地域の複合リサイクルシステム
【課題】 日常生活に止まらず、産業界を含めて地域の全体に対して地球温暖化の原因であるCO2の排出量を減少させるための指針を示す。
【解決手段】 地域内に設定した総合情報管理センターにおいて、地域内に発生した廃棄物を収集運搬する処理、収集された廃棄物を処理して電力,ガス,金属,建材,飼料,肥料などの製品に再生する複合処理を含むシステム全体から排出されるCO2排出量を計算し、その計算結果から将来発生するCO2排出量を予測し、これらのデータを廃棄物減量、CO2の排出抑制の努力目標の指針として、廃棄物の排出者である地域内の事業者、住民に情報公開する。
【解決手段】 地域内に設定した総合情報管理センターにおいて、地域内に発生した廃棄物を収集運搬する処理、収集された廃棄物を処理して電力,ガス,金属,建材,飼料,肥料などの製品に再生する複合処理を含むシステム全体から排出されるCO2排出量を計算し、その計算結果から将来発生するCO2排出量を予測し、これらのデータを廃棄物減量、CO2の排出抑制の努力目標の指針として、廃棄物の排出者である地域内の事業者、住民に情報公開する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定の地域内で発生するCO2排出量を管理する地域の複合リサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
今まで大量生産・大量消費に支えられて肥大化しつづける現代の産業は、製品を製造する過程からすでに大量に発生し、そして、生産された使い捨て製品を始めとして市場に出荷されたすべての製品はいずれ廃棄物として放出される。廃棄物は、不用品としての大量の「ごみ」であるが、廃棄物の処理は、単なる量の問題に止まらず、処理に伴う有害物質の発生という質の問題を解決しなければならない。
【0003】
かつて、一般家庭から排出されるごみ、いわゆる一般廃棄物の年間排出量は全国で5000万トンを超え、このうち焼却処分になるものが75%、資源化されるものが約10%、直接埋め立てられるものが約15%であったといわれていた(1999年NEDO調べ)。焼却処理によるときには廃棄物の減量化,無害化,無臭化のほか発電や熱利用によるエネルギー回収といった長所がある反面、ダイオキシン,塩化水素などの有害物質の発生,処理コストの増大,資源の浪費に止まらず、CO2の発生に伴う酸性雨,地球温暖化,オゾン層の破壊など、地球的規模で進行する環境汚染が深刻な問題になっているのは周知のとおりである。
【0004】
大気中のCO2の量は、18世紀の半ばには275ppm(容量ppm)であったものが、200年にわたって増加の一途をたどり、現在では350ppmをはるかに越えているといわれている。廃棄物処理に関しては地域の取り組みが重要であり、廃棄物処理施設の建設地候補の立案、地域ゼロエミッションを目指した廃棄物のリサイクル率の向上およびその管理費用の削減、廃棄物をリサイクルするシステムに関し、需要家に再生物を安定して供給できるように廃棄物リサイクル計画を支援するシステムの構築などの提案がある。
【0005】
このような提案から、更に一歩を進めて循環型社会を目指すために所定の地域内において、種々の排出物などの処理を行う環境関連施設群を統合的に管理することにより、ゼロエミッションすなわち廃棄物ゼロ状態を実現するコントロールシステムについての提案も見られる。
【0006】
しかしながら、これらの提案は、いずれも、基本的には、地域に発生した廃棄物をどのように収集し、管理するかの提案にとどまるものである。今求められているのは、発生した廃棄物をどのように収集し、管理するかという問題の解決ではなく、地域に発生する廃棄物を最大限資源化利用することで実質の廃棄物の量を減らすことで、CO2の発生を減らして地球温暖化の危機から救うという観点からの構想である。
【0007】
かつて、地球温暖化を防ぐために日常生活の中で行える対策を皆で誓い合い、互いには励ましあって進めていこうという運動「エコライフ100万人の誓い(環境庁主催)」が行われた。この運動に見られるように、CO2排出量は、日常生活や営利活動の中で住民の一人ひとりが、ささやかな自制や節約を継続することによってある程度の効果を期待できるのであるが、何の指針もなく、自らの意思で自制や節約の行為を自主的に継続するのは実は難しいことであり、地域の全体がCO2の排出量を抑えるための何らかの指針を与え続けるようなシステムの構築がなによりも大切である。
【0008】
上記「エコライフ100万人の誓い」の運動は、平成9年をもって終了したが、地球温暖化を防ぐための運動は、 期限を設けて何時までに終了でよいという問題ではなく、これから先、地球上に人類が存続する限り継続しなければならない問題である。
【0009】
なお、「エコライフ100万人の誓い」の運動における「100万人」の意味は、できるだけ多くの人たちに参加を呼びかける意味が込められていたが、図らずも「100」万人は、生産,消費を含めたひとつの経済圏を形成する地域の最小単位として適当な数でもある。
【0010】
ちなみに現在100万人都市は、新静岡市,北九州市,仙台市,さいたま市などの規模の都市であるが、本発明にいう「100万人」は、ひとつの地域内に発生する廃棄物を資材として生産物に再生するリサイクルループを形成する単位であって、必ずしも市町村の単位を意味するものではない。
【非特許文献1】最新リサイクル技術の実際 オーム社 1993
【特許文献1】特開2004−78980
【特許文献2】特開2004−1991
【特許文献3】特開平5−342224号
【特許文献4】WO2002/039338
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする問題点は、日常生活に止まらず、産業界を含めて地域の全体に対して地球温暖化の原因であるCO2排出量を減らすための明確な指針を示すシステムがなかった点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、システムを構成する1地域の単位として、例えば人口100万人地域(Million Recycling Region)をひとつの単位とし、地域内に発生する廃棄物を資源として再生するリサイクルループを形成し、地域内に居住する住民および地域内でオフィス,工場などの事業所を営む事業者(以下地域住人と略称する)が、生活や業務の中で排出する廃棄物の収集運搬から廃棄物処理およびリサイクル加工に至るまでに発生するCO2排出量を検出あるいは演算し、地域住人の発したCO2排出総量をもとに算出された予測値,目標値のデータを地域住人にCO2発生を抑制するために必要な行動実践に必要な指針情報として提供することを主な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシステムは、地域住人から排出された廃棄物の収集,運搬から、その廃棄物を資源として生産されるリサイクル製品の製品化までの間に発生するCO2排出量を、収集運搬,処理,再生資源化,製品加工の排出工程における各段階で検出あるいは算出するため、CO2排出量が増大する原因を特定しやすく、また一定時期ごとにCO2排出量を含めたデータを指針情報として具体的な数値によって公開するため、地域住人に対する地球温暖化防止の意識を高め、CO2発生を抑制するために必要な行動を自主的に実践させやすくなり、ひいては地域内に排出されるCO2排出総量を目標値に治めて地球温暖化防止に大きく寄与できる。
【0014】
また、国レベルではなかなか進まないCO2排出削減の実現に際しては、まず人口100万人地域をモデル地域として一箇所に作り、その地域をさらに隣接地域に次々に広め、複数の人口100万人地域が相互に連携を図ることによって、目標の達成が容易となり、ひいては日本全体から世界に向けて地球温暖化防止運動の和を広げてゆくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、地域内に発生するCO2排出総量を抑制するという目的を、地域内に設定した総合情報管理センターにおいて、地域内に発生した廃棄物を収集運搬する処理、収集された廃棄物を処理して電力,ガス,金属,建材,飼料,肥料などの製品に再生する複合処理を含むシステム全体から排出されるCO2排出量を計算し、その計算結果から将来発生するCO2排出量を予測し、これらのデータを廃棄物減量、CO2排出抑制の努力目標の指針として、廃棄物の排出者である地域住人に情報公開することによって実現した。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明による地域の複合リサイクルシステムを適応する1地域のモデルの概要を示す図である。このモデルでは、100万人の最適化地域1を想定し、その地域内の施設の構成を示している。図1において、本発明によるシステムは、中継基地2と、貨物駅4と、ストックヤード6と、複合処理施設8と、製品倉庫10と、総合情報管理センター7とを主要な施設として構成されている。
【0017】
中継基地2は地域住人11から出される廃棄物(ごみ)を分別収集する施設、貨物駅4は各中継基地2からトラック輸送されてきた廃棄物を集積する施設、ストックヤード6は貨物駅4から鉄道5で輸送されてきた廃棄物を一時的に保管する施設、複合処理施設8は、ストックヤード6の廃棄物を用途ごとに分別して用途ごとの処理施設に搬送する施設である。
【0018】
複合処理施設8は、パワーセンター8a,有機物資源化センター8b,クリーン化処理センター8cの各センターで構成されている。パワーセンター8aは、回収した廃棄物を主として電力エネルギーとして再生させる処理を行う施設であり、有機物資源化センター8bは回収した廃棄物をメタンやメタノールとして再生し、或いは肥料化に必要な処理をして、資源に加工する施設であり、クリーン化処理センター8cは、回収した廃棄物を主として金属材料,建材,化学薬品,ガスなどの資源に再生させる処理を行う施設である。
【0019】
図1には、これらの処理物が最終的に再資源化物(製品)Mとして製品倉庫10に格納されている状態を示している。総合情報管理センター7は、これら各中継基地2,2…,各貨物駅4,4…,ストックヤード6,複合処理施設8,製品倉庫10の各施設の情報を管理するための施設であり、これらの施設は、コンピュータネットワークを形成するために、インターネットを経由して接続され、各施設からの情報収集とともに収集した情報を加工し、CO2排出量規制に必要な指針情報を、インターネットを通じて地域住人11に向けて提供する機能を有している。
【0020】
なお、本発明のシステムは、上記施設とは別に環境監視センター9が設置されている。環境監視センター9は、主として複合処理施設8における処理が適正かどうかを監視するとともに複合処理施設8で行われる再資源化の処理内容を管理し、複合処理施設8で行われる処理の内容,管理の内容,各センターの周辺環境モニタリング監視する内容に関する情報を、インターネットを通じて地域住人11に提供する施設である。地域住人11から排出される廃棄物を再生利用するシステムの構築には、再生処理に必要な廃棄物の一定量の確保が必要であり、また、可能な限りトラック輸送によらずに廃棄物を一箇所に集めて複合処理並びにこれに続く再資源化処理を行うには、少なくとも上記施設が機能的に運用できることが必要である。このような理由から本発明のシステムを実現するには、人口約100万人を1単位として構築するのが適正であると考えられるのである。
【0021】
