
【0026】
地図情報提供サーバ2では、通信部22が検索指示を受信し、制御部21へ送る(ステップS12)。制御部21は、検索指示に含まれている目的地情報に基づいて、地図情報DB231から地図情報(図形情報231a、注記情報231b)を読み出し(ステップS13)、図形情報213aに基づいて図形を描画し(ステップS14)、注記情報231bに基づいて注記を描画する(ステップS15)。次に、制御部21は、図形及び注記の描画により生成された地図画像を通信部22を通して携帯端末装置4へ送信する(ステップS16)。携帯端末装置4は地図画像を受信し、表示部43に表示する(ステップS4)。
【0027】
《注記描画処理》
ステップS15の詳細について図5に示すフローチャートを用いて説明する。このフローは、予め定められている優先順位に従って、制御部21が注記付与対象物を選択する毎に実行される。
【0028】
最初に注記付与対象物に対応する注記情報を選択し(ステップS41)、次いでその注記情報が記号付きか否かを判定する(ステップS42)。注記情報が記号付きであった場合(ステップS42:YES)は、その注記情報により描画される注記が描画済の注記(文字、記号)と重なるか否かを判定する(ステップS46)。
【0029】
ここで、重なるか否かの判定は、所定の優先順位に従って、注記付与対象物の周囲の複数の場所について順次判定する。図7に優先順位の例を示す。図7Aに示すように、注記付与対象物が道路の右側に存在する場合は、注記付与対象物が存在する場所に記号を配置し、その右側を一番、上を二番、下を三番、道路を隔てた左側を四番として注記を配置する。また、図7Bに示すように、注記付与対象物が道路の左側に存在する場合は、注記付与対象物が存在する場所に記号を配置し、その左側を一番、上を二番、下を三番、道路を隔てた右側を四番として注記を配置する。
【0030】
ステップS46で重ならないと判定した場合(ステップS46:NO)は、描画可能であるから、注記(文字及び記号)を描画する(ステップS47)。一方、重なると判定した場合(ステップS46:YES)は、その記号が消してよい記号か否かを判定する(ステップS48)ここで、消してよい記号とは、「点」のように注記付与対象の位置のみを表す記号であり、消してはいけない記号「郵便局を表す記号(〒)」、「寺院を表す記号(卍)」などのように、注記付与対象の位置に加えて、属性や種類を表す固有の記号である。
【0031】
ステップS48で、消してよい記号であると判定した場合(ステップS48:YES)は、そのまま処理を終了する。この場合、文字、記号ともに描画されない。一方、消してよい記号ではない、換言すれば消してはいけない記号である判定した場合(ステップS48:NO)は、注記(記号のみ)を描画する(ステップS49)。
【0032】
注記情報が記号無し(文字のみ)の場合(ステップS42:NO)も、注記が描画済の注記(文字、記号)と重なるか否かを判定する(ステップS43)。そして、重ならないと判定した場合(ステップS43:NO)は、描画可能であるから、注記(文字のみ)を描画する(ステップS44)。
【0033】
ステップS43で、重なると判定した場合(ステップS43:YES)、描画不能であるから、記号を付加して、配置する位置を変更し(ステップS45)、再び描画済の画像と重なるか否かを判定する(ステップS46)。以後の処理は、注記情報が記号付きであった場合(ステップS42:YES)の処理と同じである。ここで、ステップS45における記号の付加としては、例えば注記が「○○寺」という文字のみの場合に、「寺院を表す記号(卍)」を付加する例を挙げることができる。
【0034】
なお、ステップS43、S46を重なるか否かの判定に代えて、重なり量(面積)が閾値未満か否かの判定にしてもよい。
【0035】
以上詳細に説明したように、位置を示す記号を持たないため配置の自由度が低い注記の文字列に対して、位置を示す記号を付加して配置の自由度を高めたので、位置を示す記号を持たない注記の文字列について、図形又は他の文字列との重なりによる表示情報量の低下を低減することができる。
また、注記に付与する記号が注記付与対象の位置に加えて、属性や種類を表す固有の記号については、記号のみを描画することにより、文字列と図形又は文字列同士の重なりによる表示情報量の低下をより低減することができる。
【符号の説明】
【0036】
2…地図情報提供サーバ、4…携帯端末装置、21…制御部、231…地図情報DB。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
図形情報が格納されている図形情報格納部と、注記情報が格納されている注記情報格納部と、前記図形情報を用いて図形を描画する図形描画手段と、前記注記情報を用いて注記を描画する注記描画手段とを有する地図画像生成装置であって、
前記注記情報は、記号付きの注記情報と、記号無しの注記情報とからなり、
前記注記描画手段は、
前記注記情報が記号付きか記号無しかを判定する記号有無判定手段と、
該記号有無判定手段により記号付きと判定された注記情報については、注記の描画位置を該記号の周囲で描画済みの注記に重ならない位置を探索する記号付き注記描画位置探索手段と、
前記記号有無判定手段により記号無しと判定された注記情報については、予め定められている描画位置が描画済みの注記に重ならないか否かを判定する記号無し注記描画位置確認手段と、
前記記号付き注記描画位置探索手段により発見された位置に当該注記を描画し、予め定められている描画位置に当該記号を描画する記号付き注記描画手段と、
前記記号無し注記描画位置確認手段により重ならないと判定されたとき、予め定められている描画位置に当該注記を描画する記号無し注記描画手段と、
前記記号無し注記描画位置確認手段により重なると判定されたとき、当該注記情報に記号を付加するとともに、当該注記の描画位置を付加された記号の周囲で描画済みの注記に重ならない位置を探索する記号付加注記描画位置探索手段と、
該記号付加注記描画位置探索手段により発見された位置に当該注記を描画し、予め定められている描画位置に当該記号を描画する記号付加注記描画手段と
を有する
ことを特徴とする地図画像生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載された地図画像生成装置において、
前記注記描画手段は、
前記記号付加注記描画位置探索手段により、注記の描画位置を付加された記号の周囲で描画済みの注記にも重ならない位置が発見されなかったとき、当該記号が注記付与対象物固有の記号であるか否かを判定する付加記号種別判定手段と、
該付加記号種別判定手段により、固有の記号であると判定されとき、当該記号のみを描画する記号描画手段と
を有する
ことを特徴とする地図画像生成装置。
【請求項3】
コンピュータを請求項1又は2に記載された地図画像生成装置の各手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−215432(P2011−215432A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84617(P2010−84617)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(500578216)株式会社ゼンリンデータコム (231)
【Fターム(参考)】