図1において、地域住人が排出した廃棄物は、可能ならばこの段階で、少なくとも、可燃ごみ,有機資源ごみ,不燃ごみに分別されていることが望ましい。いずれにしても、地域住人11が排出した廃棄物は、中継基地2に集められ、中継基地2からトラック(パッカー車)3a〜3eにより、最寄りの貨物駅4に運びこまれる。各貨物駅4,4に運び込まれた廃棄物は、鉄道5によって、ストックヤード6に集められる。ストックヤード6に集められた廃棄物は、廃棄物の種類ごとに分別されて、複合処理施設8に送りこまれ、複合処理施設8内で廃棄物の種類に応じてパワーセンター8a,有機物資源化センター8b,クリーン化処理センター8cに振り分けられ、それぞれのセンターで処理されて、電力,ガス,金属材料,建材,飼料,肥料などの再資源化物Mとして再生され、これらの再資源化物Mは、原則として地域住人に有料で販売されるが、地域外に販売することも勿論出来る。
【0022】
総合情報管理センター7は、各中継基地2,2…,各貨物駅4,4…,ストックヤード6,複合処理施設8,製品倉庫10の各施設の情報を収集し、これらの情報から各施設で発生するCO2の量を計測あるいは演算し、そのデータを各施設に提供して施設の運営を管理するほか、自前のホームページを通じ、CO2排出者である地域住人11に対してCO2排出の抑制に必要な指針情報としてデータを公開する。
【0023】
上記の100万人の最適化地域1内でのCO2排出量の抑制管理を行う要領を以下に説明する。図2は、本発明におけるCO2排出量の管理の概念をモデル化したグラフである。まず、1年間に排出されるCO2排出量の年間最終目標値P2を設定する。年間最終目標値P2を設定する方法の一例としては、例えば、人口1人当たりCO2排出量をもとにして、これに各工程ごと、各廃棄物の種類ごとに一定比率をかけた値、といった設定の仕方が考えられる。
【0024】
環境白書(2002年度)によると全国のCO2排出量は約12.5億トン。これを人口1億2700万人で割ると、国民1人あたり約9.79トン/年のCO2を排出していることになる。この値から、100万人の最適化地域1では、9.79×100万人=979万トン/年のCO2を排出していることになるので、これを年間最終目標値の一応の目安とする。
【0025】
とはいえ、本発明にいう100万人の最適化地域1は自給自足の外界から閉じられた地域ではなく、地域内で発生した廃棄物を資源として再生使用するだけで生活しているわけではない。地域外から供給される資材の運搬や加工に伴ってCO2が発生し、また他の地域からの影響を受けるので上記数値をそのまま目標値にはできない。当然、本システムが寄与できるレベル(過去に実績から推定)に一定の削減目標を掲げ定数をかけて上記数値を下げた値を目標値にするべきである。これら100万人の最適地域における削減目標値とは、地域における特性(自給自足内容ならびに率の違い)によって違ってくるが、個々の100万人の最適地域が互いに協力し合うことで、更なる最適(自給自足内容ならびに率のアップ)な地域、ひいては最適な地球をめざすことができるものである。
【0026】
次に、本発明では、CO2排出量を常に管理するために、経過日時ごとの目標値を設定する。目標開始時点P1と年間最終目標値P2を線で結び、目標値L1上の数値を経過日時ごとの目標値とする。実績値L2は実際のCO2排出量であり、目標値L1と比較するためのものであり、実績値L2のデータは、目標値L1と共に指針情報として廃棄物情報センター7のホームページに公開して地域住人11に提供する。目標値L1との差が大きい場合には地域住人に、廃棄物の減容を促す。予測値L3はCO2排出量の予測値であり、発生した実績値L2のデータをもとに統計的手法を用いて予測値を算出するものである。
【0027】
次に、上記の管理を行うためのデータについて説明する。
図3は、100万人の最適化地域1で本発明のシステムを実現するためのファイルの構成図である。以下の説明において「 」内はファイルを構成する項目名である。
【0028】
廃棄物排出ファイル12aは、排出者から排出された廃棄物の情報を記録するものであり、「廃棄物の種類」,「量(kg)」,廃棄物の発生「年月日」の項目で構成される。この情報は各中継基地2,2…のパソコン12に記録される。
【0029】
廃棄物運搬ファイル13aは、廃棄物の収集,運搬情報を記録するものである。「廃棄物の種類」,「量(kg)」,廃棄物の発生「年月日」の項目は廃棄物排出ファイル12aと同じであるが、廃棄物運搬ファイル13aでは、これらに加えて、「収集運搬距離」の項目を有するものである。この情報は各貨物駅4,4…のパソコン13に記録される。なお、廃棄物の運搬に鉄道が利用されないときには、中継基地2あるいは、ストックヤード6などにおいて廃棄物運搬ファイル13aを管理する。
【0030】
廃棄物受入ファイル14aは、処理場へ運ばれた際の廃棄物の受入状態を記録するものである。「廃棄物の種類」,「量(kg)」,「処理料金」,廃棄物の受入「年月日」の項目で構成される。この情報はストックヤード6のパソコン14に記録される。
【0031】
処理、再資源化(プラント運転)情報ファイル15aは、廃棄物の処理状況を記録するものであり、「原料(廃棄物)の種類」,「量(kg)」,「使用材料」,「使用燃料」,「使用電力」,「再資源化生産量」,資源化された「年月日」の項目で構成される。この情報は複合処理施設8のパソコン15に記録される。パソコン15はパワーセンター8a,有機物資源化センター8b,クリーン化処理センター8cらが各自所有しており、各自の施設ごとに情報が記録される。
【0032】
CO2排出量ファイル16aは、CO2の排出量の情報を記録するものであり、CO2の「排出工程」,「燃料」、「電力使用量」,CO2排出の「年月日」,「CO2発生量」,「累積値」,排出工程ごとの「年間予測値」の項目で構成される。この情報は、総合情報管理センター7のパソコン16に記録される。
【0033】
各貨物駅4,4…が記録した廃棄物排出ファイル12a,廃棄物運搬ファイル13a,ストックヤード6が記録した廃棄物受入ファイル14a,複合処理施設8の各施設8a〜8cが記録した処理,再資源化(プラント運転)情報ファイル15aのデータは更新されるごとにインターネット或いは専用回線などのネットワークを通じてサーバーである総合情報管理センター7のパソコン16に送信され、総合情報管理センター7のパソコン16に記録される。
【0034】
製品販売情報ファイル17aは、製造された製品の販売の情報を記録するものであり、「製品の種類」,「注文量」,「販売量」,製品が出荷された「年月日」の項目で構成される。この情報は製品倉庫10のパソコン17に記録される。
【0035】
情報提供,情報通知ファイル16bは、地域住人11への情報公開のためのデータを記録するものであり、「廃棄物の種類」,CO2発生「年月日」,「CO2排出量」,「CO2発生量」,「積算値」,廃棄物の種類ごとの「年間目標値」,「年間予測値」,「排出抑制の必要性」の項目で構成される。
ここで使われる「年間目標値」については、図2の例で、地域全体で発生するCO2発生量の全体目標値を設定し、これに廃棄物の種類ごとの一定比率を掛け、廃棄物の種類ごとの目標値として、あらかじめブレークダウンしておく(実績値が全体目標値が超過した場合には、このブレークダウンした目標値を用いる)。この情報は、総合情報管理センター7のパソコン16に記録される。
【0036】
総合情報管理センター7,各中継基地2,2…,各貨物駅4,4…,ストックヤード6,複合処理施設8,製品倉庫10らのパソコンは、主制御部(CPU),記憶装置,入出力制御部,表示装置(モニタ),入力装置(キーボード,マウス),出力装置(プリンタ)で構成される。これらのコンピュータの構成については、一般的なものを用いるため図示を省略する。
【0037】
図4は本発明のリサイクルシステムの流れを示すフローチャートである。以下に図に沿って詳細を説明する。同時に図1の各施設と図3の各ファイルとの関係をあわせて説明する。
【0038】
(1)ステップ1 年間最終目標値設定
まず、総合情報管理センター7は、CO2排出量の年間最終目標値を設定する。なお、目標値の設定の仕方については、先にその例を示した(段落0023参照)。目標値は収集運搬,廃棄物処理,再資源化,製品加工等の各処理ごとに設定し、設定した値を情報提供,情報通知ファイル16bの「年間目標値」の項目に入れる。「排出工程」の項目である、収集運搬はトラックの運搬で発生するCO2排出量であり、処理は、複合処理施設8で、廃棄物を処理する際、発生するCO2排出量であり、再資源化は、複合処理施設8で、再資源化物(素材)を生成するときに発生するCO2排出量であり、製品加工は、再資源化物(素材)をさらに具体的な商品に製品化するまでに発生するCO2排出量である。
【0039】
(2)ステップ2 廃棄物の排出
次に、廃棄物の排出者である地域住人11から最寄の中継基地2に廃棄物が排出される。
(3)ステップ3 廃棄物排出ファイルデータ作成
各中継基地2は排出された廃棄物の情報を、廃棄物排出ファイル12aに記録する。廃棄物排出ファイル12aの「廃棄物の種類」には、排出者から廃棄物が排出された時点では、資源ごみ,可燃ごみ,不燃ごみ,粗大ごみといったおおまかな分け方であるため、本発明のシステムで有効に利用するためにさらに,a:非分別ごみ,b:リサイクルごみ,c:発電ごみ,d:有機資源ごみ,e:不燃ごみのように分別する。排出の順序により、上記a〜eに入る項目は入れ替わる場合もある。
【0040】
上記のごみのうち、既存業界におけるリサイクルが困難なもので、かつ完全に処理可能な廃棄物のなかで、熱量の高いもの、例えば、有害物質を含まない高カロリーの紙屑,木屑,廃油,廃プラ及びペットボトルなどは、発電ごみとして分けることができる。動植物性残渣や厨芥ごみなどの有機性に富む廃棄物は、有機資材ごみとして分けることができる。また、有機資材ごみはさらにメタン発酵,飼料化ごみ,資源化ごみに分けることができる。不燃ごみは、金属材料,建材などの製品に再生される。
【0041】
(4)ステップ4 廃棄物の収集,運搬
トラック3a〜3eは各中継基地2から廃棄物を収集し、貨物駅4へ運搬を行う。発電ごみの運搬はトラック3a,有機資材ごみの運搬はトラック3bが担当するというように、廃棄物を運搬する際には廃棄物の種類に応じてトラックが選択される。
【0042】
(5)ステップ5 廃棄物運搬ファイルデータ作成
貨物駅4は廃棄物運搬ファイル13aにトラック3a〜3eから運び込まれた廃棄物の情報を記録する。例えば、トラック3aが平成17年12月3日に20kmの距離を走行して、発電ごみ50kgを運びこんできた場合に記録される情報は、「廃棄物の種類」は”発電ごみ”であり、「量(kg)」は”50kg”であり、「収集運搬距離」は”20km”であり、廃棄物の発生「年月日」は”2005年12月3日”である。
【0043】
(6)ステップ6 廃棄物の受け入れ
貨物駅4に運び込まれた各廃棄物は、それぞれ鉄道(コンテナ)5に積み込む際にパッカー車3で運ばれた同じ種類のごみ同士がまとめられ、鉄道(コンテナ)5でストックヤード6へ搬送される。
【0044】
(7)ステップ7 廃棄物受入ファイルデータ作成
ストックヤード6は廃棄物受入ファイル14aに鉄道(コンテナ)5から運び込まれた廃棄物の情報を記録する。例えば、ステップ5を経て発電ごみが運ばれてきたとする。鉄道(コンテナ)5が平成17年12月4日に発電ごみ20000kgを運びこんできた場合に記録される情報は、「廃棄物の種類」は”発電ごみ”であり、「量(kg)」は”20000kg”であり、廃棄物の受入「年月日」は”2005年12月4日”である。また、廃棄物の種類と運ばれた量が廃棄物受入ファイル14aに記録された後に処理料金を算出する。
【0045】
本システムでは、廃棄物の種類ごとの処理料金を算出し、排出者(参加自治体等)に請求し、徴収する(フローチャートには図示されていない)ことで、施設に関わる運用を行うこととしている。処理料金は、収入(処理料金収入+再資源化商品の販売収入)−経費(設備費+人件費+材料費+その他経費)−積立金(事業利益)=0となるように、廃棄物の種類ごとに逆算して、算出している。100万人地域モデルの1試算によれば、発電ごみは2万5千円/トン、有機資源ごみは2万円/トン、非分別ごみは3万円/トンと算出している。
【0046】
ここで、非分別ごみ(発電ごみと有機資源ごみの混在したもの)の処理料金は発電ごみより高く設定されている。この理由は非分別ごみでは、処理したときに得られる電力効率が低下し、結果的に電力の売電収入が減るためである。(実際、可燃ごみと水分の多い生ごみを分別されていない非分別ごみは、発電効率が発電ゴミの約半分(例:30%→15%)にまで低下してしまい、CO2の排出量も多くなってしまう。
【0047】
再資源化に重要な点は、ごみは、分別せずに出せば、焼却、または埋め立てに回るだけの単なるごみだが、可燃ごみ(発電ごみ)、有機ごみ、資源ごみなどに分別して出されれば、資源として有効に活用できる。従って、分別されていないごみ(生ゴミと、紙やプラスチックなどが混ざったもの)は処理料金が高く設定して、分別されたごみとの処理料金面で有意差をつけることが、地域住人にCO2発生を抑制するために必要な行動実践に必要な指針を与えることになる。地域住人よる廃棄物の分別の積極的な実践により、100万人地域のごみの分別排出が促進され、焼却されるごみの量が減り、再資源化(ごみ発電やメタン発酵などで)が促進され、結果として100万人地域全体のCO2排出削減が達成できる。
【0048】
実現する手法としては、ごみを収集するときに、非分別ごみ、分別ごみに分けて収集し、それらの重量を計って、ごみ種ごとの処理単価をかけて、排出元に料金請求する。従って、分別されていないごみ(生ごみと、紙やプラスチックなどが混ざったようなもの)は処理料金が高く設定されることになり、その負担を回避するために自ずから分別排出が促進され、焼却されるごみの減量にも寄与する。分別を十分に行うことができなければ、それ相応の負担を負うのが受益者負担の理にかなっている。
【0049】
収集するときに、非分別ごみ,分別ごみとを識別する方法としては、目視によるか、ポータブル赤外線センサを当てて有機物(生ごみ)の量や比率を測定して識別する方法などが考えられる。
【0050】
廃棄物は、種類に応じて別の処理場に送られる。
(8)ステップ8 焼却処理
非分別ごみは資源化できないので、焼却せざるを得ず、焼却して発電したとしても、発電効率が悪いためCO2排出が増える。ちなみに発電効率として分別された発電ごみは効率約30%に対し、非分別ごみは発電効率15%以下である。
よって、非分別ごみは複合処理施設8に送られ、焼却処理される。
【0051】
(9)ステップ9 リサイクルルートへ
リサイクルごみは空き缶,空きびん,新聞紙であり、通常のリサイクルルート(図示していない既存の流通ルート)へ送られる。
【0052】
(10)ステップ10 粗大ごみは解体分別
粗大ごみは解体され、解体された各ごみはその種類に応じて分別される。
【0053】
(11)ステップ11 電力化,製品化
発電ごみ,有機資源ごみ,不燃ごみは複合処理施設8の各施設8a〜8cで処理,加工された後、発電ごみは電力に(売電可能)、有機資源ごみは、飼料,エタノール,アンモニア,リンに、不燃ごみは、金属,建材などに製品化される。
【0054】
(12)ステップ12 処理,再資源化情報ファイルデータ作成
各処理場8a〜8cは処理,再資源化(プラント運転)情報ファイル15aに廃棄物の処理情報を記録する。例えば、ステップ5,7を経た発電ごみ20000kgが平成17年12月5日にパワーセンター8aで処理されるものとする。このとき処理,再資源化(プラント運転)情報ファイル15aに記録される情報は、「廃棄物の種類」は”発電ごみ”であり、「量(kg)」は”20000kg”であり、「年月日」は”2005年12月5日”である。また、廃棄物処理に用いた「使用材料」は例えば ”苛性ソーダ500kg”,「使用燃料」は ”天然ガス3Nm3”,「使用電力」は ”2700kWh”,「再資源化生産量」は ”1000kg”などを記録する。
【0055】
(13)ステップ13 販売
各センターで生産された製品のうち、電力は電力会社に売られ、他の製品は製品倉庫に保管され、注文主の要求に応じて出荷される。
【0056】
(14)ステップ14 製品販売情報ファイルデータ作成
製品工場10は注文主から製品の注文を受け付けた時点で、注文を受けた「製品の種類」,「注文量」を製品販売情報ファイル17aに記録する。製品工場10に製品の在庫があれば即座に製品の出荷を行い、「販売量」,出荷の「年月日」を製品販売情報ファイル17aに記録する。
【0057】
(15)ステップ15 CO2排出量実績を計算
総合情報管理センター7は、各施設から送信されたデータをもとに、収集運搬,処理,再資源化,製品加工ごとのCO2発生量を計算する。また、各廃棄物の種類ごと(資源ごみ,有機資材ごみ,不燃ごみ)のCO2発生量を計算する。CO2の排出量概算プログラムは、計算手法としてはLCA(ライフサイクルアセスメント)の手法、例えば(社)環境情報技術センターが提供するLGAの表に基づいて計算するほか、LCAの支援ソフトとして「LCA SUPPORT」(NECファクトリエンジニアリング社製)、「LCA SLIM」(富士通エフアイピー社製)などが市販されている。
【0058】
以下にCO2の排出量の算定基準の概要を以下に示す。
鉄道輸送トン・kmあたり、CO2の排出量は0.02kg、
自動車輸送トン・kmあたり、CO2の排出量は0.35kg、
発電1kwあたり、CO2の排出量は0.44kg、
ガス燃料消費1m3あたり、CO2の排出量は2.11kg、
工業用水1m3あたり、CO2の排出量は0.11kg、
材料消費1kgあたり、CO2の排出量は1〜2kg
などとされている。
【0059】
まず、収集運搬,製品加工を含む再資源化処理ごとのCO2発生量の計算について説明する。収集運搬におけるCO2発生量の計算法としては、
1.車両走行距離、走行重量からCO2トン排出量を算出する方法、
2.車両使用燃料からCO2排出量を計算する方法
が考えられるが、実施例では、廃棄物運搬ファイル13aに「収集運搬距離」のデータがあるので、前記1.の方法を用いている。もちろん廃棄物運搬ファイル13aに「車両使用燃料」の項目を設けて前記2.の方法を用いてもよい。
【0060】
計算は各施設からデータが送られてきた時点で行い、計算結果をCO2排出量ファイル16aの排出工程のうち、収集運搬の行の「CO2発生量」に記録し、1ヶ月経過時に1ヶ月分の累積値を求め,または1年経過時に1年分の累積値を求め、これをCO2排出量ファイル16aの収集運搬の行の「累積値」に記録する。
【0061】
処理,製品加工におけるCO2発生量の計算法としては、
1.センサでCO2濃度を常時検出(積分値)する。
2.使用材料、燃料、電力とからCO2排出量を計算する。
といった方法がある。実施例では、処理,再資源化(プラント運転)情報ファイル15aに「使用材料」,「使用燃料」,「使用電力」のデータがあるので、前記2.の方法を用いている。あるいは環境監視システムが常時検出しているCO2濃度をデータとして総合情報管理センター7に提供し、前記1.の方法を用いてもよい。
【0062】
例えば、電力を生産した場合のCO2排出量は、kWhあたりで、材料(kg),補助燃料m3,用水m3,使用電力kWhの量をCO2(Kg)に換算し、換算したものを合計して算出される。また、建材,金属を生産した場合のCO2排出量は、Kgあたりで、同様に材料(kg),補助燃料m3,用水m3,使用電力kWhの量をCO2(Kg)に換算し、換算したものを合計して算出される。飼料,エタノール,アンモニア,リンを生産した場合のCO2排出量は、kWhあたりで材料(kg),補助燃料m3,用水m3,使用電力kWhの量をCO2(Kg)に換算し、換算したものを合計して算出される。その算出方法は、工程ごとに使用材料や使用エネルギーが違うだけで基本的に方法は同じである。
【0063】
計算は各施設からデータが送られてきた時点で行い、計算結果をCO2排出量ファイル16aの排出工程のうち、処理あるいは製品加工の行の「CO2発生量」に記録し、1ヶ月経過時に1ヶ月分の排出工程ごとの累積値を求め、または1年経過時に1年分の排出工程ごとの累積値を求め、これをCO2排出量ファイル16aの処理あるいは製品加工の行の「累積値」に記録する。
【0064】
また、ここでは、廃棄物の種類ごとに、それらが経由する各工程中から発生するCO2排出量を積算する。
計算は各施設からデータが送られてきた時点で行い、計算結果のデータを情報提供,情報通知ファイル16bの「CO2発生量」に記録し、1ヶ月経過時に1ヶ月分の廃棄物の種類ごとの積算値を求め,または1年経過時に1年分の廃棄物の種類ごとの積算値を求め、これを情報提供,情報通知ファイル16bの廃棄物の種類ごとの「積算値」に記録する。
【0065】
(16)ステップ16 CO2排出量を予測
総合情報管理センター7のパソコン16はCO2の排出量概算プログラムを有しており、このプログラムを使って、排出工程ごとまたは廃棄物の種類ごとのCO2排出量の予測値を算出する。
【0066】
排出量は実際に発生したCO2排出量のデータから、次にどのくらいのCO2が排出するかを算定する。算定の手段としては統計的予測手法を用いる。排出工程ごとのCO2排出予測値はCO2排出量ファイル16aの「年間予測値」に記録され、廃棄物ごとのCO2排出予測値は情報提供,情報通知ファイル16bの「年間予測値」に記録される。図3の例では、CO2排出量ファイル16a,情報提供,情報通知ファイル16b内の予測の項目は「年間予測値」となっているが、もちろん「月間予測値」などの項目を設けても良い。目標値はいわば「全体目標値」であり、「全体目標値」に対応したものは、「全体予測値」であり、これは各工程ごとのCO2排出予測値を累積、集計したものである。
【0067】
(17)ステップ17 CO2排出量ファイルデータ作成
総合情報管理センター7は、各施設から送信されたデータをもとに、(CO2)の排出工程,「燃料」,「電力使用量」,CO2排出の「年月日」を総合情報管理センターのCO2排出量ファイル16aに記録する。
【0068】
(18)ステップ18 情報提供,情報通知ファイルデータ作成
総合情報管理センター7は、各施設から送信されたデータと作成されたCO2排出量ファイル16aのデータをもとに、廃棄物の種類ごとの、「廃棄物の種類」,CO2排出の「年月日」,「CO2排出量」を情報提供,情報通知ファイル16bに記録する。また、「排出抑制の必要性」を情報提供,情報通知ファイル16bに記録する。情報提供,情報通知ファイル16bのデータはホームページを通じて地域住人11に公開される。
【0069】
(19)ステップ19,20 情報公開
総合情報管理センター7は、算出された実績CO2排出量と目標値とを比較し、算出された実績CO2排出量が、予め定めた目標値の許容範囲を超えた場合には、「超過」を指示する。一方、算出された実績CO2排出量が目標値以下になった場合は、「正常」を指示する。
【0070】
(20)ステップ21 ごみ種ごとの排出抑制を排出者へ通知
「超過」が指示された場合において、総合情報管理センター7は、指針情報として、情報提供,情報通知ファイル16bの「排出抑制の必要性」と各排出要素(廃棄物の種類ごと、処理工程ごと)に落とし込んだ目標値をインターネットのホームページで地域住人11に通知する。「正常」が指示されたときには、地域住人11に対して「目標達成」を通知する。なお、指針情報には、地域住人にCO2発生を抑制するために必要な行動実践に必要な課金情報が含まれている。すなわち、課金情報は、地域住人が、ごみを性状別に合わせたリサイクル処理目的により分別して排出すれば、処理料金が安くなることを告示する内容を含んでいる。この実施例においては、本発明における100万人の最適化地域1に属する全地域住人に一律に適用される課金であるが、理想的には或る地域に属する地域に属する地域住人を構成する住民、事業者ごとに個別に適用されるのが理想的である。
【0071】
総合情報管理センター7は、地域住人11への情報の公開を一定間隔で行う。報告の時期になったら、ステップ15からステップ21までの処理を行う。また、1年が経過した後は、ステップ1にもどり、年間最終目標値設定の処理を行う。
【0072】
「排出抑制の必要性」の通知は、LCAの手法によって算定された自動車の走行によるCO2の排出量、電力使用によるCO2の排出量、ガス使用によるCO2の排出量などの情報とともに、目標値と指針情報とをあわせて公開し、地域住人11は、公開された指針情報を参照して自らがCO2発生の要因となる行為を自粛するなどして、CO2の排出量を減少させるよう努力し、地域住人11が一体となって「目標達成」を目指す。図2に明らかなように、実績値L2は、そのまま放置されれば、益々目標値L1を大きく上回り、目標値L1に近づけることが困難になる。
【0073】
このため、目標値(実績値含む),指針情報は、できるだけ頻繁に公開することが望ましい。目標値L1を少し上回った時点で地域住人11が努力をすれば、比較的容易に目標値L1の範囲を維持すること可能となるからである。目標値L1の範囲を達成することができれば、これが励みとなって目標値L1の範囲を維持することも可能となり、他の地域もこれに見習って、今まで国レベルの努力ではなかなか進まないCO2削減を地域の努力によって実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のシステムは地球全体の規模では困難な廃棄物の削減を、人口100万人地域をひとつの単位としたことで、削減を容易にし、これらの地域がいくつも発生し、活動を広げていくことで、地球全体規模で環境問題に取り組むための足がかりとなることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明のシステムの構成を示す図である。
【図2】CO2排出量の目標値,予測値,実績値との関係を示す図である。
【図3】各ファイルの詳細を示す図である。
【図4】本発明のシステムの流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
1 100万人の最適化地域
2 中継基地
3a〜3e トラック
4 貨物駅
5 鉄道
6 ストックヤード
7 総合情報管理センター
8 複合処理施設
9 環境監視システム
10 製品倉庫
11 地域住人
M 再資源化物
12 中継基地のパソコン
12a 廃棄物排出ファイル
13 貨物駅のパソコン
13a 廃棄物運搬ファイル
14 ストックヤードのパソコン
14a 廃棄物受入ファイル
15 各複合処理施設のパソコン
15a 処理、再資源化(プラント運転)情報ファイル
16 総合情報管理センターのパソコン
16a CO2排出量ファイル
16b 情報提供、情報通知ファイル
17 製品倉庫のパソコン
17a 製品販売情報ファイル
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定の地域内で発生するCO2排出量を管理する地域の複合リサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
今まで大量生産・大量消費に支えられて肥大化しつづける現代の産業は、製品を製造する過程からすでに大量に発生し、そして、生産された使い捨て製品を始めとして市場に出荷されたすべての製品はいずれ廃棄物として放出される。廃棄物は、不用品としての大量の「ごみ」であるが、廃棄物の処理は、単なる量の問題に止まらず、処理に伴う有害物質の発生という質の問題を解決しなければならない。
【0003】
かつて、一般家庭から排出されるごみ、いわゆる一般廃棄物の年間排出量は全国で5000万トンを超え、このうち焼却処分になるものが75%、資源化されるものが約10%、直接埋め立てられるものが約15%であったといわれていた(1999年NEDO調べ)。焼却処理によるときには廃棄物の減量化,無害化,無臭化のほか発電や熱利用によるエネルギー回収といった長所がある反面、ダイオキシン,塩化水素などの有害物質の発生,処理コストの増大,資源の浪費に止まらず、CO2の発生に伴う酸性雨,地球温暖化,オゾン層の破壊など、地球的規模で進行する環境汚染が深刻な問題になっているのは周知のとおりである。
【0004】
大気中のCO2の量は、18世紀の半ばには275ppm(容量ppm)であったものが、200年にわたって増加の一途をたどり、現在では350ppmをはるかに越えているといわれている。廃棄物処理に関しては地域の取り組みが重要であり、廃棄物処理施設の建設地候補の立案、地域ゼロエミッションを目指した廃棄物のリサイクル率の向上およびその管理費用の削減、廃棄物をリサイクルするシステムに関し、需要家に再生物を安定して供給できるように廃棄物リサイクル計画を支援するシステムの構築などの提案がある。
【0005】
このような提案から、更に一歩を進めて循環型社会を目指すために所定の地域内において、種々の排出物などの処理を行う環境関連施設群を統合的に管理することにより、ゼロエミッションすなわち廃棄物ゼロ状態を実現するコントロールシステムについての提案も見られる。
【0006】
しかしながら、これらの提案は、いずれも、基本的には、地域に発生した廃棄物をどのように収集し、管理するかの提案にとどまるものである。今求められているのは、発生した廃棄物をどのように収集し、管理するかという問題の解決ではなく、地域に発生する廃棄物を最大限資源化利用することで実質の廃棄物の量を減らすことで、CO2の発生を減らして地球温暖化の危機から救うという観点からの構想である。
【0007】
かつて、地球温暖化を防ぐために日常生活の中で行える対策を皆で誓い合い、互いには励ましあって進めていこうという運動「エコライフ100万人の誓い(環境庁主催)」が行われた。この運動に見られるように、CO2排出量は、日常生活や営利活動の中で住民の一人ひとりが、ささやかな自制や節約を継続することによってある程度の効果を期待できるのであるが、何の指針もなく、自らの意思で自制や節約の行為を自主的に継続するのは実は難しいことであり、地域の全体がCO2の排出量を抑えるための何らかの指針を与え続けるようなシステムの構築がなによりも大切である。
【0008】
上記「エコライフ100万人の誓い」の運動は、平成9年をもって終了したが、地球温暖化を防ぐための運動は、 期限を設けて何時までに終了でよいという問題ではなく、これから先、地球上に人類が存続する限り継続しなければならない問題である。
【0009】
なお、「エコライフ100万人の誓い」の運動における「100万人」の意味は、できるだけ多くの人たちに参加を呼びかける意味が込められていたが、図らずも「100」万人は、生産,消費を含めたひとつの経済圏を形成する地域の最小単位として適当な数でもある。
【0010】
ちなみに現在100万人都市は、新静岡市,北九州市,仙台市,さいたま市などの規模の都市であるが、本発明にいう「100万人」は、ひとつの地域内に発生する廃棄物を資材として生産物に再生するリサイクルループを形成する単位であって、必ずしも市町村の単位を意味するものではない。
【非特許文献1】最新リサイクル技術の実際 オーム社 1993
【特許文献1】特開2004−78980
【特許文献2】特開2004−1991
【特許文献3】特開平5−342224号
【特許文献4】WO2002/039338
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする問題点は、日常生活に止まらず、産業界を含めて地域の全体に対して地球温暖化の原因であるCO2排出量を減らすための明確な指針を示すシステムがなかった点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、システムを構成する1地域の単位として、例えば人口100万人地域(Million Recycling Region)をひとつの単位とし、地域内に発生する廃棄物を資源として再生するリサイクルループを形成し、地域内に居住する住民および地域内でオフィス,工場などの事業所を営む事業者(以下地域住人と略称する)が、生活や業務の中で排出する廃棄物の収集運搬から廃棄物処理およびリサイクル加工に至るまでに発生するCO2排出量を検出あるいは演算し、地域住人の発したCO2排出総量をもとに算出された予測値,目標値のデータを地域住人にCO2発生を抑制するために必要な行動実践に必要な指針情報として提供することを主な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシステムは、地域住人から排出された廃棄物の収集,運搬から、その廃棄物を資源として生産されるリサイクル製品の製品化までの間に発生するCO2排出量を、収集運搬,処理,再生資源化,製品加工の排出工程における各段階で検出あるいは算出するため、CO2排出量が増大する原因を特定しやすく、また一定時期ごとにCO2排出量を含めたデータを指針情報として具体的な数値によって公開するため、地域住人に対する地球温暖化防止の意識を高め、CO2発生を抑制するために必要な行動を自主的に実践させやすくなり、ひいては地域内に排出されるCO2排出総量を目標値に治めて地球温暖化防止に大きく寄与できる。
【0014】
また、国レベルではなかなか進まないCO2排出削減の実現に際しては、まず人口100万人地域をモデル地域として一箇所に作り、その地域をさらに隣接地域に次々に広め、複数の人口100万人地域が相互に連携を図ることによって、目標の達成が容易となり、ひいては日本全体から世界に向けて地球温暖化防止運動の和を広げてゆくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、地域内に発生するCO2排出総量を抑制するという目的を、地域内に設定した総合情報管理センターにおいて、地域内に発生した廃棄物を収集運搬する処理、収集された廃棄物を処理して電力,ガス,金属,建材,飼料,肥料などの製品に再生する複合処理を含むシステム全体から排出されるCO2排出量を計算し、その計算結果から将来発生するCO2排出量を予測し、これらのデータを廃棄物減量、CO2排出抑制の努力目標の指針として、廃棄物の排出者である地域住人に情報公開することによって実現した。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明による地域の複合リサイクルシステムを適応する1地域のモデルの概要を示す図である。このモデルでは、100万人の最適化地域1を想定し、その地域内の施設の構成を示している。図1において、本発明によるシステムは、中継基地2と、貨物駅4と、ストックヤード6と、複合処理施設8と、製品倉庫10と、総合情報管理センター7とを主要な施設として構成されている。
【0017】
中継基地2は地域住人11から出される廃棄物(ごみ)を分別収集する施設、貨物駅4は各中継基地2からトラック輸送されてきた廃棄物を集積する施設、ストックヤード6は貨物駅4から鉄道5で輸送されてきた廃棄物を一時的に保管する施設、複合処理施設8は、ストックヤード6の廃棄物を用途ごとに分別して用途ごとの処理施設に搬送する施設である。
【0018】
複合処理施設8は、パワーセンター8a,有機物資源化センター8b,クリーン化処理センター8cの各センターで構成されている。パワーセンター8aは、回収した廃棄物を主として電力エネルギーとして再生させる処理を行う施設であり、有機物資源化センター8bは回収した廃棄物をメタンやメタノールとして再生し、或いは肥料化に必要な処理をして、資源に加工する施設であり、クリーン化処理センター8cは、回収した廃棄物を主として金属材料,建材,化学薬品,ガスなどの資源に再生させる処理を行う施設である。
【0019】
図1には、これらの処理物が最終的に再資源化物(製品)Mとして製品倉庫10に格納されている状態を示している。総合情報管理センター7は、これら各中継基地2,2…,各貨物駅4,4…,ストックヤード6,複合処理施設8,製品倉庫10の各施設の情報を管理するための施設であり、これらの施設は、コンピュータネットワークを形成するために、インターネットを経由して接続され、各施設からの情報収集とともに収集した情報を加工し、CO2排出量規制に必要な指針情報を、インターネットを通じて地域住人11に向けて提供する機能を有している。
【0020】
なお、本発明のシステムは、上記施設とは別に環境監視センター9が設置されている。環境監視センター9は、主として複合処理施設8における処理が適正かどうかを監視するとともに複合処理施設8で行われる再資源化の処理内容を管理し、複合処理施設8で行われる処理の内容,管理の内容,各センターの周辺環境モニタリング監視する内容に関する情報を、インターネットを通じて地域住人11に提供する施設である。地域住人11から排出される廃棄物を再生利用するシステムの構築には、再生処理に必要な廃棄物の一定量の確保が必要であり、また、可能な限りトラック輸送によらずに廃棄物を一箇所に集めて複合処理並びにこれに続く再資源化処理を行うには、少なくとも上記施設が機能的に運用できることが必要である。このような理由から本発明のシステムを実現するには、人口約100万人を1単位として構築するのが適正であると考えられるのである。
【0021】
図1において、地域住人が排出した廃棄物は、可能ならばこの段階で、少なくとも、可燃ごみ,有機資源ごみ,不燃ごみに分別されていることが望ましい。いずれにしても、地域住人11が排出した廃棄物は、中継基地2に集められ、中継基地2からトラック(パッカー車)3a〜3eにより、最寄りの貨物駅4に運びこまれる。各貨物駅4,4に運び込まれた廃棄物は、鉄道5によって、ストックヤード6に集められる。ストックヤード6に集められた廃棄物は、廃棄物の種類ごとに分別されて、複合処理施設8に送りこまれ、複合処理施設8内で廃棄物の種類に応じてパワーセンター8a,有機物資源化センター8b,クリーン化処理センター8cに振り分けられ、それぞれのセンターで処理されて、電力,ガス,金属材料,建材,飼料,肥料などの再資源化物Mとして再生され、これらの再資源化物Mは、原則として地域住人に有料で販売されるが、地域外に販売することも勿論出来る。
【0022】
総合情報管理センター7は、各中継基地2,2…,各貨物駅4,4…,ストックヤード6,複合処理施設8,製品倉庫10の各施設の情報を収集し、これらの情報から各施設で発生するCO2の量を計測あるいは演算し、そのデータを各施設に提供して施設の運営を管理するほか、自前のホームページを通じ、CO2排出者である地域住人11に対してCO2排出の抑制に必要な指針情報としてデータを公開する。
【0023】
上記の100万人の最適化地域1内でのCO2排出量の抑制管理を行う要領を以下に説明する。図2は、本発明におけるCO2排出量の管理の概念をモデル化したグラフである。まず、1年間に排出されるCO2排出量の年間最終目標値P2を設定する。年間最終目標値P2を設定する方法の一例としては、例えば、人口1人当たりCO2排出量をもとにして、これに各工程ごと、各廃棄物の種類ごとに一定比率をかけた値、といった設定の仕方が考えられる。
【0024】
環境白書(2002年度)によると全国のCO2排出量は約12.5億トン。これを人口1億2700万人で割ると、国民1人あたり約9.79トン/年のCO2を排出していることになる。この値から、100万人の最適化地域1では、9.79×100万人=979万トン/年のCO2を排出していることになるので、これを年間最終目標値の一応の目安とする。
【0025】
とはいえ、本発明にいう100万人の最適化地域1は自給自足の外界から閉じられた地域ではなく、地域内で発生した廃棄物を資源として再生使用するだけで生活しているわけではない。地域外から供給される資材の運搬や加工に伴ってCO2が発生し、また他の地域からの影響を受けるので上記数値をそのまま目標値にはできない。当然、本システムが寄与できるレベル(過去に実績から推定)に一定の削減目標を掲げ定数をかけて上記数値を下げた値を目標値にするべきである。これら100万人の最適地域における削減目標値とは、地域における特性(自給自足内容ならびに率の違い)によって違ってくるが、個々の100万人の最適地域が互いに協力し合うことで、更なる最適(自給自足内容ならびに率のアップ)な地域、ひいては最適な地球をめざすことができるものである。
【0026】
次に、本発明では、CO2排出量を常に管理するために、経過日時ごとの目標値を設定する。目標開始時点P1と年間最終目標値P2を線で結び、目標値L1上の数値を経過日時ごとの目標値とする。実績値L2は実際のCO2排出量であり、目標値L1と比較するためのものであり、実績値L2のデータは、目標値L1と共に指針情報として廃棄物情報センター7のホームページに公開して地域住人11に提供する。目標値L1との差が大きい場合には地域住人に、廃棄物の減容を促す。予測値L3はCO2排出量の予測値であり、発生した実績値L2のデータをもとに統計的手法を用いて予測値を算出するものである。
【0027】
次に、上記の管理を行うためのデータについて説明する。
図3は、100万人の最適化地域1で本発明のシステムを実現するためのファイルの構成図である。以下の説明において「 」内はファイルを構成する項目名である。
【0028】
廃棄物排出ファイル12aは、排出者から排出された廃棄物の情報を記録するものであり、「廃棄物の種類」,「量(kg)」,廃棄物の発生「年月日」の項目で構成される。この情報は各中継基地2,2…のパソコン12に記録される。
【0029】
廃棄物運搬ファイル13aは、廃棄物の収集,運搬情報を記録するものである。「廃棄物の種類」,「量(kg)」,廃棄物の発生「年月日」の項目は廃棄物排出ファイル12aと同じであるが、廃棄物運搬ファイル13aでは、これらに加えて、「収集運搬距離」の項目を有するものである。この情報は各貨物駅4,4…のパソコン13に記録される。なお、廃棄物の運搬に鉄道が利用されないときには、中継基地2あるいは、ストックヤード6などにおいて廃棄物運搬ファイル13aを管理する。
【0030】
廃棄物受入ファイル14aは、処理場へ運ばれた際の廃棄物の受入状態を記録するものである。「廃棄物の種類」,「量(kg)」,「処理料金」,廃棄物の受入「年月日」の項目で構成される。この情報はストックヤード6のパソコン14に記録される。
【0031】
処理、再資源化(プラント運転)情報ファイル15aは、廃棄物の処理状況を記録するものであり、「原料(廃棄物)の種類」,「量(kg)」,「使用材料」,「使用燃料」,「使用電力」,「再資源化生産量」,資源化された「年月日」の項目で構成される。この情報は複合処理施設8のパソコン15に記録される。パソコン15はパワーセンター8a,有機物資源化センター8b,クリーン化処理センター8cらが各自所有しており、各自の施設ごとに情報が記録される。
【0032】
CO2排出量ファイル16aは、CO2の排出量の情報を記録するものであり、CO2の「排出工程」,「燃料」、「電力使用量」,CO2排出の「年月日」,「CO2発生量」,「累積値」,排出工程ごとの「年間予測値」の項目で構成される。この情報は、総合情報管理センター7のパソコン16に記録される。
【0033】
各貨物駅4,4…が記録した廃棄物排出ファイル12a,廃棄物運搬ファイル13a,ストックヤード6が記録した廃棄物受入ファイル14a,複合処理施設8の各施設8a〜8cが記録した処理,再資源化(プラント運転)情報ファイル15aのデータは更新されるごとにインターネット或いは専用回線などのネットワークを通じてサーバーである総合情報管理センター7のパソコン16に送信され、総合情報管理センター7のパソコン16に記録される。
【0034】
製品販売情報ファイル17aは、製造された製品の販売の情報を記録するものであり、「製品の種類」,「注文量」,「販売量」,製品が出荷された「年月日」の項目で構成される。この情報は製品倉庫10のパソコン17に記録される。
【0035】
情報提供,情報通知ファイル16bは、地域住人11への情報公開のためのデータを記録するものであり、「廃棄物の種類」,CO2発生「年月日」,「CO2排出量」,「CO2発生量」,「積算値」,廃棄物の種類ごとの「年間目標値」,「年間予測値」,「排出抑制の必要性」の項目で構成される。
ここで使われる「年間目標値」については、図2の例で、地域全体で発生するCO2発生量の全体目標値を設定し、これに廃棄物の種類ごとの一定比率を掛け、廃棄物の種類ごとの目標値として、あらかじめブレークダウンしておく(実績値が全体目標値が超過した場合には、このブレークダウンした目標値を用いる)。この情報は、総合情報管理センター7のパソコン16に記録される。
【0036】
総合情報管理センター7,各中継基地2,2…,各貨物駅4,4…,ストックヤード6,複合処理施設8,製品倉庫10らのパソコンは、主制御部(CPU),記憶装置,入出力制御部,表示装置(モニタ),入力装置(キーボード,マウス),出力装置(プリンタ)で構成される。これらのコンピュータの構成については、一般的なものを用いるため図示を省略する。
【0037】
図4は本発明のリサイクルシステムの流れを示すフローチャートである。以下に図に沿って詳細を説明する。同時に図1の各施設と図3の各ファイルとの関係をあわせて説明する。
【0038】
(1)ステップ1 年間最終目標値設定
まず、総合情報管理センター7は、CO2排出量の年間最終目標値を設定する。なお、目標値の設定の仕方については、先にその例を示した(段落0023参照)。目標値は収集運搬,廃棄物処理,再資源化,製品加工等の各処理ごとに設定し、設定した値を情報提供,情報通知ファイル16bの「年間目標値」の項目に入れる。「排出工程」の項目である、収集運搬はトラックの運搬で発生するCO2排出量であり、処理は、複合処理施設8で、廃棄物を処理する際、発生するCO2排出量であり、再資源化は、複合処理施設8で、再資源化物(素材)を生成するときに発生するCO2排出量であり、製品加工は、再資源化物(素材)をさらに具体的な商品に製品化するまでに発生するCO2排出量である。
【0039】
(2)ステップ2 廃棄物の排出
次に、廃棄物の排出者である地域住人11から最寄の中継基地2に廃棄物が排出される。
(3)ステップ3 廃棄物排出ファイルデータ作成
各中継基地2は排出された廃棄物の情報を、廃棄物排出ファイル12aに記録する。廃棄物排出ファイル12aの「廃棄物の種類」には、排出者から廃棄物が排出された時点では、資源ごみ,可燃ごみ,不燃ごみ,粗大ごみといったおおまかな分け方であるため、本発明のシステムで有効に利用するためにさらに,a:非分別ごみ,b:リサイクルごみ,c:発電ごみ,d:有機資源ごみ,e:不燃ごみのように分別する。排出の順序により、上記a〜eに入る項目は入れ替わる場合もある。
【0040】
上記のごみのうち、既存業界におけるリサイクルが困難なもので、かつ完全に処理可能な廃棄物のなかで、熱量の高いもの、例えば、有害物質を含まない高カロリーの紙屑,木屑,廃油,廃プラ及びペットボトルなどは、発電ごみとして分けることができる。動植物性残渣や厨芥ごみなどの有機性に富む廃棄物は、有機資材ごみとして分けることができる。また、有機資材ごみはさらにメタン発酵,飼料化ごみ,資源化ごみに分けることができる。不燃ごみは、金属材料,建材などの製品に再生される。
【0041】
(4)ステップ4 廃棄物の収集,運搬
トラック3a〜3eは各中継基地2から廃棄物を収集し、貨物駅4へ運搬を行う。発電ごみの運搬はトラック3a,有機資材ごみの運搬はトラック3bが担当するというように、廃棄物を運搬する際には廃棄物の種類に応じてトラックが選択される。
【0042】
(5)ステップ5 廃棄物運搬ファイルデータ作成
貨物駅4は廃棄物運搬ファイル13aにトラック3a〜3eから運び込まれた廃棄物の情報を記録する。例えば、トラック3aが平成17年12月3日に20kmの距離を走行して、発電ごみ50kgを運びこんできた場合に記録される情報は、「廃棄物の種類」は”発電ごみ”であり、「量(kg)」は”50kg”であり、「収集運搬距離」は”20km”であり、廃棄物の発生「年月日」は”2005年12月3日”である。
【0043】
(6)ステップ6 廃棄物の受け入れ
貨物駅4に運び込まれた各廃棄物は、それぞれ鉄道(コンテナ)5に積み込む際にパッカー車3で運ばれた同じ種類のごみ同士がまとめられ、鉄道(コンテナ)5でストックヤード6へ搬送される。
【0044】
(7)ステップ7 廃棄物受入ファイルデータ作成
ストックヤード6は廃棄物受入ファイル14aに鉄道(コンテナ)5から運び込まれた廃棄物の情報を記録する。例えば、ステップ5を経て発電ごみが運ばれてきたとする。鉄道(コンテナ)5が平成17年12月4日に発電ごみ20000kgを運びこんできた場合に記録される情報は、「廃棄物の種類」は”発電ごみ”であり、「量(kg)」は”20000kg”であり、廃棄物の受入「年月日」は”2005年12月4日”である。また、廃棄物の種類と運ばれた量が廃棄物受入ファイル14aに記録された後に処理料金を算出する。
【0045】
本システムでは、廃棄物の種類ごとの処理料金を算出し、排出者(参加自治体等)に請求し、徴収する(フローチャートには図示されていない)ことで、施設に関わる運用を行うこととしている。処理料金は、収入(処理料金収入+再資源化商品の販売収入)−経費(設備費+人件費+材料費+その他経費)−積立金(事業利益)=0となるように、廃棄物の種類ごとに逆算して、算出している。100万人地域モデルの1試算によれば、発電ごみは2万5千円/トン、有機資源ごみは2万円/トン、非分別ごみは3万円/トンと算出している。
【0046】
ここで、非分別ごみ(発電ごみと有機資源ごみの混在したもの)の処理料金は発電ごみより高く設定されている。この理由は非分別ごみでは、処理したときに得られる電力効率が低下し、結果的に電力の売電収入が減るためである。(実際、可燃ごみと水分の多い生ごみを分別されていない非分別ごみは、発電効率が発電ゴミの約半分(例:30%→15%)にまで低下してしまい、CO2の排出量も多くなってしまう。
【0047】
再資源化に重要な点は、ごみは、分別せずに出せば、焼却、または埋め立てに回るだけの単なるごみだが、可燃ごみ(発電ごみ)、有機ごみ、資源ごみなどに分別して出されれば、資源として有効に活用できる。従って、分別されていないごみ(生ゴミと、紙やプラスチックなどが混ざったもの)は処理料金が高く設定して、分別されたごみとの処理料金面で有意差をつけることが、地域住人にCO2発生を抑制するために必要な行動実践に必要な指針を与えることになる。地域住人よる廃棄物の分別の積極的な実践により、100万人地域のごみの分別排出が促進され、焼却されるごみの量が減り、再資源化(ごみ発電やメタン発酵などで)が促進され、結果として100万人地域全体のCO2排出削減が達成できる。
【0048】
実現する手法としては、ごみを収集するときに、非分別ごみ、分別ごみに分けて収集し、それらの重量を計って、ごみ種ごとの処理単価をかけて、排出元に料金請求する。従って、分別されていないごみ(生ごみと、紙やプラスチックなどが混ざったようなもの)は処理料金が高く設定されることになり、その負担を回避するために自ずから分別排出が促進され、焼却されるごみの減量にも寄与する。分別を十分に行うことができなければ、それ相応の負担を負うのが受益者負担の理にかなっている。
【0049】
収集するときに、非分別ごみ,分別ごみとを識別する方法としては、目視によるか、ポータブル赤外線センサを当てて有機物(生ごみ)の量や比率を測定して識別する方法などが考えられる。
【0050】
廃棄物は、種類に応じて別の処理場に送られる。
(8)ステップ8 焼却処理
非分別ごみは資源化できないので、焼却せざるを得ず、焼却して発電したとしても、発電効率が悪いためCO2排出が増える。ちなみに発電効率として分別された発電ごみは効率約30%に対し、非分別ごみは発電効率15%以下である。
よって、非分別ごみは複合処理施設8に送られ、焼却処理される。
【0051】
(9)ステップ9 リサイクルルートへ
リサイクルごみは空き缶,空きびん,新聞紙であり、通常のリサイクルルート(図示していない既存の流通ルート)へ送られる。
【0052】
(10)ステップ10 粗大ごみは解体分別
粗大ごみは解体され、解体された各ごみはその種類に応じて分別される。
【0053】
(11)ステップ11 電力化,製品化
発電ごみ,有機資源ごみ,不燃ごみは複合処理施設8の各施設8a〜8cで処理,加工された後、発電ごみは電力に(売電可能)、有機資源ごみは、飼料,エタノール,アンモニア,リンに、不燃ごみは、金属,建材などに製品化される。
【0054】
(12)ステップ12 処理,再資源化情報ファイルデータ作成
各処理場8a〜8cは処理,再資源化(プラント運転)情報ファイル15aに廃棄物の処理情報を記録する。例えば、ステップ5,7を経た発電ごみ20000kgが平成17年12月5日にパワーセンター8aで処理されるものとする。このとき処理,再資源化(プラント運転)情報ファイル15aに記録される情報は、「廃棄物の種類」は”発電ごみ”であり、「量(kg)」は”20000kg”であり、「年月日」は”2005年12月5日”である。また、廃棄物処理に用いた「使用材料」は例えば ”苛性ソーダ500kg”,「使用燃料」は ”天然ガス3Nm3”,「使用電力」は ”2700kWh”,「再資源化生産量」は ”1000kg”などを記録する。
【0055】
(13)ステップ13 販売
各センターで生産された製品のうち、電力は電力会社に売られ、他の製品は製品倉庫に保管され、注文主の要求に応じて出荷される。
【0056】
(14)ステップ14 製品販売情報ファイルデータ作成
製品工場10は注文主から製品の注文を受け付けた時点で、注文を受けた「製品の種類」,「注文量」を製品販売情報ファイル17aに記録する。製品工場10に製品の在庫があれば即座に製品の出荷を行い、「販売量」,出荷の「年月日」を製品販売情報ファイル17aに記録する。
【0057】
(15)ステップ15 CO2排出量実績を計算
総合情報管理センター7は、各施設から送信されたデータをもとに、収集運搬,処理,再資源化,製品加工ごとのCO2発生量を計算する。また、各廃棄物の種類ごと(資源ごみ,有機資材ごみ,不燃ごみ)のCO2発生量を計算する。CO2の排出量概算プログラムは、計算手法としてはLCA(ライフサイクルアセスメント)の手法、例えば(社)環境情報技術センターが提供するLGAの表に基づいて計算するほか、LCAの支援ソフトとして「LCA SUPPORT」(NECファクトリエンジニアリング社製)、「LCA SLIM」(富士通エフアイピー社製)などが市販されている。
【0058】
以下にCO2の排出量の算定基準の概要を以下に示す。
鉄道輸送トン・kmあたり、CO2の排出量は0.02kg、
自動車輸送トン・kmあたり、CO2の排出量は0.35kg、
発電1kwあたり、CO2の排出量は0.44kg、
ガス燃料消費1m3あたり、CO2の排出量は2.11kg、
工業用水1m3あたり、CO2の排出量は0.11kg、
材料消費1kgあたり、CO2の排出量は1〜2kg
などとされている。
【0059】
まず、収集運搬,製品加工を含む再資源化処理ごとのCO2発生量の計算について説明する。収集運搬におけるCO2発生量の計算法としては、
1.車両走行距離、走行重量からCO2トン排出量を算出する方法、
2.車両使用燃料からCO2排出量を計算する方法
が考えられるが、実施例では、廃棄物運搬ファイル13aに「収集運搬距離」のデータがあるので、前記1.の方法を用いている。もちろん廃棄物運搬ファイル13aに「車両使用燃料」の項目を設けて前記2.の方法を用いてもよい。
【0060】
計算は各施設からデータが送られてきた時点で行い、計算結果をCO2排出量ファイル16aの排出工程のうち、収集運搬の行の「CO2発生量」に記録し、1ヶ月経過時に1ヶ月分の累積値を求め,または1年経過時に1年分の累積値を求め、これをCO2排出量ファイル16aの収集運搬の行の「累積値」に記録する。
【0061】
処理,製品加工におけるCO2発生量の計算法としては、
1.センサでCO2濃度を常時検出(積分値)する。
2.使用材料、燃料、電力とからCO2排出量を計算する。
といった方法がある。実施例では、処理,再資源化(プラント運転)情報ファイル15aに「使用材料」,「使用燃料」,「使用電力」のデータがあるので、前記2.の方法を用いている。あるいは環境監視システムが常時検出しているCO2濃度をデータとして総合情報管理センター7に提供し、前記1.の方法を用いてもよい。
【0062】
例えば、電力を生産した場合のCO2排出量は、kWhあたりで、材料(kg),補助燃料m3,用水m3,使用電力kWhの量をCO2(Kg)に換算し、換算したものを合計して算出される。また、建材,金属を生産した場合のCO2排出量は、Kgあたりで、同様に材料(kg),補助燃料m3,用水m3,使用電力kWhの量をCO2(Kg)に換算し、換算したものを合計して算出される。飼料,エタノール,アンモニア,リンを生産した場合のCO2排出量は、kWhあたりで材料(kg),補助燃料m3,用水m3,使用電力kWhの量をCO2(Kg)に換算し、換算したものを合計して算出される。その算出方法は、工程ごとに使用材料や使用エネルギーが違うだけで基本的に方法は同じである。
【0063】
計算は各施設からデータが送られてきた時点で行い、計算結果をCO2排出量ファイル16aの排出工程のうち、処理あるいは製品加工の行の「CO2発生量」に記録し、1ヶ月経過時に1ヶ月分の排出工程ごとの累積値を求め、または1年経過時に1年分の排出工程ごとの累積値を求め、これをCO2排出量ファイル16aの処理あるいは製品加工の行の「累積値」に記録する。
【0064】
また、ここでは、廃棄物の種類ごとに、それらが経由する各工程中から発生するCO2排出量を積算する。
計算は各施設からデータが送られてきた時点で行い、計算結果のデータを情報提供,情報通知ファイル16bの「CO2発生量」に記録し、1ヶ月経過時に1ヶ月分の廃棄物の種類ごとの積算値を求め,または1年経過時に1年分の廃棄物の種類ごとの積算値を求め、これを情報提供,情報通知ファイル16bの廃棄物の種類ごとの「積算値」に記録する。
【0065】
(16)ステップ16 CO2排出量を予測
総合情報管理センター7のパソコン16はCO2の排出量概算プログラムを有しており、このプログラムを使って、排出工程ごとまたは廃棄物の種類ごとのCO2排出量の予測値を算出する。
【0066】
排出量は実際に発生したCO2排出量のデータから、次にどのくらいのCO2が排出するかを算定する。算定の手段としては統計的予測手法を用いる。排出工程ごとのCO2排出予測値はCO2排出量ファイル16aの「年間予測値」に記録され、廃棄物ごとのCO2排出予測値は情報提供,情報通知ファイル16bの「年間予測値」に記録される。図3の例では、CO2排出量ファイル16a,情報提供,情報通知ファイル16b内の予測の項目は「年間予測値」となっているが、もちろん「月間予測値」などの項目を設けても良い。目標値はいわば「全体目標値」であり、「全体目標値」に対応したものは、「全体予測値」であり、これは各工程ごとのCO2排出予測値を累積、集計したものである。
【0067】
(17)ステップ17 CO2排出量ファイルデータ作成
総合情報管理センター7は、各施設から送信されたデータをもとに、(CO2)の排出工程,「燃料」,「電力使用量」,CO2排出の「年月日」を総合情報管理センターのCO2排出量ファイル16aに記録する。
【0068】
(18)ステップ18 情報提供,情報通知ファイルデータ作成
総合情報管理センター7は、各施設から送信されたデータと作成されたCO2排出量ファイル16aのデータをもとに、廃棄物の種類ごとの、「廃棄物の種類」,CO2排出の「年月日」,「CO2排出量」を情報提供,情報通知ファイル16bに記録する。また、「排出抑制の必要性」を情報提供,情報通知ファイル16bに記録する。情報提供,情報通知ファイル16bのデータはホームページを通じて地域住人11に公開される。
【0069】
(19)ステップ19,20 情報公開
総合情報管理センター7は、算出された実績CO2排出量と目標値とを比較し、算出された実績CO2排出量が、予め定めた目標値の許容範囲を超えた場合には、「超過」を指示する。一方、算出された実績CO2排出量が目標値以下になった場合は、「正常」を指示する。
【0070】
(20)ステップ21 ごみ種ごとの排出抑制を排出者へ通知
「超過」が指示された場合において、総合情報管理センター7は、指針情報として、情報提供,情報通知ファイル16bの「排出抑制の必要性」と各排出要素(廃棄物の種類ごと、処理工程ごと)に落とし込んだ目標値をインターネットのホームページで地域住人11に通知する。「正常」が指示されたときには、地域住人11に対して「目標達成」を通知する。なお、指針情報には、地域住人にCO2発生を抑制するために必要な行動実践に必要な課金情報が含まれている。すなわち、課金情報は、地域住人が、ごみを性状別に合わせたリサイクル処理目的により分別して排出すれば、処理料金が安くなることを告示する内容を含んでいる。この実施例においては、本発明における100万人の最適化地域1に属する全地域住人に一律に適用される課金であるが、理想的には或る地域に属する地域に属する地域住人を構成する住民、事業者ごとに個別に適用されるのが理想的である。
【0071】
総合情報管理センター7は、地域住人11への情報の公開を一定間隔で行う。報告の時期になったら、ステップ15からステップ21までの処理を行う。また、1年が経過した後は、ステップ1にもどり、年間最終目標値設定の処理を行う。
【0072】
「排出抑制の必要性」の通知は、LCAの手法によって算定された自動車の走行によるCO2の排出量、電力使用によるCO2の排出量、ガス使用によるCO2の排出量などの情報とともに、目標値と指針情報とをあわせて公開し、地域住人11は、公開された指針情報を参照して自らがCO2発生の要因となる行為を自粛するなどして、CO2の排出量を減少させるよう努力し、地域住人11が一体となって「目標達成」を目指す。図2に明らかなように、実績値L2は、そのまま放置されれば、益々目標値L1を大きく上回り、目標値L1に近づけることが困難になる。
【0073】
このため、目標値(実績値含む),指針情報は、できるだけ頻繁に公開することが望ましい。目標値L1を少し上回った時点で地域住人11が努力をすれば、比較的容易に目標値L1の範囲を維持すること可能となるからである。目標値L1の範囲を達成することができれば、これが励みとなって目標値L1の範囲を維持することも可能となり、他の地域もこれに見習って、今まで国レベルの努力ではなかなか進まないCO2削減を地域の努力によって実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のシステムは地球全体の規模では困難な廃棄物の削減を、人口100万人地域をひとつの単位としたことで、削減を容易にし、これらの地域がいくつも発生し、活動を広げていくことで、地球全体規模で環境問題に取り組むための足がかりとなることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明のシステムの構成を示す図である。
【図2】CO2排出量の目標値,予測値,実績値との関係を示す図である。
【図3】各ファイルの詳細を示す図である。
【図4】本発明のシステムの流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
1 100万人の最適化地域
2 中継基地
3a〜3e トラック
4 貨物駅
5 鉄道
6 ストックヤード
7 総合情報管理センター
8 複合処理施設
9 環境監視システム
10 製品倉庫
11 地域住人
M 再資源化物
12 中継基地のパソコン
12a 廃棄物排出ファイル
13 貨物駅のパソコン
13a 廃棄物運搬ファイル
14 ストックヤードのパソコン
14a 廃棄物受入ファイル
15 各複合処理施設のパソコン
15a 処理、再資源化(プラント運転)情報ファイル
16 総合情報管理センターのパソコン
16a CO2排出量ファイル
16b 情報提供、情報通知ファイル
17 製品倉庫のパソコン
17a 製品販売情報ファイル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムを構成する地域内において発生する廃棄物を資源として再生するリサイクルループを形成し、事業所や一般家庭などの地域住人が出す廃棄物の収集運搬から廃棄物処理および廃棄物のリサイクル加工に至るまでに発生するCO2排出量を検出あるいは演算をし、地域住人の行動に起因して発生したCO2の排出総量、CO2の排出総量をもとに算出された予測値、目標値のデータを、コンピュータネットワークを通じて地域住人にCO2発生を抑制するために必要な行動実践に必要な指針情報として地域住人に提供することを特徴とする地域の複合リサイクルシステム。
【請求項2】
システムを構成する地域は、約100万人を1単位として形成するものであることを特徴とする請求項1に記載の地域の複合リサイクルシステム。
【請求項3】
地域内に設定した総合情報管理センターにおいて、地域内に発生した廃棄物を収集運搬する処理、収集された廃棄物を処理して電力,ガス,金属,建材,飼料,肥料などの製品に再生する複合処理を含むシステム全体から排出されるCO2排出量を計算し、その計算結果から将来発生するCO2排出量を予測し、これらのデータを廃棄物減量,CO2の排出抑制の努力目標の指針として、地域住人に情報公開することを特徴とする請求項1に記載の地域の複合リサイクルシステム。
【請求項4】
地域の複合リサイクルシステムは、少なくとも中継基地と、ストックヤードと、複合処理施設と、総合情報管理センターとを主要な施設として構成され、
中継基地は地域住人から出される廃棄物(ごみ)を分別収集し、ストックヤードに搬送する施設であり、
ストックヤードは、中継基地から搬送されてきた廃棄物を一時的に保管する施設であり、
複合処理施設は、ストックヤードの廃棄物を用途ごとに分別して用途ごとの処理施設に搬送し、廃棄物を処理、再資源化する施設であり、
総合情報管理センターは、これら各中継基地,ストックヤード,複合処理施設の各施設の情報を管理するための施設であり、
これらの施設は、コンピュータネットワークを形成するために、インターネットを経由して接続され、総合情報管理センターは、各施設からの情報収集とともに収集した情報を加工し、CO2排出量規制に必要な指針情報をインターネットを通じて地域住人に提供する機能を有することを特徴とする請求項1に記載の地域の複合リサイクルシステム。
【請求項5】
地域の複合リサイクルシステムは、主な施設としてさらに貨物駅を含み、
貨物駅は、各中継基地から用途ごとに分別されて輸送されてきた廃棄物を集積し、さらに、ストックヤードに向けて廃棄物を鉄道輸送する施設として利用されるものであることを特徴とする請求項4に記載の地域の複合リサイクルシステム。
【請求項6】
複合処理施設は、パワーセンターと、有機物資源化センターと、クリーン化処理センターとを主要なセンターとして構成され、
パワーセンターは、回収した廃棄物を主として電力エネルギーとして再生させる処理を行う施設であり、
有機物資源化センターは回収した廃棄物をメタン,メタノールとして再生し、或いは飼料・肥料化に必要な処理をして資源に加工する施設であり、
クリーン化処理センターは、回収した廃棄物を主として金属材料,建材,化学薬品,ガスなどの資源に再生させる処理を行う施設であることを特徴とする請求項4に記載の地域の複合リサイクルシステム。
【請求項7】
環境監視センターを有し、
環境監視センターは、主として複合処理施設における処理が適正かどうかを監視するとともに複合処理施設で行われる資源化処理の内容を管理し、複合処理施設での処理の内容、管理の内容に関する情報をインターネットを通じて地域住人に提供する施設であることを特徴とする請求項4に記載の地域の複合リサイクルシステム。
【請求項8】
CO2の発生量年間目標値を廃棄物の種類ごとに計算し、廃棄物の種類と計算結果を総合情報管理センターの情報提供,情報通知ファイルに記録するステップと、
地域住人から排出された廃棄物の種類,量,廃棄物の発生年月日を中継基地の廃棄物排出ファイルに記録するステップと、記録された廃棄物排出ファイルのデータをネットワークを通じて総合情報管理センターに送信するステップと、
中継基地から運びだされた廃棄物の種類,量,廃棄物の収集年月日,収集運搬距離を廃棄物運搬ファイルに記録するステップと、記録された廃棄物運搬ファイルのデータをネットワークを通じて総合情報管理センターに送信するステップと、
ストックヤードに運ばれた廃棄物の種類,量,廃棄物の受入年月日をストックヤードの廃棄物受入ファイルに記録するステップと、運ばれた廃棄物を処理するための処理料金を計算するステップと、計算で得られた処理料金をストックヤードの廃棄物受入ファイルに記録するステップと、記録された廃棄物受入ファイルのデータをネットワークを通じて総合情報管理センターに送信するステップと、
複合処理施設がストックヤードから受け取った廃棄物を処理した後、処理のために使用した、原料(廃棄物)の種類,量,使用材料,使用燃料,使用電力,再資源化のための生産量,資源化された年月日を複合処理施設の処理,再資源化(プラント運転)ファイルに記録するステップと、記録された処理,再資源化(プラント運転)ファイルのデータをネットワークを通じて総合情報管理センターに送信するステップと、
複合処理施設で生産された再資源化物を製品倉庫に保管し、再資源化物が注文主に販売されるごとに、製品の種類,注文量,販売量,製品が出荷された年月日を製品倉庫の製品販売情報ファイルに記録するステップと、記録された製品販売情報ファイルのデータをネットワークを通じて総合情報管理センターに送信するステップと、
各施設から総合情報管理センターに送信されたCO2の排出工程,燃料,電力使用量,のデータをもとに、排出工程ごとのCO2発生量を計算するステップと、算出されたCO2発生量から排出工程ごとの年間予測値を計算するステップと、計算されたCO2発生量と年間予測値を総合情報管理センターのCO2排出量ファイルに記録するステップと、各施設から送信されたデータをもとに、廃棄物の種類ごとのCO2排出の年月日,CO2排出量,年間予測値を情報提供,情報通知ファイルに記録するステップと、CO2排出状況をコメントし、排出抑制の必要性を推定、提言した情報を情報提供,情報通知ファイルに記録するステップと、
総合情報管理センターの情報提供,情報通知ファイルの各データをインターネットのホームページなどを通じて、地域の住民に公開するステップからなることを特徴とする請求項4に記載の地域の複合リサイクルシステム。
【請求項9】
中継基地から運びだされた廃棄物の種類,量,廃棄物の収集年月日,収集運搬距離を廃棄物運搬ファイルに記録するステップは、トラックの収集運搬距離を貨物駅の廃棄物運搬ファイルに記録するステップと、貨物駅から鉄道によってストックヤードに運ばれた廃棄物の種類,量,廃棄物の受入年月日をストックヤードの廃棄物受入ファイルに記録するステップとを含むものであることを特徴とする請求項8に記載の地域の複合リサイクルシステム。
【請求項10】
総合情報管理センターは、算出された実績CO2排出量と目標値とを比較し、算出された実績CO2排出量が、予め定めた目標値の許容範囲を超えた場合には、「超過」を指示し、算出された実績CO2排出量が目標値以下になった場合は、「正常」を指示し、「超過」が指示されたときには、指針情報として、「排出抑制の必要性」をインターネットのホームページに公開し、「正常」が指示されたときには、「目標達成」を公開することを特徴とする請求項3に記載の地域の複合リサイクルシステム。
【請求項11】
「排出抑制の必要性」の通知は、LCAの手法によって算定された自動車の走行によるCO2の排出量、電力使用によるCO2の排出量、ガス使用によるCO2の排出量などの情報とともに指針情報として公開されるものであることを特徴とする請求項10に記載の複合リサイクルシステム。
【請求項12】
地域住人にCO2発生を抑制するために必要な行動実践に必要な指針情報は、課金情報を含み、
課金情報は、地域住人が、ごみを性状別に合わせたリサイクル処理目的により分別して排出すれば、処理料金を安く設定することを告示する内容を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の複合リサイクルシステム。
【請求項1】
システムを構成する地域内において発生する廃棄物を資源として再生するリサイクルループを形成し、事業所や一般家庭などの地域住人が出す廃棄物の収集運搬から廃棄物処理および廃棄物のリサイクル加工に至るまでに発生するCO2排出量を検出あるいは演算をし、地域住人の行動に起因して発生したCO2の排出総量、CO2の排出総量をもとに算出された予測値、目標値のデータを、コンピュータネットワークを通じて地域住人にCO2発生を抑制するために必要な行動実践に必要な指針情報として地域住人に提供することを特徴とする地域の複合リサイクルシステム。
【請求項2】
システムを構成する地域は、約100万人を1単位として形成するものであることを特徴とする請求項1に記載の地域の複合リサイクルシステム。
【請求項3】
地域内に設定した総合情報管理センターにおいて、地域内に発生した廃棄物を収集運搬する処理、収集された廃棄物を処理して電力,ガス,金属,建材,飼料,肥料などの製品に再生する複合処理を含むシステム全体から排出されるCO2排出量を計算し、その計算結果から将来発生するCO2排出量を予測し、これらのデータを廃棄物減量,CO2の排出抑制の努力目標の指針として、地域住人に情報公開することを特徴とする請求項1に記載の地域の複合リサイクルシステム。
【請求項4】
地域の複合リサイクルシステムは、少なくとも中継基地と、ストックヤードと、複合処理施設と、総合情報管理センターとを主要な施設として構成され、
中継基地は地域住人から出される廃棄物(ごみ)を分別収集し、ストックヤードに搬送する施設であり、
ストックヤードは、中継基地から搬送されてきた廃棄物を一時的に保管する施設であり、
複合処理施設は、ストックヤードの廃棄物を用途ごとに分別して用途ごとの処理施設に搬送し、廃棄物を処理、再資源化する施設であり、
総合情報管理センターは、これら各中継基地,ストックヤード,複合処理施設の各施設の情報を管理するための施設であり、
これらの施設は、コンピュータネットワークを形成するために、インターネットを経由して接続され、総合情報管理センターは、各施設からの情報収集とともに収集した情報を加工し、CO2排出量規制に必要な指針情報をインターネットを通じて地域住人に提供する機能を有することを特徴とする請求項1に記載の地域の複合リサイクルシステム。
【請求項5】
地域の複合リサイクルシステムは、主な施設としてさらに貨物駅を含み、
貨物駅は、各中継基地から用途ごとに分別されて輸送されてきた廃棄物を集積し、さらに、ストックヤードに向けて廃棄物を鉄道輸送する施設として利用されるものであることを特徴とする請求項4に記載の地域の複合リサイクルシステム。
【請求項6】
複合処理施設は、パワーセンターと、有機物資源化センターと、クリーン化処理センターとを主要なセンターとして構成され、
パワーセンターは、回収した廃棄物を主として電力エネルギーとして再生させる処理を行う施設であり、
有機物資源化センターは回収した廃棄物をメタン,メタノールとして再生し、或いは飼料・肥料化に必要な処理をして資源に加工する施設であり、
クリーン化処理センターは、回収した廃棄物を主として金属材料,建材,化学薬品,ガスなどの資源に再生させる処理を行う施設であることを特徴とする請求項4に記載の地域の複合リサイクルシステム。
【請求項7】
環境監視センターを有し、
環境監視センターは、主として複合処理施設における処理が適正かどうかを監視するとともに複合処理施設で行われる資源化処理の内容を管理し、複合処理施設での処理の内容、管理の内容に関する情報をインターネットを通じて地域住人に提供する施設であることを特徴とする請求項4に記載の地域の複合リサイクルシステム。
【請求項8】
CO2の発生量年間目標値を廃棄物の種類ごとに計算し、廃棄物の種類と計算結果を総合情報管理センターの情報提供,情報通知ファイルに記録するステップと、
地域住人から排出された廃棄物の種類,量,廃棄物の発生年月日を中継基地の廃棄物排出ファイルに記録するステップと、記録された廃棄物排出ファイルのデータをネットワークを通じて総合情報管理センターに送信するステップと、
中継基地から運びだされた廃棄物の種類,量,廃棄物の収集年月日,収集運搬距離を廃棄物運搬ファイルに記録するステップと、記録された廃棄物運搬ファイルのデータをネットワークを通じて総合情報管理センターに送信するステップと、
ストックヤードに運ばれた廃棄物の種類,量,廃棄物の受入年月日をストックヤードの廃棄物受入ファイルに記録するステップと、運ばれた廃棄物を処理するための処理料金を計算するステップと、計算で得られた処理料金をストックヤードの廃棄物受入ファイルに記録するステップと、記録された廃棄物受入ファイルのデータをネットワークを通じて総合情報管理センターに送信するステップと、
複合処理施設がストックヤードから受け取った廃棄物を処理した後、処理のために使用した、原料(廃棄物)の種類,量,使用材料,使用燃料,使用電力,再資源化のための生産量,資源化された年月日を複合処理施設の処理,再資源化(プラント運転)ファイルに記録するステップと、記録された処理,再資源化(プラント運転)ファイルのデータをネットワークを通じて総合情報管理センターに送信するステップと、
複合処理施設で生産された再資源化物を製品倉庫に保管し、再資源化物が注文主に販売されるごとに、製品の種類,注文量,販売量,製品が出荷された年月日を製品倉庫の製品販売情報ファイルに記録するステップと、記録された製品販売情報ファイルのデータをネットワークを通じて総合情報管理センターに送信するステップと、
各施設から総合情報管理センターに送信されたCO2の排出工程,燃料,電力使用量,のデータをもとに、排出工程ごとのCO2発生量を計算するステップと、算出されたCO2発生量から排出工程ごとの年間予測値を計算するステップと、計算されたCO2発生量と年間予測値を総合情報管理センターのCO2排出量ファイルに記録するステップと、各施設から送信されたデータをもとに、廃棄物の種類ごとのCO2排出の年月日,CO2排出量,年間予測値を情報提供,情報通知ファイルに記録するステップと、CO2排出状況をコメントし、排出抑制の必要性を推定、提言した情報を情報提供,情報通知ファイルに記録するステップと、
総合情報管理センターの情報提供,情報通知ファイルの各データをインターネットのホームページなどを通じて、地域の住民に公開するステップからなることを特徴とする請求項4に記載の地域の複合リサイクルシステム。
【請求項9】
中継基地から運びだされた廃棄物の種類,量,廃棄物の収集年月日,収集運搬距離を廃棄物運搬ファイルに記録するステップは、トラックの収集運搬距離を貨物駅の廃棄物運搬ファイルに記録するステップと、貨物駅から鉄道によってストックヤードに運ばれた廃棄物の種類,量,廃棄物の受入年月日をストックヤードの廃棄物受入ファイルに記録するステップとを含むものであることを特徴とする請求項8に記載の地域の複合リサイクルシステム。
【請求項10】
総合情報管理センターは、算出された実績CO2排出量と目標値とを比較し、算出された実績CO2排出量が、予め定めた目標値の許容範囲を超えた場合には、「超過」を指示し、算出された実績CO2排出量が目標値以下になった場合は、「正常」を指示し、「超過」が指示されたときには、指針情報として、「排出抑制の必要性」をインターネットのホームページに公開し、「正常」が指示されたときには、「目標達成」を公開することを特徴とする請求項3に記載の地域の複合リサイクルシステム。
【請求項11】
「排出抑制の必要性」の通知は、LCAの手法によって算定された自動車の走行によるCO2の排出量、電力使用によるCO2の排出量、ガス使用によるCO2の排出量などの情報とともに指針情報として公開されるものであることを特徴とする請求項10に記載の複合リサイクルシステム。
【請求項12】
地域住人にCO2発生を抑制するために必要な行動実践に必要な指針情報は、課金情報を含み、
課金情報は、地域住人が、ごみを性状別に合わせたリサイクル処理目的により分別して排出すれば、処理料金を安く設定することを告示する内容を含むものであることを特徴とする請求項1に記載の複合リサイクルシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2007−188431(P2007−188431A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7767(P2006−7767)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(505361118)特定非営利活動法人環境テクノロジーセンター (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(505361118)特定非営利活動法人環境テクノロジーセンター (2)
【Fターム(参考)】
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